JP2014198832A - 多孔性フィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】 未貫通孔が少なく、セパレータとして用いた際のセパレータ抵抗が低く、かつ多孔性フィルムの剛性が高いために耐熱保護層などの機能層の塗工性や電池組立工程適性に優れた多孔性フィルムを提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とし、表面開口率(S)と空孔率(P)の関係が下記式(1)を満たし、空孔率(P)の範囲が30〜70%である多孔性フィルムとする。
1.0 < 空孔率(P)/表面開口率(S) <1.2 ・・・(1)
【選択図】 図1
【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とし、表面開口率(S)と空孔率(P)の関係が下記式(1)を満たし、空孔率(P)の範囲が30〜70%である多孔性フィルムとする。
1.0 < 空孔率(P)/表面開口率(S) <1.2 ・・・(1)
【選択図】 図1
Description
本発明は、未貫通孔が少なく、セパレータとして用いた際のセパレータ抵抗が低く、フィルム剛性が高いために耐熱保護層などの機能層の塗工性や電池組立工程適性に優れ、電池特性にも優れた多孔性フィルムに関する。
多孔性フィルムは、蓄電デバイスや電解コンデンサーのセパレータや各種分離膜、衣料、医療用途における透湿防水膜、フラットパネルディスプレイの反射板や感熱転写記録シートなど多岐に亘る用途への展開が検討されている。中でも、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話、デジタルカメラなどのモバイル機器や、電気自動車、ハイブリッド車などに広く使用されているリチウムイオン電池用のセパレータとして、多孔性フィルムは好適である。
リチウムイオン電池用のセパレータは、一般的にリチウムイオン電池の電池寿命や信頼性を向上させるには、孔の構造を均一化することにより不均一な電気化学反応を低減させることが重要とされている。孔の構造を均一にする手段としては、孔径の均一化およびセパレータ性能に依存しない未貫通孔の低減が課題となる。貫通孔径は、バブルポイント測定や水銀圧入による測定により、貫通孔への流体圧流入量や圧入体積より求められるが、未貫通孔については、流体が浸入しないために、求めることが困難である。
未貫通部が存在しない場合は、貫通孔のみにて形成された多孔性フィルムは、フィルム体積に存在する空隙(空孔)は全て貫通孔にて形成されており、その時に求められる体積あたりの空孔率は、体積の微分により空孔表面積(表面開口率(S))となる。つまり、表面開口率(S)の総和は、体積あたりの空孔率(P)であり、未貫通孔が存在する場合は、体積あたりの空孔率(P)と表面開口率(S)の関係は、下記の式(2)におきかえることができる。
上述の式にて未貫通孔の関係は、完全な貫通孔のみで形成された場合は1であり、未貫通孔が増加するにともない値は1より大きくなる。つまり、体積あたりの空孔率(P)と表面開口率(S)の比(P/S)を1に近づけることは、未貫通孔の低減となり孔構造の均一であることを意味し、セパレータとして使用したときに不均一な電気化学反応を低減して電池寿命や信頼性を向上することができる。このような空孔率と表面開口率を制御する手法として数多く検討されている(たとえば特許文献1〜3)。
例えば、特許文献3にて記載された方法にて得られる表面開口率(S)と空孔率(P)の比(P/S)は、1.0〜1.6の範囲にあり良好である。しかし、セパレータの機能として異常時に電池の温度が上昇した際に、多孔性フィルムが溶融し開口部が閉塞することで、電子の授受をシャットダウン(SD)する機能が求められるが、上述のように熱可塑性樹脂を用いない場合は、SD機能を有していないためにSD性を求められるセパレータとしては、好適ではない。
セパレータ用の多孔性フィルムにおいては、生産性に優れ低コストであることに加え、セパレータ抵抗が低く出力特性が高いこと、フィルムの剛性が高く、耐熱保護層などの機能層の塗工性および電池組立工程適性に優れていること、さらには、多孔性フィルムの耐熱性が高く、異常時に電池の温度が上昇しても安全性が確保されることなどの特性が求められる。
一方、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンフィルムを多孔化する手法としては、様々な提案がなされており、大別すると湿式法と乾式法に分類することができる。
乾式法の中でも、かつ二軸延伸により製膜される多孔性ポリプロピレンフィルムとしては、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、所謂β晶法と呼ばれる方法の提案も数多くなされている(たとえば、特許文献4)。該方法は乾式の二軸延伸により製膜されるため生産性に優れ、特にβ晶法は、通常二軸延伸により空隙を形成することから、他の方法と比較して、高い空孔率を達成することができる。
例えば、特許文献4に記載の表面開口率(S)と空孔率(P)の比(P/S)は、表面開口率は70%であり、空孔率が77%であることから、表面開口率(S)と空孔率(P)の比(P/S)は、1.1である。しかしながら、高い空孔率を形成するとフィルムの開口率が高くフィブリルが多数存在するために、フィルムが重なり合わせたときにフィブリル同士が引っ掛かってしまう傾向があり、結果として摩擦係数が高くなり、加工工程での取り扱い性に支障をきたす場合がある。特許文献4に記載のように無配向ポリオレフィン層を塗布するこことで、すべり性を低下させる方法があるが、塗布後の表面開口性が低く、均一性に難があった。
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、蓄電デバイス用セパレータとして使用したとき、未貫通孔が少なく、セパレータとして用いた際のセパレータ抵抗が低く、フィルム剛性が高いために耐熱保護層などの機能層の塗工性や電池組立工程適性に優れ、電池特性にも優れた多孔性フィルムを提供することにある。
上記した課題は、熱可塑性樹脂を主成分とし、表面開口率(S)と空孔率(P)の関係が下記式(1)を満足し、空孔率(P)の範囲が30〜70%である多孔性フィルムにより解決可能である。
1.0 < 空孔率(P)/表面開口率(S) <1.2 ・・・(1)
本発明の多孔性フィルムは、セパレータとして用いた際に、未貫通孔が少ないために、セパレータ抵抗が低く、フィルム剛性が高いために耐熱保護層などの機能層の塗工性および電池組立工程適性に優れるため、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に使用することができる。
本発明の多孔性フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分としている。ここで、主成分とするとは、多孔性フィルムを構成する全成分中に占める熱可塑性樹脂の割合が50質量%以上であることを意味し、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本発明の多孔性フィルムは、フィルムの両表面を貫通し、透気性を有する孔(以下、貫通孔という)を有している。この貫通孔を有する多孔性フィルムを得る方法としては、上記の特性を満たしていれば、製法や材質は特に限定されず、例えば製法としてはβ晶法やラメラ延伸法など乾式法、抽出法、更にはフィルムを製膜後にレーザーなどを利用して物理的に貫通孔を開ける方法などを用いることができ、材質としてはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートなどを採用することができるが、材質は、材料コストを低減できセパレータを低価格で製造でき、セパレータの機能として異常時に電池の温度が上昇した際に、多孔性フィルムが溶融し開口部が閉塞することで、電子の授受をシャットダウン(SD)する機能を有する観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましく、特に好ましい熱可塑性樹脂としてはポリプロピレン樹脂が挙げられる。ポリプロピレン樹脂を主成分とすることにより、蓄電デバイス用セパレータとして使用する際に電池の短絡を防ぐために必要な耐熱性を満足せしめることができる。
