JP2014190536A - ローディングカム装置及び摩擦ローラ式減速機 - Google Patents

ローディングカム装置及び摩擦ローラ式減速機 Download PDF

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Abstract

【課題】ローディングカム装置35の作動に伴うこのローディングカム装置35の軸方向厚さの増大に拘らず、保持器36が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止すると共に、この保持器36の強度及び剛性を確保する。
【解決手段】前記保持器36の軸方向両側面のうち、円周方向に関する位相が、前記各ポケット39、39から外れた部分の径方向外寄り部分に、ディスク38の基端面及びカム板37の片側面に向けて突出する突起40、40を設ける。又、これらディスク38の基端面及びカム板37の片側面のうちでこれら各突起40、40と対向する径方向外寄り部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部41、41を設ける。
【選択図】図1

Description

この発明は、例えば摩擦ローラ式減速機の太陽ローラを構成する1対の太陽ローラ素子を互いに近付く方向に押圧して、この摩擦ローラ式減速機のトラクション部の面圧を適正にするローディングカム装置、及び、このローディングカム装置を組み込んだ摩擦ローラ式減速機の改良に関する。
例えば特許文献1、2には、電気自動車の駆動源となる電動モータの効率を向上させて充電1回当りの走行可能距離を長くすべく、高速回転する小型の電動モータの出力軸の回転を減速してから駆動輪に伝達する為に、摩擦ローラ式減速機を使用する事が記載されている。図5〜10は、前記特許文献2に記載された摩擦ローラ式減速機を示している。
この摩擦ローラ式減速機1は、入力軸2により太陽ローラ3を回転駆動し、この太陽ローラ3の回転を、複数個の中間ローラ4、4を介して環状ローラ5に伝達し、この環状ローラ5の回転を出力軸6から取り出す様にしている。前記各中間ローラ4、4は、それぞれの中心部に設けた自転軸7、7を中心として自転するのみで、前記太陽ローラ3の周囲で公転する事はない。この太陽ローラ3は、互いに同じ形状を有する1対の太陽ローラ素子8、8を互いに同心に組み合わせて成り、これら両太陽ローラ素子8、8を軸方向両側から挟む位置に、1対のローディングカム装置9、9を設置している。これら各部は、軸方向中間部の径が大きく、両端部の径が小さくなった、段付円筒状のハウジング10内に収納している。
前記入力軸2の基半部(図5の右半部)は前記ハウジング10の入力側小径円筒部11の内側に入力側玉軸受ユニット12により、前記出力軸6は同じく出力側小径円筒部13の内側に出力側玉軸受ユニット14により、それぞれ回転自在に支持している。前記入力軸2と前記出力軸6とは互いに同心に配置しており、このうちの入力軸2の先端部を、この出力軸6の基端面中央部に形成した円形凹部15の内側に、ラジアル転がり軸受16により支持している。又、前記出力軸6の基端部は、断面L字形の連結部17により、前記環状ローラ5と連結している。
前記両太陽ローラ素子8、8は、前記入力軸2の先半部の周囲に、この入力軸2と同心に、この入力軸2に対する相対回転を可能に、且つ、互いの先端面(互いに対向する面)同士の間に隙間を介在させた状態で配置している。又、前記両ローディングカム装置9、9を構成する1対のカム板18、18は、前記入力軸2の中間部と先端部との2箇所位置で、前記両太陽ローラ素子8、8を軸方向両側から挟む位置に外嵌固定し、前記入力軸2と同期して回転する様にしている。そして、互いに対向する、前記両太陽ローラ素子8、8の基端面と前記両カム板18、18の片側面との、それぞれ円周方向複数箇所ずつに、被駆動側カム面19、19と駆動側カム面20、20とを設け、これら各カム面19、20同士の間にそれぞれ玉21、21を挟持して、前記両ローディングカム装置9、9を構成している。前記各カム面19、20は、軸方向に関する深さが円周方向に関して漸次変化するもので、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる。
