JP2014159559A - 成形材料の製造方法および成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、成形時にポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性が良好であり、優れた難燃性と力学特性を発現し得る成形品を得ることのできる成形材料の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】下記成分(A)〜(D)を含む成形材料の製造方法であって、下記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させて(F)樹脂含浸強化繊維束を得て、該(F)樹脂含浸強化繊維束を下記成分(B)で被覆する成形材料の製造方法。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部
【選択図】なし
【解決手段】下記成分(A)〜(D)を含む成形材料の製造方法であって、下記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させて(F)樹脂含浸強化繊維束を得て、該(F)樹脂含浸強化繊維束を下記成分(B)で被覆する成形材料の製造方法。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部
【選択図】なし
Description
本発明は、成形材料の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、成形時にポリカーボネート樹脂への強化繊維の分散性が良好であり、優れた難燃性と力学特性を発現し得る成形品を得ることのできる成形材料の製造方法に関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂を含む成形材料は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途などに広く用いられている。これらの成形材料に使用される強化繊維は、その用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好適に用いられる。
マトリックスとして用いられる熱可塑性樹脂は、耐衝撃性などの力学特性や、熱安定性に優れることから、ポリカーボネート樹脂の需要が大きく、特に電気・電子機器筐体や自動車部材などの様々な分野で広く用いられている。ここで、電子機器筐体のような用途においては、より一層の軽量化、薄型化の要求に伴い、力学特性の更なる向上や、高い難燃性が求められている。しかしながら、力学特性の向上のために強化繊維を配合することにより、難燃性が低下することがある。
そこで本出願人は、特許文献1にて、重量平均分子量を規定すると同時に、マトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体を、連続した強化繊維束に付着させた複合体と、熱可塑性樹脂とが接するように配置することで、強化繊維束の成形品中での分散が良好である成形材料を提案している。しかしながら、ポリカーボネート樹脂をマトリックス樹脂とした場合の検討は十分とは言い難く、また、難燃性についての検討も不十分であった。
かかる状況において、成形時にポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性が良好であり、優れた難燃性と力学特性を発現し得る成形品を得ることのできる成形材料の製造方法が求められていた。
本発明は従来技術の有する課題に鑑み、成形時にポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性が良好であり、優れた難燃性と力学特性を発現し得る成形品を得ることのできる成形材料の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
下記成分(A)〜(D)を含む成形材料の製造方法であって、下記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させて(F)樹脂含浸強化繊維束を得て、該(F)樹脂含浸強化繊維束を下記成分(B)で被覆する成形材料の製造方法。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部
下記成分(A)〜(D)を含む成形材料の製造方法であって、下記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させて(F)樹脂含浸強化繊維束を得て、該(F)樹脂含浸強化繊維束を下記成分(B)で被覆する成形材料の製造方法。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部
本発明の成形材料の製造方法によれば、良好な難燃性を有すると共に、成形時にポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性が良好である成形材料が得られる。かかる成形材料を用いることにより、曲げ特性や耐衝撃特性などの力学特性に優れた成形品が得られる。本発明の成形材料を用いて成形された成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法により得られる成形材料は、少なくとも(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物、(C)リン酸エステル系難燃剤、(D)熱可塑性樹脂から構成される。まず、これらの構成成分について詳細に記す。なお、本発明において「成形材料」とは、成形品を射出成形などで成形する際に用いる原材料を意味する。
まず、本発明に使用する(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維について説明する。軽量で、強度、弾性率に優れる炭素繊維を含むことにより、機械特性が向上した成形材料を得ることができる。また、エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%付着していることで、成分(B)〜(D)となじみやすくなり、成形時におけるポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性を向上させることができる。
炭素繊維としては、特に限定されないが、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
さらに、X線光電子分光法により測定される炭素繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、後述する(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物とより強固な接着を得ることができる。0.08以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが例示できる。0.4以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用いる場合には、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法を挙げることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
また、単繊維数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また、本発明によれば、単繊維数が多い強化繊維束であっても、射出成形時の繊維分散性の良い成形材料が得られるため、20,000〜100,000本の範囲で使用することが、生産性の観点からもより好ましい。
また、本発明に用いられる炭素繊維はサイジング剤が付与されてなることが、集束性、耐屈曲性や耐擦過性を改良し、高次加工工程において、毛羽、糸切れの発生を抑制でき、いわゆる糊剤、集束剤として高次加工性を向上させることもでき、好ましい。さらに、サイジング剤を付与することで、炭素繊維表面の官能基等の表面特性に適合させて接着性およびコンポジット総合特性を向上させることができる。
本発明において用いられるサイジング剤の成分としては、(B)ポリカーボネート樹脂またはカーボネート樹脂組成物との接着性を発揮しやすいことから、エポキシ樹脂が好ましい。
サイジング剤に用いるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも力学特性向上の観点から、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。通常、エポキシ樹脂はエポキシ基を多数有すると、架橋反応後の架橋密度が高くなるために、靭性の低い構造になる傾向にあるが、脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすい。このため、脂肪族エポキシ樹脂を炭素繊維とマトリックス樹脂間に介在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、繊維強化による強度向上効果が発現しやすく、好ましい。
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。ジグリシジルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物の具体例としては、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の多官能脂肪族エポキシ樹脂を用いることが好ましく、さらには、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物を用いることがより好ましい。この中でも、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類がさらに好ましい。これら脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、マトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、効果的に接着性を向上させることから好ましい。
サイジング剤の付着量は、サイジング剤と炭素繊維合計の質量100重量%に対して、0.01〜3.0重量%が好ましい。0.01重量%未満では接着性向上効果が現れにくく、また、生産時に炭素繊維の集束性が劣ることがある。0.03重量%以上が好ましい。一方、3.0重量%を越える付着量では、マトリックス樹脂の物性を低下させることがある。2.5重量%以下が好ましい。
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えば、サイジング剤を溶媒(分散させる場合の分散媒を含む)中に溶解(分散も含む)したサイジング処理液を調製し、該処理液を炭素繊維に付与した後に、溶媒を乾燥・気化させ、除去することにより、サイジング剤を炭素繊維に付与する方法が一般的に用いられる。サイジング処理液を炭素繊維に付与する方法としては、例えば、ローラーを介して炭素繊維をサイジング処理液に浸漬する方法、サイジング処理液の付着したローラーに炭素繊維を接する方法、サイジング処理液を霧状にして炭素繊維に吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング処理液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に炭素繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間はサイジング剤の付着量によって調整すべきであるが、サイジング剤の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤の熱劣化を防止し、サイジング処理された炭素繊維が固くなって束の拡がり性が悪化することを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。
