以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳しく説明する。本発明で製造対象とする偏光板は、図1に示すように、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルム1に、熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2が貼合されたものである。そして両者の界面には、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物の硬化物からなる接着剤層4が介在する。熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2は、偏光フィルム1の少なくとも片面に貼合すればよく、もちろん偏光フィルム1の両面に保護フィルムを貼合してもよい。
偏光フィルムの両面に熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合する場合は、図2に示すように、偏光フィルム1の一方の保護フィルム2が貼合された面と反対側の面に、熱可塑性樹脂からなるもう一つの保護フィルム3が貼合される。その場合も、偏光フィルム1と保護フィルム3の界面には、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物の硬化物からなるもう一つの接着剤層5を介在させることが好ましい。図2に示すように、偏光フィルム1の両面に熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2,3を貼合する場合、二つの保護フィルム2及び3は、同じであっても異なっていてもよく、また接着剤層4及び5は、同じ接着剤から形成してもよいし、異なる接着剤から形成してもよい。
まず、偏光板の各構成部材について説明する。
[偏光フィルム]
本発明に用いられる偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向しているものである。二色性色素の吸着前、吸着中、又は吸着後に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸することにより、その二色性色素を延伸方向に配向させることができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、上記エチレンをはじめとするオレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000の範囲内、好ましくは1,500〜5,000の範囲内である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、従来公知の適宜の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば10〜150μm 程度である。
偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程(染色処理工程)、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程(ホウ酸処理工程)、及び、このホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程(水洗処理工程)を経て、製造される。
また、偏光フィルムの製造に際し、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは一軸延伸されるが、この一軸延伸は、染色処理工程の前に行ってもよいし、染色処理工程中に行ってもよいし、染色処理工程の後で行ってもよい。一軸延伸を染色処理工程の後で行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行ってもよいし、ホウ酸処理工程中に行ってもよい。もちろん、これら複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸は、周速の異なる離間したロール間を通すことにより行ってもよいし、熱ロールで挟む方式で行ってもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3倍〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬することによって行われる。二色性色素としては、例えば、ヨウ素や二色性有機染料などが用いられる。二色性有機染料には、例えば、 C.I. DIRECT RED 39 などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に供される水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常 20〜1,800秒間である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部、好ましくは1×10-3〜1重量部であり、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。二色性色素として二色性有機染料を用いる場合、染色に供される染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、またこの水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常 10〜1,800秒間である。
ホウ酸処理工程は、二色性色素により染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。上述した染色処理工程における二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸処理工程で用いる水溶液は、ホウ酸に加えてヨウ化カリウムを含有することが好ましい。この場合、ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒間、好ましくは150〜600秒間、さらに好ましくは200〜400秒間である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
続く水洗処理工程では、上述したホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、例えば水に浸漬することによって水洗処理する。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃であり、浸漬時間は、通常1〜120秒間である。水洗処理後は通常、乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒータなどを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒間、好ましくは120〜600秒間である。
以上のようにして、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを作製することができる。この偏光フィルムの厚みは、5〜40μm 程度とすることができる。
偏光フィルム1と熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2を貼着するための活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物の硬化物からなる接着剤層4は、以下に詳述されるような接着剤を用いて形成される。接着剤を用いてこれらのフィルムを貼着する際、接着性を向上させるために、熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2上に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理、溶剤処理などの表面処理を適宜施してもよい。以下、偏光フィルムと熱可塑性樹脂からなる保護フィルムとの貼着に用いられる接着剤について説明する。