前記入力軸2にトルクが入力されると、次の様にして、前記各ローラ3〜5の周面同士の転がり接触部である、各トラクション部の面圧を上昇させる。先ず、前記入力軸2にトルクが入力されていない状態では、図6の(A)に示す様に、前記両ローディングカム装置9、9を構成する前記各玉21、21が、前記各カム面19、20の底部若しくは底部に近い側に存在する。この状態では、前記両ローディングカム装置9、9の厚さ寸法が小さく、前記両太陽ローラ素子8、8同士の間隔が拡がっている。そして、前記各中間ローラ4、4が、前記太陽ローラ3及び前記環状ローラ5の径方向に関して外方に押される事はないか、仮に予圧ばねの弾力等により押されたとしても、押される力は小さい。
この状態から、前記入力軸2にトルクが入力される(前記摩擦ローラ式減速機1が起動する)と、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づき、図6の(B)に示す様に、前記両ローディングカム装置9、9の軸方向厚さが増大する。そして、前記両太陽ローラ素子8、8が、前記摩擦ローラ式減速機1の径方向に関して、前記各中間ローラ4の内側に食い込み、これら各中間ローラ4を、この径方向に関して外方に押す。この結果、前記各トラクション部の面圧が上昇して、これら各トラクション部に過大な滑りを発生させる事なく、前記太陽ローラ3から前記環状ローラ5に動力を伝達できる。尚、前記摩擦ローラ式減速機1に組み込む、前記両ローディングカム装置9、9は、それぞれを構成する太陽ローラ素子8とカム板18との間に、これら両部材8、18を周方向に相対変位させる方向の弾力を付与するばねを設けている。これら両部材8、18がこのばねの弾力に基づいて周方向に相対変位する事で、前記各玉21、21が、前記各カム面19、20の浅い側に乗り上げる傾向になり、前記両ローディングカム装置9、9により前記各トラクション部に予圧を付与できる。
前記摩擦ローラ式減速機1の運転時に前記各中間ローラ4、4は、それぞれの自転軸7、7を中心として回転すると同時に、伝達トルクの変動に伴って前記摩擦ローラ式減速機1の径方向に変位する。この理由は、前記両ローディングカム装置9、9が発生する押圧力が大きくなる程、これら両ローディングカム装置9、9が前記各中間ローラ4、4を、前記環状ローラ5の内周面に向けて押圧する力が大きくなる為である。この様な、前記各中間ローラ4、4の自転及び径方向変位を円滑に行わせる為、前記摩擦ローラ式減速機1では、例えば次の様な構造により前記各中間ローラ4、4を、前記環状ローラ5の内周面と前記太陽ローラ3の外周面との間の環状空間22内に設置している。前記各中間ローラ4、4を支持する為に、前記ハウジング10の大径円筒部23の軸方向片側を塞ぐ端板24の内側面に、図7〜8に示す様な支持フレーム25を支持固定している。この支持フレーム25は遊星歯車機構を構成するキャリアの如き構造を有するもので、それぞれが円環状として互いに同心に配置した1対のリム部26a、26bの円周方向等間隔複数箇所同士を、ステー27、27により結合固定して成る。この様な支持フレーム25は、前記リム部26aを前記端板24の内面にねじ止めする事により、前記大径円筒部23の内側に、前記太陽ローラ3と同心に支持固定している。
一方、前記各中間ローラ4、4は、それぞれ揺動フレーム28、28の先端部に、回転自在に支持している。これら各揺動フレーム28、28はそれぞれ、互いに平行な1対の支持板部29、29の基端縁同士を基部30で連結する事により、径方向に見た形状をコ字形としている。前記各中間ローラ4、4の自転軸7、7の端部は、それぞれ前記各揺動フレーム28、28の支持板部29、29の先端部に、玉軸受31、31により、回転自在に支持している。又、前記各揺動フレーム28、28の基端部両側面に互いに同心に突設した揺動軸32、32を、前記両リム部26a、26bの互いに整合する部分に形成した支持孔33、33にがたつきなく挿入している。
前記各揺動軸32、32と前記各自転軸7、7とは、互いに平行で、前記支持フレーム25の円周方向に関する位相が大きくずれている。具体的には、前記各揺動軸32、32と前記各自転軸7、7との円周方向に関するずれを可能な限り大きくすべく、これら各揺動軸32、32とこれら各自転軸7、7とを結ぶ仮想直線の方向を、前記支持フレーム25の中心をその中心とする仮想円弧に関する接線の方向に近くしている。この様な構成により前記各揺動フレーム28、28を前記支持フレーム25に対し、それぞれ揺動軸32、32を中心とする揺動変位を可能にして、前記各中間ローラ4、4を前記支持フレーム25に対し、ほぼこの支持フレーム25の径方向に、円滑に変位できる様に支持している。
