JP2014155337A - 交流電動機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】3相のうち1相のセンサ相(W相)に流れる電流を検出する電動機制御装置において、制御部は、交流電動機の停止時、電流指令ベクトルとW相軸とが3相座標上で直交しているか否かを判定し、直交している場合、電流指令位相φを操作することで、電流指令ベクトルの位相角(電気角θe+位相φ+90°)をW相軸と非直交化する。電流指令ベクトルとW相軸とが直交していると、センサ値iw_snsが常にゼロで検出されることとなり、その結果、1相制御では交流電動機を安定して駆動することができなくなる。そこで、電流指令ベクトルとW相軸とを非直交化することで、交流電動機の停止位置によらず非ゼロのセンサ値iw_snsを常に検出可能とする。
【選択図】図7
Description
ところで、交流電動機が停止し、且つ、非ゼロの電流指令が指令されている状態を想定する。電気角及び電流指令ベクトルの位相によっては、センサ相の相電流がゼロとなる位置で停止する場合があり得る。この場合、センサ相の電流検出値は常にゼロで検出されることとなる。
そして、電流指令ベクトルとセンサ相の軸とが直交していると判定したとき、電流指令ベクトルの位相角における位相(φ)又は電気角(θe)を操作することで、電流指令ベクトルとセンサ相の軸とを非直交化する「非直交化処理」を実行する。
また、「電流指令ベクトルとセンサ相の軸とが直交している」の「直交」とは、交差角度が厳密に90[°]の場合のみでなく、交差角度が90[°]付近の所定範囲である場合を含む。また、「非直交」とは、交差角度が厳密に90[°]の位置のみを除くのではなく、交差角度が90[°]付近の所定範囲以外であることを意味する。
さらに、位相角を定義した電流指令ベクトルについては、位相角を観念することができない「ゼロベクトル」、すなわち振幅ゼロのベクトルを除外する。
逆に、交流電動機の停止時に、電流指令ベクトルとセンサ相の軸とを非直交となるようにすれば、非ゼロであるセンサ相の電流検出値を常に検出可能となる。
この場合、電流指令ベクトルに基づき発生するトルクを一定に保つように電流振幅を変更しつつ、電流指令位相を操作することが好ましい。具体的には、dq座標上の等トルクライン上で電流指令ベクトルを移動させるとよい。
最初に、複数の実施形態に共通の構成について、図1、図2を参照して説明する。この実施形態による「交流電動機の制御装置」としての電動機制御装置10は、ハイブリッド自動車を駆動する電動機駆動システムに適用される。
図1に示すように、電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、及び電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えたハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、及び、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている
インバータ12には、図示しない昇圧コンバータによる直流電源の昇圧電圧がインバータ入力電圧VHとして入力される。インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。制御部15のPWM信号生成部25から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてスイッチング素子のオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
本実施形態では、電流センサ13がW相に設けられている構成を前提として説明する。すなわち、「W相」は「センサ相」と同義であり、「W相のセンサ値iw_sns」が「センサ相の電流検出値」に相当する。また、3相座標におけるW相軸が「センサ相の軸」に相当する。なお、他の実施形態では、U相又はV相をセンサ相としてもよい。
本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバであるが、その他の実施形態では、ロータリエンコーダ等、他種のセンサを用いてもよい。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
一方、回転数N>0(正転)で、トルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
dq軸電流指令id*、iq*、又はセンサ値iw_sns等の電流について「ゼロ」というとき、厳密な0[A]のみでなく、検出誤差や機器の分解能を考慮し、実質的に0[A]と同等の範囲の値を含む。また、「非ゼロ」というとき、厳密な0[A]のみを除くのではなく、実質的に0[A]と同等の範囲以外の値を意味する。
