JP2014193119A - ホイップ用クリーム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 良好な乳風味を有すると共に安定的な保形性を保持するホイップドクリームを提供しようとすること。
【解決手段】 植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを含有し、かつ以下の(a)〜(d)を満たす、ホイップ用クリーム。
(a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること、
(b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること、
(c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること、
(d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること。
【選択図】なし

Description

本発明は、ホイップ用クリーム及びホイップ用クリームの製造方法に関する。
生クリームは、口あたりや口溶けが良く、風味が良好であるため、ホイップドクリームとして使用されており、近年の天然志向もあり消費者に好まれる天然素材である。しかしながら、生クリームは、高価であり、また起泡化するのに高度な技術を要する。
また、合成クリームは、生クリームの保存時等の取り扱いにくさを改善し、物性を向上させたものであり、植物油脂、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物油脂を乳化処理して得られるものである。しかしながら、合成クリームは、生クリームの食感及び風味に劣る。そのため、一般的には生クリームと合成クリームとを混合して、風味を改善し、容易な起泡化を図っている。
このような実情から、生クリームの乳風味の点と、合成クリームのコスト及び作業性の点との両方のメリットを活かすホイップ用クリームが研究開発されている。
例えば、特許文献1の実施例1及び2では、メジアン径2.1μ又は2.9μmの生クリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組生物とを1:1(重量比)の割合で混合して得られた起泡性水中油型乳化物が提案されている。
また、特許文献2の実施例4及び5では、食用油脂、乳化剤及び生クリームを含有してなるコンパウンドホイップクリームであって、ポリオキシエチレン(20)・モノステアリン酸又はモノオレイン酸エステル、ショ糖ステアリン酸パルミチン酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを必須成分として含有するホイップクリーム用乳化剤組成物を0.3〜2.0重量%含有するコンパウンドホイップクリームが提案されている。
特開2009−278969号公報 特開2005−000078号公報
しかしながら、合成クリーム及び生クリームを混合し乳化処理したホイップ用クリームをホイップした従来のホイップドクリームは、冷蔵保存後の保形性が非常に悪く、安定的な保形性を保持するものとは言い難い。
また、特許文献1の起泡性水中油型乳化物は、ホイップドクリームにした際に乳風味に欠けているものである。特許文献2のコンパウンドクリームは、フレッシュクリームと混合し、ホイップしてホイップドクリームにした際に、冷蔵保存下で安定的な保形性が保持できないものである。
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、良好な乳風味を有すると共に安定的な保形性を保持するホイップドクリームを提供しようとするものである。
そして、本発明者は、鋭意検討した結果、合成クリーム及び生クリームを含むホイップ用クリームにおいて、生クリームの脂肪球径を3.0μm以上とし、さらに特定の乳蛋白質分解物を特定量含有することによって、乳風味が良好であると共に保形性が安定的であるホイップドクリームを提供できるホイップ用クリームを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを含有し、かつ以下の(a)〜(d)を満たす、ホイップ用クリームを提供するものである。
(a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること、
(b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること、
(c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること、
(d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること。
また、本発明は、植物脂肪、乳脂肪、又は、乳脂肪及び植物脂肪に、乳蛋白質分解物を混合して乳化処理した水中油型乳化物を調製する水中油型乳化物調製工程と、
前記水中油型乳化物に生クリームを混合してホイップ用クリームを得るクリーム混合工程とを有し、
前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法を提供するものである。
本発明は、植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを混合し、乳化処理して、ホイップ用クリームを得るクリーム調製工程を有し、
前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法を提供するものである。
本発明は、良好な乳風味を有すると共に安定的な保形性を保持するホイップドクリームを提供できる。
図1は、合成クリーム及び生クリームを混合し乳化処理した従来のホイップ用クリームをホイップした際の、従来のホイップドクリームの冷蔵保存下での保形性を示す図である。「D+0」はホイップ直後のホイップドクリームの貯蔵弾性率(G‘)であり、「D+1」はホイップ後、1日冷蔵保存したホイップドクリームの貯蔵弾性率(G‘)である。
本開示のホイップ用クリームは、植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを含有するものである。さらに、以下の(a)〜(d)を満たすものである。
(a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること、
(b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること、
(c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること、
(d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること。
本開示に用いる「合成クリーム」は、植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪、を含有するものである。前記植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪は、合成クリーム中、冷蔵時(5℃)の固形脂含量が50〜70%程度含有しているのが好適である。合成クリームの脂肪球径が、好ましくは1.5μm以上3.0μm未満、より好ましくは2.0μm以上3.0μm未満であるのが好適である。
前記合成クリームは、植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及植物脂肪に、乳化剤、安定化剤、塩類、糖類等から選ばれる1種又は2種以上の任意成分を含有するものであり、また市販品を用いてもよい。
