JP2014161908A - 内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材 - Google Patents

内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材 Download PDF

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Abstract

【課題】意図した表面形状の加工物を不具合なく得ることを可能にする内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材を提供することを課題とする。
【解決手段】レーザ光Bを集光する集光レンズ72を、単結晶部材10の被照射面20t上に非接触に配置する。そして、集光レンズ72から被照射面20tまでのレーザ光伝搬距離を被照射面20tでのレーザ光Bの照射位置に応じて変更しつつ、集光レンズ72により単結晶部材内部にレーザ光Bを集光することで、破断強度が低下した3次元構造の層を加工層21として単結晶部材内部に形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、加工対象部材の被照射側の表面からレーザ光を照射して部材内部にレーザ光を集光することで加工層を形成する内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材に関する。
加工対象部材の表面側を意図した形状にするには、通常、加工対象部材を表面側から加工することで実現させている。表面側の加工としては、例えば切削加工や研削加工などである(例えば特許文献1参照)。
切削加工は、大きく分けると直線研削と回転研削とに分けることができる。直線研削としては、加工対象部材を回転させておき、この加工対象部材にバイトを直接にあてて所定形状に加工することが挙げられる。回転研削では、フライスのように回転する工具で加工表面を削っていく加工や、バイトを用いた中ぐり加工などが挙げられる。
研削加工は、通常、砥粒による加工であり、砥粒の一つ一つが刃として作用する加工である。
特開平10‐288800号公報
ところで、加工対象部材を表面側から加工して意図した形状とする際に、種々の観点で不具合が生じることが度々ある。
例えば、切削加工をおこなったときには切削途中で加工対象部材にクラックが入ることがある。また、切削中に加工歪みが加工対象部材に生じて加工対象部材の特性が変わってしまうこともある。更に、切削加工では加工による切り屑などが発生するので、その除去を行いつつ加工を続ける必要があり、切り屑をスムーズに除去できないこともある。
切削加工中に加工歪みが入る対策としては、特許文献1では、非線形光学単結晶を機械加工した後、熱処理することで歪みを除去することが開示されている。しかし、歪みを完全に除去することは難しく、また、クラックの発生や切り屑の除去などの不具合は解消されていない。
本発明は、上記課題に鑑み、意図した表面形状の加工物を不具合なく得ることを可能にする内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材を提供することを課題とする。
本発明者らは、加工対象部材を表面側から加工して意図した形状とする際にこのような不具合が生じないような加工方法を鋭意検討した。
そして、様々な検討を行っていく過程で、集光レンズでレーザ光の集光点を例えばインゴットなどの加工対象部材の内部に合わせてレーザ光を走査することにより、加工対象部材の内部に平面状の加工層(内部加工層)を形成し、この加工層を剥離面として加工対象部材の一部を基板として剥離することに着目した。
