<第1の本実施の形態の構成>
図5には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成の概略が背面断面図により示されている。
この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は平板状に形成された背板14を備えている。背板14は幅方向が概ね車両の前後方向に沿った状態で車体に固定される。背板14の幅方向一方の端部からは背板14の厚さ方向一方の側(図5の紙面奥行き側)へ向けて脚板16が延出されており、背板14の幅方向他方の端部からは背板14からの脚板16の延出方向と同じ向きに脚板18が延出されている。
この脚板16と脚板18との間にはスプール20が設けられている。スプール20は軸方向が脚板16と脚板18との対向方向に沿った筒形状のスプール本体22を備えている。スプール本体22には長尺帯状のウエビングベルト24の長手方向基端部が係止されており、スプール本体22が軸周りの一方である巻取方向に回転するとウエビングベルト24がその長手方向基端側から巻き取られる。
一方、スプール本体22の内側にはエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト26が配置されている。トーションシャフト26はエネルギー吸収部28を備えている。エネルギー吸収部28は長手方向がスプール本体22の軸方向に沿った棒状とされており、スプール本体22に対して同軸的に設けられている。エネルギー吸収部28の脚板16側の端部には連結部30が形成されている。連結部30はエネルギー吸収部28の軸方向に沿って見た形状が六角形や星形状等の非円形とされている。
スプール本体22の少なくとも脚板16側の端部近傍では、内周形状が連結部30の外周形状に対して僅かに大きな相似形状とされており、連結部30がスプール本体22の内周部に嵌め合わされることで、スプール本体22に対するトーションシャフト26の同軸的な相対回転が規制される。連結部30のエネルギー吸収部28とは反対側の端部からは図示しない軸部がエネルギー吸収部28に対して突出形成されている。
一方、脚板16の脚板18とは反対側にはスプリングケース32が設けられている。スプリングケース32は脚板16の側が開口した中空形状に形成されており、脚板18に固定されている。上記の連結部30から突出した軸部は、脚板16を貫通してスプリングケース32に入り込み、エネルギー吸収部28の中心軸心周りに回転自在に支持されている。
このスプリングケース32の内部には渦巻きばね等の図示しない付勢手段が設けられている。この付勢手段は、その一部(付勢手段が渦巻きばねの場合、渦巻き方向内側の端部)が連結部30から突出した軸部に直接又は間接的に係合していると共に、他の一部(付勢手段が渦巻きばねの場合、渦巻き方向外側の端部)がスプリングケース32に直接又は間接的に係合している。スプリングケース32内の付勢手段は、トーションシャフト26が上記の巻取方向とは反対の引出方向に回転することで付勢力が生じ、連結部30から突出した軸部を巻取方向へ付勢する。
一方、スプール本体22の脚板18側の端部側方にはロックベース34が設けられている。図1に示されるように、ロックベース34はロックベース本体36を備えている。ロックベース34には外周部にラチェット歯が形成されている。このロックベース本体36のスプール本体22の側(脚板16の側)の端部には嵌挿部38がロックベース本体36に対して同軸的且つ一体的に形成されている。
図5に示されるように、ロックベース本体36はスプール本体22の軸方向脚板18の側の端部からスプール本体22に嵌挿されている。ロックベース本体36の外周形状は円形で、スプール本体22の脚板18側の端部近傍でのスプール本体22の内周形状はスプール本体22に対して同軸的な円形とされている。このため、スプール本体22の脚板18側の端部からスプール本体22に嵌挿部38が嵌挿されたロックベース34はスプール本体22に対して同軸的に相対回転可能とされている。
さらに、ロックベース34にはスプール本体22の軸方向に貫通した貫通孔40が形成されている。貫通孔40は断面形状が六角形や星形状等の非円形とされている。エネルギー吸収部28の連結部30とは反対側の端部には貫通孔40に嵌合可能な連結部42が形成されている。貫通孔40の断面形状は非円形であるため、貫通孔40に連結部42が嵌め込まれることで、ロックベース34はトーションシャフト26に対して相対回転が不能とされている。上記のように、トーションシャフト26は連結部30にてスプール本体22と相対回転不能に繋がっているので、結果的にロックベース34はトーションシャフト26を介してスプール本体22に相対回転不能に繋がっていることになる。
