JP2010508528A - 等速電気泳動適用のための新規方法、キット、装置 - Google Patents

等速電気泳動適用のための新規方法、キット、装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、区別された電気泳動移動度の粒子を分離及び/又は分画する、電気泳動の操作モードに関する。より詳細には、本発明は、フリーフロー及びキャピラリー等速電気泳動を含む、等速電気泳動(ITP)に関し、並びに新規電気泳動法、更にはそのような方法を実行するためのキット及び装置を提供する。

Description

発明の分野
本発明は、区別された電気泳動移動度の粒子を分離及び/又は分画する、電気泳動の操作モードに関する。より詳細には、本発明は、フリーフロー及びキャピラリー等速電気泳動を含む、等速電気泳動(ITP)に関し、並びに新規電気泳動法、更にはそのような方法を実行するためのキット及び装置を提供する。
発明の背景
電気泳動は、直流の影響下で帯電した粒子の移動を基に粒子を分離するためのよく確立された技術である。等電点電気泳動(IEF)、ゾーン電気泳動(ZE)及び等速電気泳動(ITP)などのいくつかの異なる操作モードが、電気泳動分離原則の変形として開発されており、一般に当業者に公知である。
電気泳動技術の中で、FFEは、最も将来性のあるものである[Krivanova L.及びBocek P. (1998), "Continuous free-flow electrophoresis", Electrophoresis 19: 1064-1074]。FFEは、被検体の分離が、吸着による試料の喪失を最小化するために、固定相(又は固形支持材)の非存在下で、液体媒体において行われる技術である。FFEは、無担体デフレクション電気泳動又はマトリックス-フリーデフレクション電気泳動と称されることが多い。
FFEは、有機分子及び無機分子、生体粒子、生体高分子及び生体分子を、それらの電気泳動移動度を基に分離するために使用することができる。それに対応する原理は、例えばBondy B.らの論文「Sodium chloride in separation medium enhances cell compatibility of free-flow electrophoresis」、Electrophoresis 16: 92-97, 1995において既報である。
FFEのプロセスは、例えば安定化媒体及び向流媒体を手段として改善されている。これは、例えば米国特許第5,275,706号に開示されており、その特許の開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。この特許によると、向流媒体は、バルク分離媒体及び電極間を移動する試料の連続流方向に対抗して分離スペースに導入される。両媒体(分離媒体及び向流媒体)は、電極間の分離スペースから溶出され、分画流出口を通り、典型的にはマイクロタイタープレートへ排出され、低い空隙容量を有する分画プロセスを生じる。加えて分画流出口ゾーン内の媒体の層流は、維持される(すなわち乱流は非常に少ないかもしくは存在しない)。
インターバルFFEと称される特定のFFE技術が、例えば米国特許第6,328,868号において開示されている。この特許において、試料媒体及び分離媒体は、電気泳動チャンバーへ導入され、試料中の被検体は、ZE、IEF又はITPなどの電気泳動モードを用い分離され、最終的に分画流出口を通りチャンバーから放出される。この第6,328,868号特許の実施態様は、チャンバーの注入口末端から流出口末端へと移動する一方向である分離媒体及び試料の移動を開示しており、印加された有効電圧が、電気泳動移動の発生を引き起こす一方で、試料及び媒体は、注入口末端から流出口末端へ流体的に駆動されない。これは、試料及び媒体が器具を通過する間に電界内で分離される(連続FFE)、当該技術分野において通常使用される技術とは対照的である。
国際特許出願WO 02/50524は、それを通り分離媒体が流れかつ床面により規定された分離スペース又はチャンバーを提供する分離チャンバー、カバー、並びにこれらふたつを互いに分離するが該FFE器具の上面プレートと底面プレートの間に本質的に一定のギャップを維持するスペーシング装置を備える器具を使用する電気泳動法を開示している。加えて、このFFE器具は、媒体供給ラインを介し分離チャンバーへ侵入しかつ流出口を介してチャンバーから離れる分離媒体を供給するためのポンプを包含している。このFFE器具は、分離媒体内に電界を印加するための電極、粒子又は被検体の混合物を添加するための試料注入ポイント、及び分離媒体においてFFEにより分離される粒子を除去するための分画ポイントも備える。分離された粒子は、分析目的に又は更なる分取処理に使用することができる。
電気泳動技術に影響を及ぼす問題点は、とりわけ電極汚染により引き起こされる不安定性である。特にFFEにおいては、この汚染は一般に、電極を分離チャンバーから隔離する半-多孔質メンブレンの使用により防止される。
この問題点の解決法は、米国特許出願第2004/050697号及び第2004/050698号、更には国際特許出願WO 03/060504に開示されている。とりわけこれらの特許出願は、電極近傍に緩衝液媒体を作製するために使用される、いわゆる焦点化緩衝液(focusing buffer)を開示しており、ここで焦点化緩衝液媒体は、分離媒体よりもより高い伝導度を有する。電極を分離チャンバーから分離するメンブレンが存在しない場合、粒子はそれら自身活発に電極へ結合し、その結果分離された粒子の著しい喪失及び電極の同時汚染の可能性がある。これらの出願によると、この作用は、焦点化緩衝液により防止することができる。しかし米国特許出願第2004/050697号及び第2004/050698号又は国際特許出願WO 03/060504には、分離媒体に関する焦点化緩衝液の成分、又はより高い伝導度を実現する方法に関する指針は開示されていない。
生体粒子及び生体高分子などの被検体の分離のための多くの分離媒体が、当該技術分野において公知である。例えば、K. Hannig及びK. H. Heidrichにより刊行された書籍「Free-flow Electrophoresis」(ISBN 3-921956-88-9)は、FFE、特にフリーフローZE(FF−ZE)に適した分離媒体の一覧を報告している。
米国特許第5,447,612号(Bierら)は、フリー溶液(free solution)中に機能的に安定したプレキャストナローpHゾーン勾配を形成することによる、IEFにより被検体を分離するためのpH緩衝化システムである別の分離媒体を開示している。これは、相補的緩衝液対中で緩衝化成分を使用する。この緩衝液の成分は、単純に化学的に規定された両性電解質及び弱酸及び弱塩基から選択され、これらは次にpH単位0.4〜1.25の間で比較的平坦なpH勾配を提供するように、それらの解離特性を基に対を形成する。
同時係属中の米国特許仮出願第USSN 60/885,792号は、例えばゾーン電気泳動(ZE)、等速電気泳動(ITP)及び等電点電気泳動(IEF)などの様々な電気泳動操作モードにおいて利用することができる媒体を開示している。更にこの出願は、一般に各々、電気泳動装置の陰極及び陽極の近傍(すなわち近く)で(すなわち、陰極と分離ゾーンの間、及び陽極と分離ゾーンの間で)電気泳動チャンバーへ導入される、いわゆる安定化媒体を開示している。
従って安定化媒体は、電気泳動装置の分離スペース内の条件(例えばpH及び電気伝導度)を安定化することが可能であり、これにより電気化学的状態及び物理的状態の改善された安定性をもたらし、これは試料中の被検体の電気泳動分離/分画における増強された精度、感度及び再現性につながる。
好適なFFE装置は当該技術分野において公知であり、例えば商品名BD(商標)Free-flow Electrophoresis System (BD GmbH, 独国)で市販されている。加えて本発明の分離媒体及び安定化媒体と共に使用することができる好適なFFE装置は、多くの特許出願において開示されており、これは米国特許第5,275,706号、第6,328,868号、係属中の米国特許出願公開US 2004/050697、US 2004/050698、US 2004/045826、及びUS 2004/026251、並びに国際出願PCT/EP2007/059010(仮出願された出願USSN 60/863,834及びUSSN 60/883,260の優先権を主張)を含み、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
米国特許出願第2004/050698号は、それを通り分離媒体が流れることができる少なくとも1個の分離チャンバーを包含している、フリーフロー電気泳動器具も開示している。更に該FFE器具は、媒体供給ラインにより分離チャンバーへ侵入し、かつ流出口により該チャンバーを離れる分離媒体の運搬のための供与ポンプ(dosage pump)、分離媒体に電界を印加するための電極、並びに分離される粒子の混合物を添加するための試料注入ポイント及びFFEにより分離された分離媒体中の粒子を除去するための分画ポイントを包含している。
前述のように、フリーフロー電気泳動は、様々な電気泳動モードで実行されてよい。これらのモードのひとつである等速電気泳動(「ITP」)は、分離が不連続緩衝液システム中で実行される、より最新型の電気泳動である。分離される試料物質は、「リーディング電解質」と「ターミネーティング電解質」の間に挿入され、これらの緩衝液の特性は、リーダーは正味電気泳動移動度が試料イオンのそれよりも高いイオンを含むが、ターミネーターは正味電気泳動移動度が試料イオンのそれよりも低いイオンを含まなければならないことである。そのようなシステムにおいて、試料成分は、いわゆるコールラウシュ規定関数により支配される複雑なパターンでそれらの移動度の減少に従い、リーダーからターミネーターへそれら自身を選別する(sort)。このプロセスは、当該技術分野において、例えばBier及びAllgyerの「Electrokinetic Separation Methods」443-69 (Elsevier/North-Holland 1979)で説明されている。
被検体(類)及び任意にスペーサー化合物(S&S)を含有する試料は、フリー溶液等速電気泳動へ、リーダーとターミネーター電解質ゾーンの間で導入され、同時に電界に供され、その後それらの相対電気泳動移動度における差に従い個々の物質の純粋なゾーンへと分離される。
従って、フリーフローゾーン電気泳動(ZE)とは対照的に、ITPにおける分離は、固有の「焦点効果」のためにより良い分解をもたらす非-均質分離媒体において実現される。ITP時に単独の粒子が分離された粒子バンドの外へ拡散する場合、これらは、電界強度が変動する媒体へ侵入し、結果的にこれらの粒子は一般に複数の電極のひとつに向かい局所的に加速又は減速される。固有の焦点効果は、主要画分へ移動するための、より遅い又はより早い粒子の移動を引き起こす。一部の適用において、移動する電界(migrating field)内の公知の電気泳動移動度の粒子の分離又は単離は、単離されるべき粒子よりもわずかに大きい及びわずかに小さい電気泳動移動度を伴うスペーサーの追加により改善され得る。これは一般に「スタッキング」と称され、そのような「スペーサー」は、公知かつ個別の電気泳動移動度を持つ粒子(複数)を物理的に分離するために利用される。
ITPの基本の例は、例えばEveraertsの米国特許第3,705,845号「Method in counterflow isotachophoresis」に認められる。米国特許第3,705,845号の図1a及び1bは、図1a及び1bとして本明細書に組み入れられており、これらはゾーン間に境界を持つイオンゾーンが作製されている電気泳動チャンバーの断面を反映している。Everaertsは特許第3,705,845号において、例えば図1a及び1bにおいて、C1がC2よりもより高い移動度を有するように仮定された、2種の異なる陰イオンC1及びC2の陰イオン分離を開示している。陰イオンAのリーディング電解質ゾーン及び陰イオンBのターミネーティング電解質ゾーンは各々、C1及びC2を含む試料ゾーンSの反対側に作製される。陰イオンAを伴うリーディング電解質ゾーンLは、試料ゾーンSよりも陽極5に近いが、陰イオンBを伴うターミネーティング電解質ゾーンTは、試料ゾーンSよりも陰極4に近い。Everaertsは更に、T、L、及びSの各ゾーン内の対イオンR+を明らかにしている。
ゾーン電気泳動は、分取分離モードのようなある場合に許容し得る方法であるが、それにもかかわらず欠点がある。例えばこれは、分離を実行するために高い電界強度を必要とし、これは電気泳動分離の前に試料の濃度と比べ相対的に薄い試料を作製する。
フリーフロー等速電気泳動による細胞小器官又はタンパク質のような繊細な生体分子又は生体粒子の分離は、いくつかの利点を提供するが、そのような繊細な生体粒子を分離する場合に、フリー溶液中でITPをうまく実行する試みは、概してうまくいかない。数ある中でも関心対象の被検体(例えば細胞小器官)の濃度を改善するために、分取的分離技術として、FF ITPを利用することは原則的に有益であり、その理由は、例えば増強された分解は、比較的少量の付随する緩衝液内の関心対象の被検体を溶出する能力につながるからである。
一般に非分取的分離技術であるキャピラリー電気泳動において達成されるのと同じくらいうまくフリーフロー等速電気泳動を達成しようとする最新の更なる試みは、失敗した。従って当該技術分野において、分析的及び分取的フリー溶液電気泳動技術における等速電気泳動に関連したこれらの問題点及び他の問題点を解決する必要がある。
発明の概要
本発明の目的は、当該技術分野において公知のキャピラリー等速電気泳動分離技術を増強する方法及びキットを提供し、並びに先行技術の欠点を避けるフリーフロー等速電気泳動分離に適した方法、キット及び装置を提供することである。
本発明者らは、本明細書に提供された方法、キット及び装置は、被検体のフリーフロー等速電気泳動分離をうまく使用することができ、かつ利用可能な先行技術の方法と比べ多くの利点をもたらすことを認めた。キャピラリー等速電気泳動分離技術を含む、本発明により提供される更なる利点及び改善点を、以下の本発明の説明においてより詳細に例示する。
従って、本発明の一態様は:
少なくとも1種のT媒体により形成された、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成された、希釈されたTゾーン;
少なくとも1種のL媒体により形成された、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
少なくとも1種のL安定化媒体により形成された、L安定化ゾーン;を備え、並びに
任意に少なくとも1種のS媒体により形成された、スペーサー(S)ゾーン:を更に備える、電気泳動チャンバー内の電極のセット間に分離ゾーンを形成し、ここで少なくとも1個の電極は陰極であり、及び少なくとも1個の電極は陽極であること;を含む、新規電気泳動法に関する。
好ましくは、本発明の新規電気泳動法は、等速電気泳動(ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離するために有用であり、特にフリーフロー等速電気泳動(FF ITP)のような、無担体電気泳動の適用における分離に有用である。
別の態様は、被検体を分離するための、キャピラリー等速電気泳動法に関し、これは:
2個の電極及び該2個の電極の間に介在された分離ゾーンを備える、キャピラリー電気泳動分離を実行するのに適した器具を提供することを含み、ここで該分離ゾーンは、少なくとも:
L’ゾーンを形成する、リーダー電解質(L)媒体;及び
Sゾーンを形成する、スペーサー(S)媒体;及び
T’ゾーンを形成する、修飾されたターミネーター電解質(T’)媒体:により形成される。
更に別の本発明の態様は、FF ITP分離及びキャピラリーITP分離における、各々、新規T媒体及び新規T’媒体の使用、並びにFF ITP分離における希釈されたT媒体の使用に関する。
更に別の本発明の態様は、本発明の新規方法を実行するための媒体成分の少なくとも一部又は全てを提供するキットに関する。特にフリーフローITPを実行するためのキットは、本明細書において更に規定される少なくとも1種のT媒体を含むが、任意にL媒体、L安定化媒体、希釈されたT媒体、及び/又は少なくとも1種のS媒体のような、その他の媒体又はそれらの成分を含んでもよい。
最後に、少なくとも1個の電極は陰極であり、及び少なくとも1個の電極は陽極である電極のセット、並びに該電極の間に介在された分離ゾーンを備える、電気泳動チャンバーを含む、新規器具であり、ここで分離ゾーンは、少なくとも1種のT媒体により形成されるターミネーター電解質(T)ゾーン、少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成される希釈されたTゾーン、少なくとも1種のL媒体により形成されるリーダー電解質(L)ゾーン、少なくとも1種のL安定化媒体により形成されるL安定化ゾーンを含むように構成される器具が、本明細書において提供される。任意にこの器具は、少なくとも1種のS媒体により形成されたスペーサー(S)ゾーンを更に備えるように、構成されてよい。