本発明の多孔性フィルムは、貫通孔を形成する方法としては、上述した抽出法、ラメラ延伸法、β晶法などが挙げられるが、生産性、長手方向と幅方向の物性の均一性の観点から、β晶法によることが好ましい。
ここで、β晶法とは、結晶構造としてβ晶を有するポリプロピレン樹脂のキャストシートを用い、該キャストシートを縦延伸することにより、β晶の結晶構造をα晶に転移させるとともに、製膜方向に配向したα晶のフィブリル状物を形成させ、そのフィブリル状物を横延伸工程において開裂させて網目構造を形成させることにより、貫通孔を有するフィルムを得る手法である。ここで、キャストシートとは、溶融したポリプロピレン樹脂をキャストドラム上でシート状に成型した、未延伸のシートを意味する。β晶法においては、多孔性ポリプロピレンフィルムの物性を向上させるために、ポリプロピレン樹脂にβ晶核剤を添加しβ晶形成能を高めることが好ましい。β晶形成能が高いことにより、α晶への結晶転移を起こす結晶構造の部分が多くなり、フィルム中に形成される空隙の数を増加させることができる。また、β晶核剤を含む原料制御により、ポリプロピレン結晶の配向性、緻密性を向上させ、孔を均一かつ緻密に開孔させることにより、多孔性ポリプロピレンフィルムを蓄電デバイス用セパレータとして用いた際のセパレータ抵抗の低減を達成することができる。また、開孔状態の均一性を向上させることにより、粗大孔を減少させ、弾性率や引張伸度などの機械物性を向上させることができる。これらのβ晶法におけるセパレータ抵抗の低減と機械特性の向上は、後述する原料を用い、特定の製膜条件で製膜を行うことにより達成することができる。
つぎに本発明の多孔性フィルムに用いる原料について説明する。
本発明において、多孔性フィルムのβ晶形成能は、貫通孔の形成性の観点から60%以上であることが好ましい。より好ましくは65〜90%であり、65〜85%が特に好ましい。β晶形成能が60%未満の場合、β晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、フィルムのセパレータ抵抗に劣る場合がある。β晶形成能を60%以上に制御する方法としては、アイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂を使用する方法、β晶核剤と呼ばれる、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤を添加剤として用いる方法があるが、本発明においては、後述するβ晶核剤を使用する方法、またはアイソタクチックインデックスの高いポリプロピレン樹脂に後述するβ晶核剤を添加剤として用いる方法によることが好ましい。
本発明で用いるβ晶核剤としては、たとえば、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、コハク酸マグネシウムなどのカルボン酸のアルカリあるいはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドに代表されるアミド系化合物、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのテトラオキサスピロ化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、イミドカルボン酸誘導体、キナクリドン系顔料を挙げることができるが、特に特開平5−310665号公報に開示されているアミド系化合物を用いることが好ましい。また、β晶核剤の含有量としては使用するβ晶核剤によって異なるが、上記アミド系化合物を使用する場合には、ポリプロピレン組成物全体を基準とした場合に、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であればより好ましく、後述する効果を有するためには0.22〜0.3質量%であれば特に好ましい。0.05質量%未満では、β晶の形成が不十分となり、多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗が増大する場合がある。また、0.5質量%を超えると、β晶核剤の凝集などによりフィルムに粗大ボイドが形成され、弾性率、突刺強度、引張強度などの機械強度が低下する場合がある。
本発明においては、ポリプロピレン樹脂として、メルトフローレート(以下、MFRと表記する)が2〜30g/10分のアイソタクチックポリプロピレン樹脂を用いることが、押出成形性及び孔の均一な形成の観点から好ましい。ここで、MFRとはJIS K 7210(1995)で規定されている樹脂の溶融粘度を示す指標であり、ポリオレフィン樹脂の特徴を示す物性値である。本発明においては230℃、2.16kgで測定した値を指す。本発明においては、結晶性の観点からポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスは90〜99.9%の範囲であることが好ましく、95〜99%であることがより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満の場合、樹脂の結晶性が低くなり、製膜性が低下する場合があるほか、フィルムの弾性率に劣る場合がある。
本発明の多孔性フィルムをポリプロピレン組成物にて形成する場合には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤や無機あるいは有機粒子からなる滑剤、さらにはブロッキング防止剤や充填剤、非相溶性ポリマーなどの各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリプロピレン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン組成物100質量部に対して2質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。
本発明の多孔性フィルムをポリプロピレン組成物にて形成する場合には、本発明の効果を損なわない範囲において、無機あるいは有機粒子からなる孔形成助剤を含有させることができる。孔形成助剤を使用する場合、含有量はポリプロピレン組成物100質量部に対して5質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。5質量部を超えると、蓄電デバイス用セパレータとして使用した際に、脱落した粒子が電池性能の低下の原因となる場合があるほか、原料コストが高くなり、生産性が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂を主成分とする多孔性フィルムは、表面開口率(S)と空孔率(P)の関係が下記式(1)を満足し、空孔率(P)の範囲が30〜70%である。
1.0 < 空孔率(P)/表面開口率(S) < 1.2 ・・・(1)
この空孔率(P)と表面開口率(S)の関係(P/S)は、1.0<P/S<1.2が好ましく、より好ましくは1.0<P/S<1.15の範囲であり、1.0<P/S<1.1の範囲であることが特に好ましい。空孔率(P)と表面開孔率(S)の関係が1.0未満の場合は、表面と内部の孔構造が異なっている場合であり、孔径が不均一であることを示す。孔径が不均一である場合、電池のセパレータとして用いた際に、電子イオンの授受に際してイオンの通過量に偏りが生じ、デンドライトの析出や微少短絡により、電池寿命が低下する場合がある。また、1.2を超えると未貫通孔の割合が多く、電池のセパレータとして用いた際に電気抵抗(セパレータ抵抗)が高くなり特に電気自動車、ハイブリッド車などの高出力を必要とする用途において課題となることがある。