図1及び図5に示されるように、ロックベース本体36の脚板16の側には、出力側伝達ギヤとしてのギヤ50が設けられている。ギヤ50は円板状の底壁の外周部から円筒状の周壁が立設された浅底の有底円筒形状に形成されており、その外周部に平歯の外歯が形成されている。ギヤ50にはスプール本体22の脚板18側の端部を嵌挿でき、スプール本体22をギヤ50に嵌挿した状態ではスプール本体22に対してギヤ50が同軸的に取り付けられる。
ギヤ50の底部の中心よりも半径方向外方へ変位した位置ではギヤ50の底部に透孔が形成されており、この透孔にスプール本体22の脚板18側の端部から突出したピンが嵌挿される。これにより、ギヤ50のスプール本体22に対する相対回転が規制され、ギヤ50はスプール本体22と共に一体的に回転する。
一方、図5に示されるように、脚板18の脚板16とは反対側にはアウタハウジング60が設けられている。アウタハウジング60には図示しないプリテンショナ機構の一部又は全部が収容される。プリテンショナ機構はガスジェネレータ等のガス発生手段により生じたガスの圧力でスプール本体22の軸方向に対して交差する向きにスライドするラックバーを備えている。
このラックバーはスライドすることでラックバーの近傍に配置されたピニオンに噛み合ってピニオンを回転させる。ピニオンは、上記の連結部42の嵌挿部38とは反対側から突出形成された軸部にクラッチ等を介して同軸的に連結されており、このため、ピニオンの回転はクラッチ、ロックベース34、トーションシャフト26を介してスプール20に伝わり、スプール20を巻取方向に回転させる。また、上記のピニオンは、直接又は間接的にアウタハウジング60に回転自在に軸支されている。すなわち、スプール20は、脚板18の側がアウタハウジング60に回転可能に間接的に支持され、脚板16の側がスプリングケース32に回転可能に間接的に支持されている。
一方、図5に示されるように、脚板18の脚板16側にはとは反対側はインナハウジング70が設けられている。インナハウジング70の内側には図1に示される規制手段としてのロックパウル72が設けられている。ロックパウル72は、ロックベース本体36(ロックベース34)の半径方向に沿った側方に配置され、脚板18を貫通した状態で脚板18に取り付けられたシャフト74によりスプール本体22の軸方向と同じ方向を軸方向とする軸周りに揺動自在に支持されている。
ロックパウル72はロックベース本体36の外周部に形成されたラチェット歯に噛合可能な歯部76を備えている。ロックパウル72はシャフト74を中心に揺動することでロックベース本体36の外周部に対して接離し、ロックベース本体36の外周部に接近することでロックベース本体36のラチェット歯に歯部76が噛み合う。このようにロックベース本体36のラチェット歯にロックパウル72の歯部76が噛み合った状態では、引出方向へのロックベース34の回転が規制される。
一方、図5に示されるインナハウジング70の内側には、図1に示されるロック手段としてのロック機構80を構成する各種部材が収容されている。以下にロック機構80の構成に関して説明する。
図1に示されるように、インナハウジング70の内側にはシャフト82が設けられている。シャフト82はその軸方向がスプール本体22の軸方向と同じ向きとされ、その一端(図1の右側の端部)は脚板18又はアウタハウジング60に支持され、他端(図1の左側の端部)がインナハウジング70に支持されている。また、インナハウジング70の内側には、入力側伝達ギヤとしてのギヤ92が配置されている。図1及び図2に示されるように、ギヤ92は底壁94を備えている。底壁94は略円板形状とされている。底壁94の厚さ方向脚板18の側(図1の右側、図2の上側)の面にはボス96が形成されている。ボス96は底壁94に対して同軸の円筒形状で、底壁94の中央で底壁94(ひいては、ギヤ92)に対して同軸的に形成されている。
