JP2014181261A - 抗微生物剤と香料を含有する経時的な色調変化が抑制された組成物 - Google Patents

抗微生物剤と香料を含有する経時的な色調変化が抑制された組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、含窒素化合物を含む抗微生物剤と、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及び/又はケトン系香料とを共存させた際に生じる経時的な色調変化を抑制し、色調を長期間安定に維持させる技術を創出することである。
【解決手段】含窒素化合物を含む抗微生物剤と、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及び/又はケトン系香料とを含む芳香性組成物において、有機酸を配合することにより、当該芳香性組成物の色調変化を抑制でき、色調を長期間安定に保持できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗微生物剤と香料を含有しながら、経時的な色調変化が抑制されている芳香性組成物に関する。
従来、便器、浴室の床、バスタブ、洗面、タイル、ガラス、金属等の硬質製品、繊維製品、革製品、プラスチック製品等に付着した雑菌を除去するために、抗微生物剤が使用されている。また、製品自体に防腐効果や防カビ効果を付与するために抗微生物剤が配合される場合もある。抗微生物剤としては、第4級アンモニウム塩、イソチアゾリン系化合物、イソベンゾチアゾリン系化合物、ピリチオン及びその金属塩、アミノ酸型カチオン性界面活性剤等の含窒素化合物が知られている。このような抗微生物剤を配合した製品には、その使用目的に応じて、界面活性剤等の洗浄成分と組み合わせて洗浄作用を備えさせたり、香料と組み合わせて芳香を付与したりすることにより、実用性や付加価値が高められている。特に、近年、抗微生物剤を配合した製品の使用感の向上や、当該製品を使用した空間の快適化等が重視されており、抗微生物剤と共に香料を配合し、抗菌作用と芳香性を兼ね備えさせた製品が多く開発されている。
しかしながら、抗微生物剤として使用される含窒素化合物と香料を併用した場合、経時的に黄色味を帯びたり、褐色に変色することがあり、使用を続けることによって商品の外観が損なわれる場合があった。商品の外観は、消費者が商品を選択する上での重要な要素の1つであり、使用開始時の鮮やかな色調を長期に亘って維持できないものは消費者に受け入れられないことから、前記含窒素化合物と香料を含む製品で生じる経時的な色調変化を抑制する技術が求められていた。
従来、抗微生物剤と香料の共存による変色を抑制する技術については幾つか報告されている。例えば、特許文献1には、0.5〜10質量%の香料と、当該香料の可溶化に必要な量の香料可溶化剤と、0.001〜1質量%の酸性染料と、0.005〜0.2質量%の亜硫酸塩とを含む水性液体組成物は、透明又は半透明の容器に充填しても、貯蔵中に色調の変化を引き起こさないことが報告されている。また、特許文献2には、界面活性剤、ビグアナイド系殺菌剤を含む洗浄剤組成物において、過酸化水素、ペルオキソ酸、それらの金属塩、及び金属キレート剤からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を配合することによって、貯蔵中の色調変化を抑制できることが報告されている。しかしながら、これらの技術では、変色抑制効果が充分でなかったり、変色抑制のために添加される成分自体によって香気が変質するという問題があった。そこで、抗微生物剤と香料を共存させても、経時的に生じる色調変化を抑制し、色調を長期間安定に保持するための新たな技術の創出が求められている。
特表平7−500862号公報 特開2005−29753号公報 特開2011−236293号公報
本発明者は、抗微生物剤と香料を併用することにより生じる変色(色調変化)について検討を重ねたところ、含窒素化合物を含む抗微生物剤と、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及び/又はケトン系香料が共存した際に、経時的に変色が生じることを明らかにした。そこで、本発明は、含窒素化合物を含む抗微生物剤と、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及び/又はケトン系香料とを共存させた際に生じる経時的な色調変化を抑制し、色調を長期間安定に維持させる技術を創出することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、含窒素化合物を含む抗微生物剤と、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及び/又はケトン系香料とを含む組成物において、有機酸を配合することにより、当該組成物の色調変化を抑制でき、色調を長期間安定に保持できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に検討を重ねることによって完成されたものである。
即ち、本発明は下記に示される態様の組成物を提供する。
項1.(i)含窒素化合物を含む抗微生物剤、
(ii)アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及びケトン系香料からなる群より選択される少なくとも1種の香料、並びに
(iii)有機酸及び/又はその塩
を含有することを特徴とする芳香性組成物。
項2.前記含窒素化合物が、グアニジン骨格を有する化合物、イソチアゾリン骨格を有する化合物、ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、及び第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載される芳香性組成物。
項3.前記含窒素化合物が、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ナトリウムピリチオン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4イソチアゾリン−3−オン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・PTS塩、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート、及びポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライド(PHMG)からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の芳香性組成物。
項4.前記香料が、アルデヒド系香料及び/又はアルコール系香料である、項1〜3のいずれかに記載の芳香性組成物。
項5.前記香料が、シトラール、ヘキシルシナミックアルデヒド、バニリン及びオイゲノールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜4のいずれかに記載の芳香性組成物。
項6.前記有機酸がヒドロキシ酸、ジカルボン酸及びアミノポリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、項1〜5のいずれかに記載される芳香性組成物。
項7.前記有機酸がリンゴ酸及び/又はクエン酸である、項1〜6のいずれかに記載の芳香性組成物。
項8.トイレ用洗浄剤又は除菌スプレーである、項1〜7のいずれかに記載の芳香性組成物。
項9.芳香剤又は消臭剤である、項1〜7のいずれかに記載の芳香性組成物。
本発明の組成物によれば、含窒素化合物を含む抗微生物剤と、特定の香料と、有機酸とを含むことにより、経時的な色調変化を抑制でき、外観性状を安定に保持することができる。また、本発明の組成物では、配合する有機酸が香気に悪影響を与えないので、香料本来の香気を変質させることなく揮散させることができる。
試験例1において、60℃で24時間加温した後の各組成物における変色抑制効果を示す写真である。 試験例6において、60で3日間加温を行った後の各組成物における変色抑制効果を示す写真である。 試験例7において、60℃で3日間加温した後の各組成物における変色抑制効果を示す写真である。
1.芳香性組成物
本発明の組成物は、(i)含窒素化合物を含む抗微生物剤、(ii)アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料、及びケトン系香料からなる群より選択される少なくとも1種の香料、並びに(iii)有機酸を含有することを特徴とする。以下、本発明の組成物について説明する。
(i)抗微生物剤