この空孔率(P)と表面開口率(S)の関係(P/S)は、1.0<P/S<1.2が好ましく、より好ましくは1.0<P/S<1.15の範囲であり、1.0<P/S<1.1の範囲であることが特に好ましい。空孔率(P)と表面開孔率(S)の関係が1.0未満の場合は、表面と内部の孔構造が異なっている場合であり、孔径が不均一であることを示す。孔径が不均一である場合、電池のセパレータとして用いた際に、電子イオンの授受に際してイオンの通過量に偏りが生じ、デンドライトの析出や微少短絡により、電池寿命が低下する場合がある。また、1.2を超えると未貫通孔の割合が多く、電池のセパレータとして用いた際に電気抵抗(セパレータ抵抗)が高くなり特に電気自動車、ハイブリッド車などの高出力を必要とする用途において課題となることがある。
なお、セパレータ抵抗とは、本発明の熱可塑性樹脂を用いた多孔性フィルムを用いて後述する方法によって評価セルを作成し、交流インピーダンス法で測定したCole−Coleプロットを図3に示す等価回路から算出した電気抵抗のことをいう。
セパレータ用の多孔性フィルムにおいては、生産性に優れ低コストであることに加え、セパレータ抵抗が低く出力特性が高いこと、フィルムの剛性が高いことが求められる。フィルム剛性の指標として突刺強度が挙げられるが、本発明の多孔性フィルムは、セパレータ抵抗が低く、突刺強度が高いだけでなく、両者のバランスが良好な製品を得ることができる。
セパレータ抵抗と突刺強度のバランスは、セパレータ抵抗(Ω/25μm)を突刺強度(N)にて除した比の値で表すことができ、相対的にセパレータ抵抗が低く突刺強度が高い場合、比の値は1.0未満となる。比の値は、好ましくは0.1〜1.0の範囲であり、より好ましくは0.6〜1.0の範囲であり、0.65〜0.95の範囲が特に好ましい。また、相対的にセパレータ抵抗に対して突刺強度が低いと、比の値は1.0を超える。
式(1)を満足する多孔性フィルムを得る方法としては、原料中のβ晶核剤の添加量および結晶化温度を調整すること、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、横延伸速度、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を後述する範囲内とすることにより制御することができる。
本発明の多孔性フィルムは、電池特性と強度を両立させる観点から、空孔率が30〜70%であることが好ましい。より好ましくは30〜60%であり、40〜60%であることが特に好ましい。空孔率が30%未満では、特に高出力蓄電デバイス用のセパレータとして使用したときにセパレータ抵抗が大きくなる場合がある。一方、空孔率が70%を超えると、弾性率や引張強度などの指標となる突刺強度が低下する場合がある。空孔率は、原料中のβ晶核剤の添加量および結晶化温度を調整すること、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を後述する範囲内とすることにより制御可能である。
本発明の多孔性フィルムは、透気抵抗が10〜1,000秒/100mlであることが好ましく、50〜500秒/100mlであることがより好ましく、80〜300秒/100mlであることが特に好ましい。透気抵抗が10秒/100ml未満であると、工程適性の指標となる弾性率などの機械強度が低下する場合がある。透気抵抗が1,000秒/100mlを超えると、特に高出力蓄電デバイス用のセパレータとして用いた際に出力特性が低下する場合がある。透気抵抗は、原料中のβ晶核剤の添加量および結晶化温度を調整すること、キャストドラムの温度、長手方向の延伸倍率と温度、横延伸速度、熱処理工程での温度と時間、およびリラックスゾーンでの弛緩率を後述する範囲内とすることにより制御可能である。
本発明の多孔性フィルムは、フィルム厚みが5〜30μmであることが好ましい。厚みが5μm未満では使用時にフィルムが破断する場合があり、30μmを超えると、セパレータ抵抗が増大してセパレータとして用いた際に出力特性が低下する場合があるほか、蓄電デバイス内に占める多孔性フィルムの体積割合が高くなり、高いエネルギー密度を得ることができなくなる場合がある。フィルム厚みは10〜25μmであればより好ましく、12〜20μmであればなお好ましい。
尚、本願においては、フィルムの製膜する方向に平行な方向を、製膜方向、長手方向、MD方向あるいは単にMDと称し、フィルム面内で製膜方向に直交する方向を幅方向、TD方向あるいは単にTDと称することがある。
本発明の多孔性フィルムは、様々な効果を付与する目的で積層構成をとっても構わない。積層数としては、2層積層でも3層積層でも、また、それ以上の積層数でもよく、本発明の多孔性フィルムを少なくとも一方の表層とする積層形態、本発明の多孔性フィルムの両表面に同一もしくは異なる表層を形成する積層形態のいずれを採用してもよい。積層の方法としては、共押出によるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式、ラミネートにより多孔性フィルム同士を貼り合わせる方法などがあるが、積層する樹脂などの物性に応じて、積層方法を選択すればよい。積層構成としては、例えば、低温でのシャットダウン性を付与する目的でポリエチレンを含む層を積層したり、強度や耐熱性を付与する目的で粒子を含む層を積層したりすることができる。
以下に本発明の多孔性フィルムの製造方法を具体的な一例をもとに説明する。ポリプロピレン樹脂の例を説明するが、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
ポリプロピレン樹脂として、MFR8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂99.5質量部、β晶核剤としてN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.3質量部、酸化防止剤としてIrganox1010、Irgafos168を各々0.1質量部、滑剤としてベヘン酸カルシウム0.05質量部がこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給して溶融混練を行い、ストランドをダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料(a)を準備する。この際、溶融温度は280〜310℃とすることが好ましく、チップの断面形状は、円、楕円、長方形のいずれでもかまわない。作製したポリプロピレン原料のポリプロピレンβ晶の結晶化温度は、セパレータ抵抗を低減させ、面弾性率とのバランスを向上させるためには、130℃以上であることが好ましく、130.5℃以上であることがより好ましい。ポリプロピレンβ晶の結晶化温度に特に上限は設けないが、140℃以上にすることは困難である。本願発明では、吐出後のストランドの引取速度を大きくして、ドラフト比を大きくすることにより、結晶化温度を上記温度範囲に制御し、セパレータ抵抗を低減させることが可能である。好ましいドラフト比は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。ドラフト比が10を超えるとストランドが切れやすくなる場合がありチップの生産性が低下しやすいので、10以下が好ましい。
