JP7022634B2 - 耐高温塩害特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及び自動車排気系部品 - Google Patents
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(1)質量%で、
C:0.0200%以下、
N:0.0200%以下、
Si:0.35%以上、3.50%以下、
Mn:0.01%以上、0.40%以下、または、0.80%以上、1.20%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0014%以下、
Cr:13.5%以上、23.0%以下、
Ni:0.01%以上、0.25%以下、
Cu:0.50%以上、2.00%以下、
Ti:0.080%以上、0.350%以下、
Al:0.025%以上、0.200%以下、
V:0.01%以上、0.20%以下、
B:0.0001%以上、0.0050%以下、
O:0.0050%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記(i)~(iv)式を満たす組成を有することを特徴とする耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
Cr+10Si≧18.0 ・・・式(i)
Ti/(C+N)≧11.5 ・・・式(ii)
C+N≦0.0270 ・・・式(iii)
Al/O≧6.5 ・・・式(iv)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。
(2)質量%にて、更に
Mo:0.01%以上、0.50%以下、
Nb:0.01%以上、0.20%未満、
の1種を含有することを特徴とする(1)に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(3)質量%にて、更に
Cr:15.0%未満、
を満足し、
Mo:0.01%以上、0.50%以下、
Nb:0.01%以上、0.20%未満、
の2種を含有することを特徴とする(1)に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(4)質量%にて、更に
W:0.01%以上、0.50%以下、
Y:0.001%以上、0.20%以下、
REM:0.001%以上、0.20%以下、
Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
Zr:0.01%以上、0.30%以下、
Hf:0.001%以上、1.0%以下、
Sn:0.002%以上、1.0%以下、
Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
Co:0.01%以上、0.30%以下、
Sb:0.005%以上、0.50%以下、
Bi:0.001%以上、1.0%以下、
Ta:0.001%以上、1.0%以下、
Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)~(3)のいずれかひとつに記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(5)強制冷却機構により塩分付着が促進されている環境において自動車排気系部材に使用される(1)~(4)のいずれかひとつに記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(6)自動車排気系部材の周囲を断熱材で覆う断熱構造が適用されることにより塩分付着が促進されている環境において自動車排気系部材に使用される(1)~(4)のいずれかひとつに記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
(8)(1)~(4)のいずれかひとつに記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を用いた自動車排気系部材と、その周囲を断熱材で覆う断熱構造とを備えた自動車排気系部品。
Cは、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす元素であり、0.0200%以下とする。また、過度な添加による耐酸化性や耐粒界腐食性の低下を考慮すると、上限は0.0150%とすることが望ましい。但し、過度な低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.0010%とすることが望ましい。
NはCと同様、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす元素であり、0.0200%以下とする。また、過度な添加による耐酸化性や耐粒界腐食性の低下を考慮すると、上限は0.0150%とすることが望ましい。但し、過度な低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.0030%とすることが望ましい。
Siは、脱酸剤として添加される元素であるとともに、耐酸化性を改善する元素である。また、Siは耐高温塩害性を改善する重要な元素である。Si添加によりFeやCrの酸化物の下にSi酸化物が形成され、これが補助皮膜として働き耐高温塩害性を改善する。耐高温塩害性を発現するためには0.35%以上の添加を必要とする。しかし、過度な添加は加工性の低下を招くため、3.50%以下とする。また、精錬コストや製造性を考慮すると、下限は0.45%とすることが望ましく、上限は1.10%が望ましい。より望ましくは、0.50~0.90%の範囲である。
Mnは、脱酸剤として添加される元素であり、0.01%以上添加する。また、Mnは酸化速度やスケール剥離性に影響を与え、その点から耐高温塩害性にも影響を及ぼす。添加量が増えるとスケールの保護性が低下し酸化速度が上がる。これにより高温塩害が低下する。しかし、一定以上の添加量になってくると耐スケール剥離性が改善される。これにより耐高温塩害性も改善する。つまり、耐高温塩害性が低下する範囲があり、これを避けるためには、0.40%以下、または、0.80%以上とする必要がある。しかし、フェライト形成元素であるMo、Nbを無添加または低減した本成分系においては、オーステナイト形成元素のMnを過度に添加すると、酸化に伴うCr消費により母材表層部がオーステナイト変態し、耐酸化性や耐高温塩害性を低下させる。そのため、1.20%以下とする。また、精錬コスト、均一伸び、熱間加工性や耐食性を考慮すると、0.10~0.40%、または、0.85~1.10%の範囲が望ましい。より望ましくは、0.15~0.40%未満の範囲である。