本発明の組成物に使用される抗微生物剤は、含窒素化合物を有効成分とするものである。抗微生物剤として使用される含窒素化合物については、化合物中に窒素原子を含み、対象物から雑菌を除いて減らす作用を備えることを限度として特に制限されず、従来抗微生物剤として公知の含窒素化合物を使用することができる。本明細書において、抗微生物剤とは、対象物から雑菌を除いて減らす目的で使用されるものを意味し、殺菌剤、消毒剤、防カビ剤、防腐剤、除菌剤も包含する概念である。
抗微生物剤として使用される含窒素化合物としては、例えば、化合物の構造中にアミン基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルファミド基、イソチオシアネート基、カルバメート基、グアニジン骨格、イソチアゾリン骨格、ベンゾイソチアゾリン骨格、ピリジン骨格、オキサゾール骨格、オキサゾリジン骨格、キノリン骨格、イミダゾール骨格、トリアジン骨格、トリアゾール骨格、ヒダントイン骨格、ピロリドン骨格、第4級窒素原子のうち、少なくともいずれか1つを有する化合物が挙げられる。また、抗微生物剤として、他に、アミン塩型カチオン性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等の除菌作用を有する界面活性剤が挙げられる。以下、これらの含窒素化合物について具体例を挙げて詳述する。
[アミン基を有する化合物]
アミン基とは、アンモニアの水素原子の1個、2個又は3個をそれぞれ1個、2個又は3個のアルキル基又はアリール基で置換して得られる基を指す。本発明において、抗微生物剤として使用できるアミン基を有する化合物としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド等の炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシド;ビス(3−アミノプロピル)デシルアミン(一般名 トリアルキルトリアミン)等のアミン化合物が挙げられる。
[イミド基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるイミド基を有する化合物としては、例えば、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N,N−ジメチル−N−(フルオロジクロロメチルチオ)−N−フェニルスルファミド等のイミド系化合物が挙げられる。
[シアノ基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるシアノ基を有する化合物としては、例えば、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、5−クロロ−2,4,6−トリフロロイソフタロニトリル、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等のニトリル系化合物が挙げられる。
[ニトロ基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるニトロ基を有する化合物としては、例えば、3−(5−ニトロフルフリリデンアミノ)−4,5−ジヒドロオキサゾール−2(3H)−オン(一般名 フラゾリドン)、3−[[(5−ニトロ−2−フリル)メチレン]アミノ]−2,5−ジオキソイミダゾリジン(一般名 ニトロフラントイン)、3−(ヒドロキシメチル)−1−[[(5−ニトロ−2−フラニル)メチレン]アミノ]−2,4−イミダゾリジンジオン(一般名 ニフルトイノール)等のニトロフラン系化合物;トリスヒドロキシメチルニトロメタン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,−3−ジオールが挙げられる。
[スルファミド基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるスルファミド基を有する化合物としては、例えば、4−アミノ−N−アセチルベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファセタミド)、4−アミノ−N−ピリミジン−2−イル−ベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファジアジン)、4−アミノ−N−(5,6−ジメトキシ−4−ピリミジニル)ベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファドキシン)、4−アミノ−N−(5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)ベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファメチゾール)、N−(5−メチルイソオキサゾール−3−イル)−4−アミノベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファメトキサゾール)、p−アミノベンゼンスルホンアミド(一般名 スルファニルアミド)、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロメチルチオ)−N’’−フェニルスルファミド(一般名 ジクロフルアニド)、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’(一般名 トリフルアニド)等のスルファミド系化合物が挙げられる。
[イソチオシアネート基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるイソチオシアネート基を有する化合物としては、例えば、アリルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート等が挙げられる。
[カルバメート基を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるカルバメート基を有する化合物としては、例えば、マンガンエチレンビスジチオカルバメート(一般名 マネブ)、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛(一般名 ジネブ)、(1−メチル−1,2−エタンジイル)ビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛(一般名 プロピネブ)、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド(一般名 チラム)、鉄ジメチルジチオカルバメート(一般名 ファーバム)、ナトリウムN−メチルジチオカルバメート(一般名 メタム)等のジチオカルバメート系化合物;3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメートが挙げられる。
[グアニジン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるグアニジン骨格を有する化合物としては、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニド、クロルヘキシジン塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド、ポリビグアナイド塩酸塩等のビグアニド系化合物;N,N’’’−[イミノビス(8,1−オクタンジイル)]ビスグアニジン・3酢酸(一般名 イミノクタジントリアセテート)、1,1−イミニオジ(オクタメチレン)ジグアニジウム=トリス(アルキルベンゼンスルホナート)(一般名 イミノクタジンアルベシル酸塩)、ポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライド(PHMG)等のグアニジン系化合物が挙げられる。
[イソチアゾリン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるイソチアゾリン骨格を有する化合物としては、具体的には、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
一般式(1)中、R1は、水素原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を示し、R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。
1における炭化水素基については、その炭素数は、特に制限されないが、例えば1〜20、好ましくは1〜14が挙げられる。R1を構成する炭化水素基として、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基及びアリール基等が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、1−プロピルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1−エチル−1−メチルペンチル、1,1−ジエチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−へキセニル、2−へキセニル、3−へキセニル、4−へキセニル、5−へキセニル等の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられる。