次に、原料(a)を単軸押出機に供給し、200〜230℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。ここで、共押出しによりフィルムを積層構造とする場合には、複数の押出機を用い、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式により積層構造とした後、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、積層未延伸シートとすることができる。キャストドラムは、表面温度が105〜130℃であることが、セパレータ抵抗制御の観点から好ましく、120〜130℃がさらに好ましい。この際、特にシートの端部の成形が、後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態から、必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
次に、得られたキャストシートを二軸配向させ、フィルム中に貫通孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸法などを用いることができるが、セパレータ抵抗と機械強度のバランスの取れたフィルムを得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特に、長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず、キャストシートの温度を制御しながら長手方向に延伸する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などを採用することができる。長手方向の延伸温度としては、セパレータ抵抗と機械強度の両立の観点から、90〜140℃であることが好ましく、より好ましくは100〜130℃、特に好ましくは115〜125℃である。90℃未満では、フィルムが破断する場合がある。また、140℃を超えると、セパレータ抵抗が増大する場合がある。セパレータ抵抗と機械強度の両立の観点から、延伸倍率としては、3〜10倍であることが好ましい。より好ましくは4.5〜6倍である。延伸倍率を高くするほどセパレータ抵抗は低下するが、10倍を超えて延伸すると、次の横延伸工程でフィルム破れが起きやすくするほか、セパレータ抵抗が低くなりすぎて機械強度が低下する場合がある。
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。横延伸温度は、セパレータ抵抗と機械強度の両立の観点から、130〜155℃であることが好ましく、より好ましくは145〜155℃である。130℃未満ではフィルムが破断する場合があり、155℃を超えるとセパレータ抵抗が増大する場合がある。幅方向の延伸倍率は、機械強度向上の観点から2〜12倍であることが好ましい。より好ましくは7〜11倍、更に好ましくは7〜10倍である。2倍未満であると、セパレータ抵抗が増大したり、幅方向の機械強度が低下する場合がある。12倍を超えるとフィルムが破断する場合がある。なお、このときの横延伸速度としては、100〜3,000%/分で行うことが好ましく、100〜2,000%/分であればより好ましい。セパレータ抵抗を低減させながら機械強度を向上させる観点から、面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は、高倍とするほうが好ましく、具体的には20倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましく、45倍以上が特に好ましい。面積倍率が低倍の場合、具体的には20倍未満の場合、セパレータ抵抗低減と機械強度向上が困難となる。面積倍率の上限は特に設けないが、60倍を超えると製膜性が悪くなり破れやすくなる場合があるため、60倍以下が好ましい。
横延伸に続いて、テンター内で熱処理工程を行う。ここで熱処理工程は、横延伸後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS1ゾーンと記す)、テンターの幅を狭めてフィルムを弛緩させながら熱処理を行うリラックスゾーン(以後、Rxゾーンと記す)、リラックス後の幅のまま熱処理を行う熱固定ゾーン(以後、HS2ゾーンと記す)の3ゾーンに分かれていることが、セパレータ抵抗と機械強度の両立、さらには低熱収の観点から好ましい。
HS1ゾーンの温度は、セパレータ抵抗と機械強度の両立の観点から140〜165℃であることが好ましく、150〜160℃であることがより好ましい。140℃未満であると、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。165℃を超えると、フィルムの配向緩和が大きすぎるために、続くRxゾーンにおいて弛緩率を高くできず、セパレータ抵抗と機械強度の両立が困難となる場合があるほか、高温により孔周辺のポリマーが溶けて透気抵抗が大きくなる場合がある。
HS1ゾーンでの熱処理時間は、幅方向の熱収縮率と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましい。
本発明におけるRxゾーンでの弛緩率は、セパレータ抵抗低下と面弾性率低減に加えて熱収縮率低減の観点から、5〜35%であることが好ましく、5〜30%であるとより好ましい。弛緩率が5%未満であると面弾性率および熱収縮率が小さくなる場合がある。35%を超えるとセパレータ抵抗が増大する場合があるほか、幅方向の厚み斑や平面性が低下する場合がある。
Rxゾーンの温度は、セパレータ抵抗低下と熱収縮率低減の観点から、155〜170℃であることが好ましく、160〜165℃であるとより好ましい。Rxゾーンの温度が155℃未満であると、弛緩の為の収縮応力が低くなり、上述した高い弛緩率を達成できない場合があるほか、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。170℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けてセパレータ抵抗が増大する場合がある。
Rxゾーンでの弛緩速度は、100〜1,000%/分であることが好ましく、150〜500%/分であることがより好ましい。弛緩速度が100%/分未満であると、製膜速度を低下させるか、テンター長さを長くする必要があり、生産性に劣る場合がある。1,000%/分を超えると、テンターのレール幅が縮む速度よりフィルムが収縮する速度が遅くなり、テンター内でフィルムがばたつくことにより、破れの発生や、幅方向の物性ムラや平面性の低下を生じる場合がある。
HS2ゾーンの温度は、セパレータ抵抗と機械強度の両立の観点から、155〜165℃であることが好ましく、160〜165℃であることがより好ましい。155℃未満であると、熱弛緩後のフィルムの緊張が不十分となり、幅方向の物性ムラや平面性の低下や、幅方向の熱収縮率が大きくなる場合がある。また、HS2の温度が高い方が、機械強度が高くなる傾向があり、155℃未満では機械強度に劣る場合がある。165℃を超えると、高温により孔周辺のポリマーが溶けてセパレータ抵抗が増大する場合がある。
本発明におけるHS2ゾーンでの熱処理時間は、幅方向の物性ムラや平面性と生産性の両立の観点から0.1秒以上10秒以下であることが好ましい。熱固定工程後のフィルムは、テンターのクリップで把持した耳部をスリットして除去し、ワインダーでコアに巻き取って製品とする。
本発明の多孔性フィルムは、セパレータ抵抗、生産性に優れるだけでなく、機械強度、耐熱性、押出安定性に優れることから、包装用品、衛生用品、農業用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散板、反射シート用途で用いることができるが、特に蓄電デバイス用のセパレータとして好ましく用いることができる。ここで、蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタなどの電気二重層キャパシタなどを挙げることができる。このような蓄電デバイスは充放電することで繰り返し使用することができるので、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電源装置として使用することができる。本発明の多孔性フィルム上に機能層を積層してなる蓄電デバイス用セパレータは、セパレータ抵抗、生産性に優れるだけでなく、耐熱性、耐短絡性に優れることから、産業装置や生活機器、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの電源装置用の蓄電デバイスセパレータとして好ましく用いることができる。本発明の多孔性フィルムを用いたセパレータと、正極と、負極と、電解液を備えた蓄電デバイスは、セパレータの優れた特性から産業機器や自動車の電源装置に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)表面開口率(S)
