JP2014151842A - シートベルト用リトラクタ - Google Patents

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Abstract

【課題】ウエビングを巻き取ったときに、シートベルト用リトラクタにエンドロックが発生するのを確実に抑制する。
【解決手段】ロック機構は、ロックアーム40のロック作動方向への変位により作動し、巻取ドラムの引出方向の回転を止める。規制部材56は、巻取ドラムの巻取方向Mの回転停止の反動によるロックアーム40のロック作動方向への変位を規制する。規制部材56の押さえ部57は、巻取ドラムの巻取方向Mの回転時にロックアーム40に接触してロック作動方向へ変位するロックアーム40を押さえる。ロックアーム40の係合部44は、規制部材56の押さえ部57に係合し、規制部材56を押さえ部57によりロックアーム40を押さえた状態に維持する。
【選択図】 図14

Description

本発明は、回転可能な巻取ドラムにシートベルトのウエビングを巻き取るシートベルト用リトラクタに関する。
自動車等の車両には、一般に、シートに座った乗員を保護するため、リトラクタを備えたシートベルト装置が搭載されている。乗員は、リトラクタの巻取ドラムから引き出したウエビング(シートベルト)を装着し、ウエビングによりシートに拘束される。乗員の移動によりウエビングが急激に引き出されたときには、リトラクタのロック機構により、巻取ドラムの引出方向の回転が止められて、ウエビングの引き出しが停止する。
また、乗員から外されたウエビングは、回転する巻取ドラムに巻き取られて、次に引き出されるまでリトラクタに収納される。ところが、ウエビングの巻き取りが終了する際には、巻取ドラムの回転停止の反動により、ロック機構が誤って作動することがある。ロック機構が作動すると、巻取ドラムの引出方向の回転が止められて、ウエビングが巻取ドラムから引き出せなくなる。同時に、ウエビングの全体が巻き取られているため、ウエビングの巻き取りもできず、リトラクタにエンドロックが発生する。これに対し、従来、ロック機構を作動するためのフライホイールの回転を摩擦バネにより抑制するリトラクタが知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載された従来のリトラクタでは、摩擦バネがフライホイールにより押されたときに、摩擦バネとフライホイールの接触位置が変化して、摩擦バネが回転する虞がある。そのため、ウエビングの巻取速度に対応してフライホイールを回転する力が大きくなると、摩擦バネによりフライホイールの回転を抑制し難くなる。従って、従来のリトラクタに関しては、ロック機構の誤作動によるエンドロックの発生をより確実に抑制する観点から、改良の余地がある。
特許第4758967号公報
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、ウエビングを巻き取ったときに、シートベルト用リトラクタにエンドロックが発生するのを確実に抑制することである。
本発明は、ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能な巻取ドラムと、巻取ドラムとともに回転し、かつ、巻取ドラムの引出方向の加速度に応じてロック作動方向に変位可能な変位部材と、変位部材のロック作動方向への変位により作動し、巻取ドラムの引出方向の回転を止めるロック機構と、巻取ドラムの巻取方向の回転停止の反動による変位部材のロック作動方向への変位を規制する規制部材と、を備えたシートベルト用リトラクタであって、規制部材が、巻取ドラムの引出方向の回転時に変位部材から離れるとともに、巻取ドラムの巻取方向の回転時に変位部材に接触してロック作動方向へ変位する変位部材を押さえる押さえ部を有し、変位部材が、規制部材の押さえ部に係合し、規制部材を押さえ部により変位部材を押さえた状態に維持する係合部を有するシートベルト用リトラクタである。
本発明によれば、ウエビングを巻き取ったときに、シートベルト用リトラクタにエンドロックが発生するのを確実に抑制することができる。
本実施形態のシートベルト用リトラクタの斜視図である。 分解されたシートベルト用リトラクタの斜視図である。 完全に分解されたシートベルト用リトラクタの斜視図である。 完全に分解されたシートベルト用リトラクタの斜視図である。 図1のX1−X1線を矢印方向にみたシートベルト用リトラクタの断面図である。 図1のX2−X2線を矢印方向にみたシートベルト用リトラクタの断面図である。 分解された巻取ドラムユニットの斜視図である。 分解されたクラッチユニットの斜視図である。 可動パウルを収容した巻取ドラムの正面図である。 図9のW3方向からみた巻取ドラムの側面図である。 加速度センサー、メカニズムカバー、及び、規制部材の斜視図である。 図11のW4方向からみたメカニズムカバーユニットの断面図である。 ウエビングの引出時におけるロックアームの動作を示す図である。 ウエビングの巻取時におけるロックアームの動作を示す図である。 ロックアームの変位を規制する規制部材を示す図である。 エンドロック時のリトラクタの動作を示す図である。 エンドロック時のリトラクタの動作を示す図である。 ロックアームと停止部の係合が解除される過程を示す図である。 図4のW5方向からみたリトラクタの側面図である。 作動部材と配置部材の斜視図である。 図19のY2部の断面図である。 移動部材の回転に伴う配置部材の動作を示す図である。 移動部材の回転に伴う配置部材の動作を示す図である。 移動部材の回転に伴う配置部材の動作を示す図である。
本発明のシートベルト用リトラクタ(以下、リトラクタという)の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のリトラクタは、シートベルトのウエビングを巻き取るウエビング巻取装置であり、車両用のシートベルト装置に設けられる。リトラクタを備えたシートベルト装置は、車両に搭載され、シートに座った乗員をウエビング(シートベルト)により保護する。
図1は、本実施形態のリトラクタ1の斜視図である。図2は、分解されたリトラクタ1を図1のW1方向からみて示す斜視図であり、複数のユニットに分解されたリトラクタ1を示している。図1、図2では、帯状のウエビング2を点線で示している。
図示のように、リトラクタ1は、ハウジングユニット3と、ウエビング2の巻取ドラム10を有する巻取ドラムユニット4と、巻取バネユニット5と、メカニズムカバーユニット6と、ウエビング2の端部に固定された抜け止めピン7を備えている。
巻取ドラム10がハウジングユニット3内に配置された状態で、巻取バネユニット5とメカニズムカバーユニット6がハウジングユニット3の側面に固定される。巻取バネユニット5とメカニズムカバーユニット6は、ハウジングユニット3の外側で巻取ドラムユニット4の軸方向の両端部を覆い、巻取ドラムユニット4を回転可能に支持する。また、ウエビング2が巻取ドラム10の挿入部11に挿入され、抜け止めピン7により、ウエビング2が挿入部11から抜けるのが防止される。これにより、ウエビング2の端部が巻取ドラム10に取り付けられる。
巻取バネユニット5は、ウエビング2を巻取ドラム10に巻き取る巻取手段であり、巻取ドラム10をウエビング2の巻取時における回転方向(巻取方向という)Mに回転する。ウエビング2は、回転する巻取ドラム10に巻き取られてリトラクタ1内に収納される。その状態から、ウエビング2は、巻取ドラム10をウエビング2の引出時における回転方向(引出方向という)Pに回転しながらリトラクタ1から引き出される。
巻取ドラムユニット4は、クラッチユニット8を有し、リトラクタ1内で巻取方向Mと引出方向Pに回転する。巻取ドラム10は、通常時においてはクラッチユニット8とともに回転し、緊急時等においてはクラッチユニット8から独立して回転する。メカニズムカバーユニット6は、巻取ドラムユニット4のクラッチユニット8を覆い、クラッチユニット8とともに巻取ドラム10の回転を止めるロック機構9を構成する。ロック機構9は、引出方向Pに回転する巻取ドラム10をロックするロック手段である。ウエビング2の急激な引き出しや車両の速度の急激な変化に反応して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転がロック機構9により止められる。このロック機構9の作動により、ウエビング2の引き出しが停止する。
図3、図4は、完全に分解されたリトラクタ1の斜視図であり、互いに異なる方向からみたリトラクタ1を示している。図3は、リトラクタ1を図1と同じ方向からみて示し、図4は、リトラクタ1を図1のW2方向からみて示している。
図示のように、複数の部品を組み合わせることで、リトラクタ1の各ユニット3〜6が組み立てられる。また、複数のユニット3〜6を合体することで、リトラクタ1が製造される。以下、これらリトラクタ1の各部について、順に詳しく説明する。
ハウジングユニット3は、巻取ドラム10を収納するハウジング20と、合成樹脂で形成されたプロテクタ3Aを有する。ハウジング20は、車体に固定される背板部21と、背板部21の両側縁部から突出する一対の側壁部22、23(第1側壁部22、第2側壁部23)と、一対の側壁部22、23に固定された固定板24からなる。プロテクタ3Aは、ウエビング2の通過部3Bを有し、背板部21の上縁部に取り付けられる。ウエビング2は、プロテクタ3Aの通過部3Bに通され、巻き取り及び引き出し時に通過部3Bを通過する。
ハウジング20は、第1側壁部22に形成された円形状の第1開口部25と、第1開口部25の内側に突出する複数のロック歯26と、第2側壁部23に形成された第2開口部27を有する。複数のロック歯26は、三角形状をなし、第1開口部25の内周全体に形成されている。巻取ドラムユニット4の可動パウル4Aがロック歯26に係合することで、巻取ドラム10がロックされて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が停止する。第2開口部27は、第1開口部25よりも大きく形成され、第1開口部25に対向する。
巻取ドラム10は、第1開口部25に挿入されてハウジング20内に収容される。また、巻取ドラム10の両端部は、それぞれ第1開口部25と第2開口部27内に配置され、クラッチユニット8は、第1側壁部22の側方に配置される。その状態で、メカニズムカバーユニット6が第1側壁部22に取り付けられ、巻取バネユニット5が第2側壁部23に取り付けられる。
図5は、図1のX1−X1線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図であり、図6は、図1のX2−X2線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図である。
図示のように、巻取ドラム10の軸心が第1開口部25の中心に一致する状態で、巻取ドラム10は、ハウジング20、第1開口部25、及び、第2開口部27内で回転する。また、巻取ドラム10は、軸心に沿って側方に突出する一対のシャフト12、13(第1シャフト12、第2シャフト13)を有する。メカニズムカバーユニット6は、クラッチユニット8に組み合わされて、第1シャフト12を回転可能に支持する。巻取バネユニット5は、第2シャフト13に連結されて、第2シャフト13を回転可能に支持する。
