JP2017054093A - 位相差層付偏光板および画像表示装置 - Google Patents

位相差層付偏光板および画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】リワーク性に優れた薄型の位相差層付偏光板を提供する。
【解決手段】位相差層付偏光板100は、偏光子11と偏光子11の少なくとも一方の側に保護層12とを含む偏光板10と、位相差層20と、偏光板10と位相差層20とを接着する第1の接着層30と、位相差層20の偏光板10と反対側の最外層として設けられた第2の接着層40とを有し、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の第2の接着層40の平均線膨張係数が38.0(×10−5/℃)以上であり、かつ、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の第1の接着層30の平均線膨張係数よりも大きい。
【選択図】図1

Description

本発明は、位相差層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置に関する。
近年、液晶表示装置および有機EL表示装置に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられているところ(例えば、特許文献1)、最近、画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴って、位相差層付偏光板についても薄型化の要望が強まっている。
ところで、位相差層付偏光板は、品質のばらつき防止および/または画像表示装置組み立ての効率化などを目的として、代表的には粘着剤または接着剤からなる接着層を予め付設した状態で液晶セルまたは有機ELセル(以下、まとめて表示セルと称する)に貼り合わせられる。この場合、表示セルへの貼り合わせ時に汚染物や気泡等の異物が混入するとその部分が視認障害となるため、貼り合わせミスとして位相差層付偏光板が表示セルより剥離・除去され、当該表示セルは再利用される。画像表示装置組み立てにおけるこのような作業はリワークと称される。
近年、液体窒素を用いてリワークを行う場合がある。偏光板の厚みが分厚い場合には、液体窒素リワークで表示セルと位相差層付偏光板とを剥離できなくても、人の手でリワークできるので問題とならない。一方で、偏光板の厚みが薄い場合には、人の手でリワークしようとすると位相差層付偏光板が破断してしまって剥離できないことが多く、液体窒素リワークで表示セルから良好に剥離できる薄型の位相差層付偏光板が望まれている。
特許第3325560号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、リワーク性に優れた薄型の位相差層付偏光板を提供することにある。
本発明の位相差層付偏光板は、偏光子と該偏光子の少なくとも一方の側に保護層とを含む偏光板と、位相差層と、該偏光板と該位相差層とを接着する第1の接着層と、該位相差層の該偏光板と反対側の最外層として設けられた第2の接着層と、を有する。本発明においては、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の該第2の接着層の平均線膨張係数が38.0(×10−5/℃)以上であり、かつ、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の該第1の接着層の平均線膨張係数よりも大きい。
1つの実施形態においては、上記位相差層付偏光板は、上記第2の接着層を除いた各層の合計厚みが140μm以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、ポリカーボネート系樹脂フィルムで構成されている。
1つの実施形態においては、上記位相差層付偏光板は、上記位相差層の外側に別の位相差層をさらに有する。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、液晶化合物の配向固化層である。
1つの実施形態においては、上記位相差層は、第1の液晶化合物の配向固化層と第2の液晶化合物の配向固化層との積層構造を有する。
1つの実施形態においては、上記位相差層付偏光板は、上記位相差層の外側に導電層または導電層付等方性基材をさらに有する。
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記の位相差層付偏光板を備える。
本発明によれば、薄型の位相差層付偏光板において、偏光板と位相差層とを接着する接着層の特定温度範囲にわたる平均線膨張係数を最適化し、かつ、当該平均線膨張係数と表示セルに貼り合わせるための最外層の接着層の特定温度範囲にわたる平均線膨張係数との関係を最適化することにより、リワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)における不具合(代表的には、偏光板から剥離した位相差層が表示セルに残ること)の発生が顕著に抑制され得る。
本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。 本発明の別の実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。 本発明のさらに別の実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
A.位相差層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。本実施形態の位相差層付偏光板100は、偏光板10と、位相差層20と、偏光板10と位相差層20とを接着する第1の接着層30と、位相差層20の偏光板10と反対側の最外層として設けられた第2の接着層40と、を有する。第2の接着層40は、位相差層付偏光板と画像表示装置の表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)とを接着する。偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の一方の側に配置された第1の保護層12と、偏光子11のもう一方の側に配置された第2の保護層13とを含む。目的に応じて、第1の保護層12および第2の保護層13の一方は省略されてもよい。例えば、位相差層20が偏光子11の保護層としても機能し得る場合には、第2の保護層13は省略されてもよい。
図2に示すように、別の実施形態による位相差層付偏光板101においては、別の位相差層50ならびに/あるいは導電層または導電層付等方性基材60が設けられてもよい。別の位相差層50ならびに導電層または導電層付等方性基材60は、代表的には、位相差層20の外側(偏光板10と反対側)に設けられる。別の位相差層50ならびに導電層または導電層付等方性基材60は、代表的には、位相差層20側からこの順に設けられる。別の位相差層50ならびに導電層または導電層付等方性基材60は、代表的には、必要に応じて設けられる任意の層であり、いずれか一方または両方が省略されてもよい。なお、便宜上、位相差層20を第1の位相差層と称し、別の位相差層50を第2の位相差層と称する場合がある。なお、導電層または導電層付等方性基材が設けられる場合、位相差層付偏光板は、表示セル(例えば、有機ELセル)と偏光板との間にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用され得る。
1つの実施形態においては、第1の位相差層20は樹脂フィルムで構成されている。別の実施形態においては、第1の位相差層20は液晶化合物の配向固化層であり得る。この実施形態においては、第1の位相差層20は単一層であってもよく、図3に示すような第1の配向固化層21と第2の配向固化層22との積層構造を有していてもよい。なお、樹脂フィルムについてはC−2項で、液晶化合物の配向固化層についてはC−3項でそれぞれ詳細に説明する。