サイジング処理液に使用する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易であることおよび防災の観点から、水が好ましい。従って、水に不溶、もしくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いることが好ましい。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤がサイジング剤に含まれるエポキシ基の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
前述の(A)サイジング剤が付着した炭素繊維の配合量は、前記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、5〜35重量部である。5重量部未満では、十分な力学特性を得ることができず、35重量部を超えると成形時の繊維分散性が劣ったり、流動性や難燃性が劣ることがある。
次に、本発明において(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含むものであれば特に限定されない。ここで、ポリカーボネート樹脂とは、主鎖中に炭酸エステル構造を有する重合体であり、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性、耐衝撃性、難燃性に優れ、また非晶性であることから、成形収縮率が低いため、表面外観が優れる。これらは単独で用いても、2種以上を使用してもよい。特に耐衝撃特性に優れるといった観点から、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)の炭酸エステル構造を有する芳香族ポリカーボネートが特に好ましく用いられる。
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は10,000〜50,000が好ましい。粘度平均分子量(Mv)が10,000以上であると、曲げ強度や耐衝撃特性などの力学特性により優れることから好ましい。15,000以上がより好ましく、25,000以上がさらに好ましい。また、粘度平均分子量(Mv)が50,000以下であると、成形時の流動性により優れ、成形性が高いことから好ましい。40,000以下がより好ましく、35,000以下がさらに好ましい。
ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、次の方法により求めることができる。まず、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から、オストワルド粘度計を用いて、次式にて算出される比粘度(ηSP)を求める。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
続いて、求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出することができる。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4Mv 0.83
c=0.7。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4Mv 0.83
c=0.7。
ポリカーボネート樹脂を得る手法としては特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いることができ、例えば、ホスゲン法、エステル交換法あるいは固相重合法などが挙げられる。また、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”(登録商標)、“ノバレックス”(登録商標)、帝人化成(株)製“パンライト”(登録商標)、出光石油化学(株)製“タフロン”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
また、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物としては、前記ポリカーボネート樹脂と、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、液晶性樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などの熱可塑性樹脂、リン系難燃剤、臭素系難燃剤などの難燃剤や流動改質材、着色剤、耐候剤などの添加剤などを含む樹脂組成物が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。また、ポリカーボネート樹脂組成物100重量%におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、特に限定しないが、ポリカーボネート樹脂の成形温度で成形可能な範囲という観点から、50重量%以上であることが好ましい。難燃性をより向上させる観点から、(G)リン系難燃剤、(H)液晶性樹脂および/または(I)スチレン系樹脂を含むことが好ましい。
(G)リン系難燃剤は、脱水炭化促進作用により、成形品表面に緻密なチャーが形成され、熱や酸素を遮断し、炎の伝播を阻止することから、難燃性をより向上させることができる。また、流動性を向上効果があるために、射出成形時の繊維分散性や力学特性を向上することができる。
(G)リン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、その他芳香族リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物や、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物、ポリリン酸塩類、赤リン系化合物などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、(B)ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる(G)リン系難燃剤は、後述する(C)リン酸エステル系難燃剤と同じでも異なってもよい。(G)リン系難燃剤として(C)リン酸エステル系難燃剤を用いる場合、成分(A)に含浸される(E)熱可塑性樹脂組成物に含まれるリン酸エステル系難燃剤は(C)リン酸エステル系難燃剤として、(F)樹脂含浸強化繊維束を被覆する(B)ポリカーボネート樹脂組成物に含まれるリン酸エステル系難燃剤は(G)リン系難燃剤として分類するものとする。
また、(B)ポリカーボネート樹脂組成物が(G)リン系難燃剤を含む場合、ポリカーボネート樹脂との重量比がポリカーボネート樹脂/リン系難燃剤=99/1〜80/20であると機械強度と難燃性のバランスがよく好ましい。より好ましくは、98/2〜85/15であり、さらに好ましくは、97/3〜87/13である。
(H)液晶性樹脂は、燃焼時に成形品表面に緻密なチャーが形成されることから、難燃性をより向上させることができる。さらに、成形時の流動性に優れることから、炭素繊維の分散性がより向上し、成形品の力学特性をより向上させることができる。
本発明において用いられる(H)液晶性樹脂は、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、例えば、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドが挙げられる。成形品の難燃性をより向上させる観点から、全芳香族液晶性ポリエステルが好ましい。ここで全芳香族液晶性ポリエステルとは、液晶性ポリエステルを構成する構造単位が脂肪族系の構造単位を含まず、全て芳香族系の構造単位であるものを指す。
本発明において、好ましい液晶性ポリエステルとしては、例えば、下記式(I)で表される構造単位(以下、構造単位(I)とする)、下記一般式(II)で表される構造単位(以下、構造単位(II)とする)、下記一般式(IV)で表される構造単位(以下、構造単位(IV)とする)からなるポリエステル、構造単位(I)、下記式(III)で表される構造単位(以下、構造単位(III)とする)、構造単位(IV)からなるポリエステル、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)、構造単位(IV)からなるポリエステルなどが挙げられる。難燃性をより向上させる観点から、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(IV)からなるポリエステル、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(III)、構造単位(IV)からなるポリエステルがより好ましく、構造単位(I)、構造単位(II)、構造単位(IV)からなるポリエステルがさらに好ましい。
(ただし、一般式(II)中のR1は下記(a)〜(j)から選ばれた1種以上の基を示し、一般式(IV)中のR2は下記(k)〜(p)から選ばれた1種以上の基を示す。また、下記式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
さらに、これらのうち、R1が上記(a)および/または(c)であり、R2が上記(k)、(l)および/または(n)であることが特に好ましい。
上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性をより発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合、上記構造単位(I)および(II)の合計は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%であることが耐熱性および成形性の観点から好ましく、40〜90モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して5〜70モル%であることが長期耐熱性の観点から好ましく、10〜60モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の、構造単位(II)に対するモル比[(I)/(II)]は、耐熱性および成形性のバランスの観点から、好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
また、上記構造単位(III)を含まず、上記構造単位(I)、(II)、(IV)からなる共重合体の場合、構造単位(I)の構造単位(II)に対するモル比[(I)/(II)]は、上記と同様に好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