[活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物からなる接着剤]
偏光フィルム1と熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2との貼着には、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物からなる接着剤が用いられる。
活性エネルギー線硬化性化合物とは、活性エネルギー線の照射により硬化し得る化合物を意味する。活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性のものでもよいし、ラジカル重合性のものでもよい。カチオン重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に少なくとも1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物などを挙げることができる。また、ラジカル重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物などを挙げることができる。なお、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味する。
この貼着に用いる活性エネルギー線硬化性化合物は、少なくともエポキシ化合物を含むことが好ましく、これにより、偏光フィルム1と熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2との間で良好な密着性を示すようになる。エポキシ化合物は、上述のとおり分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するものであるが、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を主成分とする接着剤を用いることが、偏光フィルム1と保護フィルム2との密着性を高めるうえで特に好ましい。
エポキシ化合物としては、耐候性や屈折率、カチオン重合性などの観点から、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分として用いることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが例示できる。このような硬化性接着剤に好適に用いられるエポキシ化合物は、例えば、先の特許文献1(特許第 4306270号公報)で詳細に説明されているが、ここでも概略を説明することとする。
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルは、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF、及びビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環(3員の環状エーテル)を分子内に少なくとも1個有する化合物である。例えば、ブチルグリシジルエーテルや2−エチルヘキシルグリシジルエーテルのような単官能のエポキシ化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルやペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルのような3官能以上のエポキシ化合物、また、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイドやリモネンジオキサイドのような、脂環式環に直接結合するエポキシ基1個と、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有するエポキシ化合物もこれに該当するが、典型的には、脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に2個有する脂肪族ジエポキシ化合物が好ましい。かかる好適な脂肪族ジエポキシ化合物は、例えば、次式(I)で表すことができる。
式中のYは、炭素数2〜9のアルキレン基、間にエーテル結合を有する総炭素数4〜9のアルキレン基、又は脂環構造を有する炭素数6〜18の2価の炭化水素基である。
上記式(I)で示される脂肪族ジエポキシ化合物は、具体的には、アルカンジオールのジグリシジルエーテル、繰り返し数4程度までのオリゴアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、又は脂環式ジオールのジグリシジルエーテルである。
式(I)で示される脂肪族ジエポキシ化合物となり得るジオール(グリコール)の具体例を、以下に掲げる。アルカンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどがある。オリゴアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがある。 脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどがある。
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。ここで、「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、下式(II)で示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、この式において、mは2〜5の整数である。
式(II)における (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。また、脂環式環を形成する (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基のような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。
以上のようなエポキシ化合物のなかでも、脂環式エポキシ化合物、すなわち、エポキシ基の少なくとも1個が脂環式環に結合している化合物が好ましく、とりわけ、オキサビシクロヘキサン環〔上記式(II)において、m=3のもの〕や、オキサビシクロヘプタン環〔上記式(II)において、m=4のもの〕を有するエポキシ化合物は、硬化物の弾性率が高く、偏光フィルムと保護フィルムの間で良好な接着性を与えることから、より好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここでは、まず化合物名を挙げ、その後、それぞれに対応する化学式を示すこととし、化合物名とそれに対応する化学式には同じ符号を付す。
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:リモネンジオキサイド、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
硬化性接着剤において、エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、硬化性接着剤は、上記エポキシ化合物に加え、オキセタン化合物を含有してもよい。オキセタン化合物を添加することにより、硬化性接着剤の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物であって、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-121”、 “アロンオキセタン OXT-211”、“アロンオキセタン OXT-221”、“アロンオキセタン OXT-212” などを挙げることができる。オキセタン化合物の配合量は特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性化合物全体を基準に、通常50重量%以下、好ましくは10〜40重量%である。