これらの器具は、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を被検体組成物から分離するために構成される。
好ましい実施態様において、この器具は、それを通り媒体類がチャンバー内に導入される少なくとも5個の注入口を備える、電気泳動チャンバーを含み、ここで2個の隣接する「a」注入口は、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8の内側口径dを有する。更に、少なくとも1個の「A」注入口は、該2個の「a」注入口と各電極の間に位置し;並びに、該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、最大でも「A」注入口の対の間の距離の係数0.8である。加えて、該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、最大でも「a」注入口と「A」注入口の間の距離の係数0.8である。
図1a及び1bは、米国特許第3,705,845号:ITP separation of anions in a capillary (free-solution capillary) electrophoresisに開示された、等速電気泳動(ITP)実施態様の、出発状態(図1a)、及び電気泳動分離の開始後の時点(図1b)である。米国特許第3,705,845号において、リーディング電解質(L)、ターミネーティング電解質(T)、試料ゾーン(S)、及び対イオンRが、一般に規定されている。 図2a及び2bは、前記先行技術において実施される、ITP出発状態(図2a)及び分離時(図2b)の概略図である。試料及びスペーサー(S&S)は混合され、この混合物は、リーダー電解質ゾーンとターミネーター電解質ゾーンの間に導入された。 図3は、例示的FFE分離チャンバーにおいて実行される、概略的FF ITP分離である。 図4aから4cは、図3に示された区域A、B及びCの状態の概略図である。区域A(図4a):導入された電解質及びスペーサー電解質を示す、最初の出発状態。本明細書に説明されたように、第一の(右側)電極と第二の(左側)電極の間の分離スペースは、L安定化ゾーン(conc.L)、リーダー電解質(L)ゾーン、スペーサー電解質(S)ゾーン(スペーサーS1、S2、及びS3を含む)、濃縮されたターミネーター電解質Tゾーン(Tconc.)及び係数Xだけ希釈されている希釈されたTゾーン(Tconc./X)を含む。区域B(図4b):一旦試料が図4aに示されたような電解質の流れに添加された、分離スペースを示す状態。この時点で、試料導入ポート(14)は、第一電極と第二の電極の間に位置し、並びに試料イオンS1及びS2を含む試料は、分離媒体へ導入される。一部の実施態様においては、区域Bで、電界は既に確立されているが、別の実施態様においては、電界は、試料が区域BとCの間に位置した直後に確立される。区域C(図4c):第一電極と第二電極の間に印加された電界から生じた等速電気泳動の移動及びスタッキング作用を表す状態。この状態は、先に定義されたような、L、試料イオン(A1及びA2)、スペーサーイオン(S1、S2、及びS3)、Tconc.、Tconc./X、及びTs dil(強力に希釈された)の適切な選択及び配置により形成される。本発明のある実施態様において、ターミネーター電解質Ts dilゾーンは、Ts dilゾーン内のターミネーターTの濃度が、Tconc./Xゾーン内のTconc./Xの濃度よりも更に低いように形成される。ターミネーター電解質ゾーンTの濃度は、コールラウシュ式により、リーダー及び試料電解質ゾーンの濃度により決定される。 図5は、フリーフロー等電点電気泳動(FF IEF)、フリーフローゾーン電気泳動(FF ZE)又はフリーフロー等速電気泳動(FF ITP)を実行するために、当該技術分野において使用される器具の概略図である。 図6は、FFE器具内で媒体注入口を分離するために、当該技術分野において使用される分離装置である。 図7は、本発明のFF ITP法を実行するのに適した新規分離装置の概略図である。 図8は、連続モードで実行された本発明の最適化されたFF ITP分離における各pI−マーカーの分布を可視化する、λ=420nm、515nm、及び595nmでの、FFE画分の吸光度により表されたFFE溶出プロファイルである。pIマーカーは、試料として導入した。 図9は、典型的ITPプロトコールで実行されたFF ITP分離(本発明の最適化されたFF ITP法において使用されたものと同じpIマーカー、リーダーイオン、スペーサーイオン、及びターミネーターイオンを使用)における各pI−マーカーの分布を可視化する、λ=420nm、515nm、及び595nmでの、FFE画分の吸光度により表されたFFE溶出プロファイルである。 図10は、ペルオキシソームを含有する試料のFF ITP溶出プロファイルである。ペルオキシソームを含有する画分は、λ=420nmでFF ITP画分の吸光度を測定することにより同定した。 図11は、実施例2に従いFF ITP分離した後の、ペルオキシソームの電子顕微鏡写真(×4646)である。
発明の詳細な説明
本発明は、例えば、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)及びキャピラリー等速電気泳動を含む等速電気泳動(ITP)による、粒子の分離又は分画に有用である有利な方法を提供する。この改善された電気泳動法は、当該技術分野において公知の先行するITP法では分離することができなかった粒子をうまく分離することを可能にする。本発明のITP分離法は概して、任意の電気泳動適用で実行することができるが、新規方法は、キャピラリー電気泳動及びフリーフロー電気泳動に特に適していると考えられる。
従って本発明の一態様は:
少なくとも1種のT媒体により形成された、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成された、希釈されたTゾーン;
少なくとも1種のL媒体により形成された、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
少なくとも1種のL安定化媒体により形成された、L安定化ゾーン;を備え、並びに
任意に少なくとも1種のS媒体により形成された、スペーサー(S)ゾーン:を更に備える、
電気泳動チャンバー内の電極のセット間に分離ゾーンを形成し、ここで少なくとも1個の電極は陰極であり、及び少なくとも1個の電極は陽極であること;を含む、新規電気泳動法に関する。
任意に本方法は、試料又は少なくとも1種の関心対象の被検体が電気泳動チャンバーへ導入されることを更に含んでよい。
好ましい実施態様において、本方法は、等速電気泳動(ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離することである。
本発明に従い、分離されるべき被検体(類)を含有する試料は、異なる媒体間に平衡状態が確立される前に、スペーサー媒体と一緒に電気泳動チャンバーへ導入されてよい。しかし好ましい実施態様において、例えば、新規方法がFF ITP分離として実行される場合、試料は、異なる媒体の平衡状態が既に確立された後などに、様々な媒体の導入ポイントの下流で分離チャンバーへ導入されてよい。別の言い方をすると、試料は、スペーサー又は更なる分離媒体と一緒には導入されないが、むしろ異なる媒体の平衡状態が既に確立された後で導入される。ある実施態様において、試料は、実際の分離領域(すなわち、電極間に電界が存在する場所)へ導入される。
これに関して、試料は一般に、媒体注入口と実際の分離領域(すなわち、電極間に電界が存在する場所)の間の位置に導入されてよいか、又は該電界内に直接配置することができることは理解されるであろう。
加えて、FF ITPについて好ましくは、試料は、本発明の分離ゾーン内の異なるゾーンの配列に応じて、バルク流れ方向に対し垂直に異なる位置に導入することができることが注目される。従って、試料は、Sゾーンへ導入されるか、又は代わりにSゾーンと希釈されたT電解質ゾーンの間に導入されてよい。試料は、希釈されたTゾーンへ、SゾーンとLゾーンの間へ、又はLゾーンへ導入されてもよい。
しかし試料は、FF ITP分離を実行するのに適した器具の2個の電極の間の、媒体注入口と実際の分離ゾーンの間に位置に導入されることが好ましい。
本発明のITP法は、分離ゾーン内で、又は分離ゾーンから被検体が溶出した後、及び任意に少なくとも1種の画分が分離チャンバーから排出した後のいずれかで、少なくとも1種の関心対象の被検体を引き続き分析するために、並びに任意に1つ又は複数の画分中の関心対象の被検体の少なくとも一部分を回収するために適している。
フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)に関する本発明の一般的実施態様は、図3及び4に示されている。
図3は、FFE分離チャンバーにおいて実行されるFF ITP分離の概略図である。該分離チャンバー(2)は、第一電極(6)及び第二電極(8)の側方に位置した分離ゾーン(4)を備える。分離媒体注入口ポート(10)は、チャンバー(2)の第一端に位置し、及び流出口ポート(12)は、例えば反対側の端に位置する。試料注入口(14)は、2個の電極の間の分離ゾーンとの流体連絡路内に配置され、加えて媒体注入口ポート(10)と流出口ポート(12)の間に縦方向に(電極に対し平行に)、好ましくは流出口ポート(12)よりも媒体注入口ポート(10)により近く配置される。試料注入口(14)が試料を、電極(6及び8)の間に形成された電界の前方又は電界内のチャンバー(2)へ導入することができるように、該試料注入口が配置されてよいことは理解されるであろう。面A、B及びCを通る断面は、図4aから4cに概略的に説明されている。
図3に示された面A、B及びCを通る断面は、図4a、4b及び4cに示されている。本質的に、図4aは、試料を導入する前にチャンバーへ導入される分離媒体の最初の出発状態を示している。図4bは、スペーサー(S)ゾーンへの試料導入ポート14(図3参照)のすぐ下流での分離状態を示す。この試料導入ポートは、試料を分離媒体へ導入するように、個別のポンプにより独立して制御されることが好ましい。図4cは、電界の印加後の状況を示し、図4bに示された状態と比べた場合に、FF ITP電気泳動状態の進展を明らかにしている。図4cに示されるように、試料「スタッキング」は既に起こっている。
本発明の実施態様を使用する陰イオン分離に関して、図3の電極(8)は陽極であり、及び電極(6)は陰極であり、各々電位を持つ。本発明の実施態様を使用する陽イオン分離に関して、図3の電極(8)は陰極であり、及び電極(6)は陽極である。従って本発明の様々な実施態様を用い、以下により詳細に説明されるように、関心対象の被検体の電荷に応じ、陰イオン及び陽イオンの両方の分離を行うことができる。
本発明のITP法における新規緩衝されかつイオン化されたターミネーター電解質(T)媒体、希釈され緩衝されかつイオン化されたT媒体、及び緩衝されたリーダー電解質(L)媒体の使用は、当該技術分野において公知のITP法と比べいくつかの利点を提供する。
例えば、FF ITP分離時の異なるゾーンのより良い分解、従ってより良い分離は、ここで本発明の内容を利用し実現することができる。更に本発明の少なくとも1種のT媒体、少なくとも1種の希釈されたT媒体及び少なくとも1種のL媒体の使用は、ITP分離を実行するのに適した器具の電極間の分離ゾーンの幅全てにわたり本質的に一定のpHを提供する。同じく本発明に従い、緩衝されかつイオン化されたT媒体の使用は、当該技術分野において公知の方法と比べた場合、ターミネーターゾーンのより高い伝導度の利点に繋がり、希釈されたT媒体の導入は、Tゾーンとスペーサー又は試料ゾーンの界面での電気伝導度の不連続性を著しく低下する。これらの有利な媒体の使用、並びに異なる媒体内のリーダーL化合物、ターミネーターT化合物及び緩衝化合物の濃度の調節は、当業者が、全分離ゾーンにわたる希釈されたTゾーン、Sゾーン及びLゾーンを通じて、本質的に一定の伝導度及び/又はpHを実現すること、従って本出願において明らかにされたように被検体の増強された分離を実現することを可能にする。
本発明のITP法は、電気泳動移動度比(VL:VT)<17を有するリーダーイオン及びターミネーターイオンの使用を可能にする。本発明の別の利点は、5%未満、更には3%未満のそれらの電気泳動移動度の差を有する被検体であっても、本明細書に説明されたITP法によりうまく分離することができることである。
本出願の文脈において用語「分離する」及び「分離」は、2種又はそれよりも多い被検体の混合物の、それらの電界内での異なる挙動を基にした、何らかの空間的区分を意味することが意図される。従って分離は、試料に含まれるある画分又は被検体の分画、特異的及び選択的豊富化又は枯渇、並びに濃縮及び/又は単離を含むが、これらに限定されるものではない。しかし本発明の文脈において、分画は一般に、他の被検体が電気泳動工程時に更に分離されるかどうかに関わりなく、試料内のある被検体が残りの被検体から区分又は豊富化されることを意味すると理解されることは明らかであろう。用語「分画」と「分離」の間に明確な区別はないが、「分離」は試料中の様々な被検体のより細かい又はより詳細な空間的区分を意味することは、容易に明らかであろう。従って本出願が用語「分離する」又は「分離」に言及する場合、これらは分離、分画、単離、豊富化、又は枯渇を含む前述の意味の少なくともひとつを含むことが意図される。しかし好ましい実施態様においては、関心対象の被検体が試料中の他の粒子又は種から単離される。
本発明の文脈において用語「溶出する」は、等速電気泳動分離が実行される電気泳動チャンバーの電極間の分離ゾーンからの被検体の除去又は廃棄に関するのに対し、用語「排出する」は、電気泳動チャンバーからの被検体の除去を意味する。
分離は原則として、分取的方法で実行され、その結果ある画分は引き続き収集もしくは回収されるか、又はある画分中の関心対象の被検体もしくはその存在が、好適な手段により単に検出されるが例えば更なる使用のために収集されない場合には、単に分析的に実行されてよい。
本出願において使用される用語「ある(a)」は、「ひとつ」、「少なくとも1る」又は「1つ又は複数」を意味すると理解されるべきである。
本明細書において使用される用語「試料」は、少なくともその一部は本発明の電気泳動分離に供される任意の組成物をいう。典型的には、試料は、少なくとも1種の関心対象の被検体を含むか又は含むことが疑われる。
用語「関心対象の被検体」、「関心対象の分子」及び「分離されるべき被検体」は、本明細書において区別なく使用され、分離、単離、検出、定量、又はそうでなければ試験、研究もしくは分析されるべき、分子又は粒子を示す。「関心対象の被検体」は、分離、単離、検出、定量、試験、分析などの前に同定されることを常に必要とはしないことは明らかであろう。本発明に従い分離することができる関心対象の被検体の非限定的例は、細胞、ウイルス、ウイルス粒子、細胞小器官、リポソーム、ホルモン、セルロース誘導体、抗体、抗体複合体、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、タンパク質、親油性タンパク質、酸性タンパク質、ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、ナノ粒子、糖質及びそれらの誘導体、多糖及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物などの、生体粒子、生体高分子及び生体分子である。
一部の好ましい実施態様において、関心対象の被検体は、細胞、細胞小器官、酸性タンパク質、親油性タンパク質、又はナノ粒子である。
更に本発明のある実施態様に従い分離することができる無機分子又は有機分子は、帯電したポリマー又は錯体、ポリ酸、調合薬、プロドラッグ、薬物の代謝産物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染性物質などであってよい。
本明細書において使用される用語「細胞小器官」は、細胞内に位置したインビボにおいて特定されたサブユニットを意味する。ある実施態様において、そのような細胞小器官は、特異的機能を有することができ、及び/又はそれら自身の脂質膜内に個別に封入されてよい。用語「細胞小器官」は、「細胞コンパートメント」と同義であると理解されるべきである。本発明の細胞小器官の非限定的例は、ミトコンドリア、葉緑体、小胞体、ゴルジ装置、核、液胞、リボソーム、小胞、ペルオキシソーム、核小体、ペアレンソソーム、マイトソーム、メラノソーム、グリコソーム、グリオキシソームなどである。
本明細書において使用される用語「親油性タンパク質」は、少なくとも1つの親油性部分を有するタンパク質をいう。インビボにおいてファンデルワース力により膜と相互作用することが可能である膜会合したタンパク質は、親油性タンパク質の典型であるが非限定的な例である。任意に親油性タンパク質は、例えば膜の極性ヘッド基と相互作用する、極性基又はイオン基を含むタンパク質を包含してよい。非限定的例は、K−セグメントを含むデヒドリン又は受容体である。受容体分子は、当該技術分野において認められており、かつ一般に細胞外ドメイン、細胞内ドメイン及び/又は膜貫通ドメインを含む。
