JP2014162964A - 耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用省合金型フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用省合金型フェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】SUS439鋼(17Cr系)と同等の耐酸化性および耐食性を有しSUS439よりもコストが優れる自動車排気系部材用の省合金型フェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.0150%以下、Si:1.0〜1.5%、Mn:0.15〜1.0%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.0150%以下、Al:0.010〜0.200%、Cr:13.0〜16.0%、およびSn:0.002〜0.050%を含有し、さらにTi:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、かつ(1)式で定義するA値が0.024以上であることを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] −−−−−−−(1)
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車排気系部材用の耐酸化性および耐食性に優れた省合金型のフェライト系ステンレス鋼に関する。
排気系部品にはフェライト系ステンレス鋼板・鋼管が多用されてきている。たとえば、SUH409Lは、Crを11%含有しC,NをTiで固定して溶接部の鋭敏化を防止すると共に優れた加工性を有する鋼種であり、700℃以下で十分な高温特性を有し、凝縮水腐食に対してもある程度の抵抗性を発揮するため、最も多く用いられている。また、C,NをTiで固定しCrを17%含有するSUS439鋼や、さらにMoを含有させたSUS436Lなど、耐凝縮水腐食性と塩害耐食性を高めた鋼種も使用されている。
ところで、排気系部品は、一般に、エンジンに近い部位からエキゾーストマニフォールド、フロントパイプ、触媒コンバーター、センターパイプ、マフラー、テイルパイプの順で構成され、エンジンに近い部位ほど高温に曝され、下流の部位ほど温度が低下する。すなわち、エキゾーストマニフォールドやフロントパイプなどの上流部品の部材には高温強度や耐酸化性が重要となり、下流のセンターパイプ、マフラー、テイルパイプでは比較的低温であるため、高温強度や耐酸化性は重視されない反面、排ガス水分が凝結し易くなるので凝縮水耐食性が必要となる。また、排気系部品全体にわたって融雪塩に対する耐食性も重要であり、高温に曝される部位では酸化と湿食が重畳した高温塩害腐食と称される現象が生じ比較的低温の部位では湿食主体の現象となる。このように、部品の曝される温度条件によって生じる現象が異なり必要特性が変化する。したがって、全ての特性に優れた材料を指向することはあり得ず、部品が曝される環境の過酷度に応じて適材を適所に適用するのが常套となっている。
一方、材料選定においてはコストが重視される。Moなどの高価な合金元素を節減しつつ実用性能を維持できる鋼種が常に求められている。前記SUS439鋼(17Cr系)は、SUH409L(11Cr)とSUS436L(17Cr−1Mo系)の中間的位置付けにあり、コストと実用性能の両面でバランスのとれた鋼種であるが、それでも更なるコスト低減が要求されている。
SUS439鋼(17Cr系)より低コストでSUS439鋼と同レベルの実用性能を有する鋼種が望まれている。
このような問題に関して、従来、いくつかの類似技術が提示されている。
例えば、特許文献1では、C,NをTiで固定しCrを9.0〜15.0%含有させ、0.10〜0.80%のNi,Cuを含有させて耐食性と加工性を両立させた鋼が開示されている。しかしながら、Niは、高価な合金元素なので使用するにしても極微量に留めるべきである。
また、特許文献2では、C,NをNb,Tiで固定しCrを11.0〜15.0%含有させ、0.6%以下のNiと1.0%以下のVを含有させて造管性、耐粒界腐食性、高温強度を確保した鋼が開示されている。しかしながら、ここでもNi、Vといった高価な合金元素が使用され、さらに高温強度確保のためにNbも含有されるため、本発明が目指すような優れた加工性とコスト・パフォーマンスを得るのは困難であるとの問題がある。