硬化性接着剤が、エポキシ化合物やオキセタン化合物などのカチオン重合性化合物を含む場合、その硬化性接着剤には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での接着剤層の形成が可能となるため、偏光フィルムの耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く偏光フィルムと保護フィルムを貼合できる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これを硬化性接着剤に混合しても、硬化性接着剤は保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよいが、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロボレートなど。
芳香族ヨードニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなど。
芳香族スルホニウム塩としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど。
また、鉄−アレーン錯体としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロアンチモネート、
クメン−シクロペンタジエニル鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート、
キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II) トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイドなど。
これらの光カチオン重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えばそれぞれ商品名で、日本化薬(株)から販売されている“カヤラッド PCI-220”及び“カヤラッド PCI-620”、ユニオンカーバイド社から販売されている“UVI-6990”、ダイセル・サイテック(株)から販売されている“UVACURE 1590”、(株)ADEKAから販売されている“アデカオプトマー SP-150”及び“アデカオプトマー SP-170”、日本曹達(株)から販売されている“CI-5102”、“CIT-1370”、“CIT-1682”、“CIP-1866S”、
“CIP-2048S”及び“CIP-2064S”、 みどり化学(株)から販売されている“DPI-101”、“DPI-102”、“DPI-103”、“DPI-105”、“MPI-103”、“MPI-105”、“BBI-101”、
“BBI-102”、“BBI-103”、“BBI-105”、“TPS-101”、“TPS-102”、“TPS-103”、
“TPS-105”、“MDS-103”、“MDS-105”、“DTS-102”及び“DTS-103”、 ローディア社から販売されている“PI-2074”などを挙げることができる。
これらの光カチオン重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に芳香族スルホニウム塩は、300nm以上の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度を与え、また偏光フィルムと保護フィルムの間の良好な密着性を有する硬化物を与えることができるため、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物やオキセタン化合物を包含するカチオン重合性化合物の合計100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光カチオン重合開始剤の配合量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や偏光フィルムと保護フィルムの間の接着性を低下させる傾向にある。一方、光カチオン重合開始剤の配合量が多すぎると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、得られる接着剤層の耐久性能が低下する可能性がある。
また、硬化性接着剤は、上記エポキシ化合物とともに、あるいはエポキシ化合物及びオキセタン化合物とともに、ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有してもよい。(メタ)アクリル系化合物を併用することにより、接着剤層の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには硬化性接着剤の粘度や硬化速度などの調整がより一層容易に行えるようになる。
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合、(メタ)アクリレートモノマーが2種以上であってもよいし、(メタ)アクリレートオリゴマーが2種以上であってもよいし、もちろん、(メタ)アクリレートモノマーの1種以上と(メタ)アクリレートオリゴマーの1種以上とを併用してもよい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
上記の(メタ)アクリレートモノマーには、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、及び分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーがある。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、カルボキシル基含有の(メタ)アクリレートモノマーを用いてもよい。 カルボキシル基含有の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N′,N′−ジカルボキシメチル−p−フェニレンジアミン、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸などが挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート類、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート類、 ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類などが代表的である。
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどがある。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレートが代表的なものであり、その他、3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
一方、(メタ)アクリレートオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーなどがある。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物などであり得る。
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
