JP2014160058A - 試料の分析方法及びそれに用いる溶液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一態様において、キャピラリ電気泳動により試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、分析対象物質の分離及び/又は検出が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる試料分析方法に関する。また、その他の一態様において、pH緩衝物質、非界面活性剤型の両イオン性物質、及び、水を含有する、キャピラリ電気泳動用溶液に関する。
【選択図】なし
Description
本開示において「非界面活性剤型の」とは、一又は複数の実施形態において、ミセルを形成しないことをいう。本開示において「ミセルを形成しない」とは、一又は複数の実施形態において、水性媒体中でミセルを形成しない、或いは、実質的にミセルを形成しないことをいう。本開示において「ミセルを形成しない、或いは、実質的にミセルを形成しない」とは、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、臨界ミセル濃度(CMC)が200mmol/L以上が好ましく、より好ましくは300mmol/L以上、さらに好ましくは両イオン性物質が臨界ミセル濃度を持たないことをいう。
本開示において「pH緩衝物質」とは、一又は複数の実施形態において、泳動条件のpH付近にpKa又はpKbを有する物質、及び、その対イオンとなる酸又は塩基のことをいう。泳動条件のpH付近は、限定されない一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、泳動条件のpHの±2.5、±2.0、±1.5、又は、±1.0の範囲が好ましい。
キャピラリ電気泳動法の1つに、擬似固定相を用いる動電クロマトグラフィーがある。例えば、WO 2010-010859 では、コンドロイチン硫酸などのアニオン性基含有化合物、すなわち、イオン性の擬似固定相を使用して血中タンパク質を分離することが開示される。イオン性擬似固定相を用いるキャピラリ電気泳動法においては、泳動中に試料中の物質とイオン性擬似固定相との相互作用を行わせることにより、試料中の物質をイオン性擬似固定相との親和性(分配係数の差)に応じて分離することで分析対象物質を他の物質から分離させている。
本開示において「分析対象物質」としては、限定されない一又は複数の実施形態において、タンパク質、生体内物質、血液中物質等が挙げられ、タンパク質の具体例としてはヘモグロビン、アルブミン、グロブリン等が挙げられる。ヘモグロビンとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、糖化ヘモグロビン、HbA1c、変異ヘモグロビン、マイナーヘモグロビン、修飾ヘモグロビン等が挙げられ、より具体的には、安定型HbA1c(s−HbA1c)、ヘモグロビンA0(HbA0)、ヘモグロビンA1a(HbA1a)、ヘモグロビンA1b(HbA1b)、ヘモグロビンA1d(HbA1d)、ヘモグロビンA1e(HbA1e)、ヘモグロビンA2(HbA2)、ヘモグロビンS(HbS、鎌状赤血球ヘモグロビン)、ヘモグロビンF(HbF、胎児ヘモグロビン)、ヘモグロビンM(HbM)、ヘモグロビンC(HbC)、ヘモグロビンD(HbD)、ヘモグロビンE(HbE)、メト化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン、アルデヒド化ヘモグロビン、及び不安定型HbA1c(l−HbA1c)等が挙げられる。生体内物質及び血中物質等としては、限定されない一又は複数の実施形態において、ビリルビン、ホルモン、代謝物質等が挙げられる。ホルモンとしては、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質剌激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、インスリン、グルカゴン、副腎髄質ホルモン、エピネフリン、ノルエピネフリン、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン、アルドステロン、コルチゾール等が挙げられる。前述したイオン性の擬似固定相を用いる場合の分析対象物質としては、限定されない一又は複数の実施形態において、糖化ヘモグロビン、変異ヘモグロビン、マイナーヘモグロビン、修飾ヘモグロビン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
本開示において「キャピラリ電気泳動用溶液」とは、限定されない一又は複数の実施形態において、キャピラリ電気泳動前にキャピラリ流路に充填される泳動液(以下、「ランニングバッファー」ともいう)、試料をキャピラリに導入後に試料に換えて泳動のために用いる泳動液、これらの泳動液を調製するための溶液、又は、試料を調製するための溶液(以下、「試料調製液」ともいう)の少なくとも1つとして使用できる溶液をいう。キャピラリ電気泳動前にキャピラリ流路に充填される泳動液(ランニングバッファー)と、試料をキャピラリに導入後に試料に換えて泳動のために用いる泳動液は、同じ液組成でもよいし、異なっていてもよい。