構造単位(III)を含まず、上記構造単位(I)、(II)、(IV)からなる共重合体について、さらに好ましい例としては、構造単位(II)において、R1が上記(a)であるもの(構造単位II1とする)と、上記(c)であるもの(構造単位II2とする)とを含み、構造単位(IV)においては、R2が上記(k)であるもの(構造単位IV1とする)と、(l)であるもの(構造単位IV2とする)とを含むものである。ここで、構造単位(I)は、構造単位(I)、(II1)および(II2)の合計に対して、68〜80モル%が好ましい。また、構造単位(II1)は構造単位(II1)および(II2)の合計に対して55〜75モル%が好ましい。さらに、構造単位(IV1)は構造単位(IV1)および(IV2)の合計に対して60〜85モル%が好ましい。ここで、構造単位(II1)および(II2)の合計と、構造単位(IV1)および(IV2)の合計が実質的に等モルであることが好ましい。
なお、本発明において、「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合に必ずしも等モルとならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを、液晶性および難燃性を損なわない範囲でさらに共重合せしめることができる。
ここで、(H)液晶性樹脂の融点は、特に限定されないが、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物への分散性の観点から、220〜350℃が好ましく、より好ましくは270℃〜340℃である。
また、(H)液晶性樹脂の溶融粘度は、特に限定されるものではないが、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物への分散性の観点から、1〜200Pa・sが好ましく、10〜200Pa・sがより好ましく、10〜100Pa・sがさらに好ましい。なお、本発明における(H)液晶性樹脂の溶融粘度は、(H)液晶性樹脂の融点+10℃の条件で、ずり速度1,000/秒の条件下で高化式フローテスターによって測定される値である。
本発明において使用される上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。具体的には、例えば、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により製造する方法。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により製造する方法。
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を触媒として使用することもできる。
本発明において、(B)ポリカーボネート樹脂組成物中に(H)液晶性樹脂を含む場合、その含有量は、(B)ポリカーボネート樹脂組成物100重量%中、1〜20重量%が好ましい。(H)液晶性樹脂の配合量が1重量%以上であれば、難燃性をより向上させることができる。3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、7重量%以上がさらに好ましい。一方、(H)液晶性樹脂の含有量が20重量%以下であれば、力学特性をより向上させることができる。15重量%以下がより好ましく、13重量%以下がさらに好ましい。
また、本発明において、(H)液晶性樹脂は成形材料中のいずれかに含まれていればよいが、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物中に溶融混練された形で成形材料に含まれることが、安定した難燃性が得られるために、好ましい。具体的には、例えば、(B)ポリカーボネート樹脂と(H)液晶性樹脂および必要によりその他成分を溶融混練した、ポリカーボネート樹脂組成物として含まれていることが好ましい。
(I)スチレン系樹脂は、芳香環を有することから、燃焼時に成形品表面にチャーを形成させやすい。また、後述するように様々な他の成分と共重合できることから、柔軟な骨格を導入することができ、衝撃強度を向上させることが可能である。このため、難燃性と耐衝撃特性のバランスをより向上させることができる。
本発明における(I)スチレン系樹脂とは、芳香族ビニル系単量体を重合して得られる含むものであり、芳香族ビニル系単量体と、これと共重合可能な他の成分との共重合体であってもよい。他の成分としては、例えば、芳香族以外のビニル系単量体や、ゴム成分などが挙げられる。また、共重合の様態としては特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができ、例えば、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。また、スチレン系樹脂の態様としては、単一のスチレン系樹脂でもよいが、他の成分およびスチレン系樹脂がいわゆるコアシェル構造を形成したものであってもよい。コアシェル構造を形成する場合、他の樹脂をスチレン系樹脂が被覆する構造が好ましく、外殻のシェル層にスチレン系樹脂が存在するため、上述の親和性に起因する凝集効果が発現するとともに、コア層の成分の特性を同時に発現することができる。
芳香族ビニル系単量体のとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン、およびo,p−ジクロロスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。特にスチレンやα−メチルスチレンが好ましく用いられる。
また、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を共重合することが好ましく、共重合成分を選択することにより、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性などの所望の特性をより向上させることができる。共重合可能な他のビニル系単量体の具体的な例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。特にアクリロニトリルが好ましく用いられる。
スチレン系樹脂は、芳香族ビニル系単量体と共重合可能なゴム成分との共重合体である、ゴム変性スチレン系樹脂を含むことがさらに好ましい。ゴム成分で構成されるソフトセグメントが、成形時に炭素繊維に加わる外力を緩和するため、より大きな繊維折損抑制効果を期待でき、耐衝撃性をより向上させることができる。芳香族ビニル系単量体と共重合可能なゴム成分の具体的な例としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、水素化スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、およびイソプレンゴムなどを挙げることができる。これらを2種以上併用してもよい。中でもポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴムが好ましい。
上記スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン(PS樹脂)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂(AS樹脂)、変性AS樹脂、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR樹脂)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)などが挙げられる。耐衝撃性や、炭素繊維の折損抑制効果をより向上させる観点から、ゴム変性スチレン系樹脂である、MBS樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂が好ましく用いられ、中でもSEBS樹脂が特に好ましい。
ここで、SEBS樹脂は、特に限定されるものではないが、スチレン−ブタジエンブロック共重合体に水素添加してなる、水添ブロック共重合体であることがより好ましい。好ましいSEBS樹脂として、市販されているものでは、旭化成ケミカルズ(株)製“タフテック”(登録商標)、(株)クラレ製“セプトン”(登録商標)、クレイトンポリマージャパン(株)製“クレイトン”(登録商標)などが挙げられる。
本発明において、(B)ポリカーボネート樹脂組成物中に(I)スチレン系樹脂を含む場合、その含有量は、(B)ポリカーボネート樹脂組成物100重量%中、1〜15重量%が好ましい。(I)スチレン系樹脂の含有量が1重量%以上であれば、耐衝撃性をより向上させることができる。3重量%以上がより好ましく、6重量%以上がさらに好ましい。一方、(I)スチレン系樹脂の含有量が15重量%以下であれば、難燃性をより向上させることができる。12重量%以下がより好ましく、9重量%以下がさらに好ましい。
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物の合計配合量は、前記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、45〜93.9重量部である。45重量部未満では、射出成形時に流動しないことがあり、好ましくない。また、93.9重量部を超えると、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物の割合が多く、機械特性が不足したり、難燃性が不足することがある。
次に、本発明における(C)リン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、その他芳香族リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物や、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物、ポリリン酸塩類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも縮合リン酸エステル化合物が、耐熱性と難燃性のバランスから好ましい。
(C)リン酸エステル系難燃剤の配合量は、前記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、1〜15重量部である。1重量部未満では、成形材料を成形した際に、繊維分散性および難燃性が低下することがある。2重量部以上が好ましい。一方、15重量部を超えると力学特性が劣ることがある。10重量部以下が好ましい。
次に、本発明における(D)熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、(C)リン酸エステル系難燃剤と溶融混合した際に、相溶することが好ましい。(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂が相溶することで、溶融時の粘度が安定するため、安定して炭素繊維に付着させることができるため、安定して成形材料を製造することができる。
ここで、相溶とは、分子レベルで均一に混合している状態をいう。本発明においては、(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂を溶融混合し、溶融状態で、それぞれの成分を形成する相が1μm未満である場合を相溶状態とする。なお、相分離構造は、電子顕微鏡、位相差光学顕微鏡、その他種々の方法によって判断することができる。
(C)リン酸エステル系難燃剤と相溶する(D)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。中でも、耐熱性と、(B)ポリカーボネート樹脂と(C)リン酸エステル系難燃剤との相溶性の観点から、フェノキシ樹脂がより好ましい。フェノキシ樹脂は(B)ポリカーボネート樹脂との相溶性が高いため、成形材料を用いて成形した際に、成分(A)の繊維分散性をより向上させることができることから好ましい。