巻取バネユニット5(図3、図4参照)は、渦巻バネ5Aと、渦巻バネ5Aを収容するバネケース5Bと、ハウジング20の第2側壁部23に接するバネシート5Cと、バネシャフト5Dを有する。渦巻バネ5Aの外端K1は、バネケース5Bに固定され、渦巻バネ5Bの内端K2は、バネシャフト5Dに固定される。バネシート5Cは、バネケース5Bに取り付けられて、バネケース5B内の渦巻バネ5Aを覆う。その状態で、バネシャフト5Dは、バネケース5Bとバネシート5Cに回転可能に取り付けられる。巻取ドラム10の第2シャフト13は、支持孔5Eに挿入されてバネシート5Cにより回転可能に支持されるとともに、バネシャフト5Dに固定される。
バネシャフト5Dは、巻取ドラム10と一体に回転し、かつ、渦巻バネ5Aの付勢力を巻取ドラム10に伝達する。巻取バネユニット5は、渦巻バネ5Aにより、巻取ドラム10をウエビング2の巻取方向Mに常に付勢する。また、ウエビング2の引出時には、巻取ドラム10の回転により渦巻バネ5Aが巻かれる。ウエビング2の巻取時には、渦巻バネ5Aの付勢により、巻取ドラムユニット4及び巻取ドラム10が巻取方向Mに回転して、ウエビング2が巻取ドラム10に巻き取られる。
図7は、分解された巻取ドラムユニット4の斜視図であり、巻取ドラム10とクラッチユニット8を図2と同じ方向からみて示している。図8は、分解されたクラッチユニット8の斜視図であり、図3のクラッチユニット8を拡大した図である。
図示のように、巻取ドラムユニット4は、ウエビング2の巻取方向Mと引出方向Pに回転可能な巻取ドラム10と、ハウジング20のロック歯26に係合する可動パウル4Aと、クラッチユニット8と、キャップ17を有する。可動パウル4Aは、ロック歯26に係合する係合爪4Bと、側方に突出する連動ピン4Cからなる。巻取ドラム10の端部に形成されたパウル収容部14に可動パウル4Aが収容されたときに、連動ピン4Cは、パウル収容部14の誘導部(貫通部)14Aからクラッチユニット8に向かって突出する。
図9は、可動パウル4Aを収容した巻取ドラム10の正面図であり、図10は、図9のW3方向からみた巻取ドラム10の側面図である。図10には、ハウジング20のロック歯26を点線で示している。
図示のように、可動パウル4Aは、パウル収容部14内に移動可能に収容され、パウル収容部14の内外方向に移動する。その際、連動ピン4Cが、誘導部14Aを摺動して、誘導部14Aに沿って移動する。
また、可動パウル4Aは、係合爪4Bがロック歯26に係合しない非ロック位置(図10Aに示す位置)と、係合爪4Bがロック歯26に係合するロック位置(図10Bに示す位置)との間で移動する。可動パウル4Aがロック位置に移動することで、係合爪4Bがロック歯26に係合し、可動パウル4Aの移動が阻止される。この可動パウル4Aにより、引出方向Pに回転する巻取ドラム10が押さえられて、巻取ドラム10がロックされ、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められる。従って、可動パウル4Aは、クラッチユニット8とともに、ロック機構9の一部をなす。
クラッチユニット8(図7、図8参照)は、円形状のロッキングクラッチ30と、ロッキングクラッチ30に変位可能に連結されたロックアーム40と、リターンスプリング8Aと、センサースプリング8Bを有する。ロッキングクラッチ30は、巻取ドラム10とともに回転し、かつ、巻取ドラム10に対して相対的に回転可能な回転体である。巻取ドラム10の第1シャフト12が、ロッキングクラッチ30の中心孔31に挿入され、キャップ17が、中心孔31から突出する第1シャフト12の先端に固定される。これにより、ロッキングクラッチ30が、巻取ドラム10に相対的に回転可能に連結される。
ロッキングクラッチ30は、巻取ドラム10側に形成されたバネホルダー32を有し、リターンスプリング8Aは、バネホルダー32に取り付けられる。第1シャフト12を中心孔31に挿入する際に、リターンスプリング8Aを縮めた状態で、リターンスプリング8Aとバネホルダー32が巻取ドラム10の凹部15内に配置される。また、可動パウル4Aの連動ピン4Cは、ロッキングクラッチ30の誘導溝33に挿入され、巻取ドラム10の円柱状の突起16(図3参照)は、ロッキングクラッチ30の貫通溝34に挿入される。突起16は、巻取ドラム10の側面に形成され、貫通溝34内を巻取ドラム10の回転方向に移動する。
ロッキングクラッチ30(図7、図8参照)は、リターンスプリング8Aによりウエビング2の引出方向Pに付勢されており、通常時には、巻取ドラム10とともに回転する。その際、可動パウル4Aは、パウル収容部14内で非ロック位置に維持される。緊急時等には、ロッキングクラッチ30がロックされた状態で、停止したロッキングクラッチ30に対して、巻取ドラム10が可動パウル4Aとともに引出方向Pに回転する。これに伴い、可動パウル4Aの連動ピン4Cが、ロッキングクラッチ30により押されて、誘導溝33内を移動する。連動ピン4Cは、誘導溝33により誘導されて、誘導溝33に沿ってロッキングクラッチ30の半径方向外側に移動する。この連動ピン4Cの移動により、可動パウル4Aがロック位置に移動して、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26に係合する(図10参照)。
係合爪4Bとロック歯26の係合時には、係合爪4Bがロック歯26に接触して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、係合爪4Bがロッキングクラッチ30の半径方向外側に移動する。これにより、係合爪4Bは、ロック歯26に沿って、ロック歯26の底部に向かって移動する。係合爪4Bがロック歯26の底部に到達したときに、係合爪4Bがロック歯26に完全に係合して、可動パウル4A(係合爪4B)とロック歯26の係合が完了する。係合爪4Bとロック歯26は、このようにして互いに係合する形状に形成されている。
ロック機構9は、巻取ドラム10が引出方向Pに所定量だけ回転する間に、以上のように可動パウル4Aを移動させて、可動パウル4Aをロック歯26に係合する。このロック機構9により、巻取ドラム10がロックされて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められる。ロッキングクラッチ30のロックが解除された後、リターンスプリング8Aの付勢により(図7、図8参照)、巻取ドラム10に対して、ロッキングクラッチ30が引出方向Pに相対的に回転する。これに伴い、連動ピン4Cが、ロッキングクラッチ30により押されて、誘導溝33内を移動する。連動ピン4Cは、誘導溝33により誘導されて、誘導溝33に沿ってロッキングクラッチ30の半径方向内側に移動する。可動パウル4Aは、連動ピン4Cの移動によりロック歯26から離れて非ロック位置に復帰する。これにより、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除される。
ロッキングクラッチ30は、複数の歯35を有するラチェットホイール36と、ロックアーム40を回転可能に支持するアーム支持部37と、センサースプリング8Bを支持する支持ピン38を備えている。ラチェットホイール36は、ロッキングクラッチ30の外周に形成された環状部材からなり、巻取ドラム10とともに回転可能になっている。複数の歯35は、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転のみを止めるように傾けられており、ラチェットホイール36の外周全体に形成されている。
ロックアーム40は、長手方向の一端部(係合端部)41と他端部(自由端部)42の間に形成された貫通孔43を有し、湾曲形状に形成されている。アーム支持部37を貫通孔43に挿入することで、ロックアーム40が、アーム支持部37に取り付けられて、ロッキングクラッチ30に回転可能に連結される。ロックアーム40は、ラチェットホイール36の内側に配置され、アーム支持部37を中心に回転する。センサースプリング8Bは、ロックアーム40の他端部42と支持ピン38の間に配置されて、他端部42を引出方向Pに付勢する。この付勢により、ロックアーム40の他端部42は、ロッキングクラッチ30の第1ストッパー39Aに接触する。
ロックアーム40は、巻取ドラム10とともに回転可能になっており、巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30とともに引出方向Pと巻取方向Mに回転する。通常時には、センサースプリング8Bの付勢により、ロックアーム40の他端部42は、ロッキングクラッチ30の第1ストッパー39Aに接触する状態に維持される。一方、ウエビング2の引き出しの加速度が所定の加速度を超えたときに(即ち、引出方向Pに回転する巻取ドラム10の引出方向Pの加速度(回転の加速度)が所定の加速度を超えたときに)、回転するロッキングクラッチ30に対して、慣性による遅れがロックアーム40に生じる。その結果、ロックアーム40がセンサースプリング8Bを圧縮しつつ回転して、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向外側に変位する。これに伴い、後述するように、リトラクタ1のロック機構9が作動する。
このように、ロックアーム40は、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向に変位可能な変位部材であり、加速度に反応して所定のロック作動方向に変位する。ロック作動方向は、ロック機構9を作動するための方向であり、ここでは、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向外側に変位する方向である。ロック機構9は、ロック作動方向に変位したロックアーム40により作動する。なお、ロックアーム40がロック作動方向に変位する際には、ロックアーム40が変位してもよく、ロックアーム40が巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30に対して相対的に変位してもよい。或いは、ロックアーム40が、変位しつつ巻取ドラム10及びロッキングクラッチ30に対して相対的に変位してもよい。従って、ロックアーム40の変位には、このような各態様での変位を含む。
ロックアーム40は、ロック作動方向に変位可能にロッキングクラッチ30に連結されてロッキングクラッチ30とともに回転する。また、アーム支持部37は、変位部材用支持部であり、回転によりロックアーム40をロック作動方向へ変位させる。ロックアーム40は、ロック作動方向とロック作動方向の反対方向に回転することで、両方向に変位する。センサースプリング8Bの付勢により、ロックアーム40がロック作動方向の反対方向に変位(回転)し、ロックアーム40の一端部41がロッキングクラッチ30の半径方向内側に変位する。