上記の実施形態は適宜組み合わせてもよく、上記の実施形態における構成要素に当業界で自明の改変を加えてもよい。例えば、図3の位相差層付偏光板102に第2の位相差層50ならびに/あるいは導電層または導電層付等方性基材60が設けられてもよい。また例えば、第2の位相差層50の外側に導電層付等方性基材60を設ける構成を、光学的に等価な構成(例えば、第2の位相差層と導電層との積層体)に置き換えてもよい。
本発明の実施形態においては、第2の接着層40は、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の平均線膨張係数(以下、単に平均線膨張係数と称する場合がある)が38.0(×10−5/℃)以上であり、好ましくは39.0(×10−5/℃)以上であり、より好ましくは40.0(×10−5/℃)以上である。第2の接着層の平均線膨張係数の上限は、例えば200(×10−5/℃)である。第2の接着層の平均線膨張係数がこのような範囲であれば、リワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)において、位相差層付偏光板が表示セルから良好に剥離され得る。さらに、第2の接着層の平均線膨張係数は、第1の接着層の平均線膨張係数よりも大きい。このように設定することにより、リワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)において、偏光板10と第1の位相差層20との剥離が良好に防止され、かつ、表示セルと位相差層付偏光板とが良好に剥離されるので、リワークにおける不具合(代表的には、偏光板から剥離した位相差層が表示セルに残ること)の発生が顕著に抑制され得る。第1の接着層の平均線膨張係数と第2の接着層の平均線膨張係数との差は、好ましくは1.5(×10−5/℃)以上であり、より好ましくは2.0(×10−5/℃)〜4.0(×10−5/℃)である。平均線膨張係数の差がこのような範囲であれば、リワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)における不具合をさらに顕著に抑制することができる。なお、平均線膨張係数は、JIS K 7197に準じたTMA測定により決定され得る。
位相差層付偏光板の総厚みは、好ましくは140μm以下であり、より好ましくは50μm〜135μmであり、さらに好ましくは55μm〜80μmである。位相差層付偏光板の厚みが非常に薄い場合にリワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)における不具合の発生が顕著であるところ、本発明によれば、位相差層付偏光板の厚みがこのように非常に薄い場合であっても不具合の発生をきわめて良好に抑制することができる。なお、位相差層付偏光板の総厚みとは、第2の接着層40を除き、位相差層付偏光板を構成するすべての層の厚みの合計をいう。
以下、位相差層付偏光板を構成する各層、光学フィルム、接着剤および粘着剤について、より詳細に説明する。
B.偏光板
B−1.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012−73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは1μm〜12μmであり、さらに好ましくは3μm〜12μmであり、特に好ましくは3μm〜8μmである。本発明によれば、偏光子(結果として、位相差層付偏光板)が非常に薄くても、リワーク(特に、液体窒素を用いる低温でのリワーク)における不具合の発生を顕著に抑制することができる。また、偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
偏光子のホウ酸含有量は、好ましくは18重量%以上であり、より好ましくは18重量%〜25重量%である。偏光子のホウ酸含有量がこのような範囲であれば、後述のヨウ素含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。ホウ酸含有量は、例えば、中和法から下記式を用いて、単位重量当たりの偏光子に含まれるホウ酸量として算出することができる。
偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは2.1重量%以上であり、より好ましくは2.1重量%〜3.5重量%である。偏光子のヨウ素含有量がこのような範囲であれば、上記のホウ酸含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。本明細書において「ヨウ素含有量」とは、偏光子(PVA系樹脂フィルム)中に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はヨウ素イオン(I)、ヨウ素分子(I)、ポリヨウ素イオン(I 、I )等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素含有量は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の量を意味する。ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析の検量線法により算出することができる。なお、ポリヨウ素イオンは、偏光子中でPVA−ヨウ素錯体を形成した状態で存在している。このような錯体が形成されることにより、可視光の波長範囲において吸収二色性が発現し得る。具体的には、PVAと三ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は470nm付近に吸光ピークを有し、PVAと五ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I )は600nm付近に吸光ピークを有する。結果として、ポリヨウ素イオンは、その形態に応じて可視光の幅広い範囲で光を吸収し得る。一方、ヨウ素イオン(I)は230nm付近に吸光ピークを有し、可視光の吸収には実質的には関与しない。したがって、PVAとの錯体の状態で存在するポリヨウ素イオンが、主として偏光子の吸収性能に関与し得る。
偏光子は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、上記のとおり43.0%〜46.0%であり、好ましくは44.5%〜46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
B−2.第1の保護層
第1の保護層12は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
本発明の位相差層付偏光板は、後述するように代表的には画像表示装置の視認側に配置され、第1の保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、第1の保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、第1の保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
第1の保護層の厚みは、上記所望の偏光板の厚みおよび第2の保護層との厚みの差が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。第1の保護層の厚みは、例えば10μm〜50μmであり、好ましくは15μm〜40μmである。なお、表面処理が施されている場合、第1の保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
B−3.第2の保護層
第2の保護層13もまた、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料は、第1の保護層に関して上記B−2項で説明したとおりである。第2の保護層13は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。