多孔性フィルムにエイコーエンジニアリング社製IB−5型イオンコーターを用いてイオンコートを行い、日本電子社製電界放射走査顕微鏡(JSM−6700F)を用いてフィルム表面を撮影倍率1,000倍で観察した。得られた画像データ(スケールバーなどの表示がない、観察部のみの画像)をMVTec社製HALCON Ver.10.0を用いて画像解析を行い、表面開口率(%)を算出した。画像解析方法としては、まず256階調モノクロ画像に対して、11画素平均画像Aと3画素平均画像Bをそれぞれ生成し、画像B全体の面積(Area_all)を算出した。
多孔性フィルムにエイコーエンジニアリング社製IB−5型イオンコーターを用いてイオンコートを行い、日本電子社製電界放射走査顕微鏡(JSM−6700F)を用いてフィルム表面を撮影倍率1,000倍で観察した。得られた画像データ(スケールバーなどの表示がない、観察部のみの画像)をMVTec社製HALCON Ver.10.0を用いて画像解析を行い、表面開口率(%)を算出した。画像解析方法としては、まず256階調モノクロ画像に対して、11画素平均画像Aと3画素平均画像Bをそれぞれ生成し、画像B全体の面積(Area_all)を算出した。
次に画像Bから画像Aを差として除去し、画像Cを生成し、輝度≧10となる領域Dを抽出した。抽出した領域Dを塊ごとに分割し、面積≧100となる領域Eを抽出した。その領域Eに対して、半径2.5画素の円形要素でクロージング処理した領域Fを生成し、横1×縦5画素の矩形要素でオープニング処理した領域Gを生成することで、縦サイズ<5の画素部を除去した。そして、領域Gを塊ごとに分割し、面積≧500となる領域Hを抽出することで、フィブリル領域を抽出した。
さらに画像Cにて画像≧5となる領域Iを抽出し、領域Iを塊ごとに分割し、面積≧300となる領域Jを抽出した。領域Jに対して、半径1.5画素の円形要素でオープニング処理した後、半径8.5画素の円形要素でクロージング処理した領域Kを生成し、領域Kに対して、面積≧200となる領域Lを抽出した。領域Lにおいて、面積≧4,000画素の暗部を明部で埋めた領域Mを生成することでフィブリル以外の未開口部の領域を抽出した。
最後に、領域Hと領域Mの和領域Nを生成し、和領域Nの面積(Area_closed)を算出することで、未開口部の面積を求めた。なお、表面開口率の計算は、以下の式により算出した。
表面開口率(%)=(Area_all − Area_closed) / Area_all
上記の方法にて、同じ多孔性フィルムの両面において10ヶ所ずつ測定し、その平均値の値を当該サンプルの表面空孔率(%)とした。
上記の方法にて、同じ多孔性フィルムの両面において10ヶ所ずつ測定し、その平均値の値を当該サンプルの表面空孔率(%)とした。
(2)空孔率(P)
多孔性フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をフィルムの比重ρとした。
多孔性フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をフィルムの比重ρとした。
次に、測定したフィルムを280℃、5Mpaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。なお、後述する実施例においては、いずれの場合も樹脂の比重dは、0.91であった。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式により空孔率を算出した。
空孔率(%)=〔( d − ρ ) / d 〕 × 100
(3)厚み
接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.06N)にて測定した。測定は場所を替えて10回行い、その平均値を多孔性ポリプロピレンフィルムの厚みtとした。
(3)厚み
接触式の膜厚計ミツトヨ社製ライトマチックVL−50A(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.06N)にて測定した。測定は場所を替えて10回行い、その平均値を多孔性ポリプロピレンフィルムの厚みtとした。
(4)透気抵抗
多孔性プロピレンフィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気抵抗とした。
多孔性プロピレンフィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間の測定を行った。測定は試料を替えて3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気抵抗とした。
(5)厚み25μmで換算したセパレータ抵抗:R
多孔性ポリプロピレンフィルムを直径24mmに打ち抜いた。下から直径16mmのSUS板、多孔性ポリプロピレンフィルム、直径16mmのSUS板の順に重ね、蓋付ステンレス金属製小容器(宝泉(株)製、HSセル、ばね圧1kgf)に収納した。容器と蓋とは絶縁され、容器と蓋はSUS板と接している。この容器内にエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に溶質としてLiPF6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、評価用セルを作製した。
多孔性ポリプロピレンフィルムを直径24mmに打ち抜いた。下から直径16mmのSUS板、多孔性ポリプロピレンフィルム、直径16mmのSUS板の順に重ね、蓋付ステンレス金属製小容器(宝泉(株)製、HSセル、ばね圧1kgf)に収納した。容器と蓋とは絶縁され、容器と蓋はSUS板と接している。この容器内にエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に溶質としてLiPF6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、評価用セルを作製した。
作製した各評価用セルについて、25℃雰囲気下で、電圧振幅10mV、周波数10Hz〜100kHzの条件下で、交流インピーダンスを測定し、Cole−Coleプロットを図3の等価回路を用いてセパレータ抵抗Rsを求めた。測定は試料を替えて5回行い、セパレータ抵抗の平均値をセパレータ抵抗R0とした。
厚み25μmで換算したセパレータ抵抗Rは以下の式を用いて算出した。
R=R0×25/t
(6)β晶形成能
多孔性フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から220℃まで40℃/分で昇温(ファーストラン)し、5分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却(ファーストラン)した。5分保持後、再度40℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とした。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
(6)β晶形成能
