JP2011503598A - フリーフロー電気泳動におけるms適合性の非イオン性または両性イオン性界面活性剤 - Google Patents

フリーフロー電気泳動におけるms適合性の非イオン性または両性イオン性界面活性剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、フリーフロー電気泳動法におけるMS適合性界面活性剤の使用であって、差別化された電気泳動移動度を有する分析物の分離が可能な使用に関する。界面活性剤は、好ましくは、PPSなどの開裂性界面活性剤である。

Description

本発明は、分析物、特に、溶けにくいタンパク質またはほぼ疎水性の物質を含むサンプルの、効率的、選択的、および再現可能なフリーフロー電気泳動(FFE)分離を実施するための方法、キット、および媒体に関する。本発明によるFFE分離は、MS適合性の非イオン性または両性イオン性界面活性剤の使用を包含する。
無機分子または有機分子、特に、ペプチドやタンパク質、DNA、例えば薬物として有用な天然物などの、代謝中間体、および脂質などの生体分子を分析するために、有用な分析データが得られるよう、下流分析の前に、問題の化合物を混合物から単離することが通常は求められる。
例えば、タンパク質の単離および後続の分析/特徴付けは、複合タンパク質混合物に適用される高分解能分離技法と、質量分析(MS)などの最先端の同定方法とを組み合わせることによって、試みられてきた。一般に、既存の分離および同定方法は、それ自体で、タンパク質組成物または複合混合物(例えば、生体マトリックス、生体液、例えば血清、血漿、滑液、脳脊髄液、尿、細胞全体、細胞画分、細胞可溶化物、または組織抽出物)中のタンパク質発現に関する詳細を明らかにすることができないことが、認められている。しかしこの制約は、特にタンパク質の存在もしくは非存在またはタンパク質の発現レベルを疾患状態に関連付けることができる場合、広範なタンパク質に関する価値ある情報を提供するために、既存の方法(またはいくつかの既存の技法の組合せ)の使用を阻むものではない。
広く適用可能な、例えば生体サンプルのMS分析、NMR分析、円偏光二色性分析、結晶化後のX線回折パターンの決定、またはUV分光法分析に対する主な壁の1つは、これらの後続の分析に適切なものにするための、問題の分子の首尾良い精製または少なくとも実質的な濃縮である。タンパク質その他の化合物の探索段階で克服すべきハードルは、MSなどのプロセスチェーン(process chain)の終わりに使用される分析ツールが、タンパク質(または、タンパク質から得られたペプチド)の有限量に対して明らかな検出限界を有することである。例えばMSによるペプチド同定の感度限界および精製要件を完全に活用するには、問題のタンパク質を、タンパク質の混合物その他の生物有機混合物から分離および/または濃縮することが必要である。
電気泳動は、直流電流の影響下にある荷電粒子の移行に基づいて粒子を分離するための、十分に確立された技術である。等電点電気泳動(IEF)、ゾーン電気泳動(ZE)、等速電気泳動(ITP)などのいくつかの異なる操作モードが、上述の分離方式の変形例として開発されており、これらは一般に、当業者に公知である。
フリーフロー電気泳動(FFE)は、固定相(または固体支持材料)が存在しない状態で分析物の分離が液体媒体中で行われる技術である。FFEは、無担体偏向電気泳動またはマトリックスフリー偏向電気泳動としばしば呼ばれる。
プロテオミクスの分野において、FFEは、複合タンパク質サンプルの規定の分離に関し、それらの様々な等電点(pI)値の観点から選択される技術である。FFEを使用すると、有機および無機分子、生体粒子、バイオポリマー、および生体分子を、これらの電気泳動移動度に基づいて分離することができる。これに相当する原理は、既に記述されている[例えば、非特許文献1参照]。
FFEプロセスは、例えば安定化媒体および向流媒体によって、近年改善されてきた。これは例えば、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれている文献(例えば、特許文献1参照)に反映されている。この特許によれば、向流媒体は、電極間を移動するバルク分離媒体およびサンプルの連続流方向に対向して、分離スペースに導入される。両媒体(分離媒体および向流媒体)は、分画出口を通して、マイクロタイタープレートなどの適切な収集デバイス内に放出されまたは溶出され、その結果、低ボイド容量を有する分画プロセスが行われる。さらに、分画出口の領域にある媒体の層流は、維持される(即ち、乱流が非常に少なくまたは存在しない。)。
インターバルFFEと呼ばれる特定のFFE技法が、例えば文献(例えば、特許文献2参照)に開示されている。この特許では、サンプルおよび分離媒体は共に電気泳動チャンバ内に導入され、サンプル中の分析物は、ゾーン電気泳動(ZE)、等電点電気泳動(IEF)、または等速電気泳動(ITP)などの電気泳動モードを使用して分離され、この分析物は、最終的にはチャンバから分画出口を通して排出される。文献(例えば、特許文献2参照)の実施形態は、分離媒体およびサンプルの移動が一方向性となって、チャンバの入口端部から出口端部に向かって移動し、このとき有効電が印加されて電気泳動が引き起こされ、その間、サンプルおよび媒体が装置内を通過しながら電界内で分離される当技術分野で一般に使用される技法(一般に、連続FFEと呼ぶ。)とは対照的に、サンプルおよび媒体は入口端部から出口端部に向かって流体的に押し遣られない状態となることについて記述している。
本明細書で使用されるFFEのコンテクストにおけるいわゆるサイクリックモードまたはサイクリックインターバルモードは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許出願3(文献4および5の優先権を主張する。)参照)に記載されている。まとめると、サイクリックインターバルモードは、少なくとも1回、可能なら多数回、バルク流方向が反転することによって特徴付けられ、このときサンプルは、細長い電極間の電気泳動電界内に保持されている。静止インターバルモードとは対照的に、サンプルは常に動いており、それによって、より高い電界強度が可能になり、したがってより良好な(より速い)分離が行われる。さらに、細長い電極間のサンプルのバルク流を反転させることによって、電界内の分析物の滞留時間を著しく延ばすことができ、それによって、長い分離時間および/またはより高い分離効率と、より良好な分解能がもたらされる。細長い電極に平行などちらかの方向へのバルク流の反転(サイクルと呼ぶ。)は、特定の状況で求められるたびに繰り返すことができるが、実際上の理由および短時間での分離を得るための望みが、このモードで実施されるサイクル数を典型的には制限することになる。
生体粒子やバイオポリマーなどの分析物を分離するための、いくつかの分離媒体が、当技術分野で公知である。例えば、K.HannigおよびK.H.Heidrichによって出版された書籍(例えば、非特許文献2参照)は、FFE、特にフリーフローZE(FF−ZE)に適切な分離媒体のリストを報告している。
文献(例えば、特許文献6参照)は、自由溶液中で機能的に安定なプレキャスト狭小pHゾーン勾配を形成することによる等電点電気泳動によって分析物を分離するための、pH緩衝系である別の分離媒体を開示している。この媒体は、緩衝成分を、相補的な緩衝対として用いる。
文献(例えば、特許文献7参照)は、FFEに適切な揮発性緩衝系について言及している。揮発性緩衝系は、FFEステップの後およびMSなどの下流分析の前にこの揮発性緩衝系を容易に除去することができるという利点をもたらし、またはこの揮発性緩衝系は、下流分析を妨害しない。
残念ながら、最近になって今日の研究の焦点が当てられるようになった様々なタンパク質は、水溶液に不溶またはほとんど不溶である。例えば電気泳動中にタンパク質が沈殿しないように、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、またはトリトンX−100が一般に使用されるこれらの方法において、この界面活性剤は、質量分析検出の感度を妨害するので、MSなどの後続の分析の前に除去しなければならない。この問題に対処するために、そのような妨害物質を除去する古典的な方法は、通常、首尾良く行われた電気泳動の後および例えば下流MS分析の前に使用される。これらの大規模でしばしば困難な清浄化および/または精製手順は、分析時間の全体の長さを延ばし、典型的にはサンプルの損失をもたらす。さらに、これらの労力のかかる手順は、自動化に対する障害となる。したがって、サンプル調製は、今日の首尾良く行われる生体分子分析プロジェクトにおいて、1つの極めて重要な、しばしば技術的に困難を伴う仕事である。問題の(1種または複数の)分析物を、分離ステップ後に前記界面活性剤を除去するのに長時間およびサンプル消費精製ステップを必要とすることなく、分析物の混合物から分離できるようにする界面活性剤が求められている。質量分光分析に本質的に適切な、当技術分野で知られている界面活性剤がある。オクチル−β−グルコピラノシドなどの非イオン性界面活性剤は、質量分析の適用例に使用されてきた(例えば、非特許文献3参照)。しかし、電気泳動分離は依然としてSDSを必要とし、時間のかかる界面活性剤の交換ステップが求められている。
文献(例えば、非特許文献4参照)は、3−[3−(ビスアルキルオキシエチル)ピリジン−1−イル]プロパン−1−スルホネート(PPS)と呼ばれる酸に不安定な「開裂性洗浄剤」の性質と、タンパク質の抽出中およびMS分析でのこの化合物の使用について記述しているが、この分析は、分離されまたは少なくとも部分的に実質的な、問題の分析物が得られるように、分離方法を用いることなく、粗製抽出物を用いて実施された。
2005年に、Norrisらは(例えば、非特許文献5参照)、タンパク質の溶解度を増大させかつ酸に不安定である代わりに光に不安定でありまたはフッ化物開裂性の、その他の「開裂性洗浄剤」について述べている。洗浄剤の開裂後、その部分は沈殿する可能性があり、MS分析をもはや妨害せず、またはMS分析前に容易に除去することができる。
Norrisらによる文献(例えば、特許文献8参照)は、切除腫瘍の切除縁からの組織を分析するための方法について記述しており、また、細胞内部に含有されるタンパク質を抽出するための開裂性洗浄剤3−[3−(ビスアルキルオキシエチル)ピリジン−l−イル]プロパン−l−スルホネート(PPS)の使用と、その後に行われるそのMS分析について記述している。
2005年のNorrisらの第2の刊行物(例えば、非特許文献6参照)は、質量分析での開裂性洗浄剤の使用を対象とし、前記洗浄剤は、洗浄剤の開裂後、MSマトリックスとして働くことができる部分を含む。
文献(例えば、特許文献9および10参照)には、開裂性組成物と、そのような組成物を、特に疎水性タンパク質のMALDI−MS分析で用いる方法とが、記載されている。
文献(例えば、特許文献11参照)は、分析物の溶解度を増大させることができるMS適合性可溶化剤と、その使用について記述している。可溶化剤は、LC/MSに適切であると記述されている。
文献(例えば、特許文献12および13参照)は、脆弱な界面活性剤と、その使用方法について記述している。界面活性剤は、酸性条件下で界面活性剤を破壊することができるジオキソランまたはジオキサン官能基を含有する。本明細書に記述される界面活性剤は陰イオン性であり、そのためFFE法にとって、特にフリーフロー等電点電気泳動(IEF)にとっては、分離されるサンプル中の粒子に付加された電荷の観点から魅力あるものではなくなる。
文献(例えば、非特許文献7参照)は、タンパク質の溶液内酵素消化のための、酸に不安定な陰イオン性界面活性剤について記述する。界面活性剤は、HPLC−MSに適切である。界面活性剤の陰イオン特性により、この界面活性剤はFFE法に適切ではない。
米国特許第5275706号明細書 米国特許第6328868号明細書 国際出願PCT/EP2007/059010号明細書 米国特許仮出願第60/823833号明細書 米国特許仮出願第60/883260号明細書 米国特許第5447612号明細書 米国係属仮出願第60/945246号明細書 米国特許出願公開第2006/0292607号明細書 米国特許出願公開第2006/0240562号明細書 国際公開第02/097393号パンフレット 国際公開2006/047614号パンフレット 国際公開第00/70334号パンフレット 国際公開第03/102536号パンフレット 米国特許出願公開第2004/050697号明細書 米国特許出願公開第2004/050698号明細書 米国特許出願公開第2004/045826号明細書 米国特許出願公開第2004/026251号明細書 国際出願PCT/EP2007/056167号明細書 米国特許仮出願第60/805248号明細書 米国特許仮出願第60/821491号明細書 米国特許出願公開第2004/0101973号明細書 欧州特許出願公開第1320747号明細 米国特許仮出願第60/885792号明細書
Bondy B. et al. (1995), "Sodium chloride in separation medium enhances cell compatibility of free-flow electrophoresis", Electrophoresis 16: 92-97 "Free-flow Electrophoresis",(ISBN 3-921956-88-9) Hatt,P et al., 1997 Norris et al.(Anal Chem. 75(23), 6642-7, 2003) Norris et al.(J.Mass Spectrom., 1319-1326, 2005) Norris et al.(Anal.Chem., 77, 5036-5040, 2005) Ying-Qing Yu et al.(Anal.Chem., 75, 6023-6028, 2003)
今日では、当技術分野において、分離ステップの後および下流分析の前に前記界面活性剤を除去するのに長時間およびサンプル消費精製ステップを必要とすることなく、問題の(1種または複数の)分析物を分析物の混合物から分離するのを可能にする、利用可能な方法を有することが求められている。
本発明の目的は、水溶液に対して不溶なまたはごく限られた可溶性の分析物の分離に適切であるが、通常なら後続の分析を妨害する可能性のある界面活性剤を除去するための古典的な時間およびしばしばサンプル消費精製手順が回避される、方法およびキットを提供することである。本発明の実施形態は、妨害する界面活性剤を除去するのに時間がかかりかつサンプル損失をもたらす清浄化ステップを必要とすることなく、分離された分析物の後続のMS分析を可能にする界面活性剤を使用したFFEによって分析物を分離するための、有利な方法を提供する。
その結果、本発明の実施形態は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の使用を含む、フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するための方法に関する。
別の実施形態では、本発明は、本発明によるフリーフロー電気泳動分離と、その後に行われる、前記フリーフロー電気泳動分離から得られたサンプルの少なくとも一部の分析とを含む、分析物を分析するための方法を提供する。
本発明の別の態様は、本発明のフリーフロー電気泳動法に適切な、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む、分離媒体に関する。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む、本発明によるサンプル中の分析物のフリーフロー電気泳動分離を実施するためのキットに関する。
さらに別の態様は、フリーフロー電気泳動における、本発明によるMS適合性の両性イオン性もしくは非イオン性界面活性剤またはMS適合性の両性イオン性もしくは非イオン性の開裂性界面活性剤の使用に関する。
アフリカニシキヘビ(python sebae)から得た血清サンプルの揮発性緩衝系を使用した、等電点電気泳動によるフリーフロー電気泳動分離から得られた画分の、銀染色SDS−PAGEを示す図であって、この分離が3−[3−(l,l−ビスアルキルオキシエチル)ピリジン−l−イル]プロパン−l−スルホネート(PPS)の存在下で(第1のゲル)またPPSが存在しない状態で(第2のゲル)実施された状態を示す図である。 PPS含有サンプルの画分26のMALDI TOF質量スペクトルを示す図である。 分離ゾーン内に0.1%PPSを含む緩衝系のそれぞれのpIマーカーの分布を可視化する、λ=420nm、515nm、および595nmでの、FFE画分の吸光度を示す図である。 分離ゾーン内に0.1%PPSを含まない緩衝系のそれぞれのpIマーカーの分布を表す、λ=420nm、515nm、および595nmでの、FFE画分の吸光度を示す図である。 HELA細胞からの全細胞抽出物(PPSでHBS緩衝液に抽出された。)を含有するサンプルの、フリーフローゾーン電気泳動画分の銀染色SDS Pageを示す図である。 PPSで抽出された膜タンパク質を含有するサンプルの、フリーフロー電気泳動画分の銀染色SDS Pageを示す図である。 分離ゾーン内に0.1%PPSを含む緩衝系のそれぞれのpIマーカーの分布を可視化する、λ=420nm、515nm、および595nmでのFFE画分の吸光度によって表された、FFE分離溶出プロファイルを示す図である。 分離ゾーン内にPPSを含まない緩衝系のそれぞれのpIマーカーの分布を可視化する、λ=420nm、515nm、および595nmでのFFE画分の吸光度によって表された、FFE分離溶出プロファイルを示す図である。 本発明の方法を実施するための適切なFFE装置を示す概略図である。
本発明の実施形態は、実質的に水性の媒体における、例えば疎水性の、ごくわずかに水溶性の、または水不溶性の分析物の可溶化を支援する、非イオン性または両性イオン性のMS適合性界面活性剤を含む水溶性、わずかに水溶性、および本質的に水不溶性の分析物の、効率的、選択的、および再現可能なフリーフロー電気泳動分離を実施するための方法、分離媒体、およびキットに関する。さらに、前記界面活性剤は、水溶性分析物を含むサンプルにも同様に役立てることができるが、これは例えば、ある条件下で前記分析物の沈殿を防止するのに必要である可能性があるからである。
本発明の実施形態は、下記の事項、即ち:
a)電気泳動分離と後続の分析すなわちMS適合性界面活性剤が分析方法を妨害してはならない分析との間で、妨害する界面活性剤を除去するのに、時間がかかり、および/またはサンプル損失をもたらす精製ステップが要求されない;
b)フリーフロー電気泳動は、ゲル電気泳動、特に2Dゲル電気泳動に比べて短い分離時間を有し、不安定な界面活性剤が通常ならより長い滞留時間で開裂する分離条件の使用を可能にする;
c)例えば向流媒体によって、フリーフロー電気泳動分離の最中または直後に緩衝成分を変化させることができるために、不安定な界面活性剤の即座の安定化または開裂が可能になる;および
d)高速分離と後続の分析との組合せによって、分析物混合物からの分析物の、より高速な、より良好な、自動化された、分離および同定が可能になる;
という事項の1つまたは複数を含むがこれらに限定するものではない、いくつかの利点を有する方法を含む。
本発明の実施形態は、例えば、膜結合性タンパク質分離を改善するために、特に水性溶解産物中のその低溶解度および濃度の観点から検出するのがただでさえ難しいタンパク質または分析物の分離を改善するために、使用することができる。
したがって、本発明の1つの主な態様は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離を行うステップを含む、フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するための方法に関する。
好ましい実施形態では、サンプルの少なくとも一部は、電気泳動分離後に1つまたは複数の画分に収集される。
本発明の有利な方法は、多くの下流分析物を妨害する界面活性剤を除去するのに時間がかかりかつサンプル損失をもたらす清浄化ステップを必要とすることなく、タンパク質その他の化合物の分離を可能にするだけではなく、例えば質量分析による後続の分析も可能にする。任意選択で、問題の分析物がタンパク質である場合、前記タンパク質をより小さいペプチドに切断する消化ステップは、フリーフロー電気泳動の前または後に行うことができる。前記消化ステップを行うために、フリーフロー電気泳動で使用されるMS適合性界面活性剤を除去することも必要とせず、それどころか前記界面活性剤の存在によって消化をさらに改善することができるのに対して、例えば尿素などの一般に使用される界面活性剤については、その濃度を、前記消化ステップ前にある程度低下させなければならずまたはさらに完全に排除しなければならない。
したがって、本発明の別の態様は、本発明によるフリーフロー電気泳動分離と、その後に行われる、フリーフロー電気泳動から得られたサンプルの少なくとも一部の分析とを含む、分析物を分析するための方法に関する。
本出願のコンテクストにおいて、「分離する」および「分離」という用語は、電界でのそれらの種々の挙動に基づいた2種以上の分析物の混合物の、任意の空間的分配を意味するものとする。したがって分離は、限定するものではないが、サンプル中に含有されるある画分または分析物の、分画ならびに特異的および選択的濃縮または枯渇、濃縮および/または単離を含む。しかし分画は一般に、分析物の残りの部分から得たサンプル中のある分析物の分配または濃縮を意味し、前記その他の分析物が電気泳動ステップ中にさらに分離されるか否かには無関係なものであると理解されることがわかるであろう。分画および分離という用語の間に明瞭な区別はないことが容易に明らかにされるが、後者は、サンプル中の様々な分析物のより微細なまたはより詳細な空間的分配を意味する。このように、本出願が「分離する」または「分離」という用語に言及するときはいつでも、分離、分画、単離、濃縮、または枯渇を含めた前述の意味の少なくとも1つを含むものとする。
分離は、主に、ある画分が引き続き収集されるように調製的手法で実施することができ、または単に分析的に実施することができ、この場合問題の分析物またはある画分中のその存在は適切な手段によって検出されるだけであるが、例えばさらなる使用のために収集されない。
本明細書で使用される「サンプル」という用語は、その少なくとも一部について、フリーフロー電気泳動分離および/または分析が行われる任意の組成物を指す。典型的には、サンプルは、問題の少なくとも1種の分析物を含みまたは含むと考えられる。
本発明のコンテクストにおける「分画サンプル」は、サンプル中の様々な分析物がFFE中に分離され、したがってサンプルを、FFE分離ステップ後にいくつかの画分に分割することができるサンプルを意味する。当業者なら、FFEに適切な装置の分離チャンバから多数の収集出口を通して出て行った、一般に個々のチュービングを通して任意の適切なタイプの個々の収集容器(例えば96ウェルプレート、場合によっては異なるサイズ、例えば96、384、1536、またはされにそれ以上のウェルのプレート)にもたらされた個々の画分を、どのように収集するのか理解されよう。フリーフロー電気泳動分離法が行われたサンプルの少なくとも一部は、前記電気泳動分離後に1つまたは複数の画分に収集されることが理解されよう。
「分析物」、「問題の分析物」、および「問題の分子」という用語は、分離し、単離し、検出し、定量し、またはその他の方法で試験をし、研究をし、または分析をしようとする分子を示すために、本明細書では同義に使用される。このように、本明細書における「分析物」という用語の使用は、問題の分子のタイプを決定することのみに限定されず;むしろ、例えばリガンド間相互作用、および前記問題の分子の3D構造または構造変化などに関するその他の知見を包含する。本発明の実施形態によるFFE法によって分離することができる典型的な分析物には、無機および有機分子、生体粒子、バイオポリマー、および生体分子、またはこれらの任意の組合せが含まれる。問題の分析物、特に生体粒子、バイオポリマー、および生体分子の非限定的な例は、タンパク質、特に膜結合性タンパク質、内在性膜タンパク質および親油性タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、ペプチド、疎水性ペプチド、DNA−タンパク質複合体(例えば、クロマチン)、DNA、膜、膜断片、脂質、糖、およびこれらの誘導体、多糖およびその誘導体、ホルモン、リポソーム、ウイルス粒子、抗体、抗体複合体、ナノ粒子、または前述のいずれかの混合物である。本発明のある実施形態により分離することができる無機または有機分子には、プラスチックのある構成成分、ラテックス塗料粒子、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、デキストラン、セルロース誘導体、ポリ酸、医薬品、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物(explosive)、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染因子、ナノ粒子などの、疎水性ポリマーが含まれる。
本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、限定するものではないが、ペプチド、酵素、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、成長因子、タンパク質複合体、タンパク質凝集体など、約20以上のアミノ酸を有するものを含めた任意のタンパク質を指す。タンパク質は、約20超のアミノ酸、約50超のアミノ酸残基、約100超のアミノ酸残基、または約200超のアミノ酸残基で構成されたポリペプチドを含み、これらは任意選択で、例えばグリコシル化、硫酸化、またはリン酸化によって修飾することができるものである。
本明細書で使用される「親油性タンパク質」という用語は、少なくとも1つの親油性領域を有するタンパク質を指す。生体内でファンデルワールス力を用いて膜と相互に作用することができる膜結合性タンパク質は、親油性タンパク質の非限定的な例である。任意選択で、親油性タンパク質は、例えば膜の極性頭部と相互に作用する極性またはイオン基を含有するタンパク質を包含してもよい。非限定的な例は、Kセグメントまたは受容体を含むデヒドリンである。受容体分子は、当技術分野で認められており、一般に、細胞外、細胞内、および/または膜貫通ドメインを有する。
本明細書で使用される「内在性膜タンパク質」という用語は、生体内で生体膜に永久に結合したタンパク質分子(またはタンパク質のアセンブリ)に関する。内在性膜タンパク質の最も一般的なタイプは、生体膜全体に及ぶ種類の膜貫通タンパク質である。構造的に、内在性膜タンパク質の領域は、膜のリン脂質二重層の疎水性領域を貫通する。この相互作用により、内在性膜タンパク質は、通常、二重層の疎水性相互作用を乱す界面活性剤を使用することによってのみ、膜から除去することができる。
本明細書で使用される「ペプチド」または「ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つのペプチド結合を含む任意の実体を指し、Dおよび/またはLアミノ酸を含むことができる。ペプチドは、約2から約150、好ましくは約2から約100、より好ましくは約2から約50、最も好ましくは約2から約20アミノ酸を有することができる。
「疎油性」および「親水性」という用語は、本明細書で同義に使用することができ、水に溶解し、水と混合され、または水に濡れる傾向がある分析物、化合物、および物質を指す。親水性または疎油性の分析物、化合物、および物質は、帯電し極性になる傾向があり、したがってその他の荷電および極性溶媒または分子環境を好む。
「親油性」および「疎水性」という用語は、本明細書では同義に使用することができ、水に溶解せず、水と混合せず、または水に濡れない傾向がある分析物、化合物、および物質を指す。疎水性または親油性の分析物、化合物、および物質は、電気的中性および無極性になる傾向があり、したがって、その他の中性または無極性溶媒または分子環境を好む。
本明細書で使用される「a」という用語は、「1つ」、「少なくとも1つ」、または「1つまたは複数」と理解しなければならない。
「界面活性剤」、「洗浄剤」、「湿潤剤」、および「乳化剤」という用語は、本明細書では同義に使用することができ、水中で表面張力を低下させることが可能な分子または組成物を指す。界面活性剤は、典型的には両親媒性の有機化合物であり、疎水性基(化合物の「尾部」)と親水性基(化合物の「頭部」)との両方を含有することを意味する。したがって界面活性剤は、有機溶媒と水の両方に可溶である。例えば界面活性剤は、水溶液中での疎水性ペプチドまたはタンパク質の保持を促進させる。
本明細書で使用される「MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤」という用語は、両性イオン性または非イオン性にすることができるMS適合性界面活性剤を意味する。いくつかの実施形態では、両性イオン性または非イオン性界面活性剤は要するに、2つの電極間の個別の領域のpHに応じて負または正に帯電していてもよいが、非イオン性のMS適合性界面活性剤は、いずれにおいてもそのpH範囲内で帯電せず、問題の分析物は、フリーフロー電気泳動に適切な装置に挿入されまた装置から溶出される。さらに、本発明で使用される両性イオン性のMS適合性界面活性剤の等電点は、一般に、分離ゾーンのpH範囲内にあることを理解すべきである。本明細書で使用される「MS適合性界面活性剤」および「MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤」という用語は、FFEに適切な界面活性剤が分離ゾーン分離のpH範囲内で両性イオン性または非イオン性でなければならないので、同義に使用することができる。
界面活性剤のコンテクストにおいて本明細書で使用される「両性イオン性」という用語は、電気的に中性であるが正式には正および負の電荷を異なる原子上に保持する化合物を指す。限定すると理解すべきではない例は、例えば、ベタイン誘導体であり、好ましくは3−(トリメチルアンモニウム)−プロピルスルホナトなどのスルホベタインまたはホスホベタインである。典型的には、本発明で使用される両性イオン性界面活性剤の等電点(pI)は、分離ゾーンのpH範囲内にあり、好ましくは、両性イオン性界面活性剤のpIは、装置のサンプル導入点のpH値と問題の分析物の溶出点のpH値との間のpH範囲内にある。いくつかの実施形態では、両性イオン性界面活性剤のpIは、問題の分析物の溶出pH値から1.5以下、1以下、0.75以下、0.5以下、または0.25以下のpH単位離れている。
界面活性剤のコンテクストにおいて本明細書で使用される「非イオン性」という用語は、(双)極性化合物を指す。この例には、限定するものではないが、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12~30−アルキル、−アルケニル、−アルキニル、−アラルキル、または−アリールなどの少なくとも1個の疎水性置換基を有する糖誘導体が含まれる。特に、アセチルピラノシドおよび単に疎水性置換基を有する他の糖誘導体は、非イオン性界面活性剤には属さない。典型的に、非イオン性界面活性剤は、pH範囲内で帯電しておらず、問題の分析物は、フリーフロー電気泳動に適切な装置に挿入されこの装置から溶出され、非イオン性界面活性剤は、分離ゾーンのpH範囲内で帯電していないことが好ましい。しかし、前記ゾーンのpH範囲に応じて、非イオン性化合物はそれにも関わらず、問題の分析物を分離するのに使用されるpH範囲の外のあるpHで帯電するようになることが起こり得る。
本明細書で使用される「MS適合性」という用語は、MS分析で使用することができる界面活性剤を示す。「MS適合性界面活性剤」という用語は、それ自体がMS分析に適切な、即ち修飾のない界面活性剤を包含し、その非開裂状態ではMS適合性ではなく、少なくとも1カ所で少なくとも2つの部分に開裂することができる、「開裂性」界面活性剤も包含する。前記部分は、MS適合性または非MS適合性にすることができる。本発明による開裂性界面活性剤の非MS適合性部分は、例えば遠心分離、濾過、または蒸発によって容易に除去することができ、それに対してMS適合性部分は、溶液中に留まることができ、下流分析中に存在することができ、またはある条件下で同様に、遠心分離、濾過、または蒸発によって除去することができる。好ましい実施形態では、結果的に得られた複数の部分がMS適合性である。そのようなMS適合性の開裂性界面活性剤は、例えばタンパク質消化ステップを含む方法に適切である。タンパク質は、水に不溶であってもよいが、消化から得られたその断片または断片の一部は可溶であってもよく、例えばMSによって分析することができる。
本発明の開裂性界面活性剤によってもたらされる利点の非限定的な例として、適切なMS適合性界面活性剤の存在下での分析物の質量分析検出の感度は、例えばSDSの存在下での分析物の質量分析検出の感度よりも非常に高い。ほとんどの場合、SDSを含むサンプルの質量スペクトルは、SDSで処理された分析物によりまたは前記分析物の分解生成物が原因で、シグナルを全く示さずまたはごく弱いシグナルしか示さない。これとは対照的に、前記分析物を含みSDSの代わりにMS適合性界面活性剤の存在下で質量分光分析が行われるサンプルは、分析物および前記分析物の分解生成物に関連したシグナルを示す。
したがってMS適合性界面活性剤は、質量分光分析が行われる定められた濃度を有する可溶性対照分析物を含むサンプル(Sサンプル)中にこの界面活性剤が存在することによって、同じように定められた濃度で前記対照分析物を含むが界面活性剤を含まないサンプル(C(対照)サンプル)の質量スペクトルに比べ、本質的に少なくとも同じ質量ピーク(同様のまたはさらに高い強度で)を含む質量スペクトルをもたらす界面活性剤であると、即ち質量スペクトルが本質的に同一である界面活性剤であると理解することができる。いくつかの実施形態では、Sサンプルから得られたMSスペクトルは、Cサンプルから得られたMSスペクトルに比べ、例えば対照分析物が質量分光分析前に消化され分解生成物が疎水性であり質量分光分析前にCサンプル中に沈殿する場合、対照分析物の分解生成物に起因してより多くの質量ピークをさらに含んでもよい。
MS適合性界面活性剤を同定する適切な手順は、例えば、文献(例えば、特許文献11参照)に記載されている。BSA、一般に利用される試験タンパク質は、例示的な無傷のタンパク質として使用することができ、β−ガラクトシダーゼのトリプシン消化物(t−β−gal)を例示的なペプチド混合物として使用することができる。β−ガラクトシダーゼトリプシン断片は、親水性から疎水性までの溶解度範囲を有する。さらに、多くのその他の物質も、MSスペクトルが得られるように水に対して十分可溶性である限り、対照分析物として働くことができる。
非限定的な例として、β−ガラクトシダーゼS−サンプルのMALDI−TOF分析を、同等のCサンプルのMALDI−TOF分析と比較することができる。900〜3700m/z範囲でのイオン化抑制は、SおよびCサンプルで同定された質量−イオンの一致を比較することによって、決定することができる。当業者なら、有用なMALDI−TOF分析をどのように行うか、わかるであろう。
好ましくは、Sサンプルの位置合わせされた質量ピークのそれぞれの強度は、Cサンプルの同一の質量ピークの強度に対して25%以上であり、より好ましくは、Cサンプルの同じピークの強度と本質的に同じであり、または最も好ましくは、Cサンプルの同じピークの強度よりもさらに高い。
ごくわずかしか溶解せずまたは不溶性の(1種または複数の)分析物または(対照)分析物の消化生成物に関し、前記ごくわずかしか溶解せずまたは不溶性の分析物/消化生成物とMS適合性界面活性剤とを含むサンプルの質量スペクトル内の質量ピークの強度は、界面活性剤を全く含有しないサンプルに関して得られた質量スペクトルの同一の質量ピークの強度よりも、少なくとも1、1.5、3.5、10、100、または1000倍高いことが好ましい。
本明細書で使用される「本質的に同一な」は、Cサンプルの対照分析物の分解生成物による質量ピークの少なくとも60%、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは約100%が、Sサンプルのスペクトル内にも存在することを意味する。MASCOT(登録商標)などのサーチエンジンを使用して、例えば消化されたt−β−galまたはBSAのMSスペクトルと、t−β−galの消化物の理論上のMSスペクトルまたはBSAの理論上のMSスペクトルとを比較することができる。本発明の目的で、900から2600m/zの範囲を典型的に考慮すべきである。
言い換えれば、本発明のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の存在下で得られた質量スペクトルは、Cサンプルの対照分析物の分解生成物による質量ピークの少なくとも60%、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは100%を含む。