第2の保護層の厚みは、例えば15μm〜35μmであり、好ましくは20μm〜30μmである。第1の保護層の厚みと第2の保護層の厚みとの差は、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。厚みの差がこのような範囲であれば、貼り合わせ時のカールを良好に抑制することができる。第1の保護層の厚みと第2の保護層の厚みとは、同一であってもよく、第1の保護層の方が分厚くてもよく、第2の保護層の方が分厚くてもよい。代表的には、第2の保護層よりも第1の保護層の方が分厚い。
C.第1の位相差層
C−1.第1の位相差層の特性
第1の位相差層20は、目的に応じて任意の適切な光学的特性および/または機械的特性を有し得る。第1の位相差層20は、代表的には遅相軸を有する。1つの実施形態においては、第1の位相差層20の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度θは、好ましくは38°〜52°であり、より好ましくは42°〜48°であり、さらに好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、後述するように第1の位相差層をλ/4板とすることにより、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する位相差層付偏光板が得られ得る。
第1の位相差層は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。第1の位相差層は、代表的には偏光板に反射防止特性を付与するために設けられ、1つの実施形態においてはλ/4板として機能し得る。この場合、第1の位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは80nm〜200nm、より好ましくは100nm〜180nm、さらに好ましくは110nm〜170nmである。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
第1の位相差層のNz係数は、好ましくは0.9〜3、より好ましくは0.9〜2.5、さらに好ましくは0.9〜1.5、特に好ましくは0.9〜1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる位相差層付偏光板を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
第1の位相差層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1未満であり、より好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
第1の位相差層は、光弾性係数の絶対値が好ましくは2×10−11/N以下、より好ましくは2.0×10−13/N〜1.5×10−11/N、さらに好ましくは1.0×10−12/N〜1.2×10−11/Nの樹脂を含む。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、加熱時の収縮応力が発生した場合に位相差変化が生じにくい。その結果、得られる画像表示装置の熱ムラが良好に防止され得る。
C−2.樹脂フィルムで構成される第1の位相差層
第1の位相差層が樹脂フィルムで構成される場合、その厚みは、好ましくは60μm以下であり、好ましくは30μm〜55μmである。第1の位相差層の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、貼り合わせ時のカールを良好に調整することができる。
第1の位相差層20は、上記C−1項に記載の特性を満足し得る任意の適切な樹脂フィルムで構成され得る。そのような樹脂の代表例としては、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。第1の位相差層が逆分散波長特性を示す樹脂フィルムで構成される場合、ポリカーボネート系樹脂が好適に用いられ得る。
上記ポリカーボネート樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、本発明に好適に用いられ得るポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば、特開2014−10291号公報、特開2014−26266号公報に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上150℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上140℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性があり、又、得られる有機ELパネルの画像品質を下げる場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、又フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
前記ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。還元粘度の下限は、通常0.30dL/gが好ましく、より好ましは0.35dL/g以上である。還元粘度の上限は、通常1.20dL/gが好ましく、より好ましくは1.00dL/g、更に好ましくは0.80dL/gである。還元粘度が前記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる場合がある。一方、還元粘度が前記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下するという問題が生じる場合がある。
ポリカーボネート系樹脂フィルムとして市販のフィルムを用いてもよい。市販品の具体例としては、帝人社製の商品名「ピュアエースWR−S」、「ピュアエースWR−W」、「ピュアエースWR−M」、日東電工社製の商品名「NRF」が挙げられる。
第1の位相差層20は、例えば、上記ポリカーボネート系樹脂から形成されたフィルムを延伸することにより得られる。ポリカーボネート系樹脂からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、位相差層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。なお、上記のとおり、ポリカーボネート系樹脂は、多くのフィルム製品が市販されているので、当該市販フィルムをそのまま延伸処理に供してもよい。
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、第1の位相差層の所望の厚み、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm〜300μmである。
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、長さ方向、幅方向、厚さ方向、斜め方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg−30℃〜Tg+60℃であることが好ましく、より好ましくはTg−10℃〜Tg+50℃である。
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルムを得ることができる。
1つの実施形態においては、位相差フィルムは、樹脂フィルムを一軸延伸もしくは固定端一軸延伸することにより作製される。固定端一軸延伸の具体例としては、樹脂フィルムを長手方向に走行させながら、幅方向(横方向)に延伸する方法が挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍〜3.5倍である。