多孔性フィルム5mgを試料としてアルミニウム製のパンに採取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から220℃まで40℃/分で昇温(ファーストラン)し、5分間保持した後、20℃まで10℃/分で冷却(ファーストラン)した。5分保持後、再度40℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観測される融解ピークにについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、高温側の平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれる領域の面積から、それぞれの融解熱量を求め、α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とした。なお、融解熱量の校正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
ただし、上記方法において、140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に融解ピークの頂点が存在することと、下記条件で調製したサンプルについて、上記2θ/θスキャンで得られる回折プロファイルの各回折ピーク強度から算出されるK値が0.3以上であることをもってβ晶形成能を有するものと判定する。
ただし、上記方法において、140〜160℃に頂点を有する融解ピークが存在するが、β晶の融解に起因するものか不明確な場合は、140〜160℃に融解ピークの頂点が存在することと、下記条件で調製したサンプルについて、上記2θ/θスキャンで得られる回折プロファイルの各回折ピーク強度から算出されるK値が0.3以上であることをもってβ晶形成能を有するものと判定する。
下記にサンプル調製条件、広角X線回折法の測定条件を示す。
・サンプル:
フィルムの方向を揃え、熱プレス調製後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせる。このサンプルを0.5mm厚みの2枚のアルミ板で挟み、280℃で3分間熱プレスして融解・圧縮させ、ポリマー鎖をほぼ無配向化する。得られたシートを、アルミ板ごと取り出した直後に100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させる。その後25℃の雰囲気下で冷却して得られるシートを切り出したサンプルを測定に供する。
フィルムの方向を揃え、熱プレス調製後のサンプル厚さが1mm程度になるよう重ね合わせる。このサンプルを0.5mm厚みの2枚のアルミ板で挟み、280℃で3分間熱プレスして融解・圧縮させ、ポリマー鎖をほぼ無配向化する。得られたシートを、アルミ板ごと取り出した直後に100℃の沸騰水中に5分間浸漬して結晶化させる。その後25℃の雰囲気下で冷却して得られるシートを切り出したサンプルを測定に供する。
・広角X線回折方法測定条件:
上記条件に準拠し、2θ/θスキャンによりX線回折プロファイルを得る。
上記条件に準拠し、2θ/θスキャンによりX線回折プロファイルを得る。
ここで、K値は、2θ=16°付近に観測され、β晶に起因する(300)面の回折ピーク強度(Hβ1とする)と2θ=14,17,19°付近にそれぞれ観測され、α晶に起因する(110)、(040)、(130)面の回折ピーク強度(それぞれHα1、Hα2、Hα3とする)とから、下記の数式により算出できる。K値はβ晶の比率を示す経験的な値であり、各回折ピーク強度の算出方法などK値の詳細については、ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)を参考にすればよい。
K = Hβ1/{Hβ1+(Hα1+Hα2+Hα3)}
なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。
なお、ポリプロピレンの結晶型(α晶、β晶)の構造、得られる広角X線回折プロファイルなどは、例えば、エドワード・P・ムーア・Jr.著、“ポリプロピレンハンドブック”、工業調査会(1998)、p.135−163;田所宏行著、“高分子の構造”、化学同人(1976)、p.393;ターナージョーンズ(A.Turner Jones)ら,“マクロモレキュラーレ ヒェミー”(Makromolekulare Chemie),75,134−158頁(1964)や、これらに挙げられた参考文献なども含めて多数の報告があり、それを参考にすればよい。
(7)結晶化温度(Tc)
上記(6)の示差走査熱量計によるβ晶形成能の測定方法と同様の方法で原料のポリプロピレン樹脂を測定し、冷却(ファーストラン)のピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。
上記(6)の示差走査熱量計によるβ晶形成能の測定方法と同様の方法で原料のポリプロピレン樹脂を測定し、冷却(ファーストラン)のピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。
(8)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定した。
ポリプロピレン樹脂のMFRは、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。ポリエチレン樹脂は、JIS K 7210(1995)の条件D(190℃、2.16kg)に準拠して測定した。
(9)突刺強度
フィルムを直径40mmのリングにフィルムを弛みのないように張り、先端角度60度、先端R0.5mmのサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度でフィルムの表面側から突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺強度とした。
フィルムを直径40mmのリングにフィルムを弛みのないように張り、先端角度60度、先端R0.5mmのサファイア製針を使用し、円の中央を50mm/分の速度でフィルムの表面側から突き刺し、針が貫通するときの荷重(N)を突刺強度とした。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、ベヘン酸カルシウム0.05質量部、さらに酸化防止剤であるBASF社製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーからL/D=41の二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ダイから吐出して、ドラフト比が3.6となるように引き取り、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして結晶化温度(Tc)が130.6℃となるポリプロピレン組成物(あ)のチップを得た。
ポリプロピレン樹脂として、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、ベヘン酸カルシウム0.05質量部、さらに酸化防止剤であるBASF社製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーからL/D=41の二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ダイから吐出して、ドラフト比が3.6となるように引き取り、20℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして結晶化温度(Tc)が130.6℃となるポリプロピレン組成物(あ)のチップを得た。