ロック機構9(図2参照)は、ロックアーム40のロック作動方向への変位により作動し、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。加えて、ロック機構9は、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転停止により作動して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。
具体的には、リトラクタ1は、メカニズムカバーユニット6内に、ロック作動方向へ変位したロックアーム40を停止する手段(ロックアーム停止手段)と、ラチェットホイール36の回転を停止する手段(ラチェットホイール停止手段)を備えている。ロックアーム40の停止、又は、ラチェットホイール36の回転停止に伴い、ロッキングクラッチ30が停止する。その状態で、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9の可動パウル4Aがロック位置に移動して、巻取ドラム10がロックされる。以下、各停止手段を有するメカニズムカバーユニット6について、詳しく説明する。
メカニズムカバーユニット6(図3、図4参照)は、車両の加速度を検出する加速度センサー50と、クラッチユニット8を収容するメカニズムカバー6Aと、ロックアーム40の変位を規制する規制部材56と、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60を有する。加速度センサー50は、ラチェットホイール停止手段であり、かつ、車両の緊急時にロック機構9を起動する緊急ロック起動装置である。また、加速度センサー50は、サンサーホルダー51と、慣性質量体52と、センサーレバー53を有する。慣性質量体52は、金属製の球体からなり、センサーホルダー51の凹部に移動可能に配置される。センサーレバー53は、慣性質量体52を上方から覆い、センサーホルダー51に上下方向に移動可能に取り付けられる。
図11は、加速度センサー50、メカニズムカバー6A、及び、規制部材56の斜視図である。
図示のように、メカニズムカバー6Aは、ロッキングクラッチ30を収容する円筒状のクラッチ収容部6Bと、加速度センサー50を収容するセンサー収容部6Cと、センサー収容部6C内の加速度センサー50を覆うセンサーカバー6Dを有する。加速度センサー50がセンサー収容部6Cに取り付けられた状態で、センサーレバー53のロック爪54が、上方に突出し、クラッチ収容部6Bの開口6Eに配置される。
図12は、図11のW4方向からみたメカニズムカバーユニット6の断面図であり、クラッチ収容部6B内に収容されたロッキングクラッチ30も示している。
図示のように、慣性質量体52は、センサーホルダー51とセンサーレバー53の間に移動可能に保持される。車両の緊急事態(例えば、衝突、急ブレーキ)により、車両の加速度が所定の加速度を超えたときに、慣性質量体52は、慣性力によりセンサーホルダー51の上で移動して、センサーレバー53を上方へ押す。これにより、センサーレバー53のロック爪54が、クラッチ収容部6B内に移動して、ラチェットホイール36の歯35に噛み合う。
ラチェットホイール36の歯35は、ラチェットホイール36が引出方向Pに回転するときのみ、センサーレバー53のロック爪54と噛み合う。ロック爪54により、ラチェットホイール36(ロッキングクラッチ30)がロックされて、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転が停止する。これに伴い、ロック機構9が作動して可動パウル4Aにより巻取ドラム10をロックする。ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。従って、加速度センサー50とロック機構9は、車両の速度の急激な変化に反応してウエビング2の引き出しを停止する車体感応式ロック機構を構成する。
車両の加速度が所定の加速度以下になったときに、慣性質量体52は、重力により元の位置に移動する。その後、巻取ドラム10が、ウエビング2の負荷から解放されて、巻取方向Mに回転可能になる。巻取ドラム10とロッキングクラッチ30が巻取方向Mに回転することで、ロック爪54が、ラチェットホイール36の歯35から外れて、クラッチ収容部6B外に移動する。同時に、ラチェットホイール36(ロッキングクラッチ30)のロックが解除される。また、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除され、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
メカニズムカバー6A(図11参照)は、クラッチ収容部6B内に形成された環状壁6Fと、環状壁6Fの内周に形成された停止部6Gと、環状壁6Fの中心に位置する中心支持部6Hと、中心支持部6Hを貫通する挿入孔6Iを有する。第1シャフト12に固定されたキャップ17(図7参照)が挿入孔6Iに挿入されて、巻取シャフト10の第1シャフト12が中心支持部6Hにより回転可能に支持される。その状態で、ロッキングクラッチ30、ラチェットホイール36、及び、ロックアーム40が、クラッチ収容部6B内に収容される(図11、図12参照)。また、ラチェットホイール36が、クラッチ収容部6Bの内周と環状壁6Fの外周の間に配置され、ロックアーム40が、環状壁6Fの内側に配置される。
中心支持部6Hは、規制部材56を回転可能に支持する規制部材用支持部でもあり、クラッチ収容部6B内に突出する環状凸部からなる。規制部材56は、ロックアーム40を押さえる押さえ部57と、中心支持部6Hに取り付けられる取付部58を有する。本実施形態では、ワイヤを折り曲げることで規制部材56が所定形状に形成され、取付部58が中心支持部6Hに填められるクリップになっている。規制部材56の回転時に、取付部58と中心支持部6Hとの間に摩擦(摩擦力)が生じて、規制部材56に回転に対する抵抗が加えられる。
規制部材56の押さえ部57は、直線状をなし、中心支持部6H(取付部58)からロッキングクラッチ30の半径方向外側に向かって配置されている。押さえ部57の先端部は、ロックアーム40に向かって屈曲し、ロックアーム40は、押さえ部57の屈曲した部分(接触部59)に接触する。規制部材56は、環状壁6Fの内側でロックアーム40に隣接し、中心支持部6Hを中心に巻取方向Mと引出方向Pに回転する。巻取ドラム10の通常の回転時には、規制部材56は、ロッキングクラッチ30とロックアーム40の回転に連動して回転する。
停止部6Gは、ロックアーム停止手段であり、環状壁6Fの内周全体に形成された複数の係合歯6Jを有する。係合歯6Jは、ロック作動方向に変位したロックアーム40と係合する停止部6Gの係合部であり、ロックアーム40の一端部41と係合する。また、複数の係合歯6Jは、ロックアーム40に向かって突出するとともに、ロックアーム40及びロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転のみを止めるように傾く。ロッキングクラッチ30が引出方向Pに回転するときのみ、ロックアーム40の一端部41が、停止部6Gの係合歯6Jに引っ掛かるようにして係合する。
図13は、ウエビング2の引出時におけるロックアーム40の動作を示す図であり、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示している。また、図13Aには、ロックアーム40のロック作動方向Lを矢印で示している。ロックアーム40が回転によりロック作動方向Lに変位する際には、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gに向かって変位し、ロックアーム40の他端部42が規制部材56の押さえ部57に向かって変位する。
ウエビング2の通常の引出時には(図13A参照)、巻取ドラム10とともに、ロッキングクラッチ30及びロックアーム40が、引出方向Pに一体に回転する。その際、ロックアーム40の一端部41は、停止部6G(係合歯6J)から離れた位置に配置され、ロックアーム40は、停止部6Gに係合しない状態に維持される。
規制部材56の押さえ部57は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転によりロックアーム40の他端部42から離れて、ロッキングクラッチ30の第2ストッパー39Bに接触する。第2ストッパー39Bにより押さえ部57が引出方向Pに押されて、規制部材56がロッキングクラッチ30とともに引出方向Pに回転する。また、押さえ部57は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転中は、ロックアーム40から離れた状態(ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制しない状態)に維持され、ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を許容する。
ウエビング2の急激な引き出しにより、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度が所定の加速度を超えたときに、ロックアーム40が、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度に応じてロック作動方向Lに変位する(図13B参照)。これに伴い、ロックアーム40が、回転により変位してロッキングクラッチ30の第3ストッパー39Cに接触する。また、ロックアーム40の一端部41が、停止部6Gに接近して係合歯6Jに係合する。停止部6Gは、ロック作動方向Lに変位したロックアーム40と係合して、ロックアーム40を停止する。
ロックアーム40が停止部6G(係合歯6J)に係合することで、停止部6Gがロック作動方向Lに変位したロックアーム40を保持し、巻取ドラム10とともに回転するロックアーム40及びロッキングクラッチ30の回転が停止する。また、ロックアーム40が停止部6Gで停止した状態に維持され、その状態で、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9が作動を開始する。
具体的には、ロックアーム40により、ロッキングクラッチ30がロックされて、ロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転が停止する。これに伴い、ロック機構9が作動して可動パウル4Aにより巻取ドラム10をロックする。ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。従って、ロックアーム40の停止部6Gは、ロック機構9の一部を構成する。また、停止部6Gとロック機構9は、ウエビング2の急激な引き出しに反応してウエビング2の引き出しを停止するウエビング感応式ロック機構を構成する。