Cサンプルの質量シグナルと、Sサンプルの同一の質量シグナルとの間の質量差は、使用される方法または装置に従属する測定誤差の範囲内で変化する可能性がある。当業者なら、そのような測定誤差をどのように決定するかが理解されよう。例えば、イオントラップ質量分析計の質量測定精度は、典型的には0.5から2.5ダルトンの間で計算されるのに対し、誤差が50ppm未満またはさらに25ppm未満の質量測定精度は、MALDI−TOFの適用例で約900から3700ダルトンに及ぶ質量シグナルを測定することによって実現することができる。
本発明の界面活性剤の適合性とは無関係に、フリーフロー電気泳動およびその後の分析(MSなど)での界面活性剤の濃度はやはり可能な限り低くあるべきであり、好ましくはその臨界ミセル濃度(CMC)付近であるべきことが理解されよう。界面活性剤のCMCを決定するのに当技術分野で適切な方法は、当業者に公知である。さらに、多くの界面活性に関し、そのCMCは既に公知である。
MS適合性界面活性剤は、典型的には、100mMよりも低い濃度で使用される。界面活性剤に応じて、50mMよりも低く、30mMよりも低く、15よりも低く、5よりも低く、1よりも低く、さらに0.1mMよりも低い濃度が適切と考えられる。例えば、本発明で使用される、フリーフロー電気泳動が行われるサンプル内の開裂性界面活性剤PPSの量は、0.1%(w/v)であった。この量は、2から10mMの間の濃度(PPSのアルキル鎖の組合せに応じて)に相当する。
当業者なら、それぞれが対照分析物を異なる濃度で含むCサンプルおよびSサンプルの質量スペクトルを比較することによって、本発明による典型的なMS適合性界面活性剤を容易に同定することができる。この方法により、当業者は、界面活性剤がMS適合性であるか否かを決定することが可能になる。特に、水にほぼ不溶性のまたは不溶性の(界面活性剤を含まない)分析物は、サンプル調製が界面活性剤の使用を含まない場合、分析可能な質量スペクトルを全く示さない可能性があることが予測される。したがって、MS適合性界面活性剤の存在下での、フリーフロー電気泳動による問題の分析物の分離は、そのような分析物を下流分析で同定し特徴付けるのに適切なサンプルをもたらす。前記下流分析は、質量分析または当技術分野で知られている任意のその他の適切な分析にすることができる。
好ましい実施形態では、本発明による方法は、サンプル媒体中および/または少なくとも1種の分離媒体中に含まれる、本発明による少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む、フリーフロー電気泳動分離を行うステップを含む。別の好ましい実施形態は、MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む、本発明によるフリーフロー電気泳動分離を行うのに適切な分離媒体に関する。さらに、その他の別の好ましい実施形態は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含んだフリーフロー電気泳動分離を行うステップを含み、前記界面活性剤がサンプル媒体中および/または少なくとも1種の分離媒体中に存在するものである、フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するための方法に関する。MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、サンプル媒体中または分離媒体中に1種しか存在しないことが好ましいが、サンプル媒体中および/または分離媒体中での、多数のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の任意の組合せが可能である。1つの好ましい実施形態では、本発明の方法で使用される全ての両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、MS適合性界面活性剤である。界面活性剤のそれぞれは、サンプル媒体および/または少なくとも1種の分離媒体中に含めることができる。
さらに、本明細書で使用されるMS適合性界面活性剤は、フリーフロー電気泳動分離中にそれ自体をMS適合性にすることができ、または界面活性剤の開裂を通してMS適合性にすることができる。後者の場合、MS適合性界面活性剤は、MS適合性の開裂性界面活性剤である。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤が開裂性界面活性剤である方法であるが、任意選択で他のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を存在させてもよいことが理解されよう。別の好ましい実施形態では、サンプル媒体および/または分離媒体中の全てのMS適合性界面活性剤が開裂性である。
「MS適合性の両性イオン性または非イオン性の開裂性界面活性剤」、「MS適合性の開裂性界面活性剤」、または「開裂性界面活性剤」という用語は、本明細書で同義に使用され、特定の条件下で少なくとも2つの部分に開裂することができる界面活性剤を指す。ある実施形態で、開裂性界面活性剤の開裂部分の少なくとも1つは、上記にて定義されたMS適合性である。そのようなMS適合性部分は、質量分光分析中に存在させることができ、または存在させなくてもよく、例えばMS分析前に蒸発させることができる。非MS適合性部分は、開裂後に沈殿し、またはMS分析前に蒸発させることができる。
以下に述べるように、3つ以上の部分は開裂ステップから得られることが理解されよう。本発明の方法に適切な開裂性界面活性剤に関する制約として理解すべきではない例として、MS適合性の開裂性界面活性剤は、MS適合性であり溶液中に存在したままの親水性頭部基と、遠心分離または濾過によってサンプルから容易に除去することができる疎水性の非MS適合性尾部とに開裂することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、開裂したMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の部分の少なくとも1つを、濾過、遠心分離、および/または蒸発によって、サンプルからまたは分画サンプルの少なくとも一部から除去することができる。
好ましくは問題の分析物が本質的に安定でありかつ得られた全ての非MS適合性部分を遠心分離、濾過、または蒸発によって容易に除去することができる条件下で開裂剤によって破壊することができる、疎水性部分(尾部)と親水性部分(頭部基)とを組み合わせる結合を含む任意の界面活性剤は、MS適合性の開裂性界面活性剤として適切である。本発明によれば、そのような結合は、開裂性結合と呼ばれることになる。好ましくは、そのような結合は、問題の分析物が本質的に安定な条件下で開裂する。開裂性界面活性剤を開裂させるのに適切な条件下、本質的に安定な分析物は、開裂ステップ中に存在する前記分析物の少なくとも約80%、約90%、好ましくは約97%、より好ましくは約99%、最も好ましくは100%が開裂ステップ後に未変性である問題の分析物であり、即ち分析物は主に、好ましくは完全に、開裂ステップ中の特定の条件下で化学反応に不活性であることを理解すべきである。このコンテクストで化学反応に不活性とは、分析物中の共有結合が、界面活性剤の開裂ステップ中に破壊されずまたは確立されないことを意味する。
本明細書で使用される「開裂剤」は、開裂性界面活性剤中の結合を選択的に開裂させるのに適切な任意の形をとる、任意の手段または化合物または化合物の混合物を指す。開裂性界面活性剤を選択的に開裂させるのに適切な化合物に関する非限定的な例は、開裂性界面活性剤中の酸または塩基に不安定な結合を選択的に開裂させる、酸または塩基またはこれらの溶液/混合物と考えられる。この例およびその他の例は、以下により詳細に記述する。さらに、「開裂剤」という用語は、開裂性界面活性剤中の結合を選択的に開裂させるのに適切な手段を包含する。そのような手段は、例えば、光に不安定な開裂性界面活性剤を開裂させるために離散波長の光を放出する発光手段にすることができる。
本明細書で使用される、「開裂性界面活性剤を開裂させるための溶液」という用語は、リンカーと開裂性界面活性剤中の部分との間の1つまたは複数の結合を選択的に開裂させ、それによって少なくとも2つの部分をもたらすのに適切な、作用剤または組成物を含む任意の溶液を指し、但しこれらの部分の中で非MS適合性部分は遠心分離、濾過、または蒸発によってサンプルから容易に除去できるものであり、MS適合性部分は、溶液中に存在したままでもよくまたは遠心分離、濾過、もしくは蒸発によって同様に除去することができるものである。
MS適合性の開裂性界面活性剤は、複数の開裂性結合、例えば1つまたは複数の開裂ステップから3つの部分をもたらす2つの開裂性結合を含んでもよい。各開裂性結合は独立して、共有結合、イオン結合、水素結合、または錯結合からなる群から選択することができる。1つまたは複数の共有結合が、本発明のコンテクストでは好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、本発明によるフリーフロー電気泳動分離によって分離されたサンプルの少なくとも1つの画分中の、少なくとも1種の開裂性のMS適合性両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、電気泳動分離後に開裂し、即ち少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、少なくとも1つのMS適合性部分と、濾過、蒸発、または遠心分離によって容易に除去することができる部分とに開裂する。この場合も、MS適合性部分は後で行われる分析の前に蒸発によって除去することもでき、即ち開裂ステップから得られた非MS適合性部分については前記下流分析が行われないのに対し、MS適合性部分は下流分析で存在してもよくまたは任意選択で存在しなくてもよいことがわかる。
MS適合性の開裂性界面活性剤は、少なくとも1つの酸に不安定な結合を含んでもよく、即ち界面活性剤は、酸に不安定であり、または少なくとも1つの塩基に不安定な結合を含んでもよく、即ち界面活性剤は塩基に不安定であり、または少なくとも1つの光に不安定な結合を含んでもよく、即ち界面活性剤は光に不安定であり、または少なくとも1つの化学反応性結合を含んでもよく、即ち界面活性剤は化学反応性である。
酸および塩基に不安定な開裂性界面活性剤は、分画サンプル/画分の少なくとも一部のpHを変化させることによって、例えば、酸または塩基に不安定な開裂性界面活性剤を含む本発明によるFFE分離後に分画サンプルの少なくとも一部/少なくとも1つの画分を酸性化またはアルカリ性にすることによって、開裂させてもよい。光に不安定な開裂性界面活性剤は、照射によって開裂させてもよく、即ち、開裂性界面活性剤の開裂は、少なくとも1種の光に不安定な開裂性界面活性剤を含むFFE分離後に、分画サンプルの少なくとも一部/少なくとも1つの画分について、リンカーと前記界面活性剤の部分との間の結合を選択的に破壊するのに適切な定義された波長を含みまたはそのような波長からなる光の照射を行うことによって、実施される。化学反応性の開裂性界面活性剤は、反応性作用剤を添加することによって開裂させてもよく、即ち、開裂性界面活性剤の開裂は、FFE分離後に、分画サンプルの少なくとも一部/少なくとも1つの画分に化学反応性界面活性剤中の結合を破壊することが可能な試薬を添加することによって実施される。例えば、ジスルフィド結合などを開裂させるのに適切な反応物は、DTT(ジチオトレイトール)、または下記の一般式のシラン化合物を開裂させるのに適切な反応物である
Figure 2011503598
(式中、R1は、C7〜C20アルキルまたはC7〜C30アルキルアリールから選択され、
R2、R3、R4、R5、およびR6は独立してC1〜C5アルキルであり、
AはNまたはPであり、
-はハロゲン化物であり、
nは1〜5である。)。
好ましい実施形態では、フリーフロー電気泳動に使用される化学反応性の開裂性界面活性剤が、{2−[(ジメチル−オクチル−シラニル)−エトキシ]−2−ヒドロキシ−エチル}−トリメチルアンモニウムブロミドである。
例示的な光に不安定な界面活性剤は、例えば、3−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)アクリル酸オクチルエステルなどの桂皮酸エステルである。
別の好ましい実施形態では、酸に不安定な開裂性界面活性剤は、3−[3−(1,1−ビスアルコキシエチル)ピリジン−1−イル]プロパン−1−スルホネート(PPS)である。
化学反応性の開裂性界面活性剤の場合、特に酸または塩基に不安定な開裂性界面活性剤の場合、本発明のFFE法は、他の電気泳動法/技法に優る、明らかな利点を提供する。事実、FFEは、他の電気泳動技法では不可能な、広く様々な開裂性界面活性剤の使用を可能にする。例えば、PPSなどの酸に不安定な界面活性剤は、極めて吸湿性が高く、中性pHでは水によってゆっくりと、また酸性もしくは塩基性pHでは加速された速度で開裂する。PPSの製造業者であるProtein Discoveryによれば、パッケージを空気中で開封したら、その内容物を水性緩衝液(pH7〜8)で即座に元に戻し、高温から保護し、12時間以内に使用することが推奨される。これは、特にpHに不安定な開裂性界面活性剤を、実験の持続時間が比較的短い電気泳動でしか使用できないことを意味する。実験の最長持続時間は、pHが低下しまたは上昇した場合、さらに短くなる。したがって、非中性pHでは、電気泳動実験を、さらにより短い時間枠内で実施しなければならない。FFEの利点は、電気泳動分離、例えばフリーフローIEFを、界面活性剤の安定性を確かなものにするのに必要とされるこの短い時間枠内で行うことができることである。対照的に、2Dゲル電気泳動の1次元で(または、オフゲル手段で)行われるIEFは、典型的には5時間以上の、またはさらに長い(最長7〜9時間、またはそれ以上)実験時間を必要とする。このように、開裂性界面活性剤は、かなりの程度まで、特に非常に低くまたは非常に高いpHで分解する可能性がある。
さらに、分析物を分離するためのフリーフロー(インターバル)ゾーン電気泳動は、界面活性剤が十分に長い時間にわたって安定な、一定のpHで行うことができる。
さらに、本発明に記述される向流媒体の使用は、分離が生じた直後に開裂性界面活性剤を安定化させることができる。これにより、高い酸性または塩基性pHでの分析物の分離が非常に短い時間枠(例えば、約5分まで短くなる。)で可能になり、その後すぐに、さらなる処理に向けて前記開裂性界面活性剤の安定性を増大させるため、向流媒体を通して開裂性界面活性剤が本質的に安定である元のpH値にまでpHを調節することが可能になる。
したがって本発明の一実施形態は、例えば、フリーフロー電気泳動分離ステップの後に明らかな画分のpHを調節することによって、フリーフロー電気泳動後に内部に含まれる開裂性界面活性剤が安定化するように、向流媒体を媒体条件に適合させるのに使用されるFFE法に関する。
上記非限定的な例に記述されるこれらの原理は、限られた時間の長さに関してのみ、ある分離条件下で安定な、その他のタイプの開裂性界面活性剤にまで拡げることができることが理解されよう。
向流媒体は、例えば、FFE画分について即座に別の処理を行われるよう界面活性剤を開裂させる開裂剤を導入するために、異なる方法で使用することもできる。
したがって本発明の別の実施形態は、開裂剤を含む向流媒体が、前記開裂性界面活性剤を開裂させるため、開裂性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離後のサンプルの画分の少なくとも一部と接触し、および/または混合される、フリーフロー電気泳動法に関する。
MS適合性界面活性剤の使用はMS適用例に限定されず、MS適合性界面活性剤は、本発明のフリーフロー電気泳動法のいずれかの後にその他の分析適用例で存在させてもよいことが理解されよう。したがって本発明は、本明細書に記述されるフリーフロー電気泳動分離と、その後に行われる、限定するものではないがフリーフロー電気泳動、ゲル電気泳動、1D−および2D−PAGE、MS、MALDI MS、ESI MS、SELDI MS、LC−MS(/MS)、MALDI−TOF−MS(/MS)、ELISA、IR分光法、UV分光法、HPLC、エドマン分解法、NMR分光法、表面プラズモン共鳴、X線回折、核酸配列決定、エレクトロブロッティング、アミノ酸配列決定、フローサイトメトリー、円偏光二色性、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される技法を含むフリーフロー電気泳動から得られた少なくとも1つの画分の分析とを含む、分析物を分析するための方法も提供する。好ましい実施形態は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の使用を含むフリーフロー電気泳動分離であって、前記界面活性剤がサンプル媒体中および/または少なくとも1種の分離媒体中に含まれている、フリーフロー電気泳動分離と、その後に行われる、フリーフロー電気泳動から得られた少なくとも1つの画分の分析であって、前述の、その後に行われる分析が、フリーフロー電気泳動、ゲル電気泳動、1D−および2D−PAGE、MS、MALDI MS、ESI MS、SELDI MS、LC−MS(/MS)、MALDI−TOF−MS(/MS)、ELISA、IR分光法、UV分光法、HPLC、エドマン分解法、NMR分光法、表面プラズモン共鳴、X線回折、核酸配列決定、エレクトロブロッティング、アミノ酸配列決定、フローサイトメトリー、円偏光二色性、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されものである、分析とを含む、分析物を分析するための方法に関する。
問題の分析物がタンパク質またはポリペプチドである場合、前記タンパク質またはポリペプチドの消化ステップは、フリーフロー電気泳動ステップの前または後に実施してもよい。当業者なら、タンパク質消化ステップをどのように実施するのか、例えばトリプシンを使用して実施するのか知っている。また、前記消化ステップを行うために、フリーフロー電気泳動で使用されたMS適合性界面活性剤を除去する必要もない。対照的に、前記界面活性剤の存在によって消化をさらに改善することができ、それに対して例えば尿素は、前記消化ステップの前に少なくとも部分的に除去しなければならない。