Pは、製鋼精錬時に主として原料から混入してくる不純物であり、含有量が高くなると、靭性や溶接性が低下するため、その含有量は少ないほど良いため、0.040%以下とする。また、製造性を考慮すると、上限は0.035%とすることが望ましい。但し、過度な低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.01%とすることが望ましい。
Sは、製鋼精錬時に主として原料から混入してくる不純物であり、耐食性を劣化させる。また、耐スケール剥離性を低下させることによって耐高温塩害性も低下させる。したがって、0.0014%以下とする。また、製造性を考慮すると、上限は0.0010%とすることが望ましい。但し、過度な低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.0003%とすることが望ましい。
Crは、耐食性および耐酸化性を向上する元素であるとともに、耐高温塩害性を改善する元素でもあり、13.5%以上添加する。しかし、過度な添加は加工性の低下や靭性の劣化を招くため、23.0%以下とする。また、高温強度、高温疲労特性や原料コストを考慮すると、下限は14.0%とすることが望ましく、上限は20.0%が望ましい。より望ましくは、14.0~18.5%の範囲である。
Niは、耐食性を向上させる元素である。しかし、フェライト形成元素であるMo、Nbを無添加または低減した本成分系においては、オーステナイト形成元素のNiを過度に添加すると、酸化に伴うCr消費により母材表層部がオーステナイト変態し、耐酸化性や耐高温塩害性を低下させる。したがって、0.01~0.25%の範囲とする。また、原料コストや成形性を考慮すると、0.05~0.20%の範囲が望ましい。
Cuは、耐食性向上や高温強度向上に有効な元素である。高温強度向上元素であるMo、Nbを無添加または低減した本成分系においては重要であり、0.50%以上添加する。しかし、オーステナイト形成元素でもあり、過度な添加は耐酸化性や耐高温塩害性の低下を招くため、2.00%以下とする。また、原料コスト、耐食性、プレス成型性を考慮すると、下限は0.80%とすることが望ましく、上限は1.40%が望ましい。より望ましくは、0.90~1.30%の範囲である。
Tiは、C,N,Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、深絞り性の指標となるr値を向上させる元素であり、0.080%以上添加する。しかし、過度な添加は均一伸びの低下や粗大なTi系析出物の形成による穴広げ加工性の低下を招くため、0.350%以下とする。また、表面疵の発生や靭性を考慮すると、下限は0.100%とすることが望ましく、上限は0.270%が望ましい。より望ましくは、0.120~0.220%の範囲である。
Alは、脱酸元素として添加されるとともに、耐酸化性を改善する元素であり、0.025%以上添加する。しかし、過度な添加は均一伸びの低下や靭性の低下を招くため、0.200%以下とする。また、精錬コスト、表面疵の発生や溶接性を考慮すると、下限は0.040%とすることが望ましく、上限は0.150%が望ましい。より望ましくは、0.050~0.130%の範囲である。
Vは、高温強度を向上させる元素である。しかし、過度な添加は析出物の粗大化による高温強度の低下や熱疲労寿命の低下を招く。したがって、0.01~0.20%の範囲とする。また、製造性を考慮すると、上限は0.15%とすることが望ましい。より望ましくは、0.02~0.10%の範囲である。
Bは、高温強度や熱疲労特性を向上させる元素である。しかし、過度な添加は熱間加工性の低下や鋼表面の表面性状の低下を招く。したがって、0.0001~0.0050%の範囲とする。また、製造性や成型性を考慮すると、上限は0.0030%とすることが望ましい。より望ましくは、0.0003~0.0015%の範囲である。
Oは、不可避的に含まれる不純物であり、気泡や介在物による表面疵の原因となる。したがって、0.0050%以下とする。また、製造性を考慮すると、上限は0.0040%とすることが望ましい。但し、過度な低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.0003%とすることが望ましい。ここで、OはT.Oを意味する。
Cr+10Si≧18.0 ・・・式(i)
Ti/(C+N)≧11.5 ・・・式(ii)
C+N≦0.0270 ・・・式(iii)
Al/O≧6.5 ・・・式(iv)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。
Moは、高温強度、耐酸化性、耐高温塩害性、耐食性を改善する元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、高価な元素であるため添加したとしても0.50%以下とする。また、成形性や製造性を考慮すると、上限は0.40%が望ましい。
Nbは、高温強度、耐酸化性、耐高温塩害性を向上させる元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、高価な元素であるため添加したとしても0.20%未満とする。また、均一伸び、穴拡げ性、製造性を考慮すると、上限は0.15%が望ましい。
Wは、高温強度、耐高温塩害性、耐食性を改善する元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、高価な元素であるため添加したとしても0.50%以下とする。また、加工性、靭性、製造性を考慮すると、上限は0.40%が望ましい。
Yは、鋼の清浄度を向上し、耐銹性、熱間加工性を向上するとともに、耐酸化性、耐高温塩害性も改善する元素であり、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は原料コストの上昇と製造性の低下を招くため、上限を0.20%とする。
REM(希土類元素)は、鋼の清浄度を向上し、耐銹性、熱間加工性を向上するとともに、耐酸化性、耐高温塩害性も改善する元素であり、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度な添加は原料コストの上昇と製造性の低下を招くため、上限を0.20%とする。REMは、スカンジウム(Sc)とランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で添加しても良いし、混合物であっても良い。
Caは、脱硫を促進する元素であり、必要に応じて0.0002%以上添加する。しかし、過度な添加は水溶性の介在物であるCaSの生成による耐食性の低下を招くため、上限を0.0030%とする。
Zrは、耐食性、耐粒界腐食性、高温強度、耐酸化性を向上する元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度な添加は加工性、製造性の低下を招くため、上限を0.30%とする。