かかる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなど)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ−又はトリ−イソシアネート、及び、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオール類としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどを使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、上記したポリオール類と多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸などがある。
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールのほか、上記したポリオール類又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールなどであり得る。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物でありうるものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などがある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
硬化性接着剤に(メタ)アクリル系化合物を配合する場合、その量は、活性エネルギー線硬化性化合物全体の量を基準に、20重量%以下、さらには10重量%以下とすることが好ましい。(メタ)アクリル系化合物の配合量が多くなると、偏光フィルムと保護フィルムとの間の密着性を低下させる傾向にある。
硬化性接着剤が上記の如き(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤が配合されることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよく、従来公知のものを用いることができる。光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
光ラジカル重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。光ラジカル重合開始剤の量が少ないと、硬化が不十分になり、機械的強度や偏光フィルムと保護フィルムとの接着性が低下する傾向にある。また、光ラジカル重合開始剤の量が多すぎると、硬化性接着剤中の活性エネルギー線硬化性化合物(エポキシ化合物を含むカチオン重合性の硬化性化合物及び(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物)が相対的に少なくなり、得られる接着剤層の耐久性能が低下する可能性がある。
硬化性接着剤は、必要に応じてさらに光増感剤を含有することができる。光増感剤を配合することで、カチオン重合及び/又はラジカル重合の反応性が向上し、接着剤層の機械的強度や偏光フィルムと保護フィルムとの間の接着性を向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。光増感剤のより具体的な例を挙げると、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、及び2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、及び2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、及びN−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。光増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物全体を100重量部として、 0.1〜20重量部の割合で配合するのが好ましい。
硬化性接着剤には、高分子に通常使用されている公知の高分子添加剤を添加することもできる。例えば、フェノール系やアミン系のような一次酸化防止剤、イオウ系の二次酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、又はベンゾエート系のような紫外線吸収剤などが挙げられる。
さらに硬化性接着剤は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。溶剤は、硬化性接着剤を構成する成分の溶解性を考慮して、適宜選択される。一般に用いられる溶剤としては、n−ヘキサンやシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びn−ブタノールのようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンのようなケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチルのようなエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、及びブチルセロソルブのようなセロソルブ類;塩化メチレンやクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。溶剤の配合割合は、成膜性などの加工上の目的による粘度調整などの観点から適宜決定される。また、塗布したときの平滑性を上げるため、レベリング剤を配合するのも有効である。
[熱可塑性樹脂からなる保護フィルム]
熱可塑性樹脂からなる保護フィルムは、上で説明したポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムが、先述のとおり物理的な強度に乏しいことから、それを補う目的で、偏光フィルムの表面に設けられる。偏光フィルムに、先に説明した活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性接着剤を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合し、硬化性接着剤を硬化させて偏光板とする。熱可塑性樹脂からなる保護フィルムは、従来から偏光板の保護フィルムとして最も広く用いられているトリアセチルセルロースをはじめとするアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い樹脂フィルムで構成することができる。なお、トリアセチルセルロースの透湿度は、概ね400g/m2/24hr程度である。
本発明の一つの好ましい形態では、偏光フィルムの少なくとも一方の面に貼合される熱可塑性樹脂からなる保護フィルムがアセチルセルロース系樹脂フィルムで構成される。アセチルセルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。アセチルセルロース系樹脂として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどを挙げることができる。
アセチルセルロース系樹脂には、紫外線吸収剤が配合されていてもよい。偏光フィルムの一方の面、具体的には、液晶セルに貼合される偏光板の液晶セルから遠い側となる面、すなわち視認側又はバックライト側となる面には、紫外線吸収剤が配合された樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合することが多い。紫外線吸収剤として、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが知られている。
偏光フィルムの一方の面に、紫外線吸収剤が配合されているアセチルセルロース系樹脂からなる熱可塑性樹脂を貼合し、偏光フィルムの他方の面には、紫外線吸収剤が配合されていないアセチルセルロース系樹脂からなり、位相差が付与された位相差フィルムを貼合する形態も有効である。