ロックアーム40の一端部41が係合歯6Jから外れると、ロッキングクラッチ30のロックが解除される。ロックアーム40は、停止部6Gから解放されてロック作動方向Lの反対方向に変位する。その後、巻取ドラム10が、ウエビング2の負荷から解放され、ウエビング2の巻き取りに応じて巻取方向Mに回転する。これに伴い、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転して、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除される。以降、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
図14は、ウエビング2の巻取時におけるロックアーム40の動作を示す図であり、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示している。
ウエビング2の通常の巻取時には(図14A参照)、巻取ドラム10とともに、ロッキングクラッチ30及びロックアーム40が巻取方向Mに一体に回転する。その際、規制部材56の押さえ部57は、ロックアーム40の他端部42に接触して、他端部42により巻取方向Mに押される。これにより、規制部材56は、ロックアーム40とともに巻取方向Mに回転する。
ここで、ウエビング2の巻取終了に伴い(図14B参照)、巻取ドラム10の回転停止の反動により、ロック機構9が誤って作動する虞がある。即ち、回転を停止したロッキングクラッチ30に対して、ロックアーム40が慣性力によりロック作動方向L(ここでは巻取方向M)に変位して、ロック機構9が作動する。ロック機構9が作動すると、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2が巻取ドラム10から引き出せなくなる。同時に、ウエビング2の全体が巻き取られているため、ウエビング2の巻き取りもできず、リトラクタ1にエンドロックが発生する。これに対し、本実施形態では、規制部材56が、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転停止の反動によるロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制して、ロック機構9の作動を防止する。
図15は、ロックアーム40の変位を規制する規制部材56を示す図である。図15Aは、図14Bの一部を拡大した図、図15Bは図15AのY1部を拡大した図である。
規制部材56の押さえ部57(接触部59)は、上記したように、巻取ドラム10の引出方向Pの回転時にロックアーム40から離れる。巻取ドラム10の巻取方向Mの回転時には、図示のように、押さえ部57が、ロックアーム40に接触してロック作動方向Lへ変位するロックアーム40を押さえる。即ち、押さえ部57は、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転によりロックアーム40の他端部42に接触し、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転中は、ロックアーム40に接触した状態に維持される。また、押さえ部57は、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転停止の反動によりロック作動方向Lへ変位するロックアーム40を押さえる。
ロックアーム40は、ロック作動方向Lへの変位時に、規制部材56の押さえ部57に係合する係合部44を有する。係合部44は、ロックアーム40の他端部42に形成された凸部からなり、ロック作動方向L側に突出する。巻取ドラム10の巻取方向Mの回転時には、まず、規制部材56の押さえ部57は、ロックアーム40の係合部44から離れた位置(摺動部45)に接触する。ロックアーム40の摺動部45は、ロックアーム40の係合部44に近接する部分である。押さえ部57は、摺動部45を摺動して、係合部44に近づき、又は、係合部44から離れる。その状態では、係合部44は、押さえ部57に係合せず、規制部材56は、摺動部45を摺動しつつロックアーム40とともに巻取方向Mに回転する。
ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位が開始したときに、押さえ部57と係合部44が接近し、係合部44が押さえ部57に係合する。その際、押さえ部57が、平面又は曲面からなる摺動部45を係合部44に向かって摺動して、係合部44に接触する。また、凸部からなる係合部44が、押さえ部57の接触部59に接触して引っ掛かり、押さえ部57の移動を止めて、押さえ部57に係合する。係合部44は、規制部材56の押さえ部57を拘束して、押さえ部57の移動(摺動、及び、回転を含む)を阻止する。係合部44により、押さえ部57の移動が阻止されて、規制部材56が停止する。
ロックアーム40の係合部44により、規制部材56は、押さえ部57によりロックアーム40を押さえてロックアーム40の変位を規制する状態(規制状態)に維持される。また、押さえ部57は、係合部44に係合することで、ロックアーム40を押さえる状態に維持されて、ロックアーム40のロック作動方向Lの変位を止める。規制部材56は、ロックアーム40とともに変位する係合部44を押さえ部57により押さえて、ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制する。
本実施形態では、ロックアーム40の係合部44は、規制部材56の押さえ部57に接触する係合面46を有し、係合面46で押さえ部57に係合する。係合面46は、平面又は曲面からなり、押さえ部57を移動させる方向の力を押さえ部57に加えないように形成されている。また、規制部材用支持部である中心支持部6Hにより、規制部材56の回転中心N1がロックアーム40の回転中心N2と異なる位置に配置されている。加えて、係合部44の回転半径R2は、押さえ部57の回転半径R1よりも大きく設定されている。係合部44の回転半径R2は、ロックアーム40の回転中心N2から係合部44と押さえ部57の接点までの距離であり、押さえ部57の回転半径R1は、規制部材56の回転中心N1から係合部44と押さえ部57の接点までの距離である。
係合部44の回転による変位方向(回転軌跡)S2は、押さえ部57(接触部59)の回転方向(回転軌跡)S1に交差する方向に設定されている。その結果、ロックアーム40のロック作動方方向Lへの変位開始に伴い、係合部44は、ロックアーム40とともに規制部材56の押さえ部57を押さえ付ける方向に変位して、変位方向S2の前方に位置する押さえ部57に係合する。続いて、係合部44が、押さえ部57に押し付けられて、押さえ部57の移動を阻止する方向の力を押さえ部57に加える。係合部44と押さえ部57の接点において、係合面46の法線Tは、規制部材56の回転中心N1を通過する。そのため、係合部44により、押さえ部57が中心支持部6Hに押さえ付けられて、回転中心N1へ向かう力のみが押さえ部57に加えられる。
この係合部44から加えられる力により、押さえ部57の移動が阻止されて、規制部材56が規制状態に維持される。また、ロックアーム40の変位によるロック機構9の作動が防止されて、リトラクタ1にエンドロックが発生するのが抑制される。ロックアーム40をロック作動方向Lに変位させる慣性力がロックアーム40に作用しなくなったときに、センサースプリング8Bの付勢により、係合部44が、変位方向S2の反対方向に変位して、押さえ部57から円滑に離れる。これにより、係合部44と押さえ部57の係合が解除される。
なお、ロックアーム40と規制部材56に関して、押さえ部57の係合部44に接触する面は、曲面に形成してもよく、平面、又は、角部を有する形状に形成してもよい。押さえ部57は、係合部44と線で接触してもよく、係合部44と点、又は、面で接触してもよい。係合面46の法線Tが規制部材56の回転中心N1からずれるように、係合部44を形成してもよい。例えば、係合面46の法線Tをロックアーム40の回転中心N2側にずらすことで、係合部44から押さえ部57に回転方向S1の反対側の力が加えられる。また、押さえ部57の回転に干渉する部分(フック状部等)を、係合部44に形成してもよい。このようにすることで、係合部44が、押さえ部57をより確実に拘束するとともに、規制部材56が、押さえ部57によりロックアーム40を押さえた状態に安定して維持される。
これに対し、押さえ部57と係合部44の静止摩擦力により、押さえ部57を係合部44に保持して、係合部44を押さえ部57に係合するようにしてもよい。係合部44と押さえ部57の静止摩擦係数をμとしたとき、摩擦角θは、μとθの関係式(μ=tanθ)より算出される。また、係合部44と押さえ部57の接点を規制部材56の回転中心N1と結んで、接点と回転中心N1に仮想線を引く。この仮想線と係合面46の法線Tのなす角度(法線角度)が摩擦角θ以下であるときに、押さえ部57が静止摩擦力により係合部44に保持される。
例えば、係合部44(ポリアセタール樹脂)と押さえ部57(ステンレス鋼)の静止摩擦係数μが0.15である場合には、摩擦角θは約8.5度となる。従って、法線角度が8.5度以下であれば、係合面46の法線Tの方向にかかわらず、係合部44が押さえ部57に係合した状態に維持される。この場合には、法線Tを、規制部材56の回転中心N1から押さえ部57の回転方向S1に向けてずらしてもよい。また、法線角度が摩擦角θ以下であるとの条件を満すように、法線Tの方向を変更してもよい。法線角度が摩擦角θ以下であるとの条件を満たす限り、法線角度に誤差が生じていてもよい。
ここで、規制部材56によりロックアーム40の変位を規制しても、巻取ドラム10の巻取方向Mの速度やウエビング2の停止の仕方等によっては、ロック機構9が作動して、リトラクタ1にエンドロックが発生する虞がある。エンドロックが発生したときには(図13参照)、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gの係合歯6Jに係合することで、ロックアーム40が停止部6Gに係合する。
これに対し、本実施形態のリトラクタ1は(図3参照)、ロック機構9が作動する間に、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する解除手段18を備えている。仮に、リトラクタ1にエンドロックが発生したとしても、解除手段18により、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除して、リトラクタ1のエンドロックを解除する。解除手段18は、巻取ドラム10に形成された突起16と、ロッキングクラッチ30に形成された貫通溝34を有する。突起16は、巻取ドラム10からロックアーム40に向かって突出し、貫通溝34内を巻取ドラム10の回転方向に移動する。また、突起16は、貫通溝34を貫通して、ロックアーム40に接触する。
図16、図17は、エンドロック時のリトラクタ1の動作を示す図であり、リトラクタ1の要部を図12と同様に示している。また、図16、図17は、停止部6Gの一部とクラッチユニット8を示すとともに、ロックアーム40の断面を示している。ロッキングクラッチ30の一部を透視することで、可動パウル4Aとロック歯26の一部も図16、図17に示している。
図示のように、突起16は、ロックアーム40に形成された凹部47内に配置され、凹部47内で移動してロックアーム40に接触する。