本発明の1つの好ましい実施形態では、画分の少なくとも一部またはサンプルの少なくとも一部について、タンパク質消化ステップが行われる。前記消化ステップは、本発明によるフリーフロー電気泳動分離によって、分離の前または後に実施することができる。
ある実施形態では、タンパク質消化ステップは、本発明による開裂性界面活性剤の開裂ステップの前または後にフリーフロー電気泳動ステップから収集された少なくとも1つの画分で実施される。
典型的には、非MS適合性部分の除去は、サンプル損失のないまたは本質的にない方法によって、容易に実現される。本発明による精製ステップは、典型的には、蒸発、濾過、および遠心分離からなる群から選択され、それによって、開裂性界面活性剤の沈殿部分が除去される。本明細書で使用された「本質的にサンプル損失がない」という用語は、問題の分析物の5%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.2%未満、最も好ましくは0.1%未満が、例えば、開裂性界面活性剤の沈殿部分を除去するのに使用されるフィルタに粘着し得ることを意味し、または、遠心分離によって除去された開裂性界面活性剤の沈殿部分のペレット内に残留し得ることを意味し、または、開裂性界面活性剤の部分または揮発性緩衝化合物と一緒に気化し得ることを意味する。
それ自体がMS適合性であり、または少なくとも1つのMS適合性部分および任意選択で容易に除去することができる非MS適合性部分をもたらすよう開裂することができるMS適合性界面活性剤の存在は、時間がかかりおよび/またはサンプル損失をもたらす精製ステップを必要としないので、有利である。したがって、本発明の好ましい実施形態は、透析、クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、界面活性剤交換、タンパク質沈殿、親和性クロマトグラフィ、エレクトロブロッティング、液液相抽出、および固液相抽出からなる群から選択される、界面活性剤を除去するのに精製ステップを必要としない方法に関する。言い換えれば、本発明によるFFE分離から得られた画分について、そのような精製ステップを、後で行われる下流分析の前に行うことを必要としない。
(装置およびその要素)
フリーフロー電気泳動分離を行うのに適切な装置は、少なくとも分離チャンバと2個の電極(アノードおよびカソード)とを含む。分離されるサンプルは、FFE装置の(1個または複数の)アノードと(1個または複数の)カソードとの間の分離スペースに存在する分離媒体に添加され、または好ましくは、FFE装置の分離スペースに、典型的にはFFE装置に設けられた専用のサンプル入口を通して別々に導入される。FFEに適切な装置を、図9に概略的に示す。図中、S1〜S4と称されるサンプル入口の適切な位置は、例えば、流動方向で電極と分離媒体入口(12〜16)との間、および流動方向に直角に、安定化緩衝入口(11および17)の間に定められる。FFE分離を行うのに適切な装置は、向流入口(C1〜C3)をさらに含む。
分離媒体に導入されるサンプル中の様々な分析物は、電界を印加し、それと共にFFE装置の出口端部に向けて流動的に押し遣ることによって分離される。個々の分析物は、多数の収集出口/サンプル出口を通して分離チャンバから出て行き、一般に、個々のチュービングを通して任意の適切なタイプの個々の収集容器に導かれる。収集容器では、分析物が、分離媒体および任意選択で向流媒体と共に収集される。収集出口のアレイの個々の収集出口の間の距離は、一般に、適切な分画/分離を行うために可能な限り小さくあるべきである。収集出口の中心から測定された、個々の収集出口の間の距離は、約0.1mmから約2mm、より典型的には約0.3mmから約1.5mmにすることができる。
様々な実施形態において、分離媒体入口の数は、装置の設計によって制限され、実際には、例えば1から7個、1から9個、1から15個、1から40個、またはさらにそれ以上に及ぶ。サンプル入口の数は、例えば1から36個、1から11個、1から5個、1から4個、または1から3個に及び、それに対して収集出口の数は、例えば3から384個、または3から96個に及ぶが、任意の都合のよい数を、分離デバイスに応じて選択することができる。向流媒体入口の数は、典型的には例えば2から9個、または3から7個に及ぶ。設けられた入口および出口の数は、一般に、分離デバイスおよび分離スペースの形状および寸法に依存する。したがって、種々の数の分離媒体入口および出口が可能であることも理解されよう。
図9では、分離媒体が、両電極の間および長さに沿って(大きな矢印)、層流として(好ましくは傾斜または水平分離チャンバの底部から上方に向けて)流動する。いくつかの実施形態では、分離媒体は、出口付近で向流によって減速し(小さい矢印)、したがって、出口を介して画分中に分離チャンバから出て行き、即ちいくつかの実施形態では、向流媒体が、電極間を移動するバルク分離媒体およびサンプルの連続流方向とは反対の方向で分離スペースに導入される。両媒体(分離媒体および向流媒体)は、分画出口を通して放出されまたは溶出される。
例えば分離されるタンパク質のサンプルは、サンプル入口を介して分離媒体に導入され、分離媒体の層流によって輸送される。連続操作条件下で操作する場合、タンパク質混合物は、電気泳動によって連続的に分離され、分離媒体の性質と、分離媒体中の電極間で発生した電界から生じたサンプル中の分析物の空間分離とに従って、別の画分に収集される。バッチ式または不連続の操作モード下で、例えば静止インターバルモードで操作する場合、サンプルは、電気泳動プロセスの特徴および要求に応じて調節することができる可変チャンバサイズにより、別々の画分中に収集することができる。
適切なFFEデバイスは、当技術分野で公知であり、例えばBD(商標)フリーフロー電気泳動システム(BD GmbH、ドイツ)という名称で販売されている。さらに、本発明の分離および安定化媒体と共に使用することができる適切なFFEデバイスは、参照によりそれら全ての全体が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献1、2、係属中の14、15、16、および17、および3(特許文献4および5の優先権を主張する。)参照)を含めたいくつかの特許出願に記載されている。
(FFE法およびモード)
いくつかのFFE操作法が、当業者に公知であり、本発明のコンテクストにおいて企図される。例えばサンプルは、サンプル中に含まれる分析物のpIに応じて(等電点電気泳動(IEF))、分析物の正味の電荷密度に応じて(ゾーン電気泳動(ZE))、または分析物の電気泳動移動度に応じて(等速電気泳動(ITP))分離することができる。
さらに、いくつかのFFE操作モードが、当業者に公知であり、本発明のコンテクストにおいて企図される。例えば、サンプルおよび分離媒体は、FFE装置のアノードとカソードとの間に電界を印加しながら、出口端部に連続的に押し遣ることができる(「連続モード」)。FFEにおける連続モードは、注入ステップならびに分離ステップが連続的にかつ同時に生ずることを意味すると理解すべきである。電気泳動分離は、媒体および分析物が電気泳動チャンバ内を通過する間に生じ、異なる種がそれらのpI(IEF)、正味の電荷密度(ZE)、または電気泳動移動度(ITP)に応じて分離される。連続モードFFEによって、いくつかの独立した「実験操作」(1つの実験操作は、サンプル注入、分離、およびその後に続く収集および/または検出が1つの流れになったものと理解される。)の実施を必要とすることなく、分析物の連続注入および回収が可能になる。連続モードFFEは、分析物が、分離時間を延ばすために電極間の分離スペースを通過する間、初期バルク流量に比べてバルク流量が低下する(しかし停止しない)分離技法を含むことが理解されよう。しかし後者の場合、バルク流量の低下は限られた量のサンプルにしか意味をなさないので、真の連続モードについてもはや述べることはできない。
FFE適用例に関連した、いわゆる「インターバルモード」または「静止インターバルモード」として知られている別のFFE操作モードも、当技術分野で記述されている。例えば、不連続(即ち、インターバル)偏向電気泳動のプロセスは、その開示が参照により本明細書に組み込まれている文献(例えば、特許文献2参照)に示されている。この特許では、サンプルおよび分離媒体が共に、電気泳動チャンバに導入され、次いでゾーン電気泳動、等速電気泳動、または等電点電気泳動などの電気泳動モードを使用して分離され、最後に分画出口を通してチャンバから排出される。この文献(例えば、特許文献2参照)の実施形態は、分離媒体およびサンプルの運動が一方向であり、チャンバの入口端部から出口端部に向かって移動することについて記述している。この方向は、伝統的なキャピラリー電気泳動とは異なって、細長い電極の向きと共通である。記述される静止インターバルモードでは、例えば文献(例えば、特許文献2参照)に記載されているように、ポンプまたはいくつかのその他の流動置換要素によって引き起こされた電極間のサンプルの加速は、電界がオフの場合または少なくとも電圧が電気泳動での移動に関して無効である場合、即ちサンプルのどの部分も有効電界に曝されない場合にしか生じない。
言い換えれば、インターバルプロセスは、サンプルおよび媒体が電気泳動装置の分離チャンバに導入される投入段階と、その後に続く、電界印加中にサンプルを含んだ媒体のバルク流が停止して分離が実現される分離プロセスによって、特徴付けられる。サンプルの分離/分画後、電界をオフにしまたは低下させて無効にし、バルク流を再び流すことによって、分画サンプルが出口端部に向かって押し遣られるようにし、その後、適切な容器、例えばマイクロタイタープレートに収集/検出されるようにする。
本明細書で使用されるFFEのコンテクストにおける、いわゆるサイクリックまたはサイクリックインターバルモードは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献3(特許文献4および5の優先権を主張するものである。)参照)に記述されている。まとめると、サイクリックインターバルモードは、サンプルが細長い電極間の電界に保持されている間の、少なくとも1回の、可能なら多数回のバルク流方向の反転によって特徴付けられる。静止インターバルモードとは対照的に、サンプルは常に動いており、それによってより高い電界強度、したがってより良好な(または、より速い)分離が可能になる、さらに、細長い電極間のサンプルのバルク流を反転させることにより、電界内の分析物の滞留時間を著しく延ばすことができ、それによって、長い分離時間および/またはより高い分離効率とより良好な分解能が得られる。細長い電極に平行ないずれかの方向へのバルク流の反転(サイクルと呼ぶ。)は、特定の状況で必要となるたびに繰り返すことができるが、分離を短時間で行うための実際の理由および要求が、典型的にこのモードで実施されるサイクル数を制限することになる。
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるフリーフロー電気泳動分離が等電点電気泳動、ゾーン電気泳動、または等速電気泳動によって実現され、操作モードは、好ましくは連続モード、静止インターバルモード、またはサイクリックインターバルモードから選択される。言い換えれば、各組合せ(IEF、ZE、ITP、および連続モード、静止インターバルモード、またはサイクリックインターバルモード)が本明細書では特に企図される。
電界が印加されている間の典型的な分離時間(媒体中の分析物の移行時間)は、FFE分離の1回の実験操作当たり2〜3分から約1時間に及ぶが、最長2時間というより長い分離も、ある条件下では可能と考えられる。サンプル中の分析物の移行時間は、FFEチャンバの設計およびFFE装置内を通過するバルク分離媒体の流量に依存することになり、通常は少なくとも10分である。大まかに言えば、ZEモードで行われる分離は、典型的にはIEFモードで行われる場合よりも短くなり、特に、移行時間を主として求められる限り延ばすことができるサイクリックインターバルモードで操作された場合、分離スペースの条件が分離中に十分一定のままであることを条件として、より短くなる。
サンプル中の分析物の所望の分離または分画が実現された後、電界を通常はオフにし、分離/分画された問題の分析物を引き続き、FFEデバイス(調製適用例)から典型的には適切な数の画分に収集し、または、適切な手段(分析的用例)によって適切な容器内で、例えばマイクロタイタープレート内で少なくとも検出する。容易に明らかにされるように、特に調製適用例では(このコンテクストでは、(1種または複数の)分析物の存在が必要とされるMSなどの、下流分析適用例を含むことを意味する。)、MS適合性の両性イオン性または極性界面活性剤は、収集されたサンプルを後続の分析用に都合良くかつ迅速に調製することができるという利点をもたらす。
本発明の別の態様は、フリーフロー電気泳動での、MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の使用にも関する。いくつかの実施形態では、MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、MS適合性の開裂性両性イオン性または非イオン性界面活性剤である。
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む、本発明によるフリーフロー電気泳動分離に適切な分離媒体の使用に関する。好ましい実施形態では、分離媒体は、限定するものではないがA/B分離媒体、揮発性媒体、および相補的多対緩衝媒体からなる群から選択される。
(フリーフロー電気泳動(FFE)に適切な緩衝系)
様々な緩衝系は、本発明の実施形態によるpH関数プロファイルを形成するのに有用である。緩衝系は、限定するものではないが市販の両性電解質(例えば、Serva Electrophoresis GmbH、ドイツからServalyt(登録商標)という名称で販売されている。)、相補的多対緩衝系(例えば、BD GmbH、ドイツから販売されているBD FFE分離媒体1および2)、揮発性緩衝系、およびA/B媒体と呼ばれる2成分緩衝系からなる群から選択することができる。
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む分離媒体の緩衝系は、A/B媒体、揮発性媒体、および相補的多対媒体であって以下により詳細に記述されるものからなる群から選択される。
特に、文献(例えば、特許文献7参照)に記載されている揮発性分離媒体およびMS適合性界面活性剤を含む方法は、フリーフロー電気泳動ステップによって分離されたサンプルを、開裂したMS適合性界面活性剤の非MS適合性部分の任意選択の容易な除去および/または緩衝化合物の蒸発以外、任意の精製ステップを必要とすることなく、MSなどの後続の分析用に直接使用することができるという利点を提供する。
したがって、本発明の好ましい実施形態は、揮発性緩衝系およびMS適合性の両性イオン性または非イオン極性界面活性剤を含む方法である。前記組合せを含む画分は、蒸発などの単純な手段を通して揮発性緩衝化合物を除去することによって、容易にさらに濃縮することができ、または、必要なら開裂したMS適合性界面活性剤の非MS適合性部分を除去することを除き、さらに精製することなく引き続き使用するために、例えばMS分析で使用するために、直接調製することができる。
本明細書で使用される「緩衝系」という用語は、少量の酸または塩基を添加することによって、または希釈することによって、本質的に一定のpH値で溶液を維持することができる、モノ、ジ、またはトリプロトン性/塩基性化合物の混合物を指す。
本明細書で使用される「緩衝化合物」は、単独でまたは第2のもしくは別の(1種または複数の)化合物と一緒に緩衝系を形成する化合物を意味する。
各媒体成分は、好ましくは約40×10-92/V/秒以下、より好ましくは30、25、またはさらに20×10-92/V/秒未満の電気泳動移動度を有する陰イオンおよび陽イオンを含む。
本明細書で使用される「分離媒体」という用語は、フリーフロー電気泳動法を行うのに適切な装置内に分離ゾーンを形成するのに適切な緩衝媒体を指す。いくつかの有用な分離媒体を、本明細書に記述する。
本明細書で使用される「分離ゾーン」は、フリーフロー電気泳動分離を行うのに適切な装置の2個の電極間に位置付けられると理解すべきである。分離ゾーンは、少なくとも1種の分離媒体によって形成される。典型的な分離ゾーンは、安定化媒体、焦点媒体、または電極媒体によって、両側に包含され得る。
本明細書で使用される「向流媒体」という用語は、典型的には、分離媒体またはその一部(例えば、単に水)などの水性媒体であるが、界面活性剤などの添加剤をさらに含んでもよい。さらに、そのような添加剤は、本発明による界面活性剤を開裂させる物質、例えば塩基もしくは酸、フッ素もしくはフッ化物含有化合物、または開裂性界面活性剤を開裂させることが可能な任意のその他の化合物などであってもよい。別の実施形態では、向流媒体は、分離媒体とは異なるpHを有することができる。異なるpHは、例えば、分離媒体中に使用される前記(1種または複数の)緩衝化合物の濃度に対して、向流媒体中の少なくとも1種の緩衝化合物の濃度を変化させることにより、実現することができる。さらに、pHは、強酸または塩基を添加することによって変化させることができる。好ましい実施形態では、向流媒体に使用される緩衝系は、A/B媒体、揮発性媒体、および相補的多対媒体からなる群から選択される。異なるpHは、開裂性界面活性剤の開裂を引き起こすことができ、または分離媒体のpHを、酸または塩基に不安定な界面活性剤がそれほど不安定ではなくなるpHに変化させることができ、即ち、分離媒体のpHに比べて本質的に開裂せずまたはよりゆっくりと開裂するpHに変化させることができる。
いわゆる「安定化媒体」は、通常なら電気泳動分離プロセス中に、特にフリーフロー電気泳動中に観察され得る望ましくない作用またはアーチファクトを防止することによって、分離チャンバ内の電気化学的状態を安定化させる働きをする。安定化媒体は、一般に、電極付近に、即ちアノード/カソードと分離ゾーンとの間にそれぞれ位置付けられる。本明細書に開示される安定化媒体は、一般に、安定化媒体と一緒に使用される分離媒体よりも高い電気伝導度を有するべきである。より高い伝導度は、電気泳動デバイスの分離領域と電極区画との間の相互汚染を防止し、電極での分離粒子または分析物の望ましくない蓄積を回避する働きをする。さらに、分離媒体中に必要とされるイオンおよび添加剤などの全ての化合物は、それぞれカソードおよびアノード付近に存在する安定化媒体から供給されまたは補充することができる。