試料調製液としてのみ使用されるケース;
ランニングバッファー又は該ランニングバッファーを調製するための溶液、並びに、試料調製液として使用されるケース;
試料をキャピラリに導入後に試料に換えて泳動のために用いる泳動液又は該泳動液を調製するための溶液、並びに、試料調製液として使用されるケース;
ランニングバッファー又は該ランニングバッファーを調製するための溶液としてのみ使用されるケース;
試料をキャピラリに導入後に試料に換えて泳動のために用いる泳動液又は該泳動液を調製するための溶液としてのみ使用されるケース;
ランニングバッファー又は該ランニングバッファーを調製するための溶液、試料をキャピラリに導入後に試料に換えて泳動のために用いる泳動液又は該泳動液を調製するための溶液、並びに、試料調製液として使用されるケース。
非界面活性剤型の両イオン性物質についての説明及び実施形態については上述したとおりである。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液をランニングバッファーとして使用する場合、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液における非界面活性剤型の両イオン性物質の含有量は、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、10〜2000mMであり、好ましくは100〜1000mM、より好ましくは200〜600mMである。
pH緩衝物質についての説明及び実施形態については上述したとおりである。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液をランニングバッファーとして使用する場合、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液におけるpH緩衝物質の含有量は、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、5〜500mMであり、好ましくは10〜300mM、より好ましくは20〜100mMである。
イオン性擬似固定相についての説明及び実施形態については上述したとおりである。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液をランニングバッファーとして使用する場合であって、イオン性の擬似固定相を測定時間短縮化の目的で使用する場合、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液におけるイオン性擬似固定相の含有量は、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上と測定時間の短縮化の観点から、0.001〜10w/v%であり、好ましくは0.1〜5w/v%である。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、媒体として水を含有する。本開示において「媒体として水」とは、一又は複数の実施形態において、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液が緩衝液を含む場合、該緩衝液に含まれる水を含む。水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が使用され得る。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、微生物の繁殖などを抑制するための保存剤を含んでいてもよく、例えば、アジ化ナトリウム、エチルパラベン、プロクリンなどを含んでいてもよい。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液のpHは、試料及び/又は分析対象物質に応じ、すでに使用され又は今後使用され得るpHの範囲を選択して使用できる。pHの調整は、一又は複数の実施形態において、必要に応じて、酸又は塩基を添加することで行うことができる。一又は複数の実施形態において、分析対象物質がヘモグロビンである場合、キャピラリ電気泳動用溶液のpHは、分析精度向上の観点から、3.0〜6.9、又は、4.0〜6.0が好ましい。なお、上記のpHは、25℃におけるキャピラリ電気泳動用溶液のpHであり、pHメータを用いて測定でき、電極の浸漬後40分後の数値である。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、一又は複数の実施形態において、さらに、試料調製液として試料原料を処理する(例えば、血球の溶血を促進する)観点から非イオン性界面活性剤を含んでもよい。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液における非イオン性界面活性剤の濃度は、一又は複数の実施形態において、不溶成分の可溶化の点から0.01w/v%以上が好ましく、より好ましくは0.05w/v%以上である。また、取り扱いが容易になる点から2w/v%以下が好ましく、より好ましくは1w/v%以下である。