底壁94にはボス96の内側に対応した孔部が形成されており、ボス96及び底壁94をシャフト82が貫通している。これにより、ギヤ92がシャフト82周りに回転自在に支持されている。また、底壁94の外周部からは脚板18の側へ向けて筒状の周壁98が立設されている。周壁98の外周部には平歯の外歯100が形成されている。外歯100は上記のギヤ50に噛み合っており、ギヤ50の回転がギヤ92に伝えられる。また周壁98の内周部には内歯のラチェット歯102が形成されている。
さらに、周壁98の内側には、慣性体としてのイナーシャルプレート104が配置されている。イナーシャルプレート104は円板状に形成されていると共に、イナーシャルプレート104の中央には円孔106が形成されておりギヤ92のボス96が貫通している。これにより、イナーシャルプレート104はボス96周りに回動可能に支持されている。また、イナーシャルプレート104には複数(本実施の形態では3つ)のカム通過孔108が形成されている。これらのカム通過孔108は、中心がイナーシャルプレート104の中心と同心となる仮想円の同一円周上に、イナーシャルプレート104の中心周りに所定角度毎に形成されている。
これらのカム通過孔108の各々に対応してギヤ92の底壁94には孔部110が形成されている。これらの孔部110よりも底壁94の半径方向外方側では、底壁94から規制片112が立設されている。各規制片112は、各孔部110の側方に形成されていると共に、各カム通過孔108に対応しており、各規制片112は対応するカム通過孔108に入り込んでいる。上記のように、イナーシャルプレート104はボス96周りに回動可能であるが、カム通過孔108の内周部に規制片112が干渉することでイナーシャルプレート104の回動範囲が制限されている。
また、図1及び図2に示されるように、底壁94の中心よりも底壁94の半径方向外方に変位した位置では底壁94に略矩形のスプリング収容部116が形成されている。このスプリング収容部116に対応してイナーシャルプレート104にはスプリング収容部118が形成されている。ギヤ92の軸方向に沿ってスプリング収容部116とスプリング収容部118とは互いに対向しており、図2に示されるように、このスプリング収容部116、118の双方の内側に慣性体付勢手段としての圧縮コイルばね120が配置されている。
この圧縮コイルばね120の一端は底壁94に設けられた係止突起122に保持されており、他端はイナーシャルプレート104に設けられた係止突起124に保持されている。この圧縮コイルばね120は圧縮されることで付勢力を生じ、ギヤ92に対してイナーシャルプレート104を巻取方向に付勢する。このため、上記のように、イナーシャルプレート104はカム通過孔108の内周部に干渉されるまでギヤ92に対して一定範囲相対回動可能であるが、ギヤ92が巻取方向に回転すると圧縮コイルばね120がその付勢力でイナーシャルプレート104を巻取方向へ押圧するので、基本的にはギヤ92に追従してイナーシャルプレート104が回転する。
一方、図1及び図2に示されるように、イナーシャルプレート104の底壁94とは反対側にはスライダ140が設けられている。スライダ140はスライダ本体142を備えている。スライダ本体142はイナーシャルプレート104とは反対側(すなわち、脚板18の側)へ向けて漸次外径寸法が小さくなる略円錐台形状に形成されている。スライダ本体142にはイナーシャルプレート104とは反対側へ向けて開口した凹部144が形成されている。凹部144はスライダ本体142の中心軸線を中心とする略円形に形成されている。
さらに、スライダ本体142の底部にはイナーシャルプレート104の側へ貫通した円形の貫通孔146がスライダ本体142に対して同軸的に形成されており、ボス96が貫通している。スライダ140のイナーシャルプレート104とは反対側にはリテーナ150が設けられている。リテーナ150はリテーナ本体152を備えている。リテーナ本体152は外径寸法が凹部144の内径寸法よりも僅かに小さな円板状に形成されている。リテーナ本体152のスライダ140の側にはボス154が形成されている。
ボス154はリテーナ本体152に対して同軸的な円筒形状に形成されている。ボス154の外径寸法は、スライダ140に形成されている貫通孔146の内径寸法よりも僅かに小さく、ボス154は貫通孔146を貫通できる。また、リテーナ本体152のボス154とは反対側の面にボス156が形成されている。ボス156はリテーナ本体152に対して同軸的な円筒形状に形成されている。ボス156とボス154とはリテーナ本体152に形成された孔を介して連通しており、ボス154、156をシャフト82が通過している。