前記アルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−へキシニル、2−へキシニル、3−へキシニル、4−へキシニル、5−へキシニル等の炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
1において、炭化水素基に置換されてもよい置換基としては、例えば、水酸基;塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;アルデヒド基、ケトン基、エステル基等のカルボニル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フェノキシ等の炭素数6〜20(好ましくは炭素数6〜10)のアリールオキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基;フェニルチオ等の炭素数6〜20のアリールチオ基等が挙げられる。R1における炭化水素基が置換基で置換されている場合、当該置換基の数としては、例えば、1〜5個、好ましくは1〜3個が挙げられる。また、置換基の数が2個以上である場合には、当該置換基は、それぞれ同一であってもよく、また異なっていてもよい。
1において、置換されていてもよい炭化水素基としては、好ましくは無置換の炭化水素基、更に好ましくはアルキル基又はシクロアルキル基、より好ましくはメチル、エチル、n−ブチル、n−オクチル、シクロヘキシル、特に好ましくはメチルが挙げられる。
2及びR3において、ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中でも、好ましくは塩素原子が挙げられる。
また、R2又はR3において、置換されていてもよい炭化水素基としては、上記したR1で示される置換されていてもよい炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でも無置換の炭化水素基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましいものとして例示される。
2及びR3としては、同一又は異なって、それぞれ水素原子又はハロゲン原子が好ましく、水素原子又は塩素原子がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
抗微生物剤として使用されるイソチアゾリン骨格を有する化合物の具体例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−クロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらの中でも、本発明の芳香性組成物において色調変化の抑制効果をより一層有効に奏させるという観点から、好ましくは2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが挙げられる。
[ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物としては、具体的には、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
一般式(2)中、環Yは置換されていてもよいベンゼン環を示し、R4は水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を示す。
環Yのベンゼン環において、置換されていてもよい置換基としては、上記一般式(1)中のR1で示される置換されていてもよい炭化水素基の置換基と同様のものを挙げることができる。当該置換基として、好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。環Yのベンゼン環が置換基で置換されている場合、当該置換基の数としては、例えば、1〜4個、好ましくは1又は2個が挙げられる。また、置換基の数が2個以上である場合には、当該置換基は、それぞれ同一であってもよく、また異なっていてもよい。
環Yのベンゼン環として、好ましくは無置換のベンゼン環が挙げられる。
4において、置換されていてもよい炭化水素基としては、上記したR1で示される置換されていてもよい炭化水素基と同様のものが挙げられ、中でも無置換の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が更に好ましいものとして挙げられる。
4としては、好ましくは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、更に好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子が挙げられる。
抗微生物剤として使用されるベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物の具体例としては、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。これらの中でも、本発明の芳香性組成物において色調変化の抑制効果をより一層有効に奏させるという観点から、好ましくは1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンが挙げられる。
[ピリジン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるピリジン骨格を有する化合物としては、具体的には、ピリチオン、ピリチオンの金属塩、1−アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
ピリチオンは、1−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリジン−2−チオンとも称される化合物である。ピリチオンの金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;亜鉛、銅等の2価の金属塩が挙げられる。ピリチオンの金属塩として、具体的には、ナトリウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン等が挙げられる。1−アルキルピリジニウム塩として具体的には4,4−(メチレンジカルボニルジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロミド)等が挙げられる。
これらのピリジン骨格を有する化合物の中でも、より優れた除菌作用を発揮させつつ、後述する有機酸と併用した場合に色調変化がより一層有効に抑制されるという観点から、好ましくはピリチオン及びその金属塩、更に好ましくはピリチオンの金属塩、特に好ましくはナトリウムピリチオンが挙げられる。
[オキサゾール骨格又はオキサゾリジン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるオキサゾール骨格を有する化合物としては、例えば、(‐)−N−[[(S)−3−(3−フルオロ−4−モルフォリノフェニル)−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド(一般名 リネゾリド)、4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリジン等のオキサゾリジノン系化合物が挙げられる。
[キノリン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるキノリン骨格を有する化合物としては、例えば、2,2’−ヘキサデカメチレンジイソキノリニウムジクロリド、8−ヒドロキシキノリン、キノリン銅等が挙げられる。
[イミダゾール骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるイミダゾール骨格を有する化合物としては、例えば、メチル 2−ベンゾイミダゾールカルバメート、エチル2−ベンゾイミダゾールカルバメート、および2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系化合物、メトロニダゾール、チニダゾール等のニトロイミダゾール系化合物等が挙げられる。