別の実施形態においては、位相差フィルムは、長尺状の樹脂フィルムを長手方向に対して上記の角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより作製され得る。斜め延伸を採用することにより、フィルムの長手方向に対して角度θの配向角(角度θの方向に遅相軸)を有する長尺状の延伸フィルムが得られ、例えば、偏光子との積層に際してロールトゥロールが可能となり、製造工程を簡略化することができる。なお、角度θは、位相差層付偏光板において偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とがなす角度であり得る。角度θは、上記のとおり、好ましくは38°〜52°であり、より好ましくは42°〜48°であり、さらに好ましくは約45°である。
斜め延伸に用いる延伸機としては、例えば、横および/または縦方向に、左右異なる速度の送り力もしくは引張り力または引き取り力を付加し得るテンター式延伸機が挙げられる。テンター式延伸機には、横一軸延伸機、同時二軸延伸機等があるが、長尺状の樹脂フィルムを連続的に斜め延伸し得る限り、任意の適切な延伸機が用いられ得る。
上記延伸機において左右の速度をそれぞれ適切に制御することにより、上記所望の面内位相差を有し、かつ、上記所望の方向に遅相軸を有する位相差層(実質的には、長尺状の位相差フィルム)が得られ得る。
上記フィルムの延伸温度は、位相差層に所望される面内位相差値および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、好ましくはTg−30℃〜Tg+30℃、さらに好ましくはTg−15℃〜Tg+15℃、最も好ましくはTg−10℃〜Tg+10℃である。このような温度で延伸することにより、本発明において適切な特性を有する第1の位相差層が得られ得る。なお、Tgは、フィルムの構成材料のガラス転移温度である。
C−3.液晶化合物の配向固化層で構成される第1の位相差層
第1の位相差層20は、液晶化合物の配向固化層であってもよい。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、位相差層付偏光板のさらなる薄型化を実現することができる。第1の位相差層20が液晶化合物の配向固化層で構成される場合、その厚みは、好ましくは0.5μm〜7μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。液晶化合物を用いることにより、樹脂フィルムよりも格段に薄い厚みで樹脂フィルムと同等の面内位相差を実現することができる。
本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。本実施形態においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1の位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第1の位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第1の位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃〜120℃であり、さらに好ましくは50℃〜100℃であり、最も好ましくは60℃〜90℃である。
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002−533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker−Chem社の商品名LC−Sillicon−CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
液晶化合物の配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された配向固化層は、偏光板10の表面に転写され得る。別の実施形態においては、基材は第2の保護層13であり得る。この場合には転写工程が省略され、配向固化層(第1の位相差層)の形成から連続してロールトゥロールにより積層が行われ得るので、生産性がさらに向上する。
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006−163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
1つの実施形態においては、配向固化層は、図3に示すように第1の配向固化層21と第2の配向固化層22との積層構造を有し得る。この場合、第1の配向固化層21および第2の配向固化層22のいずれか一方がλ/4板として機能し、他方がλ/2板として機能し得る。したがって、第1の配向固化層21および第2の配向固化層22の厚みは、λ/4板またはλ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。例えば、第1の配向固化層21がλ/4板として機能し、第2の配向固化層22がλ/2板として機能する場合、第1の配向固化層21の厚みは例えば1μm〜1.3μmであり、第2の配向固化層22の厚みは例えば1.9μm〜2.1μmである。第1の配向固化層21および第2の配向固化層22は、それぞれの遅相軸が例えば50°〜70°、好ましくは約60°の角度をなすようにして積層され得る。このような構成であれば、理想的な逆波長分散特性に近い特性を得ることが可能であり、結果として、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
D.接着層
D−1.第1の接着層および第2の接着層
第1の接着層および第2の接着層はそれぞれ、平均線膨張係数が上記A項に記載の関係を満足する限り、任意の適切な接着剤または粘着剤で構成され得る。
接着剤は、好ましくは、透明性および光学的等方性を有する。接着剤の形態としては、任意の適切なものが採用され得る。具体例としては、水性接着剤、溶剤型接着剤、エマルション系接着剤、無溶剤型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、電子線硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、可視光線硬化型接着剤が挙げられる。水性接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤が好適に用いられ得る。
水性接着剤の具体例としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステルが挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系接着剤であり、さらに好ましくはアセトアセチル基を有するポリビニルアルコールを主成分とする接着剤である。このような接着剤は市販されており、市販品の具体例としては日本合成化学(株)製(商品名「ゴーセファイマーZ」)が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。好ましい(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、下記式(1)で表されるN−置換アミド系モノマーが挙げられる。
CH=C(R)−CONH2−m−(X−O−R (1)
ここで、Rは水素原子またはメチル基を示し、Xは−CH−基または−CHCH−基を示し、Rは−(CH−H基(ただし、nは0,1または2)を示し、mは1または2を示す。