また、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、一又は複数の実施形態において、さらに、有機酸又は塩基を含みうる。キャピラリ内壁がカチオン性物質又はアニオン性物質で被覆されたキャピラリを用いて、キャピラリ電気泳動溶液に、それぞれ、アニオン性擬似固定相又はカチオン性擬似固定相を用いた場合には、アニオン性擬似固定相又はカチオン性擬似固定相がキャピラリ内壁に電気的に結合し、キャピラリ内壁を被覆する場合がある。この場合、擬似固定相の分子量が大きいと、擬似固定相がキャピラリ内壁を完全に被覆できず、擬似固定相の隙間の部分にキャピラリ内壁のカチオン性物質又はアニオン性物質が表面に露出する場合がある。このとき、キャピラリ内に通液させるキャピラリ電気泳動用溶液又はその他の液が、例えばカルボキシル基、スルホン酸基などの酸性官能基を2以上の有する有機酸、又は、例えばアミノ基などの塩基性官能基を2以上の有する塩基を含有すると、キャピラリ内壁のカチオン性物質に有機酸の1つの酸性官能基、又は、アニオン性物質に塩基の1つの塩基性官能基が結合し、残りの有機酸の酸性官能基、又は、塩基の塩基性官能基がキャピラリ内壁に露出することで、有効にアニオン性又はカチオン性とすることができる。このような、有機酸として、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸、ADA、PIPES、POPSOなどが挙げられ、塩基としては、アルギニン、リジンなどがある。したがって、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、これらの有機酸を含有してもよい。これらの有機酸は、pH緩衝物質と同一物質であってもよい。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、一又は複数の実施形態において、pH緩衝物質、非界面活性剤型の両イオン性物質、及び、水、さらに、必要に応じてイオン性の擬似固定相を、最終含有量が上述の各範囲となるように混合することで調製できる。その他の態様として、キャピラリ電気泳動用溶液を濃縮物として調製してもよい。
本開示の試料分析方法における「キャピラリ電気泳動により試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うこと」は、一又は複数の実施形態において、泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含む。
本開示は、さらにその他の態様として、試料中の分析対象物質の測定方法であって、本開示の試料分析方法を用いて試料中の分析対象物質を測定することを含む方法に関する。試料及び分析対象物質は上記のとおりである。分析対象物質の限定されない一実施形態が、ヘモグロビンであり、HbA1cであり、又は、糖尿病診断の指標となる安定型HbA1cである。また、本開示の測定方法は、限定されない一又は複数の実施形態において、糖尿病診断の指標となる安定型HbA1cとその他のヘモグロビン成分とを測定する。したがって、本開示は、さらにその他の態様として、本開示の試料分析方法を用いてHbA1cを測定することを含むHbA1cの測定方法に関し、糖尿病の診断を行う観点から、本開示の試料分析方法を用いて安定型HbA1cをその他のヘモグロビン成分と分離して測定することが好ましい。
本開示は、さらにその他の態様として、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液、及び、キャピラリ電気泳動チップを含む試料分析用キットに関する。本開示のキットにおいて、キャピラリ電気泳動チップは、限定されない一又は複数の実施形態において、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を含み、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップが挙げられる。本開示の測定用キットは、限定されない一又は複数の実施形態において、さらに、校正用物質及び精度管理用物質を含んでいてもよい。
図1に示すキャピラリ電気泳動チップを用い、試料原料が全血であり、分析対象物質がヘモグロビンである場合を例にとり説明する。
上記のような試料分析方法を用いて試料中の分析対象物質を測定する場合において、分析対象物質の相対濃度を測定値として算出することがある。例えば、HbA(成人型Hb)に対する安定型HbA1cの比率を測定値としてHbA1c%(=安定型HbA1c量/HbA量×100)やHbA1c mmol/mol(=安定型HbA1c量/HbA量×1000)といった単位で算出する場合がある。しかし、試料中にHbA以外のヘモグロビン成分である変異ヘモグロビンやマイナーヘモグロビンが多量に含まれる場合がある。変異ヘモグロビンとしては、HBS、HbE、HbD、HbMなどがあり、マイナーヘモグロビンとしては、HbF、HbA2などがある。これらの変異ヘモグロビンやマイナーヘモグロビンも、HbAと同様に糖化が生じて、糖化変異ヘモグロビンや糖化マイナーヘモグロビンが生じる。
HbF 62
安定型HbA1c 21
HbA0 349
HbS 298
安定型HbA1c%、HbF%、HbA%は、下記のように計算することが可能となる。