そして、この剥離面を3次元形状とすることを考えつき、更に検討を重ね、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するための本発明の一態様に係る内部加工層形成方法によれば、内部加工層形成方法は、レーザ光を集光するレーザ集光手段を、加工対象部材の被照射面上に非接触に配置する第1工程と、前記レーザ集光手段から前記被照射面までのレーザ光伝搬距離を前記被照射面での前記レーザ光の照射位置に応じて変更しつつ、前記レーザ集光手段により前記加工対象部材内部に前記レーザ光を集光することで、破断強度が低下した3次元構造の層を加工層として前記加工対象部材内部に形成する第2工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明の一態様に係る内部加工層形成部材によれば、内部加工層形成部材は、請求項1記載の内部加工層形成方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明の一態様に係る表面3次元構造部材によれば、請求項4記載の内部加工層形成部材の前記加工層から破断されることによって形成され、表面形状が前記加工層と同形状であることを特徴とする。
本発明によれば、意図した表面形状の加工物を不具合なく得ることを可能にする内部加工層形成方法、内部加工層形成部材、および、表面3次元構造部材を提供することができる。
本発明の一実施形態で、レーザ集光手段により加工対象部材の被照射面からレーザ光を集光して内部に加工層を形成していくことを説明する模式的鳥瞰図である。 本発明の一実施形態で、レーザ光の照射により加工対象部材の内部に加工層が形成された内部加工層形成部材を説明する模式的部分断面図である。 本発明の一実施形態で、内部加工層形成部材から得られた表面3次元構造部材の部分断面図である。 実施例1で用いるレーザ加工装置の一例を示す斜視図である。 実施例1で製造される内部加工層形成単結晶部材を被照射面側から見た正面図である(破線は、加工層の凹凸の頂部および底部を示す)。 実施例1で、加工層から剥離させるために単結晶部材の両面に金属板を貼り付けたことを説明する模式的な側面図である(簡明のため、加工層を平面状に描いている)。 実施例1の実験例で、単結晶部材に形成された加工層の形状測定結果を示す斜視図である。 実施例1の実験例で、(a)は、被照射面を有する側の表面3次元構造単結晶部材の表面形状を示す写真図であり、(b)は、加工層を挟んでこれと対向する側の表面3次元構造単結晶部材の表面形状を示す写真図である。 実施例2で、(a)は表面3次元構造単結晶部材を示す部分斜視図であり、(b)は表面3次元構造単結晶部材の部分側面断面図である。 実施例3で、内部加工層形成単結晶部材の構成を示す側面断面図である。 実施例3で、表面3次元構造単結晶部材を示す部分斜視断面図である。 実施例4で、(a)は一方の表面3次元構造単結晶部材を示す部分斜視図、(b)は(a)の矢視A−Aの断面図、(c)は他方の表面3次元構造単結晶部材を示す部分斜視図である。 実施例5で、内部加工層形成単結晶部材の加工層から引き剥がされてなる表面3次元構造単結晶部材の表面形状を示す部分平面図である。 実施例5で、表面3次元構造単結晶部材の表面形状の変形例を示す部分平面図である。 実施例6で、(a)は表面3次元構造単結晶部材を示す斜視図、(b)は表面3次元構造単結晶部材を製造することを説明する部分拡大側面断面図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
また、以下の説明では、内部加工層形成部材として、単結晶部材内部に加工層を形成することで内部加工層形成単結晶部材、更には表面3次元構造単結晶部材を製造することを説明するが、単結晶部材以外の部材を用い、該部材内部に加工層を形成することで内部加工層形成部材や表面3次元構造部材を製造することももちろん可能である。
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)で、レーザ集光手段により単結晶部材10の被照射面20t(被照射側の表面)からレーザ光を集光して内部に加工層を形成していくことを説明する模式的鳥瞰図である。図2は、レーザ光の照射により単結晶部材10の内部に加工層21を形成して内部加工層形成単結晶部材20(内部加工層形成部材)を形成することを説明する模式的断面図である。図3は、内部加工層形成単結晶部材20から得られた表面3次元構造単結晶部材26の部分断面図である。