前記植物脂肪は、特に限定されないが、前記植物油脂として、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油、米油、ヤシ油等植物系及びその植物系硬化油等が挙げられる。このうち、パームオレイン及び菜種硬化油の混合油や、パーム硬化油、パーム核硬化油が好ましい。また、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。前記植物脂肪は、35〜40℃前後の融点を有する植物脂肪が望ましい。
前記乳脂肪は、特に限定されないが、前記乳脂肪として、例えば、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、バター、バターオイル、調整乳脂等;これらの硬化、分別、エステル交換等の処理物等が挙げられる。また、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記乳化剤として、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、大豆リン脂質等が挙げられる。HLB値が2〜16のものを使用することができる。前記乳化剤は、合成クリーム中、0.01〜1質量%程度使用するのが好適である。
前記安定化剤として、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム等のガム類;カゼイン、大豆蛋白、ゼラチン等の蛋白質;澱粉、加工澱粉、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の多糖体等が挙げられる。前記安定化剤は、合成クリーム中、0.01〜1質量%程度使用するのが好適である。
前記塩類として、例えば、モノリン酸塩及び縮合リン酸塩(例えばメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等)のリン酸塩等が挙げられる。前記塩類は、合成クリーム中、0.01〜1質量%程度使用するのが好適である。
前記糖類として、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、砂糖等が挙げられる。前記糖類は、合成クリーム中、0.01〜10質量%程度使用するのが好適である。
本開示に用いる「生クリーム」は、「(a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること」を満たすことが好適である。
前記生クリームの脂肪球径は、好ましくは3.0〜5.0μm、より好ましくは3.0〜4.0μmである。生クリームの脂肪球径を3.0μm以上にすることによって、良好な乳風味かつ良好な保形性を保持することが可能となる。
本開示に用いる生クリームは、ホモジナイザー等の乳化・微細化機で処理する方法、噴射、超音波による物理的作用で処理する方法等にて得ることが可能である。
なお、生クリームは、一般的に、乳クリームと呼ばれるものを使用すればよい。当該乳クリームは、生乳、牛乳を分離して取り出した乳脂肪分を原料とするものであり、「乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令:日本厚生労働省の食品衛生法に基づく省令)」では、「生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分が18.0%以上にしたもの」と定義されているものである。
本開示に用いる合成クリーム及び生クリームの質量比割合は、[合成クリーム]:[生クリーム]=5:95〜95:5であるのが好ましく、25:75〜75:25であるのがより好ましい。
従来、前記[合成クリーム]:[生クリーム]の範囲内は、本開示の乳蛋白質分解物を使用しないホイップ用クリームの場合、合成クリーム及び生クリーム含有のホイップ用クリームをホイップしたホイップドクリームでは、冷凍保存下において良好な保形性が保持できない。しかし、前記[合成クリーム]:[生クリーム]の範囲内であっても、本開示の乳蛋白質分解物を使用することで、得られたホイップドクリームは良好な保形性が保持できるようになる。
本開示に用いる「乳蛋白質分解物」は、カゼイン分解物、ホエイ蛋白質分解物、牛乳の蛋白質分解物等を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上使用することができる。
このうち、カゼイン分解物が、食感、乳風味及び保形性の点で、好ましい。
本開示に用いる乳蛋白質分解物は、「(b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること」を満たすものを、本開示のホイップ用クリームに使用するのが好適である。
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率は、好ましくは5〜32.5%、より好ましくは10〜30%、さらに好ましくは10〜20%である。使用する乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率を特定の範囲にすることによって、合成クリーム及び生クリームを含むホイップ用クリームであっても、得られたホイップドクリームは良好な保形性を保持することが可能となる。
本開示に用いる乳蛋白質分解物の製造方法は特に限定されないが、以下の製造方法にて得ることが可能である。
前記乳蛋白質分解物は、出発原料である乳蛋白質を蛋白質分解酵素により、上述のような特定の範囲の非蛋白態窒素比率になるように調製されたものである。
前記出発原料として使用可能な乳蛋白質は特に限定されず、乳由来のものが好ましい。乳蛋白質として、例えば、カゼイン、ホエイ蛋白質、牛乳、脱脂乳等から選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。これらは、公知の方法にて得ることも可能であるが、市販品を使用してもよい。
このうち、カゼインが好ましい。当該使用するカゼインとして、例えば、市販品の各種カゼイン、例えば酸カゼイン(例えば、乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等)、カゼイネイト(例えば、ナトリウムカゼイネイト、カリウムカゼイネイト、カルシウムカゼイネイト等)又はこれらの任意の混合物等が挙げられる。また、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等からカゼインを常法により分離精製することが可能である。
そして、前記蛋白質分解酵素で分解する際に、出発原料を乳蛋白質の溶液(以下、「原料乳蛋白質溶液」という)とするのが好適である。前記原料乳蛋白質溶液は、水又は温湯に分散し、溶解することで得ることが可能である。また、前記原料乳蛋白質溶液は、出発原料が粉末状及び液状タイプを使用する場合には、それぞれを混合し、適宜水又は温湯を添加したり、加温したりして、溶解することで得ることも可能である。
前記原料乳蛋白質溶液中の乳蛋白質の濃度は特に限定されないが、通常、蛋白質換算で2%以上、5〜15%の濃度範囲にすることが効率性及び操作性の点から好適である。
さらに、前記原料乳蛋白質溶液は、ナトリウム型又はカリウム型陽イオン交換樹脂(好適には強酸性陽イオン交換樹脂)を用いたイオン交換法、電気透析法、限界濾過膜法、ルーズ逆浸透膜法等で脱塩し、適宜pH調整やカルシウム濃度調整を行うのが好適である。脱塩の際には、カラム式やバッチ式のいずれを採用してもよい。
また、脱塩前に、原料乳蛋白質溶液が雑菌汚染による変敗防止の点から、加熱殺菌を行なってもよい。
前記蛋白質分解酵素は、例えば、植物由来、動物由来、微生物由来等が挙げられ、1種類又は複数種類組み合わせて使用できる。