また、特に言及しない限り、以下の説明では、d軸電流指令id*、及びq軸電流指令iq*の少なくとも一方は非ゼロであることを前提とする。言い換えれば、電流指令ベクトルの振幅Iaが非ゼロであることを前提とする。以下、「d軸電流及びq軸電流」を適宜「dq軸電流」のように表す。
交流電動機2のロータの回転について「停止」というとき、回転数Nが厳密に0[rpm]の場合のみでなく、回転数Nが所定の回転数以下の低回転状態を含む。例えば、制御周期又は電流センサ13のサンプリング間隔Ts(図3参照)に比べて電気角周期が十分に大きいときを「停止」という。また、「停止時」、「停止状態」等の用語中の「停止」もこれと同じ意味で解釈する。
その反面、交流電動機2の通電を制御するにあたり、1相のセンサ値に基づく「1相制御」を行う必要がある。1相制御にはいくつかの方法があるが、いずれの制御方法でも、2相のセンサ値に基づく2相制御に比べて実機情報が乏しくなる傾向がある。
図3は、W相電流波形について、回転数Nの違いによる、電流センサ13のサンプリング間隔Tsと、電気角移動量Δθe及び電流変化量Δiwとの関係を模式的に示した図である。(a)は高回転時、(b)は中回転時、(c)は低回転時の相電流波形を示す。ここでの「高回転、中回転、低回転」は、相対的な意味でのみ用い、具体的な回転数を意味しない。また、サンプリング間隔Tsは、回転数Nによらず一定とする。
中回転時は、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθe及び電流変化量Δiwが高回転時よりも減少するため、実機情報がやや不足し、1相制御での精度が低下する。
低回転時は、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθe及び電流変化量Δiwがさらに減少し、電流変化量Δiwがゼロに近くなる。そのため、実機情報が乏しくなり、1相制御が成立しない場合があり得る。
なお、3相の相電流にはキルヒホッフの法則により、式(1)が成立している。
iu+iv+iw=0 ・・・(1)
ここで、上述のように、「停止」には、停止に近い低回転状態を含む。交流電動機2が非常にゆっくり回転する場合には、いずれ、センサ値iw_snsが「ゼロ」の範囲から脱するときがくると推察される。したがって、「常にゼロである」という表現は、「永久にゼロである」という意味でなく、「制御周期に対し十分長い期間ゼロの状態を継続する」という意味で解釈する。
以上のように、交流電動機2が停止しているとき、1相制御では、交流電動機2の駆動制御が不安定になるという問題がある。
そこで、本発明の実施形態による電動機制御装置10は、交流電動機2が停止したときの電気角θe及び電流指令位相φによらず、センサ値iw_snsを常に非ゼロ値で検出可能とするための制御部15の構成を特徴としている。以下、制御部15の構成及び作用効果を第1〜第3実施形態毎に説明する。第1、第2、第3実施形態の制御部の符号を、それぞれ、151(図5)、152(図11)、153(図13)とする。
第1実施形態の制御部151の構成について、図5〜図9を参照して説明する。
図5に示すように、制御部151は、電流指令演算部21、電流減算器22、PI演算部23、逆dq変換部24、PWM信号生成部25、電流推定部30、及び、電流指令確定部51を有する。
電流指令補正部511は、dq軸電流指令id*、iq*による電流指令ベクトルについて、後述するように、W相軸との「直交判定」を行い、直交している場合、「非直交化処理」を実行する。また、非直交化処理において、dq軸電流指令id*、iq*を補正したdq軸電流指令id**、iq**を演算する。
電流指令選択部513は、電気角θe、電流指令位相φ、センサ値iw_snsの情報を取得し、当初のdq軸電流指令id*、iq*、又は補正後のdq軸電流指令id**、iq**を選択してdq軸電流指令確定値id_fix、iq_fixとして出力する。電流指令選択部513は、非直交化処理を実行する場合、補正後のdq軸電流指令id**、iq**を選択する。
電流減算器22は、d軸電流減算器221及びq軸電流減算器222を有する。d軸電流減算器221では、電流推定部30にて算出されてフィードバックされるd軸電流推定値id_estとd軸電流指令確定値id_fixとの差であるd軸電流偏差Δidを算出する。また、q軸電流減算器222では、電流推定部30にて算出されてフィードバックされるq軸電流推定値iq_estとq軸電流指令確定値iq_fixとの差であるq軸電流偏差Δiqを算出する。