本発明の別の好ましい形態では、偏光フィルムの少なくとも一方の面に貼合される熱可塑性樹脂が、トリアセチルセルロースより透湿度の低い樹脂フィルムで構成される。このような樹脂フィルムとして、例えば、透湿度が300g/m2/24hr以下の樹脂フィルムを挙げることができ、具体的には、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂などが、これに該当する。
非晶性ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名ジメタノオクタヒドロナフタレン)、あるいはそれらに置換基が結合した化合物の如き、シクロオレフィンの重合単位を有する重合体であり、シクロオレフィンに鎖状ポリオレフィン及び/又は芳香族ビニル化合物を共重合させた共重合体であってもよい。シクロオレフィンの単独重合体あるいは2種以上のシクロオレフィンの共重合体の場合は、開環重合によって二重結合が残るので、そこに水素添加されたものが、非晶性ポリオレフィン系樹脂として一般的に用いられる。なかでも、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が代表的である。
ポリエステル系樹脂は、二塩基酸と二価アルコールとの縮合重合によって得られる重合体であり、ポリエチレンテレフタレートが代表的である。
アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主な単量体とする重合体であり、メタクリル酸メチルの単独重合体のほか、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルのようなアクリル酸エステルや芳香族ビニル化合物などとの共重合体であってもよい。アクリル系樹脂には、耐衝撃性を上げることなどを目的として、アクリル系などのゴム粒子が配合されることもある。
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合(−O−CO−O−)を持つ重合体であり、ビスフェノールAとホスゲンとの縮合重合によって得られるものが代表的である。
鎖状ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンを主な単量体とする重合体であり、単独重合体や共重合体であることができる。なかでも、プロピレンの単独重合体や、プロピレンに少量のエチレンが共重合されている共重合体が代表的である。
本発明のもう一つの好ましい形態では、偏光フィルムの一方の面に前記接着剤層を介して、アセチルセルロース系樹脂からなる熱可塑性樹脂が貼合され、偏光フィルムの他方の面に同じく前記接着剤層を介して、上記のような透湿度の低い透明な熱可塑性樹脂からなる保護フィルムが貼合される。
熱可塑性樹脂からなる保護フィルムは、薄いほうが好ましいものの、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向にあり、一方で厚すぎると、透明性が低下したり偏光板の重量が大きくなったりする傾向にある。このような観点からすると、保護フィルムの厚みは、通常10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μm である。
これらの熱可塑性樹脂からなる保護フィルムは、偏光フィルムに貼合される面とは反対側の面に、ハードコート処理、反射防止処理、防眩処理、帯電防止処理、又は防汚処理のような各種の表面処理を施すことができる。
[偏光板の製造方法]
次に、本発明に係る偏光板の製造方法について説明する。先述のとおり本発明では、偏光フィルム1に、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物からなる接着剤を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2を積層し、活性エネルギー線を照射して上記の接着剤を硬化させ、保護フィルム2を偏光フィルム1に貼合して偏光板を製造する。その際、偏光フィルム1に保護フィルム2を積層する前に、偏光フィルム1を水に浸漬する。所望なら、偏光フィルム1の片面に熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2を貼合し、偏光フィルム1の他面には、別の熱可塑性樹脂からなる保護フィルム3を、やはり接着剤を介して貼合することができる。偏光フィルム1を水に浸漬した後、保護フィルム2(所望ならさらに3)を貼合する前に、好ましくは、偏光フィルム1の表面に付着した水分が除去される。
そこで、本発明の偏光板の製造方法は、以下の(i)〜(iv)の工程を経る。ただし、(ii)の水分除去工程は任意である。
(i) 偏光フィルム1を水に浸漬する浸漬工程、
(ii) 浸漬後の偏光フィルム1を取り出し、フィルム表面に付着した水分を除去する水分除去工程、
(iii) 浸漬工程(i)を経た後、又はさらに水分除去工程(ii)を経た後の偏光フィルム1に、上記の接着剤を介して保護フィルム2を積層する積層工程、及び
(iv) 積層工程(iii) で得られる積層体に活性エネルギー線を照射して上記の接着剤を硬化させる硬化工程。
偏光フィルム1の片面に熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2を貼合し、他面には別の熱可塑性樹脂からなる保護フィルム3を貼合する場合は、(i)〜(iv)の各工程を繰り返し行ってもよいし、浸漬工程(i)及び所望ならさらに水分除去工程(ii)を経た後、偏光フィルム1の両面に接着剤を介して保護フィルム2,3を積層する積層工程(iii) を行い、次いで両面の接着剤を同時に硬化させる硬化工程(iv)を行ってもよい。
上記の塗工工程(i)において、偏光フィルム1を浸漬する水は、実質的に溶質を含まないものである。ここでいう「実質的に溶質を含まない」とは、不純物程度に含まれる溶質は許容されるが、意図的に添加することはないという意味である。有意量の溶質を含む水(水溶液)を用いると、その溶質が偏光フィルム1上に残存し、その外観、延いては、透明性などの偏光性能に悪影響を及ぼすおそれがある。用いる水は、純水、超純水、水道水などであることができ、特に制限されないが、偏光フィルム1の透明性を保持する観点からは、純水又は超純水が好ましい。
用いる水の温度は、室温付近で十分であり、典型的には10〜40℃程度とされる。浸漬に用いる水の温度が高すぎると、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1が溶けて、偏光性能を低下させる可能性がある。また、水への浸漬時間は、この処理を行わない場合に比べて偏光フィルム1と保護フィルム2の接着力が高まるように選択すればよいが、好ましくは10秒以上とされる。浸漬時間が長くなるほど、偏光フィルム1と保護フィルム2の接着力が高まる傾向にあるので、1分以上水に浸漬することがより好ましい。浸漬時間の上限に特別な制限はないが、あまり長くなると、生産効率を悪くし、また場合によってはポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1が溶けて偏光性能を低下させる可能性も出てくるので、30分以下、さらには20分以下、とりわけ10分以下とするのが好ましい。
次に、上記の水分除去工程(ii)においては、偏光フィルム1の表面に付着した水を除去する。水分を除去する操作は、自然乾燥でも構わないが、風を当てながら水分を除去する方法や、布などで水分を拭き取る方法が、短時間で水分を除去できるため、好ましい。とりわけ、風を当てながら水分を除去する方法がより好ましい。水分除去工程(ii)は、例えば、水に浸漬した後の偏光フィルム1を取り出しながら、風を当てて水分を除去するといった方法も採ることができる。