前記各中間ローラ4、4の外周面は、軸方向中間部を単なる円筒面とし、両側部分を、前記両太陽ローラ素子8、8の外周面と同方向に同一角度傾斜した、部分円すい凸面状の傾斜面としている。従って、前記各ローラ3〜5の周面同士は互いに線接触し、前記各トラクション部の接触面積を確保できる。又、前記両ローディングカム装置9、9が発生する押圧力の差等に起因して前記各中間ローラ4、4が軸方向に変位する場合に、この変位が円滑に行われる様にしている。
更に、前記両太陽ローラ素子8、8の基端部外周面に、それぞれ外向フランジ状の鍔部34、34を設けている。即ち、これら両太陽ローラ素子8、8の外周面のうち、前記各中間ローラ4、4の外周面と転がり接触する部分は、先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面となっており、前記両鍔部34、34は、この傾斜面の基端部から、全周に亙り径方向外方に突出している。そして、これら両鍔部34、34を含む、前記両太陽ローラ素子8、8の基端面に、それぞれ前記各被駆動側カム面19、19を形成している。
上述の様に構成する従来の摩擦ローラ式減速機1は、次の様に作用して、前記入力軸2から前記出力軸6に動力を、減速すると同時にトルクを増大させつつ伝達する。
即ち、電動モータにより前記入力軸2を回転駆動すると、この入力軸2に外嵌した前記両カム板18、18が回転し、前記両太陽ローラ素子8、8が、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との係合に基づき、互いに近づく方向に押圧されつつ、前記入力軸2と同方向に同じ速度で回転する。そして、前記両太陽ローラ素子8、8により構成される前記太陽ローラ3の回転が、前記各中間ローラ4、4を介して前記環状ローラ5に伝わり、前記出力軸6から取り出される。前記各トラクション部の面圧は、前記両部材8、18同士の間に設けられたばねに基づく、これら両部材8、18を互いに逆方向に相対変位させる弾力に基づいて発生するカム部押圧力により、前記摩擦ローラ式減速機1の起動の瞬間から或る程度確保される。従って、この起動の瞬間から、前記各トラクション部で過大な滑りを発生させる事なく、動力伝達が開始される。
前記入力軸2に加わるトルクが増大すると、前記両ローディングカム装置9、9を構成する前記各玉21、21の、前記各カム面19、20への乗り上げ量が増大し、これら両ローディングカム装置9、9の軸方向厚さがより一層増大する。この結果、前記各トラクション部の面圧がより一層増大し、これら各トラクション部で、過大な滑りを発生する事なく、大きなトルクの伝達が行われる。これら各トラクション部の面圧は、前記入力軸2と前記出力軸6との間で伝達すべきトルクに応じた適正な値、具体的には必要最小限の値に適切な安全率を乗じた値に、自動的に調整される。この結果、前記両軸2、6同士の間で伝達されるトルクの変動に拘らず、前記各トラクション部で過大な滑りが発生したり、逆に、これら各トラクション部の転がり抵抗が徒に大きくなる事を防止できて、前記摩擦ローラ式減速機1の伝達効率を良好にできる。
しかも、前記各揺動フレーム28、28の揺動変位に基づいて前記各中間ローラ4、4が、前記太陽ローラ3及び前記環状ローラ5の径方向外方に、円滑に変位する。従って、前記各トラクション部の面圧が不均一になる事を防止できて、前記各トラクション部の面圧を適正にし、前記摩擦ローラ式減速機1の伝達効率を、より一層良好にできる。