[トリアジン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるトリアジン骨格を有する化合物としては、例えば、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,3−ビス(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン−2−オール(一般名 フルコナゾール)、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(ヒドロキシヘチル)−S−トリアジン(一般名 トリアジン)、α−[2−(4−クロロフェニルエチル)−α−(1,1−ジジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール(一般名 デブコナゾール)等が挙げられる。
[トリアゾール骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,3−ビス(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロパン−2−オール(一般名 フルコナゾール)、(2R,3S)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−2−ブタノール(一般名 ボリコナゾール)等が挙げられる。
[ヒダントイン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるヒダントイン骨格を有する化合物としては、例えば、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインや、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン(DMDMヒダントイン)、1,3−ビス−(ヒドロキシメチル)−5,5‘−ジメチル ヒダントイン(一般名 グライダント)等が挙げられる。
[ピロリドン骨格を有する化合物]
抗微生物剤として使用できるピロリドン骨格を有する化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドンとヨウ素等のハロゲンとの錯体化合物(例えば、ポビドンヨード)が挙げられる
[第4級窒素原子を有する化合物]
抗微生物剤として使用できる第4級窒素原子を有する化合物としては、第4級アンモニウム塩が挙げられる。本発明において抗微生物剤として使用される第4級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等のテトラ短鎖(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム塩;オクチルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、パルミチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、オクチルジメチルエチルアンモニウム塩、デシルジメチルエチルアンモニウム塩、ドデシルジメチルエチルアンモニウム塩、テトラデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、セチルジメチルエチルアンモニウム塩、ステアリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクチルジエチルメチルアンモニウム塩、デシルジエチルメチルアンモニウム塩、ドデシルジエチルメチルアンモニウム塩、テトラデシルジエチルメチルアンモニウム塩、セチルジエチルメチルアンモニウム塩、ステアリルジエチルメチルアンモニウム塩等の長鎖(炭素数8〜18のアルキル)トリ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)アンモニウム塩;ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジオクチルメチルエチルアンモニウム塩、ジデシルメチルエチルアンモニウム塩、ジドデシルメチルエチルアンモニウム塩、ジテトラデシルメチルエチルアンモニウム塩、ジセチルメチルエチルアンモニウム塩、ジステアリルメチルエチルアンモニウム塩等のジ長鎖(炭素数8〜18のアルキル)ジ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)アンモニウム塩;ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム等の長鎖(炭素数8〜18のアルキル)ジ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)ヒドロキシアルキル(炭素数1又は2)アンモニウム塩;[3(トリメトキシシリル)]プロピル(ジメチル)オクタデシルアンモニウム塩等のトリアルコキシシリルアルキル基(炭素数4〜10)を有するジ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)長鎖(炭素数8〜18のアルキル)アンモニウム塩;アミンナイトレート;ベンジルトリメチルアンモニウム塩;ベンザルコニウム塩;ベンゼトニウム塩等が挙げられる。
これらの第4級アンモニウム塩の中でも、好ましくはジ長鎖(炭素数8〜18のアルキル)ジ短鎖(炭素数1〜4のアルキル、好ましくは炭素数1又は2のアルキル)アンモニウム塩、更に好ましくはジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩が挙げられ、特に好ましくはジデシルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩を構成する塩としては、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化物;水酸化物;炭素数1〜5のスルホン酸エステル、硫酸エステル、硝酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはハロゲン化物、より好ましくは塩化物が挙げられる。
これらの第4級アンモニウム塩の中でも、より優れた除菌作用を発揮させつつ、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、好ましくはジ長鎖(炭素数8〜18のアルキル)ジ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)アンモニウムのハロゲン化物;更に好ましくはジオクチルジメチルアンモニウムのハロゲン化物、ジデシルジメチルアンモニウムのハロゲン化物、ジドデシルジメチルアンモニウムのハロゲン化物;より好ましくはジデシルジメチルアンモニウムのハロゲン化物が挙げられ、具体的には塩化ジデシルジメチルアンモニウムが好適な化合物として例示される。また、他に、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、パルミチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、長鎖(炭素数8〜18のアルキル)ジ短鎖(炭素数1又は2のアルキル)ヒドロキシアルキル(炭素数1又は2)アンモニウム塩のハロゲン化物(好ましくは塩化物)、硫酸エステル又はスルホン酸エステル、アミンナイトレートが好ましい化合物として挙げられる。
抗微生物剤として使用される具体的な第4級アンモニウム塩としては、例えば塩化ジデシルジメチルアンモニウム、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・PTS塩(p−トルエンスルホン酸塩)、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート、[3(トリメトキシシリル)プロピル]ジメチル(オクタデシル)アンモニウムクロライド等が例示される。本発明において、第4級アンモニウム塩として好ましくは、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・PTS塩(p−トルエンスルホン酸塩)、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレートが挙げられる。
[アミン塩型カチオン性界面活性剤]
抗微生物剤として使用されるアミン塩型カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等の脂肪族アミン酢酸塩が挙げられる。
[アミノ酸型両性界面活性剤]
抗微生物剤として使用されるアミノ酸型両性界面活性剤としては、例えば、炭素数8〜20のアルキル基を有するアルキルジアミノエチルグリシンが挙げられる。なお、アルキルジアミノエチルグリシンとしては、その塩酸塩やナトリウム塩等の塩を用いてもよい。
[ベタイン型両性界面活性剤]