プロテアーゼの代表的な種類として、セリンプロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ、金属プロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼがある。そして、一般的には、トリプシン等のセリンプロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼとされ、パパイン等のシステインプロテアーゼは中性プロテアーゼとされ、ペプシン等のアスパラギン酸プロテアーゼは、酸性プロテアーゼとされている。
前記蛋白質分解酵素は、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼから選ばれるものを用いることが好適である。
前記蛋白質分解酵素は、例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ(チオールプロテアーゼともいう)等が挙げられる。
前記セリンプロテアーゼとして、例えば、トリプシンやパンクレアチン(すい臓由来酵素、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼなどを含む)等が挙げられる。
前記システインプロテアーゼとして、例えば、パパイア由来酵素(例えばパパイン、キモパパイン等)、パイナップル由来酵素(例えば、ブロメライン等)、が挙げられる。
また、蛋白質分解酵素として、例えば、カリクレイン(Kallikrein:セリンプロテアーゼ)、フィシン(Ficin:システインプロテアーゼ)、パパイン(Papain:システインプロテアーゼ)、キモパパイン(Chimopapain:システインプロテアーゼ)、ブロメライン(Bromelain:システインプロテアーゼ)、パパインW−40(システインプロテアーゼ)及びブロメラインF(システインプロテアーゼ)、ペプシン(pepsin:アスパラギン酸プロテアーゼ)等が挙げられる。
当該蛋白質分解酵素は、シグマ社や天野エンザイム社より市販されている蛋白質分解酵素を使用してもよい。例えば、アルカリ性プロテアーゼとして、プロレザーFG−F、プロチンSD−AY10、プロチンSD−AC10;中性プロテアーゼとして、ウマミザイムG、プロテアーゼA「アマノ」SD、プロテアーゼM「アマノ」SD、パパインW−40、ブロメラインF、プロテアーゼP「アマノ」3SD、プロチンSD−NY10、プロチンSD−PC10;酸性プロテアーゼとして、プロテアーゼM「アマノ」SD、ニューラーゼF;耐熱性中性プロテアーゼとして、プロザイム、プロザイム6、サモアーゼPC10F;ペプチダーゼとして、ペプチダーゼR、ウマミザイムG等が挙げられる。
なお、前記蛋白質分解酵素は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記酵素による加水分解は、上述した特定の非蛋白態窒素比率の範囲になるように行う。これにより、本開示で用いる乳蛋白質分解物を得ることができる。
酵素による加水分解前に前記原料乳蛋白質溶液のpHを、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の食品上使用可能な塩類で使用酵素の至適pHに調整することもできる。前記原料乳蛋白質溶液のpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは5〜8に調整する。
前記酵素の反応温度は、使用酵素の最適温度の範囲で行うことが望ましく、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜60℃で行う。
また、前記酵素の反応保持時間は、前記特定の非蛋白態窒素比率になるように適宜調整すればよく、例えば0.5〜24時間で行うことが可能であり、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜10時間である。
前記酵素による加水分解は、加熱して酵素を失活させて終了させればよい。例えば、100℃以上(好適には110〜130℃)で失活させる場合には1〜3秒間、100℃未満60℃以上で失活させる場合には3〜40分間で行うことが好適である。
加水分解終了後、必要に応じて分解液のpHを、好ましくは6〜8、より好ましくは7.0±0.5、さらに好ましくは7.0±0.3とするのが好適である。
なお、本開示の乳蛋白質分解物の製造において、カルシウム濃度未調製の溶液を前記酵素にて加水分解した場合には、得られた分解液を、前記のような脱塩処理し、カルシウム濃度を調整してもよい。次いで、常法により加熱して酵素を失活させる。反応加熱温度と反応保持時間は使用した酵素の熱安定性を配慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができる。加熱失活後、常法により冷却し、そのまま利用することもでき、必要に応じて濃縮して濃縮液を得ることもでき、更に濃縮液を乾燥し、粉末製品を得ることも可能である。
本開示に用いる乳蛋白質分解物の使用は、「(c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること」を満たすことが好適である。
前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める乳蛋白質分解物の割合は、好ましくは30%以上、より好ましくは45%以上であるのが好適である。当該乳蛋白質分解物の割合にすることによって、合成クリーム及び生クリームを含むホイップ用クリームであっても、得られたホイップドクリームは良好な保形性を保持することが可能となる。また、前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める乳蛋白質分解物の割合は、75%以下であるのが、保形性の点で、好適である。
本開示に用いる乳蛋白質分解物の使用は、「(d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること」を満たすことが好適である。
前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに含まれる量は、好ましくは0.27質量%以上、より好ましくは0.3〜1.6質量%、さらに好ましくは0.4〜1.2質量%であるのが好適である。当該乳蛋白質分解物を特定量含有させることによって、合成クリーム及び生クリームを含むホイップ用クリームであっても、得られたホイップドクリームは良好な保形性を保持することが可能となる。
また、前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質量は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であるのが、より安定的な保形性保持のため好適である。
本開示のホイップ用クリームは、上述した、植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを原料として用いて得ることができる。
本開示のホイップ用クリームに使用する原料の種類及びその使用は、上述した「本開示のホイップ用クリーム」に記載のとおりである。
例えば、以下のホイップ用クリームの製造方法(A)又は製造方法(B)にて行うことが好適である。このうち、ホイップ用クリーム製造方法(A)が、乳風味及び保形性保持の点で、好適である。
本開示における乳化処理は、例えば、機械的撹拌又は高圧噴射等を行い、液体中に他の液体を微粒子状で分散させることが可能な装置(例えば、乳化機等)にて行うことが可能である。温度条件は、例えば40〜80℃であるのが好ましい。
一例として、乳化処理は、均質圧0.1〜10MPa程度で行うのがよい。また、好適には、均質温度は40〜80℃が好ましく、その均質圧は全圧5〜10MPa、二次圧0.1〜3MPaが好ましい。また、上述のように均質機にて乳化処理した後に、冷却後、エージングするのが好適であり、このエージングは一晩低温(0〜5℃)で冷蔵保存することが好適である。