上述の様な摩擦ローラ式減速機1は、伝達効率の向上の面から改良の余地がある。即ち、この摩擦ローラ式減速機1の運転時、前記両ローディングカム装置9、9を構成する前記各玉21、21は、前記入力軸2が回転している間中、前記両太陽ローラ素子8、8と、前記両カム板18、18との間で回転(公転)する。この回転に基づいて前記各玉21、21に加わる遠心力により、これら各玉21、21は、前記各カム面19、20のうちの径方向外寄り部分(図11の鎖線αで囲んだ部分)に強く押し付けられる。従って、前記両ローディングカム装置9、9が発生する軸方向の押圧力は、前記各玉21、21の、前記各カム面19、20への乗り上げ量を増大させる事により発生する力と、前記遠心力に基づく力の軸方向の分力Fとを合計した大きさとなる。又、この遠心力に基づく力は、前記入力軸2の回転速度、及び、前記各玉21、21と前記各カム面19、20との接触角により定まる。但し、上述の様な従来構造に於いて、この接触角を精度良く規制する事は難しい。この為、前記両ローディングカム装置9、9が発生する軸方向の押圧力が過度に大きくなり、前記各トラクション部の面圧が過度に大きくなる結果、前記摩擦ローラ式減速機1の伝達効率が低下する可能性がある。
上述の様な問題に対し、ローディングカム装置を構成する各玉に加わる遠心力を支承し、これら各玉の径方向位置を適正な状態に規制する為の保持器を、カム板と太陽ローラ素子との間に設置し、前記ローディングカム装置が発生する軸方向の力が、過大になるのを防止する事が考えられる。但し、この様な保持器を設けた場合にも、次の様な問題を生じる可能性がある。即ち、前記ローディングカム装置の作動に伴い前記カム板と前記太陽ローラ素子との間の隙間が大きくなると、これらカム板と太陽ローラ素子との間で前記保持器が倒れたり、軸方向にがたつく(この保持器の軸方向位置が、これらカム板と太陽ローラ素子との間の隙間の中央位置からずれる)事で、前記各玉の回転中心軸が正規の状態から傾斜する可能性がある。これに対し、特許文献3〜5には、保持器の軸方向両側面に突起を形成し、この突起によりこの保持器が倒れるのを防止する技術が記載されている。しかし、前記各特許文献3〜5に記載された構造の場合、前記各突起を、前記保持器の軸方向側面のうち、円周方向に関してポケットと同位相になる部分に形成している。この為、これら各ポケットを形成した部分に応力がより集中し易くなって、当該部分の強度及び剛性が低下する可能性がある。
特開2012−197930号公報 特開2012−207778号公報 特開平09−280342号公報 特開平11−63165号公報 特開平11−193856号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、押圧力の増大に伴うディスクとカム板との間の隙間の増大に拘らず、この隙間に設けた保持器が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止すると共に、この保持器の強度及び剛性を確保できるローディングカム装置、及び、このローディングカム装置を組み込んだ摩擦ローラ式減速機を実現すべく発明したものである。
本発明のローディングカム装置及び摩擦ローラ式減速機のうち、請求項1に記載したローディングカム装置は、カム板と、ディスクと、保持器と、複数個の玉とを備える。
このうちのカム板は、軸方向片側面を円周方向に関する凹凸である第一のカム面とし、円板状としている。
又、前記ディスクは、前記第一のカム面に対向する軸方向片側面を円周方向に関する凹凸である第二のカム面としている。
又、前記保持器は、前記第一のカム面と前記第二のカム面との間に装着され、円輪状としている。
又、前記各玉は、前記保持器に転動自在に保持された状態で、それぞれの転動面を前記第一、第二のカム面に接触させている。
特に、本発明のローディングカム装置に於いては、前記保持器の軸方向両側面のうちで、それぞれ円周方向に関する位相が前記各玉を保持する為のポケットから外れた部分である複数箇所に、前記カム板及び前記ディスクに向け突出した突起を設けている。又、これらカム板及びディスクの軸方向片側面のうち、これら各突起と対向する部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部を形成している。
上述の様な本発明のローディングカム装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記各突起を、円周方向に関する位相が、隣り合う前記各ポケット同士の中間部となる部分に形成する。