抗微生物剤として使用されるベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン、デシルジヒドロキシプロピルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン挙げられる。
本発明の芳香性組成物に配合する抗微生物剤として、これらの含窒素化合物を1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の芳香性組成物に配合される抗微生物剤としては、好ましくはグアニジン骨格を有する化合物、イソチアゾリン骨格を有する化合物、ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、第4級窒素原子を有する化合物(より好ましくは第4級アンモニウム)が挙げられる。
本発明の芳香性組成物に配合される好ましい抗微生物剤の具体例としては、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ナトリウムピリチオン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4イソチアゾリン−3−オン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・PTS塩、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート、ポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライド(PHMG)挙げられる。とりわけ、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ナトリウムピリチオン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4イソチアゾリン−3−オン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート、ポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライド(PHMG)が好適に使用される。
本発明において抗微生物剤として使用可能な上記化合物を2種以上選択して使用する場合の組合せとしては、例えば、イソチアゾリン骨格を有する化合物とベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物の組合せが挙げられ、具体的には1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4イソチアゾリン−3−オンとの組合せが好適なものとして例示される。簡便には、これらの化合物の混合物を住化エンビロサイエンス株式会社より販売されているネオシントールBC890として商業的に入手可能である。
これらの抗微生物剤の中でも、とりわけ、カチオン性の含窒素化合物は、後述する香料との共存下で色調変化が著しくなる傾向があり、従来技術では、色調変化の抑制がとりわけ困難な抗微生物剤である。これに対して、本発明の芳香性組成物は、色調変化の抑制効果が優れており、カチオン性の含窒素化合物を含む抗微生物剤であっても、色調変化を有効に抑制できる。このように、従来技術では色調変化の抑制が特に困難であったカチオン性の含窒素化合物を用いても有効に色調変化を抑制できるという本発明の効果を鑑みれば、本発明で使用される抗菌剤の好適な例として、カチオン性の含窒素化合物が挙げられる。抗菌剤として使用されるカチオン性の含窒素化合物としては、具体的には、前記ピリジン骨格を有する化合物、第4級アンモニウム塩が好ましい化合物として例示される。
本発明の芳香性組成物中の抗微生物剤(含窒素化合物)の含有量としては、所望の除菌作用が得られる程度であれば特に限定されないが、例えば0.01〜30重量%、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは10〜30重量%が挙げられる。
(ii)香料
本発明の芳香性組成物は、香料として、アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料、及びケトン系香料よりなる群から選択される少なくとも1種が使用される。
アルデヒド系香料としては、従来公知のものから適宜選択され得るが、例えば不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルデヒド系香料が挙げられる。
アルデヒド系香料として、具体的には、ノニルアルデヒド、アルデヒド C−10(デシルアルデヒド)、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、2,6−ノナジエノール、シス−4−デセナール、ウンデシレンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、センテナール、ボロナール、セトナール、サリチルアルデヒド、マイラックアルデヒド、リラール、リリアール、トリプラール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、p−エチル−2,2−ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン、アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヘキシルアルデハイド、オクチルアルデハイド、トランス−2−ヘキセナール、マンダリンアルデハイド等が挙げられる。
これらのアルデヒド系香料の中でも、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、シトラール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、バニリン等が挙げられる。
アルコール系香料としては、従来公知のものから適宜選択され得るが、例えば不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルコール系香料が挙げられる。
アルコール系香料として、具体的には、3−オクタノール、リナロール、ゲラニオール、β−フェニルエチルアルコール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ターピネオール、l−メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、p−t−ブチルシクロヘキサノール、o−t−ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジメチルベンジルカルビノール、オイゲノール、ポリサントール、フェニルヘキサノール、ジヒドロミルセノール、シス−3−ヘキセノール、トランス−2−ヘキセノール、シンナミックアルコール、アニシックアルコール等が挙げられる。
これらのアルコール系香料の中でも、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、好ましくはオイゲノール等が挙げられる。
ラクトン系香料としては、従来公知のものから適宜選択され得るが、例えば不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するラクトン系香料成分が挙げられる。
ラクトン系香料として、具体的には、クマリン、ジヒドロクマリン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、シスジャスモラクトン、メチル−γ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、δ−テトラデカラクトン、α−ヘプチル−γ−バレロラクトン、γ−ヘキサデカラクトン、シクロペンタデカノリド、12−ケトシクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、シクロヘキサデセノリド、12−オキサ−16−ヘキサデカノリド、11−オキサ−16−ヘキサデカノリド、10−オキサ−16−ヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート等が挙げられる。
これらのラクトン系香料の中でも、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、好ましくは、クマリン等が挙げられる。
ケトン系香料成分としては、従来公知のものから適宜選択され得るが、例えば不飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するケトン系香料成分が挙げられる。