エンドロック時には(図16A、図16B参照)、ロックアーム40がロック作動方向Lに変位し、停止部6Gがロックアーム40と係合してロックアーム40を停止する。このロックアーム40により、ロッキングクラッチ30がロックされて停止する。その状態で、ウエビング2をリトラクタ1から引き出すことで、巻取ドラム10が引出方向Pに回転する。また、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、ロック機構9の作動が開始して、ロック機構9が巻取ドラム10の回転を止める。その際、巻取ドラム10がロッキングクラッチ30に対して相対的に回転することで、突起16が、引出方向Pに移動してロックアーム40に接触する(図16C参照)。従って、突起16は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い移動してロックアーム40に接触する接触部材である。
巻取ドラム10が引出方向Pに回転する間に、突起16が、ロックアーム40の一端部41側の部分を引出方向Pに押す(図16D参照)。従って、突起16は、ロックアーム40を直接押して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転をロックアーム40に伝達する回転伝達部材でもある。解除手段18は、突起16により巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達する伝達機構19を有する。伝達機構19により、ロックアーム40を停止部6Gから外して、リトラクタ1のエンドロックを解除する。
具体的には、ロック機構9の作動開始から、ロック機構9により巻取ドラム10の引出方向Pの回転が完全に止まるまでの間に、伝達機構19が、巻取ドラム10の引出方向Pの回転(回転の力)をロックアーム40に伝達する。この伝達機構19は、上記したように、突起16からなる回転伝達部材を有する。突起16が、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロックアーム40に接触してロックアーム40を押す。続いて、伝達機構19(突起16)は、ロックアーム40に力を加えて、ロックアーム40を停止部6Gとの係合を解除する方向(解除方向)に変位させる。解除手段18の伝達機構19により、ロックアーム40が停止部6Gから外れて、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される(図17A参照)。
可動パウル4Aが非ロック位置からロック位置に移動する間に、解除手段18は、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する。その際、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い可動パウル4Aがロック歯26に係合する状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。ここでは、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26に接触した状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。続いて、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、係合爪4Bがロック歯26に沿って移動してロック歯26の底部に到達し、可動パウル4Aとロック歯26の係合が完了する。
これに対し、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い係合爪4Bがロック歯26に接触可能な状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除されるようにしてもよい。この場合には、係合爪4Bがロック歯26に接触しない状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される。続いて、リターンスプリング8Aの付勢により、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転し、可動パウル4Aが非ロック位置に向かって移動する。ただし、係合爪4Bは、ロック歯26に接触可能な位置にあり、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロック歯26に接触する。その後、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴い、可動パウル4Aとロック歯26の係合が完了する。
図18は、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除される過程を示す図であり、ロックアーム40と停止部6Gを拡大して示している。
図示のように、解除手段18は、伝達機構19によりロックアーム40を押して、ロックアーム40を停止部6Gに沿って移動させつつ解除方向に変位させる。その際、まず、伝達機構19の突起16が、ロックアーム40の一端部41を停止部6Gの係合歯6Jに向かって押す(矢印Q1)。これに伴い、ロックアーム40の一端部41が、係合歯6Jの係合面に沿って移動し始めて、係合歯6Jの先端に向かって移動する(矢印Q2)。
ロックアーム40の一端部41の移動に連動して、ロックアーム40がアーム支持部37を中心に回転するとともに、ロックアーム40のアーム支持部37が移動する(矢印Q3)。また、アーム支持部37が移動し始めた後、ロッキングクラッチ30がアーム支持部37により巻取方向Mに押される。その結果、ロックアーム40がロッキングクラッチ30とともに巻取方向Mに回転しつつ、ロックアーム40の一端部41が係合歯6Jの先端に向かって移動する。同時に、ロックアーム40が回転中心N2(アーム支持部37)回りにロック作動方向Lの反対方向(解除方向)に回転し、ロックアーム40の全体が係合歯6Jから離れる方向に変位する。
ロックアーム40の変位時に、伝達機構19の突起16は、ロックアーム40の凹部47内で、ロックアーム40の接触面(接触部)47Aに接触する。凹部47は、ロックアーム40の巻取ドラム10側に形成され、接触面47Aは、凹部47の平滑な内面からなる。突起16は、凹部47内で、接触面47Aに沿って摺動して、ロックアーム40の一端部41側に円滑に移動する。この移動に伴い、突起16は、ロックアーム40の動きを妨げることなく、ロックアーム40の一端部41を停止部6Gの係合歯6Jに向かって押す。突起16と停止部6Gの係合歯6Jにより、ロックアーム40とロッキングクラッチ30が回転して、ロックアーム40が変位する。
解除手段18は、停止部6Gからロックアーム40が受ける力により、ロックアーム40をロッキングクラッチ30とともに停止部6Gから離れる方向(ここでは巻取方向M)に回転させつつ、ロックアーム40を解除方向に変位させる。その際、ロックアーム40は、係合歯6Jに係合した状態で、係合歯6Jの先端に向かって移動する。係合歯6Jは、解除方向に変位するロックアーム40を移動させつつ、ロックアーム40に力を加えて、ロックアーム40とロッキングクラッチ30を回転させる。また、ロックアーム40は、係合歯6Jに沿った移動に伴い、回転中心N2回りに回転する。このように、係合歯6Jは、ロックアーム40と係合した状態で、解除方向に変位するロックアーム40を先端に向かって移動させつつ回転させ、かつ、ロックアーム40に、ロッキングクラッチ30とともに回転する力を加える。
ロックアーム40の変位により、ロックアーム40の一端部41が停止部6Gの係合歯6Jから外れたときに、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除されて、ロックアーム40が停止部6Gから解放される。これに伴い、ロックアーム40は、ロック作動方向Lの反対方向に変位して元の位置に復帰する(図17A、図17B参照)。また、ロッキングクラッチ30のロックが解除される。ロック機構9は、ロックアーム40と停止部6Gの係合が解除された後に、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を止める。従って、解除手段18は、巻取ドラム10の引出方向Pの回転に伴いロック機構9が作動する状態で、ロックアーム40と停止部6Gの係合を解除する。
その後、ウエビング2を巻き取ることで、巻取ドラム10が巻取方向Mに回転し、ロッキングクラッチ30が巻取ドラム10に対して引出方向Pに相対的に回転する(図17C参照)。ウエビング2の巻取前にロッキングクラッチ30のロックが解除されているため、巻取ドラム10が巻取方向Mに回転した後、ロッキングクラッチ30の引出方向Pの回転が早期に開始する。また、可動パウル4Aの連動ピン4Cが誘導溝33により誘導されて、可動パウル4Aの係合爪4Bがロック歯26から外れる位置まで移動する。このように可動パウル4Aが移動すると、ロッキングクラッチ30が急速に引出方向Pに相対的に回転して、可動パウル4Aが非ロック位置に移動する(図17D参照)。これに伴い、ロック機構9による巻取ドラム10のロックが解除され、以降、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
なお、エンドロックの発生と同時に、車両の振動等により加速度センサー50が作動して、センサーレバー53のロック爪54がラチェットホイール36の歯35に噛み合う虞がある。この場合には、解除手段18によるロッキングクラッチ30の巻取方向Mの回転を利用して、ロック爪54を歯35から外すようにしてもよい。これにより、加速度センサー50によるラチェットホイール36の停止が解除される。
解除手段18と伝達機構19に関して、巻取ドラム10の突起16をロックアーム40の外面に接触させて、ロックアーム40を押すようにしてもよい。ロックアーム40に形成した突起(回転伝達部材)を巻取ドラム10の側面部に接触させることで、巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達してもよい。巻取ドラム10の回転は、ロックアーム40に直接伝達せずに、回転伝達部材を介して、ロックアーム40に間接的に伝達するようにしてもよい。
また、可動パウル4Aの連動ピン4Cを回転伝達部材として利用してもよい。この場合には、例えば、ロックアーム40の他端部42を部分的に誘導溝33に向かって形成し、連動ピン4Cをロックアーム40の他端部42に向かって形成する。このように、ロックアーム40の他端部42と連動ピン4Cを接触可能な形状に形成し、誘導溝33内を移動する連動ピン4Cにより、ロックアーム40の他端部42を押す。これにより、巻取ドラム10の回転をロックアーム40に伝達して、ロックアーム40を解除方向に変位させる。