本明細書において使用される用語「ナノ粒子」は、用語「ナノ粉末」、「ナノクラスター」又は「ナノ結晶」も含む。用語「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法が約120nm未満である顕微鏡粒子をいう。当業者は、ナノ粒子はバルク材料(bulk material)と原子又は分子構造の間の効果的な橋であることを理解するであろう。該ナノ粒子は、バルク材料に対し多くの特別な特性を示す。例えば、バルク銅の曲げ(ワイヤ、リボンなど)は、約50nmスケールでの銅原子/クラスターの運動で生じる。50nmよりも小さい銅ナノ粒子は、バルク銅と同じ鍛造性及び延性を示さない超硬質材料と考えられる。このサイズ範囲の下限では、ナノ粒子は、クラスターと称されることが多い。ナノスフェア、ナノロッド及びナノカップは、当該技術分野において作製された極いくつかの形状である。金属、誘電体、及び半導体のナノ粒子、更にはハイブリッド構造(例えばコア−シェル型ナノ粒子)、半−固形及び軟質ナノ粒子は、本発明に従い分離することができる。半−固形の性質のプロトタイプ的ナノ粒子は、例えばリポソームである。そのようなナノ粒子は、薬物担体として、又は造影剤として生体医学適用において使用されてよい。例えば様々な種類のリポソームナノ粒子が、抗癌剤及びワクチンのための送達システムとして、現在臨床で使用され、かつ本発明の方法に従い分離されてよい。
本明細書において使用される用語「ターミネーター電解質」又は「ターミネーター」は、分子及び/又はそれらに由来した帯電した化学種をいう。明白に、ターミネーター分子又はそれらに由来した帯電した化学種は両方とも、関心対象の被検体の電気泳動移動度(EM)よりも低いように規定されているEMを有する。
本発明の好ましい実施態様において、該ターミネーターTの少なくとも一部は帯電され、すなわち帯電した化学種(イオン)は、例えば、帯電した化学種及びその対イオンへの解離によるか、プロトン化によるか、又は脱プロトン化により、該ターミネーターに由来してよい。分離の問題点及び被検体が正又は負帯電したかどうかに応じて、これらの化学種が陰極へと移動する陽イオンITPと、溶液中の化学種が陽極へ移動する陰イオンITPの間で区別されなければならない。従って、陽イオンITPにおいて、ターミネーターTの少なくとも一部は陽イオン性(正帯電した)化学種であり、後者の陰イオンITPの場合、ターミネーターTの少なくとも一部は陰イオン性(負帯電した)化学種である。
本発明のある実施態様において、ターミネーターTは、酸、塩基、塩、又は任意の化合物であってよく、これらは本発明のITP分離の実行に適した条件下で、少なくとも部分的に帯電されている。より好ましい実施態様において、ターミネーターTは緩衝化合物である。ターミネーターTは一般に、リーダーL、スペーサー化合物、又は被検体と比べ、ITPを実行するのに適したシステム内の全て(部分的に)帯電した化学種の最低の電気泳動移動度(EM)を有することは理解されなければならない。明白に、前述の化合物のひとつのEMを最低又は最高のEMとして規定する場合に、H+及びOH-のEMは考慮されない。電気泳動移動度EM(又はμe)は、以下:
μe=V/E
の粒子速度(V)と電界強度(E)の間の係数として定義される。
フリーフロー等速電気泳動の文脈において、本明細書において使用される用語「T媒体」は、ターミネーターT及び各々、少なくとも1種の強酸又は強塩基を含む媒体に関する。古典的(例えばキャピラリー)ITPにおいて使用されるターミネーター化合物は、それらの低い電気伝導度及び低い緩衝能のために、フリーフローITPには適していないことは理解されなければならない。
従って本発明の陰イオンITP分離を実行するのに適したT媒体は、ターミネーターTのEMは関心対象の被検体のEMよりも低いという条件で、ターミネーターTを含み、並びに加えて強塩基(例えばNaOH)を含む。任意にこの媒体は更に、添加剤を含んでよい。ターミネーターTは通常、緩衝酸から選択され、ここで該緩衝酸のpKaは、陽極のリーダー媒体の緩衝塩基のpKaよりも高いことが好ましい。T媒体へ添加された強塩基の濃度は、好ましくは、同じ媒体内の緩衝酸の濃度よりも低いが、望ましい高伝導度を実現するために高度のイオン化を確実にするのに十分な程高い。好ましくは、強塩基は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である。より好ましい実施態様において、強塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)である。
当業者は、ターミネーターTは、好ましい分離条件に従い選択されることを理解するであろう。好ましい実施態様において、T媒体のpHは、TのpKaとほぼ等しく、すなわちターミネーターTは好ましくは、そのpKa値が、T媒体の好適な緩衝能を実現するために、意図されたT媒体のpHと合致するように選択される。従って、該強塩基の濃度は、T媒体内のTの濃度よりも係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、より好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さいことが好ましい。更により好ましい実施態様において、該強塩基の濃度は、該ターミネーターTの最大緩衝能を実現するために、T媒体内のTの濃度よりも係数約2だけより小さい。
HEPES及びモルホリノエタノールのような、ITPを実行するのに適したT化合物は一般に当業者に公知である。本明細書に示された技術と一緒に、当業者は、本発明のITP分離を実行するのに好適なターミネーターTを選択することができるであろう。
本発明の陽イオンITPを実行するのに適したT媒体は、ターミネーターT、及びギ酸、塩酸又は硫酸などの強酸を含むであろう。任意にT媒体は、添加剤を更に含んでよい。好ましい実施態様において、T媒体のpHは、TのpKaとほぼ等しく、すなわちターミネーターTは、そのpKaが、T媒体の好適な緩衝能を実現するために意図されたT媒体のpHと合致するように選択されることが好ましい。酸性T媒体に添加される強酸の濃度は、同じ媒体中の緩衝塩基の濃度よりも低いが、所望の高伝導度を実現するために高度のイオン化を確実にするのに十分な程高いことが好ましい。T媒体の良好な緩衝能を実現するために、該強酸の濃度は、T媒体内のTの濃度よりも係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、より好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さいことが最も好ましい。更により好ましい実施態様において、該強酸の濃度は、該ターミネーターTの最大緩衝能を実現するために、T媒体内のTの濃度よりも係数約2だけより小さい。
再度当業者は、本発明のITP分離を実行するのに適したターミネーターTを選択する方法を理解するであろう。本発明のT媒体及び希釈されたT媒体の各々の有利な特徴のために、これらは特にFF ITP分離に有用である。
本明細書において使用される用語「希釈されたT媒体」は、媒体全体が希釈されている「T媒体」に関連しているか、又はターミネーターT及び強塩基もしくは強酸が各々、「T媒体」の緩衝液システムの濃度と比べ希釈されている媒体に関連してよいが、抗酸化剤、増粘剤などの更なる添加剤が、対応するT媒体中と同じ濃度で希釈されたT媒体中に存在してもよく、又は任意に別の比で希釈されてもよい。
好ましい実施態様において、希釈されたT媒体中のTの濃度は、隣接するT媒体中のTの濃度よりも係数約2〜係数20、好ましくは係数約3〜係数10、より好ましくは係数約5〜係数8だけより小さい。
希釈されたT媒体の使用は、本明細書において規定されたような有効な分離ゾーンと隣接する境界を提供し、これは隣接する媒体類の電気伝導度の突然の増加を避けるという利点を提供する。従って例えば先行技術の方法において認められるような異なる媒体類又は異なる電界強度により引き起こされる熱作用などの、異なるゾーン間の攪乱は、本明細書に説明されたような希釈されたT媒体を使用することにより最小化することができる。
用語「スペーサーS媒体」は、化合物が、関心対象の被検体(類)のEMにほぼ相当するEMを有するような化合物又は化合物の組成物に関する。そのようなスペーサー化合物及びそれらの電気泳動移動度は一般に、当該技術分野において公知であり、かつ当業者は、分離の問題点に応じて好適なスペーサー化合物を選択する方法を知っているであろう。スペーサーとして使用することができるいくつかの例証的化合物は、ACES、酢酸、アスパラギン酸、α−ヒドロキシ−酪酸、EPPS、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、HEPES、乳酸、MES、MOPSO、MOPS、ピコリン酸、ピバル酸、POPSO、プロピオン酸、ピリジンスルホン酸などである。一般に分離される被検体と相溶性がある任意の化学物質が、EM値が典型的には約5〜40×10-9×m2×V-1×sec-1の範囲内である場合に使用されるが、スペーサーのEM値は常に実際の関心対象の被検体(類)のEMに左右されることは理解されるであろう。
分離の問題点の必要要件に、pH及び/又は電気伝導度のようなS媒体のある化学種の特性を適合させることが一般に好ましい。従って一部の好ましい実施態様において、(強)酸又は(強)塩基を添加し、S媒体を意図された分離条件に適合させることができる。任意にS媒体は、更なる添加剤を含有してよい。
本明細書において使用される用語「リーダー電解質」又は「リーダー」は、帯電した化学種(イオン)、並びに該帯電した化学種が、例えば該化合物の帯電した化学種及びその対イオンへの解離によるか又はプロトン化/脱プロトン化に由来する化合物をいう。定義によりリーダーLは、ITPを行うのに適したシステム内の全ての帯電した化学種で最高のEMを有し、すなわちそのEMは、ターミネーター化学種、任意のスペーサー化合物、及び関心対象の被検体のEMよりもより高いであろう。明白に先に言及されているように、H+及びOH-のEMは、分離チャンバー内の最低又は最高のEMとして前述の化合物のひとつのEMを規定する場合には、考慮されない。
ターミネーターTの場合のように、関心対象の被検体に加え、リーダーイオン、スペーサーイオン及びターミネーターイオンが陰極に向かって移動する陽イオンITPと、溶液中の化学種が陽極に向かって移動する陰イオンITPの間は区別されなければならない。従って陽イオンITPにおいて、リーダーLは陽イオンであり、陰イオンITPにおいて、リーダーLは陰イオンである。好ましくはリーダーLは、強塩基又は強酸に由来するが、高いEMを持つイオンを提供する塩のような他の給源も、本発明の状況において可能である。
本明細書において使用される用語「L媒体」は、一般に、リーダーL(但しリーダーLのEMは、関心対象の被検体及びスペーサーのEMよりも高いことを条件とする)及び該リーダーLの対イオンを含む媒体に関する。
陰イオンITP分離のひとつの好ましい実施態様において、リーダーLは、HCl又はH2SO4などの強酸に由来し、すなわちリーダーLは、塩化物イオン又は硫酸イオンである。一般に、各強酸又は本発明のITP分離の作業条件下で負帯電したイオンを生じる化合物は、陰イオンリーダー電解質として作用するのに適している。
陽イオンITP分離の好ましい実施態様において、リーダーLは、アルカリ水酸化物又はアルカリ土類水酸化物などの強塩基に由来する。リーダーLが由来する給源に関わりなく、陽イオンITP分離のリーダーLは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンであることが好ましい。最も好ましくは、例えば生物学的試料に関して、リーダーLは、ナトリウム(Na+)又はカリウム(K+)である。
前述の強酸又は強塩基に加え、本発明のL媒体は加えて、緩衝化合物を含有することが最も好ましい。この緩衝化合物は、リーダー電解質が強塩基である(すなわち陽イオンITP分離)場合は、緩衝酸であってよく、もしくはリーダー電解質が強酸である(すなわち陰イオンITP分離)である場合は、緩衝塩基であってよい。該緩衝化合物は、必要ならば、リーダーゾーンのpHを、本質的にSゾーンのpH値に調節するために適している。この緩衝化合物は、好ましいpH及び/又は関心対象の被検体の生物活性を保存する能力のような好ましい分離条件に従い選択されることは理解されなければならない。任意にリーダー媒体は、更なる添加剤を含有してもよい。
本発明のある好ましい実施態様において、緩衝化合物の濃度は、該強酸のプロトン又はLが由来する該強塩基から誘導された水酸化物イオンの濃度よりも、係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、及びより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより高い。特に好ましい実施態様において、緩衝化合物の濃度は、各々、該強酸のプロトン又は該塩基の水酸化物イオンの濃度よりも、係数約2だけより高い。例えば、緩衝塩基の濃度は、塩化物イオンがLである場合は、HClの濃度の2倍であるか、又は緩衝塩基の濃度は、H2SO4の濃度(硫酸イオンがLである場合)の4倍である。
リーダー電解質(リーダーL及びその対イオン)の濃度は、本発明のITP分離を実行するために必要な好適とされる高い電気伝導度を確実にするように選択されることが好ましいことは、更に理解されなければならない。
本明細書において使用される用語「緩衝化合物」は、各々、本発明のITP分離を実行するのに適しているpHとほぼ等しいpKaを有する弱酸又は弱塩基などの化合物として理解される。従って、用語「緩衝酸」及び「緩衝塩基」は、好ましくは、各々、弱酸又は弱塩基を含み、ここでpKa値は、ITP分離の試料及び分離媒体のpHとほぼ等しい。
従って本発明のひとつの好ましい実施態様において、L媒体のpHは、ITP分離が陰イオンITP分離である場合、緩衝塩基のpKa値とほぼ等しいか、又はITP分離が陽イオンITP分離である場合、緩衝酸のpKa値とほぼ等しい。
本発明のL媒体内のLの好ましい濃度は、最大でも約50mM、最大でも約10mM、最大でも約5mM、最大でも約3mM、最大でも約2mM、及び最大でも約1mMからなる群より選択されるが、これらに限定されるものではない。Lの濃度、従ってリーダー電解質の濃度の上限は、事実上、リーダー媒体内の緩衝化合物の有限の溶解度の観点から制限されることが多く、その理由は該緩衝化合物は好ましくは、リーダー電解質の濃度と比べL媒体のより高い濃度を有し、並びに以下に説明されるようにL安定化媒体において増加さえすることがあるからである。
本発明の新規方法は、少なくとも1種のL安定化媒体の使用を含む。従って用語「L安定化媒体」は、FF ITP分離を実行するのに適した器具内に、L安定化ゾーンを形成することが可能な媒体をいう。その高い電気伝導度により、L安定化媒体は本質的に、被検体及びリーダーLが、FF ITP分離時に移動し電極と接触することを防ぐ。
L媒体と比較してL安定化媒体内の増大した伝導度は、例えば帯電した化学種Iの添加により実現される(ここでIは、Lが負帯電されている場合には、負帯電し、その逆もまた同様である)。帯電した化学種Iは、典型的にはLに使用されるものと同じ対イオンであるべきその対イオンと一緒に提供され、すなわちこの対イオンは典型的には緩衝化合物に由来する。あるいは、L安定化媒体内の伝導度の増加は、緩衝化合物の濃度の増加によるか、又は隣接するL媒体内のLの濃度と比べL安定化媒体内の各々それからLが由来する強酸もしくは強塩基の濃度の増加により、達成される。
本発明の状況において理解される帯電した化学種Iは、LのEMとほぼ等しいEMを有さなければならない。しかしIのEMは、関心対象の被検体のEMよりも依然より高いことを条件として、LのEMよりも低いことができることは理解されるであろう。従って本発明の一部の実施態様において、IのEMは、LのEMの少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%であり、最も好ましくはLのEMとほぼ等しい。L/Iシステムの非限定的例は、L媒体内のリーダーLが塩化物イオンであり、及びL安定化媒体内の帯電した化学種Iがギ酸イオン(formiate)である。
L及び少なくとも第二の帯電した化学種Iの組み合わせが、L安定化媒体の伝導度の増加に適していることも理解される。
本発明の好ましい一実施態様において、L安定化媒体は、リーダーLを含まない。このような媒体において、Lは、完全にIと置き換えられており、更にIの濃度は、隣接するL媒体内のLの濃度に関して増加する。
先に説明したように、L安定化媒体内の増加する伝導度は、例えばLの濃度の増加及び/又は帯電した化学種Iの添加により達成されてよい。
従って本発明の好ましい実施態様において、L安定化媒体内のLの濃度、Iの濃度、又はL及びIの組み合わせの濃度は、隣接するL媒体内のLの濃度よりも、少なくとも係数2、少なくとも係数3、好ましくは少なくとも係数5、より好ましくは少なくとも係数10、又は少なくとも係数15、又は更には少なくとも係数20だけより高い。
L安定化媒体の典型的伝導度は、電気泳動チャンバーの分離ゾーン内のLゾーンを形成する隣接するL媒体の伝導度と比べ、少なくとも係数2、3、5、10、15、20、30だけ又は更にはそれよりも高く増加され得る。一部の実施態様において、L安定化媒体の伝導度は、隣接するL媒体の伝導度よりも係数約15、又は更には係数20だけより高いことは利点である。