上記の積層工程(iii) においては、浸漬工程(i)を経た後、あるいはさらに水分除去工程(ii)を経た後の偏光フィルム1に、接着剤を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2を積層する。接着剤層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光フィルム1と保護フィルム2を両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。各塗工方式には、それぞれ最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて接着剤の粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光フィルムの光学性能を低下させることなく、接着剤を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。接着剤層の厚さは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは2μm以下である。接着剤層が厚くなると、接着剤の反応率が低下し、得られる偏光板の耐湿熱性が低下する傾向にある。接着剤を塗布した後、偏光フィルム1と熱可塑性樹脂からなる保護フィルム2をニップロールなどにより挟んで、貼り合わせる。フィルム間に接着剤を滴下した後、ロールなどで加圧して均一に押し広げる方法を採用する場合、用いるロールの材質は金属やゴムなどであることができ、2本のロールの間を通すときに用いる各ロールは、同じ材質であっても異なる材質であってもよい。
上記の硬化工程(iv)においては、接着剤を介して偏光フィルム1に保護フィルム2が積層された積層体に、活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させる。適用される活性エネルギー線は、紫外線、電子線、X線、可視光線などであることができるが、特に波長400nm以下に発光分布を有する光源を用いることが好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが、光源として好適に用いられる。
接着剤への活性エネルギー線の照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって特に限定されないが、光重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が 0.1〜100mW/cm2 となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方で光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び接着剤の重合時の発熱により、接着剤の黄変や偏光フィルムの劣化を生じる可能性がある。接着剤への光照射時間も、用いる組成物毎に制御されるものであって、やはり特に限定されないが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が大きすぎると、光照射時間が非常に長くなって生産性向上には不利になりやすい。
偏光フィルム1の両面に保護フィルム2,3を積層し、その状態で活性エネルギー線を照射する場合、活性エネルギー線の照射はどちらの保護フィルム側から行ってもよい。例えば、一方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有し、他方の保護フィルムが紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない保護フィルム側から活性エネルギー線を照射することが好ましい。このように照射することで、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めることができる。
[積層光学部材]
本発明によって製造される偏光板は、偏光板以外の光学機能を有する光学層を積層し、積層光学部材とすることができる。典型的には、偏光板の保護フィルムに、接着剤や粘着剤を介して光学層を積層貼着することによって、積層光学部材とされるが、その他、例えば、偏光フィルムの一方の面に本発明に従って光硬化性接着剤を介して保護フィルムを貼合し、偏光フィルムの他方の面に接着剤又は粘着剤を介して光学層を積層貼着することもできる。後者の場合、偏光フィルムと光学層を貼着するための接着剤として、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性組成物を用いれば、その光学層は、同時に本発明で規定する保護フィルムともなりうる。
偏光板に積層される光学層の例を挙げると、液晶セルの背面側に配置される偏光板に対しては、その偏光板の液晶セルに面する側とは反対側に積層される、集光板、輝度向上フィルム、反射層、半透過反射層、光拡散層などがある。また、液晶セルの前面側に配置される偏光板及び液晶セルの背面側に配置される偏光板のいずれに対しても、その偏光板の液晶セルに面する側に積層される位相差フィルムなどがある。
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどであってもよい。
輝度向上フィルムは、液晶表示装置における輝度の向上を目的に用いられる。具体的には、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した円偏光分離シートなどが挙げられる。
反射層、半透過反射層、又は光拡散層は、偏光板を反射型の光学部材、半透過型の光学部材、又は拡散型の光学部材とするためにそれぞれ設けられる。偏光板を含む反射型の光学部材は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。偏光板を含む半透過型の光学部材は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。また、偏光板を含む拡散型の光学部材は、光拡散性を付与してモアレ等の表示不良を抑制した液晶表示装置に用いられる。
これらの反射層、半透過反射層及び光拡散層の形成方法について説明する。反射型の光学部材を構成する反射層は、例えば、偏光フィルム上の保護フィルムに、アルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜を付設することにより形成することができる。半透過型の光学部材を構成する半透過反射層は、前記の反射層をハーフミラーとしたり、パール顔料などを含有して光透過性を示す反射板を偏光板に接着したりすることで形成できる。また、拡散型の光学部材を構成する光拡散層は、例えば、偏光板上の保護フィルムにマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法などにより、微細凹凸構造を有する表面層として形成できる。微粒子を含有した樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光が微粒子含有層を透過する際に拡散され、明暗ムラを抑制しうるなどの利点を有する。表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子は、例えば、平均粒径が0.1〜30μmであるシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンの如き無機系微粒子、架橋又は非架橋のポリマーの如き有機系微粒子などであることができる。