安定化媒体は、一般に、前記安定化媒体に隣接する分離媒体の伝導度に比べて高い電気伝導度を有することにより、特徴付けられる。伝導度は、2倍、好ましくは3倍、最も好ましくは3倍超増大させることができる。分離媒体と安定化媒体との間の伝導度の差は、様々な方法によって、例えばさらなる電気伝導性イオンを安定化媒体に添加することによって、または、本明細書でさらに上に詳述される分離媒体中の前記緩衝化合物の濃度に比べて安定化媒体中の緩衝化合物の濃度を増大させることによって、または、強酸もしくは強塩基を添加することによって実現される。例えば、カソード安定化媒体の高い伝導度は、強塩基を添加することによって実現することができ、またはアノード安定化媒体の高い伝導度は、強酸を添加することによって実現することができる。そのような強酸または塩基は、限定するものではないがNAOH、KOH、H2SO4、またはH3PO4から選択することができる。
安定化媒体の電気伝導度は、隣接する分離媒体の伝導度よりも高くなるが、安定化媒体のpHは、分離問題の状況に応じて、隣接する分離媒体のpHよりも高く、またはこのpHにほぼ等しく、またはこのpHよりもさらに低くすることができる。例えば、アノード安定化媒体は、前記アノード安定化媒体に隣接する分離媒体のpHに等しいもしくはそれ以下のpHを有し、またはカソード安定化媒体は、前記カソード安定化媒体に隣接する分離媒体のpHに等しいもしくはそれ以上のpHを有する。安定化媒体の緩衝化合物は、分離媒体の緩衝化合物と同一にすることができ、または異ならせることができる。
本発明のある実施形態では、少なくとも1種の分析物の分離を並行モードで実施することができ、即ち2種のサンプルを、フリーフロー電気泳動を行うのに適切な装置の分離チャンバ内で同時に分離することができる。後者の場合、電極間安定化媒体に基づいてフリーフロー電気泳動を実施するのに適切な装置内の分離ゾーンを物理的に分離する必要がある。本明細書で用いられる「電極間安定化媒体」という用語は、2種の必須の成分:1種のカソード電極間安定化媒体および1種のアノード電極間安定化媒体で構成された媒体を指す。アノードおよびカソードという用語の使用は、それぞれ分離ゾーンとアノードおよびカソードとの間で相応に名称が付された電極間安定化媒体の相対的な位置を指すことが容易に明らかにされる。例えば、典型的な順序(FFE装置のアノードからカソード)は、安定化媒体、分離ゾーン、次いでカソード電極間安定化媒体、その後にアノード電極間安定化媒体、第2の分離ゾーン、最後に(カソード)安定化媒体となる。上述の例示的なセットアップでは、カソード電極間安定化媒体はこのように、アノード電極間安定化媒体よりもFFE装置の物理的なアノードに近い。そのような並行モードは、例えば、文献(例えば、特許文献18(特許文献19および20の優先権を主張するものである。)参照)に開示されている。
本発明の上記実施形態を実施する場合、電極間安定化ゾーンは、電極間安定化媒体の2成分を、複数の分離ゾーンの間でFFE装置に導入することによって、都合良く確立することができる。
典型的には、電極間安定化媒体は、前記電極間安定化媒体に隣接する第1および第2の分離ゾーンよりも高い伝導度を有することになり、それによって、分離ゾーンの間でのイオン種の交差、ならびに隣接する分離ゾーンへのアノードおよびカソード電極間安定化媒体の陰イオンおよび陽イオン種の交差が防止される。
本明細書で使用される「焦点媒体」という用語は、隣接するpH関数、pH勾配、またはpH分離プラトーに関する伝導度ステップを形成する、アノード焦点媒体用の酸またはカソード焦点媒体用の塩基を含む媒体を指し、アノードまたはカソードに向かう分析物の動きが伝導度ステップによって本質的に0に低下する焦点ゾーンを形成するものである。酸および塩基の濃度は、隣接するpH分離プラトー、pH勾配、またはpH関数に対して好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、少なくとも5倍またはそれ以上、前記焦点媒体の伝導度を増大させるのに十分になるよう選択されることになる。媒体の電気伝導度のこの急激な増大は、異なる伝導度の値を有する2種の媒体の境で、pH分離プラトー上で分離される分析物のpIとは異なるpIを有する分析物を蓄積するのに有用であるが、それはアノードまたはカソードに移動する分析物の移動度が、それぞれ本質的に0に低下するからである。
(相補的多対緩衝系)
本発明のある実施形態では、pH勾配を発生させるのに使用される緩衝混合物は、電流が緩衝系内を流れるときにこの混合物が滑らかなpH勾配をもたらすことができるように、慎重に対応させた酸および塩基で構成することができる。低分子量有機酸および塩基の混合物は、市販の高分子量両性電解質に比べて高い緩衝能を可能にするものが選択される。慎重に対応させた酸および塩基のこれらの混合物は、分子量、pI、純度、および毒性に関して極めて十分に特徴付けられる。一般に、酸および塩基は、市販の両性電解質よりも小さい分子量を有する。適切な相補的多対緩衝系は、当技術分野で公知である。特に、3から5のpH範囲を有する混合物はBD FFE分離媒体1として販売されており、一方、5から8のpH範囲を有する混合物はBD FFE分離媒体2としてBD GmbH、ドイツから販売されている。これらの緩衝系は、例えば一般的な形で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる文献(例えば、特許文献21および22参照)に記載されている。上述の相補的多対緩衝系を、本明細書では「CMPBS」または「CMPBS媒体」と呼ぶ。
(揮発性緩衝系)
本発明のその他の実施形態では、揮発性緩衝系を使用して、サンプルのフリーフロー電気泳動分離を行うことができる。これらの緩衝系は、文献(例えば、特許文献7参照)に開示されており、FFE分離ステップの後に回収された分画サンプルから残留物を含まない状態で除去することができ、またはそれ自体がMS適合性であり、サンプル中に留まることができるという特定の利点をもたらす。
本発明による揮発性分離媒体は、すぐに使用できるその形で組成物を、好ましくは少なくとも1種の緩衝酸と少なくとも1種の緩衝塩基とを含んでこれら緩衝化合物の全てが揮発性である緩衝系を含む、水性組成物を表すと理解すべきである。任意選択で、緩衝化合物の少なくとも1種は、質量分析用に、特にMALDI適用例で、(揮発性)マトリックスとして機能することが可能である。
本明細書で緩衝化合物に関連して使用される「揮発性」という用語は、適切な条件下で水性サンプルから完全に除去可能である緩衝化合物の能力を指すと理解すべきであり、即ち緩衝化合物は、いかなる残留化合物(例えば、塩)も残すことなく、即ち残留物を残さない状態で、蒸発することができると理解すべきである。その最も広い意味において、本発明の実施形態による揮発性緩衝化合物は、限定するものではないが低い気圧、高温、照射(例えば、UV光、またはレーザ光の適用による)によるエネルギーの供給、またはこれらの任意の組合せの群から選択される条件下、残留物を残さない状態で除去することができるが、揮発性緩衝化合物は、FFE作業条件下(即ち、上述のように、大気圧、および典型的には0から40℃の間の温度範囲)では本質的に不揮発性でなければならないことが理解されよう。
このコンテクストにおいて、当業者なら、本発明の一実施形態では、揮発性緩衝化合物を含むサンプル中に存在する(1種または複数の)分析物が前述の条件下では不揮発性になること、即ち(1種または複数の)分析物は本質的に変性せず(例えば、断片化または酸化によって)、溶液中にまたはその(それらの)固体状態であり続けることが理解されよう。ある実施形態では、特に質量分析作業条件下では、(1種または複数の)分析物は揮発性になり、イオン化可能になる(MSによる検出に必要とされる。)。
本明細書で使用される「FFE作業条件下では不揮発性」という用語は、緩衝化合物の揮発性によって、作業条件下およびFFEの分離期間中にもたらされる、分離媒体中のそれぞれの緩衝化合物の濃度低下が5%w/v未満、または好ましくは2%w/vであることを意味する。最も好ましくは、全ての作業条件下およびFFE分離期間において、濃度低下が観察されない。
本発明の意味において、「残留物を含まない」という用語は、揮発性化合物そのものは完全に蒸発するが、例えば使用された物質の不純物によって生じた残留物は不揮発性であり得ると理解される。しかし、入手可能な最高純度級を有する化合物だけを分析目的で、特に質量分光分析に使用すべきことが、当業者に周知である。
本明細書で使用される、「蒸発」による溶媒および緩衝化合物の除去は、化合物を気相に移行させ、その後に適切な手段によって気相を排除することによる、問題の分析物からの除去を指すと理解すべきである。このように、本明細書で定義される蒸発は、カラムクロマトグラフィ、透析、またはカットオフ濾過法、または固相抽出もしくは分析物沈殿として知られている技法を含めた、一般に緩衝交換と呼ばれる(時々、「脱塩」とも呼ばれる。)技法による緩衝化合物の排除とは異なる。あるいは、蒸発と用語に含まれないある適用例では、塩の形で存在する緩衝化合物は、水で洗い落とされるだけであるが、これは明らかに、望ましくないサンプル材料の損失をもたらし、さらに、緩衝化合物の非定量的除去をもたらす。当業者なら、本明細書に定義される揮発性緩衝化合物は、少なくとも原理上はそのような緩衝交換または固相抽出技法によって除去することもできるが、これは当然ながら、緩衝液の揮発性によって得られる明らかな利点を無視する可能性があることが理解されよう(緩衝交換技法に関連した潜在的な問題、例えば取扱いの難しさおよびサンプル回収率の低さといった問題の観点から意味をなさない。)。
溶媒および揮発性緩衝化合物を、蒸発によってFFE分離から収集されたサンプルから除去するのに適切な例示的な技法には、限定するものではないが、遠心蒸発機や真空遠心分離機などであって例えばSpeedVac(登録商標)という名称で知られているような適切なデバイスを使用した真空遠心分離、凍結乾燥によるもの、または水性サンプルの(穏やかな)加熱によるものが含まれる。溶媒および緩衝化合物を蒸発させるその他の可能性には、サンプルを減圧条件下に置くことによる蒸発、例えば質量分光分析で使用される標的プレート上に配置されたサンプルに真空を印加することによる蒸発が含まれる。当業者なら、ほとんどの質量分光法は真空条件下で作動し(例えば、真空MALDI)、したがって揮発性緩衝化合物は、サンプルをMS機器に導入した後であってイオン化の前に、都合良く除去されることが理解されよう。
好ましくは、揮発性緩衝化合物は、減圧および/または高温の条件下で除去可能である。さらにその他の実施形態では、揮発性緩衝化合物は、周囲温度および大気圧条件下でも蒸発することができ、特に揮発性緩衝液含有サンプルが小容量で存在する場合に(例えば、質量分光分析のため)蒸発することができる。しかしほとんどの場合、少なくとも一部の緩衝溶液は、これらの条件下で容易に蒸発しなくなる。さらにその他の実施形態では、揮発性緩衝化合物は、より過酷な条件下(例えば、真空中および/または高温で、任意選択で照射がなされ、例えば質量分析作業条件下などである。)でしか除去することができない。
本発明のある実施形態では、FFE分離媒体が揮発性緩衝化合物を含み、この揮発性緩衝化合物の少なくとも1種は、質量分光分析用に(揮発性)マトリックスとして働くことができ、即ち化合物は、質量分析作業条件下でのみ除去することができる。本明細書で使用される質量分析(MS)のコンテクストにおいて、マトリックスという用語は、電気泳動のコンテクストで使用される「マトリックス」という用語(例えば、ポリアクリルアミドまたはアガロース)と異なることが理解されよう。したがって、下流分析が例えばMALDI適用例であるいくつかの実施形態では、MALDI分析用のマトリックス成分を、質量分光分析前に分析物緩衝溶液に添加する。
揮発性緩衝系の例には、限定するものではないがTRIS/酢酸、ジエタノールアミン/ピコリン酸、ジメチルアミノプロプリオニトリル/酢酸、2−ピリジンエタノール/ピコリン酸、ベンジルアミン/2−ヒドロキシピリジン、トリ−n−プロピルアミン/トリフルオロエタノールなどの組合せが含まれる。
(2成分緩衝系(A/B媒体))
以下に定義される2成分緩衝系は、本明細書では「A/B媒体」と呼ばれ、文献(例えば、同時係属の特許文献23参照)に詳細に開示されている。分離媒体は、少なくとも1種の緩衝酸と少なくとも1種の緩衝塩基とを含み、但し緩衝酸のpKa値は分離媒体のpHよりも高くなければならず、かつ緩衝塩基のpKaは分離媒体のpHよりも低いことを条件とする。言い換えれば、緩衝酸のpKaは、緩衝塩基のpKaよりも高くなる。
分離媒体によって示されるpHプロファイルは、本質的に線形であってもよい(即ち、電気泳動分離中には大きなpHステップが全くない。)。用いられる安定化媒体、ならびに緩衝酸と緩衝塩基との間のpKa差に応じて、本発明のこの態様によるA/B分離媒体は、本質的に一定の(即ち、フラットな)pHプロファイルまたはやや穏やかな/フラットなpH勾配を分離チャンバ内にもたらすことになる。電極間の分離チャンバ内で、本質的に一定のpHを有するゾーンをもたらす前記分離媒体は、本明細書に記述される方法によるpH分離プラトーの生成に、特に有用であることが理解されよう。しかし、A/B媒体は、フラットなまたは超フラットなpH勾配を形成することもできるので、本明細書で定義されるpH関数またはpH勾配の生成に使用することもできる。
好ましくは、本発明の上記態様で少なくとも1種の緩衝酸および1種の緩衝塩基を用いるA/B媒体は、約0.5から4pH単位の間の、少なくとも1種の緩衝酸と少なくとも1種の緩衝塩基との間のpKa差によって特徴付けられ、但しこの酸のpKaは、上述のように塩基のpKaよりも高くなくてはならない。好ましい実施形態では、ΔpKaは、1.2から1.8の間であり、これは、FFE装置の分離チャンバ内で一定のpHを有するpH分離プラトーに特に有用である。その他の好ましい実施形態では、ΔpKaは、約2.5から3.3の間になり、後者は、フラットpH勾配に特に適切である。
A/B媒体の1つの特徴は、媒体の電気伝導度が比較的低いことであるが、この伝導度は、妥当な長さの時間で分析物の許容できる分離を実現するのに十分高くなければならないことが理解されよう。このように、A/B媒体の伝導度は、典型的には50から1000μS/cmの間であり、より好ましくは50から500μS/cmの間であるが、当業者なら、分離媒体の正確な伝導度は、当然ながら分離/分画問題の詳細、媒体中のその他の荷電種の存在(例えば、サンプル/分析物の安定性に必要とされるイオン)、および分析物の電気化学的性質に左右されることに気付くであろう。
好ましくは、A/B媒体は、1種の緩衝酸および1種の緩衝塩基のみ含む。言い換えれば、そのような分離媒体は、化合物の1種の酸官能基および同じかまたは別の化合物の1種の塩基官能基が、本質的に、所望のpHおよび伝導度プロファイルを有する分離媒体を確立するように働く、2成分媒体を表す。良好な結果は、分離媒体中の2種以上の緩衝酸および緩衝塩基で実現することもできるが、調製し易くかつおそらくはより安価に使用できるからだけではなく、分離チャンバ内に存在する荷電種の数が増加した場合には媒体の電気化学的性質がより複雑になるので、典型的にはできる限り少ない成分を使用することが有利である。
A/B媒体の概念は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている文献(例えば、同時係属の特許文献23参照)に詳述されている。このコンテクストで適切な緩衝塩基は、例えば、タウリン、グリシン、2−アミノ−酪酸、グリシルグリシン、β−アラニン、GABA、EACA、クレアチニン、ピリジン−エタノール、ピリジン−プロパノール、ヒスチジン、BISTRIS、モルホリノエタノール、トリエタノールアミン、TRIS、アメジオール、ベンジルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリアルキルアミンなどである。適切な緩衝酸は、例えば、HIBA、酢酸、ピコリン酸、PES、MES、ACES、MOPS、HEPES、EPPS、TAPS、AMPSO、CAPSO、α−アラニン、GABA、EACA、4−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジンなどであり、但し、緩衝酸と上述の緩衝塩基との間のpKaの関係は、一致していることを条件とする。
さらに、本発明の方法では、FFEによって分析物を分離するために文献(例えば、特許文献6参照)に開示されている2成分緩衝系も、用いることができる。これらの2成分媒体は、0.4から1.25pH単位の間で比較的フラットなpH勾配を形成するのに適切であってもよい。
(添加剤)
本発明の方法に適切な分離媒体は、1種または複数の添加剤をさらに含んでもよい。本発明の実施形態による添加剤は、緩衝酸および緩衝塩基によって与えられた緩衝能に寄与しない(または少なくとも著しく寄与しない)化合物またはイオンである。一般に、添加剤の数および濃度は最小限に保持されるべきであるが、ある分析物または分離の問題は、分析物を完全に維持するためにまたは媒体の所望の性質(例えば、様々な分離媒体の間での粘度の順応)を実現するために、追加の化合物の存在を必要とすることが理解されよう。
可能な添加剤は、好ましくは、その他の酸および/または塩基、いわゆる「必須」1価および2価陰イオンおよび陽イオン、粘度増強剤、および親和性リガンドなどから選択される。
必須な1価および2価陰イオンおよび陽イオンは、本出願の意味において、サンプル中の分析物の構造的および/または機能的完全性を維持するのに必要とされ得るイオンである。そのような必須陰イオンおよび陽イオンの例には、限定するものではないがマグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、Fe(II)イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、またはEDTAやEGTAなどの錯化剤、またはアジドイオン(例えば、細菌汚染を回避するため)などが含まれる。
可能な酸および塩基の例には、溶液中に完全に溶解した少量の強酸もしくは塩基(例えば、NaOH、NClなど)、または、媒体中で本質的に非解離種として存在する非常に弱い酸もしくは塩基(即ち、媒体のpHから約4単位超離れたpKaを有する。)が含まれる。