また、特許文献3では、C,NをTiで固定しCrを10〜14%含有させ、適量のS(C含有量の0.5倍以上、0.010%以下)を含有させて耐食性と加工性を両立させた鋼が開示されている。前記の2つの技術に比べるとコスト・パフォーマンスに優れる。しかしながら、Sを現状の精錬レベルより多く含有させるため、S系介在物起因の耐食性劣化が懸念されるという問題がある。
なお、これら類似技術は、本発明で取り扱う加熱後耐食性を充分に評価していない。
一方、本発明の省合金という趣旨に近い点で興味深いところでは、従来は殆ど注目されていなかったSn,Sbを合金元素として極く微量だけ含有させることによって鋼材の特性を向上させる技術が開示されている。
例えば、特許文献4では、0.02〜0.2%のSbを含有させることによって耐酸化性を向上させたフェライト系ステンレス鋼が提示されている。特許文献5では、0.005〜0.10%のSn、Sbの1種以上含有させることでPの粒界偏析を防止して硫酸酸洗時の粒界腐食に起因する表面キズが無いフェライト系ステンレス鋼板が提示されている。また、特許文献6では、フェライト系ステンレス鋼の高温強度を向上させる目的で0.05〜2%のSnを含有させた鋼が提示されている。
しかしながら、これらの技術は加熱後耐食性について開示されたものではない。
特許文献7には加熱後耐食性に優れた省合金型フェライト系ステンレス鋼について開示されている。SUS439鋼と同等となる耐酸化性を得る鋼について検討されている。
特許第3999141号公報 特許第2562740号公報 特許第3285179号公報 特開2005−146345号公報 特開平11−92872号公報 特開2000−169943号公報 特開2010−31315号公報
背景技術に記載の技術では,SUS439鋼と同等となる加熱後耐食性を具備する鋼については開示されていない。そこで,本発明は、SUS439鋼(17Cr系)と同等の耐酸化性および耐食性を有しSUS439(17Cr系)よりもコストが優れる自動車排気系部材用の省合金型フェライト系ステンレス鋼の提供を目的とするものである。
なお、本発明における加熱後耐食性とは,実用性能としては重視すべきは耐食性および耐酸化性である。また、ここで言う耐食性は実部品相当の加熱処理を施した後の凝縮水あるいは塩害の環境における耐食性であり、加熱しない場合の素材そのものの耐食性とは異なるものである。
本発明者らは、種々のステンレス鋼材について多くの塩害腐食試験、凝縮水腐食試験を行ってきた。その結果、腐食試験前に加熱処理を施すことによって不働態皮膜がFeリッチの酸化皮膜に変質するため、加熱処理を施さない場合には耐食性に影響を与えないSi、Mn、Alが加熱後耐食性を向上させる作用があること、Snが強力な加熱後耐食性向上元素であるとの知見を得た。さらに、Snは微量で耐酸化性も向上させる効果があること、加えて、この効果の程度はSi含有量に依存することを知見した。
本発明は前記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.0150%以下、Si:1.0〜1.5%、Mn:0.15〜1.0%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.0150%以下、Al:0.010〜0.200%、Cr:13.0〜16.0%、およびSn:0.002〜0.050%を含有し、さらにTi:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、かつ(1)式で定義するA値が0.024以上であることを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] −−−−−−−(1)
ここで[Si]、[Sn]は、それぞれSi、Snの質量%としての含有量である。
(2)質量%で、さらにCu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする前記(1)に記載の耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