L安定化媒体の伝導度は一般に、L媒体の伝導度よりも高いが、L安定化媒体のpHは、隣のL媒体のpHよりも高いか、ほぼ等しいか、又はより低くてよい。典型的には、L安定化媒体のpHは、L媒体のpHと本質的に同じであるように適合される。任意にL安定化媒体は、更に添加剤を含んでよい。
特にFF ITPについて、1種又は複数の本質的に同じ媒体は、本発明の「ゾーン」を形成することができ、すなわち電気泳動チャンバー内のゾーンは、1個の媒体注入口を通り該器具へ導入される1種の媒体によるか、もしくは1個よりも多い媒体注入口を通り該器具へ導入される媒体により、形成することができるか、又はこれは、複数の本質的に同様の媒体により形成することができる。本明細書において使用される用語「本質的に同様の媒体」とは、複数の媒体の状況において、各媒体内の全ての化合物の濃度が、単に測定誤差又は希釈誤差により異なっていると理解されるべきである。従ってITP実験の開始時の(すなわち電気泳動分離の開始時の)ゾーンは、分離チャンバー内のゾーンを通じて本質的に同じ濃度で本質的に同じ化合物を含むことにより規定される。
2種の異なるゾーンが接触した後、各ゾーンの化合物の「配合」又は混合が、該ゾーンの境界で生じることは理解されるであろう。本発明に従い、Tゾーン及び希釈されたTゾーンは各々、従って少なくとも主にターミネーターTを含み、Sゾーンは、少なくとも主にスペーサーSを含み、Lゾーンは、少なくとも主にリーダーLを含み、及びL安定化ゾーンは、少なくとも主にリーダーL、帯電した化学種Iもしくはそれらの任意の組み合わせを含むであろう。この文脈で使用される「主に」とは、少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、又は更には95%も意味し、媒体(すなわち媒体に使用される溶媒、典型的には水に加え)中に存在する化合物L、T及びSの重量百分率を意味する。
ゾーンの規定及び境界は、ITP−関連成分T、S及びLを意味することは理解されるであろう。緩衝化合物、増粘剤などの更なる化合物は、任意の好適な濃度で各ゾーンに独立して存在してよい。
更に本発明のゾーンは、該ゾーンの化合物が電界に供される場合、すなわち新規ゾーンが確立される場合、いくつかのサブ−ゾーンに分割されてよい。例えばフリーフローITPにおけるそのようなゾーンの断片化は、図2に図示されている。図2aは、S&Sゾーン内に均一に分布されている3種の異なるスペーサーS1、S2及びS3並びに2種の被検体A1及びA2を含むスペーサー及び試料媒体からなるS&Sゾーンを示している。電界に供される場合、5つの新たなゾーンが形成され、ここで各ゾーンは独立して、S1、S2、S3、A1及びA2の各EMに応じて、各々、主にS1、主にA1、主にS2、主にA2及び主にS3を含む。
用語「分離チャンバー」及び「電気泳動チャンバー」は、本明細書において区別なく使用され、典型的には2個の電極を含むチャンバーに関し、ここでこれらの電極間のゾーンは、「分離ゾーン」と称される。フリーフロー電気泳動に関して、媒体流れ方向は、例えば図3、5及び7に例示されたように、典型的には一般に平行な電極に対し垂直である。例えばキャピラリー電気泳動に関連するもののような別の実施態様において、分離チャンバーは、媒体流れ方向を一般に2つの電極の一方へ向けることができる。任意に、別の企図された実施態様における電極は、他方に対し平行である必要はない。
本明細書において使用される用語「分離ゾーン」は、本発明に従いITP分離を実行するのに適した器具の電極間のゾーンをいう。このような器具は、例えばフリーフロー電気泳動操作、手順又は方法を、各々、連続フリーフロー電気泳動に類似したもしくは同等の配置で、又は任意にキャピラリー電気泳動に類似したもしくは同等の配置で、連続又は非連続様式で、実行するのに適している。典型的には、分離ゾーンは、Tゾーン、希釈されたTゾーン、Sゾーン、Lゾーン及びL安定化ゾーンを備える。
本明細書において使用される用語「有効な分離ゾーン」は、Sゾーン及びLゾーンにより形成された本発明に従いITP法を実行するのに適した器具の電極間のゾーンをいう。スペーサーイオン、被検体イオン及びリーダーイオンは、ITP分離の間に陽極又は陰極に向かい移動するので、有効な分離ゾーンは、図4に図示されたように、その位置及び幅を変化することは理解されるであろう。
本明細書において使用される用語「分離媒体」は、分離ゾーンの一部、すなわちT媒体、希釈されたT媒体、S媒体、L媒体及び/又はL安定化媒体を形成する、任意の媒体を意味する。
本明細書に説明された実施態様は概して任意の等速電気泳動技術に関連しているが、ある特に好ましい実施態様において、本発明の方法は、フリーフロー等速電気泳動として実行されることは理解されるであろう。従ってフリーフロー等速電気泳動(FF ITP)に具体的に関連している更なる本発明の実施態様が、以下により詳細に説明される。
FF ITP分離
本発明のひとつの態様は、例えばフリーフロー等速電気泳動(FF ITP)による、少なくとも1種の関心対象の被検体の被検体組成物からの分離のための新規方法に関し、この方法は:
少なくとも1種のT媒体により形成された、ターミネーター電解質(T)ゾーン;及び
少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成された、希釈されたTゾーン;及び
少なくとも1種のL媒体により形成された、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
少なくとも1種のL安定化媒体により形成された、L安定化ゾーン:を備え、
並びに、任意に少なくとも1種のS媒体により形成されたスペーサー(S)ゾーンを更に備え、
少なくとも1個の電極が陰極であり、及び少なくとも1個の電極が陽極である電極のセット間に分離ゾーンを、電気泳動チャンバー内に形成することを含む。
被検体の混合物から分離されるべき関心対象の被検体の電気泳動移動度(EM)は、実験が成功するために一般にわかっていなければならない。従って本発明の方法を実行する前に、被検体(又は分離媒体において使用される任意の他の化合物)のEMを決定することが必要であることがある。当業者は概して、当該技術分野において利用可能な十分確立された方法により、該被検体又は関心対象の化合物のEMを確定する方法を知っているであろう。あるいは、そのEMは、本明細書に説明された方法により実験的に決定することもできる。
一般にITP分離に供される試料は、異なる媒体間で平衡状態が確立される前に、スペーサー媒体と一緒に導入される。しかし新規方法がFF ITPとして実行される場合、試料は、例えば、異なる媒体の平衡状態が既に確立された後で、様々な媒体の導入ポイントの下流で分離チャンバーへ導入されることがある。これに関して、試料は一般に、媒体注入口と実際の分離領域(すなわち、電界が電極間に存在する所)の間の位置で導入されるか、又は該電界内に直接配置することができることは理解されるであろう。
加えて、好ましくはFF ITPに関して、試料は、本発明の分離ゾーン内の異なるゾーンの配列に応じ、バルク流れ方向に垂直な異なる位置で導入することができることが注目される。従って試料は、Sゾーンへ導入されてよいか、又は代わりにSゾーンと希釈されたT電解質ゾーンの間に導入されてもよい。試料は、希釈されたTゾーンへ、SゾーンとLゾーンの間へ、又はLゾーンへ導入されてもよい。
更に、本発明の好ましい一実施態様において、関心対象の被検体を含有する試料は、FFEチャンバーへ、分離チャンバー内の分離媒体の導入ポイントの下流にある距離をおいて導入される。別の表現をすると、試料は、スペーサーと一緒には導入されず、むしろ異なる媒体の平衡状態が既に確立された後に導入される。ある実施態様において、試料は、実際の分離領域(すなわち電界が電極間に存在する場所)に導入される。
しかし好ましくは、試料は、FF ITP分離を実行するのに適した器具の、媒体の注入口と、電極間の実際の分離領域の間の位置に導入される。
被検体
本発明のITP法は、分離ゾーン内で、又は分離ゾーンからの被検体の溶出後、並びに任意に少なくとも1種の被検体の分離チャンバーからの排出、及び任意に1つ又は複数の画分中の少なくとも1種の関心対象の被検体の回収後のいずれかで、少なくとも1種の関心対象の被検体を分析するために適している。
本明細書において使用される用語「分析する」は、関心対象の被検体の検出、定量、試験又はいずれか他の好適な検査を含むことが意図されている。
一部の実施態様において、少なくとも関心対象の被検体は、例えばUV/VIS−又は蛍光法、伝導度検出、ラマン分光法、放射能測定、パルスアンペロメトリック法、円偏光二色法、屈折率測定、IR−分光法又はそれらの任意の組み合わせにより、分離ゾーン内で検出され/分析され得ることが好ましい。別の実施態様において、少なくとも1種の関心対象の被検体は、分離ゾーンから溶出された後に、同じ技術により分析することができる。
本発明の状況において、試料は、FF ITPを含む等速電気泳動により、分画されてよい。分画された試料とは、試料中の様々な被検体がITP分離の間に分離され、かつその結果試料がITP分離後いくつかの画分に分割され得るような試料を意味する。例えば、FF ITPに関する実施態様において、当業者は、複数の収集流出口を通り、FF ITPに適した器具の分離チャンバーを出、かつ一般に任意の好適な型の個別の収集容器(例えば、96ウェルプレート、及び時には異なるサイズのプレート、例えば144、288、576又はそれよりも多いウェルなど)の個々のチューブを通り導かれる、個々の画分を収集又は回収する方法を理解するであろう。ITP分離に供される試料の少なくとも一部は、該電気泳動分離の後、1つ又は2つ以上の画分で収集されることが理解される。
ある実施態様において、関心対象の被検体/被検体類のみではなく、関心対象の被検体(類)に加え少なくとも1種の更なるもしくは複数の更なる被検体をも収集することは適しているであろう。従って、該被検体/被検体類は分析されるかもしくはそうでなければ下流の適用において使用されるかどうかに関わりなく、これ/これらは、1つ又は複数の画分でITP分離実験から回収される。
これに関して、可能性のある下流の分析は、(更なる)フリーフロー電気泳動、ゲル電気泳動、1D−及び2D−PAGE、MS、MALDI MS、ESI MS、SELDI MS、LC−MS(/MS)、MALDI−TOF−MS(/MS)、ELISA、IR−分光法、UV−分光法、ラマン分光法、HPLC、エドマン分解配列決定、NMR分光法、表面プラスモン共鳴、放射能測定、パルスアンペロメトリック法、屈折率測定、X−線回折、核酸配列決定、電気ブロット法、アミノ酸配列決定、フローサイトメトリー、伝導度検出、円偏光二色法、活性試験及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるが、これらに限定されるものではない。
できる限り少ない分離緩衝液を含むただ1つの画分で関心対象の被検体を回収することが、一般に最も好ましく、すなわち、関心対象の被検体は、本発明の方法を実行するのに適した器具のただひとつの流出口を通り溶出することが最も好ましい。例えば、本発明の方法を実行するのに適したFFE器具が標準の96流出口を有する場合、関心対象の被検体は、単に1個の流出口を通り溶出することが最も好ましいが、関心対象の被検体は、分離ゾーンから溶出され、かつ2、3個もしくはそれよりも多い流出口を通り排出される、すなわち、これは2個以上の画分中に存在してもよい。別の本発明の実施態様において、関心対象の被検体は、分離ゾーンから溶出し、かつ単独の画分内に収集されることなく、直ちに引き続き分析されることが好ましい。
ITPにおいて、電極間の分離ゾーン内の(任意の)Sゾーン及びLゾーンにより形成される有効分離ゾーンは、最適な分離を可能にするために、できる限り幅広(FF ITP分離の場合)又は長い(キャピラリーITPの場合)であることが一般に好ましい。それにもかかわらず、特にFF ITPにおいて、本発明に従い少なくとも本発明のT及び希釈されたTゾーンが存在しなければならないので、分離ゾーンの全体の幅/長さを超えて有効分離ゾーンが広がることはできない。
本明細書において使用されるように、例えばFF ITPにおける特定のゾーン幅とは、典型的には、図3及び4に図示されたように、バルク媒体流れ方向に対し90°の角度のゾーン幅を意味する。同様に、キャピラリーITPのような分離法におけるゾーン長は、例えばキャピラリー又は他の好適な2個の電極間の容器におけるゾーンの長さである。従って本発明のゾーンの幅/長に言及する場合に、用語「幅」及び「長さ」は、本明細書において区別なく使用される。
好ましい一実施態様において、電気泳動分離の開始時の有効分離ゾーンの幅は、(電極?)間の分離ゾーン全体の幅の45%と等しいか又はそれよりも大きい、60%よりも大きい、75%よりも大きい、80%よりも大きい、もしくは90%よりも大きい。
別の本発明の好ましい実施態様において、Sゾーン及びLゾーンは、分離ゾーン内に有効分離ゾーンを形成し、並びに電気泳動分離開始時の該Lゾーンの幅は、該隣接するSゾーンの幅よりも少なくとも係数5、少なくとも係数8、少なくとも係数9、少なくとも係数10、少なくとも係数15、又は更に少なくとも係数20だけより広い。
更に別の好ましい実施態様において、Sゾーンの幅は、電気泳動分離開始時の希釈されたTゾーンの幅と本質的に類似している。最適な分離結果を得るためには、ITP分離を実行するのに適した器具へ、小さい幅を有するSゾーンを導入することが好ましい。
各々できる限り小さい幅を有する、その結果本質的に等しい、希釈されたTゾーン及び(任意の)Sゾーンを作製することが好ましいが、これらのゾーンの幅は、互いに、係数0.1〜10、より好ましくは係数0.2〜5、又は更には係数0.3〜3だけ変動することができる。
一部の実施態様、特にFF ITPにおいて、電気泳動分離の開始時の電極と希釈されたTゾーンの間のTゾーンの幅が、希釈されたTゾーンと隣接するSゾーンの一緒にした幅と少なくともほぼ同じであるか、又は該一緒にした幅よりも少なくとも係数約1.1、少なくとも係数約1.5、もしくは少なくとも係数2だけより広いことが更に好ましい。
被検体、例えば細胞小器官のような繊細な被検体を分離する場合、本発明の異なるゾーンを形成する様々な媒体は、例えば被検体の完全性について必要とされる明確なpH値とされることが推奨される。従って好ましい本発明の一実施態様において、希釈されたT媒体のpHは、T媒体のpHとほぼ等しい。
溶液のpHは、緩衝液システムの希釈時にわずかに変化してよいか、又はそのpHは、2種の類似した緩衝媒体が平行して作製される場合にわずかに変動してよいことは理解されるであろう。更に、T媒体中及び希釈されたT媒体中に同じ濃度で存在する添加剤(その緩衝液システムは希釈されたT媒体中ではより低い濃度で存在するにもかかわらず)も、希釈されないT媒体と比べ、希釈された媒体のpHに影響を及ぼし得る。
可能性のある様々なpH値の理由とは関わりなく、そのpH差は、1pH単位を超えないことが一般に好ましい。好ましくはこの差は、0.5pH単位を超えず、より好ましくはこれは0.2pH単位を超えず、最も好ましくは、これは本質的に全く変化しない、すなわちその差は、最大で0.1pH単位でなければならない。
分離ゾーンの様々なゾーンを通じて本質的に一定のpHが好ましいが、このpH値は更に、T媒体からL媒体へわずかに変化してよい。
従って別の好ましい実施態様において、任意のS媒体のpHは、隣接する希釈されたT媒体のpHと隣接するL媒体のpHの間である。このpHは、ITP分離が陰イオン性ITP分離である場合は、希釈されたT媒体からL媒体へ低下し、並びにITP分離が陽イオンITP分離である場合は、その逆に上昇することは注目される。一般に希釈されたTゾーンを形成する希釈されたT媒体のpHと、Lゾーンを形成するL媒体のpHの間の最大pH差(ここで、Sゾーンを形成し、かつ希釈されたTとLゾーンの間に配置されたS媒体のpHは、これら2つのpH値の間である)は、2pH単位未満、好ましくは1pH単位未満、より好ましくは0.5pH単位未満、最も好ましくは0.2pH単位未満でなければならない。L安定化ゾーンを形成するL安定化媒体のpHも、Lゾーンを形成するL媒体のpHと本質的に同じであることが好ましいが、それにもかかわらずこれら2つのpH値は、実際には異なることがある。希釈されたT媒体のpHは、T媒体のpHとほぼ等しいが、ここでも、これら2つの媒体間でそのpHが異なる場合であっても、良好な結果が達成され得ることも好ましい。
更に別の好ましい実施態様において、分離ゾーン内の異なるゾーンの伝導度は、その分離の高い分解を確実にするために、互いに明確な関係を有さなければならない。
従って別の実施態様において、希釈されたT媒体の伝導度は、隣接するS媒体の伝導度とほぼ等しい。有効な分離ゾーンを形成する2つのゾーン間の境界に明確な伝導度段階が存在しないことは、例えば、電界の攪乱、又は示差的加熱により引き起こされる作用を低下するので、ほぼ等しい伝導度は有利である。
ほぼ等しい伝導度を実現するためには、いくつかの方法があることは理解されるであろう。例えば、緩衝化合物に由来するリーダーL及びその対イオンの濃度、並びに緩衝化合物の濃度は、Lゾーンの伝導度が、任意に存在するSゾーンの伝導度と本質的に同等であるように、適合される。あるいは、異なるスペーサーの濃度は、Sゾーンを形成するS媒体の伝導度が、隣接するLゾーンと同じ伝導度を有するように調節されるか、又は隣接するLゾーンの伝導度とほぼ等しい伝導度を実現するために、強塩基もしくは強酸をS媒体へ導入することができる。