分離媒体中に一般に使用される粘度増強剤には、グリセロールや様々なPEGなどの多価アルコール、HPMCなどの親水性ポリマー、スクロースやヒアルロン酸などの炭水化物を含めてもよい。粘度増強剤は、サンプルと媒体との間または異なる隣接媒体の間の密度または粘度の差によって生成された乱流を回避するために、分離媒体の粘度を、分離スペースに導入されたサンプルの粘度に適応させるのに、またはその他の分離チャンバ内の分離および/または安定化媒体の粘度に適応させるのに必要とされ得る。
存在してもよい追加の添加剤には、シクロデキストリンを含めたある種のデキストリンなどのキラル選択剤、またはレクチンなどの親和性リガンドが含まれる。
ある場合には、溶液中の分析物の酸化を防止するのに、還元剤を添加することが必要とされ得る。サンプルおよび/または分離媒体に添加することができる適切な還元剤には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ジチオトレイトール(DTT)、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムもしくはカリウムなどが含まれる。
いずれにせよ、前述の添加剤の多くは帯電するので、それらの濃度は必要な限り高く保持されるべきであるが、同時に、所望の(低)範囲内に分離媒体の電気伝導度が維持されるよう、できる限り低く保持されるべきである。
揮発性緩衝液のセクションで記述された、任意の条件下で揮発性ではない添加剤、または後続の分析、例えばMS分析を妨げる可能性がある添加剤は、とにかく避けるべきであることに留意すべきである。
(キット)
当業者なら、本明細書で企図される方法に使用される界面活性剤は、サンプル媒体の一部としておよび/または少なくとも1種の分離媒体の一部として使用してもよいことが理解されよう。
したがって、本発明の一態様は、本発明の実施形態によるサンプル中の分析物のFFE分離(IEF、ZE、およびITPなど)を実施するためのキットにも関し、このキットは、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むものである。一実施形態では、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤が、開裂性界面活性剤である。
1種または複数の界面活性剤は、媒体の一部としてまたは別々に1個または複数の容器に送出されることが理解されよう。
少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤に加え、キットはさらに、分離媒体または複数の分離媒体を含むことができる。1種または複数の媒体は、一度に送出することができ、または別々に複数の容器に送出することができる。複数の容器が提供される場合、少なくとも2個の容器が同じ媒体を含有することができ、または全てのバッチは個々に、異なる媒体を含有することができる。分離媒体の数は、1から15種の間、または3から12種の間、または4から9種の間にすることができる。
本発明の好ましい実施形態では、キット内の分離媒体は、限定するものではないがA/B緩衝媒体、揮発性緩衝媒体、および相補的緩衝対媒体からなる群から選択される。キットは、いくつかの異なる媒体の組合せ、例えば揮発性緩衝媒体と多対緩衝媒体との組合せを含んでもよい。さらに、分離媒体は、界面活性剤、粘度増強剤、「必須」陰イオンおよび陽イオンなどの添加剤を追加として含む。
キットが、A/B媒体を含んだ分離媒体を含む場合、一実施形態では、A/B媒体は、電気泳動中のFFE装置の分離チャンバ内の最小pHと最大pHとの間の差が約0.2未満であり、好ましくは0.1未満のpH単位である分離ゾーンを形成可能であることが好ましい。さらに、pHは、電気泳動中に本質的に一定であるべきことが好ましい。そのようなA/B媒体を含むキットは、特に、フリーフローゾーン電気泳動を行うためのアジュバントであり、即ちそのようなキットは、フリーフローゾーン電気泳動で使用することが可能である。
本発明の別の実施形態では、A/B媒体は、電気泳動中に分離チャンバ内の電極間でpHが本質的に線形勾配を形成する分離ゾーンを形成可能であることが好ましく、さらに別の実施形態では、A/B媒体は、電気泳動中の分離チャンバ内でpHが本質的に非線形である分離ゾーンを形成可能であることが好ましい。そのようなキットは、フリーフロー等電点電気泳動で使用するのに適切と考えられる。
キットが、揮発性緩衝媒体を含有する分離媒体を含む場合、少なくとも1種の緩衝化合物は減圧下で揮発性であり、高温で揮発性であり、照射されたときに揮発性であり、または質量分析作業条件下で揮発性であることが好ましい。
本発明による1種または複数の分離媒体および少なくとも1種の界面活性剤に加え、本発明の実施形態によるFFE法を実施するためのキットは、上記にて定義された少なくとも1種の安定化媒体をさらに含む。安定化媒体は、カソード安定化媒体および/またはアノード安定化媒体であってもよい。これらの媒体は一般に、アノード/カソードと分離媒体との間にそれぞれ位置付けられる。
アノードおよびカソードの安定化はどちらも、首尾良く行われる電気泳動適用例で、特にFFEで特に有用であるので、キットは、分離媒体の他に、好ましくは本明細書で定義された1種のアノードおよび1種のカソード安定化媒体を含むことになる。
本発明のいくつかの実施形態では、安定化媒体は、2つのpH関数プロファイルの間に位置付けられ、2個の電極を含むFFE装置内で同時に2つの異なるサンプルの並行分離が可能になる。
他の実施形態では、キットはさらに、上記にて定義された少なくとも1種の焦点媒体を含んでもよい。
さらにその他の実施形態では、キットは、1種または少なくとも1種の開裂性のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を選択的に開裂させるのに有用な作用剤をさらに含んでもよい。そのような作用剤は、固体化合物もしくは固体化合物の混合物に、または、例えばサンプルもしくはサンプルの一部を含む溶液内のpHを変化させるための溶液、もしくは本発明による開裂性界面活性剤を開裂させるのに適切な化合物を含有する溶液にすることができる。
本発明によるある実施形態では、キットは、好ましくは、所与の電気泳動分離に必要とされる全ての媒体または化合物、例えばアノードおよびカソード安定化媒体、ならびに分離媒体(上述のいくつかの細画分からなる。)、および/または開裂性界面活性剤を開裂させる作用剤を含むことが理解される。そのような実施形態では、分離媒体および安定化媒体は、当然ながら、意図されるプロトコルに有用であるように選択されることになる。
キットは、本発明によるフリーフロー電気泳動ですぐに使用できる1種または複数の水溶液として、様々な媒体を含んでもよく(即ち、全ての成分は、電気泳動分離の問題に関して所望の濃度で存在する。)、またはキットは、その使用前に所定量の溶媒で希釈される濃縮溶液の形で1種または複数の媒体を含有してもよい。好ましくは、そのような原液は、本発明によるフリーフロー電気泳動で使用されるよりも1.5×、2×、2.5×、3×、4×、5×、6×、10×、20×、25×、50×、75×、100×、150×、200×、および1000×高い濃度を有する。
あるいはキットは、1種または複数の媒体および/または成分を、本発明によるフリーフロー電気泳動法で使用される適切な濃度にまで、溶媒に、好ましくは水に溶解する乾燥形態でまたは凍結乾燥形態で含んでもよい。
本発明によるキットは、いくつかの、しかし好ましくは1つの容器内に媒体の様々な成分を含み、次いでこれらの成分を所定量の溶媒で元に戻した後、電気泳動分離プロセスに使用する。
本明細書に記述される好ましい分離媒体の全て、ならびに好ましいカソードおよび/またはアノード安定化媒体および焦点媒体を、本発明のキットに含めてもよいことが理解されよう。
各媒体(分離媒体、カソード安定化媒体、アノード安定化媒体、向流媒体など)は、個別の容器内に存在させることが一般に好ましく、即ち、前記キットの各成分、各乾燥成分、および/または各原液は、密封容器内に別々に置かれるが、その他の組合せおよび包装の選択肢が、ある状況では可能でありかつ有用になり得ることが、当業者に明らかにされよう。例えば、IEF適用例の分離媒体は、電気泳動装置内に予め形成されたpH勾配を生成するために、異なる濃度の成分(それによって、異なるpH)を有する異なる数の「細画分」からなるものであってもよい。一実施形態では、勾配の形成に使用される各分離媒体のpHは、異なっている。IEF適用例で用いられる細画分の数は、分離の問題、分離媒体によって実現される所望のpHスパン、および分離に使用される電気泳動装置に左右されることになる。FFE適用例では、装置は、典型的にはいくつかの媒体入口(例えば、N=7、8、または9個の入口)を含むことになり、したがって、装置内に分離スペースを生成するサブ媒体を、少なくとも1個から最大N−2個の入口に導入することができる(両面にそれぞれ存在する少なくとも1個の入口は、通常、存在する場合には安定化媒体用に確保される)。このようにFFEに適切な装置に挿入される分離媒体の数は、典型的には、2から15種の間、または3から12種の間、または4から9種の間である。
特に好ましい実施形態では、キットの分離媒体は、1種の緩衝酸および1種の緩衝塩基のみ含む2成分緩衝系によって形成されることになる。本明細書に記述される分離媒体の全ては、好ましいか否かに関わらず、本発明のキットに含むことができると考えられる。
様々な数および送出形態にある適切な媒体および/またはその他の化合物に加え、キットは、1つまたは複数の実験プロトコルおよび任意選択で成分の貯蔵条件について記述する製品マニュアルを含むことができる。
一般に、本発明によるキットは、本明細書に記述されるフリーフロー電気泳動分離プロトコルで有用である。
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される実施形態の多くの修正例および変形例が可能であることが、当業者に明らかにされよう。本発明およびその利点について、以下の非限定的な実施例でさらに説明する。
PPSを用いたおよび用いないアフリカニシキヘビからの血清の分離
血清を、アフリカニシキヘビから得た。血清サンプルを、分離媒体中に1:10に希釈した。分離媒体は、MALDI−TOFに適合することが周知の緩衝成分のみ含有していた。さらに、1つの実験は、PPS、MALDI−TOF適合性の開裂性界面活性剤を使用して、サンプルならびに分離媒体に関して行った。
サンプルの分離は、フリーフロー等電点電気泳動(FE−IEF)モードのBD(商標)フリーフロー電気泳動システムで実施した。9個の媒体入口(E1〜E9)および4個のサンプル入口(S1〜S4)を含む装置を設定した。アノード安定化媒体を入口E1に導入した。カソード安定化媒体を入口E9に導入し、サンプルを、サンプル入口S2を介して導入した。印加した電圧は550Vであり、電流は105mAであった。サンプルおよび媒体を、それぞれ2ml/時および150ml/時の流量で導入した。
FFE装置内の分離および安定化媒体:
Figure 2011503598
アノード安定化媒体:1567mM HAc/450mM Tris(pH=4.11;伝導度:6610μS/cm)(El)
カソード安定化媒体:450mM HAc、900mM TRIS(pH=8.23;伝導度:6220μS/cm)(E9)
向流媒体:水(CF1〜CF3)
上述の分離媒体は揮発性分離媒体であり、即ち緩衝化合物はMS適合性であり、またはMS分析前に蒸発によって除去することができる。
96の画分を、2つの実験のそれぞれで収集した。各画分の0.2mLを、SDS−PAGE用に採取した。分離したサンプル(1つのサンプルはPPSを含み、1つのサンプルはPPSを含まない。)の毎秒ごとのSDS−PAGEゲル画像(銀染色されたもの)を、図1に示す。
分離パターンは実に類似しているよう見えるが、分離媒体中に界面活性剤を含まない分離チャンバでは、若干の沈殿が観察された。これは、分離媒体中に0.1%PPSを使用した場合、それほど顕著ではなかった。
分離媒体は、グリセロールおよびMALDI−TOF測定を妨げることが知られているその他の成分を完全に含まなかった。したがって画分は、MALDI標的に直接適用された。画分26の25kDaタンパク質の質量スペクトルを、図2に示す。
PPSを用いたおよび用いないHELA細胞から生成されたペプチドの分離
FFE用のPPSなど、両性イオン性界面活性剤の適切性を確認するために、PPSを含有するサンプル(およびFFE法)の分離プロファイルを、PPSを含有しないサンプル(およびFFE法)の分離プロファイルと比較した。ある例では、108HeLa細胞の2つのサンプルのそれぞれを、HBS緩衝液(10mM HEPES pH7.9、1.5mM MgCl2、10mM KCl+プロテアーゼ阻害剤コンプリートミニ錠剤(10mlに対して1錠;Roche#11836153001))中で超音波処理した。可溶性タンパク質を、超遠心分離によって、膜および膜タンパク質などの不溶性細胞断片から分離した。
100mM重炭酸アンモニウム緩衝液を上澄み(可溶性タンパク質3mg/ml)に添加し、最終濃度5mMまでTCEP(塩酸トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)を添加し(60分間インキュベーション)、次いでIAA(ヨードアセトアミド)を15mMの最終濃度まで添加した(インキュベーション60分)。トリプシン(修飾済み、シーケンシンググレード、Promega)を、最終比1:37.5の酵素:タンパク質に添加し、最短でも4時間、37℃でインキュベートした。消化を、0.1%TFA(トリフルオロ酢酸)で溶液を酸性化することによって停止させた。
ペプチドを、SepPak(登録商標)Vac 1 cct C18カートリッジ(Waters)を使用して精製した。この手順は、アセトニトリルおよび0.1%TFAによるカートリッジの洗浄、サンプルの投入、0.1%TFAによるサンプルの洗浄、アセトニトリルによるペプチドの溶出、および真空遠心分離による蒸発乾固を含む。第1のサンプルは、3〜8勾配の1mlの分離媒体で元に戻し、第2のサンプルは、3〜8勾配および0.1%PPSの、1mlの分離媒体で元に戻した。
本明細書で使用した3〜8勾配は、上述の相補的多対緩衝系である。
等電点電気泳動を、EF−IEFモードのBD(商標)フリーフロー電気泳動システムで実施した。7個の媒体入口(E1〜E7)および4個のサンプル入口(S1〜S4)を含む装置を設定した。アノード安定化媒体を、入口E1およびE2に導入した。カソード安定化媒体はE5からE7に導入し、サンプルは、サンプル入口S2を介して導入した。印加された電圧は400Vであり、電流は29mAであった。サンプルおよび媒体は、それぞれ2ml/時および50ml/時の流量で導入した。
FFE装置内の分離および安定化媒体:
分離媒体(E3〜E4):250mMマンニトール、35g/200ml Pro 3−8
Pro 3−8は、典型的には下記の組成物である:
Figure 2011503598
アノード安定化媒体:100mM H2SO4、30mMアセチルグリシン、200mMタウリン、50mMベタイン(pH=1.2;伝導度:24600μS/cm)(E1およびE2);
カソード安定化媒体:150mM NaOH、75mMエタノールアミン、150mM AMPSO((N−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)、75mM TAPS((N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)、および30mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)(pH=9.2;伝導度:7770μS/cm)(E5からE7);
向流媒体:マンニトールの250mM水溶液(CF1〜CF3)。
FFE画分のそれぞれのpHを、pH電極を使用して決定し、図3および4にグラフによって示す。着色pIマーカーを分けて、追加のPPSを含むおよび含まない相補的多対緩衝系の、緩衝系分離性能を評価した。pH曲線同士でまたは着色pIマーカーの分離パターンで、著しい相違は観察されなかった。0.1%PPSを含む緩衝系のそれぞれのpIマーカーの吸光度を表す、λ=420nm、515nm、および595nmでの画分の吸光度を、図3に報告する。図4は、PPSを含まない緩衝系の、pIマーカー吸光度分布を示す。
PPSおよび相補的多対緩衝系の使用を含むフリーフロー電気泳動の後、タンパク質の同定を実証するために、PPS含有サンプルの画分を消化し、次いでLC−MS/MS分析を行った。
各分離画分150μlに、TCEP(塩酸トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)を最終濃度5mMまで添加し(インキュベーション60分間)、次いでIAA(ヨードアセトアミド)を最終濃度15mMまで添加した(インキュベーション60分間)。5μgのトリプシン(修飾済み、シーケンシンググレード、Promega)を添加し、混合物を一晩37℃でインキュベートした。消化を、200mM HClで溶液を酸性化することによって停止させた。
各消化混合物8μlを、精製およびサンプル濃縮せずに採取して、HPLC−MS/MSを行った。
ESIベースのLC−MS/MS(HCTultra、Bruker、ドイツ)分析を、75μm×15cmの石英ガラスマイクロキャピラリー逆相カラム(Agilent、USA)を使用して実施した。サンプル量をプレカラム(逆相(C18)カラム、Agilent、USA)に投入した。サンプル投入後、サンプルを、勾配が2%Bから40%Bである200nl/分の流量で、30分にわたり分析した。カラムを、スプレーニードル(New Objective、USA)に直接連結した。
移動相Aは0.1%ギ酸であり、移動相Bは0.1%ギ酸を含有する100%アセトニトリルであった。キャピラリーカラムから溶出されるペプチドは、1回のMSスキャン(300〜1500m/z)と3回のMS/MSスキャンとを交互に繰り返すプロトコルを使用して、質量分析計により、CIDに合わせて選択した。各調査スキャンで最も豊富な3種の前駆体イオンは、前駆体イオンピークの強度が10000個のイオン数を超えた場合、CIDに合わせて選択した。エレクトロスプレー電圧は、1.8kVに設定し、CIDによって断片化されたペプチドの特定のm/z値は、2分間、再分析から除外した。質量分析計スキャンが機能し、HPLC溶媒勾配は、HyStarバージョン3.2データシステム(Bruker、ドイツ)によって制御した。