安定型HbA1c%=21/349×100=6.0%
HbF%=62/(62+21+349+298)=8.5%
HbA%=(21+349)/(62+21+349+298)=50.7%
[A1] 試料の分析方法であって、
キャピラリ電気泳動により試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、
分析対象物質の分離及び/又は検出が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、試料分析方法。
[A2] 試料の分析方法であって、
泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、
前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、
分析対象物質の分離及び/又は検出が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、試料分析方法。
[A3] 分析対象物質の分離及び/又は検出が、イオン性の擬似固定相、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、[A1]又は[A2]に記載の試料分析方法。
[A4] 前記試料が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質を含有する、[A1]から[A3]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A5] 前記試料が、イオン性の擬似固定相、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質を含有する、[A1]から[A4]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A6] 非界面活性剤型の両イオン性物質は、ミセルを形成しない両イオン性物質である、[A1]から[A5]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A7] 非界面活性剤型の両イオン性物質は、pH緩衝作用を有さない物質である、[A1]から[A6]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A8] 非界面活性剤型の両イオン性物質が、非界面活性剤型のベタインである、[A1]から[A7]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A9] 非界面活性剤型の両イオン性物質が、四級アンモニウムカチオン、及び、スルホ基(-SO3 -)若しくはカルボキシル基(-COO-)を同一分子内の隣り合わない位置に有する物質である、[A1]から[A8]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A10] pH緩衝物質は、そのpKa又はpKbの値が、泳動条件のpHの±2.0の範囲に含まれる物質である、[A1]から[A9]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A11] イオン性の擬似固定相が、アニオン性又はカチオン性のポリマーである、[A3]から[A10]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A12] 試料が、ヘモグロビンを含む試料である、[A1]から[A11]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A13] 試料が、分析対象物質として、安定型HbA1c(s−HbA1c)、ヘモグロビンA0(HbA0)、ヘモグロビンA1a(HbA1a)、ヘモグロビンA1b(HbA1b)、ヘモグロビンA1d(HbA1d)、ヘモグロビンA1e(HbA1e)、ヘモグロビンA2(HbA2)、ヘモグロビンS(HbS、鎌状赤血球ヘモグロビン)、ヘモグロビンF(HbF、胎児ヘモグロビン)、ヘモグロビンM(HbM)、ヘモグロビンC(HbC)、ヘモグロビンD(HbD)、ヘモグロビンE(HbE)、メト化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン、アルデヒド化ヘモグロビン、及び不安定型HbA1c(l−HbA1c)からなる群から選択される物質を含む、[A1]から[A12]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A14] キャピラリ電気泳動の泳動液のpHが、3.0〜6.9である、[A1]から[A13]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A15] イオン性の擬似固定相が、アニオン性基を有する多糖類である、[A3]から[A14]のいずれかに記載の試料分析方法。
[A16] pH緩衝物質、非界面活性剤型の両イオン性物質、及び、水を含有する、キャピラリ電気泳動用溶液。