積層光学部材は、反射拡散両用の偏光板であってもよい。反射拡散両用の偏光板は、例えば、偏光板を含む上記した拡散型光学部材の微細凹凸構造面に、その凹凸構造が反映された反射層を設けるなどの方法により作製できる。微細凹凸構造を有する反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうるなどの利点を有する。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、又はスパッタリングの如き蒸着やメッキなどの方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。
光学層として作用する位相差フィルムは、液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される。位相差板の例としては、各種プラスチックの延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。基材フィルム上に液晶層を形成する場合、基材フィルムとして、トリアセチルセルロースなどのセルロースアセテート系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
複屈折性フィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンのような鎖状ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリアミドなどが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであることができる。なお、位相差フィルムは、広帯域化など光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。
積層光学部材は、偏光板以外の光学層として位相差フィルムを液晶表示装置に適用したとき、有効に光学補償が行えることから、好ましい。位相差フィルムの位相差値(面内及び厚み方向)は、適用される液晶セルに応じて、最適なものを選べばよい。
積層光学部材は、偏光板と、上述した各種の光学層から使用目的に応じて選択される1層又は2層以上とを組み合わせ、2層又は3層以上の積層体とすることができる。その場合、積層光学部材を形成する各種光学層は、接着剤や粘着剤を用いて偏光板と一体化されるが、そのために用いる接着剤や粘着剤は、接着剤層や粘着剤層が良好に形成されるものであれば特に限定はない。接着作業の簡便性や光学歪の発生防止などの観点から、粘着剤(感圧接着剤とも呼ばれる)を使用することが好ましい。積層光学部材の液晶セルに貼合される面にも、通常は粘着剤層が設けられる。
上記の各種光学層と偏光板を一体化させる粘着剤には、アクリル系重合体や、シリコーン系重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどをベースポリマーとするものを用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤のように、透明性に優れ、適度な濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらに耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等のはく離問題を生じないものを選択して用いることが好ましい。アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、さらに好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
偏光板又は積層光学部材への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを目的のフィルム(偏光板又は積層光学部材)の対象面に直接塗工する方式や、予めプロテクトフィルム上に粘着剤層を形成しておき、それを目的のフィルム(偏光板又は積層光学部材)の対象面に移着する方式などにより、行うことができる。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、1〜50μm 程度の範囲が適当である。
また、粘着剤層には必要に応じて、ガラス繊維やガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉やその他の無機粉末などからなる充填剤、顔料や着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
積層光学部材は、液晶セルの片側又は両側に、上記した粘着剤層を介して配置することができる。用いる液晶セルは任意であり、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、スーパーツイステッドネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなど、種々の液晶セルを使用して液晶表示装置を形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す%及び部は、特に断りのない限り重量基準である。
[製造例1]偏光フィルムの作製
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100 の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に 56.5℃で浸漬した。引き続き、8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ約30μm の偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色及びホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
[製造例2]紫外線硬化性接着剤の調製
以下の各成分を混合して、紫外線硬化性接着剤を調製した。なお、光カチオン重合開始剤として用いた“UVACURE 1590”は、プロピレンカーボネート溶液の形で販売元のダイセル・サイテック(株)から入手したものであるが、以下ではその有効成分量で表示した。
(紫外線硬化性接着剤)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔ダイセル化学(株)製の“セロキサイド 2021P”〕 75部
ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル〔東亞合成(株)製の“アロンオキセタン OXT-221〕 25部
4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤〔ダイセル・サイテック(株)製の“UVACURE
1590”〕 2.5部
シリコーン系レベリング剤〔東レ・ダウコーニング(株)製の“SH710”〕 0.2部
[実施例1]
(A)偏光フィルムの水への浸漬及び水分除去
製造例1で作製した偏光フィルムを、25℃の純水中に10秒間浸漬した。その後偏光フィルムを取り出し、風を当てて、偏光フィルム上に残存している水を除去した。こうして得られた偏光フィルムの外観を目視で観察し、外観に変化が見られない場合を○、異物やムラ、変色が見られる場合を×として評価した。結果を表1に示した。
(B)熱可塑性樹脂からなる保護フィルム
コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から入手したアセチルセルロース系樹脂からなる厚さ40μmの位相差フィルム〔商品名“N-TAC KC4FR-1”〕の表面にコロナ放電処理を施し、偏光フィルムの一方の面に貼合する保護フィルムとした。また、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から入手した紫外線吸収剤を含む厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム(商品名“コニカタック KC8UX2MW”) の表面にコロナ放電処理を施し、偏光フィルムのもう一方の面に貼合する保護フィルムとした。