前記製造方法(A)は、植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪に、本開示の乳蛋白質分解物を混合して乳化処理した水中油型乳化物を調製する水中油型乳化物調製工程と、前記水中油型乳化物に生クリームを混合してホイップ用クリームを得るクリーム混合工程とを有する製造方法である。
前記水中油型乳化物調製工程において、植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪の脂肪100質量部中に、本開示の乳蛋白質分解物を、好ましくは0.45〜3質量部、より好ましくは0.53〜2質量部、さらに好ましくは0.9〜1.6質量部を含有させるのが好適である。また、上述した乳化剤、安定剤等の任意性分を適宜使用してもよい。前記水中油型乳化物の脂肪球径が、好ましくは1.5μm以上3.0μm未満、より好ましくは2.0μm以上3.0μm未満であるのが好適である。
前記水中油型乳化物において、前記植物脂肪の量、前記乳脂肪の量、又は乳脂肪及び植物脂肪の量は、全量中、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
また、前記水中油型乳化物において、総蛋白質含量は、好ましくは0.5〜2.5質量%、より好ましくは1〜1.6質量%である。
また、前記水中油型乳化物において、乳化剤量は、全量中、好ましくは0.02〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
前記クリーム混合工程において、[前記水中油型乳化物]:[生クリーム]の混合割合は、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは25:75〜75:25である。
前記製造方法(B)は、植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、本開示の乳蛋白質分解物とを混合し、乳化処理して、ホイップ用クリームを得るクリーム調製工程を有する製造方法である。
なお、本開示の製造方法(B)における「合成クリーム」は、植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪を含む原料を、均質機等にて乳化処理して得たものである。
より好適な、本開示のホイップ用クリームの製造方法(A)又は製造方法(B)は、前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法である。
よりさらに好適な、前記合成クリーム及び前記生クリームの使用(例えば、脂肪球径、配合割合等)、並びに前記乳蛋白質分解物の使用(例えば、含有割合、添加量等)は、上述した「本開示のホイップ用クリーム」に記載のとおりである。
本開示のホイップ用クリームは、包装容器に充填密封して保存させたり、流通させてもよい。なお、包装容器は、液漏れがしなければ特に限定されず、紙容器、プラスチック容器、レトルト容器等が挙げられる。
本開示のホイップ用クリームが充填された包装容器をホイップ時に開封して、当該ホイップ用クリームを使用すればよい。また、生クリームと前記水中油型乳化物とを別々に充填密封し、ホイップ時に両者を開封混合しても良い。
なお、本開示のホイップ用クリーム中の脂肪率は、35〜50質量%であるのが、良好な乳風味及び保形性保持の点で、好適である。
本開示のホイップ用クリームは、ホイップすることで、ホイップ状態が良好なホイップドクリームとすることができる。そして、本開示のホイップドクリームは、乳風味が良好でかつ保形性の保持性が良好である。特に、本開示のホイップドクリームは、冷蔵保存下での保形性の保持が良好である。
本開示の「冷蔵保存下での保形性」とは、冷蔵保存下において、ホイップドクリームの形状を安定的に保持できていることをいう。より具体的には、冷蔵保存下において、本開示の乳蛋白質分解物の無添加の場合と比較し、ホイップドクリームの貯蔵弾性率の減少を抑制できていることをいう。
本開示のホイップドクリームは、ホイップ後冷蔵保存下24時間の500G’(Pa)以上であるのが好適である。これにより、良好な保形性を保持することができる。
本開示のホイップドクリームの冷蔵保存後保形性保持率は、10%以上100%以下であるものが好適である。
<ホイップドクリームの貯蔵弾性率の測定方法>
本開示のホイップドクリームの貯蔵弾性率は、通常ホイップドクリームの貯蔵弾性率が測定可能な装置を用いて求めればよく、例えば、TAインスツルメント社製の粘弾性測定装置を用いればよい。
本開示のホイップドクリームの冷蔵保存後保形性保持率は、「ホイップ後冷蔵保存下のG’(Pa)/ホイップ直後のG’(Pa)」にて求めることが可能である。
「ホイップ後冷蔵保存下のG’(Pa)」は、ホイップ後に冷蔵保存下22〜26時間内で測定したものである。また、「ホイップ直後のG’(Pa)」とは、ホイップ後5分内で測定したものである。
<脂肪粒径の測定方法>
脂肪粒径の測定方法は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−500)を使用して、循環流量2、撹拌速度2の条件で測定した時の脂肪粒径(粒度累積分布の50%に相当する粒子径)の値を測定する。
<非蛋白態窒素比率の算出方法>
ケルダール法日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定した。また、ラッパポート(Rappaport)−梅田変法(臨床検査、第9巻、第534乃至537頁、1965年)に基づく測定キット(商品名:NPN−テストワコー;和光純薬工業社製)を使用し、該測定キットの説明書に従って試料の非蛋白態窒素量を測定し、得られた値に6.38を乗じて非蛋白態窒素化合物量を算出した。これらの測定値から非蛋白態窒素比率(%)を次式により算出する。
非蛋白態窒素比率(%) = (非蛋白態窒素化合物量 / 全窒素量)×100
<クリーム中の総蛋白質量の測定方法>
本開示のクリーム中の総蛋白質量の測定方法は、セミ・ミクロケルダール法(第十四改正 日本薬局方解説書 通則 製造総則 一般試験法 2001 B−370〜B374)にて行い、以下に具体的な測定方法を示す。
試料クリーム約1g(試料重量は0.1mgの単位まで測定する)を採取し、セミ・ミクロケルダール法にて試料中の窒素量を定量する。
詳細には、試料を分解瓶に入れ、硫酸カリウム:硫酸銅=10:1の配合の分解促進剤を1g、さらに濃硫酸7mL加え、加熱分解する。加熱分解後、試料を水蒸気蒸留にかけ、蒸留されたものを20mMの硫酸水溶液20mL中に受ける。蒸留が終了したら、蒸留水を受けた、20mMの硫酸水溶液を、40mMの水酸化ナトリウムにて滴定する。そのときの滴定量をb(mL)とする。試料にクリームを含まない対照試料を用いてブランク試験を行い、そのときの滴定量をa(mL)とすると、クリームの蛋白質量は以下の式にて計算される。
蛋白質量(%) = (0.56×(b−a)×6.38)/試料の重量(g)/1000×100
ちなみに、式中の0.56は40mMの水酸化ナトリウム1mLに対する試料の窒素量であり、6.38は窒素量を乳製品の蛋白質に換算する係数である。
<クリーム中の脂肪率(総脂肪量)の測定方法>
本開示におけるクリーム中の総脂肪量の測定方法は、レーゼゴットリーブ法(食品衛生検査指針 理化学編 2005 p.48−49:厚生労働省監修)にて行い、以下に具体的な測定方法を示す。なお、「脂肪率」とは「脂肪分」又は「脂肪含量」と同義である。
詳細には、試料クリーム1gをビーカーに採取し、温水約10mlを用いてビーカーを洗いながら、抽出管に移す。その抽出管にアンモニア水2mLとフェノールフタレイン試薬を1滴加え、栓をし、良く混合する。その後、エタノール10mLを用いて、試料を採取したビーカーを洗いながら抽出管に加え、栓をして良く混ぜ合わせる。次に、エーテル25mL加え栓をして30秒間激しく振り混ぜる。最後に石油エーテルを25mL加え、栓をして、30秒間激しく振り混ぜる。上層が透明になるまで静置した後、あらかじめ恒量したディッシュにエーテル層をこぼさないようにデカンテーションして、有機溶媒を回収する。このディッシュを100℃〜105℃の蒸気乾燥機中で1時間置き、有機溶媒を蒸発させる。このディッシュの重量を測ることで抽出脂肪量が測定できる。