本実施形態で製造する内部加工層形成単結晶部材20は、パルス状のレーザ光Bを被照射面20tから照射して部材内部にレーザ光Bを集光することで、この被照射面20tと離間した加工層21と、その加工層21を上下方向から挟む位置に非加工層22とを有する。加工層21には、被照射面20tに対して凹凸が形成されており、加工層21は、非加工層22に比べて破断強度が低下した3次元構造の層となっている。本実施例では、加工層21の層厚み方向の中心位置を示す面(平面)は、被照射面20tに対して略平行となっている。なお、表面3次元構造単結晶部材26を形成する際に加工層21から破断できる限り、加工層21の層厚み方向の中心位置を示す面は被照射面20tに略平行でなくてもよく、被照射面20tに交差する方向であってもよい。
内部加工層形成単結晶部材20を製造して表面3次元構造単結晶部材26を得るには、レーザ光を集光するレーザ集光手段として例えば集光レンズ72を、加工対象部材である単結晶部材10の被照射面20t上に非接触に配置する。そして、単結晶部材10の被照射面20tに、調整したレーザ光Bを照射して単結晶部材10内部にレーザ光Bを集光しつつ、集光レンズ72と単結晶部材10とをX方向(図1で紙面左右方向)、および、Z方向(図1で紙面上下方向)に相対的に移動させて、単結晶部材10内部に加工層21を形成した内部加工層形成単結晶部材20を製造する。その際、被照射面20tにおけるX方向位置に応じて、集光レンズ72から被照射面20tまでのレーザ光伝搬距離が設定距離となるように単結晶部材10をZ方向に移動させることにより、集光点D(図1参照)のZ方向位置を調整(変更)する。なお、単結晶部材10をZ方向に移動させることに代えて集光レンズ72をZ方向に移動させることも可能である。
この結果、集光点Dに加工痕が形成されて、非加工層22に比べて破断強度が低下した3次元構造の層が加工層21として単結晶部材内部に形成される。
加工層21を形成することで内部加工層形成単結晶部材10を製造した後、レーザ光Bの走査方向に対し垂直および平行な断面方向に加工層21で破断させる。この結果、表面26s(図3参照)の形状が加工層21と同形状である表面3次元構造単結晶部材26(表面3次元構造部材。図2、図3参照)が容易に得られる。
このように、本実施形態では、非加工層22に比べて破断強度が低下した3次元構造の層を加工層21として単結晶部材10の内部に形成することで、意図した表面形状の加工物を不具合なく得ることを可能にする内部加工層形成単結晶部材20を形成することができ、また、加工層21に引き剥がし力が加えられるように、内部加工層形成単結晶部材20に力を加えることで、意図した表面形状の表面3次元構造単結晶部材26を容易に得ることができる。
(実施例1)
以下、本実施形態の具体的な一例として実施例1を説明する。図4は、本実施例で用いるレーザ加工装置の一例を示す斜視図である。図5は、本実施例で製造される内部加工層形成単結晶部材を被照射面側から見た正面図である。内部加工層単結晶部材20の加工層21は、3次元構造の層であって、被照射面20tに対する所定の深さ方向位置(図5での紙面直交方向位置)に、中心から波状の凹凸が広がるように形成されており、図5の破線は、加工層21の凹凸の頂部および底部を示している。
本実施例のレーザ加工装置は、レーザ発振器71、ズームエキスパンダー(図示せず)、偏向ミラー73、アパーチャーマスク(図示せず)、対物用の集光レンズ72、CCDカメラ74、および、ワーク保持・回転機構76を備えている。ワーク保持・回転機構76は、加工対象部材(ワーク)である単結晶部材10を保持して回転中心軸76cまわりに回転するようになっている。このワーク保持・回転機構76は、集光レンズ72の中心軸72cが回転中心軸76cと一致する位置から回転半径方向(回転中心軸76cに直交する方向、図4のX方向)に移動可能となっているとともに、回転中心軸76cに沿った方向(図4のZ方向)に進退動可能となっている。
本実施形態では、レーザ発振器71から発せられたレーザ光Bをズームエキスパンダーで任意の径まで拡大させることが可能になっている。そして、偏向ミラー73で偏向して、集光レンズ72の入射瞳径に対して同径もしくは大きい径を有するビーム径に調整することが可能になっている。