異なる媒体又はゾーンの伝導度と組み合わせて使用される用語「ほぼ等しい」は、各々、最大でも10%、又はより好ましくは最大でも5%の、2つの隣接するゾーン間の伝導度の差を意味することが好ましい(より高い伝導度を基本とする)。
更に別の実施態様において、S媒体の伝導度は、先に説明されたものと同じ原理を用い、隣接するL媒体の伝導度とほぼ等しいように調節される。
従ってある特に好ましい実施態様は、希釈されたT媒体、S媒体及びL媒体の伝導度が、全てほぼ等しいような本発明のITP法に関する。
フリーフロー電気泳動に関して、多くの操作モードが、当業者に公知であり、かつ本発明の状況において企図されている。従って本発明の新規方法は、以下により詳細に説明される全て公知のFFE操作モードに従い実行されてよい。
例えば、FFE器具の陽極と陰極の間に電界が印加されながら、試料及び分離媒体は、連続して流出口へ駆動される(「連続モード」FFE)。FFEの状況における連続モードは、注入工程に加え分離工程が、連続しかつ同時に起こることを意味すると理解されるべきである。本発明の分離法では、媒体及び被検体が、そこで異なる化学種がそれらの電気泳動移動度(ITP)に従い分離される電気泳動チャンバーを通過する間に、電気泳動分離が起こる。連続モードFFEは、いくつかの独立した「試行」を実行することを必要とせずに、被検体の連続注入及び回収が可能である(1回の試行は、試料の注入、分離及び引き続きの収集及び/又は検出の配列として理解される)。連続モードFFEは、分離時間を延長するために、被検体が電極間の分離スペースを通過する間に、バルク流量が初期バルク流量と比べ低下される(しかし停止しない)ような分離技術を含むことは理解されるであろう。しかしこの場合、バルク流量の低下は、限定量の試料を使用する場合にのみ、意味をなすので、真の連続モードと称することはできない。
FFE適用と結びつけていわゆる「インターバルモード」として公知である別のFFE操作モードも、当該技術分野において説明されており、本明細書において同様に企図されている。例えば非連続(すなわちインターバル)デフレクション電気泳動のプロセスが、米国特許US 6,328,868に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。この特許において、試料及び分離媒体の両方が電気泳動チャンバーへ導入され、その後ゾーン電気泳動、等速電気泳動、又は等電点電気泳動などの電気泳動モードを用いて、分離され、その後最終的に分画流出口を通ってチャンバーから放出される。US 6,328,868の実施態様は、チャンバーの注入口末端から流出口末端へ向かい移動する、単方向である分離媒体及び試料の動きを説明している。この方向は、従来のキャピラリー電気泳動とは異なり、縦長の電極の方向と同じである。例えば特許US 6,328,868に開示された静的インターバルモードにおいて、ポンプ又はいくつかの他の流体移動(displacement)要素により引き起こされた電極間の試料の加速は、電界がオフの場合又は少なくとも電圧が電気泳動的移動に無効である場合、すなわち試料のどの部分にも有効な電界が供されない場合にのみ生じる。
別の表現をすると、このインターバルプロセスは、試料及び媒体が電気泳動器具の分離チャンバーへ導入される負荷相、それに続く分離を実現するために電界を印加しながら、試料を含有する媒体のバルク流れが保持される分離プロセスにより特徴付けられる。試料の分離/分画後、電界は停止されるか、又は無効であるように低下され、かつバルク流れは、分画された試料が流出口末端へ駆動され、引き続き例えばマイクロタイタープレートなどの好適な容器内で収集/検出されるように、再度作動される。
本明細書において使用されるFFEの状況におけるいわゆる周期的モード又は周期的インターバルモードは、国際出願PCT/EP2007/059010(米国特許仮出願第USSN 60/823,833号及び第USSN 60/883,260号の優先権を主張するものである)に開示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。要約すると、この周期的インターバルモードは、少なくとも1つの、かつ可能なら複数のバルク流れ方向の逆転により特徴付けられ、この間試料は、縦長の電極の間の電気泳動の電界内に保持される。静的インターバルモードとは対照的に、試料は、常に動き、これによりより高い電界強度が可能になり、その結果より良い(又はより迅速な)分離が可能になる。加えて、縦長の電極間の試料のバルク流れが逆転することにより、電界内の被検体の滞留時間がかなり増大し、これにより増大した分離時間及び/又はより高い分離効率及びより良い分解がもたらされる。縦長の電極と平行のいずれかの方向へのバルク流れの逆転(サイクルと称される)は、特定の状況において必要な限り頻繁に繰り返すことができるが、実践上の理由及び短時間のうちに分離を得るための要望は、典型的にはこのモードで実行されるサイクルの数を制限するであろう。
従って好ましい実施態様において、本発明のFF ITP分離は、連続モード、静的インターバルモード、又は周期的インターバルモードで操作されてよい。
加えて、同時係属の国際出願WO 2006/119001に更に詳細に開示されているように、向流媒体を使用し、FF ITPの分離条件を最適化することができ、この出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
キャピラリーITP分離
本発明の別の態様は、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離するための、キャピラリーITP法に関し、これは:
2個の電極及びそれらの間に介在された分離ゾーンを備え、ここで該分離ゾーンは、少なくとも:
L’ゾーンを形成する、リーダー電解質(L)媒体;及び
Sゾーンを形成する、スペーサー(S)媒体;及び
T’ゾーンを形成する、修飾されたターミネーター電解質(T’)媒体:により形成される、キャピラリー電気泳動分離を実行するのに適した器具を提供することを含む。
前記方法は、好ましくはキャピラリーITPに適しているが、他のITP法も、本明細書に説明された新規ITP分離法から恩恵があることは理解されるであろう。
典型的には、分離されるべき試料は、S媒体に沿って導入される。あるいは、該試料は、L媒体とS媒体の間、S媒体とT’媒体の間、又はT’媒体に沿って、キャピラリーへ導入することもできるが、後者の場合は好ましくない。
L’ゾーンを形成するリーダー電解質(L)媒体は、FF ITP分離に関して説明されたように、Lゾーンを形成するL媒体と同等である。キャピラリー内のL’ゾーンが、ただ1種のL媒体により形成されることを条件として、このL’ゾーンは、FF ITP分離時に形成されるLゾーンと本質的に等しいことは理解されるであろう。
キャピラリーITPの状況で使用されるスペーサー(S)媒体は一般に、本発明のFF ITP法に関して説明されたスペーサー(S)媒体と同等である。
修飾されたターミネーター電解質(T’)媒体は、T’媒体の伝導度は、キャピラリーITPのS媒体の伝導度と本質的に適合されることを条件として、FF ITP分離に関して先に説明されたようにT媒体と本質的に同等である。別の表現をすると、T及び強酸又は強塩基の濃度は各々、フリーフローITP分離の状況において説明された状態と比べ、希釈されたT媒体により類似しているであろう。
従って、本明細書において使用される用語「T’媒体」は、先に規定されたようなターミネーターT及び強酸又は強塩基を各々含有する媒体に関する。従って陰イオンキャピラリーITP分離を実行するのに適したT’媒体は、ターミネーターT及び強塩基(例えばNaOH)を含有する。任意にこの媒体は更に、添加剤を含有してもよい。
当業者は、ターミネーターTは、好ましい分離条件に従い選択されなければならないことを理解するであろう。ターミネーターTは、酸、塩基、塩、又は任意の化合物であってよく、ここで該化合物の少なくともある画分は、本発明のITP分離を実行するのに適した条件下で正味の電荷を保持する。
より好ましい実施態様において、ターミネーターTは、緩衝化合物である。T’媒体のpHは有利なことに、TのpKa値とほぼ等しいように選択され、すなわちターミネーターTは、該T媒体の最適緩衝能が実現されるように、ターミネーターTのpKaがほぼ意図されたT’媒体のpHであるように選択されることが好ましい。
陰イオンキャピラリーITP分離のためのターミネーターTは通常、緩衝酸から選択され、ここで該緩衝酸のpKaは、陽極リーダー媒体内の緩衝塩基のpKaよりも高いことが好ましい。陰極T’媒体へ添加される強塩基の濃度は、同じ媒体中の緩衝酸の濃度よりも低いが、所望の高伝導度を達成するために、高度のイオン化を確実にするのに十分な程高いことが好ましい。好ましくはこの強塩基は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である。本発明の態様のある特に好ましい実施態様において、強塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)である。
前記強塩基の濃度は、T’媒体内のTの濃度よりも、係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、より好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さいことが、一般に好ましい。該Tの最適緩衝能を実現するためには、該強塩基の濃度が、T’媒体内のTの濃度よりも、係数約2だけより小さいことが更により好ましい。
一般にHEPES及びモルホリノエタノールなどのITPを実行するのに適したT化合物が、当業者に公知である。本明細書に提供された内容と共に、当業者は、本発明のキャピラリーITP分離を実行するのに好適なターミネーターTを選択することができるであろう。
従って、本発明の陽イオンITPを実行するのに適したT’媒体は、ターミネーターT、及びギ酸、塩酸又は硫酸などの強酸を含む。任意に、この媒体は更に添加剤を含んでよい。
好ましい実施態様において、T’媒体のpHは、TのpKaとほぼ等しい、すなわちターミネーターTは、そのpKaが、T’媒体の最適緩衝能を実現するためにほぼ意図されたT’媒体のpHであるように選択されることが好ましい。
陽極T’媒体に添加される強酸の濃度は、同じ媒体中の緩衝塩基の濃度よりも低いが、所望の高伝導度を達成するために、高度のイオン化を確実にするのに十分な程高いことが好ましい。T’媒体の良好な緩衝能を実現するために、該強酸の濃度は、T’媒体内のTの濃度よりも、係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、又はより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さいことが最も好ましい。更により好ましい実施態様において、該ターミネーターTの最大緩衝能を実現するためには、該強酸の濃度は、T媒体内のTの濃度よりも、係数約2だけより小さい。
再度当業者は、本発明のITP分離を実行するのに好適なターミネーターTを選択する方法を理解するであろう。本発明のT’媒体の有利な特性のために、該媒体は、キャピラリーITP法に特に有用であることが理解されるであろう。
キャピラリーITP分離において、関心対象の被検体は、例えば、UV/VIS−又は蛍光法により、分離キャピラリー内での「カラム上での」検出/分析により、検出/分析されてよいか、又はキャピラリーの末端での「カラム後」検出/分析が可能である。「カラム後」検出は、UV/VIS−又は蛍光法、伝導度検出、MS分析、ラマン分光法、放射能測定、パルスアンペロメトリック、円偏光二色法、及び屈折率測定からなる群より選択されるが、これらに限定されるものではない。更に、関心対象の被検体(類)は、任意に溶出され、少なくとも1種の関心対象の被検体は、1つ又は複数の画分に回収されてよい。下流の分析は、FF ITP分離に由来した画分に関して先に考察したもののように、少なくとも1種の画分と同等に行われてよい。
一般にキャピラリー電気泳動を実行するのに適したキャピラリーは、給源及び目的のバイアルに各々浸漬される。一部の好ましい実施態様において、給源チャンバーの電解質媒体は、その濃度が、T’媒体の濃度よりも少なくとも係数2、少なくとも係数3、好ましくは少なくとも係数5、より好ましくは少なくとも係数10、又は更には少なくとも係数15だけより高い濃縮されたT’媒体であり、及び/又は目的電解質媒体は、FF ITP分離の状況において本明細書に規定されたL安定化媒体である。
本明細書において言及されたキャピラリー電気泳動は、無担体(すなわちフリー溶液)、及び担体−ベースの(例えばゲル)の両方のキャピラリー電気泳動、特にキャピラリー等速電気泳動を含むことは理解されるであろう。
添加剤
本発明のITP法に適した分離媒体は、1種又は複数の添加剤を含んでよい。一般に、添加剤の数及び濃度は、最小に維持されなければならないが、しかしある種の被検体又は分離の問題点は、被検体の完全性を維持するか又は媒体の所望の特性(例えば、様々な分離媒体間の粘度の適合など)を実現するかのいずれかのための、追加の化合物の存在を必要とすることは理解されるであろう。
可能な添加剤は、他の酸及び/又は塩基、いわゆる「必須」の一価及び二価の陰イオン及び陽イオン、増粘剤、親和性リガンドなどから選択されることが好ましい。
本出願の意味において必須の一価及び二価の陰イオン及び陽イオンは、試料中の被検体の構造的及び/又は機能的完全性を維持するために必要とされ得るイオンである。そのような必須陰イオン及び陽イオンの例は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、Fe(II)イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、又はEDTAもしくはEGTAなどの錯化剤、又はアジドイオン(例えば、細菌汚染を避けるため)などを含むが、これらに限定されるものではない。
可能性のある酸及び塩基の例は、例えばS媒体の伝導度を増強するために、溶液中で完全に解離する、少量の強酸又は強塩基(例えば、NaOH、HClなど)を含む。
分離媒体中で通常使用される増粘剤は、ポリアルコール、例えばグリセロール又は様々なPEG類、親水性ポリマー、例えばHPMCなど、炭水化物、例えばショ糖、ヒアルロン酸などを含む。増粘剤は、試料と媒体の間もしくは異なる隣接する媒体の間の密度又は粘度の差異により作出される乱流を避けるために、分離媒体の粘度を、分離スペースへ導入される試料の粘度へ、又は分離チャンバー内の他の分離及び/もしくは安定化媒体類の粘度へ、適合するために必要とされることもある。
存在し得る追加の添加剤は、シクロデキストリンを含むある種のデキストリンなどのキラル選択剤、又はレクチンなどの親和性リガンドを含む。
場合によっては、溶液中の被検体の酸化を防止するために、還元剤を添加することが必要とされることがある。試料及び/又は分離媒体に添加することができる好適な還元剤は、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、ジチオスレイトール(DTT)、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム又はカリウムなどである。
任意の事象において、多くの前述の添加剤は電気的に帯電しているので、それらの濃度は、必要なだけ高く維持されるが、これらはITP実験時に電気泳動的に操作される分離スペース内で追加の化学種をもたらすので、同時に可能な限り低くなければならない。
キット
本明細書において企図されたターミネーター(T)媒体/希釈されたターミネーター(T)媒体及びリーダー(L)媒体は、単独で、又は代わりに、好適なL安定化媒体及びスペーサーS媒体と、各々一緒に選択され、調製されかつ使用されることは、当業者には明らかであろう。
従って、本発明の別の態様は、本明細書において説明される少なくとも1種の新規T媒体を含む、等速電気泳動(ITP)法を実行するためのキットに関する。好ましくは、このキットは、フリーフロー等速電気泳動により分離を実行するためのものである。
ITP分離を実行するためのキットは更に、該T媒体に加え、少なくとも1種の希釈されたT媒体を含んでよい。先に説明されたように、希釈されたT媒体は、単純な希釈によりT媒体に由来するか、又はこれは個別に調製されてもよく、かつ任意に様々な濃度の添加剤を更に含んでもよい。
本発明のこの態様の一実施態様において、キットは更に、個別の被検体の分離のために適合された、スペーサー混合物/スペーサー媒体を得るために組み合わされる、スペーサー(S)媒体、又は各種のスペーサーを備えてよい。当業者は、該被検体の他の被検体からの分離を補助するスペーサー混合物を得るために、関心対象の被検体の電気泳動移動度(EM)を考慮し、スペーサーを選択及び混合する方法を理解するであろう。
別の実施態様において、キットは更に、少なくとも1種のL媒体を含んでよい。本発明のL媒体が、好ましい。本発明のキットに含まれるL媒体は、S、T、希釈されたT又はL安定化ゾーンよりもはるかに広いLゾーンを形成するために使用されてよく、すなわち、Lゾーンは、複数の注入口を通じたL媒体の添加により形成されることが好ましいことは理解されるはずである。従って、L媒体は、送達されるT媒体の容積/量の少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、又は少なくとも14倍である容積/量で送達されることが好ましいことは理解されるであろう。