これらの測定値からクリーム脂肪率を以下の式にて算出する。
クリーム脂肪率(%) = (抽出脂肪量 / 使用試料量)×100
なお、本技術は以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕 植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを含有し、かつ以下の(a)〜(d)を満たす、ホイップ用クリーム。
(a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること、
(b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること、
(c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること、
(d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること。
〔2〕 前記乳蛋白質分解物が、カゼイン分解物である前記〔1〕に記載のホイップ用クリーム。
〔3〕 生クリームと合成クリームとの質量比が以下の式を満たす、前記〔1〕又は〔2〕に記載のホイップ用クリーム。
[生クリーム]:[合成クリーム]=5:95〜95:5、好ましくは[生クリーム]:[合成クリーム]=25:75〜75:25
〔4〕 植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪に、乳蛋白質分解物を混合して乳化処理した水中油型乳化物を調製する水中油型乳化物調製工程と、
前記水中油型乳化物に生クリームを混合してホイップ用クリームを得るクリーム混合工程とを有し、
前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法。
〔5〕 前記乳蛋白質分解物が、カゼイン分解物である前記〔4〕に記載のホイップ用クリームの製造方法。
〔6〕 生クリームと合成クリームとの質量比が以下の式を満たす、前記〔4〕又は〔5〕に記載のホイップ用クリームの製造方法。
[生クリーム]:[水中油型乳化物]=5:95〜95:5、好ましくは[生クリーム]:[水中油型乳化物]=25:75〜75:25。
〔7〕 植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを混合し、乳化処理して、ホイップ用クリームを得るクリーム調製工程を有し、
前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法。
〔8〕 前記乳蛋白質分解物が、カゼイン分解物である前記〔7〕に記載のホイップ用クリームの製造方法。
〔9〕 生クリームと合成クリームとの質量比が以下の式を満たす、前記〔7〕又は〔8〕に記載のホイップ用クリームの製造方法。
[生クリーム]:[合成クリーム]=5:95〜95:5、好ましくは[生クリーム]:[合成クリーム]=25:75〜75:25。
〔10〕 植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪に、乳蛋白質分解物を混合して乳化処理した水中油型乳化物であり、
前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
前記水中油型乳化物に含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が30%以上であり、
前記乳蛋白質分解物が前記水中油型乳化物に0.4質量%以上含有することを特徴とする水中油型乳化物。
〔11〕 前記乳蛋白質分解物が、カゼイン分解物である前記〔10〕に記載の水中油型乳化物。
〔12〕 前記〔10〕〜〔11〕の何れか1項記載の水中油型乳化物を用いることを特徴とするホイップ用クリームの製造方法。
〔13〕 前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載のホイップ用クリーム、前記〔7〕〜〔9〕、〔12〕の何れか1項記載の製造方法にて得られたホイップ用クリームをホイップして得られるホイップドクリーム。
〔14〕 冷蔵保存下24時間後の貯蔵弾性率が500Pa以上であることを特徴とする前記〔13〕記載のホイップドクリーム。
以下に、具体的な実施例等を説明するが、本発明(本開示)はこれに限定されるものではない。なお、以下、「質量%」を「%」とする。
<参考例1>
参考例1として、乳脂クリーム(以下、「生クリーム」という)と、合成クリームとを図1に示すように、それぞれ0:100、25:75、50:50、75:25、100:20の割合で乳化処理し、ホイップして各ホイップドクリームを得た。ホイップ直後(図中D+0)の各ホイップドクリームの貯蔵弾性率と、ホイップ後1日冷蔵保存(4℃)した各ホイップクリームの貯蔵弾性率(図中D+1)を測定し、その結果を図1に示した。
参考例1の生クリームは、生乳を分離してできる「生クリーム」を原料とし、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は3MPaとしたものを使用した。
参考例1の合成クリームは、後述する表3に示す配合で、本開示のカゼイン分解物を添加しない「比較例2の合成クリーム」を使用した。
このように、生クリーム100%及び合成クリーム100%では、冷蔵保存中の保形性の低下が少なく、貯蔵弾性率500Pa以上となっている。通常貯蔵弾性率が500Pa以上あれば、保形性を必要とするホイップドクリームとして使用可能である。
しかしながら、生クリームと、植物油脂含有の合成クリーム、乳脂肪含有の合成クリーム、又は乳油脂及び植物油脂含有の合成クリームとを混合した、従来のホイップ用クリームを使用した場合、冷蔵保存中に保形性が低下し、貯蔵弾性率が500pa未満となっているため、保形性を必要とするホイップドクリームとしては適していない。
なお、ホイップ後5時間経過すると、貯蔵弾性率はなだらかな値を示すため、冷蔵保存下1日程度を目安に貯蔵弾性率を測定することで、冷蔵保存下の保形性が良好に保持できるホイップドクリームと判断することができる。
本開示の実施例等において、「脂肪球径」、「非蛋白態窒素比率」、「貯蔵弾性率」、「総タンパク質量」及び「脂肪率」について、上述の<脂肪粒径の測定方法>、<非蛋白態窒素比率の算出方法>、<ホイップドクリームの貯蔵弾性率の測定方法>、<クリーム中の総蛋白質量の測定方法>及び<クリーム中の脂肪率(総脂肪量)の測定方法>を用いて測定する。
<製造例1:乳蛋白質分解物(カゼイン分解物):パンクレアチン>
乳酸カゼイン(フォンテラ製、純度90%)を13%の濃度で精製水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.7に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全溶解し、カゼイン溶液を得た。50℃に冷却した後、カゼイン溶液にパンクレアチン(天野エンザイム社製)を固形分量でカゼイン当たり0.025%添加し、50℃で5時間保持し酵素分解を行った。次いで、85℃で10分間加熱して酵素を失活させた後、25℃に冷却後、常法にて濃縮し、噴霧乾燥を行い、カゼイン分解物粉末を得た。カゼイン分解物粉末の非蛋白態窒素比率は20%であった。
<製造例2:乳蛋白質分解物(カゼイン分解物):ペプシン>