また、(D)熱可塑性樹脂の数平均分子量は、2,000〜100,000が好ましい。数平均分子量が2,000以上であれば、(C)リン酸エステル系難燃剤と溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を成分(A)への含浸に適した範囲に調整しやすく、安定して炭素繊維に含浸させることができる。5,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましい。また、100,000以下であれば、(C)リン酸エステル系難燃剤との相溶性により優れ、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を成分(A)への含浸に適した範囲に調整しやすい。なお、(D)熱可塑性樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
(D)熱可塑性樹脂の配合量は、前記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部である。0.1重量部未満では、後述の(E)熱可塑性樹脂組成物としての溶融粘度が低く、安定した製造ができないことがある。0.2重量部以上が好ましい。また、5重量部を超えると、後述の(E)熱可塑性樹脂組成物としての溶融粘度が高く、炭素繊維束の内部への含浸が困難になる。3重量部以下が好ましい。
本発明において、(E)熱可塑性樹脂組成物は(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂を溶融混合したものであるが、必要に応じて、さらに他の成分を溶融混合してもよい。
また、本発明において、(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂を溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は特に限定されないが、(F)樹脂含浸強化繊維束を得る際に、炭素繊維束の内部まで安定して含浸しやすく、さらに、成形時に(B)ポリカーボネート樹脂へ流動しやすい観点から、190℃における溶融粘度は0.1〜10Pa・sが好ましい。190℃における(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が0.1Pa・s以上であれば、一般的な含浸方法により、安定して炭素繊維束の内部まで含浸させることができ、(F)樹脂含浸繊維束の引取速度を速くすることができる。また、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物との粘度差が小さいことから、射出成形時の繊維分散性をより向上させることができる。0.5Pa・s以上がより好ましく、0.7Pa・s以上がさらに好ましい。また、10Pa・s以下であれば、炭素繊維束の内部まで容易に含浸させることができ、射出成形時の繊維分散性をより向上させることができる。5Pa・s以下がより好ましい。なお、ここでは、含浸温度における(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度の指標として、190℃における溶融粘度に着目したが、後述するように、(E)熱可塑性樹脂組成物を含浸させる時の温度は適宜選択することができる。
(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、粘弾性測定器を用いて、40mmのパラレルプレートを使用し、0.5Hz、190℃の条件下で測定することができる。
次に、本発明の成形材料の製造方法について、より詳しく説明する。本発明の製造方法は、まず、前記(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂を、200〜300℃で溶融混合して(E)熱可塑性樹脂組成物を得る。そして、得られた(E)熱可塑性樹脂組成物を、(A)サイジング剤が付着した炭素繊維に溶融含浸させて、(F)樹脂含浸強化繊維束を得る。そして、得られた樹脂含浸強化繊維束を、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物で被覆する。
まず、前記(C)リン酸エステル系難燃剤と(D)熱可塑性樹脂を、200〜300℃で溶融混合して(E)熱可塑性樹脂組成物を得る工程について説明する。かかる工程を経ることにより、均一な(E)熱可塑性樹脂組成物が得られる。このため、(E)熱可塑性樹脂組成物を成分(A)に安定して付着させることができ、さらに安定して炭素繊維束の内部へ含浸させることができる。溶融混合する工程を有しない場合には、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が安定せず、安定して成分(A)に付着させることが困難となる。この工程における溶融混合温度は200〜300℃である。200℃未満では、(D)熱可塑性樹脂が十分溶融しないことがあり、均一な(E)熱可塑性樹脂組成物が得られないことがある。220℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましい。また、300℃を超えると(C)リン酸エステル系難燃剤の分解を伴うことがある。280℃以下が好ましく、270℃以下がより好ましい。
ここで、溶融混合の方法は特に限定されず、公知の溶融混合装置を使用することができる。具体的には、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ルーダー、バンバリーミキサー等を使用することができる。中でも、ニーダーを用いると比較的簡便に安定して溶融混合物を得られることから好ましい。
さらに、溶融混合時間は、0.1〜120分間が好ましい。溶融混合時間が0.1分間以上であれば、より均一な(E)熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。1分間以上がより好ましく、10分間以上がさらに好ましい。一方、120分間以下であれば、加熱による分解を抑制することができる。100分間以下がより好ましく、90分間以下がさらに好ましい。
次に、(E)熱可塑性樹脂組成物を、(A)サイジング剤が付着した炭素繊維に溶融含浸させて、(F)樹脂含浸強化繊維束を得る工程について説明する。本発明において、成分(A)に(E)熱可塑性樹脂組成物を溶融含浸させ、(F)樹脂含浸強化繊維束を得る方法は、特に限定されないが、次の様な方法を例示できる。
すなわち、成分(A)に(E)熱可塑性樹脂組成物を供給し、(E)熱可塑性樹脂組成物を100〜300℃の溶融状態で成分(A)と接触させる工程(I)と、(E)熱可塑性樹脂組成物と接触している成分(A)を加熱して含浸させる工程(II)を有する方法が挙げられる。
工程(I)では、特に限定されないが、炭素繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するような公知の製造方法を用いることができる。中でも、ディッピング、もしくは、コーティングが好ましく、具体的なコーティングとしては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレイ、カーテンが好ましく用いられる。
ここで、ディッピングとは、ポンプにて(E)熱可塑性樹脂組成物を溶融バスに供給し、該溶融バス内で成分(A)を通過させる方法をいう。成分(A)を(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融バスに浸すことで、確実に(E)熱可塑性樹脂組成物を成分(A)に付着させることができる。また、リバースロール、正回転ロール、キスロールとは、ポンプで溶融させた(E)熱可塑性樹脂組成物をロールに供給し、成分(A)に(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融物を塗布する方法をいう。さらに、リバースロールは、2本のロールが互いに逆方向に回転し、ロール上に溶融した(E)熱可塑性樹脂組成物を塗布する方法であり、正回転ロールは、2本のロールが同じ方向に回転し、ロール上に溶融した(E)熱可塑性樹脂組成物を塗布する方法である。通常、リバースロール、正回転ロールでは、成分(A)を挟み、さらにロールを設置し、(E)熱可塑性樹脂組成物を確実に付着させる方法が用いられる。一方で、キスロールは、成分(A)とロールが接触しているだけで、(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させる方法である。そのため、キスロールは比較的粘度の低い場合の使用が好ましいが、いずれのロールを用いても、加熱溶融した(E)熱可塑性樹脂組成物の所定量を塗布させ、成分(A)を接着させながら走らせることで、繊維束の単位長さ当たりに所定量の(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させることができる。スプレイは、霧吹きの原理を利用したもので、溶融した(E)熱可塑性樹脂組成物を霧状にして成分(A)に吹き付ける方法であり、カーテンは、溶融した(E)熱可塑性樹脂組成物を小孔から自然落下させ塗布する方法、または溶融槽からオーバーフローさせ塗布する方法である。塗布に必要な量を調節しやすいため、(E)熱可塑性樹脂組成物の損失を少なくできる。
また、(E)熱可塑性樹脂組成物を成分(A)に供給する際の溶融バスにおける(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融温度としては、100〜300℃が好ましい。100℃以上であれば、(E)熱可塑性樹脂組成物の粘度を適度に抑え、付着むらを抑制することができる。150℃以上がより好ましい。また、300℃以下であれば(E)熱可塑性樹脂組成物の熱分解を抑制することができる。250℃以下がより好ましい。
次いで、工程(II)として、工程(I)で得られた、(E)熱可塑性樹脂組成物と接触した状態の成分(A)を加熱して含浸させる。具体的には、(E)熱可塑性樹脂組成物と接触した状態の成分(A)に対して、(E)熱可塑性樹脂組成物が溶融する温度において、ロールやバーで張力をかける、拡幅、集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作により、(E)熱可塑性樹脂組成物を成分(A)の内部まで含浸するようにする工程である。より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に繊維束を接触するように通して拡幅などを行う方法を挙げることができる。中でも、絞り口金、絞りロール、ロールプレス、ダブルベルトプレスを用いて含浸させる方法が好適に用いられる。ここで、絞り口金とは、進行方向に向かって、口金径の狭まる口金のことであり、成分(A)を集束させながら、余分に付着した(E)熱可塑性樹脂組成物を掻き取ると同時に、含浸を促す口金である。また、絞りロールとは、ローラーで成分(A)に張力をかけることで、余分に付着した(E)熱可塑性樹脂組成物を掻き取ると同時に、含浸を促すローラーのことである。また、ロールプレスは、2つのロール間の圧力で連続的に成分(A)内部の空気を除去すると同時に、含浸を促す装置であり、ダブルベルトプレスとは、成分(A)の上下からベルトを介してプレスすることで、含浸を促す装置である。
また、工程(II)において、(E)熱可塑性樹脂組成物の供給量の80〜100重量%が成分(A)に含浸されていることが好ましい。収率に直接影響するため、経済性、生産性の観点から供給量に対する含浸量が高いほど好ましい。また、(E)熱可塑性樹脂組成物の含浸量が供給量の80重量%以上であれば、工程(II)における揮発成分の発生に起因する(F)樹脂含浸強化繊維束内部のボイドを抑制することができる。より好ましくは、85〜100重量%であり、さらに好ましくは90〜100重量%である。