ケトン系香料として、具体的には、マルトール、ムスクケトン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、α−イオノン、β−イオノン、メチルイオノン、イロン、ダマスコン、ダイナスコン、ジヒドロジャスモン、シス−ジャスモン、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、l−カルボン、メントン、イソメントン、カンファー、イソ・イー・スーパー(登録商標)等が挙げられる。
これらのケトン系香料の中でも、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、好ましくは、マルトール、ムスクケトン等が挙げられる。
本発明の芳香性組成物において、これらの香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの香料の中でも、アルコール系香料及びアルデヒド系香料は、前記抗微生物剤との共存下で色調変化が著しくなる傾向があり、従来技術では、色調変化の抑制がとりわけ困難な香料である。これに対して、本発明の芳香性組成物は、色調変化の抑制効果が優れており、アルコール系香料及びアルデヒド系香料であっても、色調変化を有効に抑制できる。このように、従来技術では色調変化の抑制が特に困難であったアルコール系香料及びアルデヒド系香料を用いても有効に色調変化を抑制できるという本発明の効果を鑑みれば、本発明で使用される香料の好適な例として、アルコール系香料及びアルデヒド系香料が挙げられる。
本発明の芳香性組成物中の前記香料の含有量としては、当該芳香性組成物の用途に応じて、所望の芳香を備え得る範囲で適宜設定されるが、例えば0.003〜12重量%、好ましくは0.03〜12重量%、更に好ましくは0.3〜12重量%が挙げられる。
(iii)有機酸及び/又はその塩
本発明の芳香性組成物は、前記抗微生物剤及び香料に加えて、有機酸及び/又はその塩を含有する。このように有機酸及び/又はその塩を含有することによって、特定の抗微生物剤と特定の香料との共存によって生じる経時的な色調変化を抑制することが可能になる。
有機酸の種類については、特に制限されず、モノカルボン酸又はポリカルボン酸のいずれであってもよく、またヒドロキシ酸であってもよい。本発明において使用される有機酸として、より具体的には、グルコン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フマル酸等のジカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸等のアミノポリカルボン酸;グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、安息香酸、置換安息香酸、サリチル酸等のヒドロキシ酸等が挙げられる。これらの有機酸の中でも、色調変化をより一層有効に抑制させるという観点から、好ましくはヒドロキシ酸、ジカルボン酸、アミノポリカルボン酸が挙げられ、より好ましくはクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、エチレンジアミン四酢酸が挙げられ、更に好ましくはクエン酸、リンゴ酸が挙げられる。これらの有機酸は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機酸の塩の種類についても、特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩が挙げられる。これらの有機酸の塩は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の芳香性組成物において、これらの有機酸及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の芳香性組成物中の有機酸の含有量としては、例えば0.01〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%、更に好ましくは0.01〜0.3重量%が挙げられる。また、芳香性組成物中の有機酸及び/又はその塩の配合割合は、前記抗微生物剤1重量部に対して0.001〜2重量部、好ましくは0.001〜1重量部、更に好ましくは0.001〜0.5重量部が挙げられる。有機酸の含有量が前記範囲を充足することによって、前記含窒素化合物を含む抗微生物剤と前記香料を併用する際に問題となる色調変化をより一層効果的に抑制することが可能になる。
その他の成分
本発明の芳香性組成物は、その用途に応じて、各種添加剤を含有することができる。例えば、本発明の芳香性組成物を洗浄剤として使用する場合であれば、界面活性剤を含有することが望ましい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸、リン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミドベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。
本発明の芳香性組成物に界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば1〜80重量%、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜80重量%が挙げられる。
また、本発明の芳香性組成物に配合し得る他の添加剤としては、例えば、増粘剤、酸化防止剤、溶解剤、有機酸以外のpH調整剤、着色剤、消臭剤、キレート剤等が挙げられる。更に、本発明の芳香性組成物は、必要に応じて、前記(i)成分以外の抗微生物剤や前記(ii)成分以外の香料を含んでいてもよい。
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸塩、イソフラボン、α−トコフェロール等が挙げられる。
溶解剤としては、具体的には、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルエーテル化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;及びエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
有機酸以外のpH調整剤としては、リン酸、炭酸、それらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
着色剤としては、具体的には、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色220号、赤色221号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、赤色404号、赤色405号、黄色401号、青色404号等の有機顔料;青色1号、青色2号、青色3号、青色205号、黄色3号、黄色4号、黄色202号の(1)、黄色203号、赤色105号、赤色106号、赤色2号、赤色3号等の有機染料が例示される。
消臭剤としては、例えば、松、ヒノキ、笹、柿、茶等の植物抽出物や、塩化亜鉛等が挙げられる。
キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
本発明の芳香性組成物は、上記各成分を当該分野において通常使用される担体に溶解させて調製される。担体としては、水(イオン交換水、蒸留水、精製水等)等の水性担体が挙げられる。本発明の芳香性組成物において溶媒の配合量は、上記(i)〜(iii)成分及びその他の任意成分以外の残部に相当するように調整される。
本発明の芳香性組成物は、上記成分(i)〜(iii)及び必要に応じてその他の任意成分を混合することにより調製することができる。
2.芳香性組成物の用途及び収容容器
本発明の芳香性組成物は、香料によって香気を付与しつつ、抗微生物剤による除菌作用を発揮できるので、除菌作用を発揮させる製品、例えば、洗浄剤、除菌スプレー等として好適に使用される。
例えば、本発明の芳香性組成物を洗浄剤として使用する場合、当該洗浄剤として、具体的には、便器、浴室の床、バスタブ、タイル、ガラス、プラスチック製品等の硬質表面の洗浄剤が挙げられる。これらの中でも、本発明の芳香性組成物は、便器用の洗浄剤、特に水洗トイレのオンタク用洗浄剤、水洗トイレのリム部用洗浄剤等のトイレ用洗浄剤として好適に使用される。ここで、水洗トイレのオンタク用洗浄剤とは、水洗トイレの手洗い部上に設置して使用されるものを指し、芳香性組成物が収容された容器と水洗タンク手洗い部から給水される洗浄用の水とが接触することにより、芳香性組成物が容器から流出され、芳香性組成物が溶け込んだ水が便器内に放出されることにより便器を洗浄する洗浄剤である。また、水洗トイレのリム部用とは、水洗トイレの便器のリム部に取り付けて使用されるものを指し、芳香性組成物が収容された容器と便器に放出される便器洗浄用の水とが接触することにより、芳香性組成物が容器から流出され、芳香性組成物が溶け込んだ水が便器内に広がって便器を洗浄する洗浄剤である。