また、リテーナ本体152には一対の脚部158が形成されている。これらの脚部158はリテーナ本体152の外周部又は外周部の近傍でリテーナ本体152の中心軸線に対して略平行にスライダ本体142の側へ向けて延出されている。これらの脚部158に対応してスライダ本体142には一対の貫通孔160が形成され、更に、イナーシャルプレート104には一対の貫通孔162が形成されている。
脚部158が対応する貫通孔160を貫通して、更に対応する貫通孔162を貫通すると、ボス154の端部がイナーシャルプレート104のスライダ本体142側の面に接すると共に、脚部158の先端に形成された係合突起164がイナーシャルプレート104の底壁94(ギヤ92)側の面に接する。これにより、リテーナ150はイナーシャルプレート104に略一体的に連結される。また、上記のように貫通孔160を脚部158が貫通していることで、スライダ140は脚部158に案内されてリテーナ本体152の中心軸線に沿ってスライドできる。
一方、このようにスライドが可能とされたスライダ140には複数(本実施の形態では3つ)の脚部172が設けられている。これらの脚部172は上記のカム通過孔108に対応して形成されており、各脚部172が対応するカム通過孔108を貫通して、更に対応する孔部110に入り込む。各孔部110の内側にはカム182が形成されている。これらのカム182のイナーシャルプレート104側(図2の上側)の面は、ボス96を中心とする巻取方向(図1及び図2の矢印A方向)側の端部で底壁94のイナーシャルプレート104側の面と同じ位置か、底壁94のイナーシャルプレート104側の面よりも脚板16側(図2の下側)に位置している。
また、カム182のイナーシャルプレート104側(図2の上側)の面は、上記の巻取方向側の端部から引出方向(図1及び図2の矢印B方向)の側へ向けて漸次イナーシャルプレート104の側へ変位する傾斜面となっており、各カム182の引出方向側の端部におけるイナーシャルプレート104側の面は底壁94のイナーシャルプレート104側の面から離間している。これらのカム182のイナーシャルプレート104側の面に対向するように各突起184が形成されている。
図3に示される状態から、イナーシャルプレート104がギヤ92に対して引出方向に回動することで、イナーシャルプレート104に伴われてスライダ140がギヤ92に対して引出方向に回動すると、スライダ本体142がイナーシャルプレート104から離間する向きにカム182のイナーシャルプレート104側の面が突起184を押圧し、これにより、図4に示されるようにスライダ140がスライドする。
一方、図1に示されるように、上記のギヤ92の脚板18の側にはセンサギヤ190が設けられている。センサギヤ190は一部を除きギヤ92の側へ向けて開口した断面凹形状に形成されており、その底壁を貫通するシャフト82によりシャフト82周りに回動可能にシャフト82に支持されている。センサギヤ190の内側にはパウル192が設けられている。パウル192には円形の貫通孔194が形成されている。
貫通孔194にはセンサギヤ190の内側に形成された図示しないシャフトが通過している。この貫通孔194を通過するシャフトは、軸方向が上記のシャフト82の軸方向と同じ方向とされており、貫通孔194を通過したシャフトによりパウル192がシャフト82の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持されている。貫通孔194よりもパウル192の回転半径方向一方の側には係合歯196が形成されている。パウル192がその回動軸心周りに巻取方向へ回動すると、係合歯196がギヤ92のラチェット歯102に噛み合う。このように、ラチェット歯102に係合歯196が噛み合った状態では、ギヤ92の巻取方向への回転がパウル192及びパウル192を支持するシャフトを介してセンサギヤ190に伝わり、センサギヤ190を巻取方向へ回動させる。
また、パウル192の貫通孔194よりも係合歯196の側はシャフト82の軸方向に沿ってスライダ本体142の斜面に対向しており、スライダ140がギヤ92の底壁94から離間するようにスライドすると、スライダ本体142の斜面がパウル192に接する。この状態で更にスライダ140が底壁94から離間するようにスライドすると、スライダ本体142の半径方向外方へ向けてスライダ本体142の斜面がパウル192を押圧する。このスライダ本体142の斜面からの押圧力によりパウル192は巻取方向に回動する。