[A17] さらに、イオン性の擬似固定相を含有する、[A16]記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A18] 非界面活性剤型の両イオン性物質は、ミセルを形成しない両イオン性物質である、[A16]又は[A17]に記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A19] 非界面活性剤型の両イオン性物質は、pH緩衝作用を有さない物質である、[A16]から[A18]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A20] 非界面活性剤型の両イオン性物質が、非界面活性剤型のベタインである、[A16]から[A19]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A21] 非界面活性剤型の両イオン性物質が、四級アンモニウムカチオン、及び、スルホ基(-SO3 -)若しくはカルボキシル基(-COO-)を同一分子内の隣り合わない位置に有する物質である、[A16]から[A20]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A22] pH緩衝物質は、そのpKa又はpKbの値が、泳動条件のpHの±2.0の範囲に含まれる物質である、[A16]から[A21]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A23] イオン性の擬似固定相が、アニオン性又はカチオン性のポリマーである、[A17]から[A122]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A24] イオン性の擬似固定相が、アニオン性基を有する多糖類である、[A17]から[A23]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A25] 泳動液のpHが、3.0〜6.9である、[A16]から[A24]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
[A26] [A16]から[A25]のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液、及び、キャピラリ電気泳動チップを含み、
前記キャピラリ電気泳動チップは、試料貯留槽、泳動液貯留槽及びキャピラリ流路を含み、前記試料貯留槽と前記泳動液貯留槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップである、試料分析用キット。
[A27] さらに、校正用物質、及び/又は、精度管理用物質を含む、[A26]記載の試料分析用キット。
[A28] 試料の分析方法であって、
泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、
さらに、
キャピラリ内壁がカチオン性物質で被覆されたキャピラリに対し、
アニオン性の擬似固定相と酸性官能基が2つ以上有する酸とを含む液、又は、1つの塩基性官能基とアニオン性となり易い官能基とを有する弱塩基化合物を含む液を接触させることを含む、試料分析方法。
[1.キャピラリ電気泳動用溶液の調製]
40mMクエン酸、1w/v%コンドロイチン硫酸Cナトリウム(和光純薬工業社製)、0.1w/v%エマルゲンLS−110(花王社製)を混合し、ジメチルアミノエタノールを添加してpHを5.3に調整し、比較例1のキャピラリ電気泳動用溶液を調製した(表1)。
抗凝固剤入りの採血管を用いて採取された健常人の全血を試料原料とした。
試料分析用のキャピラリ電気泳動デバイスとして、図1に示すキャピラリ電気泳動チップ1を用いた。このキャピラリ電気泳動チップ1は、下基板2bに上基板2aが積層されている構成である。上基板2aには2つの貫通孔が形成され、下基板2bで封止されることで試料保持槽4及び泳動液(ランニングバッファー)保持槽5が形成されている。下基板2bにはI字上の溝が形成されており、この溝の上部に上基板2aが積層されることでキャピラリ流路3が形成されている。試料保持槽4及び泳動液保持槽5は、キャピラリ流路3で連通している。キャピラリ流路3の断面積は0.04×0.04mmであり、試料保持槽4及び泳動液保持槽5間の距離は30mmである。試料保持槽4から20mm及び泳動液保持槽5から10mmの位置を検出部6とした。
キャピラリ電気泳動チップAは、上記キャピラリ電気泳動チップ1の流路内にタンパク質(ヘモグロビン)を吸着させ、さらにコンドロイチン硫酸でコーティングした。具体的には、ヘモグロビン溶液をキャピラリに満たして十分に疎水吸着させた後、40mMのクエン酸と1w/v%のコンドロイチン硫酸を含む溶液(pH5.3)をキャピラリに通液してコーティングした。
実施例1,2及び比較例1のキャピラリ電気泳動用溶液及びキャピラリ電気泳動チップAを使用して下記条件Aでキャピラリ電気泳動を行った。また、実施例3,4及び比較例2のキャピラリ電気泳動用溶液及びキャピラリ電気泳動チップBを使用して下記条件Bでキャピラリ電気泳動を行った。得られたエレクトロフェログラムを図2及び3に示し、測定された平均電流値の相対値を表2及び3に示す。なお、平均電流値とは、電気泳動開始から終了までの電極間の電流値を平均することにより算出される。