又、請求項3に記載した発明の様に、前記凹部の円周方向両端部の傾斜角度をθとし、前記保持器の中心軸(ローディングカム装置の回転中心)とこの凹部の径方向中央部との間の距離をRとし、前記第一、第二の両カム面の傾斜角度φとし、前記ディスク及び前記カム板の中心軸(ローディングカム装置の回転中心)とこれら第一、第二の両カム面の径方向中央部との間の距離をrとした場合に、(不可避的な製造誤差等、実用上問題を生じない程度の誤差を除き、)Rtanθ=rtanφの関係を満たすものとする。
又、請求項4に記載した発明の様に、前記各突起の軸方向高さを、前記カム板と前記ディスクとの間の隙間の軸方向厚さの最大値と最小値との差の1/2よりも大きくする。
又、請求項5に記載した摩擦ローラ式減速機は、前述した従来から知られている摩擦ローラ式減速機と同様に、入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、ローディングカム装置とを備える。
このうちの太陽ローラは軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成る。そして、前記両太陽ローラ素子の外周面を、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面とし、これら両傾斜面を転がり接触面としている。
又、前記環状ローラは、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置したもので、内周面を転がり接触面としている。
又、前記各中間ローラは、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持した状態で、それぞれの外周面を前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させている。
又、前記ローディングカム装置は、前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされたディスクと、この入力軸に、この入力軸と同期した回転を可能に支持したカム板との間に設けている。そして、この入力軸の回転に伴って前記ディスクを、相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させる。
更に、前記環状ローラと前記各自転軸を支持した支持フレームとのうちの一方の部材を、前記太陽ローラを中心とする回転を阻止した状態で支持し、他方の部材を前記出力軸に結合して、この他方の部材によりこの出力軸を回転駆動自在としている。
特に、本発明の摩擦ローラ式減速機に於いては、前記ローディングカム装置を、上述の様な本発明のローディングカム装置としている。
上述の様に構成する本発明のローディングカム装置及び摩擦ローラ式減速機によれば、
押圧力の増大に伴うディスクとカム板との間の隙間の増大に拘らず、この隙間に設けた保持器が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止すると共に、この保持器の強度及び剛性を確保できる。即ち、この保持器の軸方向両側面の円周方向複数箇所に突起を設けると共に、カム板及びディスクの軸方向片側面のうちでこれら各突起と対向する部分に、凹部を設けている。この為、これらカム板とディスクとの間の隙間が増大した場合にも、前記各突起と前記各凹部とを近接対向させる事ができて、前記保持器が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止できる。又、前記各突起を、この保持器の軸方向両側面のうちで、それぞれ円周方向に関する位相がポケットから外れた部分である複数箇所に形成している。この為、これら各ポケットを形成した部分に、過度に応力が集中するのを防止でき、前記保持器の強度及び剛性を確保できる。
本発明の実施の形態の第1例を示す分解斜視図。 同じく組み立てた状態で示す側面図。 駆動側、被駆動側各カム面と玉との係合状態を説明する為の模式図(a)と、図2のX部拡大図(b)。 本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。 従来構造の1例を示す断面図。 予圧付与の為の機構を説明する為の模式図。 中間ローラの自転軸を、太陽ローラ及び環状ローラの径方向に変位可能に支持する部分の構造を示す斜視図。 同じく分解斜視図。 揺動フレームと中間ローラとを組み合わせた中間ローラユニットを1個だけ取り出して示す斜視図。 更に前記中間ローラユニットを揺動フレームと中間ローラとに分けた状態で示す分解斜視図。 各玉に加わる遠心力による影響を説明する為の部分拡大断面図。