更に別の実施態様において、キットは更に、少なくとも1種のL安定化媒体を含んでよい。本発明において規定されたL安定化媒体が好ましい。L安定化媒体は、分離される被検体の電荷に応じて、陽極又は陰極L安定化媒体であることができることは理解されるであろう。
別の態様は、キャピラリーITP分離法の状況において先に規定されたような少なくともT’媒体を含む、本発明のキャピラリーITP分離を実行するためのキットに関する。
好ましい実施態様において、このようなキットは更に、L媒体、好ましくは本発明において規定されたようなL媒体を含む。
別の実施態様において、そのようなキットは、個別の被検体の分離のために適合された、スペーサー混合物/スペーサー媒体を得るために組み合わされる、スペーサーS媒体又は各種のスペーサーを更に含んでよい。当業者は、該被検体の他の被検体からの分離を補助するスペーサー混合物を得るために、関心対象の被検体のEMを考慮し、スペーサーを選択及び混合する方法を理解するであろう。
特に好ましい実施態様において、本発明のキットは更に、少なくとも1種又は複数の実験FF ITPプロトコール又はキャピラリーITPプロトコールの各々、及び任意にキット成分の貯蔵条件を説明する製品マニュアルを含むであろう。
別の好ましい実施態様において、キットは、少なくとも本発明のFF ITP分離に必要な全ての媒体、すなわち、T媒体、希釈されたT媒体、S媒体、L媒体及びL安定化媒体を、又は本発明のキャピラリーITPに必要なそのような媒体、すなわちT’媒体、S媒体及びL媒体を含むであろう。
前述の実施態様のいずれかにおいて、キットは、1種又は複数の本発明の媒体、更には向流媒体のような任意の追加媒体を、直ぐ使用される1種又は複数の水溶液の形で含んでよいか(すなわち、全ての成分は、FF ITP実験に望ましい濃度で存在する)、又はこれらは、それらの使用前に予め決められた量の溶媒で希釈される濃縮液(ストック溶液)の形で、1種又は複数の媒体を含んでよい。後者の場合、濃縮液は、そのまま使用する各溶液と比べ、1.5×、2×、2.5×、5×、10×、20×、25×、50×、75×、100×、150×、200×又は1000×より高い濃度を有してよい。
あるいは、本キットは、複数個、しかし好ましくは1個の容器内に、媒体の様々な成分を含有する、乾燥形又は凍結乾燥形で、1種又は複数の媒体を含んでよく、これはその後電気泳動分離プロセスにおいてそれを使用する前に、予め決められた量の溶媒により再構成される。
好ましくは、各媒体(T媒体、希釈されたT媒体、S媒体、L媒体及びL安定化媒体)は、個別の容器内に存在するが、ある状況においては、その他の組み合わせ及び包装が可能でありかつ有用であることは当業者には明らかであろう。例えば、T媒体及び希釈されたT媒体は、異なる濃度の成分を有することのみが異なることが先に言及されている。希釈されたT媒体の場合、これは、該T媒体の一部を希釈するために、T媒体及び空の容器を配送することが有益である。
本明細書において説明されている分離媒体及び安定化媒体の全ては、好ましいかどうかに関わらず、本発明のキットのいずれかの可能でかつ好適な組み合わせで含まれてよいことが、企図されている。
任意に、本発明のキットは更に、本発明の等速電気泳動の適用におけるキット成分の使用に関する説明書を含んでよい。
本発明のITP法を実行する器具
本発明の別の態様は、本発明の電気泳動法を実行するのに適した器具に関する。そのような器具は:
少なくとも1個の電極は陰極であり、及び少なくとも1個の電極は陽極である電極のセット、それらの間に介在された分離ゾーンを備える、電気泳動チャンバー:を備え、ここでこの器具は更に:
少なくとも1種のT媒体を含む、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
少なくとも1種の希釈されたT媒体を含む、希釈されたTゾーン;
少なくとも1種のL媒体を含む、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
少なくとも1種のL安定化媒体の、L安定化ゾーン:を形成するための手段を備える。
好ましい実施態様において、本器具は更に、少なくとも1種のS媒体により形成されるスペーサー(S)ゾーンを形成するための手段を備える。このスペーサー(S)ゾーンは好ましくは、希釈されたTゾーンとリーダー電解質(L)ゾーンの間に配置される。
このような器具は、例えばキャピラリー又はフリーフロー等速電気泳動分離などの、本発明の方法を実行するために特に適合されていることは理解されるであろう。
好ましい実施態様において、本器具は、ITPにより、少なくとも1種の関心対象の被検体の被検体組成物からの分離を実行するのに適している。この態様のある実施態様において、本器具は、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)による被検体の分離に適した、FFE器具である。
FF ITP法を行うために適合された器具の実施態様は、以下により詳細に説明される。
FF ITPを実行するための器具及びその構成要素
「古典的」FFEに適した器具は、図5に示されている。図5の試料注入口の位置は、S4であり、これは媒体注入口4の近傍に配置されている。従って、試料注入口S2は、媒体注入口2に配置されるであろう。
FFE適用において、本器具は典型的には、いくつかの媒体注入口を備え(例えば、N=7、8又は9個の注入口)、その結果電極間に分離ゾーンを形成するこれらの媒体は、最大N個の注入口を通じて導入することができる。FFEに適した器具に挿入することができる分離媒体の数は、典型的には2〜15種、好ましくは3〜12種、及び最も好ましくは4〜9種である。
「古典的」FFE器具の各媒体注入口の内側口径は、等しい。これらの媒体注入口は、電極間に位置づけられ、かつ互いに等距離を有する。更に図6に示されたような分離装置は、媒体注入口を互いに分離する分離アームを備える。
当該技術分野において公知の器具とは対照的に、本発明のFF ITP分離を実行するのに適した器具は、それを通り多数の媒体が流れることができる少なくとも1個の分離チャンバーを備え、かつそこで該チャンバー(類)は、それを通り例えば媒体がチャンバーへ導入される注入口を備え、そこで該媒体注入口は、互いに異なる内側口径及び距離を有する。
更に、本発明のFF ITP分離を実行するのに適した器具は、媒体注入口を互いに分離するための修飾された分離装置を備えてもよい。FF ITP分離を実行するのに適したそのような新規器具の非限定的概略図を、図7に示している。
本発明のある好ましい実施態様において、本発明のFF ITP分離を実行するのに適したFFE器具は、少なくとも5個の媒体注入口を有する。明白に、2個の隣接する媒体注入口の内側口径「d」(「a」注入口、図7の注入口2及び3を参照)は、その他の媒体注入口の内側口径「D」(「A」注入口)よりも小さい。一般に2個よりも多い「a」注入口が、FF ITP分離を実行するのに適した器具の電極間に存在してよいが、わずかに2個の隣接する「a」注入口が存在することが好ましい。非限定的例として、該2個の隣接する媒体注入口は、狭い希釈されたTゾーン及びSゾーンを形成することが好ましい、希釈されたT媒体及びS媒体を導入するために適している。この作用は更に、例えばいくつかの媒体注入口の間の距離を変動することにより、及び以下に考察されるような特別な分離装置を使用することにより、最適化することができる。
好ましくは、各「A」注入口の内側口径Dは、等しい。少なくとも1個の「A」注入口が、「a」注入口と各電極の間に位置することは更に好ましい。本発明の「a」注入口の内側口径dは、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8、好ましくは最大でも係数0.65、及びより好ましくは最大でも係数0.5であってよい。非限定的例として、電極と「a」注入口の間のそのような「A」注入口を、分離チャンバーへのT媒体の導入に使用することができる。
この注入口の数は、器具に応じて変動してよいが、「A」注入口の数は、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、又は最も好ましくは少なくとも6個である。1個の電極と「a」注入口の間の「A」注入口の数は、3個未満、好ましくは2個未満、最も好ましくは1個であることも、好ましい。
従って、特に好ましい実施態様において、1個の「A」注入口は、電極と2個の「a」注入口の間に位置づけられ、並びに2個の「a」注入口と他方の電極の間の「A」注入口の数は、少なくとも2個であるが、可能な限り多いことが好ましい。このような配列は、例えばT媒体(「A」注入口)、希釈されたT媒体(「a」注入口)、S媒体(「a」注入口)、少なくとも1種のL媒体(「A」注入口(複数))及びL安定化媒体(「A」注入口)を、分離チャンバーへ導入するのに適している。
更に、互いの「a」注入口間の距離は、「A」注入口対の間の距離と比べて、最大でも係数0.8、好ましくは最大でも係数0.65、より好ましくは最大でも係数0.5である。好ましくは、「a」注入口間の距離と「A」注入口間の距離の間の差は、該「a」及び「A」注入口の内側口径の差と相関しており、すなわち、「a」注入口間の距離は、「A」注入口間の距離と比べ、「A」注入口のDと比べた「a」注入口のdよりも、本質的に同じ係数だけ小さいことが好ましい。
別の実施態様において、本発明のFF ITP分離を実行するのに適した器具は、注入口を互いに分離する分離アームを備える。図7に図示したように、「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から分離する分離アームは、「A」注入口を互いに分離する分離アームよりも明白により長い。
好ましくは、「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から分離する分離アームは、「A」注入口を分離する分離アームよりも、独立して少なくとも係数1.5、好ましくは少なくとも係数1.8、及びより好ましくは少なくとも係数2だけより長い長さを有する。
好ましい実施態様において、「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から分離する分離アームは、本質的に等しい長さを有する。この状況において使用される「本質的に等しい長さ」とは、互いに独立して3個の分離アームの1個の長さが、残りの2個の分離アームの長さから最大でも係数0.1だけ異なることを意味する。
特に好ましい本発明の実施態様は、少なくとも1個の電極が陰極であり、及び少なくとも1個の電極が陽極である電極のセット、並びにそれらの間に介在した分離ゾーンを備える、電気泳動チャンバーを有する、FF ITP分離を実行するために適合されたFFE器具に関し、ここでこの器具は、それを通り媒体がチャンバーへ導入される少なくとも5個の注入口を備え、かつ更に該分離ゾーン内に:
少なくとも1種のT媒体を含む、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
少なくとも1種の希釈されたT媒体を含む、希釈されたTゾーン;
任意に、少なくとも1種のS媒体を含む、安定化(S)ゾーン;
少なくとも1種のL媒体を含む、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
少なくとも1種のL安定化媒体のL安定化ゾーン:
を形成する手段を備え、
ここで2個の隣接する「a」注入口は、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8の内側口径dを有し、及びここで少なくとも1個の「A」注入口は、該2個の「a」注入口と各電極の間に位置し;並びに、更にここで、該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、「A」注入口対の間の距離の最大でも係数0.8であり;並びに、該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、「a」注入口と「A」注入口の間の距離の最大でも係数0.8である。
別の好ましい実施態様において、本発明の器具は、該2個の「a」注入口を備え、ここで該「a」注入口の内側口径dは、「A」注入口の内側口径Dと比べ、該「A」注入口Dに対し最大でも係数0.65、好ましくは最大でも係数0.5である。
更に、本発明の器具は、注入口を互いに分離する分離アームを備える、分離装置を更に備えてよく、ここで該2個の隣接する「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から分離する分離アームは、該器具の「A」注入口を互いに分離する分離アームよりも、少なくとも係数1.5、好ましくは少なくとも係数1.8、より好ましくは少なくとも係数2だけより長い長さを独立して有する。
更に別の好ましい実施態様において、本発明の器具は、多数の「A」注入口を備えてよく、ここで該器具の1個の電極と該「a」注入口の間の「A」注入口の数は、少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、及び最も好ましくは少なくとも10個であり、並びに該器具の他方の電極と該2個の隣接する注入口の間の注入口の数は、4個以下、好ましくは2個以下、最も好ましくは1個である。
少なくとも1種の関心対象の被検体の被検体組成物からの分離を実現するために、本発明の器具を使用することにより、等速電気泳動法、特に本発明のフリーフロー等速電気泳動(FF ITP)法を行うことが、好ましい。
更に別の実施態様は:
少なくとも1個の電極が陰極であり、及び少なくとも1個の電極が陽極である電極のセット、並びにそれらの間に介在した分離ゾーンを備える、電気泳動チャンバーであり、ここで分離ゾーンは:
ターミネーター電解質(T)ゾーン;
希釈されたTゾーン;
リーダー電解質(L)ゾーン;及び
L安定化ゾーン:を備えるように構成されるものを含む、器具に関する。
好ましい実施態様において、該器具は加えて、スペーサーSゾーンを備える。前記スペーサーSゾーンは、最も好ましくは、希釈されたTゾーンとLゾーンの間に位置づけられる。
本発明のこの態様の好ましい実施態様において、該器具は、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離するために、構成される。
別の好ましい実施態様において、該器具は、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8である内側口径dを有する2個の隣接する「a」注入口を備えてよい。
更に別の好ましい実施態様において、少なくとも1個の「A」注入口は、該2個の「a」注入口と各電極の間に配置される。
この器具は更に、注入口を互いに分離する分離アームを含む、分離装置を備えてよく、ここで2個の隣接する「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から分離する分離アームは、「A」注入口を互いに分離する分離アームよりも少なくとも係数1.5だけ長い長さを独立して有する。
先に既に言及したように、本発明の電気泳動法に従い分離される試料は、分離チャンバーへ、その媒体注入口のひとつを通り該チャンバーへ導入される任意の分離媒体と一緒に導入されてよい。加えて、電気泳動法がフリーフロー電気泳動法である場合、該フリーフロー電気泳動法は、試料は、個別の専用の試料注入口を通り、該方法を実行するのに適したFFE器具へ導入されてよいという利点をもたらす。
例えば前述の器具のいずれかの電気泳動チャンバーへ導入された後、次に分離媒体内の試料中の様々な被検体が、電界の印加により分離されると同時に、FFE器具の流出口末端へ流体的に駆動される。個々の被検体は、複数の収集流出口を通り、分離チャンバーを出、かつ一般には個別のチューブを通り、いずれか好適な型の個別の収集容器へ導かれる。収集容器中で、被検体は、分離媒体及び向流媒体と一緒に収集される(使用される器具に応じて)。好適な分画/分離を提供するために、収集流出口のアレイの個別の収集流出口の間の距離は、一般に可能な限り小さくなければならない。個々の収集流出口間の距離は、収集流出口の中心から測定して、約0.1mm〜約2mm、より典型的には約0.3mm〜約1.5mmであることができる。
様々な実施態様において、分離媒体注入口の数は、器具のデザインにより限定され、かつ選択された媒体注入口の数に応じて、特に例えば1〜7個、1〜9個、1〜15個、1〜40個又はそれよりも大きい範囲である。試料注入口の数は、例えば1〜36個、1〜11個、1〜5個、1〜4個、又は更には1〜3個の範囲であるのに対し、収集流出口の数は、例えば3〜384個、又は3〜96個の範囲であるが、しかし任意の都合の良い数を、分離装置に応じて選択することができる。向流媒体注入口の数は、典型的には例えば2〜9個、又は3〜7個の範囲である。提供された注入口及び流出口の数は一般に、分離装置及び分離スペースの形状及び寸法に応じて決まる。従って様々な数の分離媒体注入口及び流出口が可能であることも理解されるであろう。