また、工程(II)において、加熱される(E)熱可塑性樹脂組成物の最高温度が150〜400℃であることが好ましい。150℃以上であれば、(E)熱可塑性樹脂組成物を十分に溶融して、強化繊維束への含浸をより効果的に進めることができる。180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。一方、400℃以下であれば、(E)熱可塑性樹脂組成物の分解反応などの副反応を抑制することができる。380℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましい。
工程(II)における加熱方法としては、特に限定しないが、具体的には、加熱したチャンバーを用いる方法や、ホットローラーを用いて加熱と加圧を同時に行う方法が例示できる。
また、(E)熱可塑性樹脂組成物の架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制する観点から、非酸化性雰囲気下で加熱することが好ましい。ここで、非酸化性雰囲気とは、酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を含有しない雰囲気、すなわち、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの面から、窒素雰囲気が好ましい。
また、前記工程(I)、(II)の前段階で、成分(A)を予め開繊してもよい。開繊とは、収束された成分(A)を分繊させる操作であり、(E)熱可塑性樹脂組成物の含浸性をさらに高める効果が期待できる。開繊により、成分(A)の厚みは薄くなり、開繊前の成分(A)の幅をb1(mm)、厚みをa1(μm)、開繊後の成分(A)の幅をb2(mm)、厚みをa2(μm)とした場合、開繊比=(b2/a2)/(b1/a1)を2.0以上とすることが好ましく、2.5以上とすることがさらに好ましい。
成分(A)の開繊方法としては、特に制限はなく、例えば凹凸ロールを交互に通過させる方法、太鼓型ロールを使用する方法、軸方向振動に張力変動を加える方法、垂直に往復運動する2個の摩擦体により成分(A)の張力を変動させる方法、成分(A)にエアを吹き付ける方法などを利用できる。
図1は、本発明で得られる(F)樹脂含浸強化繊維束の横断面形態の一例を示す概略図である。なお、本発明において、横断面とは、軸心方向に直交する面での断面を意味する。本発明において得られる(F)樹脂含浸強化繊維束は、成分(A)に(E)熱可塑性樹脂組成物を塗布、含浸せしめた複合体として形成されている(以下、(F)樹脂含浸強化繊維束を複合体とも称す)。この複合体の形態は図1に示すようなものであり、成分(A)の各単繊維1間に(E)熱可塑性樹脂組成物2が満たされている。すなわち、(E)熱可塑性樹脂組成物2の海に、成分(A)の各単繊維1が島のように分散している状態である。
上記複合体において、(E)熱可塑性樹脂組成物が成分(A)に良好に含浸した複合体とすることで、例えば、(B)ポリカーボネート樹脂と共に射出成形すると、射出成形機のシリンダー内で溶融混練された(E)熱可塑性樹脂組成物が、(B)ポリカーボネート樹脂に拡散し、成分(A)が(B)ポリカーボネート樹脂に分散することを助け、同時に(B)ポリカーボネート樹脂が成分(A)に置換、含浸することを助ける、いわゆる含浸助剤・分散助剤としての役割を持つ。
また、複合体においては、成分(A)が(E)熱可塑性樹脂組成物によって完全に含浸されていることが望ましいが、現実的にそれは困難であり、複合体にはある程度の空隙(成分(A)も(E)熱可塑性樹脂組成物も存在しない部分)が存在する。特に成分(A)の含有率が大きい場合には空隙が多くなるが、ある程度の空隙が存在する場合でも本発明の含浸・繊維分散促進の効果は示される。ただし空隙率が40%を超えると顕著に含浸・繊維分散促進の効果が小さくなるので、空隙率は40%未満が好ましい。より好ましい空隙率の範囲は20%以下である。空隙率は、複合体をASTM D2734(1997)試験法により測定するか、または複合体の横断面において、成分(A)と(E)熱可塑性樹脂組成物により形成される複合部の全面積と空隙部の全面積とから次式を用いて算出することができる。
(空隙率)[%]=(空隙部の全面積)/(複合部の全面積+空隙部の全面積)×100。
(空隙率)[%]=(空隙部の全面積)/(複合部の全面積+空隙部の全面積)×100。
さらに、得られた複合体の揮発分が少ないほど、成形時の揮発分が少なく、好ましい。200℃にて2時間乾燥させた後の重量減少が5%未満であることが好ましく、より好ましくは3%未満であり、さらに好ましくは1%未満である。
本発明において、成形材料は、(F)樹脂含浸強化繊維束(複合体)が、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物によって被覆された構造を有することが好ましい。ここで本発明において、「被覆された構造」とは、上記の様にして得られた複合体が(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物と適宜配置されて接着されてなるものであることが好ましい。その接着方法としては、例えば、溶融した(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物を複合体に接する様に配置し、冷却・固化する方法などが挙げられる。その手法については特に限定されないが、より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合体の周囲に(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物を配置し、ロール等で一体化させる方法を挙げることができる。
図2は、本発明で製造される成形材料の好ましい縦断面形態の一例を示す概略図である。なお、本発明において、縦断面とは、軸心方向を含む面での断面を意味する。本発明の成形材料の一例は、図2に示すように、成分(A)の単繊維1が成形材料の軸心方向にほぼ平行に配列され、かつ成分(A)の長さは成形材料の長さと実質的に同じ長さである。
ここで言う、「ほぼ平行に配列されている」とは、成分(A)の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。また、「実質的に同じ長さ」とは、例えばペレット状の成形材料において、ペレット内部の途中で成分(A)が切断されていたり、ペレット全長よりも有意に短い成分(A)が実質的に含まれたりしないことである。特に、そのペレット全長よりも短い成分(A)の量について規定されているわけではないが、ペレット全長の50%以下の長さの成分(A)の含有量が30質量%以下である場合には、ペレット全長よりも有意に短い成分(A)が実質的に含まれていないと評価する。さらに、ペレット全長の50%以下の長さの成分(A)の含有量は20質量%以下であることが好ましい。なお、ペレット全長とはペレット中の成分(A)の配向方向の長さである。成分(A)が成形材料と同等の長さを持つことで、成形品中の強化繊維長を長くすることができるため、優れた力学特性を得ることができる。
図3〜6はそれぞれ、本発明で製造される成形材料の縦断面形態の一例を模式的に表したものであり、図7〜10はそれぞれ、図3〜6に示される本発明で製造される成形材料の横断面形態の一例を模式的に表したものであり、図11は、本発明で製造される成形材料の横断面形態の一例を模式的に表したものである。
成形材料の断面形態は、成分(A)と(E)熱可塑性樹脂組成物からなる複合体に、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が接着するように配置されていれば図に示されたものに限定されないが、好ましくは図3〜5に示されるように、複合体が芯材となり(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物で層状に挟まれて配置されている構成が好ましい。
また図7〜9に示されるように、複合体を芯構造として、その周囲を(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が被覆するような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。また、図11に示されるような複数の複合体を(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が被覆するように配置する場合、複合体の数は2〜6程度が望ましい。
複合体と(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物の境界は接着され、境界付近で部分的に(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が複合体の一部に入り込み、複合体を構成する(E)熱可塑性樹脂組成物と相溶しているような状態、あるいは成分(A)に含浸しているような状態になっていてもよい。
本発明で製造される成形材料は、例えば射出成形やプレス成形などの手法により混練されて成形品となる。成形材料の取扱性の点から、複合体と(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物は成形が行われるまでは接着されたまま分離せず、前述したような形状を保っていることが好ましい。複合体と(B)ポリカーボネート樹脂では、形状(サイズ、アスペクト比)、比重、質量が全く異なるため、成形までの材料の運搬、取り扱い時、成形工程での材料移送時に分級し、成形品の力学特性にバラツキを生じたり、流動性が低下して金型詰まりを起こしたり、成形工程でブロッキングする場合があるが、図7〜9に例示されるような芯鞘構造の配置であれば、(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が複合体を拘束し、より強固な複合化ができる。また、図7〜9に例示されるような芯鞘構造にするか、図10に例示されるような層状配置とするか、いずれが有利であるかについては、製造の容易さと、材料の取り扱いの容易さから、芯鞘構造とすることがより好ましい。
本発明で製造される成形材料は、その軸心方向には、ほぼ同一の断面形状を保っていれば、連続であってもよいし、成形方法によっては連続のものをある長さに切断されていてもよい。1〜50mmの範囲の長さに切断されていることが好ましい。この長さに調整することにより、成形時の流動性、取扱性を十分に高めることができる。このように適切な長さに切断されてなる成形材料としてとりわけ好ましい態様は、射出成形用の長繊維ペレットが例示できる。
本発明により得られる成形材料を成形することにより、成形品を得ることができる。成形方法としては、射出成形が挙げられる。また、インサート成形、アウトサート成形などの一体化成形も容易に実施できる。さらに、成形後にも加熱による矯正処置や、熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの生産性に優れた接着工法を活用することもできる。