レーザ光Bは、単結晶部材10の被照射面20tに集光レンズ72を介して照射される。なお、集光レンズ72は単結晶部材10の屈折率に対するレーザ光Bの集光を補正する機能を有する補正環を具備してもよい。この補正環を適宜調整することにより内部集光状態の最適化が得られ、加工層21(内部加工層)の深さ方向に対する長さの短縮や、加工層21の破断強度低下の効果が得られる。なお、加工層21の深さ方向の長さは500μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは50μm以下であることが、加工層21の三次元形状と同形状の表面形状を得るために好ましい。
このレーザ光Bは単結晶部材10がシリコンの場合は、例えばパルス幅が1μs以下のパルスレーザ光からなり、900nm以上の波長、好ましくは1000nm以上の波長が選択され、YAGレーザ等が好適に使用される。加工対象部材(被加工部材)がシリコン以外の材質からなる場合では、光線透過率から加工に適した波長のレーザ光Bを選択することができる。この光線透過率は分光光度計を用いて1mm厚の試料を用いて内部透過率として求める。具体的には被加工部材に対して少なくとも20%以上の内部透過率を有する波長が好ましい。
ここで、アパーチャーマスクは、ビーム周辺部の不均一パワー部分を除くためのものである。これはレーザ光Bを、均一パワーを有するビームとして集光レンズ72に入射するために利用できる。均一パワービームであると加工層21(内部加工層)の深さ方向の加工状態が均一化され、本発明における三次元構造の加工層21における破断強度の変動を抑制できる効果がある。アパーチャーマスクの開口径はアパーチャーマスク通過後のビームが回折光とならないように調整する。つまり、この開口径がビーム径よりも大きすぎると不均一パワー部分を除けず、逆に開口径が小さ過ぎると、回折ビームとなってしまい均一パワービームにはならない。
本発明における加工層21(内部加工層)は、上記レーザ加工装置により加工対象部材に形成できるが、その破断強度が非加工層22よりも低いことが必要である。これはレーザ光のパルスエネルギー、パルス幅、繰返し周波数などのパラメーターに対して、加工対象部材へのレーザ照射間隔を調整することで達成できる。この調整方法は加工対象部材の材質、結晶構造などにより適宜選択可能であるが、破断により加工層21から非加工層22が分離可能となるまでの破断強度低下が求められる。この破断強度は、例えば単結晶シリコンの場合では、後述する剥離方法において1500MPa以下であることが好ましい。一方、過剰な内部加工状態であると、非加工層22のレーザ光Bの被照射面20t側に加工ダメージが生じ、亀裂や割れなどの不都合が生じる。
(作用、効果)
以下、本実施例で内部加工層形成単結晶部材10を製造することについて説明する。本実施例では、単結晶部材10をワーク保持・回転機構76で保持する。そして、ワーク保持・回転機構76のX方向への移動位置に応じてワーク保持・回転機構76のZ方向位置を変更させつつ、レーザ光Bを単結晶部材10に照射することで、単結晶部材10の内部に集光したレーザ光Bによって加工層21を形成する。
本実施形態では、加工層21から剥がしてなる表面3次元構造単結晶部材26の表面26sの形状が意図した形状となるように、ワーク保持・回転機構76の移動プログラムなどをレーザ加工装置に予め設定しておく。このようにして形成した加工層21は、連続した1層で形成される。
加工層21が形成された結果、加工層21を挟んでレーザ光Bの照射方向とその反対側にそれぞれ非加工層22が存在する。形成する加工層21の寸法、密度などは、加工層21の3次元形状や単結晶部材10の材質などを考慮して設定する。
このように加工層21を形成した内部加工層形成単結晶部材20は、加工層21から分断させた新たな単結晶部材である表面3次元構造単結晶部材26を創成することができる。これは、加工層21と非加工層22との剥離により行う。なお、内部加工層形成単結晶部材20の側面に加工層21が露出していない場合には、例えば、非加工層22の所定の結晶面に沿ってへき開することで、非加工層22によって加工層21が挟まれた構造のものであって側面に加工層21が露出したものが得られる。なお、加工層21が既に露出している場合や、加工層21の周縁と内部加工層形成単結晶部材20の側壁との距離が十分に短い場合には、この露出をさせる作業を省略することが可能である。