(3)質量%で、さらにB:0.0003〜0.0050%を含有することを特徴とする前記(1)1または(2)に記載の耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
本発明によって、SUS439鋼(17Cr系)相当の耐食性、耐酸化性を有しSUS439鋼より低コストの自動車排気系部材用の省合金型フェライト系ステンレス鋼が得られるので、産業上の効果は大きい。
耐食性に及ぼすSiとSnの影響を示す図である。
本発明の形態について、より具体的に説明する。
本発明者らは、先ず、実際の塩害環境を模擬する複合サイクル腐食試験(塩水噴霧:5%NaCl噴霧35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し)において、耐食性を支配するCrの含有量を変化させた鋼を用いて、400℃×8Hrの加熱処理有無による耐食性への影響を調査した。
その結果、加熱処理有無にかかわらずCrは耐食性向上元素であるが、加熱処理なしの場合より加熱処理有りの場合の方がCrの腐食低減効果が大きかった。これは、加熱処理によって表面に酸化層が形成され、この酸化膜によって腐食特性が影響されることを意味する。すなわち、酸化膜形成後の加熱後耐食性は不働態皮膜状態の母材の耐食性とは異なるものであると言える。
同様の方法で、Si、Mn、Alの含有量を変化させた鋼について加熱処理有無による耐食性への影響を調査した。その結果、加熱処理がなければSi、Mn、Alは腐食に影響を与えない元素であるが、加熱処理を施す場合には耐食性を向上させる元素であることがわかった。このことからも、酸化膜形成後の加熱後耐食性は不働態皮膜状態の母材の耐食性とは異なるものであると言える。Si,Mn、Alが加熱後耐食性に影響する理由は、表面酸化膜の緻密性・保護性にSi、Mn、Alが寄与するためと推察する。
また、Snについても調査した結果、Snは0.002〜0.050%程度の極微量で加熱後耐食性を向上させることがわかった。
さらに、これらSi,Mn、Al、Snは加熱後耐食性向上に有用であるが、含有量が多すぎるとかえって耐食性を低下させることもわかった。
次に、塩害腐食試験に用いた鋼についてJASO M911−Aによる凝縮水腐食試験を行い400℃×8Hrの加熱処理有無の影響を調査した。その結果、加熱後の凝縮水耐食性に及ぼすCr、Si、Mn、Al、Snの影響は、前記した加熱後塩害耐食性の場合と同様であった。
続いて、耐食性試験に用いた鋼について大気雰囲気における酸化試験を行い耐酸化性に及ぼす合金元素の影響を調査した。Cr,Si,Mn,Alが耐酸化性に寄与するのは既知の範囲であるが、興味深いのは微量のSnがSiとの重畳において耐酸化性を向上させる効果を有する点にある。
一例として、14%Crベース鋼でSiおよびSnの含有量を変化させた鋼を950℃大気雰囲気で酸化試験を実施した結果を図1に示す。Si含有量が低い場合にはSnの効果は発現されないが、Si量が多いと微量のSnが耐酸化性を顕著に向上させる。すなわち、SiとSnには相互作用があり、Si含有量1.0%以上の領域において耐酸化性はSiとSnの含有量の積に依存することがわかった。このことは(1)式で定義されるA値をもって定量化された。
A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] −−−−−−−(1)
ここで[Si]、[Sn]は、それぞれSi、Snの質量%としての含有量であり、図1中の曲線がA=0.024を示す曲線であり、A値が0.024以上となることによって優れた耐酸化性が得られる。
また、Snは含有させ過ぎると寧ろ耐酸化性を劣化させることもわかり、Sn含有量は適正範囲が存在することが明らかとなった。
以上より、微量のSnを含有させると共にSi、Mn、Al含有量を調整することにより、Cr含有量を低減してもSUS439鋼相当の加熱後耐食性、耐酸化性を確保することが可能となる。
なお、省合金、低コストの観点からは逆行するが、Ni,Cuを微量含有させて、さらなる耐食性向上を追求することもできる。
以下、本発明における合金元素の作用とその含有量の限定理由ついて詳述する。断りがない限り、%は質量%を意味する。
C、N:CおよびNは、溶接熱影響部における粒界腐食の原因となる元素であり、加熱後耐食性を劣化させる。また、加工性を劣化させる。このため、C,Nの含有量は可及的低レベルに制限すべきであり、C、Nの上限は0.015%とするのが必要であり、望ましは0.010%である。一方、含有量の下限は、現状の精錬技術において工業的に到達し得るレベルとしてC,N共に0.0020%とすると好ましい。