得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて121℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して154℃にて延伸速度が1,500%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に163℃にて弛緩率17%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま163℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み19μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは2.2であり、突刺強度(N)は3.1であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度(N)にて除した値は0.71となり、セパレータ抵抗Rが低く、突刺強度(N)とのバランスが良好な製品を得た。
(実施例2)
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて123℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が2,300%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて123℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が2,300%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に164℃にて弛緩率17%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは2.9であり、突刺強度(N)は4.1であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度(N)にて除した値は0.71となり、セパレータ抵抗Rが低く、かつ突刺強度(N)の高い、両者のバランスが良好な製品を得た。
(実施例3)
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて122℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.8倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が1,900%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて122℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.8倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が1,900%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に164℃にて弛緩率20%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み22μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは2.4であり、突刺強度(N)は3.6であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度にて除した値は0.67となり、セパレータ抵抗Rが低く、かつ突刺強度(N)の高い、両者のバランスが良好な製品を得た。
(実施例4)
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して160℃にて延伸速度が2,500%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して160℃にて延伸速度が2,500%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に164℃にて弛緩率17%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み23μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは3.2であり、突刺強度(N)は4.2であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度にて除した値は0.76となり、突刺強度(N)の高い、セパレータ抵抗Rとのバランスの良好な製品を得た。
(実施例5)
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、126℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して150℃にて延伸速度が2,900%/minとなるように、幅方向に4.5倍延伸した。
実施例1で得られたポリプロピレン組成物(あ)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、126℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して150℃にて延伸速度が2,900%/minとなるように、幅方向に4.5倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に164℃にて弛緩率10%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま164℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み23μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは5.8であり、突刺強度(N)は6.4であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度(N)にて除した値は0.91となり、セパレータ抵抗Rは高いが、突刺強度(N)が高く、両者のバランスが良好な製品を得た。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂として、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ダイから吐出して、ドラフト比が1.8となるように引き取り、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして結晶化温度(Tc)が128.5℃となるポリプロピレン組成物(う)のチップを得た。
ポリプロピレン樹脂として、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010、IRGAFOS168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ダイから吐出して、ドラフト比が1.8となるように引き取り、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして結晶化温度(Tc)が128.5℃となるポリプロピレン組成物(う)のチップを得た。
得られたポリプロピレン組成物(う)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて115℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して160℃にて延伸速度が2,800%/minとなるように、幅方向に9.3倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に165℃にて弛緩率17%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま165℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み22μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは5.5であり、突刺強度(N)は5であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度(N)にて除した値は1.10となり、セパレータ抵抗Rが高く、突刺強度(N)の高い製品を得た。