その後、図6に示すように、内部加工層形成単結晶部材20の非加工層22の表面である被照射面20tに、金属製基板61a、61bを接着剤63a、63bで内部加工層形成単結晶部材20を挟持するように接着固定する。金属製基板61a、61bとしては、例えば、SUS製の板を用いる。接着剤63a、63bとしては、例えば、アクリル系2液モノマー成分からなる接着剤を用いる。この接着剤は水中に浸漬することで凝集力が低下し剥離が可能となる特性を有するものが好ましく使用できる。この接着剤63a、63bの接着強度は、非加工層23が加工層22から分断されて剥離するのに必要な力よりも強ければよい。接着剤63a、63bの接着強度に応じ、形成する加工層21の寸法、密度を調整してもよい。接着剤63a、63bの塗布厚みは、硬化前で0.1〜1mmが好ましく、0.15〜0.35mmがより好ましい。仮固定用接着剤の塗布厚みが過度に大きい場合、完全硬化となるまでに長時間を必要とする上、分断時に接着剤の凝集破壊が起こりやすくなる。また、塗布厚みが過度に小さい場合、分断した単結晶部材の水中剥離に長時間を必要とする。
接着した際に金属製基板61aと金属製基板61bとの平行度が十分に得られない場合には、1枚以上の補助板を使用して必要な平行度を得てもよい。
また、金属製基板61a、61bをそれぞれ接着剤63a、63bで内部加工層形成単結晶部材20の上下面に接着する際、片面ずつ接着してもよいし、両面同時に接着してもよい。
厳密に塗布厚みを制御したい場合には、一方の片面に金属製基板を接着させて接着剤が硬化した後、もう一方の片面に金属製基板を接着させることが好ましい。このように片面ずつ接着させる場合、接着剤を塗布する面が内部加工層形成単結晶部材20の上面であっても下面であってもよい。その際、内部加工層形成単結晶部材20の非接着面に接着剤が付着して硬化することを抑制するために、樹脂フィルムをカバーレイヤーとして用いてもよい。
金属製基板61a、61bの接着後、金属製基板61aと金属製基板61bとに互いに離れる方向の力Fをそれぞれ加えると、破断強度が低下している加工層21で分断、剥離される。
加工層21で剥離させるために金属製基板61a、61bに力を加える手法は、特に限定しない。例えば、内部加工層形成単結晶部材20の側壁をエッチングして加工層21に溝を形成し、この溝に楔状圧入材(例えばカッター刃)を圧入することで力を発生させてもよい。また、内部加工層形成単結晶部材20に角方向から力を加えて、上方向の力成分と下方向の力成分とを発生させてもよい。さらには、金属製基板61a、61bをチャックにより挟持して、上下方向に適当な速度で引張ることにより剥離させることも可能である。
また、加工対象部材(被加工部材)は、サファイア、SiCなどのインゴットやこれから切り出したウェハ、あるいはこれらの表面に他の結晶(GaN、GaAs、InPなど)を成長させたものなどを適用可能である。更には、単結晶部材に限らず、一般的な加工対象部材内に加工層21を形成してもよい。
以上説明したように、本実施例では、非加工層22に比べて破断強度が低下した3次元構造の層を加工層21として単結晶部材10の内部に形成することで、意図した表面形状の加工物を不具合なく得ることを可能にする内部加工層形成単結晶部材20を形成することができ、また、加工層21から引き剥がすことで、意図した表面形状の表面3次元構造単結晶部材26を容易に得ることができる。
なお、X方向位置に応じて、レーザ光Bの照射間隔およびワーク保持・回転機構76の回転速度の少なくとも一方を変更することで、回転方向に隣り合う集光点D(図1参照)の距離を均等にしてもよい。本実施例ではレーザ光Bがパルス状のレーザ光なので、これにより、回転半径位置(X方向位置)が異なった部位であっても破断強度を均一に低下させることができる。
<実施例1の実験例>
実施例1の実験例として、本発明者らは、集光レンズ72から出射したレーザ光によって単結晶部材10に形成された加工層21の形状を測定した。図7に測定結果を示す。図7から明らかなように、波状の良好な凹凸が形成されていた。
また、本発明者らは、加工層21から引き剥がすことで表面3次元構造単結晶部材を得た。レーザ光Bを照射した側(被照射面20tを有する側)の表面3次元構造単結晶部材の表面形状を図8(a)に、加工層21を挟んでこれと対向する側の表面3次元構造単結晶部材の表面形状を図8(b)にそれぞれ示す。