カゼインナトリウム(タツア社製)400gを3600gの水に分散させ、10%水酸化ナトリウムを添加してカゼインを完全に溶解させた。次いで10%クエン酸を添加し、溶液のpHを5.6に調整後、カゼイン溶液にペプシン(天野エンザイム社製)6g添加し、45℃で5時間保持して酵素分解を行った。次いで、90℃で10分間加熱してペプシンを失活させた後、常法にて濃縮し、噴霧乾燥を行い、カゼイン分解物粉末を得た。カゼイン分解物粉末の非蛋白態窒素比率は11%であった。
<製造例3:乳蛋白質分解物(カゼイン分解物):パパイン>
乳酸カゼイン(フォンテラ製、純度90%)を13%の濃度で精製水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.7に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全溶解し、カゼイン溶液を得た。50℃に冷却した後、カゼイン溶液にパパインW−40(天野エンザイム社製)を固形分量でカゼイン当たり0.1%添加し、55℃で5時間保持し酵素分解を行った。次いで、85℃で10分間加熱して酵素を失活させた後、25℃に冷却後、常法にて濃縮し、噴霧乾燥を行い、カゼイン分解物粉末を得た。カゼイン分解物粉末の非蛋白態窒素比率は10%であった。
<実施例1及び比較例1:乳脂肪球径>
実施例1の「生クリーム」として、生乳を分離してできる「生クリーム(脂肪45%)」原料を、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は2MPaとしたものを使用した。
比較例1の「生クリーム」は、特開2009−378969号公報(特許文献1)に記載の技術である脂肪球径2.9μm以下の生クリームになるように製造したものである。
比較例1の「生クリーム」として、少ない工程で脂肪球径を2.9μm以下とするために、「生クリーム」原料にポリグリセリン脂肪酸エステル0.1%配合し、ホモジナイザーの均質圧を、60〜80℃、5MPaで乳化処理したものを使用した。
実施例1の水中油型乳化物には、上記<製造例1>に従って製造した「カゼイン分解物A(パンクレアチン)」を使用した。
実施例1の水中油型乳化物は、表1に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、60〜80℃、均質圧5MPaとして得られたものである。
なお、本開示の貯蔵弾性率を求める際、ホイップ後に冷蔵保存下5時間を経過すると変化がなだらかになるため、ホイップ後に冷蔵保存下5時間経過後に貯蔵弾性率を測定することで、冷蔵保存下での保形性が良好であるか否かを判断することができる。このため、本開示では、ホイップ後5分以内の貯蔵弾性率及びホイップ後に冷蔵保存下22〜26時間以内で貯蔵弾性率を測定することとした。
実施例1の生クリーム:実施例1の水中油型乳化物の配合割合を1:1にて混合して実施例1のホイップ用クリームを得た。このとき、実施例1のカゼイン分解物Aを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.35:50であった。
また、実施例1の生クリームを、比較例1の生クリームに代えた以外は、同様にして比較例1のホイップ用クリームを得た。
この各ホイップ用クリームをそれぞれホイップし、各ホイップドクリームを得た。
実施例1及び比較例1の各ホイップドクリームの乳風味感を、専門パネラー15名による官能試験にて評価した。その合計点及び平均点を表2に示す。
この結果より、生クリームの脂肪球径を2.9μm以下と細かくすると、乳風味感が低下する。特許文献1に開示の脂肪球径0.5〜2.9μmに調整するという技術を用いて得たホイップ用クリームでは、乳風味を良好にすると共に保形性を良好に保持するホイップドクリームを得ることができなかった。これに対し、脂肪球径3.0μm以上の生クリームを用いる本技術のホイップ用クリームでは、乳風味感を増強しながら、冷蔵保存時の保形性が良好なホイップドクリームを得ることが可能となった。
よって、本技術において、生クリームの脂肪球径を3.0μm以上とすることは重要である。
<乳風味感スコア基準>
試食のサンプルを以下の基準にて評価し、評点を付け、その合計点をそのサンプルの評価点とする。合計点の平均が3点以上のサンプルを合格とする。
5点:乳風味を強く感じる。
4点:乳風味をやや強く感じる。
3点:乳風味を普通に感じる。
2点:乳風味をやや感じる。
1点:乳風味をあまり感じない。
<実施例2及び比較例2:本技術の乳蛋白質分解物>
実施例2及び比較例2の「生クリーム」として、生乳を分離してできる「生クリーム(脂肪45%)」原料を、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は2MPaとしたものを使用した。この生クリームは、乳脂肪球径3.0〜4.0μmの範囲内であった。
実施例2のカゼイン分解物A(パンクレアチン)は、上記<製造例1>の製造方法にて、実施例1と同様のものを使用した。
実施例2の水中油型乳化物及び比較例2の合成クリームは、それぞれ、表3に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。この合成クリームは、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
なお、実施例2の水中油型乳化物は、実施例2のカゼイン分解物Aを含有したものである。このとき、実施例2のカゼイン分解物A(1.62%)を差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.19:50であった。この水中油型乳化物は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
また、比較例2の合成クリームは、実施例2のカゼイン分解物Aを使用せず、脱脂粉乳を含有したものである。
生クリームと、実施例2の水中油型乳化物とを1:1で混合して実施例2のホイップ用クリームを得た。また、生クリームと、比較例2の合成クリームとを1:1で混合して比較例2のホイップ用クリームを得た。
各ホイップ用クリームをホイップして、ホイップクリームを得た。ホイップ直後とホイップ後冷蔵保存下24時間時に、実施例2及び比較例2の各ホイップドクリームの貯蔵弾性率を測定し、その結果を表4に示す。
表4のとおり、本技術のカゼイン分解物を使用した本技術品(実施例2)は、保形性の合格基準である冷蔵保存下の貯蔵弾性率が500Pa以上であり、合格基準を上回っていた。カゼイン分解物を使用しない従来技術品の冷蔵保存下の貯蔵弾性率は、合格基準の1/7以下しかなかった。このように、本技術品(実施例2)は、冷蔵後の保形性に優れたものであった。
また、本技術品(実施例2)は、良好な乳風味を有していた。
よって、本技術において、良好な保形性保持を有するホイップクリームを得るため、本技術のカゼイン分解物等の乳蛋白質分解物を使用することは重要である。
<試験例1:乳蛋白質分解物の好適な使用>
試験例1の「生クリーム」として、生乳を分離してできる「生クリーム(脂肪45%)」原料を、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は2MPaとしたものを使用した。この生クリームは、乳脂肪球径3.0〜4.0μmの範囲内であった。
試験例1のカゼイン分解物A(パンクレアチン)は、上記<製造例1>の製造方法にて得られる、実施例1と同様のものを使用した。
表5の各水中油型乳化物は、それぞれ、表5に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。
使用した合成クリーム及び水中油型乳化物は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