(C)偏光板の作製
上記(B)で用意した位相差フィルム及びトリアセチルセルロースフィルムのそれぞれコロナ放電処理面に、製造例2で調製した紫外線硬化性接着剤を塗布した。それぞれの接着剤塗布面を、上記(A)で作製した偏光フィルムの表裏面に貼合し、位相差フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製の“Dバルブ”使用)を用いて積算光量が250mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。こうして、偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合された偏光板を作製した。
(D)接着力の評価
上記(C)で作製した偏光板のアセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルム表面にコロナ放電処理を施した後、そのコロナ放電処理面にアクリル系粘着剤シートを貼合した。得られた粘着剤付き偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断した。その試験片の粘着剤面をソーダガラスに貼合した後、オートクレーブ中、圧力5kgf/cm2、温度50℃で20分間の加圧処理を行い、さらに温度23℃、相対湿度60%の雰囲気下で1日放置した。この状態で、万能引張り試験機〔(株)島津製作所製の“AG-1”〕を用い、試験片の長さ方向一端(幅25mmの一辺)にあるトリアセチルセルロースフィルムと偏光フィルムをつかみ、温度23℃、相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K6854-2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、偏光フィルムとアセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムとの間の接着力を評価した。結果を表1に示した。
[実施例2〜5]
偏光フィルムの水への浸漬時間を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして処理し、次いで偏光板を作製した。偏光フィルムの水への浸漬及び水分除去後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
[実施例6〜7]
アセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムを、シクロオレフィン系樹脂からなる厚さ60μm の位相差フィルムに変更し、偏光フィルムの水への浸漬時間を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水への浸漬及び水分除去後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
[実施例8〜9]
アセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムを、メタクリル酸メチル系樹脂にアクリル系ゴム粒子が30%添加された樹脂組成物から作製された厚さ80μm のアクリル系樹脂フィルムに変更し、偏光フィルムの水への浸漬時間を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水への浸漬及び水分除去後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
[比較例1]
偏光フィルムを水に浸漬する操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示した。なお、水への浸漬処理を行っていないため、保護フィルム貼合直前の偏光フィルムの外観評価結果は○とした。以下の比較例2及び3も同様である。
[比較例2]
偏光フィルムを水に浸漬する操作を行わなかったこと以外は、実施例6〜7(厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルムとは反対側に貼る保護フィルムが、シクロオレフィン系樹脂からなる厚さ60μm の位相差フィルム)と同様にして偏光板を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示した。
[比較例3]
偏光フィルムを水に浸漬する操作を行わなかったこと以外は、実施例8〜9(厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルムとは反対側に貼る保護フィルムが、厚さ80μm のアクリル系樹脂フィルム)と同様にして偏光板を作製し、接着力を評価した。結果を表1に示した。
[比較例4]
浸漬する水を、 pH8.5、温度30℃に調整した濃度2%のヨウ化カリウム水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水(ヨウ化カリウム水溶液)への浸漬及び水分除去後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。表1中、「水の状態」の欄にある「KI溶液」は、ヨウ化カリウム水溶液を意味する。以下の比較例5〜7においても同様である。
[比較例5]
ヨウ化カリウム水溶液に浸漬する処理を施した後の偏光フィルムを60℃のオーブンで4分間乾燥させたこと以外は、比較例4と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水(ヨウ化カリウム水溶液)への浸漬及び乾燥後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
[比較例6]
アセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムを、メタクリル酸メチル系樹脂にアクリル系ゴム粒子が30%配合された樹脂組成物から作製された厚さ80μm のアクリル系樹脂フィルムに変更する以外は、比較例4と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水(ヨウ化カリウム水溶液)への浸漬及び水分除去後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
[比較例7]
ヨウ化カリウム水溶液に浸漬する処理を施した後の偏光フィルムを60℃のオーブンで4分間乾燥させたこと以外は、比較例6と同様にして偏光板を作製した。偏光フィルムの水(ヨウ化カリウム水溶液)への浸漬及び乾燥後の外観評価、並びに偏光板における接着力評価の結果を表1に示した。
表1からわかるように、水への浸漬処理を行っていない偏光フィルムを用いた比較例1では、偏光フィルムとアセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムの間の接着力が低い。これに対し、偏光フィルムを水に浸漬する操作を行った後、接着剤を介して保護フィルムを貼合した実施例1〜5では、偏光フィルムとアセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムの間の接着力が格段に高まっている。また、水への浸漬時間が長くなるほど、接着力が高くなっていることがわかる。アセチルセルロース系樹脂からなる位相差フィルムを、シクロオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに変更した比較例2及び実施例6〜7、またアクリル系樹脂フィルムに変更した比較例3及び実施例8〜9でも、同様の結果が得られている。
一方、溶質(ヨウ化カリウム)を含む水を用いて浸漬処理を行った比較例4〜7では、水分除去後の偏光フィルムの外観が悪化していた。この外観変化は、水に含まれる溶質に起因していると考えられる。