図8(a)および(b)から判るように、何れも、表面形状は良好な波状の3次元構造であった。
本実験例での実験条件などの詳細を以下に示す。
1)レーザ発振器 : パルスファイバーレーザ
波長 : 1063±3nm
パルス幅 : 200ns
繰返し周波数 : 300kHz
2)集光レンズ : IR用対物レンズ 100倍 NA=0.85
3)レーザ走査基盤(加工基盤) : ULG100D(HYW)(東芝機械(株)製)
4)被加工部材(単結晶部材) : 単結晶シリコンウエハ (表面は鏡面加工済み)
結晶方位 : (100)
厚さ : 625μm
径 : 78mm
5)レーザ照射条件
レーザ出力:2.4W (集光レンズ透過後)
加工間隔1 : 2μm (レーザの繰返し周波数と加工基盤の速度との関係から得られるパルスレーザの照射間隔を加工間隔1とし、見掛け上のライン加工))
加工間隔2 : 2μm (加工間隔1で得られるライン加工の間隔を加工間隔2とする)
加工層形成位置の調整 : 加工基盤上に載置した単結晶シリコンウエハ表面にレーザ光が集光される集光レンズのZ方向位置を0とし、集光レンズの位置を単結晶シリコンウエハに近づけることにより内部集光位置を設定した。単結晶シリコンウエハの半径方向に対し周期2mm、深さ方向に対し振幅81.8μmのサインカーブを描くように設定した。振幅の中心位置は単結晶シリコンウエハの厚みの中心付近である323μmに設定した。
6)剥離方法
レーザ加工後、単結晶シリコンウエハを10mm×10mmの大きさに切りだし、図6に示すように金属板に接着剤にて固定し、引張速度10mm/min.で剥離させた。そのときの強度は800MPaであった。
7)剥離面の評価
得られた三次元剥離表面の形状の高低差を測定した結果は85μmであり、設定した振幅値に対する誤差は5%以内に収まっていることを確認し、高精度で加工層と同形状の三次元形状表面が得られることを確認した。
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。本実施例では、実施例1に比べ、加工層の形状が異なる。図9は、本実施例で、(a)は表面3次元構造単結晶部材27を示す部分斜視図であり、(b)は表面3次元構造単結晶部材27の部分側面断面図である。表面3次元構造単結晶部材27の表面形状は、図9に示すような角部28が配列される形状であってもよい。
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。本実施例では、実施例1に比べ、加工層の形状が異なる。図10は、本実施例で、内部加工層形成単結晶部材の構成を示す側面断面図である。図11は、本実施例で、表面3次元構造単結晶部材を示す部分斜視断面図である。
図10に示すように、加工層31は、非加工層側の両サイドへ突起状に延び出す部位が配列されている形状であってもよい。この場合、図10、図11に示すように、表面3次元構造単結晶部材36の表面形状は、溝が配列される形状となる。なお、図10に示すように、加工層31を挟んで表面3次元構造単結晶部材36に対向している表面3次元構造単結晶部材37も同様の形状にすることが可能である。
(実施例4)
次に、実施例4について説明する。本実施例では、実施例1に比べ、加工層の形状が異なる。図12(a)〜(c)は、それぞれ、本実施例で、表面3次元構造単結晶部材46を示す部分斜視図、(a)の矢視A−Aの断面図、および、表面3次元構造単結晶部材47を示す部分斜視図である。
表面3次元構造単結晶部材46の表面側には円錐部46cが配列されており、表面3次元構造単結晶部材47の表面側には、円錐状の凹み形状である凹部46dが配列されている。
なお、このような表面形状のパネルは、太陽光発電に用いるパネルとして有効である。
(実施例5)
次に、実施例5について説明する。本実施例では、実施例1に比べ、加工層の形状が異なる。図13は、本実施例で、内部加工層形成単結晶部材の加工層から引き剥がされてなる表面3次元構造単結晶部材50の表面形状を示す部分平面図である。表面3次元構造単結晶部材50の表面形状は、図13に示すように、非球面状の湾曲凸面54sが形成された凸部54が規則正しく配列されている。