Si:Siは加熱後耐食性、耐酸化性を向上させる作用を有する。耐酸化性における微量Snとの相乗効果を極大化するために1.0%以上を含有させるが、多量に含有させると加熱後耐食性が劣化するため上限を1.5%に制限する。望ましくはSi含有量は1.2%以下とするのが良い。
Mn:Mnも加熱後耐食性と耐酸化性を向上させる作用を有するので、0.15%以上を含有させるが、多量に含有させると耐酸化性および加熱後耐食性が劣化するため上限を1.0%に制限するのがよい。好ましくは,0.20〜0.50%である。
P:加工性を劣化させる元素である。このため、Pの含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能な含有量の上限を0.050%とする。望ましいPの上限値は0.030%である。一方、含有量の下限は現状の精錬技術において工業的に到達し得るレベルとして0.010%とすると好ましい。
S:耐食性を劣化させる元素であるため、Sの含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能な含有量の上限を0.010%とする。望ましいS含有量の上限値は0.0050%であり、さらに望ましくは0.0030%である。一方、含有量の下限は現状の精錬技術において工業的に到達し得るレベルとして0.0005%とすると好ましい。
Cr:加熱後耐食性と耐酸化性を確保する基本的元素であり適量の含有が必須である。SUS439鋼相当の加熱後耐食性、耐酸化性を確保するにはCr含有量の下限を13.0%とする必要がある。望ましくは13.5%を下限とするのがよい。一方、加工性劣化を抑制すると共にSUS439鋼より低コストであるためには上限含有量を16.0%に設定する必要がある。16.0%未満が好ましい。望ましくは15.5%を上限とするのが良い。
Al:Alは脱酸元素として有用であり、加熱後耐食性を向上させる作用を有するので0.010%以上を含有させるが、多量に含有させると加熱後耐食性が劣化するため上限を0.200%に制限するのがよい。好ましくは,0.04〜0.08%である。
本発明は、TiとNbの1種または2種を下記のとおり含有する。
Ti:TiはC,Nを炭窒化物として固定して粒界腐食を抑制する作用を有する。このため0.03%を下限として含有させるが、過剰に含有させても効果は飽和し加工性を損なうため、含有量の上限を0.30%とする。なお、Tiの適正含有量としてC,N合計含有量の5倍量以上かつ30倍量以下が望ましい。
Nb:Tiと同様に、NbはC,Nを炭窒化物として固定して粒界腐食を抑制する作用を有するので0.03%を下限として含有させるが、過剰に含有させると加工性を損なうため含有量の上限を0.50%とする。好ましくは0.015〜0.30%である。
Sn:Snは微量で加熱後耐食性および耐酸化性を改善する元素として極めて有用であり、含有させる場合の下限量を0.002%とする。望ましくは0.010%を下限とするのが良い。一方、Snは含有させ過ぎると耐酸化性および加熱後耐食性を劣化させる。加えて、Snは粒界に偏析して熱間加工性を劣化させる懸念もある。このため、含有量の上限を0.050%とする。好ましくは0.050%未満である。さらに好ましくは,0.010〜0.030%含有するのがよい。極微量でも効果が発現するので,0.002〜0.01%であってもよい。
A値:Si、Snの含有量から算出され、前記(1)式で規定するA値は耐酸化性の指標であり、目標とする耐酸化性を得るには0.024以上を確保することが必要である。0.096が上限である。
Ni,Cu:これら主要元素ほか、省合金、低コストの観点からは逆行するが、究極の加熱後耐食性の向上を求めて、耐食性向上に有用なNi,Cuの1種または2種を微量含有させても良い。その場合の含有量の下限は0.05%とするのが良い。一方、これら元素は加工性を劣化させるので含有量の上限を0.50%に設定するのが良い。
B:Snの粒界偏析を抑制して粒界強度低下による熱間加工性劣化を防止するのに有用な元素であり、加熱後耐食性および耐酸化性には影響を与えない元素である。このため0.0003%を下限として含有させても良いが、0.0050%を超えるとかえって熱間加工性が劣化するので、上限を0.0050%とするのが良い。