Hfは耐食性、耐粒界腐食性、高温強度、耐酸化性を向上する元素であり、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度な添加は加工性、製造性の低下を招くため、上限を1.0%とする。
Snは、耐食性と高温強度を向上する元素であり、必要に応じて0.002%以上添加する。しかし、過度の添加は靭性、製造性の低下を招くため、上限を1.0%とする。
Mgは、脱酸元素として添加させる場合がある他、スラブの組織を微細化させ、成型性を向上する元素であり、必要に応じて0.0002%以上添加する。しかし、過度な添加は耐食性、溶接性、表面品質の低下を招くため、上限を0.0030%とする。
Coは、高温強度を向上する元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度な添加は靭性、製造性の低下を招くため、上限を0.30%とする。
Sbは、高温強度を向上する元素であり、必要に応じて0.005%以上添加する。しかし、過度な添加は溶接性、靭性の低下を招くため、上限を0.50%とする。
Biは、冷間圧延時に発生するローピングを抑制し、製造性を向上する元素であり、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度な添加は熱間加工性の低下を招くため、上限を1.0%とする。
Taは、高温強度を向上する元素であり、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度な添加は靭性、製造性の低下を招くため、上限を1.0%とする。
Gaは、耐食性と耐水素脆化特性を向上する元素であり、必要に応じて0.0002%以上添加する。しかし、過度な添加は加工性の低下を招くため、上限を0.30%とする。
表1の本発明例A~Tおよび表2の比較例a~pを供試材として用い以下の高温塩害試験を実施した。高温塩害試験としては試験片を加熱、冷却、塩水浸漬、乾燥のサイクルを20サイクル実施した後の腐食減量を評価した。加熱条件は、温度を750℃、保持時間を130分とした。冷却条件は、温度を常温、保持時間を30分とした。塩水浸漬条件は、塩水を飽和NaCl水溶液、温度を常温、浸漬時間を30分とした。乾燥条件は、温度を50℃、保持時間を30分とした。加熱、冷却、乾燥の雰囲気は露点40~50℃の空気中とした。高温塩害試験前と高温塩害試験で生成した腐食生成物を除去した後の試験片の重量差を測定し、これを高温塩害試験前の試験片表面積当りの値としたものを腐食減量とした。高温塩害試験後の試験片表面の腐食生成物の除去としては、試験片を沸騰15質量%くえん酸2水素アンモニウム水溶液に20分浸漬し、水洗した後ブラッシングをすることを数回繰り返すことで実施した。このようにして得られた高温塩害試験の腐食減量を用いて、耐高温塩害性を評価した。腐食減量が150mg/cm2以下であれば、耐高温塩害性は良好とした。
2 排気マニホールド
3 強制冷却機構
4 冷却ファン
5 送風口
6 断熱構造
7 断熱材
8 断熱材カバー
10 排気ガス
11 冷却空気流
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.0200%以下、
N:0.0200%以下、
Si:0.35%以上、3.50%以下、
Mn:0.01%以上、0.40%以下、または、0.80%以上、1.20%以下、
P:0.040%以下、
S:0.0014%以下、
Cr:13.5%以上、23.0%以下、
Ni:0.01%以上、0.25%以下、
Cu:0.50%以上、2.00%以下、
Ti:0.080%以上、0.350%以下、
Al:0.025%以上、0.200%以下、
V:0.01%以上、0.20%以下、
B:0.0001%以上、0.0050%以下、
O:0.0050%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、かつ、下記(i)~(iv)式を満たす組成を有することを特徴とする耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
Cr+10Si≧18.0 ・・・式(i)
Ti/(C+N)≧11.5 ・・・式(ii)
C+N≦0.0270 ・・・式(iii)
Al/O≧6.5 ・・・式(iv)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。 - 質量%にて、更に
Mo:0.01%以上、0.50%以下、
Nb:0.01%以上、0.20%未満、
の1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%にて、更に
Cr:15.0%未満、
を満足し、
Mo:0.01%以上、0.50%以下、
Nb:0.01%以上、0.20%未満、
の2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 質量%にて、更に
W:0.01%以上、0.50%以下、
Y:0.001%以上、0.20%以下、
REM:0.001%以上、0.20%以下、
Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
Zr:0.01%以上、0.30%以下、
Hf:0.001%以上、1.0%以下、
Sn:0.002%以上、1.0%以下、
Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
Co:0.01%以上、0.30%以下、
Sb:0.005%以上、0.50%以下、
Bi:0.001%以上、1.0%以下、
Ta:0.001%以上、1.0%以下、
Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。 - 強制冷却機構により塩分付着が促進されている環境において自動車排気系部材に使用される請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
- 自動車排気系部材の周囲を断熱材で覆う断熱構造が適用されることにより塩分付着が促進されている環境において自動車排気系部材に使用される請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
- 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を用いた自動車排気系部材と、それを強制冷却する強制冷却機構とを備えた自動車排気系部品。
- 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の耐高温塩害性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を用いた自動車排気系部材と、その周囲を断熱材で覆う断熱構造とを備えた自動車排気系部品。
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