なお、図14に示すように、凸部54間の隙間が小さくなるように、凸部54が周囲の6つの凸部54に接触するように配列した表面3次元構造単結晶部材51としてもよい。
(実施例6)
次に、実施例6について説明する。本実施例では、実施例1に比べ、加工層の形状が異なる。図15(a)および(b)は、それぞれ、本実施例で、表面3次元構造単結晶部材56を示す斜視図、および、(a)の部分拡大側面断面図である。
表面3次元構造単結晶部材56の表面側には、表面部が部分的にくり抜かれてなる凹部57、58が形成されている。凹部57は表皮状の除去部59をくり抜くことで形成されたものであり、凹部58も同様である。
本発明により加工対象部材の表面側を不具合なく意図した形状にすることができることから、加工層から剥がされてなる表面3次元構造部材は、Si基板(シリコン基板)であれば、太陽電池に応用可能であり、また、GaN系半導体デバイスなどのサファイア基板などであれば、発光ダイオード、レーザダイオードなどに応用可能であり、SiCなどであれば、SiC系パワーデバイスなどに応用可能であり、透明エレクトロニクス分野、照明分野、ハイブリッド/電気自動車分野、電子材料分野、半導体材料分野、ガラスなどのアモルファス材料分野など幅広い分野において適用可能である。
10 単結晶部材(加工対象部材)
20 内部加工層形成単結晶部材(内部加工層形成部材)
20t 被照射面
21 加工層
26 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
27 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
31 加工層
36 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
37 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
46 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
47 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
50 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
51 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
56 表面3次元構造単結晶部材(表面3次元構造部材)
72 集光レンズ(レーザ集光手段)
76 ワーク保持・回転機構(ワーク保持機構)
76c 回転中心軸
B レーザ光
D 集光点

Claims (5)

  1. レーザ光を集光するレーザ集光手段を、加工対象部材の被照射面上に非接触に配置する第1工程と、
    前記レーザ集光手段から前記被照射面までのレーザ光伝搬距離を前記被照射面での前記レーザ光の照射位置に応じて変更しつつ、前記レーザ集光手段により前記加工対象部材内部に前記レーザ光を集光することで、破断強度が低下した3次元構造の層を加工層として前記加工対象部材内部に形成する第2工程と、
    を備えたことを特徴とする内部加工層形成方法。
  2. 前記加工対象部材を保持して回転中心軸まわりに回転するとともに前記回転中心軸に沿って進退動可能なワーク保持機構に前記加工対象部材を保持させ、
    前記レーザ集光手段から前記被照射面までのレーザ光伝搬距離を、前記回転中心軸からの回転半径位置に応じて変更しつつ前記加工層を形成することを特徴とする請求項1記載の内部加工層形成方法。
  3. 前記レーザ光がパルス状のレーザ光であり、
    前記回転半径位置に応じて、前記レーザ光の照射間隔および前記ワーク保持手段の回転速度の少なくとも一方を変更することで、回転方向に隣り合う集光点の距離を均等にすることを特徴とする請求項2記載の内部加工層形成方法。
  4. 請求項1記載の内部加工層形成方法によって製造されたことを特徴とする内部加工層形成部材。
  5. 請求項4記載の内部加工層形成部材の前記加工層から破断されることによって形成され、表面形状が前記加工層と同形状であることを特徴とする表面3次元構造部材。
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