図5において、分離媒体は、両電極間を及び長手方向に沿って(大きい矢印)、層流様式で流れる(好ましくは傾いた又は平らな分離チャンバー内を底から上向きに)。一部の実施態様において、分離媒体は、流出口の近傍で、分離媒体の向流(小さい矢印)により減速され、その結果流出口を介して、画分で分離チャンバーを出、すなわち一部の実施態様において、向流媒体は、電極間を移動するバルク分離媒体及び試料の連続流れ方向に逆らって分離スペースへ導入される。両媒体(分離媒体及び向流媒体)は、分画流出口を通り、排出又は溶出される。
分離される試料、例えばタンパク質は、試料注入口を介して分離媒体へ導入され、分離媒体の層流により輸送される。連続操作条件下で操作される場合、このタンパク質混合物は、電極間の電界の影響下での電気泳動移動により、連続して分離され、かつ分離媒体中の電極間に生じた電界の結果、分離緩衝液及び試料の特性に従い、個別の画分中に収集される。バッチ又は非連続の操作モードで操作される場合、試料は、その電気泳動プロセスの特徴及び必要性に応じて調整され得る可変のチャンバーサイズで、個別の画分へ収集することができる。
先に言及された実施態様は全て、具体的に好ましいとされるかどうかに関わらず、任意の好適な方法で組み合わせられることが意図されることは理解されるであろう。更に、本発明の範囲及び精神から逸脱しない限りは、本明細書に説明された実施態様の多くの修飾が可能であることは、当業者には明らかである。本発明はここで、いくつかの非限定的実施例により更に例示される。
実施例
実施例1:本発明のFF ITP法を使用するpIマーカーの分離及び先行技術の方法との比較
内側口径が変動する8個の媒体注入口(E1−E8)を備える、フリーフロー電気泳動器具を、据え付けた。注入口E1−E5及びE8は0.64mmであるのに対し、E6及びE7は0.38mmであった。HCl(100mM)及びモルホリノエタノール(200mM)を含有する安定化したリーダーを、注入口E1に導入した。より低い濃度のHCl(10mM)及びモルホリノエタノール(20mM)のリーダーを、注入口E2からE5へと導入した。MES(1mM)、MOPS(1.1mM)及びMOPSO(0.8mM)、並びに伝導度を増大するためにBISTRIS 20mMを含有するスペーサー組成物を、注入口E6へ導入した。NaOH(10mM)及びHEPES(20mM)を含有する希釈されたターミネーターを、注入口E7へ導入し、NaOH(50mM)及びHEPES(100mM)を含有する無−希釈ターミネーターを、注入口E8へ導入した。フリーフロー連続等速電気泳動を、電圧700Vで、pIマーカーの混合試料について行った。電流は、34mAであった。電気泳動分離後、試料及び媒体は、画分収集器へ溶出し、これらの画分を分析した。
着色したpI−マーカーを分離し、本システムの分離能について評価した。画分のλ=420nm、515nm、及び595nmでの吸光度は、各pI−マーカーの吸光度を表すが、これを図8に報告した。
同じ実験を、標準IPTプロトコールに従い行った。HCl(10mM)及びモルホリノエタノール(20mM)のリーダーを、注入口E1からE5へ導入した。MES(1mM)、MOPS(1.1mM)及びMOPSO(0.8mM)、並びにBISTRIS 20mMを含有するスペーサー組成物は、注入口E6へ導入した。ターミネーターとして、HEPES(10mM)を、注入口E7及びE8へ導入した。フリーフロー連続等速電気泳動を、電圧1000Vで、pIマーカーの混合試料について行った。電流は、13mAであった。電気泳動分離後、試料及び媒体は、画分収集器へ溶出し、これらの画分を分析した。
着色したpI−マーカーを分離し、本システムの分離能について評価した。画分のλ=420nm、515nm、及び595nmでの吸光度は、各pI−マーカーの吸光度を表すが、これを図9に報告した。
図8及び9に図示したように、本発明の新規FF ITP法を使用する分離は、一般に新規FF ITP法と同じリーダー、スペーサー、試料及びターミネーターを使用する先行技術の分離法と比べ、はるかに良好な分解を示した。図9に認められるように、先行技術の方法は、pIマーカーの貧弱な分離のみを生じた。全てのpIマーカーは、画分63から画分82の間で検出され、実際ほとんどのpIマーカーは、画分63から68で検出された。対照的に、本発明のFF ITP法を用い分離された同じpIマーカー混合物は、画分22から92の間で溶出した。更に、様々なpIマーカー(各々異なる最大吸光度を有する)は、本質的に異なる画分中に単離されたことは注目される。
実施例2:ペルオキシソームのインターバルFF ITPによる分離
第二の実施例において、内側口径が変動する8個の媒体注入口(E1−E8)を備えるFFE器具を、据え付けた。注入口E1−E5及びE8は0.64mmであるのに対し、E6及びE7は0.38mmであった。HCl(100mM)及びBISTRIS(200mM)を含有する安定化したリーダーを、注入口E1に導入した。より低い濃度のHCl(10mM)及びBISTRIS(20mM)のリーダーを、注入口E2からE5へと導入した。HAc(1.3mM)、乳酸(1.0mM)、グルクロン酸(3.25mM)、ACES(2.0mM)、MOPSO(1.6)、及びBISTRIS (17mM)を含有するスペーサー組成物を、注入口E6へ導入した。NaOH(10mM)及びHEPES(20mM)を含有する希釈されたターミネーターを、注入口E7へ導入し、NaOH(50mM)及びHEPES(100mM)を含有する無−希釈ターミネーターを、注入口E8へ導入した。混合試料への添加剤として、ショ糖(250mM)を含んだ。フリーフロー連続等速電気泳動を、電圧800Vで、遠心分離により予め精製した細胞小器官(ペルオキシソーム)を含有する試料について行った。試料及び媒体は、流量180mL/時で、チャンバーへ導入した。電気泳動時に、電極間の媒体及び試料のバルク流量は、導入された流量と比べ低下した。例えば、電極間の分離時の試料及び媒体のバルク流量は、80ml/時であった。分離後、試料及び媒体は、80mL/時よりも大きい増大した流量で、マイクロタイタープレートのような画分収集器へ溶出した。この流量は、溶出時に層流状態を維持するチャンバーの流出口部分の能力に応じて、少なくとも180ml/時まで増大することができる。全体の分離時間は、約5分50秒であった。
各分画の吸光度を、λ=420nmで測定した。ある画分の吸光度ピークは、試料中のペルオキシソームの存在により生じる(図10参照)。分離されたペルオキシソームの同一性及び完全性を、電子顕微鏡により(図11)、引き続き通常のゲル電気泳動により(データは示さず)、確認した。

Claims (121)

  1. 電気泳動法であって、電気泳動チャンバー内の1組の電極間に分離ゾーンを形成すること、ここで該電極の少なくとも1個は陰極であり、及び該電極の少なくとも1個は陽極であり、該分離ゾーンは、以下:
    少なくとも1種のT媒体により形成された、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
    少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成された、希釈されたTゾーン;
    少なくとも1種のL媒体により形成された、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
    少なくとも1種のL安定化媒体により形成された、L安定化ゾーン
    を含み;並びに
    場合により、少なくとも1種のS媒体により形成された、スペーサー(S)ゾーン
    を更に含む、
    を含む、前記電気泳動法。
  2. 等速電気泳動(ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を被検体組成物から分離することを更に含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記Sゾーン及び該Lゾーンが、分離ゾーン内に有効分離ゾーンを形成し、並びに電気泳動分離開始時の該Lゾーンの幅は、該隣接するSゾーンの幅よりも少なくとも係数8、好ましくは少なくとも係数9、より好ましくは少なくとも係数10、及び最も好ましくは少なくとも係数15だけより広い、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記の電気泳動分離の開始時の有効分離ゾーンの幅が、該電極間の分離ゾーンの幅の45%と等しいか又はより大きい、好ましくは60%よりも大きい、より好ましくは75%よりも大きい、又は最も好ましくは80%よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記Sゾーンの幅が、電気泳動分離開始時の希釈されたTゾーンの幅と本質的に類似している、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記の電気泳動分離の開始時の電極と希釈されたTゾーンの間のTゾーンの幅が、希釈されたTゾーンと隣接するSゾーンの一緒にした幅と少なくとも本質的に同じであるか、又は該一緒にした幅よりも少なくとも係数約1.1、少なくとも係数約1.5、もしくは更に少なくとも係数2だけより広い、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 試料が、Sゾーンへ、Sゾーンと希釈されたT電解質ゾーンの間、希釈されたTゾーンへ、SゾーンとLゾーンの間、又はLゾーンへ導入される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記ITPが、陰イオンITPであり、Lが強酸に由来する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  9. Lが、塩化物イオン又は硫酸イオンである、請求項8記載の方法。
  10. 前記ITPが、陽イオンITPであり、Lが強塩基に由来する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
  11. Lが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である、請求項10記載の方法。
  12. Lが、ナトリウム又はカリウムである、請求項11記載の方法。
  13. L媒体が、緩衝化合物をさらに含む、請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
  14. ITPが、陰イオンITPであり、緩衝化合物が、緩衝塩基である、請求項13記載の方法。
  15. ITPが、陽イオンITPであり、緩衝化合物が、緩衝酸である、請求項13記載の方法。
  16. 緩衝化合物の濃度が、該強酸のプロトン又はLが由来する該強塩基の水酸化物イオンの濃度よりも、係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、及びより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより高い、請求項8〜15のいずれか1項記載の方法。
  17. L媒体のpHが、ITP分離が陰イオンITP分離である場合、緩衝塩基のpKa値とほぼ等しいか、又はITP分離が陽イオンITP分離である場合、緩衝酸のpKa値とほぼ等しい、請求項8〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. L媒体内のLの濃度が、約50mM以下、約10mM以下、約5mM以下、約3mM以下、約2mM以下、又は約1mM以下である、請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
  19. L安定化媒体の伝導度が、隣接するL媒体の伝導度よりも、少なくとも係数2、少なくとも係数3、好ましくは少なくとも係数5、より好ましくは少なくとも係数10、又は更には少なくとも係数15だけより高い、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
  20. L安定化媒体のより高い伝導度が、隣接するL媒体内のLの濃度と比べL安定化媒体内の、各々それからLが由来する強酸又は強塩基の濃度の増加により実現される、請求項19記載の方法。
  21. より高い伝導度が、帯電した化学種I及びその対イオンにより実現され、ここでIは、Lが負帯電されている場合には、負帯電し、及びIは、Lが正帯電されている場合には、正帯電する、請求項19又は20記載の方法。
  22. L安定化媒体が、Lを含まない、請求項21記載の方法。
  23. Iの電気泳動移動度(EM)が、LのEM値の約50%以上、又は好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上の値を有し、最も好ましくはLのEMと等しい、請求項21又は22記載の方法。
  24. L安定化媒体内のLの濃度、Iの濃度、又はL及びIの組み合わせの濃度が、隣接するL媒体内のLの濃度よりも、少なくとも係数2、少なくとも係数3、好ましくは少なくとも係数5、より好ましくは少なくとも係数10、又は更には少なくとも係数15だけより高い、請求項21〜23のいずれか1項記載の方法。
  25. T媒体が、T及び強酸又は強塩基を含む、請求項1〜24のいずれか1項記載の方法。
  26. Tが、緩衝化合物である、請求項25記載の方法。
  27. ITPが、陰イオンITPであり、及びT媒体が強塩基を含む、請求項25又は26記載の方法。
  28. 前記強塩基が、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である、請求項27記載の方法。
  29. 前記強塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項25〜28記載の方法。
  30. 前記強塩基の濃度が、Tの濃度よりも係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、及び更により好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さい、請求項25〜29のいずれか1項記載の方法。
  31. ITPが、陽イオンITPであり、T媒体が、強酸を含む、請求項25又は26記載の方法。
  32. 前記強酸が、塩酸である、請求項31記載の方法。
  33. 前記強酸の濃度が、Tの濃度よりも係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、及びより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さい、請求項31又は32記載の方法。
  34. T媒体のpHが、TのpKaとほぼ等しい、請求項1〜33のいずれか1項記載の方法。
  35. 希釈されたT媒体中のTの濃度が、隣接するT媒体中のTの濃度よりも係数約2〜係数20、好ましくは係数約3〜係数10、より好ましくは係数約5〜係数8だけより小さい、請求項1〜34のいずれか1項記載の方法。
  36. 希釈されたT媒体のpHが、T媒体のpHとほぼ等しい、請求項1〜35のいずれか1項記載の方法。
  37. S媒体のpHが、隣接する希釈されたT媒体のpHと隣接するL媒体のpHの間である、請求項1〜36のいずれか1項記載の方法。
  38. ITPが、陰イオンITPであり、そのpHが、T媒体からL媒体へ低下する、請求項37記載の方法。
  39. ITPが、陽イオンITPであり、そのpHが、T媒体からL媒体へ増大する、請求項37記載の方法。
  40. 希釈されたT媒体の伝導度が、隣接するS媒体の伝導度とほぼ等しい、請求項1〜39のいずれか1項記載の方法。
  41. S媒体の伝導度が、隣接するL媒体の伝導度と本質的に同一である、請求項1〜40のいずれか1項記載の方法。
  42. 希釈されたT媒体、S媒体及びL媒体の伝導度が、ほぼ等しい、請求項40又は41記載の方法。
  43. 電界を生じるための有効電圧が、少なくとも1種の関心対象の被検体を、電気泳動の移動を通じて、被検体組成物から分離するために印加される、請求項1〜42のいずれか1項記載の方法。
  44. 分離が、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)により実行される、請求項43記載の方法。
  45. 少なくとも1種の関心対象の被検体が、分離ゾーンから溶出される、請求項2〜44のいずれか1項記載の方法。
  46. 少なくとも該被検体の1画分が、電気泳動チャンバーから回収される、請求項45記載の方法。
  47. FF ITP分離が、連続モードで操作される、請求項1〜46のいずれか1項記載の方法。
  48. FF ITP分離が、静的インターバルモードで操作される、請求項1〜46のいずれか1項記載の方法。
  49. FF ITP分離が、周期的インターバルモードで操作される、請求項1〜46のいずれか1項記載の方法。
  50. 関心対象の被検体が、生体粒子、生体高分子、及び生体分子からなる群より選択される、請求項1〜49のいずれか1項記載の方法。