45%脂肪の生クリーム(蛋白質1.6%)と、表5の各水中油型乳化物(蛋白質1.6%:純植物脂肪クリーム)とを1:1でそれぞれ混合して各ホイップ用クリーム(蛋白質1.6%)を得た。このとき、試験例1のカゼイン分解物Aを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比は、水中油型乳化物1a〜1gにおいて、それぞれ、50:50、49.8:50、49.762:50、49.73:50、49.6:50、49.37:50、49.19:50であり、約1:1であった。
各ホイップ用クリームを、ホイップした後、1日(24時間)冷蔵保存したものの貯蔵弾性率を測定し、表6に示した。
ホイップ用クリームにカゼイン分解物0.24%以上、かつホイップ用クリームにおける総蛋白質に占めるカゼイン蛋白質分解物の割合が15%以上であることによって、ホイップ後に良好な保形性を有するホイップクリームとなった。これらホイップドクリームは、良好な乳風味を有していた。
よって、本技術において、良好な保形性保持を有するホイップドクリームを得るため、本技術のカゼイン分解物等の乳蛋白質分解物を、ホイップ用クリームに0.24%以上、かつホイップ用クリームにおける総蛋白質に占める乳蛋白質分解物の割合が15%以上にて使用することは重要である。
<試験例2:乳蛋白質分解物の好適な非蛋白態窒素比率>
上記<製造例1:乳蛋白質分解物(カゼイン分解物A):パンクレアチン>に従って、カゼイン分解物中の蛋白態窒素比率が2.3%、5%、14.7%、25%、32.5%になるように調製して、各蛋白態窒素比率のカゼイン分解物A(パンクレアチン)を得た。
試験例2の各水中油型乳化物は、上記「蛋白態窒素比率2.3%、5%、14.7%、25%、32.5%の各カゼイン分解物(それぞれ2a、2b,2c,2d,2d)」を使用し、表7に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。このとき、試験例2のカゼイン分解物Aを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.37:50であった。
試験例2の各水中油型乳化物は、脂肪含量46%、総蛋白質含量1.6%のものであり、水中油型乳化物に含まれる総蛋白質に占めるカゼイン分解物の割合は、79%であった。
「生クリーム」は、実施例2の生クリームの製造方法と同様にして、脂肪率45%、脂乳脂肪球径3.0〜4.0μmの範囲内のものを得た。「合成クリーム」及び「水中油型乳化物」は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
試験例2の生クリーム:試験例2の各水中油型乳化物の配合質量割合を1:1にて混合してホイップ用クリームを得た。この各ホイップ用クリームをそれぞれホイップし、各ホイップドクリームを得た。
表8に示すように、カゼイン分解物の非蛋白窒素比率が5〜32.5%であることによって、ホイップ後に良好な保形性を有するホイップドクリームとなった。これらホイップドクリームは、良好な乳風味を有していた。
よって、本技術において、良好な保形性保持を有するホイップドクリームを得るため、本技術のカゼイン分解物等の乳蛋白質分解物の非蛋白窒素比率が5〜32.5%であることは重要である。
<試験例3:乳蛋白質分解物の好適な含有量>
試験例3の「生クリーム」として、生乳を分離してできる「生クリーム(脂肪45%)」原料を、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は2MPaとしたものを使用した。この生クリームは、乳脂肪球径3.0μm以上であった。使用した合成クリームは、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
試験例3のカゼイン分解物は、上記<製造例1>の製造方法にて得られる、実施例1と同様のものを使用した。
試験例3の各水中油型乳化物は、それぞれ、表9に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。試験例3の各水中油型乳化物は、脂肪含量46%のものである。使用した水中油型乳化物は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
また、試験例3のカゼイン分解物が各水中油型乳化物3a、3b及び3cに含まれる量は、1.0%、1.6%及び2.0%である。このとき、試験例3のカゼイン分解物Aを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比は、それぞれ49.445:50、49.2:50、48.89:50であり、約1:1であった。
試験例3の生クリーム:試験例3の各水中油型乳化物の配合質量割合を1:1にて混合してホイップ用クリームを得た。この各ホイップ用クリームをそれぞれホイップし、各ホイップドクリームを得た。
なお、各水中油型乳化物3a、3b及び3cを配合したホイップ用クリームの総蛋白質含有量は、それぞれ1.3%、1.6%及び1.9%であり、また、試験例3のカゼイン分解物がホイップ用クリームに含まれる量は、それぞれ、0.5%、0.8%及び1.1%であり、またホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める試験例3のカゼイン分解物の割合は、それぞれ38.5%、50%及び55.6%であった。
各水中油型乳化物3a、3b及び3cを含有する各ホイップドクリーム3a、3b及び3cのホイップ直後及び冷蔵保存後の貯蔵弾性率を表10に示す。
これらホイップドクリームは、冷蔵保存後の貯蔵弾性率500Pa以上であるので、良好な保形性を保持していた。
よって、ホイップ用クリームの総蛋白質量1.3〜1.9%、乳蛋白質分解物含量0.5〜1.1%、総蛋白質に占める乳蛋白質分解物割合38.5〜55.6%の範囲で、効果が認められた。
<試験例4:カゼイン分解物の分解酵素>
試験例4のカゼイン分解物B(ペプシン)は、上記<製造例2>の製造方法にて得られたものを使用した。
試験例4のカゼイン分解物C(パパイン)は、上記<製造例3>の製造方法にて得られたものを使用した。
試験例4の「生クリーム」として、試験例3の「生クリーム(脂肪45%)、乳脂肪球径3.0μm以上」のものを使用した。使用した合成クリーム及び水中油型乳化物は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
以下に示すように、異なる蛋白質分解酵素を使用しても、良好な保形性を保持するホイップドクリームを得ることができる。
試験例4の水中油型乳化物4aは、表11に示す、試験例4のカゼイン分解物B(ペプシン)を含む配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。試験例の水中油型乳化物4aは、脂肪含量46%のものである。また、試験例4のカゼイン分解物B(ペプシン)が水中油型乳化物4aに含まれる量は、1.62%である。このとき、試験例4のカゼイン分解物Bを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.19:50であった。
また、カゼイン分解物Bを使用せず脱脂粉乳を使用した以外は同様にして試験例4の合成クリーム4bを得た。
試験例4の生クリーム:試験例4の水中油型乳化物4aの各水中油型乳化物の配合質量割合を1:1にて混合してホイップ用クリーム4aを得た。また、水中油型乳化物4aを、試験例4の合成クリーム4bに代えた以外は、同様にしてホイップ用クリーム4bを得た。
この各ホイップ用クリームをそれぞれホイップし、各ホイップドクリームを得た。
なお、水中油型乳化物4aを配合したホイップ用クリーム4aの総蛋白質含有量は、1.6%であり、また、試験例4のカゼイン分解物Bがホイップ用クリーム4aに含まれる量は、0.8%であり、またホイップ用クリーム4aに含まれる総蛋白質に占める試験例4のカゼイン分解物Bの割合は、50%であった。
水中油型乳化物4aを含有する各ホイップドクリーム4aのホイップ直後及び冷蔵保存後の貯蔵弾性率を表12に示す。このホイップドクリーム4aは、冷蔵保存後の貯蔵弾性率500Pa以上であるので、良好な保形性を保持していた。このホイップドクリームは、良好な乳風味を有していた。