逆dq変換部24では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づき、dq軸電圧指令vd*、vq*を、U相電圧指令vu*、V相電圧指令vv*、及びW相電圧指令vw*に変換する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。
上述したように、交流電動機2の停止位置によって、dq軸電流指令id*、iq*の少なくとも一方が非ゼロであるにもかかわらず、センサ値iw_snsが常にゼロで検出される場合がある。この状態は、図7(a)のように3相座標で示される。
なお、基準の取り方を特定しない場合には、定数Cを用いて、電流指令ベクトルの位相角を一般的に(θe+φ+C)と表すことができる。
すなわち、電流指令ベクトルとW相軸とが直交した状態で交流電動機2が停止すると、センサ値iw_snsが常にゼロで検出されることとなる。そのため、電流推定部30が特許文献1の技術を用いて電流推定値をフィードバックする構成では、上述したように、フィードバック制御がされていないのと同然の状態となり、交流電動機2の駆動制御が不安定になる。
「電流指令位相φを操作する」とは、電流指令ベクトルの位相をφ(図7(a))からφ’(図7(b))に進角又は遅角させることをいう。図7(b)の電流指令ベクトルは、d軸成分id**、及びq軸成分iq**からなり、位相角が(θe+φ’+90[°])と表される。電気角θeは、操作前と同じである。図7(b)の電流指令ベクトルは、W相軸と直交するCW軸からずれており、W相軸と非直交となっている。
Ia×sin(0[°])=0[A]
で表される。例えば、この状態から電流指令ベクトルの位相φを30[°]ずらしたとき、電流指令ベクトルのW相軸方向の成分は、
Ia×sin(30[°])=(1/2)Ia[A]
となる。よって、非ゼロのセンサ値iw_snsを検出可能となる。
図8の時間軸において、切替タイミングtx以前は、図7(a)に対応する非直交化前の状態を示しており、切替タイミングtxにて、図7(b)に対応する非直交化処理が行われたことを示している。
切替タイミングtx以前は、図7(a)に示すように電流指令ベクトルがW相軸と直交した状態で停止しているため、センサ値iw_snsは、常にゼロである。したがって、d軸電流指令id*、及びq軸電流指令iq*がいずれも非ゼロであるにもかかわらず、交流電動機2は駆動されず、回転数Nがゼロのままである。
すると、電流推定部30は、センサ値iw_snsを反映したdq軸電流推定値id_est、iq_estを推定しフィードバックすることができるようになるため、電流指令id*、iq*に基づいて適正なdq軸電圧指令vd*、vq*に基づく電圧がインバータ12に印加され、交流電動機2が駆動される。そのため、切替タイミングtx以後、回転数Nは上昇し、センサ値iw_snsは、正弦波形で変化する。
次に、電流指令位相φの操作に係る好ましい構成について図9を参照して説明する。
記号は、以下のとおりである。
p:交流電動機の極対数
Ld、Lq:d軸自己インダクタンス、q軸自己インダクタンス
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
また、CL0は、当初の電流指令ラインであり、トルク指令trq*の変化に応じて、このラインに沿って電流指令ベクトルを最適に変化させる。CL1、CL2は、当初のCL0から位相φを遅角又は進角させたときに想定される電流指令ラインである。
S01では、回転角センサ14から取得した電気角θeに基づき回転数Nを取得する。そして、取得した回転数Nが、非直交化処理を必要とする所定の回転数以下であることを確認する。この所定の回転数は、非直交化の必要性に応じて設定してよい。
S02では、電流センサ13からセンサ値iw_snsを取得する。
S04にて、電流指令ベクトルとW相軸とが非直交であると判定したとき(S04:NO)、S11で、電流指令演算部21が指令した当初のdq軸電流指令id*、iq*の位相φを維持し、dq軸電流指令id*、iq*をdq軸電流指令確定値id_fix、iq_fixとして、S13に移行する。
以上で、制御部151による交流電動機2の通電制御ルーチンを終了する。
(1)制御部151は、交流電動機2の停止時、電流指令ベクトルとW相軸とが3相座標上で直交しているか否かを判定し、直交している場合、電流指令ベクトルとW相軸とを非直交化する。電流指令ベクトルとW相軸とが直交していると、センサ値iw_snsが常にゼロで検出されることとなり、その結果、1相制御では交流電動機2の駆動制御が不安定になる。そこで、電流指令ベクトルとW相軸とを非直交化することで、交流電動機2の停止位置によらず非ゼロのセンサ値iw_snsを常に検出可能とすることができる。これにより、特に交流電動機2の始動時や低回転域での推定精度を向上することができ、交流電動機2を安定して駆動することができる。