伝達機構19によるロックアーム40の変位と同時に、誘導溝33内を移動する可動パウル4Aの連動ピン4Cにより、ロッキングクラッチ30を巻取方向Mに押すようにしてもよい。この場合には、係合爪4Bがロック歯26に沿って移動してロック歯26の底部に到達する際に、連動ピン4Cが誘導溝33内を移動しつつロッキングクラッチ30を巻取方向Mに押す。また、ロッキングクラッチ30が巻取方向Mに回転することで、ロックアーム40が停止部6Gから離れる方向に変位する。その結果、ロックアーム40と停止部6Gの係合の解除が補助される。ロックアーム40やロッキングクラッチ30にガタツキがあるときには、ガタツキによっても、ロックアーム40が解除方向に変位する。
次に、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60について説明する(図3、図4参照)。切替手段60により、リトラクタ1の状態が、使用目的に対応して、自動ロック状態(ALR)と緊急ロック状態(ELR)とに切り替えられる。自動ロック状態では、ウエビング2が引き出せなくなり、ウエビング2の巻き取りのみが可能になる。例えば、チャイルドシートや荷物をシートに固定するときに、リトラクタ1が自動ロック状態に切り替えられる。これに対し、緊急ロック状態では、ウエビング2の巻き取り及び引き出しが可能である。ただし、車両の緊急時には、ロック機構9により巻取ドラム10がロックされる。その結果、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が止められて、ウエビング2の引き出しが停止する。
切替手段60は、ロック機構9を作動する作動部材61と、作動部材61を所定位置に配置するアーム状の配置部材62と、配置部材62を移動する円盤状の移動部材70と、配置部材用付勢手段である第1付勢手段63と、作動部材用付勢手段である第2付勢手段64と、減速機構80を備えている。また、減速機構80は、駆動歯車81、中間歯車82、及び、従動歯車83を有し、組み合わされた複数の歯車81、82、83により、巻取ドラム10と移動部材70に連結される。
作動部材61と配置部材62は、メカニズムカバー6A(図3参照)に形成された円柱状の回転軸(回転用の軸)6Kに回転可能に取り付けられる。第1付勢手段63は、弾性変形可能な付勢部材(ばね、ゴム、弾性部材等)(ここでは、引張コイルばね)からなり、配置部材62とメカニズムカバー6Aに取り付けられる。第2付勢手段64は、弾性変形可能な付勢部材(ばね、ゴム、弾性部材等)(ここでは、ねじりばね)からなり、作動部材61とメカニズムカバー6Aに取り付けられる。移動部材70の中心孔71は、メカニズムカバー6Aの環状支持部6Lに回転可能に取り付けられ、移動部材70は、環状支持部6Lを中心に回転する。
第1シャフト12に固定されたキャップ17は、挿入孔6Iに挿入されて、環状支持部6L内に配置される。駆動歯車81は、環状支持部6L内でキャップ17に固定され、移動部材70の中心で、巻取ドラム10の第1シャフト12及びキャップ17と一体に回転する。従動歯車83は、移動部材70の内側凸部72に形成された内歯車であり、駆動歯車81及び中間歯車82よりも大きな歯車になっている。中間歯車82は、駆動歯車81よりも大きい第1歯車82Aと、第1歯車82Aよりも小さい第2歯車82B(図4参照)を有し、外面カバー6Vに回転可能に取り付けられる。第1歯車82Aは駆動歯車81に噛み合い、第2歯車82Bは従動歯車83に噛み合う。外面カバー6Vは、メカニズムカバー6Aに取り付けられて、切替手段60を覆う。
図19は、図4のW5方向からみたリトラクタ1の側面図であり、外面カバー6Vを取り外したメカニズムカバーユニット6を示している。また、図19は、メカニズムカバー6A(クラッチ収容部6B)内に収容されたロッキングクラッチ30のラチェットホイール36も示している。ラチェットホイール36は、クラッチ収容部6Bの開口6Mにおいて露出する。なお、図19は、実線で示す位置から移動した作動部材61の一部と配置部材62の一部を点線で示している。
図示のように、巻取ドラム10が回転すると、駆動歯車81がキャップ17と一体に回転する。駆動歯車81の回転により、第1歯車82Aが回転して、中間歯車82が駆動歯車81の回転速度よりも遅い回転速度で回転する。中間歯車82の第2歯車82Bの回転により、従動歯車83が中間歯車82の回転速度よりも遅い回転速度で回転し、移動部材70が巻取ドラム10の回転に連動して回転する。減速機構80は、巻取ドラム10の回転を減速して移動部材70に伝達し、移動部材70を巻取ドラム10の回転速度よりも遅い回転速度で回転する。ここでは、ウエビング2の全体が引き出される間に、移動部材70が360°以下の所定角度だけ回転する。また、移動部材70は、巻取ドラム10の回転方向の反対方向に回転する。
作動部材61と配置部材62は、回転軸6Kの軸方向に重なるように1つの回転軸6Kに回転可能に取り付けられ、連動して回転可能に組み合わされる。その状態で、作動部材61が、移動部材70に対してラチェットホイール36側に配置され、配置部材62が、移動部材70の内側凸部72側の面に沿って配置される。移動部材70は、回転により配置部材62を移動するカム部材であり、かつ、配置部材62により作動部材61の位置を制御する制御部材である。
配置部材62は、移動部材70に従動するカムフォロアであり、かつ、リトラクタ1の状態を切り替える切替レバーである。作動部材61は、配置部材62に連動する連動部材であり、かつ、ロック機構9の作動と非作動を切り替える作動スイッチ(切替スイッチ)である。ロック機構9は、作動部材61により作動して、巻取ドラム10の引出方向Pの回転のみを止めて、巻取ドラム10の巻取方向Mの回転を許容する。ここでは、作動部材61は、メカニズムカバー6A内でラチェットホイール36の歯35に噛み合う噛合部材であり、歯35への噛合により、ラチェットホイール36の引出方向Pの回転を止める。ロック機構9は、作動部材61と歯35の噛み合いによるラチェットホイール36の引出方向Pの回転停止に伴い作動する。従って、作動部材61を備えた切替手段60は、ラチェットホイール停止手段でもある。
作動部材61と配置部材62は、回転軸6Kを中心に回転して、同じ回転方向に移動する。即ち、リトラクタ1は、作動部材61と配置部材62を回転により移動させる回転手段65を備えており、回転手段65は、1つの回転軸6Kを有する。配置部材62は、回転手段65により、作動部材61とともに回転により移動(図19の矢印H)する。また、配置部材62の移動(回転)に連動して、作動部材61は、ロック機構9を作動しない非作動位置E1(図19に実線で示す位置)と、ロック機構9を作動する作動位置E2(図19に点線で示す位置)に移動(回転)する。
作動部材61の非作動位置E1は、作動部材61がラチェットホイール36の歯35に噛み合わない位置(非噛合位置)である。また、作動部材61の作動位置E2は、作動部材61がラチェットホイール36の歯35に噛み合う位置(噛合位置)である。配置部材62により、作動部材61は、非作動位置E1(非噛合位置)から作動位置E2(噛合位置)に移動してロック機構9を作動する。
具体的には、配置部材62の移動に伴い、作動部材61は、ラチェットホイール36に近づき、又は、ラチェットホイール36から離れる。また、加速度センサー50のロック爪54と同様に、作動部材61は、開口6Mにおいて、クラッチ収容部6B内のラチェットホイール36の歯35に噛み合う。これにより、ラチェットホイール36の回転が停止して、ロック機構9が作動する。
第2付勢手段64は、作動部材61を作動位置E2に向かって常に付勢する。作動部材61は、ラチェットホイール36に接触したときに、第2付勢手段64によりラチェットホイール36に押し付けられる。これに対し、配置部材62は、第1付勢手段63により、作動部材61を非作動位置E1に移動する方向(作動部材61をラチェットホイール36から離す方向)(ここでは、移動部材70の半径方向内側)に常に付勢されている。図19では、作動部材61は、第2付勢手段64により反時計回りに回転するように付勢され、配置部材62は、第1付勢手段63により時計回りに回転するように付勢されている。
第1付勢手段63の付勢力と第2付勢手段64の付勢力とが釣り合った状態(図19に示す状態)で、配置部材62は、移動部材70の半径方向内側に位置し、内側凸部72近傍の第1位置F1(図19に実線で示す位置)に配置される。配置部材62の第1位置F1は、作動部材61が非作動位置E1に配置される位置であり、作動部材61は、配置部材62により非作動位置E1に配置される。その状態から、配置部材62は、作動部材61を作動位置E2に移動する方向(作動部材61をラチェットホイール36に近づける方向)(ここでは、移動部材70の半径方向外側)に移動して、第1位置F1の外側の第2位置F2(図19に点線で示す位置)に配置される。第2位置F2は、作動部材61が作動位置E2に配置される位置であり、作動部材61は、配置部材62により作動位置E2に配置される。
このように、配置部材62は、回転手段65の回転により、第1位置F1と第2位置F2とに配置される。同時に、配置部材62は、作動部材61とともに移動して、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。また、第1付勢手段63は、配置部材62を第1位置F1に向かって付勢している。配置部材62が第2位置F2に配置された状態では、第1付勢手段63の付勢力が第2付勢手段64の付勢力よりも大きいため、配置部材62が第1付勢手段63の付勢により第1位置F1に移動して、作動部材61が非作動位置E1に移動する。
図20は、作動部材61と配置部材62の斜視図であり、図21は、図19のY2部の断面図である。
図示のように、配置部材62は、回転軸6Kに取り付けられる円筒状の取付部62Aと、取付部62Aから突出するアーム部62Bと、アーム部62Bの先端に形成された突起からなる接触部62Cを有する。接触部62Cが移動部材70に接触して移動することで、アーム部62Bが取付部62Aを中心に回転し、配置部材62が移動する。
作動部材61は、回転軸6Kに取り付けられる円筒状の取付部61Aと、取付部61Aから突出するアーム部61Bと、アーム部61Bの先端に形成された噛合パウル61Cを有する。噛合パウル61Cは、作動部材61に形成された噛合部(噛合爪)であり、作動部材61と一体に移動する。取付部61Aを中心にアーム部61Bが回転することで、作動部材61が移動し、噛合パウル61Cがラチェットホイール36の歯35に噛み合う。
噛合パウル61Cとチェットホイール36の歯35は、ラチェットホイール36が引出方向Pに回転するときのみ噛み合うように形成されている。噛合パウル61Cは、ロック機構9の一部を構成しており、ロック機構9は、ラチェットホイール36と噛合パウル61Cとを備えている。作動部材61は、作動位置E2への移動により噛合パウル61Cを歯35に噛み合う位置に配置し、非作動位置E1への移動により噛合パウル61Cを歯35に噛み合わない位置に配置する。ロック機構9は、歯35と噛合パウル61Cの噛み合いに伴い作動する。ラチェットホイール36が巻取方向Mに回転するときには、噛合パウル61Cは、歯35の外面を相対的に摺動し、歯35の先端において歯35を乗り越える。