上記(メタ)アクリレート系接着剤は、硬化性成分として、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマー、好ましくは多官能(メタ)アクリレート系モノマーをさらに含有し得る。より好ましくは、2個以上の炭素−炭素二重結合を有するモノマーは疎水性である。また、上記(メタ)アクリレート系接着剤は、硬化性成分として、各種の芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを含有し得る。
上記(メタ)アクリレート系接着剤は、任意の適切な共重合成分を含有してもよい。
上記の水性接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤の詳細については、例えば、特開2011−81539号公報の[0057]−[0089]に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
活性エネルギー線硬化型接着剤の別の具体例としては、エポキシ化合物と光酸発生剤とを主体とする光カチオン型硬化性接着剤が挙げられる。使用可能なエポキシ化合物としては、例えば特開2010−145537の[0031]−[0085]に記載の化合物が挙げられる。また、光酸発生剤としては、例えば特開2009−013316の[0080]−[0095]に記載の化合物が挙げられる。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
粘着剤は、任意の適切な粘着性ポリマーを含有する。粘着性ポリマーとしては、粘着性能のバランスが取りやすいという観点から、Tgが0℃以下(通常−100℃以上)のポリマーが好ましい。このようなポリマーのなかでも、ポリエステル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマーが好適に用いられる。
ポリエステル系ポリマーとしては、代表的には、多価アルコールと多価カルボン酸との飽和ポリエステルまたはコポリエステルが用いられ得る。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジオールが挙げられる。多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。多価カルボン酸としては、2種以上の多価カルボン酸、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを併用する場合が多い。
(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1〜18のものを例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3〜9であるのが好ましい。また、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートは、これを重合したポリマーを上記例示の(メタ)アクリル系ポリマーに混合して用いてもよく、上記アルキル(メタ)アクリレートと共重合して用いてもよい。透明性の観点から、共重合が好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、重合性官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合)を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入してもよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー中には、上記共重合モノマー以外の任意の適切な共重合モノマーを共重合により導入してもよい。このような共重合モノマーの種類、数、共重合比等は目的に応じて適切に設定され得る。
(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
粘着剤には、架橋剤を含有することできる。架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤などが挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤および過酸化物形架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートが挙げられる。
過酸化物型架橋剤としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば任意の適切なものが使用可能である。作業性および安定性を考慮すると、過酸化物型架橋剤の1分間半減期温度は、好ましくは80℃〜160℃であり、より好ましくは90℃〜140℃である。架橋剤として用いることができる過酸化物の具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)が挙げられる。
粘着剤には、添加剤としてシランカップリング剤が配合され得る。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3−クロロプロピルトリメトキシシラン;アセトアセチル基含有トリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤が挙げられる。
粘着剤の詳細については、例えば、特開2012−247517号公報の[0023]−[0080]に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
接着剤および粘着剤のモノマー成分の種類、数、共重合比、架橋剤の種類、添加剤の種類、数、配合量等を調整することにより、所望の線膨張係数を有する接着剤および粘着剤が得られ得る。したがって、所望の線膨張係数の関係を有する第1の接着層および第2の接着層を形成することができる。
第1の接着層30の厚みは、好ましくは0.05μm〜30μmであり、より好ましくは0.5μm〜20μmである。第2の接着層40の厚みは、好ましくは10μm〜30μmであり、より好ましくは12μm〜20μmである。
D−2.その他の接着層
本発明の位相差層付偏光板を構成する各層の積層に用いられる他の接着層(図示せず)は、任意の適切な接着剤または粘着剤で構成され得る。好ましくは、他の接着層の平均線膨張係数は、第2の接着層の平均線膨張係数よりも小さい。
E.第2の位相差層
第2の位相差層50は、目的に応じて任意の適切な光学的特性を有し得る。1つの実施形態においては、第2の位相差層は、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。第2の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。この場合、第2の位相差層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは−50nm〜−300nm、より好ましくは−70nm〜−250nm、さらに好ましくは−90nm〜−200nm、特に好ましくは−100nm〜−180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、第2の位相差層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
nz>nx=nyの屈折率特性を有する第2の位相差層は、任意の適切な材料で形成され得る。第2の位相差層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002−333642号公報の[0020]〜[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、第2の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm〜10μmであり、より好ましくは0.5μm〜8μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜5μmである。