本発明の第2実施形態の電動機制御装置について図11、図12を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、直交判定処理及び非直交化処理は同様であり、選択されたdq軸電流指令確定値id_fix、iq_fixに基づいてdq軸電圧指令vd*、vq*を演算する構成が異なる。
vd=Ra×id+Ld×(d/dt)id−ω×Lq×iq ・・・(3.1)
vq=Ra×iq+Lq×(d/dt)iq+ω×Ld×id+ω×ψ
・・・(3.2)
Ra:電機子抵抗
Ld、Lq:d軸自己インダクタンス、q軸自己インダクタンス
ω:電気角速度
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
vd*=Ra×id_fix−ω×Lq×iq_fix ・・・(4.1)
vq*=Ra×iq_fix+ω×Ld×id_fix+ω×ψ ・・・(4.2)
vd*=Ra×id_fix・・・(4.3)
vq*=Ra×iq_fix・・・(4.4)
vd*=Ka×Ra×id_fix ・・・(4.5)
vq*=Ka×Ra×iq_fix ・・・(4.6)
式(4.5)、(4.6)における電機子抵抗Raは、温度特性によりばらつく可能性がある。また、その他にも交流電動機2や電動機制御装置等に関する物理的な要因等によって、指令通りのトルクが得られる電圧指令値がフィードフォワード電圧指令演算による電圧指令演算値と乖離する可能性がある。したがって、センサ値iw_snsを用いることで、実機の情報を反映した補正をすることが好ましい。そこで、本実施形態のフィードフォワード電圧指令演算では、振幅補正を採用している。
Ka=iw*/iw_sns ・・・(5)
本発明の第3実施形態の電動機制御装置について図13〜図16を参照して説明する。第3実施形態は、第1、第2実施形態に対し、非直交化処理の構成が異なる。すなわち、電流指令ベクトルとW相軸とが直交しているとき、電流指令位相φを操作するのでなく、電気角θeを操作することで非直交化する。
dq軸電圧指令演算部43は、電流指令演算部21が指令した当初のdq軸電流指令id*、iq*に基づいて、通常制御用のdq軸電圧指令vd*、vq*を演算する。この演算は、第1実施形態と同様の電流フィードバック制御演算でもよく、第2実施形態と同様のフィードフォワード電圧指令演算でもよい。dq軸電圧指令演算部43のブロックは、両方の演算の構成を包括して示すものとする。ブロックに入力されるセンサ値iw_sns及び電気角θeは、演算方法に応じて適宜選択され、或いは、回転数N、電気角速度ω等の値に変換されるものとする。なお、フィードフォワード電圧指令演算の場合の振幅補正の構成は第2実施形態と同様であり、図示を省略する。
電流指令位相変換部522は、当初のdq軸電流指令id*、iq*から変換した電流指令位相φをdq軸電圧指令選択部523に出力する。
dq軸電圧指令選択部523は、電気角θe、電流指令位相φ、センサ値iw_snsの情報を取得し、dq軸電圧指令演算部43で演算された通常制御用のdq軸電圧指令vd*、vq*、又は、電気角操作部521で演算された電気角移動用のdq軸電圧指令vd**、vq**を選択し、dq軸電圧指令確定値vd_fix、vq_fixとして逆dq変換部24へ出力する。電流指令選択部523は、非直交化処理を実行する場合、電気角移動用のdq軸電圧指令vd**、vq**を選択する。
図14(a)は、第1実施形態の図7(a)と基本的に同一であり、電流指令ベクトルがW相軸と直交する位置で停止した状態を示している。このとき、センサ値iw_snsは常にゼロとなり、交流電動機2を安定して駆動させることができない。
特に第3実施形態では、交流電動機2の停止位置に着目し、図14(a)にて、U相軸を基準とした+d軸の電気角θeを「現在の停止位置」と表している。上述したとおり、「停止」とは、厳密に回転数が0[rpm]の状態のみでなく、制御周期に対する電気角移動量Δθeが小さい低回転状態を含む。第3実施形態では、電気角θeを操作し、停止位置を移動させることで、非直交化を実現する。
電気角θeを操作するためには、位置決め制御やq軸電流指令操作によって微小トルクを発生させることにより、交流電動機2のロータを回転させる。ロータ回転角(機械角)は、(電気角/極対数)に等しいため、例えば極対数が4のとき、電気角の30[°]をロータ回転角に換算すると7.5[°]となる。
操作手順としては、電流ベクトルを僅かに操作し、ロータ位置を微動させることが好ましい。詳しくは、現在の停止位置の電気角θeをホールドしておき、目標停止位置の電気角θe’まで、電流指令ラインCL0に沿ってdq軸電流指令id*、iq*を操作し、それによりdq軸電圧指令vd*、vq*に基づく電圧を印加してトルクを発生させることで停止位置を操作する(図15(a)参照)。