作動部材61の取付部61Aと配置部材62の取付部62Aを回転軸6Kに取り付けたときに、取付部61A、62Aの円弧部61D、62Dが組み合わされる。その際、第2付勢手段64の付勢(図21の矢印G)により、円弧部61D、62Dの一端部が接触するとともに、円弧部61D、62Dの他端部の間に隙間66が形成される。配置部材62(図21では、円弧部62Dの断面のみ示す)が第1位置F1に移動するときには、作動部材61は、配置部材62により押されて回転し、隙間66を維持しつつ非作動位置E1に移動する。また、配置部材62が第2位置F2に移動するときには、配置部材62の移動に伴い、作動部材61が、第2付勢手段64の付勢により、隙間66を維持しつつ作動位置E2まで移動する。
作動部材61の噛合パウル61Cは、引出方向Pに回転するラチェットホイール36の歯35のみに噛み合う。その状態で、ラチェットホイール36が巻取方向Mに回転すると、噛合パウル61Cが歯35により押される。これにより、配置部材62が停止した状態で、作動部材61が、隙間66を狭くしつつ歯35に沿って変位して、複数の歯35を順に乗り越える。
従って、リトラクタ1は、以上のように構成される作動部材61の変位機構67を備える。配置部材62が第2位置F2に維持された状態で、変位機構67により、作動部材61の噛合パウル61Cは、巻取ドラム10とともに巻取方向Mに回転するラチェットホイール36の歯35に沿って変位する。これにより、ラチェットホイール36の巻取方向Mの回転中に、噛合パウル61Cが複数の歯35に噛合可能な状態に確実に維持される。ラチェットホイール36が引出方向Pに回転すると、噛合パウル61Cが再び歯35に噛み合う。
配置部材62(図19参照)は、作動部材61とともに移動して、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2とに移動させる。この移動により、作動部材61と配置部材62は、ラチェットホイール36の回転可能方向を制御するとともに、リトラクタ1の状態を切り替える。配置部材62により作動部材61が非作動位置E1に移動すると、ラチェットホイール36が巻取方向M及び引出方向Pに回転可能になり、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に切り替えられる。配置部材62により作動部材61が作動位置E2に移動すると、ラチェットホイール36が巻取方向Mのみに回転可能になり、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に切り替えられる。
移動部材70により、配置部材62は、第1位置F1と第2位置F2に配置されて、作動部材61を非作動位置E1と作動位置E2に配置する。移動部材70は、巻取ドラム10の回転に連動して回転し、回転に伴い、配置部材62を第1位置F1と第2位置F2とに移動させる。また、移動部材70は、内側凸部72と、内側凸部72を囲む外側凸部73と、配置部材62を第1位置F1に維持する第1維持部74と、変更部75と、配置部材62を移動する移動部76と、配置部材62を第2位置F2に維持する第2維持部77と、解放部78を有する。
内側凸部72は、移動部材70の半径方向の内側に形成された環状凸部である。外側凸部73は、移動部材70の半径方向の外側に形成された環状凸部であり、移動部材70の一方の面で内側凸部72の外側に形成されている。内側凸部72の中心と外側凸部73の中心は移動部材70の回転中心に一致し、外側凸部73は内側凸部72の直径よりも大きい直径に形成されている。第1維持部74は、内側凸部72と外側凸部73(第2維持部77)の間の環状経路からなる。第1維持部74において、配置部材62(接触部62C)は、内側凸部72に接触せずに内側凸部72の近傍に配置され、内側凸部72に沿って相対的に移動する。
図22〜図24は、移動部材70の回転に伴う配置部材62の動作を示す図であり、リトラクタ1を図19と同様に示している。また、図22Cは、図22BのX3−X3線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図であり、図23Bは、図23AのX4−X4線を矢印方向にみたリトラクタ1の断面図である。
図示のように、ウエビング2の引き出し又は巻き取りにより巻取ドラム10が引出方向P又は巻取方向Mに回転すると、減速機構80により、移動部材70が巻取ドラム10の回転方向の反対方向に回転する。また、移動部材70の回転に伴い、配置部材62は、移動部材70の周方向に相対的に移動するとともに、移動部材70の各部74〜77に沿って相対的に移動する。
ウエビング2を巻取ドラム10に完全に巻き取ったときには、配置部材62の接触部62Cは、第1維持部74に配置される(図22A参照)。これにより、配置部材62が第1位置F1に維持されて、作動部材61が非作動位置E1に維持される。その状態で、ウエビング2の引き出しにより移動部材70が回転すると、配置部材62(接触部62C)が第1維持部74に沿って相対的に移動する。また、ウエビング2の引き出しと巻き取りに伴い、配置部材62は、第1維持部74において、移動部材70の周方向に相対的に移動する。巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ(所定の引出長さ)引き出されるまで、接触部62Cが第1維持部74に配置されて、配置部材62が第1維持部74により第1位置F1に維持される。その結果、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態に維持される。
巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ引き出されるときに(図22B、図22C参照)、配置部材62が変更部75に沿って相対的に変位し、変更部75により、配置部材62の位置が第1維持部74から移動部76による移動位置に変更される。移動部76による移動位置は、配置部材62が移動部76により移動可能になる位置である。配置部材62は、移動位置まで移動した後、移動部76により移動する。ここでは、変更部75は、第1維持部74から移動部76の先端に向かって傾斜する斜面であり、第1維持部74の終端部に形成されている。
ウエビング2の引き出しによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62の接触部62Cが、変更部75に接触し、移動部76に向かって相対的に移動する。これにより、配置部材62が、弾性変形し、変更部75に沿って移動部材70から離れる方向に変位する。続いて(図23A、図23B参照)、配置部材62が移動部76を乗り越えて元の形状に復帰し、接触部62Cが移動部76に接触可能な位置に配置される。ここでは、ウエビング2が巻取ドラム10から完全に引き出されるときに、変更部75により、配置部材62の位置が、第1維持部74から移動部76による移動位置に変更される。従って、ウエビング2が巻取ドラム10から完全に引き出されるまで、配置部材62は、第1維持部74により第1位置F1に維持される。
所定長さ引き出されたウエビング2を巻取ドラム10に巻き取るときに、移動部材70の移動部76が、移動部材70の回転に伴い、配置部材62を第1位置F1から第2位置F2に移動させる(図23C参照)。移動部76は、第2維持部77に向かって傾斜する傾斜部からなり、内側凸部72から外側凸部73(第2維持部77)まで形成されている。ウエビング2の巻き取りによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62は、移動部76に接触し、移動部76に沿って次第に移動して、移動部76により第1位置F1から第2位置F2に誘導される。従って、移動部76は、配置部材62を第1位置F1から第2位置F2に誘導する誘導部でもある。
ここでは、移動部76は、移動部材70の回転方向に対して、移動部76による移動位置から第2維持部77に向かって傾斜する傾斜凸部からなり、第2維持部77の前端部に繋がる。また、巻取ドラム10から完全に引き出されたウエビング2を巻取ドラム10に巻き取るときに、配置部材62が移動部76により移動する。その際、配置部材62の接触部62Cが、第1付勢手段63の付勢により移動部76に押し付けられた状態で、移動部76により誘導されて、第2維持部77に向かって移動する。これにより、配置部材62が、移動部材70の半径方向外側に向かって移動して、第1位置F1から第2位置F2に移動する(図24A参照)。同時に、作動部材61が非作動位置E1から作動位置E2に移動して、リトラクタ1の状態が緊急ロック状態から自動ロック状態に切り替えられる。
第2維持部77は、第1維持部74の半径方向外側に円弧状に形成された円弧部からなり、第1維持部74の一部を囲む。所定長さ引き出されたウエビング2の巻取ドラム10への巻取中に、配置部材62は、第2維持部77に接触して、第2維持部77により第2位置F2に維持される。ここでは、第2維持部77は、外側凸部73の一部を構成する円弧状凸部からなり、移動部材70の周方向に沿って所定長さに形成されている。移動部76と第2維持部77が繋がる箇所では、外側凸部73が部分的にないため、配置部材62の接触部62Cは、移動部76から第2維持部77まで円滑に移動する。また、接触部62Cは、第2維持部77に接触し、第1付勢手段63の付勢により第2維持部77に押し付けられる。接触部62Cが第2維持部77により押さえられることで、配置部材62が、第2維持部77により保持される。これにより、完全に引き出されたウエビング2の巻取中に、配置部材62が第2位置F2に維持される。
配置部材62が第2位置F2に維持されることで、作動部材61が作動位置E2に維持される。その結果、リトラクタ1の状態が自動ロック状態に維持され、ロック機構9により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転のみが止められる。ウエビング2の巻き取りによる移動部材70の回転に伴い、配置部材62(接触部62C)は、第2維持部77に沿って相対的に移動するとともに、第2維持部77の終端部79及び移動部材70の解放部78に向かって相対的に移動する(図24B参照)。第2維持部77により、配置部材62は、ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ(所定の巻取長さ)巻き取られるまで第2位置F2に維持される。また、ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ巻き取られたときに、配置部材62は、第2維持部77の終端部79から外れて、解放部78により第1維持部74に向かって解放される。配置部材62は、ウエビング2が巻取ドラム10に完全に巻き取られる前に、終端部79から外れる。
第2維持部77の終端部79では、外側凸部73が部分的にないため、配置部材62の接触部62Cは、終端部79に達した後、第2維持部77から外れる。これにより、接触部62Cが第2維持部77により押さえられた状態から解放されて、配置部材62が第2維持部77から解放される。移動部材70の解放部78は、終端部79に続く部分であり、第2維持部77から第1維持部74まで形成された解放領域からなる。解放部78において、配置部材62は、移動部材70に接触することなく、移動部材70の半径方向内側に向かって、第2維持部77から第1維持部74まで移動する。