試験例4の水中油型乳化物4cは、表11に示す、試験例4のカゼイン分解物C(パパイン)を含む配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。試験例の水中油型乳化物4cは、脂肪含量46%のものである。また、試験例4のカゼイン分解物C(パパイン)が水中油型乳化物4cに含まれる量は、16.2%である。このとき、試験例4のカゼイン分解物Cを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.19:50であった。
また、カゼイン分解物Cを使用せず脱脂粉乳を使用した以外は同様にして試験例4の合成クリーム4dを得た。
試験例4の生クリーム:試験例4の水中油型乳化物4cの各水中油型乳化物の配合質量割合を1:1にて混合してホイップ用クリーム4cを得た。また、水中油型乳化物4cを、試験例4の合成クリーム4dに代えた以外は、同様にしてホイップ用クリーム4dを得た。
この各ホイップ用クリームをそれぞれホイップし、各ホイップドクリームを得た。
なお、水中油型乳化物4cを配合したホイップ用クリーム4cの総蛋白質含有量は、1.6%であり、また、試験例4のカゼイン分解物Bがホイップ用クリーム4cに含まれる量は、0.8%であり、またホイップ用クリーム4cに含まれる総蛋白質に占める試験例4のカゼイン分解物Cの割合は、50%であった。
水中油型乳化物4cを含有する各ホイップドクリーム4cのホイップ直後及び冷蔵保存後の貯蔵弾性率を表13に示す。このホイップドクリーム4cは、冷蔵保存後の貯蔵弾性率500Pa以上であるので、良好な保形性を保持していた。このホイップドクリームは、良好な乳風味を有していた。
<実施例3−4及び比較例3>
実施例3及び比較例3の「生クリーム」として、生乳を分離してできる「生クリーム(脂肪45%)」原料を、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧は2MPaとしたものを使用した。この生クリームは、乳脂肪球径3.0〜4.0μmの範囲内のものであった。
実施例3のカゼイン分解物A(パンクレアチン)は、上記<製造例1>の製造方法にて、実施例1と同様のものを使用した。
比較例3の合成クリームは、特許文献2(特開2005−78号公報)の開示の「乳化組成物をポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルを必須成分として含有すると、ホイップドクリームの保形性を向上できる」という技術を用いて調製したものである。
実施例3の水中油型乳化物及び比較例3の合成クリームは、それぞれ、表14に示す配合原料を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化し、均質圧5MPaとして得られたものである。なお、実施例3の水中油型乳化物は、実施例3のカゼイン分解物を含有したものであるのに対し、比較例3の合成クリームは、実施例3のカゼイン分解物を使用せず、脱脂粉乳を含有したものである。使用した合成クリーム及び水中油型乳化物は、乳脂肪球径2.0μm以上3.0μm未満の範囲内であった。
生クリームと、実施例3の水中油型乳化物とを1:1で混合して実施例3のホイップ用クリームを得た。このとき、実施例3のカゼイン分解物Aを差し引いた合成クリーム原料:生クリームの配合比=49.19:50であった。
また、生クリームと、比較例3の合成クリームとを1:1で混合して比較例3のホイップ用クリームを得た。
各ホイップ用クリームをホイップして、ホイップドクリームを得た。ホイップ直後とホイップ後冷蔵保存下24時間時に、実施例3及び比較例3の各ホイップドクリームの貯蔵弾性率を測定し、その結果を表15に示す。
表15のとおり、本技術品であるカゼイン分解物を使用した本技術品は、保形性の合格基準である冷蔵保存下の貯蔵弾性率が500Pa以上であり、合格基準を上回っていた。カゼイン分解物を使用しない従来技術品の冷蔵保存下の貯蔵弾性率は、合格基準に及ばなかった。このように、本技術品は、冷蔵後の保形性に優れたものであった。また、実施例3のホイップドクリームは、良好な乳風味を有していた。
また、実施例4として、実施例3の合成クリーム原料:生クリーム=98.38:100(約1:1の配合比)質量部と、カゼイン分解物A1.62質量部とを混合し、乳化処理して実施例4のホイップ用クリームを得、これをホイップしホイップドクリームとした。実施例4のホイップドクリームの冷蔵保存下の貯蔵弾性率は500Pa以上であった。実施例3のホイップドクリームと比較したところ、実施例4のホイップドクリームは乳風味及び保形性の保持の点で、劣っていた。
よって、本技術において、良好な保形性保持を有するホイップドクリームを得るため、乳蛋白質分解物を使用することは重要である。また、ホイップ用クリーム原料を全て乳化処理する製造方法よりも、水中油型乳化物を調製後、これと生クリームとを混合し乳化処理する製造方法が、より良好なホイップ用クリームを得ることできる。

Claims (5)

  1. 植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを含有し、かつ以下の(a)〜(d)を満たす、ホイップ用クリーム。
    (a)前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であること、
    (b)前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であること、
    (c)前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合は15%以上であること、
    (d)前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含まれること。
  2. 前記乳蛋白質分解物が、カゼイン分解物である請求項1に記載のホイップ用クリーム。
  3. 生クリームと合成クリームとの質量比が以下の式を満たす、請求項1又は2に記載のホイップ用クリーム。
    [生クリーム]:[合成クリーム]=25:75〜75:25
  4. 植物脂肪、乳脂肪、又は乳脂肪及び植物脂肪に、乳蛋白質分解物を混合して乳化処理した水中油型乳化物を調製する水中油型乳化物調製工程と、
    前記水中油型乳化物に生クリームを混合してホイップ用クリームを得るクリーム混合工程とを有し、
    前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
    前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
    前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
    前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法。
  5. 植物脂肪を含有する合成クリーム、乳脂肪を含有する合成クリーム、又は乳脂肪及び植物脂肪を含有する合成クリームと、生クリームと、乳蛋白質分解物とを混合し、乳化処理して、ホイップ用クリームを得るクリーム調製工程を有し、
    前記生クリームの脂肪球径が3.0μm以上であり、
    前記乳蛋白質分解物の非蛋白態窒素比率が5〜32.5%であり、
    前記ホイップ用クリームに含まれる総蛋白質に占める前記乳蛋白質分解物の割合が15%以上であり、
    前記乳蛋白質分解物が前記ホイップ用クリームに0.24質量%以上含有することを特徴とするホイップ用クリームの製造方法。
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