F.導電層または導電層付等方性基材
導電層は、任意の適切な成膜方法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等)により、任意の適切な基材上に、金属酸化物膜を成膜して形成され得る。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物が挙げられる。なかでも好ましくは、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)である。
導電層が金属酸化物を含む場合、該導電層の厚みは、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは35nm以下である。導電層の厚みの下限は、好ましくは10nmである。
導電層は、上記基材から第1の位相差層(または、存在する場合には第2の位相差層)に転写されて導電層単独で位相差層付偏光板の構成層とされてもよく、基材との積層体(導電層付基材)として第1の位相差層(または、存在する場合には第2の位相差層)に積層されてもよい。好ましくは、上記基材は光学的に等方性であり、したがって、導電層は導電層付等方性基材として位相差層付偏光板に用いられ得る。
光学的に等方性の基材(等方性基材)としては、任意の適切な等方性基材を採用し得る。等方性基材を構成する材料としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やオレフィン系樹脂などの共役系を有さない樹脂を主骨格としている材料、ラクトン環やグルタルイミド環などの環状構造をアクリル系樹脂の主鎖中に有する材料などが挙げられる。このような材料を用いると、等方性基材を形成した際に、分子鎖の配向に伴う位相差の発現を小さく抑えることができる。等方性基材の厚みは、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは35μm以下である。等方性基材の厚みの下限は、例えば20μmである。
上記導電層および/または上記導電層付等方性基材の導電層は、必要に応じてパターン化され得る。パターン化によって、導通部と絶縁部とが形成され得る。結果として、電極が形成され得る。電極は、タッチパネルへの接触を感知するタッチセンサ電極として機能し得る。パターニング方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。パターニング方法の具体例としては、ウエットエッチング法、スクリーン印刷法が挙げられる。
G.その他
本発明の実施形態による位相差層付偏光板は、その他の位相差層をさらに含んでいてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
実用的には、第2の接着層40の表面には、位相差層付偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが貼り合わされていることが好ましい。
H.画像表示装置
上記A項からG項に記載の位相差層付偏光板は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明は、そのような位相差層付偏光板を用いた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、その視認側に上記A項からG項に記載の位相差層付偏光板を備える。位相差層付偏光板は、位相差層が表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)側となるように(偏光子が視認側となるように)積層されている。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚み
塗布形成された位相差層(液晶化合物の配向固化層)については、大塚電子製MCPD2000を用いて干渉膜厚測定法によって測定した。その他のフィルムについては、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC−351C)を用いて測定した。
(2)平均線膨張係数
エスアイアイ・ナノテクノロジー製のTMA(SS7100)を用いて、実施例および比較例で用いたそれぞれの接着層形成用溶液を厚みが約100μmのフィルムとなるよう製膜し、そのフィルムを約6mm角に切削して試料台に設置し、JIS K 7197に準じてTMA(圧縮膨張法)測定を行った。測定荷重は19.6mN、プローブ径は3.5mmφ、昇温速度は5℃/分で−150℃から20℃の範囲で測定を行い、得られた寸法変化のデータからこの範囲の平均線膨張係数を算出した。
(3)位相差層の位相差値
実施例および比較例で用いた位相差層の屈折率nx、nyおよびnzを、自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA−WPR)により計測した。面内位相差Reの測定波長は450nmおよび550nmであり、厚み方向位相差Rthの測定波長は550nmであり、測定温度は23℃であった。
(4)リワーク性
三星無線社製のスマートフォン(Galaxy−S5)を分解して有機ELパネルを取り出した。次いで、実施例および比較例で得られた位相差層付偏光板を当該パネルのサイズに合うように切り出し、貼り合わせた。位相差層付偏光板が貼り合されたパネルを液体窒素中に30秒間浸漬した後、取り出して位相差層付偏光板が剥離されているか否かを確認した。各実施例および比較例について、位相差層付偏光板が貼り合されたパネルをそれぞれ20枚ずつ作製して評価を行った。以下の基準で評価した。
良好:20個のパネルすべてについて位相差層付偏光板が良好に剥離
不良:少なくとも1個のパネルについて剥離されなかった位相差層付偏光板が存在する
[参考例1:偏光板の作製]
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長尺方向に5.9倍になるように長尺方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子1を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子1を得た。
得られた偏光子1の両面に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、コニカミノルタ株式会社製のTACフィルム(製品名:KC2UA、厚み:25μm、第2の保護層に対応する)及び当該TACフィルムの片面にハードコート処理により形成されたハードコート(HC)層を有するHC−TACフィルム(厚み:32μm、第1の保護層に対応する)をそれぞれ貼り合わせて、第1の保護層/偏光子1/第2の保護層の構成を有する偏光板1を得た。
[参考例2:位相差層を構成する位相差フィルムの作製]
2−1.ポリカーボネート樹脂フィルムの作製
イソソルビド(ISB)26.2質量部、9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)100.5質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)10.7質量部、ジフェニルカーボネート(DPC)105.1質量部、および、触媒として炭酸セシウム(0.2質量%水溶液)0.591質量部をそれぞれ反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、反応容器の熱媒温度を150℃にし、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