これら組成のフェライト系ステンレス鋼は、転炉や電気炉などで溶製、精錬された鋼片を熱間圧延、酸洗、冷延、焼鈍、仕上酸洗等を施す通常の排気系部材用ステンレス鋼板の製造方法によって鋼板として製造される。また、この鋼板を素材として電気抵抗溶接、TIG溶接、レーザー溶接などの通常の排気系部材用ステンレス鋼管の製造方法によって溶接管として製造される。
実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
表1、2に示す組成のステンレス鋼を150kg真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊に鋳造した後、熱延−研削−冷延−焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚1.2mmの鋼板を作製した。熱延板の作製条件としては、素材厚み:90mm、加熱温度:1160℃、9パスで板厚3.2mmまで圧延、仕上温度:850℃、巻取温度:600℃とした。冷延板の作製条件としては、素材厚:2.8mm、仕上厚:1.2mmとした。焼鈍条件としては、880℃×60秒、空冷とした。仕上酸洗は、硝ふっ酸酸洗とした。
この鋼板より腐食試験片を採取し試験面を#600エメリー研磨して、塩害環境を模擬した複合サイクル腐食試験((塩水噴霧:5%NaCl噴霧35℃×2Hr、乾燥:相対湿度20%、60℃×4Hr、湿潤:相対湿度90%、50℃×2Hrの繰り返し)およびJASO M911−Aに規定された凝縮水腐食試験を行った。いずれの試験においても、供試前に大気炉中で400℃×8Hrの加熱処理を施した。腐食試験終了後のサンプルは、脱錆処理を施した後、顕微鏡焦点深度法によって最大腐食深さを求めた。また、腐食試験と並行して、大気雰囲気における酸化試験を行った。試験時間は200hrとし、試験温度を950℃として酸化増量を測定した。
Figure 2014162964
Figure 2014162964
試験結果を表1、2に示す。表2において、本発明範囲外の数値にアンダーラインを付している。表2における比較例No.101がSUS439鋼であり比較基準である。加熱後耐食性に関しては、候補材の最大腐食深さと比較例No.101の最大腐食深さの比を表した。腐食試験のバラツキを考慮すると、この値が0.9〜1.1であれば同等と評価できる。また、耐酸化性は前記の酸化増量を表した。
比較例No.102からNo.129は、Sn,Si,Mn,Cr,Alの含有量およびA値のいずれかが本発明の範囲を外れるため、耐食性あるいは耐酸化性のいずれかもしくは両方がSUS439鋼同等となっていない。一方、本発明No.1〜31では、合金元素の含有量が適正範囲にあり、耐酸化性、耐食性ともにSUS439鋼と同等のレベルにあり、充分に満足すべき値が得られた。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.0150%以下、Si:1.0〜1.5%、Mn:0.15〜1.0%、P:0.050%以下、S:0.0100%以下、N:0.0150%以下、Al:0.010〜0.200%、Cr:13.0〜16.0%、およびSn:0.002〜0.050%を含有し、さらにTi:0.03〜0.30%およびNb:0.03〜0.50%の1種または2種を含有し、かつ(1)式で定義するA値が0.024以上であることを満たし、残部がFeおよび不可避的不純物より成ることを特徴とする耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
    A=[Si]×[Sn]+0.014[Si] −−−−−−−(1)
    ここで[Si]、[Sn]は、それぞれSi、Snの質量%としての含有量である。
  2. 質量%で、さらにCu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、さらにB:0.0003〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐酸化性および耐食性に優れた自動車排気系部材用フェライト系ステンレス鋼。
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