成形品としては、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、部材および外板、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、モンキー、レンチ等の工具類、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品などが挙げられる。また、パーソナルコンピューター、携帯電話などに使用される筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表される電気・電子機器用部材も挙げられる。中でも、本発明で製造される成形材料は、炭素繊維を用いていることから、電磁波遮蔽性に優れ、さらに難燃性を得られることから、電気・電子機器用部材に好ましく用いられる。
また、本発明の成形品に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長は、0.5〜3mmであることが好ましい。炭素繊維の重量平均繊維長が0.5mm以上であれば、力学特性や電磁波遮蔽性がより向上する。0.8mm以上がより好ましい。一方、炭素繊維の重量平均繊維長が3mm以下であれば、繊維分散性により優れ、表面外観が向上する。1.5mm以下がより好ましい。
また、上記重量平均繊維長を有する成形品を得るための方法としては、特に限定しないが、射出成形時にペレット内に繊維が長く残存した、いわゆる長繊維ペレットを用いる方法を挙げることができる。長繊維ペレットに含まれる炭素繊維の長さとしては、特に限定しないが、3〜20mmが好ましく、より好ましくは、4〜15mmである。
ここで、本発明における「重量平均繊維長」とは、重量平均分子量の算出方法を繊維長の算出に適用し、単純に数平均を取るのではなく、繊維長の寄与を考慮した下記の式から算出される平均繊維長を指す。ただし、下記の式は、炭素繊維の繊維径および密度が一定の場合に適用される。
重量平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの炭素繊維の個数。
重量平均繊維長=Σ(Mi2×Ni)/Σ(Mi×Ni)
Mi:繊維長(mm)
Ni:繊維長Miの炭素繊維の個数。
上記平均繊維長の測定は、次の方法により行うことができる。成形品を500℃で2時間灰化処理し、成形品中の炭素繊維を取り出し、この炭素繊維を水中に均一分散させる。炭素繊維が均一分散した分散水をシャーレにサンプリングした後、乾燥させ、光学顕微鏡(50〜200倍)にて観察する。無作為に選んだ1000本の炭素繊維の長さを計測して、上記式から重量平均繊維長を算出する。
また本発明の成形品は、厚さ1/8インチ(約3.2mm)におけるUL−94の難燃試験において、V−1以上であることが好ましく、厚さ1/32インチ(約0.8mm)におけるUL−94の難燃試験において、V−1以上であることがより好ましい。より好ましくはV−0である。成形品を例えば電気・電子機器用部材に用いた際の安全性の観点から、特に1/32インチのような薄い成形品における難燃性が重要となる。本発明の範囲の成形材料を使用することにより、リン酸エステル系難燃剤を含む樹脂組成物を炭素繊維に溶融含浸させた樹脂含浸強化繊維束をポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物により被覆してなることで、射出成形後の成形品においても、炭素繊維周りにリン酸エステル系難燃剤が存在しやすく、難燃性を発現しやすくなる傾向にあり、重量平均繊維長が0.5〜1.5mmであっても、難燃性を保持することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではない。
各実施例および比較例の使用原料としては、下記のものを使用した。
(B)ポリカーボネート樹脂
(B−1)帝人化成(株)製ポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)L−1225L:粘度平均分子量19,500、ビスフェノールAの炭酸エステル構造を有する
(B−2)出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A2600:粘度平均分子量26,000、ビスフェノールAの炭酸エステル構造を有する
(C)リン酸エステル系難燃剤
(C−1)大八化学工業(株)製縮合リン酸エステル系難燃剤“PX−200”
(D)熱可塑性樹脂
(D−1)チッソ(株)製ポリビニルホルマール“ビニレック”(登録商標)K:数平均分子量59,000
(D−2)新日鉄住友化学(株)製フェノキシ樹脂“YP−50”:数平均分子量50,000
(G)難燃剤
(G−1)大八化学工業(株)製縮合リン酸エステル系難燃剤“PX−200”
(G−2)燐化学工業(株)製赤燐系難燃剤“ノーバレット120”
(I)スチレン系樹脂
(I−1)旭化成ケミカルズ(株)製水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS樹脂)“タフテック”(登録商標)M1913
(I−2)(株)カネカ製MBS樹脂“カネエース”(登録商標)M−511
(I−3)三菱レイヨン(株)製アクリロニトリル−スチレン/シリコーン・アクリル コアシェル型複合ゴム“メタブレン”(登録商標)SRK200A。
(B)ポリカーボネート樹脂
(B−1)帝人化成(株)製ポリカーボネート樹脂“パンライト”(登録商標)L−1225L:粘度平均分子量19,500、ビスフェノールAの炭酸エステル構造を有する
(B−2)出光興産(株)製ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A2600:粘度平均分子量26,000、ビスフェノールAの炭酸エステル構造を有する
(C)リン酸エステル系難燃剤
(C−1)大八化学工業(株)製縮合リン酸エステル系難燃剤“PX−200”
(D)熱可塑性樹脂
(D−1)チッソ(株)製ポリビニルホルマール“ビニレック”(登録商標)K:数平均分子量59,000
(D−2)新日鉄住友化学(株)製フェノキシ樹脂“YP−50”:数平均分子量50,000
(G)難燃剤
(G−1)大八化学工業(株)製縮合リン酸エステル系難燃剤“PX−200”
(G−2)燐化学工業(株)製赤燐系難燃剤“ノーバレット120”
(I)スチレン系樹脂
(I−1)旭化成ケミカルズ(株)製水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS樹脂)“タフテック”(登録商標)M1913
(I−2)(株)カネカ製MBS樹脂“カネエース”(登録商標)M−511
(I−3)三菱レイヨン(株)製アクリロニトリル−スチレン/シリコーン・アクリル コアシェル型複合ゴム“メタブレン”(登録商標)SRK200A。
各実施例および比較例における評価は下記方法により行った。
(1)成形品(評価用試験片)の作製
各実施例および比較例により得られたペレット状の成形材料を、住友重機械工業社製SE75DUZ−C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:290℃、金型温度:90℃で射出成形することにより、成形品(評価用試験片)を成形した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた成形品を温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置した後、後述の評価に供した。
各実施例および比較例により得られたペレット状の成形材料を、住友重機械工業社製SE75DUZ−C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:290℃、金型温度:90℃で射出成形することにより、成形品(評価用試験片)を成形した。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。得られた成形品を温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間静置した後、後述の評価に供した。
(2)繊維分散性
上記(1)に記載の方法により、100mm×100mm(3mmt)の成形品を成形し、表裏それぞれの面に存在する未分散の強化繊維束の個数を目視で計数した。評価は50枚の成形品について行い、以下の基準に基づき、その合計個数について繊維分散性の判定を行った。A〜Cを合格と判断した。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上5個未満
C:未分散CF束が5個以上10個未満
D:未分散CF束が10個以上。
上記(1)に記載の方法により、100mm×100mm(3mmt)の成形品を成形し、表裏それぞれの面に存在する未分散の強化繊維束の個数を目視で計数した。評価は50枚の成形品について行い、以下の基準に基づき、その合計個数について繊維分散性の判定を行った。A〜Cを合格と判断した。
A:未分散CF束が1個未満
B:未分散CF束が1個以上5個未満
C:未分散CF束が5個以上10個未満
D:未分散CF束が10個以上。
(3)難燃性
上記(1)に記載の方法により、125mm×13mm(厚さ1/32インチ:約0.8mm、厚さ1/8インチ:約3.2mm)の成形品を成形し、UL−94に準拠して難燃性評価を実施した。具体的には、垂直に支持した上記成形品の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を成形品から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。なお、下記範囲を超えて燃焼する場合は、V−outとした。
V−0:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−1:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−2:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物があった。
上記(1)に記載の方法により、125mm×13mm(厚さ1/32インチ:約0.8mm、厚さ1/8インチ:約3.2mm)の成形品を成形し、UL−94に準拠して難燃性評価を実施した。具体的には、垂直に支持した上記成形品の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を成形品から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。なお、下記範囲を超えて燃焼する場合は、V−outとした。
V−0:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−1:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V−2:1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物があった。
(4)溶融粘度の安定性(熱可塑性樹脂組成物の均一性)
(E)熱可塑性樹脂組成物の粘度安定性を評価するため、粘弾性測定器を用いて、40mmのパラレルプレートを使用し、0.5Hz、190℃の条件下で、各実施例および比較例に用いた(E)熱可塑性樹脂組成物の粘度を60分間測定した。下記式により粘度変化率を求めた。
粘度変化率(%)=(60分経過前後の粘度差/初期粘度)×100
均一な(E)熱可塑性樹脂組成物でない場合には、加熱時に溶融状態が変化し、結果として(E)熱可塑性樹脂組成物としての粘度変化をすることから、溶融粘度の安定性から均一性を判断できる。均一な(E)熱可塑性樹脂組成物であることで、安定して成形材料を製造できる。
(E)熱可塑性樹脂組成物の粘度安定性を評価するため、粘弾性測定器を用いて、40mmのパラレルプレートを使用し、0.5Hz、190℃の条件下で、各実施例および比較例に用いた(E)熱可塑性樹脂組成物の粘度を60分間測定した。下記式により粘度変化率を求めた。