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、ローディングカム装置35の作動に伴いこのローディングカム装置35の軸方向厚さが増大した場合にも、このローディングカム装置35に組み込んだ保持器36が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止すると共に、この保持器36の強度及び剛性を確保する為の構造にある。その他の部分の構造及び作用に就いては、前述の図5〜10に示した、従来の摩擦ローラ式減速機に組み込んだローディングカム装置と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
本例の場合、前記ローディングカム装置35は、図示しない回転軸と、カム板37と、ディスク38と、複数個(図示の例の場合は3個)の玉21、21と、保持器36とを備える。このうちのカム板37は、前記回転軸の周囲に、この回転軸と同期した回転を可能に、且つ、軸方向の変位を阻止した状態で支持している。又、前記ディスク38は、前記回転軸の周囲に、この回転軸に対する相対回転及び軸方向変位を可能に支持している。そして、互いに対向する、前記ディスク38の基端面と前記カム板37の片側面との、それぞれ円周方向複数箇所ずつに、被駆動側カム面19と駆動側カム面20、20とを設け、これら両カム面19、20同士の間に、前記各玉21、21を、前記保持器36により転動自在に保持した状態で設けている。尚、本例の場合、これら各玉21、21を、セラミックス(例えば窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア)製としている。この為、前記各玉21、21を鉄系金属(高炭素クロム軸受鋼、ステンレス鋼等)により造った場合と比較して、前記回転軸が回転運動する際に、前記各玉21、21に加わる遠心力を小さく抑えられる。
又、前記保持器36は、円周方向複数箇所(図示の例の場合は3箇所)に、前記各玉21、21を転動自在に保持する為のポケット39、39を、互いに等間隔に形成している。更に、本例の場合、前記保持器36の軸方向両側面のうち、円周方向に関する位相が、前記各ポケット39、39から外れた部分である、隣り合うこれら各ポケット39、39同士の円周方向中間部の径方向外寄り部分に、前記ディスク38の基端面及び前記カム板37の片側面に向けて突出する突起40、40を、前記保持器36と一体に設けている。但し、これら各突起40、40は、この保持器36と別体に設け、この保持器36の軸方向両側面の円周方向複数箇所に溶接する事で設けたり、この保持器36の軸方向両側面の円周方向複数箇所に形成した円孔に、ピンを圧入する事で設けても良い。何れにしても、前記各突起40、40の軸方向高さhは、前記ローディングカム装置35の軸方向厚さdの最大値と最小値との差Δdの1/2よりも大きくしている(h>Δd/2)。
又、前記ディスク38の基端面及び前記カム板37の片側面のうちで前記各突起40、40と対向する径方向外寄り部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部41、41を設けている。これら各凹部41、41の円周方向に関する傾斜角度θは、前記各カム面19、20の同方向に関する傾斜角度をφとし、前記ローディングカム装置35の中心軸と前記各凹部41、41の径方向中央部との間の距離をRとし、この中心軸と前記各カム面19、20の径方向中央部との距離をrとした場合に、(不可避的な製造誤差等、実用上問題を生じない程度の誤差を除き、)Rtanθ=rtanφの関係を満たす様に規制している。これにより、前記各玉21、21の、前記各カム面19、20への乗り上げ量の増大に伴う前記ディスク38の基端面と前記カム板37の片側面との間の隙間の増大に拘らず、前記各突起40、40の先端部と前記各凹部41、41の底面とを近接対向させたままにできる。即ち、前記回転軸が停止している状態では、前記各玉21、21が、図3の(a)(A)に示す様に、前記各カム面19、20の最も深くなった部分に位置する。