次いで、反応容器内の圧力を常圧から13.3kPaにし、反応容器の熱媒温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器内温度を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、反応容器の熱媒温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に減圧した。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出した後に、ペレット化を行い、BHEPF/ISB/1,4−CHDM=47.4モル%/37.1モル%/15.5モル%のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は136.6℃であり、還元粘度は0.395dL/gであった。
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120〜130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み120μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
2−2.位相差フィルムの作製
テンター延伸機を用いて、得られたポリカーボネート樹脂フィルムを横延伸し、厚み50μmの位相差フィルムを得た。その際、延伸倍率は250%であり、延伸温度を137〜139℃とした。
得られた位相差フィルムのRe(550)は137〜147nmであり、Re(450)/Re(550)は0.89であり、Nz係数は1.21であり、配向角(遅相軸の方向)は長尺方向に対し90°であった。この位相差フィルムを位相差層1として用いた。
[参考例3:位相差層を構成する液晶配向固化層の作製]
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の条件は、ラビング回数(ラビングロール個数)が1、ラビングロール半径rが76.89mm、ラビングロール回転数nrが1500rpm、フィルム搬送速度vが83mm/secであり、ラビング強度RSおよび押し込み量Mは表1に示すような5種類の条件(a)〜(e)で行った。
配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て−75°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。条件(a)〜(c)では液晶化合物の配向状態が非常に良好であった。条件(d)および(e)では液晶化合物の配向に若干の乱れが生じたが、実用上は問題のないレベルであった。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に位相差層(液晶配向固化層)2を形成した。位相差層2の厚みは2μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、位相差層2は、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
[参考例4:位相差層を構成する液晶配向固化層の作製]
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て−15°方向となるようにした。この配向処理表面に、参考例3と同様の液晶塗工液を塗工し、参考例3と同様にして液晶化合物を配向および硬化させて、PETフィルム上に位相差層3を形成した。位相差層3の厚みは1.2μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、位相差層3は、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
[参考例5:接着層の作製]
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル99部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル1.0部および2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.3部を酢酸エチルと共に加えた。反応容器中の混合物を、窒素ガス気流下、60℃で4時間反応させた後、当該反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量165万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30%)を得た。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.15部のジベンゾイルパーオキシド(日本油脂製(株):ナイパーBO−Y)と、0.1部のトリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株):タケネートD110N)と、0.2部のシランカップリング剤(綜研化学株式会社製:A−100,アセトアセチル基含有シランカップリング剤)とを配合して、接着層形成用溶液を得た。上記接着層形成用溶液を、シリコーン系剥離剤で表面処理したポリエステルフィルムからなるセパレータに塗工し、155℃で3分間加熱処理して厚さ15μmの接着層Aを得た。
[参考例6:接着層の作製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部およびアクリル酸4−ヒドロキシブチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液(固形分濃度30%)を調製した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業製)0.2部を配合し、さらに、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM−403)0.075部を配合して、接着層形成用溶液を調製した。次いで、この接着層形成用溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ15μmの接着層Bを形成した。
[参考例7:接着層の作製]
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル94.9部、アクリル酸5部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル0.1部、ならびに、これらのモノマー(固形分)100部に対して0.3部のベンゾイルパーオキサイドを酢酸エチルと共に加えた。反応容器中の混合物を、窒素ガス気流下、60℃で7時間反応させた後、当該反応液に酢酸エチルを加えて、重量平均分子量220万のアクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30重量%)を得た。上記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部あたり0.6部のトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製:コロネートL)と、0.075部のγ−グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業(株)製:KBM−403)を配合して、接着層形成用溶液を得た。上記接着層形成用溶液を、シリコーン系剥離剤で表面処理したポリエステルフィルムからなるセパレータに塗工し、155℃で3分間加熱処理して厚さ15μmの接着層Cを得た。
[参考例8:接着層を構成する接着剤の作製]
単官能ラジカル重合性化合物として、ヒドロキシエチルアクリルアミド(興人社製、logP=−0.56、ホモポリマーのTg=123℃)10部およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(日立化成社製、logP=1.13、ホモポリマーのTg=45℃)10部と、単官能ラジカル重合性化合物として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレートDCP−A」、logP=3.05、ホモポリマーのTg=134℃)80部と、ラジカル重合開始剤として、IRGACURE 907を3部およびKAYACURE DETX−Sを3部と、を混合し、50℃で1時間撹拌して、活性エネルギー線硬化型接着剤(接着層Dを形成する接着剤)を得た。