〔測定装置〕
キャピラリ電気泳動チップのキャピラリ電気泳動は、アークレイ社製の装置を用いて行った。キャピラリ電気泳動チップ1の検出部6において、415nmの波長における吸光度を測定した。吸光度の測定は、電気泳動開始から終了まで、0.02秒間隔で連続的に行った。
〔泳動条件A〕
1:キャピラリ電気泳動チップA上の泳動液保持槽5に比較例1のキャピラリ電気泳動用溶液9μLを添加して、キャピラリ3内に比較例1のキャピラリ電気泳動用溶液を充填する。
2:次に、実施例1,2及び比較例1の各キャピラリ電気泳動用溶液で試料原料を25倍に希釈して調製した試料9μLを、チップ上の試料保持槽に添加する。
3:次に、試料保持槽4に陽電極、泳動液保持槽5に負電極を接触させ、1800Vの電圧を印加して電気泳動を開始する。
4:検出部にて415nmの吸光度を測定し、エレクトロフェログラムを得る。また、電圧印加中は電流値を測定する。電気泳動は90秒間行う。
〔泳動条件B〕
1:キャピラリ電気泳動チップB上の泳動液保持槽5に比較例2のキャピラリ電気泳動用溶液9μLを添加して、キャピラリ3内に比較例2のキャピラリ電気泳動用溶液を充填する。
2:次に、実施例3,4及び比較例2の各キャピラリ電気泳動用溶液で試料原料を25倍に希釈して調製した試料9μLを、チップ上の試料保持槽に添加する。
3:次に、試料保持槽4に陽電極、泳動液保持槽5に負電極を接触させ、1800Vの電圧を印加して電気泳動を開始する。
4:検出部にて415nmの吸光度を測定し、エレクトロフェログラムを得る。また、電圧印加中は電流値を測定する。電気泳動は90秒間行う。
[1.キャピラリ電気泳動用溶液の調製]
比較例1と同じように、比較例3のキャピラリ電気泳動用溶液を調製した。
前述の全血を試料原料として使用した。キャピラリ電気泳動チップは、前記キャピラリ電気泳動チップBを使用した。
実施例5及び比較例3,4のキャピラリ電気泳動用溶液及びキャピラリ電気泳動チップBを使用して下記条件Cでキャピラリ電気泳動を行った。得られたエレクトロフェログラムを図2及び3に示し、測定された平均電流値の相対値を表4に示す。
〔測定装置〕
キャピラリ電気泳動チップのキャピラリ電気泳動は、前述と同じ装置を用いた。
〔泳動条件C〕
1:キャピラリ電気泳動チップB上の泳動液保持槽5に実施例5及び比較例3、4の各キャピラリ電気泳動用溶液9μLを添加して、キャピラリ3内にキャピラリ電気泳動用溶液を充填する。
2:次に、実施例5及び比較例3、4の各キャピラリ電気泳動用溶液で試料原料を25倍に希釈して調製した試料9μLを、チップ上の試料保持槽に添加する。
3:次に、試料保持槽4に陽電極、泳動液保持槽5に負電極を接触させ、1600Vの電圧を印加して電気泳動を開始する。
4:検出部にて415nmの吸光度を測定し、エレクトロフェログラムを得る。また、電圧印加中は電流値を測定する。電気泳動は60秒間行う。
2: 基板
2a:上基板
2b:下基板
3: キャピラリ流路
4: 試料保持槽
5: 泳動液保持槽
6: 検出部
Claims (28)
- 試料の分析方法であって、
キャピラリ電気泳動により試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、
分析対象物質の分離及び/又は検出が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、試料分析方法。 - 試料の分析方法であって、
泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、
前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、
分析対象物質の分離及び/又は検出が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、試料分析方法。 - 分析対象物質の分離及び/又は検出が、イオン性の擬似固定相、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質の存在下で行われる、請求項1又は2に記載の試料分析方法。
- 前記試料が、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質を含有する、請求項1から3のいずれかに記載の試料分析方法。
- 前記試料が、イオン性の擬似固定相、pH緩衝物質及び非界面活性剤型の両イオン性物質を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の試料分析方法。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質は、ミセルを形成しない両イオン性物質である、請求項1から5のいずれかに記載の試料分析方法。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質は、pH緩衝作用を有さない物質である、請求項1から6のいずれかに記載の試料分析方法。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質が、非界面活性剤型のベタインである、請求項1から7のいずれかに記載の試料分析方法。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質が、四級アンモニウムカチオン、及び、スルホ基(-SO3 -)若しくはカルボキシル基(-COO-)を同一分子内の隣り合わない位置に有する物質である、請求項1から8のいずれかに記載の試料分析方法。