この状態では、前記各突起40、40の先端部は、図3の(b)(A)に示す様に、前記各凹部41、41のうち、軸方向に関する深さが最も深くなった円周方向中央部の底面に近接対向する。これに対して、前記回転軸が回転すると、前記各玉21、21が、図3の(a)(B)に示す様に、前記各カム面19、20の浅くなった部分に移動する。そして、前記ディスク38と前記カム板37との間隔を拡げる。この状態では、前記各突起40、40の先端部は、図3の(b)(B)に示す様に、前記各凹部41、41の端部寄り部分の底面に近接対向する。又、本例の場合、前記各突起40、40の軸方向高さhを、前記ローディングカム装置35の軸方向厚さdの最大値と最小値との差Δdの1/2よりも大きくしている為、前記ディスク38の基端面と前記カム板37の片側面との間の隙間の軸方向厚さが最大となった場合でも、前記各突起40、40と前記各凹部41、41との係合が外れる事はない。
上述の様な本例のローディングカム装置35によれば、このローディングカム装置35の作動に伴う前記ディスク38の基端面と前記カム板37の片側面との間の隙間の増大に拘らず、前記保持器36が倒れたり、軸方向にがたつくのを防止できる。即ち、前記隙間の増大に拘らず、前記各突起40、40の先端部と前記各凹部41、41の底面とが近接対向したままとなる。この為、前記保持器36が軸方向に変位する傾向となった場合、前記各突起40、40の先端部と前記各凹部41、41の底面とが当接して、前記保持器36が倒れたり、軸方向にがたつくのが防止される。又、本例の場合、前記各突起40、40を、前記保持器36の軸方向両側面のうち、円周方向に関する位相が、前記各ポケット39、39から外れた部分に形成している。この為、前記各玉21、21に加わる遠心力に基づいて、前記各ポケット39、39の内面から前記保持器36に加わる力の作用位置と、前記各突起40、40の存在に基づいてこの保持器36に加わる力の作用位置とが、円周方向にずれる。この結果、前記各ポケット39、39を形成した部分に応力が過度に集中するのを防止して、前記保持器36の耐久性を確保できる。
[実施の形態の第2例]
図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、突起40a、40aを、保持器36aの軸方向両側面のうちで円周方向に関する位相が、ポケット39、39から外れた部分の径方向内寄り部分に設けている。又、凹部41a、41aを、ディスク38aの基端面及びカム板37aの片側面のうちで前記各突起40a、40aと対向する径方向内寄り部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる状態で設けている。この構成により、前記保持器36aの回転に伴って、前記各突起40a、40aを設けた部分に生じる遠心力を抑えている。
その他の部分の構造及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
本発明のローディングカム装置を実施する場合、保持器の軸方向両側面に形成する突起の、径方向に関する形状は、上述した実施の形態の各例の形状に限らない。例えばこれら各突起を、前記保持器の径方向に関する中間部に形成したり、径方向に亙って形成する事もできる。
又、本発明のローディングカム装置は、例えば前述の図5〜10に示した様な、摩擦ローラ式減速機に組み込んで使用する。この場合に、出力軸と共に回転するローラは、必ずしも環状ローラである必要はない。即ち、遊星ローラ式の摩擦ローラ式減速機で、本発明を実施する事もできる。この場合には、各中間ローラを、太陽ローラの周囲で自転しつつ公転する遊星ローラとし、これら各遊星ローラを支持しているキャリアに、出力軸の基端部を、トルクの伝達を可能に結合する。
1 摩擦ローラ式減速機
2 入力軸
3 太陽ローラ
4 中間ローラ
5 環状ローラ
6 出力軸
7 自転軸
8 太陽ローラ素子
9 ローディングカム装置
10 ハウジング
11 入力側小径円筒部
12 入力側玉軸受ユニット
13 出力側小径円筒部
14 出力側玉軸受ユニット
15 円形凹部
16 ラジアル転がり軸受
17 連結部
18 カム板
19 被駆動側カム面
20 駆動側カム面
21 玉
22 環状空間
23 大径円筒部
24 端板
25 支持フレーム
26a、26b リム部