各MS/MSスペクトルを、Mascotソフトウェア(Matrix Science Ltd.、U.K.)を使用して、IPIヒューマンデータベース、リリースNo.3.18に対して検索した。このソフトウェアによって計算された確率スコアを、正しい同定の基準として使用した。0.05未満の期待値が、同定に必要とされた。個々のペプチドのイオンスコアは、15よりも高いことが必要であった。さらに、ペプチドは、1つの不完全な内部開裂部位が存在する状態で、完全にトリプシン性であることが必要であった。メチオニン酸化は可変修飾として含まれ、質量許容度はMSに関して1.5Daであり、MS/MSに関して0.5Daであった。これらの基準にパスした少なくとも1種のペプチドを有するタンパク質を、可能な同定として受け入れた。
表1に示されるように、LC−MS/MSを使用した、PPSおよび相補的多対緩衝系の存在下でのタンパク質の同定は、首尾良く行われた。
Figure 2011503598
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PPSを使用したHELA細胞からの膜タンパク質の分離および同定
第1のステップでは、PPSの存在下、全細胞抽出および膜タンパク質抽出のサンプルを調製した。
全細胞抽出のサンプル(可溶性タンパク質および膜タンパク質を含む溶液)を調製するために、108個のHeLa細胞を、1.5ml HBS緩衝液+4%PPS(3−3[−(1,1−ビスアルキルオキシエチル)ピリジン−l−イル]プロパン−l−スルホネート)+1μlベンゾナーゼ中で超音波処理した。サンプルに遠心分離を行う(6000g)、上澄みをFFE分離用に回収した。
膜タンパク質抽出のサンプルを調製するために、108個のHeLa細胞を、1.5ml HBS緩衝液+1μlベンゾナーゼ中で超音波処理し、遠心分離を行った(6000g)。上澄みを収集し、さらに1.5mlのHBS緩衝液をペレットに添加し、これを超音波処理し、600gで遠心分離を行った。上澄みを合わせ、超遠心分離を行った(125000g)。ペレットをNa2CO3緩衝液に再懸濁し(最終タンパク質濃度1mg/ml)、氷上で30分間インキュベートし、超遠心分離を行った(125000g)。ペレットをHBS緩衝液で1回洗浄し、再び超遠心分離を行った。ペレットを、4%PPS(3−3[−(1,1−ビスアルキルオキシエチル)ピリジン−l−イル]プロパン−l−スルホネート)を含有するHBS緩衝液中に再懸濁し、超音波処理し、氷上で20分間インキュベートし、超遠心分離を行った。上澄みを収集し、FFE分離用に調製した。
インターバルゾーンフリーフロー電気泳動(IZE)を、BD(商標)フリーフロー電気泳動システムで、サイクリックインターバルモードで実施した。7個の媒体入口(E1〜E7)および4個のサンプル入口(S1〜S4)を含む装置を設定した。アノード安定化媒体を入口E1に導入した。カソード安定化媒体を入口E7に導入し、サンプルは、サンプル入口S3を介して導入した。本明細書で使用した緩衝系は、上述のA/B媒体であった。印加された電圧は950Vであり、電流は50mAであった。サンプルおよび媒体を、それぞれ2.5ml/時および250ml/時の流量で導入した。媒体流量は、それぞれインターバル中が90ml/時であり、画分収集中は300ml/時であった。
FFE装置内の分離および安定化媒体:
Figure 2011503598
向流媒体:水
IZEを使用して分離されたHeLa細胞の全細胞抽出物を含むサンプルの、分離画分の銀染色ゲルを、図5に示す。図6は、IZEを使用して分離されたHeLa細胞の膜タンパク質を含有するサンプルの、分離画分の銀染色ゲルを示す。
画分は、分離した画分についてLC−MS/MSを行う前に、実施例2で記述したように調製した。
ESIベースのLC−MS/MS(HCTultra、Bruker、ドイツ)は、実施例2で記述したように実施した。
各MS/MSスペクトルを、実施例2で記述したように、Mascotソフトウェア(Matrix Science Ltd.、U.K.)を使用してIPIヒューマンデータベース、リリースNo.3.18に対して検索した。
粗製非分離HeLa膜タンパク質サンプルからの、十分に同定された合計96種のタンパク質は、その中の54種が膜タンパク質であった。同定されたタンパク質を、表2にまとめる。非限定的な例として、FFE分離の画分22について、質量分光分析を行った。合計で15種の膜タンパク質および5種のサイトゾルタンパク質が、画分22で同定された。結果を表3にまとめる。とりわけ、FFE分離の画分22で同定された20種のタンパク質のうち3種は、粗製非分離サンプルで同定されなかった。3種の追加として見出されたタンパク質を、太字で強調する。
Figure 2011503598
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本明細書で実証されるように、本発明によるFFE分離は、それほど複雑ではない質量スペクトルをもたらす。このように、複雑さが低減したスペクトルは、より容易な分析を可能にし、さらに、通常ならより複雑なスペクトル内で抑制されている可能性がある追加のシグナルの検出を可能にするが、これは例えば、前記シグナルに寄与する分析物が単に低濃度であることに起因する。
PPSを用いておよび用いずに調製されたHELA細胞からのペプチドの分離およびタンパク質の同定
108HeLa細胞のサンプルを、HBS緩衝液(10mM HEPES pH7.9;1.5mM MgCl2、10mM KCl+プロテアーゼ阻害剤(1錠剤コンプリートミニ、Roche#11836153001 10ml))中で超音波処理し、並行して100000gで超遠心分離を行った。上澄みは可溶性タンパク質を含有していた。
上澄みを2つに分け、以下の通り同等に処理した:100mM重炭酸アンモニウム緩衝液を添加した。TCEPを添加して、最終濃度5mMにし(インキュベーション60分間)、次いでIAAを添加して、最終濃度15mMにした(インキュベーション60分)。トリプシン(修飾済み、シーケンシンググレード、Promega)を添加して、酵素:タンパク質の最終比1:37.5にし、混合物を一晩37℃でインキュベートした。消化は、0.1%TFA(トリフルオロ酢酸で)溶液を酸性化することによって停止させた。
並行して2種のサンプルのペプチドを、SepPak(登録商標)Vac 1cc tC18カートリッジ(Waters)を使用して精製した。この手順は、アセトニトリルおよび0.1%TFAによるカートリッジの洗浄、サンプルの投入、0.1%TFAによるサンプルの洗浄、アセトニトリルによるペプチドの溶出、真空遠心分離によるサンプルの蒸発乾固、および入口S2に導入された1mlの分離媒体で元の戻すことを含有していた。
等電点泳動は、FF−IEF静止インターバルモードにあるBD(商標)フリーフロー電気泳動システムで実施した。9個の媒体入口(E1〜E9)および4個のサンプル入口(S1〜S4)を含む装置を設定した。アノード安定化媒体は、入口E1に導入した。カソード安定化媒体は入口E9に導入し、サンプルは、サンプル入口S3を介して導入した。印加された電圧は500Vであり、電流は130mAであった。サンプルおよび媒体は、それぞれ3ml/時および150ml/時の流量で導入した。
FFE装置内の分離および安定化媒体:
Figure 2011503598
向流媒体:水
2種のサンプルのFFE分離は、上述の設定および媒体を使用して実施した。
PPS実験の場合、PPSを、濃度0.1%の媒体(E1〜E9)に添加した。
PPSを用いたおよび用いないFFE分離溶出プロファイルを、それぞれ図7および図8に示す。
FFE分離の各画分100μlを、SpeedVacを使用して蒸発乾固し、25μlの0.1%TFAに溶解し、その5μlをLC−MS/MS実験に使用した。タンパク質を、実施例2で述べたように同定した。とりわけ、より多くのタンパク質は、分離媒体がPPSを含有している場合にサンプルの画分で同定した。例として、PPSを含まないサンプルの画分32では、48種のタンパク質がLC MS/MSによって同定されたのに対し、PPSを含む分離媒体を含有した実験の画分32では、70種のタンパク質を同定することができた。引き続き行われるLC MS/MS分析の結果を、それぞれ表4および表5にまとめる。
Figure 2011503598
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Claims (94)

  1. フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するための方法であって、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離を行うステップを含むことを特徴とする方法。
  2. 前記サンプルの少なくとも一部は、電気泳動分離後に1つまたは複数の画分に収集されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、サンプル媒体中に含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、少なくとも1種の分離媒体中に含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記フリーフロー電気泳動は、連続モードで操作されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記フリーフロー電気泳動は、静止インターバルモードで操作されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記フリーフロー電気泳動は、サイクリックインターバルモードで操作されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記分離は、フリーフロー等電点電気泳動(FF−IEF)によって実施されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記分離は、フリーフローゾーン電気泳動(FF−ZE)によって実施されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記分離は、フリーフロー等速電気泳動(FF−ITP)によって実施されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  11. 全ての両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、MS適合性であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、開裂性界面活性剤であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記開裂性界面活性剤は、酸に不安定であり、塩基に不安定であり、化学反応性であり、または光に不安定であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 前記開裂性界面活性剤は、{2−[(ジメチル−オクチル−シラニル)−エトキシ]−2−ヒドロキシ−エチル}−トリメチルアンモニウムブロミド、3−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)アクリル酸オクチルエステル、および3−[3−(1,1−ビスアルコキシエチル)ピリジン−1−イル]プロパン−1−スルホネートからなる群から選択されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の方法。
  15. 前記開裂性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の、開裂した部分の少なくとも1つは、MS適合性であることを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 開裂した両性イオン性または非イオン性界面活性剤の部分の少なくとも1つは、遠心分離によって、蒸発によって、および/または濾過によって除去することができることを特徴とする請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記少なくとも1種の開裂性界面活性剤は、フリーフロー電気泳動分離後に少なくとも1つの画分に開裂されることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記開裂性界面活性剤の開裂は、酸に不安定な開裂性界面活性剤を含むFFE分離後に少なくとも1つの画分を酸性化することによって、または塩基に不安定な開裂性界面活性剤を含むFFE分離後に少なくとも1つの画分をアルカリ性化することによって実施されることを特徴とする請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記開裂性界面活性剤の開裂は、少なくとも1種の光に不安定な開裂性界面活性剤を含むFFE分離後に、少なくとも1つの画分について照射を行うことによって実施されることを特徴とする請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記開裂性界面活性剤の開裂は、FFE分離後に、少なくとも1つの画分に化学反応性の界面活性剤中の結合を破壊することが可能な試薬を添加することによって実施されることを特徴とする請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記試薬はフッ化物であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
  22. サンプルの少なくとも一部について、タンパク質消化ステップを行うことを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記タンパク質消化ステップは、フリーフロー電気泳動による分離の前に実施されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  24. 前記タンパク質消化ステップは、フリーフロー電気泳動による分離の後に実施されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  25. タンパク質消化ステップは、フリーフロー電気泳動分離から収集された少なくとも1つの画分で、請求項17から21のいずれか一項に記載の開裂の前または後に実施されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
  26. 請求項1から25のいずれか一項に記載のフリーフロー電気泳動分離と、その後に行われる、フリーフロー電気泳動分離から得られたサンプルの少なくとも一部の分析とを含むことを特徴とする分析物を分析するための方法。
  27. 前記その後に行われる分析は、フリーフロー電気泳動、ゲル電気泳動、1D−および2D−PAGE、MS、MALDI MS、ESI MS、SELDI MS、LC−MS(/MS)、MALDI−TOF−MS(/MS)、IR分光法、UV分光法、ELISA、HPLC、エドマン分解法、NMR分光法、表面プラズモン共鳴、X線回折、核酸配列決定、エレクトロブロッティング、アミノ酸配列決定、フローサイトメトリー、円偏光二色性、および任意のこれらの組合せからなる群から選択される技法を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
  28. 前記分析物は、有機分子、無機分子、生体粒子、バイオポリマー、または生体分子、およびこれらの任意の組合せの群から選択されることを特徴とする請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
  29. 前記分析物は、タンパク質、特に膜結合性タンパク質、内在性膜タンパク質および親油性タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、ペプチド、疎水性ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、糖およびその誘導体、多糖およびその誘導体、ホルモン、リポソーム、ウイルス粒子、抗体、抗体複合体、ナノ粒子、プラスチックの構成成分、ラテックス塗料粒子、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、デキストラン、セルロース誘導体、ポリ酸、医薬品、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染因子、または前述のいずれかの混合物から選択されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
  30. 開裂性作用剤を含む向流媒体は、開裂性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離の後にサンプルの画分の少なくとも一部と接触し、および/または混合されることを特徴とする請求項12から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 向流媒体は、内部に含まれる開裂性界面活性剤がフリーフロー電気泳動分離後に安定化するように、媒体条件を適合させるのに使用されることを特徴とする請求項12から29のいずれか一項に記載の方法。
  32. 精製ステップを実施して、開裂性界面活性剤の部分の濾過、遠心分離、および蒸発からなる群から選択される開裂性界面活性剤の部分の除去を行うことを特徴とする請求項12から29のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記方法は、界面活性剤を除去するのに、透析、クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、界面活性剤交換、タンパク質沈殿、親和性クロマトグラフィ、エレクトロブロッティング、液液相抽出、および/または固液相抽出から選択される精製ステップを必要としないことを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含み、請求項1から33のいずれか一項に記載のフリーフロー電気泳動分離に適切であることを特徴とする分離媒体。
  35. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤含む前記媒体は、A/B分離媒体、揮発性媒体、および相補的多対緩衝媒体からなる群から選択されることを特徴とする請求項34に記載の分離媒体。