- pH緩衝物質は、そのpKa又はpKbの値が、泳動条件のpHの±2.0の範囲に含まれる物質である、請求項1から9のいずれかに記載の試料分析方法。
- イオン性の擬似固定相が、アニオン性又はカチオン性のポリマーである、請求項3から10のいずれかに記載の試料分析方法。
- 試料が、ヘモグロビンを含む試料である、請求項1から11のいずれかに記載の試料分析方法。
- 試料が、分析対象物質として、安定型HbA1c(s−HbA1c)、ヘモグロビンA0(HbA0)、ヘモグロビンA1a(HbA1a)、ヘモグロビンA1b(HbA1b)、ヘモグロビンA1d(HbA1d)、ヘモグロビンA1e(HbA1e)、ヘモグロビンA2(HbA2)、ヘモグロビンS(HbS、鎌状赤血球ヘモグロビン)、ヘモグロビンF(HbF、胎児ヘモグロビン)、ヘモグロビンM(HbM)、ヘモグロビンC(HbC)、ヘモグロビンD(HbD)、ヘモグロビンE(HbE)、メト化ヘモグロビン、カルバミル化ヘモグロビン、アセチル化ヘモグロビン、アルデヒド化ヘモグロビン、及び不安定型HbA1c(l−HbA1c)からなる群から選択される物質を含みうる、請求項1から12のいずれかに記載の試料分析方法。
- キャピラリ電気泳動の泳動液のpHが、3.0〜6.9である、請求項1から13のいずれかに記載の試料分析方法。
- イオン性の擬似固定相が、アニオン性基を有する多糖類である、請求項3から14のいずれかに記載の試料分析方法。
- pH緩衝物質、非界面活性剤型の両イオン性物質、及び、水を含有する、キャピラリ電気泳動用溶液。
- さらに、イオン性の擬似固定相を含有する、請求項16記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質は、ミセルを形成しない両イオン性物質である、請求項16又は17に記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質は、pH緩衝作用を有さない物質である、請求項16から18のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質が、非界面活性剤型のベタインである、請求項16から19のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 非界面活性剤型の両イオン性物質が、四級アンモニウムカチオン、及び、スルホ基(-SO3 -)若しくはカルボキシル基(-COO-)を同一分子内の隣り合わない位置に有する物質である、請求項16から20のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- pH緩衝物質は、そのpKa又はpKbの値が、泳動条件のpHの±2.0の範囲に含まれる物質である、請求項16から21のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- イオン性の擬似固定相が、アニオン性又はカチオン性のポリマーである、請求項17から22のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- イオン性の擬似固定相が、アニオン性基を有する多糖類である、請求項17から23のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 泳動液のpHが、3.0〜6.9である、請求項16から24のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
- 請求項16から25のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液、及び、キャピラリ電気泳動チップを含み、
前記キャピラリ電気泳動チップは、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を含み、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップである、試料分析用キット。 - さらに、校正用物質、及び/又は、精度管理用物質を含む、請求項26記載の試料分析用キット。
- 試料の分析方法であって、
泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、
前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中の分析対象物質の分離及び/又は検出を行うことを含み、さらに、
キャピラリ内壁がカチオン性物質で被覆されたキャピラリに対し、
アニオン性の擬似固定相と酸性官能基が2つ以上有する酸とを含む液、又は、1つの塩基性官能基とアニオン性となり易い官能基とを有する弱塩基化合物を含む液を接触させることを含む、試料分析方法。
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