粘度変化率(%)=(60分経過前後の粘度差/初期粘度)×100
均一な(E)熱可塑性樹脂組成物でない場合には、加熱時に溶融状態が変化し、結果として(E)熱可塑性樹脂組成物としての粘度変化をすることから、溶融粘度の安定性から均一性を判断できる。均一な(E)熱可塑性樹脂組成物であることで、安定して成形材料を製造できる。
(5)相溶性
(E)熱可塑性樹脂組成物の相溶性を評価するため、(E)熱可塑性樹脂組成物を190℃に加熱した顕微鏡用ホットステージを用い、位相差顕微鏡(倍率50倍)にて観察した。50倍にて観察を行い、相分離して2相以上に観察された(E)熱可塑性樹脂組成物は相溶しないと判断した。
(E)熱可塑性樹脂組成物の相溶性を評価するため、(E)熱可塑性樹脂組成物を190℃に加熱した顕微鏡用ホットステージを用い、位相差顕微鏡(倍率50倍)にて観察した。50倍にて観察を行い、相分離して2相以上に観察された(E)熱可塑性樹脂組成物は相溶しないと判断した。
(6)曲げ強度
上記(1)に記載の方法により、曲げ試験用試験片(幅10mm、厚さ4mm)を成形し、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
上記(1)に記載の方法により、曲げ試験用試験片(幅10mm、厚さ4mm)を成形し、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン”(登録商標)万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
(7)ノッチ付きシャルピー衝撃強度
上記(1)に記載の方法により、シャルピー衝撃試験用試験片(幅10mm、厚さ4mm)を成形し、ISO 179−1に準拠し、1.0Jのハンマーを用いて、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。なお、ISO 2818に準拠して、ノッチ角度45°、深さ2mmのノッチ加工を施したものをシャルピー衝撃試験用試験片として用いた。
上記(1)に記載の方法により、シャルピー衝撃試験用試験片(幅10mm、厚さ4mm)を成形し、ISO 179−1に準拠し、1.0Jのハンマーを用いて、ノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。なお、ISO 2818に準拠して、ノッチ角度45°、深さ2mmのノッチ加工を施したものをシャルピー衝撃試験用試験片として用いた。
(参考例1)炭素繊維の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.12の炭素繊維を得た。この炭素繊維のストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単繊維径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cm3、表面酸素濃度[O/C]0.12の炭素繊維を得た。この炭素繊維のストランド引張強度は4880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。
ここで、表面酸素濃度比は、表面酸化処理を行ったあとの炭素繊維を用いて、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
(参考例2)サイジング剤の付与
参考例1で作製された炭素繊維を用いて、サイジング剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量:140g/eq)を2重量%になるように水に溶解させたサイジング処理液を調製し、付着量が0.5重量%になるよう、浸漬法により強化繊維束にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行い、炭素繊維−1を作製した。
参考例1で作製された炭素繊維を用いて、サイジング剤として、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量:140g/eq)を2重量%になるように水に溶解させたサイジング処理液を調製し、付着量が0.5重量%になるよう、浸漬法により強化繊維束にサイジング剤を付与し、230℃で乾燥を行い、炭素繊維−1を作製した。
(参考例3)(H−1)液晶性樹脂の作製(1)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.68℃/分で昇温させ、270℃から350℃までを平均昇温速度1.4℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、(H−1)液晶性樹脂(融点=330℃)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.68℃/分で昇温させ、270℃から350℃までを平均昇温速度1.4℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、(H−1)液晶性樹脂(融点=330℃)を得た。
得られた(H−1)液晶性樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃で1H−NMR測定を実施した。7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位由来のピーク面積比から組成を分析したところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(I−1)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(II1−1)およびハイドロキノン由来の構造単位(II2−1)の合計に対する構造単位(I−1)の割合は、75モル%であった。また、構造単位(II1−1)と構造単位(II2−1)の合計に対する構造単位(II1−1)の割合は60モル%であった。さらに、テレフタル酸由来の構造単位(IV1−1)と、イソフタル酸由来の構造単位(IV2−1)の合計に対する構造単位(IV1−1)の割合は76モル%であった。また、構造単位(II1−1)および構造単位(II2−1)の合計と、構造単位(IV1−1)および構造単位(IV2−1)の合計とは実質的に等モルであった。
また、得られた(H−1)液晶性樹脂について、高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて、温度:液晶性ポリエステルの融点+10℃、剪断速度:1000/秒の条件で溶融粘度を測定したところ、28Pa・sであった。
(参考例4)(H−2)液晶性樹脂の作製(2)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸969重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、325℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を325℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱撹拌した。その後、放圧し1.0時間で133Paに減圧し、更に120分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、(H−2)液晶性樹脂(融点=314℃)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸969重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させた後、325℃まで4時間で昇温した。その後、重合温度を325℃に保持し、0.1MPaに窒素加圧し、20分間加熱撹拌した。その後、放圧し1.0時間で133Paに減圧し、更に120分間反応を続け、トルクが12kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、(H−2)液晶性樹脂(融点=314℃)を得た。
得られた(H−2)液晶性樹脂について、上記参考例3と同様に組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(I−2)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(II−2)およびポリエチレンテレフタレート由来のエチレンジオキシ単位(III−2)の合計に対して、構造単位(I−2)および構造単位(II−2)の合計が80モル%、構造単位(I−2)、(II−2)および(III−2)の合計に対して、構造単位(III−2)が12.5モル%であり、構造単位(I−2)の構造単位(II−2)に対するモル比[(I)/(II)]は91.5/8.5であり、テレフタル酸およびポリエチレンテレフタレート由来の芳香族ジカルボン酸単位(IV−2)は、構造単位(II−2)および(III−2)の合計と等モルであった。
また、得られた(H−2)液晶性樹脂について、上記参考例3と同様に溶融粘度を測定したところ、12Pa・sであった。
実施例1
所望の温度に加熱されたニーダーに、(C)リン酸エステル系難燃剤(C−1)、(D)熱可塑性樹脂(D−1)を投入し、250℃で30分間溶融混合することにより、(E)熱可塑性樹脂組成物を作製した。
所望の温度に加熱されたニーダーに、(C)リン酸エステル系難燃剤(C−1)、(D)熱可塑性樹脂(D−1)を投入し、250℃で30分間溶融混合することにより、(E)熱可塑性樹脂組成物を作製した。
塗布温度に加熱されたロール上に、上記方法により得られた(E)熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためリバースロールを用いた。このロール上を参考例2により得られた連続した炭素繊維−1を接触させながら通過させて(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させた。次に、含浸温度に加熱されたチャンバー内にて、(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させた炭素繊維−1を、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、(E)熱可塑性樹脂組成物を炭素繊維束の内部まで含浸させ、所定の配合量とした(F)樹脂含浸強化繊維束を形成した。また、この際に塗布量と含浸量から、付着量を算出した結果、80重量%であった。なお、炭素繊維−1の投入量と(E)熱可塑性樹脂組成物のロール上の厚みから、所望の配合量になるように調整した。
上記方法により得られた(F)樹脂含浸強化繊維束を、日本製鋼所(株)TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機から(B)ポリカーボネート樹脂(B−1)を溶融した状態でダイ内に吐出させ、(F)樹脂含浸強化繊維束の周囲を被覆するように連続的に配置した。この際、各成分が表1に示す配合量になるよう、(F)樹脂含浸強化繊維束の量と、(B)ポリカーボネート樹脂(B−1)の吐出量を調整した。得られた連続状の成形材料を冷却後、カッターで切断して、7mmの長繊維ペレット状の成形材料とした。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
実施例2〜7
各成分の種類と配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表1に示した。