ウエビング2が巻取ドラム10に所定長さ巻き取られて、配置部材62が第2維持部77の終端部79から外れたときに、解放部78は、配置部材62を第2維持部77から第1維持部74に向かって解放する(図19参照)。この解放に伴い、配置部材62は、第1付勢手段63の付勢により、第2維持部77(第2位置F2)から第1維持部74(第1位置F1)に直ちに移動する。同時に、作動部材61が作動位置E2から非作動位置E1に移動して、リトラクタ1の状態が自動ロック状態から緊急ロック状態に切り替えられる。その後、ウエビング2は、巻取ドラム10に巻き取られ、又は、巻取ドラム10から引き出される。
以上説明したように、本実施形態のリトラクタ1では(図15参照)、係合部44により、規制部材56が、押さえ部57によりロックアーム40を押さえた規制状態に維持される。そのため、ウエビング2を巻き取ったときに、リトラクタ1にエンドロックが発生するのを確実に抑制することができる。また、規制部材56の取付部58と中心支持部6Hとの間に生じる摩擦力の大きさにかかわらず、規制部材56を規制状態に安定して維持することができる。1つの規制部材56によりエンドロックの発生が抑制されるため、リトラクタ1の部品数の増加を防止することができる。
規制部材56は、押さえ部57により係合部44を押さえて、ロックアーム40のロック作動方向Lへの変位を規制する。これにより、係合部44を押さえ部57に係合した状態に維持しつつ、ロックアーム40の変位を確実に規制することができる。また、係合部44が押さえ部57に引っ掛かる凸部からなるため、係合部44と押さえ部57の係合と係合の解除を円滑に行うことができる。
係合部44が押さえ部57を拘束して押さえ部57の移動を阻止することで、ロックアーム40のロック作動方向Lの変位をより確実に抑制できる。また、係合部44が、押さえ部57に押し付けられて、押さえ部57の移動を阻止する方向の力を押さえ部57に加えるため、押さえ部57が係合部44に押されて移動するのを防止できる。規制部材56の取付部58と中心支持部6Hとの間に生じる摩擦力により、ロックアーム40の不要な動きを抑制できるとともに、規制部材56を規制状態により確実に維持することができる。
規制部材56の回転中心N1をロックアーム40の回転中心N2と異なる位置に配置することで、係合部44と押さえ部57の係合に伴う規制部材56の回転(移動)を容易に抑制することができる。係合部44の変位方向S2を押さえ部57の回転方向S1に交差する方向に設定するときには、係合部44の変位方向S2の力により規制部材56が回転せず、係合部44により規制部材56が回転できない状態に保持される。これらにより、規制部材56を規制状態により確実に維持することができる。
押さえ部57がロックアーム40の係合部44から離れた位置に接触するため、通常の巻取ドラム10の巻取方向Mの回転時に、係合部44が押さえ部57に係合することがない。また、巻取ドラム10の引出方向Pの回転時には、押さえ部57がロックアーム40から確実かつ円滑に離れる。その結果、規制部材56がウエビング2の引き出し及び巻き取りを妨げず、かつ、ロックアーム40の正常な機能が確実に発揮される。
なお、リトラクタ1の状態を切り替える切替手段60(図19参照)に関して、配置部材62が第1位置F1に維持された状態で、第1付勢手段63の付勢力が第2付勢手段64の付勢力よりも大きくなるようにしてもよい。この場合には、配置部材62の接触部62Cが、第1維持部74において内側凸部72に接触し、内側凸部72により押さえられる。また、配置部材62が変更部75に沿って相対的に変位するときに、配置部材62が弾性変形せずに、移動部材70が弾性変形するようにしてもよい。
作動部材61は、弾性変形可能な部材であってもよい。この場合には、例えば、作動部材61は、作動位置E2に移動したときに、ラチェットホイール36の歯35に押されて弾性変形する。その際、作動部材61は、弾性力により作動位置E2に向かって付勢される。従って、作動部材61自体が付勢手段になるため、第2付勢手段64を別途設ける必要がなく、部品数が削減される。また、作動部材61と配置部材62を一体に形成して、部品数を削減するようにしてもよい。この場合にも、作動部材61は、弾性変形することで、作動位置E2に向かって付勢される。
巻取ドラム10からウエビング2が所定長さ引き出されるまで、移動部材70の第1維持部74により、配置部材62が第1位置F1に維持される。このウエビング2の所定長さは、任意の長さに設定される。従って、所定長さは、ウエビング2の全長であってもよく、全長よりも短い長さであってもよい。
減速機構80は、本実施形態の例に限定されず、周知の減速機構を使用できる。また、噛合パウル61Cを作動部材61に形成せずに、噛合パウル61Cを作動部材61とは異なる部材にしてもよい。この場合には、作動部材61が、噛合パウル61Cを非噛合位置と噛合位置に移動する。作動部材61と配置部材62は、異なる回転軸に取り付けて、連動して回転するようにしてもよい。このようにすることで、回転軸の軸方向における作動部材61と配置部材62の配置スペースを削減することができる。
1・・・リトラクタ、2・・・ウエビング、3・・・ハウジングユニット、4・・・巻取ドラムユニット、4A・・・可動パウル、4B・・・係合爪、4C・・・連動ピン、5・・・巻取バネユニット、6・・・メカニズムカバーユニット、6A・・・メカニズムカバー、6B・・・クラッチ収容部、6C・・・センサー収容部、6D・・・センサーカバー、6E・・・開口、6F・・・環状壁、6G・・・停止部、6H・・・中心支持部、6I・・・挿入孔、6J・・・係合歯、6K・・・回転軸、6L・・・環状支持部、6M・・・開口、6V・・・外面カバー、7・・・抜け止めピン、8・・・クラッチユニット、9・・・ロック機構、10・・・巻取ドラム、11・・・挿入部、12・・・第1シャフト、13・・・第2シャフト、14・・・パウル収容部、15・・・凹部、16・・・突起、17・・・キャップ、18・・・解除手段、19・・・伝達機構、20・・・ハウジング、21・・・背板部、22・・・第1側壁部、23・・・第2側壁部、24・・・固定板、25・・・第1開口部、26・・・ロック歯、27・・・第2開口部、30・・・ロッキングクラッチ、31・・・中心孔、32・・・バネホルダー、33・・・誘導溝、34・・・貫通溝、35・・・歯、36・・・ラチェットホイール、37・・・アーム支持部、38・・・支持ピン、39A、39B、39C・・・ストッパー、40・・・ロックアーム、41、42・・・端部、43・・・貫通孔、44・・・係合部、45・・・摺動部、46・・・係合面、47・・・凹部、50・・・加速度センサー、51・・・サンサーホルダー、52・・・慣性質量体、53・・・センサーレバー、54・・・ロック爪、56・・・規制部材、57・・・押さえ部、58・・・取付部、59・・・接触部、60・・・切替手段、61・・・作動部材、62・・・配置部材、63・・・第1付勢手段、64・・・第2付勢手段、65・・・回転手段、66・・・隙間、67・・・変位機構、70・・・移動部材、71・・・中心孔、72・・・内側凸部、73・・・外側凸部、74・・・第1維持部、75・・・変更部、76・・・移動部、77・・・第2維持部、78・・・解放部、79・・・終端部、80・・・減速機構、81・・・駆動歯車、82・・・中間歯車、83・・・従動歯車、L・・・ロック作動方向、M・・・巻取方向、P・・・引出方向。

Claims (9)

  1. ウエビングの巻取方向と引出方向に回転可能な巻取ドラムと、
    巻取ドラムとともに回転し、かつ、巻取ドラムの引出方向の加速度に応じてロック作動方向に変位可能な変位部材と、
    変位部材のロック作動方向への変位により作動し、巻取ドラムの引出方向の回転を止めるロック機構と、
    巻取ドラムの巻取方向の回転停止の反動による変位部材のロック作動方向への変位を規制する規制部材と、
    を備えたシートベルト用リトラクタであって、
    規制部材が、巻取ドラムの引出方向の回転時に変位部材から離れるとともに、巻取ドラムの巻取方向の回転時に変位部材に接触してロック作動方向へ変位する変位部材を押さえる押さえ部を有し、
    変位部材が、規制部材の押さえ部に係合し、規制部材を押さえ部により変位部材を押さえた状態に維持する係合部を有するシートベルト用リトラクタ。
  2. 請求項1に記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    変位部材の係合部が、規制部材の押さえ部を拘束して押さえ部の移動を阻止するシートベルト用リトラクタ。
  3. 請求項1又は2に記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    規制部材が、変位部材とともに変位する係合部を押さえ部により押さえて、変位部材のロック作動方向への変位を規制するシートベルト用リトラクタ。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    規制部材の押さえ部が、巻取ドラムの巻取方向の回転時に、変位部材の係合部から離れた位置に接触し、
    変位部材の係合部が、変位部材のロック作動方向への変位が開始したときに、押さえ部に接触して係合するシートベルト用リトラクタ。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    変位部材の係合部が、規制部材の押さえ部に押し付けられて、押さえ部の移動を阻止する方向の力を押さえ部に加えるシートベルト用リトラクタ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    変位部材の係合部が、規制部材の押さえ部に引っ掛かる凸部からなるシートベルト用リトラクタ。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    変位部材を回転可能に支持して、回転により変位部材をロック作動方向へ変位させる変位部材用支持部と、
    規制部材の回転中心を変位部材の回転中心と異なる位置に配置して、規制部材を回転可能に支持する規制部材用支持部と、
    を備えたシートベルト用リトラクタ。
  8. 請求項7に記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    変位部材の係合部の回転による変位方向が、規制部材の押さえ部の回転方向に交差する方向に設定されたシートベルト用リトラクタ。
  9. 請求項7又は8に記載されたシートベルト用リトラクタにおいて、
    規制部材が、規制部材用支持部に取り付けられ、規制部材の回転時に規制部材用支持部との間に摩擦力を生じる取付部を有するシートベルト用リトラクタ。
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