(比較例2)
比較例1で得られたポリプロピレン組成物(う)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて119℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が2,500%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
比較例1で得られたポリプロピレン組成物(う)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて119℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、123℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が2,500%/minとなるように、幅方向に7.7倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に163℃にて弛緩率20%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま163℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み21μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは4.2であり、突刺強度(N)は3.3であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度(N)にて除した値は1.27となり、セパレータ抵抗Rが高い製品を得た。
(比較例3)
比較例1で得られたポリプロピレン組成物(う)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が1,450%/minとなるように、幅方向に9.5倍延伸した。
比較例1で得られたポリプロピレン組成物(う)を単軸の溶融押出機に供給し、220℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、Tダイにて120℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。ついで、125℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。次に端部をクリップで把持して155℃にて延伸速度が1,450%/minとなるように、幅方向に9.5倍延伸した。
続く熱処理工程で、延伸後のクリップ間距離に保ったまま150℃で熱処理し(HS1ゾーン)、更に163℃にて弛緩率17%でリラックスを行い(Rxゾーン)、弛緩後のクリップ間距離に保ったまま163℃で熱処理を行った(HS2ゾーン)。
その後、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去し、厚み18μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。得られた多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ抵抗Rは2.5であり、突刺強度(N)は2.3であった。また、セパレータ抵抗Rを突刺強度にて除した値は1.09となり、セパレータ抵抗Rが低く、突刺強度(N)の低い製品を得た。
本発明の要件を満足する実施例では、表面開孔率(S)と空孔率(P)の関係であるP/Sが良好であり未貫通孔が少なくセパレータ抵抗が低いだけでなく、突刺強度に優れることからセパレータ抵抗と剛性のバランスが良好であり、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に用いることが可能である。一方、比較例では、P/Sの値が高くセパレータ抵抗に劣る、または突刺強度が低いことからセパレータ抵抗と剛性のバランスが良好ではなく、蓄電デバイス用のセパレータとして用いることが困難である。
本発明の多孔性フィルムは、耐熱保護層などの塗工層を塗工するおよび電池組立工程適性かつセパレータとして用いた際のセパレータ抵抗に優れるため、蓄電デバイス用のセパレータとして好適に使用することができる。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂を主成分とし、表面開口率(S)と空孔率(P)の関係が下記式(1)を満足し、空孔率(P)の範囲が30〜70%である多孔性フィルム。
1.0 < 空孔率(P)/表面開口率(S) <1.2 ・・・(1) - 空孔率(P)の範囲が30〜60%である、請求項1記載の多孔性フィルム。
- 熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂である、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。
- 多孔性フィルム中のポリプロピレン樹脂の含有量が80質量%以上である、請求項3に記載の多孔性フィルム。
- 多孔性フィルムのβ晶形成能が60%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の多孔性フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる蓄電デバイス用セパレータ。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔性フィルム上に機能層を積層してなる蓄電デバイス用セパレータ。
- 請求項6または7に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極と、電解液とを備えた蓄電デバイス。
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JP2014042389A JP2014198832A (ja) | 2013-03-14 | 2014-03-05 | 多孔性フィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス |
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JP2013051220 | 2013-03-14 | ||
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JP2014042389A JP2014198832A (ja) | 2013-03-14 | 2014-03-05 | 多孔性フィルム、蓄電デバイス用セパレータおよび蓄電デバイス |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018155287A1 (ja) * | 2017-02-23 | 2018-08-30 | 東レ株式会社 | 多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池 |
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2014
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