vd=Ra×id ・・・(6.1)
vq=Ra×iq ・・・(6.2)
或いは、q軸電流指令iq*のみを操作し、それによりq軸電圧指令vq*に基づく電圧のみを印加することでトルクを発生させてもよい(図15(b)参照)。
センサ値iw_snsが検出可能となりさえすれば、操作量についての厳密な精度も要求されない。したがって、例えば、電気角移動量Δθeを見ながらdq軸電圧指令を1LSB(分解能)ずつ増減する等の方法で、dq軸電圧指令を適宜操作すればよい。
また、上記の式(6.1)、(6.2)を計算で求めたり、トルク指令や電流指令に対する電圧指令をマップに格納しておいたり、角度移動量等の諸量を元に電圧指令の増減を直接操作したりすることによっても目的を達成できる。
さらに、目標停止位置θe’の設定や、目標停止位置θe’までの操作レートの設定について、ユーザの違和感を防止するため、上限値を設けてもよい。
S04にて、電流指令ベクトルとW相軸とが非直交であると判定したとき(S04:NO)、S21で現在の電気角θeを維持し、S22で、電気角θeに基づくdq軸電圧指令vd*、vq*をdq軸電圧指令確定値vd_fix、vq_fixとして、S05に移行する。
その他のステップは、第1実施形態と同様である。
ユーザの違和感を防止するという観点から言えば、例えば、現在交流電動機2が停止しており、次回始動時の電流指令ベクトルがW相軸と直交することが予めわかっているとき、次回始動時に備えて非直交化しておく場合に有効である。或いは、電動機の出力軸とユーザが操作する操作軸とが連結されていないシステムに有効に使用することができる。
(ア)電流センサにより相電流を検出するセンサ相は、上記実施形態のW相に限らず、U相又はV相としてもよい。また、3相座標での電気角θeの基準をU相軸以外の相の軸としてもよく、dq座標での電流指令位相φの基準をq軸でなくd軸としてもよい。
(エ)第1実施形態の電流推定部30による電流推定方法に対し、電流推定部が採用可能なその他の電流推定方法を以下(i)〜(iv)に例示する。
センサ相をU相とすると、U相電流センサ値(Iu)を「dq軸電流指令から得られる電流指令位相角と電気角から生成したU相電流基準角(θ’)」で除して電流振幅(Ia)を算出し、この電流振幅を、U相電流基準角から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じて他の2相の電流推定値Iv、Iwを算出する(式7.1〜7.3)。
Ia=Iu/[√(1/3)×({−sin(θ’)}] ・・・(7.1)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+120[°])}・・・(7.2)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+240[°])}・・・(7.3)
この方法において、仮にU相電流センサ値が0[A]の位置で交流電動機2が停止した場合、電流振幅を算出することができず、他の2相の推定値を0[A]としてフィードバックすることとなり、有意な推定値を得ることができない。しかし、本発明の非直交化処理を適用し、センサ値を非ゼロ値とすることにより、フィードバック制御が可能となる。
U相電流指令値iu*及びV相電流指令値iv*の少なくとも一方、W相電流検出値iw_sns、及び電気角θeを用い、センサ相に一致するα軸方向のα軸電流iα、及びセンサ相に直交するβ軸方向のβ軸電流iβを演算し、式(8)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(8)
なお、U相電流推定値iu_est又はV相電流推定値iv_estの演算において、
「ゼロ割り」や「ゼロ掛け」を回避するような補正処理を行ってもよい。
α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。ここで、制御部における演算が離散系である場合、α軸電流微分値Δiαは、実際のβ軸電流iβに対し、電気角移動量Δθeの半分だけ遅れる。この点を考慮し、α軸電流iαの前回値と今回値との平均値に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗じた補正量Hにて補正したβ軸電流推定値iβ_estとすることが好ましい。そして、α軸電流iαおよびβ軸電流推定値iβ_estを用いてセンサ相基準電流位相θxを演算する。以降の演算は(ii)と同様である。
dq座標上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiw_estを積算してdq軸電流推定値をdq軸実電流値に漸近させる。