27 ステー
28 揺動フレーム
29 支持板部
30 基部
31 玉軸受
32 揺動軸
33 支持孔
34 鍔部
35 ローディングカム装置
36、36a 保持器
37、37a カム板
38、38a ディスク
39 ポケット
40、40a 突起
41、41a 凹部

Claims (5)

  1. 軸方向片側面を円周方向に関する凹凸である第一のカム面とした円板状のカム板と、この第一のカム面に対向する軸方向片側面を円周方向に関する凹凸である第二のカム面としたディスクと、前記第一のカム面とこの第二のカム面との間に装着された円輪状の保持器と、この保持器に転動自在に保持された状態で、それぞれの転動面を前記第一、第二の両カム面に接触させた複数の玉とから成るローディングカム装置に於いて、
    前記保持器の軸方向両側面のうちで、円周方向に関する位相が前記各玉を保持する為のポケットから外れた部分の円周方向複数箇所に、前記カム板及び前記ディスクに向け突出した突起を設けると共に、これらカム板及びディスクの軸方向片側面のうち、これら各突起と対向する部分に、軸方向に関する深さが、円周方向中央部で最も深く、同じく両端部に向かうに従って浅くなる凹部を形成している事を特徴とするローディングカム装置。
  2. 前記各突起を、円周方向に関する位相が、隣り合う前記各ポケット同士の中間部となる部分に形成している、請求項1に記載したローディングカム装置。
  3. 前記各凹部の円周方向両端部の傾斜角度をθとし、前記保持器の中心軸とこれら各凹部の径方向中央部との距離をRとし、前記第一、第二の両カム面の傾斜角度をφとし、前記ディスク及び前記カム板の中心軸とこれら第一、第二の両カム面の径方向中央部との間の距離をrとした場合に、Rtanθ=rtanφの関係を満たす、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したローディングカム装置。
  4. 前記各突起の軸方向高さを、前記カム板と前記ディスクとの間の隙間の軸方向厚さの最大値と最小値との差の1/2よりも大きくしている、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したローディングカム装置。
  5. 入力軸と、出力軸と、太陽ローラと、環状ローラと、複数個の中間ローラと、ローディングカム装置とを備え、
    このうちの太陽ローラは、軸方向に分割された1対の太陽ローラ素子を前記入力軸の周囲に、互いの先端面同士の間に隙間を介在させた状態で互いに同心に配置して成るもので、前記両太陽ローラ素子の外周面は、それぞれの先端面に向かうに従って外径が小さくなる方向に傾斜した傾斜面であって、これら両傾斜面を転がり接触面としており、
    前記環状ローラは、前記太陽ローラの周囲にこの太陽ローラと同心に配置されたもので、内周面を転がり接触面としており、
    前記各中間ローラは、前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面との間の環状空間の円周方向複数箇所に、それぞれが前記入力軸と平行に配置された自転軸を中心とする回転自在に支持された状態で、それぞれの外周面を前記太陽ローラの外周面と前記環状ローラの内周面とに転がり接触させており、
    前記ローディングカム装置は、前記両太陽ローラ素子のうちの少なくとも一方の太陽ローラ素子であり、前記入力軸に対する相対回転を可能とされたディスクと、この入力軸に、この入力軸と同期した回転を可能に支持したカム板との間に設けられて、この入力軸の回転に伴って前記ディスクを相手方の太陽ローラ素子に向けて軸方向に押圧しつつ回転させるものであり、
    前記環状ローラと前記各自転軸を支持した部材とのうちの一方の部材を、前記太陽ローラを中心とする回転を阻止した状態とし、他方の部材を前記出力軸に結合して、この他方の部材によりこの出力軸を回転駆動自在とした摩擦ローラ式減速機に於いて、
    前記ローディングカム装置が、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したローディングカム装置である事を特徴とする摩擦ローラ式減速機。
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