  51. 関心対象の被検体が、細胞、ウイルス、ウイルス粒子、細胞小器官、リポソーム、ホルモン、セルロース誘導体、抗体、抗体複合体、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、タンパク質、親油性タンパク質、酸性タンパク質、ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、ナノ粒子、糖質及びそれらの誘導体、多糖及びそれらの誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項50記載の方法。
  52. 関心対象の被検体が、細胞小器官である、請求項51記載の方法。
  53. 関心対象の被検体が、親油性タンパク質である、請求項51記載の方法。
  54. 関心対象の被検体が、ナノ粒子である、請求項51記載の方法。
  55. 関心対象の被検体が、無機分子及び有機分子からなる群より選択される、請求項1〜49のいずれか1項記載の方法。
  56. 関心対象の被検体が、帯電したポリマー、帯電した錯体、ポリ酸、調合薬、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染性物質及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項55記載の方法。
  57. 少なくとも1種の関心対象の被検体を被検体組成物から分離するための、キャピラリーITP法であって、2個の電極及びそれらの間に介在された分離ゾーンを含むキャピラリー電気泳動分離を実行するのに適した器具を提供すること、ここで、該分離ゾーンは、少なくとも:
    L’ゾーンを形成する、リーダー電解質(L)媒体;
    Sゾーンを形成する、スペーサー(S)媒体;及び
    T’ゾーンを形成する、修飾されたターミネーター電解質(T’)媒体
    により形成される、
    を含む、前記キャピラリーITP法。
  58. T媒体が、T及び強酸又は強塩基を含む、請求項57記載の方法。
  59. Tが、緩衝化合物である、請求項58記載の方法。
  60. キャピラリーITPが、陰イオンキャピラリーITP分離であり、該T媒体が、強塩基を含む、請求項58又は59記載の方法。
  61. 前記強塩基が、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物である、請求項60記載の方法。
  62. 前記強塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項60又は61記載の方法。
  63. 前記強塩基の濃度が、Tの濃度よりも、係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、又はより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さい、請求項60〜62のいずれか1項記載の方法。
  64. キャピラリーITPが、陽イオンキャピラリーITPであり、T媒体が、強酸を更に含む、請求項58記載の方法。
  65. 前記強酸が、塩酸である、請求項64記載の方法。
  66. 前記強酸の濃度が、Tの濃度よりも係数約1.0〜4.0、好ましくは係数約1.2〜3.0、又はより好ましくは係数約1.8〜2.2だけより小さい、請求項64又は65のいずれか1項記載の方法。
  67. T媒体のpHが、TのpKaとほぼ等しい、請求項57〜66のいずれか1項記載の方法。
  68. FF ITP分離における、請求項25〜34のいずれか1項記載のT媒体の使用。
  69. キャピラリーITP分離における、請求項58〜67のいずれか1項記載のT’媒体の使用。
  70. ITP分離における、請求項25〜34のいずれか1項記載のT媒体から入手可能な希釈されたT媒体の使用。
  71. 請求項25〜34のいずれか1項記載のT媒体を少なくとも含む、請求項1〜56のいずれか1項記載のITP分離を実行するためのキット。
  72. 1種又は複数の実験ITPプロトコール、及び任意に成分の貯蔵条件を説明する製品マニュアルを更に含む、請求項71記載のキット。
  73. 希釈されたT媒体を更に含む、請求項71又は72記載のキット。
  74. 個別の被検体の分離のために適合された、スペーサー混合物/S媒体を得るために組み合わされる、S媒体又は各種スペーサーの組み合わせを更に含む、請求項71〜73のいずれか1項記載のキット。
  75. L媒体を更に含む、請求項71〜74のいずれか1項記載のキット。
  76. L媒体が、請求項8〜18のいずれか1項記載のものである、請求項75記載のキット。
  77. L安定化媒体を更に含む、請求項71〜76のいずれか1項記載のキット。
  78. L安定化媒体が、請求項19〜24のいずれか1項記載のものである、請求項77記載のキット。
  79. 請求項25〜34のいずれか1項記載のT媒体を少なくとも含む、請求項57〜67のいずれか1項記載のキャピラリー電気泳動ITP分離を実行するためのキット。
  80. 1種又は複数の実験キャピラリーITPプロトコール、及び任意に成分の貯蔵条件を説明する製品マニュアルを更に含む、請求項78又は79記載のキット。
  81. L媒体を更に含む、請求項78〜80のいずれか1項記載のキット。
  82. L媒体が、請求項8〜18のいずれか1項記載のものである、請求項81記載のキット。
  83. 個別の被検体の分離のために適合された、スペーサー混合物/S媒体を得るために組み合わされる、S媒体又は各種スペーサーを更に含む、請求項78〜82のいずれか1項記載のキット。
  84. キットの成分が、各々、請求項1〜56のいずれか1項記載のITP分離、又は請求項57〜67のいずれか1項記載のキャピラリーITP分離において直ぐ使用される水溶液として存在する、請求項71〜83のいずれか1項記載のキット。
  85. キットの成分が、各々、請求項1〜56のいずれか1項記載のITP分離、又は請求項57〜67のいずれか1項記載のキャピラリーITP分離において使用するのに適した濃度に希釈される、濃縮された水性ストック溶液として存在する、請求項71〜83のいずれか1項記載のキット。
  86. 各ストック溶液が、互いに独立して、1.5×、2×、2.5×、5×、10×、20×、25×、50×、75×、100×、150×、200×、及び1000×からなる群より選択される濃度を有する、請求項85記載のキット。
  87. キットの成分が、各々、請求項1〜51のいずれか1項記載のFF ITP分離、又は請求項52〜62のいずれか1項記載のキャピラリーITP分離において使用するのに適した濃度に、溶媒、好ましくは水で溶解される乾燥形又は凍結乾燥形で存在する、請求項71〜83のいずれか1項記載のキット。
  88. 前記キットの各成分、各乾燥成分及び/又は各ストック溶液が、密閉容器内に個別に配置されている、請求項71〜87のいずれか1項記載のキット。
  89. 1組の電極、ここで該電極の少なくとも1個は陰極であり及び該電極の少なくとも1個は陽極であり、及びその間に介在された分離ゾーン、を含む電気泳動チャンバーを含む器具であって、
    少なくとも1種のT媒体を含む、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
    少なくとも1種の希釈されたT媒体を含む、希釈されたTゾーン;
    少なくとも1種のL媒体を含む、リーダー電解質(L)ゾーン;
    少なくとも1種のL安定化媒体の、L安定化ゾーン;及び、
    場合により、該分離ゾーン内の、少なくとも1種のS媒体により形成された、スペーサー(S)ゾーン
    を形成するための手段を更に含む、前記器具。
  90. 前記器具が、請求項1〜56のいずれか1項記載の方法を実行するために適合されている、請求項89記載の器具。
  91. FF ITPによる、少なくとも1種の関心対象の被検体の被検体組成物からの分離を実行するための、請求項90記載の器具。
  92. それを通って媒体類がチャンバー内に導入される少なくとも5個の注入口を含み;更に
    ここで、2個の隣接する「a」注入口が、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8の内側口径dを有し、
    少なくとも1個の「A」注入口は、該2個の隣接する「a」注入口及び各電極の間に位置し;並びに、更にここで、
    a)該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、最大でも「A」注入口の対の間の距離の係数0.8であり;及び
    b)該2個の隣接する「a」注入口の間の距離は、最大でも「a」注入口と「A」注入口の間の距離の係数0.8である、請求項91記載の器具。
  93. 前記2つの隣接する「a」注入口のdが、電極と該2つの隣接する注入口の間に位置する該「A」注入口のDと比べ、最大でも係数0.65、好ましくは最大でも係数0.5である、請求項92記載の器具。
  94. 注入口を互いに分離する分離アームを備える分離装置を更に含み、ここで該2つの隣接する「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から独立して分離する分離アームが、「A」注入口を互いに分離する分離アームよりも、少なくとも係数1.5、好ましくは少なくとも係数1.8、より好ましくは少なくとも係数2だけより長い長さを有する、請求項92又は93記載の器具。
  95. 1個の電極と該「a」注入口の間の「A」注入口の数が、少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、及び最も好ましくは少なくとも10個であり、並びに他方の電極と該2個の隣接する注入口の間の注入口の数が、4個以下、好ましくは2個以下、及び最も好ましくは1個である、請求項92〜94のいずれか1項記載の器具。
  96. フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)による、少なくとも1種の関心対象の被検体の被検体組成物からの分離のための、請求項89〜95のいずれか1項記載の器具の使用。
  97. 電気泳動法であって、以下のステップ:
    1組の電極、ここで該電極の少なくとも1個は陰極であり及び該電極の少なくとも1個は陽極であり、及び該電極の間に介在した分離ゾーン、を含む電気泳動チャンバーを提供すること、並びに
    該分離ゾーンを以下:
    少なくとも1種のT媒体により形成された、ターミネーター電解質(T)ゾーン;
    少なくとも1種の希釈されたT媒体により形成された、希釈されたTゾーン;
    少なくとも1種のL媒体により形成された、リーダー電解質(L)ゾーン;及び
    少なくとも1種のL安定化媒体により形成された、L安定化ゾーン
    を含むように構成すること、
    を含む、前記電気泳動法。
  98. 前記分離ゾーンが、少なくとも1種のS媒体により形成されたスペーサー(S)ゾーンを更に含むように構成される、請求項97記載の電気泳動法。
  99. 電気泳動チャンバーが、少なくとも1種の関心対象の被検体を受け取るように更に構成される、請求項97記載の方法。
  100. 前記方法が、ITPにより、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離するためである、請求項97記載の方法。
  101. Sゾーン及びLゾーンが、分離ゾーン内に有効分離ゾーンを形成し、ここで電気泳動分離開始時の該Lゾーンの幅が、該隣接するSゾーンの幅よりも、少なくとも係数8だけより広い、請求項98記載の方法。
  102. 電気泳動分離の開始時の有効分離ゾーンの幅が、該電極間の分離ゾーンの幅の45%と等しいか又はより大きい、請求項98記載の方法。
  103. Sゾーンの幅が、電気泳動分離開始時の希釈されたTゾーンの幅とほぼ等しく、更にここで電極と希釈されたTゾーンの間のTゾーンの幅が、電気泳動分離の開始時の希釈されたTゾーンと隣接するSゾーンの一緒にした幅とほぼ等しいか又はより大きい、請求項98記載の方法。
  104. 前記方法が、陰イオンITPであり、Lが強酸に由来するか、又はここで該方法が、陽イオンITPであり、Lが強塩基に由来する、請求項97記載の方法。
  105. 前記T媒体が、T、及びITPが陽イオンITPである場合には強酸を含むか、又はITPが陰イオンITPである場合には強塩基を含み;
    Tが、緩衝化合物であり;並びに
    更にここで該強酸又は強塩基の濃度が、Tの濃度よりも、係数約1.2〜3.0だけより小さい、請求項97記載の方法。
  106. T媒体のpHが、TのpKaとほぼ等しい、請求項97記載の方法。
  107. 希釈されたT媒体中のTの濃度が、隣接するT媒体中のTの濃度よりも、係数約2〜係数20だけより小さい、請求項97記載の方法。
  108. S媒体が、隣接する希釈されたT媒体のpHと隣接するL媒体のpHの間のpHを有する、請求項98記載の方法。
  109. 前記方法が陰イオン被検体の分離に関する場合は、pHが、T媒体からL媒体へと低下するか、又は該方法が陽イオン被検体の分離に関する場合は、pHが、T媒体からL媒体へと増大する、請求項97記載の方法。
  110. 希釈されたT媒体、S媒体及びL媒体の伝導度が、互いにほぼ等しい、請求項98記載の方法。
  111. 前記方法が、ITPにより、少なくとも1種の関心対象の被検体を、被検体組成物から分離するためであり、ここで該関心対象の被検体が、細胞、ウイルス、ウイルス粒子、細胞小器官、リポソーム、ホルモン、セルロース誘導体、抗体、抗体複合体、タンパク質凝集体、タンパク質複合体、タンパク質、親油性タンパク質、酸性タンパク質、ペプチド、DNA−タンパク質複合体、DNA、膜、膜断片、脂質、糖質及びそれらの誘導体、多糖及びそれらの誘導体、帯電した高分子、帯電した錯体、ポリ酸、調合薬、プロドラッグ、薬物の代謝産物、爆発物、毒素、発癌物質、毒物、アレルゲン、感染性物質のナノ粒子、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項97記載の方法。
  112. 前記方法が、フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)法であり、ここで該FF ITP分離の操作モードが、連続モード、静的インターバルモード及び周期的インターバルモードからなる群より選択される、請求項97記載の方法。
  113. 少なくとも1種の関心対象の被検体を被検体組成物から分離するための、キャピラリーITP法であって、
    2個の電極及び該2個の電極間の分離ゾーンを含むキャピラリー電気泳動分離を実行するのに適している器具を提供すること;並びに
    該分離ゾーンを以下:
    L’ゾーンを形成するリーダー電解質(L)媒体;
    Sゾーンを形成するスペーサー(S)媒体;及び
    T’ゾーンを形成する修飾されたターミネーター電解質(T’)媒体
    を含むよう構成すること、
    を含む、前記方法。
  114. T’媒体が、T、キャピラリーITPが陽イオンキャピラリーITPである場合には、強酸、又はキャピラリーITPが陰イオンキャピラリーITPである場合には、強塩基
    を含み、及び更にTは、緩衝化合物である、請求項113記載の方法。
  115. T’媒体が、TのpKa値とほぼ等しいpHを有する、請求項113記載の方法。
  116. 少なくとも被検体の被検体組成物からのITP分離を実行するためのキットであって、以下:
    緩衝化合物であるターミネーターTを含むT媒体、及び
    強塩基(陰イオンITP)、又は強酸(陽イオンITP)
    を含む、前記キット。
  117. 1種又は複数の実験ITPプロトコール、及び任意に成分の貯蔵条件を説明する製品マニュアルを更に含む、請求項116記載のキット。
  118. 1組の電極、ここで該電極の少なくとも1個は陰極であり及び該電極の少なくとも1個の電極は陽極であり、及びそれらの間に介在された分離ゾーン、を含む電気泳動チャンバーを含む器具であって、ここで該分離ゾーンは、以下:
    ターミネーター電解質(T)ゾーン;
    希釈されたTゾーン;
    リーダー電解質(L)ゾーン;及び
    L安定化ゾーン
    を含むように構成される、前記器具。
  119. フリーフロー等速電気泳動(FF ITP)により、少なくとも1種の関心対象の被検体を被検体組成物から分離するように構成されている、請求項118記載の器具。
  120. 前記分離ゾーンが、少なくとも1種のS媒体により形成されるスペーサーSゾーンを更に備えるように構成され、
    それを通り該媒体類がチャンバーへ導入される少なくとも5個の注入口を備え;並びに
    2個の隣接する「a」注入口が、「A」注入口の内側口径Dと比べ、最大でも係数0.8の内側口径dを有し、ここで少なくとも1個の「A」注入口が、該2個の「a」注入口と各電極の間に配置されている、請求項118記載の器具。
  121. 注入口を互いに分離する、分離アームを備える分離装置を更に含み、ここで2個の隣接する「a」注入口を互いに及び隣接する「A」注入口から独立して分離する分離アームは、「A」注入口を互いに分離する分離アームよりも少なくとも係数15だけより長い長さを有する、請求項118記載の器具。
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