前回のdq軸電流推定値id_est、iq_est、及び今回の電気角θeに基づき、センサ相成分であるW相電流基準値iw_bfを演算し、W相電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差であるW相推定誤差Δiw_estを算出する。W相推定誤差Δiw_estにフィルタ要素であるゲインKを乗じた補正後誤差KΔiw_estを算出し、Δiu=0、Δiv=0とし、dq変換によりdq軸補正値id_crr、iq_crrを演算する。
また、センサ相に直交する直交方向補正値をさらに演算し、センサ相方向補正値及び直交方向補正値の合成ベクトルを補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをdq座標上で積算するようにしてもよい。
(キ)上記実施形態では、制御に用いる電流を検出する「制御用電流センサ」を1相に設ける例について説明した。他の実施形態では、制御用電流センサの他に、制御用電流センサの異常を監視するための独立した「監視用電流センサ」をセンサ相、又はセンサ相以外の相に設けてもよい。例として、1相に制御用電流センサと監視用電流センサを設けた1相2チャンネルの構成や、1相に制御用電流センサを設け、それ以外の相のいずれか1相に監視用電流センサを設けた2相1チャンネルの構成等を採用してもよい。いずれの構成においても、どの相にいくつの電流センサを設けてもよい。
交流電動機は、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように構成されていてもよい。また、エンジンを設けなくてもよい。さらに、交流電動機を複数設けてもよいし、複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)、
12・・・インバータ、
13・・・電流センサ、
151、152、153・・・制御部(制御手段)。
Claims (7)
- 3相の交流電動機(2)を駆動するインバータ(12)と、
前記交流電動機の3相のうち1相のセンサ相に流れる電流を検出する電流センサ(13)と、
前記インバータを構成する複数のスイッチング素子のオン/オフを切り替えて前記交流電動機の通電を制御する制御手段(151、152、153)と、
を備え、
前記制御手段は、前記交流電動機の停止時、
3相のうちいずれかの相を基準とする電気角をθeとしdq軸を基準とする位相をφとすると位相角が(θe+φ+C(Cは定数))で表される電流指令ベクトルについて、当該電流指令ベクトルと前記センサ相の軸とが3相座標上で直交しているか否かを判定し、
前記電流指令ベクトルと前記センサ相の軸とが直交していると判定したとき、前記電流指令ベクトルの位相角における前記位相(φ)又は前記電気角(θe)を操作することで、前記電流指令ベクトルと前記センサ相の軸とを非直交化する非直交化処理を実行することを特徴とする交流電動機の制御装置(10)。 - 前記制御手段(151、152)は、前記非直交化処理において、
dq軸電流指令を補正し、前記電流指令ベクトルの位相角における前記位相(φ)を操作することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記非直交化処理において前記位相を操作するとき、当該電流指令ベクトルに基づき発生するトルクを一定に保つように電流振幅を変更しつつ、前記位相を操作することを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記制御手段は、通常制御でのdq軸電流指令の演算と補正後のdq軸電流指令の演算とを常時並行計算することを特徴とする請求項2または3に記載の交流電動機の制御装置。
- 前記制御手段(153)は、前記非直交化処理において、
前記電流指令ベクトルの位相角における前記電気角(θe)を操作することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。 - 前記制御手段(151)は、前記1相のセンサ相の電流検出値に基づいてdq軸電流推定値を推定する電流推定手段(30)を有し、
前記電流推定手段によって推定された電流推定値をdq軸電流指令に対してフィードバック制御することにより、前記インバータに出力されるdq軸電圧指令を演算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。 - 前記制御手段(152)は、dq軸電流指令に基づく演算により、前記インバータに出力されるdq軸電圧指令を演算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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