  36. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1から33のいずれか一項に記載のサンプル中の分析物のフリーフロー電気泳動分離を実施するためのキット。
  37. 前記少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、請求項12から16のいずれか一項に記載の開裂性界面活性剤であることを特徴とする請求項36に記載のキット。
  38. 1種の分離媒体または複数の分離媒体をさらに含むことを特徴とする請求項36または請求項37に記載のキット。
  39. 分離媒体の数は、2から15の間または3から12の間または4から9の間であることを特徴とする請求項38に記載のキット。
  40. 前記1種または複数の分離媒体は、A/B緩衝媒体、揮発性緩衝媒体、および相補的多対緩衝媒体からなる群から選択されることを特徴とする請求項38または請求項39に記載のキット。
  41. 前記分離媒体は、電気泳動中の分離ゾーン内の最小pHと最大pHとの間の差が約0.2pH単位未満、好ましくは0.1pH単位未満である分離ゾーンを形成することが可能なA/B媒体であることを特徴とする請求項40に記載のキット。
  42. 前記分離ゾーンのpHは、電気泳動中に本質的に一定であることを特徴とする請求項41に記載のキット。
  43. フリーフローゾーン電気泳動で使用されることを特徴とする請求項40から42のいずれか一項に記載のキット。
  44. 前記分離媒体は、pHが電気泳動中に分離チャンバ内の電極間に本質的に線形の勾配を形成する、分離ゾーンを形成することが可能なA/B媒体であることを特徴とする請求項40に記載のキット。
  45. 前記分離媒体は、pHが電気泳動中の分離チャンバ内で本質的に非線形である、分離ゾーンを形成することが可能なA/B媒体であることを特徴とする請求項40に記載のキット。
  46. フリーフロー等電点電気泳動で使用されることを特徴とする請求項40、44、および45のいずれか一項に記載のキット。
  47. 前記分離媒体は、少なくとも1種の緩衝化合物を含む揮発性緩衝媒体であることを特徴とする請求項40に記載のキット。
  48. 前記揮発性緩衝媒体は、減圧下で揮発性である少なくとも1種の緩衝化合物を含むことを特徴とする請求項47に記載のキット。
  49. 前記揮発性緩衝媒体は、高温で揮発性である少なくとも1種の緩衝化合物を含むことを特徴とする請求項47に記載のキット。
  50. 前記揮発性緩衝媒体は、照射を行ったときに揮発性である少なくとも1種の緩衝化合物を含むことを特徴とする請求項47に記載のキット。
  51. 前記揮発性緩衝媒体は、質量分析作業条件下で揮発性である少なくとも1種の緩衝化合物を含むことを特徴とする請求項47に記載のキット。
  52. アノードおよび/またはカソード安定化媒体をさらに含むことを特徴とする請求項36から51のいずれか一項に記載のキット。
  53. 前記安定化媒体は、分離媒体よりも高い電気伝導度を有し、好ましくは前記伝導度は、前記安定化媒体に隣接する分離媒体の電気伝導度に比べて少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも3倍増加することを特徴とする請求項52に記載のキット。
  54. 前記安定化媒体の高い伝導度は、分離媒体に比べて緩衝化合物の濃度を増加させることにより実現されることを特徴とする請求項53に記載のキット。
  55. 前記カソード安定化媒体の高い伝導度は、前記カソード安定化媒体に強塩基を添加することによって実現され、前記アノード安定化媒体の高い伝導度は、前記アノード安定化媒体に強酸を添加することによって実現されることを特徴とする請求項53または請求項54に記載のキット。
  56. 前記強塩基はNaOHであり、前記強酸はH2SO4であることを特徴とする請求項55に記載のキット。
  57. 前記アノード安定化媒体は、前記アノード安定化媒体に隣接する分離媒体のpHに等しいまたは前記pHよりも低いpHを有することを特徴とする請求項52から56のいずれか一項に記載のキット。
  58. 前記カソード安定化媒体は、前記カソード安定化媒体に隣接する分離媒体のpHに等しいまたは前記pHよりも高いpHを有することを特徴とする請求項52から57のいずれか一項に記載のキット。
  59. 少なくとも1種の焦点媒体をさらに含むことを特徴とする請求項36から58のいずれか一項に記載のキット。
  60. 少なくとも1種の開裂性界面活性剤を開裂させるための作用剤をさらに含むことを特徴とする請求項37から59のいずれか一項に記載のキット。
  61. 前記キットの構成成分は、請求項1から33のいずいれか一項に記載のフリーフロー電気泳動法で使用できる状態の水溶液として存在することを特徴とする請求項36から60のいずれか一項に記載のキット。
  62. 前記キットの構成成分は、請求項1から33のいずいれか一項に記載のフリーフロー電気泳動法で使用するのに適切な濃度まで希釈される濃縮水性原液として存在することを特徴とする請求項36から60のいずれか一項に記載のキット。
  63. 各原液は、互いに独立して、1.5×、2×、2.5×、3×、4×、5×、6×、10×、20×、25×、50×、75×、100×、150×、200×、および1000×からなる群から選択される濃度を有することを特徴とする請求項62に記載のキット。
  64. 前記キットの構成成分は、請求項1から33のいずれか一項に記載のフリーフロー電気泳動法で使用するのに適切な濃度まで、溶媒、好ましくは水で溶解される、乾燥または凍結乾燥形態で存在することを特徴とする請求項36から60のいずれか一項に記載のキット。
  65. 1つまたは複数の実験プロトコルおよび任意選択で構成成分の貯蔵条件について記述する製品マニュアルをさらに含むことを特徴とする請求項36から64のいずれか一項に記載のキット。
  66. 前記キットの各構成成分、各乾燥成分、および/または各原液は、密封容器内に別々に配置されることを特徴とする請求項36から65のいずれか一項に記載のキット。
  67. フリーフロー電気泳動における、請求項12から16のいずれか一項に記載のMS適合性の両性イオン性もしくは非イオン性界面活性剤またはMS適合性の両性イオン性もしくは非イオン性開裂性界面活性剤の使用。
  68. フリーフロー電気泳動における、請求項34または請求項35に記載の分離媒体の使用。
  69. フリーフロー電気泳動における、請求項36から66のいずれか一項に記載のキットの使用。
  70. フリーフロー電気泳動によるサンプル中の分析物を分離するための方法であって、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離を行うステップを含み、前記界面活性剤は、サンプル媒体中および/または少なくとも1種の分離媒体中に含まれることを特徴とする方法。
  71. 前記サンプルの少なくとも一部は、電気泳動分離後に1つまたは複数の画分に収集されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  72. 前記分析物は、有機分子、無機分子、生体粒子、バイオポリマー、または生体分子、特にタンパク質、特に膜結合タンパク質、内在性膜タンパク質、および親油性タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、ペプチド、疎水性ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、糖およびその誘導体、多糖およびその誘導体、ホルモン、リポソーム、ウイルス粒子、抗体、抗体複合体、ナノ粒子、プラスチックの構成成分、ラテックス塗料粒子、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、デキストラン、セルロース誘導体、ポリ酸、医薬品、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染因子、およびこれらの混合物の群から選択されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  73. 前記フリーフロー電気泳動の操作モードは、連続モード、インターバルモード、およびサイクリックインターバルモードからなる群から選択され、これとは独立して、前記フリーフロー電気泳動分離は、フリーフロー等電点電気泳動(FF−IEF)、フリーフローゾーン電気泳動(FF−ZE)、またはフリーフロー等速電気泳動(FF−ITP)からなる群から選択される分離モードによって実現されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  74. 前記MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、修飾のないMS適合性界面活性剤であるか、または酸に不安定、塩基に不安定、化学反応性、もしくは光に不安定であり、MS適合性部分と、遠心分離もしくは濾過によって除去することができる部分とに開裂可能な開裂性界面活性剤であることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  75. 前記MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、開裂性のMS適合性界面活性剤であり、前記開裂性のMS適合性界面活性剤は、{2−[2−(ジメチル−オクチル−シラニル)−エトキシ]−2−ヒドロキシ−エチル}−トリメチルアンモニウムブロミド、3−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)アクリル酸オクチルエステル、および3−[3−(1,1−ビスアルコキシエチル)ピリジン−1−イル]プロパン−1−スルホネートからなる群から選択されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  76. 画分の少なくとも一部またはサンプルの少なくとも一部について、フリーフロー電気泳動による分離の前または後にタンパク質消化ステップを行い;前記タンパク質消化ステップがFFE分離後に実施される場合、前記タンパク質消化ステップは任意選択の界面活性剤開裂ステップの前または後に実施されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  77. 開裂剤を含む向流媒体は、開裂性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離の後に、サンプルの画分の少なくとも一部と接触し、および/または混合されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  78. 向流媒体を使用して、フリーフロー電気泳動分離後に内部に含まれる開裂性界面活性剤が安定化するように媒体条件を適合させることを特徴とする請求項70に記載の方法。
  79. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤の使用を含み、前記界面活性剤はサンプル緩衝液中および/または少なくとも1種の分離緩衝液中に含まれたものである、フリーフロー電気泳動ステップと、
    その後に行われる、フリーフロー電気泳動から得られた少なくとも1つの画分の分析であって、前記その後に行われる分析が、フリーフロー電気泳動、ゲル電気泳動、1D−および2D−PAGE、MS、MALDI MS、ESI MS、SELDI MS、ELISA、LC−MS(/MS)、MALDI−TOF−MS(/MS)、IR分光法、UV分光法、HPLC、エドマン分解法、NMR分光法、表面プラズモン共鳴、X線回折、核酸配列決定、エレクトロブロッティング、アミノ酸配列決定、フローサイトメトリー、円偏光二色性、および任意のこれらの組合せからなる群から選択されるものである、分析と
    を含むことを特徴とする分析物を分析するための方法。
  80. 前記サンプルの少なくとも一部は、電気泳動分離後に1つまたは複数の画分に収集されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  81. 前記分析物は、有機分子、無機分子、生体粒子、バイオポリマー、または生体分子、特にタンパク質、特に膜結合性タンパク質、内在性膜タンパク質、および親油性タンパク質、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、ペプチド、疎水性ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、糖およびその誘導体、多糖およびその誘導体、ホルモン、リポソーム、ウイルス粒子、抗体、抗体複合体、ナノ粒子、プラスチックの構成成分、ラテックス塗料粒子、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、デキストラン、セルロース誘導体、ポリ酸、医薬品、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染因子、およびこれらの混合物の群から選択されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  82. 前記フリーフロー電気泳動の操作モードは、連続モード、インターバルモード、およびサイクリックインターバルモードからなる群から選択され、これとは独立して、前記フリーフロー電気泳動分離は、フリーフロー等電点電気泳動(FF−IEF)、フリーフローゾーン電気泳動(FF−ZE)、またはフリーフロー等速電気泳動(FF−ITP)からなる群から選択される分離モードによって実現されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  83. 前記MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、修飾のないMS適合性界面活性剤であるか、または酸に不安定、塩基に不安定、化学反応性、もしくは光に不安定であり、MS適合性部分と、遠心分離、濾過、および蒸発によって除去することができる部分とに開裂可能な開裂性界面活性剤であることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  84. 前記MS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、開裂性のMS適合性界面活性剤であり、前記開裂性のMS適合性界面活性剤は、{2−[2−(ジメチル−オクチル−シラニル)−エトキシ]−2−ヒドロキシ−エチル}−トリメチルアンモニウムブロミド、3−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)アクリル酸オクチルエステル、および3−[3−(1,1−ビスアルコキシエチル)ピリジン−1−イル]プロパン−1−スルホネートからなる群から選択されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  85. 画分の少なくとも一部またはサンプルの少なくとも一部について、フリーフロー電気泳動による分離の前または後にタンパク質消化ステップを行い;前記タンパク質消化ステップがFFE分離後に実施される場合、前記タンパク質消化ステップは任意選択の界面活性剤開裂ステップの前または後に実施されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  86. 開裂剤を含む向流媒体は、開裂性界面活性剤およびサンプルの少なくとも一部を含むフリーフロー電気泳動画分と、前記開裂剤とを接触させるのに使用されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  87. 開裂剤を含む向流媒体は、開裂性界面活性剤を含むフリーフロー電気泳動分離の後に、サンプルの画分の少なくとも一部と接触し、および/または混合されることを特徴とする請求項79に記載の方法。
  88. フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するのに適切な分離媒体であって、少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする分離媒体。
  89. 少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤を含む前記媒体は、A/B分離媒体、揮発性媒体、および相補的多対緩衝媒体からなる群から選択されることを特徴とする請求項88に記載の分離媒体。
  90. フリーフロー電気泳動によってサンプル中の分析物を分離するためのキットであって、少なくとも1種のMS適合性の両性オンまたは非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とするキット。
  91. 前記少なくとも1種のMS適合性の両性イオン性または非イオン性界面活性剤は、少なくとも1つのMS適合性部分と、遠心分離、濾過、または蒸発によって除去することができる少なくとも1つの部分とに開裂可能であることを特徴とする請求項90に記載のキット。
  92. 1種および複数の分離媒体からなる群から選択される少なくとも1種の構成成分をさらに含み、前記分離媒体は、A/B緩衝媒体、揮発性緩衝媒体、および相補的多対緩衝媒体からなる群から選択され;任意選択で、アノードおよび/またはカソード安定化媒体、焦点媒体、開裂性界面活性剤、1つまたは複数の実験プロトコルについて記述している製品マニュアル、構成成分の貯蔵条件、および/または向流媒体をさらに含むことを特徴とする請求項90に記載のキット。
  93. 前記キットの構成成分は、フリーフロー電気泳動法に使用できる状態の水溶液、フリーフロー電気泳動で使用するのに適切な濃度まで希釈される濃縮水性原液、およびフリーフロー電気泳動法で使用するのに適切な濃度まで溶媒、好ましくは水で溶解される乾燥もしくは凍結乾燥形態からなる群から選択される形態またはそれらの任意の組合せで提供されることを特徴とする請求項90に記載のキット。
  94. 前記キットの、使用できる状態の各構成成分、各乾燥成分、および/または各原液は、密封容器内に別々に配置されることを特徴とする請求項90に記載のキット。
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