また、本発明の芳香性組成物を除菌スプレーとして使用する場合、当該除菌スプレーの除菌対象物として、具体的には、衣類、ソファー、絨毯、カーテン、寝具等の繊維製品;革製品、プラスチック製品、靴、トイレ等が挙げられる。
更に、本発明の芳香性組成物は、防腐、防カビ効果を奏し、雑菌の繁殖を抑制することができるので、香料を含む製品、例えば、芳香剤、消臭剤、化粧料、外用医薬品等の製品形態で使用することもできる。このような製品形態では、香料による芳香の付与と、雑菌の繁殖抑制を可能にしつつ、抗微生物剤と香料を併用することに起因する経時的な色調の変動を抑制することができる。
本発明の芳香性組成物を収容する容器については、特に制限されず、透明、半透明、不透明のいずれであってもよいが、本発明の芳香性組成物は色調を長期間安定に保持できることを鑑みれば、好ましくは透明又は半透明の容器が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下試験例において調製される芳香性組成物は、加温前又は日光に暴露する前はいずれも無色透明〜淡黄色であった。
試験例1:抗微生物剤と香料の併用によって生じる変色を抑制する効果
抗微生物剤及び香料の併用により生じる変色が、有機酸を添加することによって抑制されるかどうかを評価するため下記表1〜4に示される処方に従って各成分を混合し、可溶化されていない簡易処方の芳香性組成物を調製した。各芳香性組成物を60℃で24時間加温した後、下記の「ガードナー色相標準液による色調評価」に記載される方法に従って、各組成物における変色抑制効果について評価した。得られた結果を表1〜4に示す。
[ガードナー色相標準液による色調評価]
「ガードナー色相標準液」とは基準油脂分析試験法(JISK0071−1998)で定められている18段階の色相標準液であり、客観的な評価に利用される。数値(ガードナー色数)が高いほど濃い色であることを示す。ガードナー法で規定された色見本と各被検試料の色調を目視により比較し、同程度の色味と判断したガードナー色数を表中の「ガードナー法」の欄に示す。また、また、有機酸を含まない組成物(比較例)と比べた場合の変色の程度を、下記基準に従って判定した。
芳香性組成物の変色の判定に使用された基準を以下に示す。
◎:有機酸なしのものと比較して−5以上の色数の違いがあった。
○:有機酸なしのものと比較して色数の違いが−2〜−4であった。
×:有機酸なしのものと比較して色数の値に変化がない、又は−1しか色数の違いがなかった。
上記評価基準に基づいて○又は◎と判定された組成物は、目視した場合に顕著な色の変化が認められず、商品として問題のないものであった。
抗微生物剤として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物(ネオシントールBC890)を使用し、各種香料と有機酸(クエン酸又はリンゴ酸)とを組み合わせた処方の芳香性組成物について、色調変化の判定結果を下表1〜3に示す。また、60℃で24時間加温した後の各組成物の写真を図1Aに示す。
表1〜3、ならびに図1Aに示されるように、香料としてシトラール、オイゲノール、ヘキシルシンナミックアシッド、クマリン、マルトール、バニリン又はムスクケトンを含有し、抗微生物剤として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び2−メチル−4イソチアゾリン−3−オンの混合物を含有する組成物に、クエン酸又はリンゴ酸を組み合わせて配合することによって優れた変色抑制効果が認められた。
抗微生物剤としてナトリウムピリチオン(ホクサイドN38)を使用し、各種香料と有機酸(クエン酸又はリンゴ酸)とを組み合わせた処方の芳香性組成物について、色調変化の判定結果を下表4に示す。また、60℃で24時間加温した後の各組成物の写真を図1Bに示す。
表4及び図1Bに示されるように、香料としてシトラール、オイゲノール又はヘキシルシンナミックアルデヒドを含有し、抗微生物剤としてナトリウムピリチオンを含有する芳香性組成物に、クエン酸又はリンゴ酸を組み合わせて配合することによって優れた変色抑制効果が認められた。また、香料としてオイゲノール又はヘキシルシンナミックアルデヒドを用いた処方(実施例16,17,19、20)は、有機酸を配合することによってより顕著な変色抑制効果が得られることが示された。
なお、香料としてエステル系香料であるアントラニル酸メチルを用い、抗微生物剤(ネオシントールBC890又はホクサイドN38)と有機酸(リンゴ酸又はクエン酸)を含む組成物についても同様に色調変化の評価を行ったが、このような組成物では有機酸の含有の有無にかかわらず変色が生じなかった。
試験例2:芳香性組成物における変色抑制効果−1
下表5及び6に示す処方に従って各芳香性組成物を調製した。得られた芳香性組成物を60℃で48時間加温し、加温後の芳香性組成物について、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による評価方法により色調を評価した。結果を表5及び6に示す。
香料としてオイゲノール、抗微生物剤としてネオシントールを用いた場合には加温後の変色が顕著であったが、表5に示されるように、クエン酸又はリンゴ酸を併用することによって変色が抑制されることが明らかとなった。
表6に示されるように、抗微生物剤としてホクサイドN38(ナトリウムピリチオン)を用い、香料と共に配合した場合に生じる変色が、クエン酸又はリンゴ酸を配合することによって抑制されることが明らかとなった。また、このような変色抑制効果は、香料としてオイゲノールを使用した場合により顕著に奏されることが示された(実施例23、24)。
試験例3:芳香性組成物における変色抑制効果−2
下記表7及び8に示される処方に従って、芳香性組成物を調製した。得られた芳香性組成物を、1週間日光に暴露、又は60℃で3日間加温した後、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による評価方法により色調を評価した。結果を表7及び8に示す。
なお、透明なガラス瓶(マヨネーズ瓶)に入れて日光に一週間暴露した場合と60℃で3日間加温した場合の結果については、それぞれについて上記評価基準に基づいて変色抑制効果を判定し、両者の判定結果に相違がある場合には60℃で3日間加温した方を総合的な判定結果とした。
表7に示されるように、香料としてオイゲノール、抗微生物剤として1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及び2−メチル−4イソチアゾリン−3−オンの混合物を含む芳香性組成物は、日光に1週間暴露した場合、及び60℃で3日間加温すると変色が認められた(比較例14)。一方、比較例14で示された色調の変化は、当該組成物にアジピン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、又はコハク酸を添加すると効果的に抑制されることが明らかとなった(実施例27〜29)。
表8に示されるように、香料としてオイゲノール、抗微生物剤としてナトリウムピリチオンを含む芳香性組成物は、日光に1週間暴露した場合、及び60℃で3日間加温した場合の変色が著しかった(比較例15)。一方、比較例15で示された色調の変化は、酒石酸、エチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸、又はコハク酸を添加すると効果的に抑制されることが明らかとなった(実施例30〜32)。
試験例4:芳香性組成物における変色抑制効果−3
下表9に示される処方に従って、各組成物を調製し、60℃で3日間加温、又は日光に1週間暴露した後、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による色調評価方法により色調を評価した。結果を下表9に示す。なお、透明なガラス瓶(マヨネーズ瓶)に入れて日光に一週間暴露した場合と60℃で3日間加温した場合の結果については、それぞれについて上記評価基準に基づいて変色抑制効果を判定し、両者の判定結果に相違がある場合には60℃で3日間加温した結果を総合的な判定結果とした。
下表9に示される調合香料として、下記の香料を使用した。
[フローラル系調合香料]
アルデヒド系香料:シトラール(0.1%以下)
アルコール系香料:オイゲノール(1%以下)
ラクトン系香料:クマリン(5%以下)
ケトン系香料:ムスクケトン(1%以下)
残部は溶剤及び上記以外の香料成分により構成される。