[実施例1]
偏光板1の第2の保護層面と位相差層1とを、偏光子の吸収軸と位相差層の遅相軸とのなす角度が45°となるように接着層Bを介して貼り合わせ、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板1の位相差層面に接着層Aを最外層として貼り合わせ、位相差層付偏光板1とした。得られた位相差層付偏光板1を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。その結果、作製した20個のパネルすべてにおいて、位相差層付偏光板1が良好に剥離された。結果を表2に示す。
[実施例2]
偏光板1と位相差層1との貼り合わせに接着層Cを用いたこと、および、最外層として接着層Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板2を得た。得られた位相差層付偏光板2を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。結果を表2に示す。
[比較例1]
偏光板1と位相差層1との貼り合わせに接着層Bを用いたこと、および、最外層として接着層Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板3を得た。得られた位相差層付偏光板3を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。結果を表2に示す。
[比較例2]
シクロオレフィン系の位相差フィルムA(カネカ社製、製品名「KUZ−フィルム#270」、厚み33μm、Re(550)=270nm、Re(450)/Re(550)=1.00、Nz係数=1.00)とシクロオレフィン系の位相差フィルムB(カネカ社製、製品名「KUZ−フィルム#140」、厚み28μm、Re(550)=140nm、Re(450)/Re(550)=1.00、Nz係数=1.00)とを、それぞれの遅相軸のなす角度が60°となるように厚みが5μmのアクリル系接着層を介して貼り合せて位相差層4を作製した。
偏光板1の第2の保護層面と位相差層4とを、偏光子の吸収軸と位相差フィルムAの遅相軸とのなす角度が15°となり、偏光子の吸収軸と位相差フィルムBの遅相軸とのなす角度が75°となるように接着層Bを介して貼り合わせ、位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板1の位相差層面に接着層Cを最外層として貼り合わせ、位相差層付偏光板4とした。得られた位相差層付偏光板4を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。結果を表2に示す。
[実施例3]
偏光板1の第2の保護層面と位相差層2とを、参考例8で得られた活性エネルギー線硬化型接着剤(接着層D)を介して貼り合わせたこと、および、位相差層として位相差層2と位相差層3の2層を用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板5を得た。具体的には以下のとおりである:PETフィルム/位相差層2の積層体の位相差層2上に、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化後の厚み1.0がμm程度になるように塗工した後、ロール貼合せ機を用いて偏光板1と貼り合せた。その後、位相差層2側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、さらに、活性エネルギー線として可視光線(ガリウム封入メタルハライドランプ)を位相差層2側から照射して接着剤を硬化させた。その結果、偏光子の吸収軸と位相差層2の遅相軸とのなす角度が15°となった。なお、活性エネルギー線照射装置としてFusion UV Systems,Inc社製「Light Hammer10」を、バルブとしてVバルブを使用した。ピーク照度は1600mW/cmであり、積算照射量は1000mJ/cm(波長380〜440nm)であった。可視光線の照度は、Solatell社製のSola−Checkシステムを使用して測定した。次いで、PETフィルムを剥離し、当該剥離面に位相差層3を、位相差層2と同様にして貼り合わせた。その結果、偏光子の吸収軸と位相差層3の遅相軸とのなす角度が75°となった。さらに、位相差層3が形成されていたPETフィルムを剥離し、偏光板/位相差層2/位相差層3の構成を有する位相差層付偏光板を得た。得られた位相差層付偏光板の位相差層3面に接着層Aを最外層として貼り合わせ、位相差層付偏光板5とした。
得られた位相差層付偏光板5を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。結果を表2に示す。
[比較例3]
偏光板1と位相差層1との貼り合わせに接着層Aを用いたこと以外は実施例1と同様にして位相差層付偏光板6を得た。得られた位相差層付偏光板6を、上記(4)にしたがってリワーク性の評価に供した。結果を表2に示す。
<評価>
表2から明らかなように、本発明の実施例の位相差層付偏光板は、液体窒素を用いた低音でのリワーク性に優れることがわかる。なお、比較例1の位相差層付偏光板は、低温でリワークできなかったフィルム(表示セルから剥離せず残った位相差層)を人の手で剥離しようとすると、フィルムが破断してしまいリワークすることができなかった。一方、比較例2の位相差層付偏光板は、低温でリワークできなかったフィルムを破断させることなく人の手で剥離することができた。
本発明の位相差層付偏光板は、液晶表示装置および有機EL表示装置のような画像表示装置に好適に用いられる。
10 偏光板
11 偏光子
12 第1の保護層
13 第2の保護層
20 位相差層(第1の位相差層)
30 第1の接着層
40 第2の接着層
50 別の位相差層(第2の位相差層)
100 位相差層付偏光板
101 位相差層付偏光板
102 位相差層付偏光板

Claims (8)

  1. 偏光子と該偏光子の少なくとも一方の側に保護層とを含む偏光板と、位相差層と、該偏光板と該位相差層とを接着する第1の接着層と、該位相差層の該偏光板と反対側の最外層として設けられた第2の接着層と、を有し
    周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の該第2の接着層の平均線膨張係数が38.0(×10−5/℃)以上であり、かつ、周囲温度を−150℃から20℃まで変化させた際の該第1の接着層の平均線膨張係数よりも大きい、
    位相差層付偏光板。
  2. 前記第2の接着層を除いた各層の合計厚みが140μm以下である、請求項1に記載の位相差層付偏光板。
  3. 前記位相差層が、ポリカーボネート系樹脂フィルムで構成されている、請求項1または2に記載の位相差層付偏光板。
  4. 前記位相差層の外側に別の位相差層をさらに有する、請求項3に記載の位相差層付偏光板。
  5. 前記位相差層が、液晶化合物の配向固化層である、請求項1または2に記載の位相差層付偏光板。
  6. 前記位相差層が、第1の液晶化合物の配向固化層と第2の液晶化合物の配向固化層との積層構造を有する、請求項1または2に記載の位相差層付偏光板。
  7. 前記位相差層の外側に導電層または導電層付等方性基材をさらに有する、請求項1から6のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の位相差層付偏光板を備える、画像表示装置。
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