各成分の種類と配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表1に示した。
実施例8〜9
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度290℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、所望の重量比により、(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)と(G)リン系難燃剤(G−1)または(G−2)をドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練ペレットを得た。(B)ポリカーボネート樹脂(B−1)にかえて上記ポリカーボネート樹脂組成物を用い、各成分の種類と配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表1に示した。
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度290℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、所望の重量比により、(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)と(G)リン系難燃剤(G−1)または(G−2)をドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練ペレットを得た。(B)ポリカーボネート樹脂(B−1)にかえて上記ポリカーボネート樹脂組成物を用い、各成分の種類と配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表1に示した。
比較例1
各成分の種類と配合量を表2に示す。(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させず、成分(A)を直接成分(B)で被覆した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表2に示した。
各成分の種類と配合量を表2に示す。(E)熱可塑性樹脂組成物を付着させず、成分(A)を直接成分(B)で被覆した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表2に示した。
比較例2
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更し、(E)熱可塑性樹脂組成物を溶融混合しなかった以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が成形時に変化するため、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更し、(E)熱可塑性樹脂組成物を溶融混合しなかった以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が成形時に変化するため、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
比較例3
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高いため成分(A)への含浸が難しく、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高いため成分(A)への含浸が難しく、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
比較例4
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表2に示した。
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表2に示した。
比較例5
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更し、(E)熱可塑性樹脂組成物を120℃にて溶融混合した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物が均一成分ではなかったため、安定して塗布できず、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
各成分の種類と配合量を表2に記載したとおりに変更し、(E)熱可塑性樹脂組成物を120℃にて溶融混合した以外は、実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製したが、(E)熱可塑性樹脂組成物が均一成分ではなかったため、安定して塗布できず、成形可能な長繊維ペレットは安定して製造できなかった。評価結果をまとめて表2に示した。
実施例10〜19
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度290℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、所望の重量比により、(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)と(H)液晶性樹脂または(I)スチレン系樹脂をドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練ペレットを得た。(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)にかえて上記ポリカーボネート樹脂組成物を用い、各成分の種類と配合量を表3に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表3に示した。
JSW製TEX−30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度290℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、所望の重量比により、(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)と(H)液晶性樹脂または(I)スチレン系樹脂をドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断してポリカーボネート樹脂組成物の溶融混練ペレットを得た。(B)ポリカーボネート樹脂(B−2)にかえて上記ポリカーボネート樹脂組成物を用い、各成分の種類と配合量を表3に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして長繊維ペレットを作製した。評価結果をまとめて表3に示した。
以上のように、実施例1〜19においては、安定して成形材料を製造することができ、得られた成形材料を成形した際には、繊維分散性が良好であった。また、成形品の力学特性と難燃特性が良好であった。一方比較例1〜5においては、安定して成形材料を製造できないか、繊維分散性に劣る成形材料しか得られなかった。
本発明の成形材料の製造方法によれば、良好な難燃性を有すると共に、成形時にポリカーボネート樹脂への炭素繊維の分散性が良好な成形材料を得られるため、曲げ特性や耐衝撃特性などの力学特性に優れた成形品が得られ、種々の用途に展開できる。特に電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に好適である。
1 成分(A)の単繊維
2 (E)熱可塑性樹脂組成物
3 (F)樹脂含浸強化繊維束
4 (B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物
2 (E)熱可塑性樹脂組成物
3 (F)樹脂含浸強化繊維束
4 (B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物
Claims (10)
- 下記成分(A)〜(D)を含む成形材料の製造方法であって、下記成分(A)〜(D)の合計100重量部に対して、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させて(F)樹脂含浸強化繊維束を得て、該(F)樹脂含浸強化繊維束を下記成分(B)で被覆する成形材料の製造方法。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部 - 前記(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂および(G)リン系難燃剤を含むポリカーボネート樹脂組成物であって、(B)ポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂とリン系難燃剤の重量比がポリカーボネート樹脂/リン系難燃剤=99/1〜80/20である請求項1に記載の成形材料の製造方法。
- 前記成分(D)がフェノキシ樹脂である請求項1または2に記載の成形材料の製造方法。
- 前記成分(E)の190℃における溶融粘度が0.1〜10Pa・sである請求項1〜3のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
- 前記成分(A)に使用される炭素繊維の表面酸素濃度比[O/C]が0.1〜0.2である請求項1〜4のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
- 前記成分(A)におけるサイジング剤が3官能以上の脂肪族エポキシ樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
- 前記成分(B)におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が25,000〜35,000である請求項1〜6のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
- 前記(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物が、(H)液晶性樹脂および/または(I)スチレン系樹脂を含むポリカーボネート樹脂組成物である、請求項1〜7のいずれかに記載の成形材料の製造方法。
- 下記成分(A)〜(D)を合計100重量部含む成形材料であって、下記成分(C)と下記成分(D)を200〜300℃にて溶融混合した(E)熱可塑性樹脂組成物を下記成分(A)に溶融含浸させた(F)樹脂含浸繊維束を下記成分(B)で被覆してなる成形材料。
(A)エポキシ樹脂を含むサイジング剤が0.01〜3.0重量%の範囲で付着した炭素繊維 5〜35重量部
(B)ポリカーボネート樹脂またはポリカーボネート樹脂組成物 45〜93.9重量部
(C)リン酸エステル系難燃剤 1〜15重量部
(D)熱可塑性樹脂 0.1〜5重量部 - 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる成形材料または請求項9に記載の成形材料を射出成形してなる成形品であって、成形品に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が0.5〜1.5mmであり、成形品の厚さ1/32インチにおける、UL−94の難燃性がV−1以上である成形品。
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-
2014
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