表9に示されるように、抗微生物剤である塩化ジデシルジメチルアンモニウムと香料とを組み合わせて得られる芳香性組成物は、日光に1週間暴露、又は60℃で3日間加温した場合の変色が著しかった(比較例16)。比較例16により示された芳香性組成物の色調の変化は、当該組成物に有機酸を添加した場合に効果的に抑制されることが明らかとなった(実施例33〜37)。特に、有機酸として、フマル酸、酒石酸、コハク酸を使用した場合に、より顕著な変色抑制効果が認められた(実施例33,35,37)。
試験例5:芳香性組成物における変色抑制効果−4
抗微生物剤として、下記の化合物を使用した芳香性組成物において、有機酸(クエン酸)を配合することによる変色抑制効果を試験した。下表10に示される処方に従って同様に各組成物を調製し、60℃で24時間加温した後、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による色調評価方法により色調を評価した。結果を表10に示す。

表10に示されるように、抗微生物剤として第4級アンモニウム塩やビグアニド系化合物が香料と共に配合された芳香性組成物においても、有機酸(クエン酸)を配合することによって変色が効果的に抑制されることが明らかとなった。特に、抗微生物剤として、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド(実施例39)、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート(実施例43)、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート(実施例45)、ポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライド(実施例44)を抗微生物剤として使用した場合には色調の変化が著しかった(比較例18、22、23、24)ところ、有機酸を添加することによって、顕著な変色抑制効果が示された。
試験例6:芳香性組成物における変色抑制効果−5
下表11に示す処方に従って芳香性組成物を調製した。なお、香料として前記試験例4で使用したものと同じ調合香料を用いた。得られた芳香性組成物を60℃で3日間加温、又は1週間日光に暴露し、色調変化を評価した。色調変化については、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による評価方法により評価した。また、芳香性組成物を60℃で3日加温した後の除菌効果について評価した。
除菌効果の評価については日本薬局法に記載の「保存効力試験法」により行った。具体的には以下の通りである。
70%エタノールで滅菌した容器(マヨネーズ瓶)に、滅菌したスポイトで下表18に示される処方に従って、香料、界面活性剤、抗微生物剤、溶剤、有機酸の順に添加、混合して芳香性組成物を得て60℃で3日間加温した。加温後、液温が25℃になるまで室温で冷却した芳香性組成物、又は生理食塩水を、FALCON50mLチューブに9.9mLずつ分注し、各チューブに黄色ブドウ球菌(S.aureus)の菌液(SCDLP寒天培地で培養して得られたコロニーを濃度1〜2×108個/mLとなるように生理食塩水に溶解したもの)を100μLずつ添加した(このとき添加した菌数を初期菌数とした)。
芳香性組成物又は生理食塩水と、菌液とをボルテックスミキサーによりよく撹拌した後、室温(約25℃)に静置した(これをサンプルAとした)。3時間静置した後菌数測定を行い、初期菌数と比較して減少した菌数を確認した。菌数の測定は以下の方法に従って行った。
(菌数の測定)
サンプルAをボルテックスミキサーによって撹拌して100μLを採取し、900μLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)が分注されている5mLチューブに添加して、サンプルBを調製した。
次に、サンプルBをボルテックスミキサーによって撹拌して100μLを採取し、900μLのPBSが分注されている5mLチューブに添加して、サンプルCを調製した。
更に、サンプルCをボルテックスミキサーによって撹拌して100μLを採取し、900μLのPBSが分注されている5mLチューブに添加して、サンプルDを調製した。
この手順に従って、サンプルAが1×10-7倍の希釈倍率になるまで希釈した。
以上のようにして得たサンプルAの1×10-1〜1×10-7の希釈サンプルを、それぞれSCDLPプレート1枚に100μLずつ播種し、ラップをして25℃の恒温槽でインキュベートした。1日後にコロニー数が10〜100個になっている希釈倍率のプレートのコロニー数を計測した。コロニー数を計測したプレートの希釈倍率から菌数を逆算した。コントロール(生理食塩水)の結果と比較して、どの希釈倍率でもコロニーが0であれば除菌効果あり(○)と判定した。
除菌効果の評価結果を下表11に併せて示す。また、実施例46と比較例25の組成物を60℃で3日間加温した後の写真を図2に示す。
表11及び図2に示すように、有機酸を含まない比較例25では変色が顕著であったのに対し、有機酸を含有する実施例46の芳香性組成物は加温後も日光照射後も変色がなく、優れた変色防止効果を有することが明らかとなった。また、いずれの処方においても加温後の除菌効果に変化は認められなかった。即ち、本発明の芳香性組成物は、従来と遜色のない除菌効果を維持しつつ、当該組成物の色調の変化を効果的に抑制し得るものであることが示された。
試験例7:芳香性組成物における変色抑制効果−6
下表12に示すように有機酸(クエン酸)の配合量を変えて芳香性組成物を調製し、60℃で3日間加温した後の変色抑制効果を評価した。なお、香料として前記試験例4で使用したものと同じ調合香料を用いた。変色抑制効果の評価は、試験例1に記載されるガードナー色相標準液による色調評価方法により行った。対応するガードナー色数及び試験例1に記載される基準による判定結果を表12に示す。また、図3に各組成物を60℃で3日間加温した後の写真を示す。
表12及び図3に示されるように、抗微生物剤及び香料を含む組成物において、有機酸(クエン酸)を0.1%配合した場合(実施例47)、有機酸を含まない比較例26に比べて顕著な変色抑制効果が認められた。また、有機酸0.5%又は1%(それぞれ実施例48及び49)の場合には、より優れた変色抑制効果が示された。

Claims (9)

  1. (i)含窒素化合物を含む抗微生物剤、
    (ii)アルデヒド系香料、アルコール系香料、ラクトン系香料及びケトン系香料からなる群より選択される少なくとも1種の香料、並びに
    (iii)有機酸及び/又はその塩
    を含有することを特徴とする芳香性組成物。
  2. 前記含窒素化合物が、グアニジン骨格を有する化合物、イソチアゾリン骨格を有する化合物、ベンゾイソチアゾリン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、及び第4級アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載される芳香性組成物。
  3. 前記含窒素化合物が、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ナトリウムピリチオン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4イソチアゾリン−3−オン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム・PTS塩、オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、N−ヒドロキシエチルプロピルアルキルアマイドナイトレート、及びポリヘキサメチレングアニジンヒドロクロライドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の芳香性組成物。
  4. 前記香料が、アルデヒド系香料及び/又はアルコール系香料である、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香性組成物。
  5. 前記香料が、シトラール、ヘキシルシナミックアルデヒド、バニリン及びオイゲノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の芳香性組成物。
  6. 前記有機酸がヒドロキシ酸、ジカルボン酸及びアミノポリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載される芳香性組成物。
  7. 前記有機酸がリンゴ酸及び/又はクエン酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の芳香性組成物。
  8. トイレ用洗浄剤又は除菌スプレーである、請求項1〜7のいずれかに記載の芳香性組成物。
  9. 芳香剤又は消臭剤である、請求項1〜7のいずれかに記載の芳香性組成物。
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