また、センサギヤ190の内側には切替ギヤ212が設けられている。切替ギヤ212には円形の円孔214が形成されている。円孔214には上記のパウル192を支持するシャフトとは別にセンサギヤ190の内側に形成された図示しないシャフトが通過している。この円孔214を通過するシャフトは軸方向がシャフト82の軸方向と同方向とされており、円孔214をシャフトが通過していることで、切替ギヤ212がシャフト82の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持されている。切替ギヤ212の外周部には平歯の外歯が一定間隔毎に形成されている。
この切替ギヤ212の外歯に対応して上記のリテーナ150のボス156には2つの外歯216が形成されている。外歯216は切替ギヤ212の外歯に噛み合い可能とされている。外歯216はボス156の外周部に等間隔に複数の外歯を形成した構造から、ボス156の周方向に互い隣り合う2つの外歯のみを残したような間欠ギヤを構成している。このため、リテーナ150がシャフト82周りに1回転しても、切替ギヤ212はその外歯の2ピッチ分だけしか回転しない。これにより、ボス156の外周部に等間隔に外歯216を形成する構成よりも減速比が大きくなっている。
また、センサギヤ190の内側には切替部材222が設けられている。切替部材222は全体的にばね性を有する金属棒材を所定の形状に変形させることで形成されている。切替部材222は全体形状が円筒形状のコイル部224を備えている。コイル部224には上記のパウル192や切替ギヤ212を支持するシャフトとは別にセンサギヤ190の内側に形成された図示しないシャフトが通過している。コイル部224を通過するシャフトは、軸方向がシャフト82の軸方向と同方向とされており、シャフトがコイル部224を通過していることで切替部材222がシャフト82の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持されている。コイル部224における切替部材222の一端からは第1アーム226が延びている。この第1アーム226の先端側(コイル部224とは反対側)は切替ギヤ212へ向けて屈曲されており、この屈曲された部分がギヤ係合部228とされている。
このギヤ係合部228に対応して切替ギヤ212の厚さ方向一方(脚板18側)の面には第1溝部230が形成されている。第1溝部230は切替ギヤ212の回転中心に対して同軸的に湾曲している。また、この第1溝部230よりも切替ギヤ212の中心側には第2溝部232が形成されている。第2溝部232は切替ギヤ212の回転周方向に沿った中間部が切替ギヤ212の回転中心に対して同軸的に湾曲しているが、両端部では第1溝部230に繋がっている。
切替部材222のギヤ係合部228は第1溝部230又は第2溝部232に入り込んでいる。第1溝部230から第2溝部232にギヤ係合部228が移動すると切替部材222はコイル部224を通過するシャフト周りに巻取方向に回動し、第2溝部232から第1溝部230にギヤ係合部228が移動すると切替部材222はコイル部224を通過するシャフト周りに引出方向へ回動する。
また、上記のように、第2溝部232の両端は第1溝部230に繋がっているが、第2溝部232の巻取方向側の端部では第2溝部232から第1溝部230へのギヤ係合部228の移動は可能であるが、第1溝部230から第2溝部232への移動は不可能になるように第1溝部230と第2溝部232との間に段差が形成されている。また、第2溝部232の引出方向側の端部では第1溝部230から第2溝部232へのギヤ係合部228の移動は可能であるが、第2溝部232から第1溝部230への移動は不可能になるように第1溝部230と第2溝部232との間に段差が形成されている。
さらに、切替ギヤ212はその構成上、トーションシャフト26、ギヤ50、ギヤ92、及びリテーナ150を介して断続的にスプール20の回転が伝えられて断続的に回転する。ここで、スプール20がウエビングベルト24を巻き取りきった全格納状態でギヤ係合部228が第2溝部232の巻取方向側の端部よりも更に巻取方向側で第1溝部230に入り込み、スプール20からウエビングベルト24が全て引き出された全引出状態でギヤ係合部228が第2溝部232の引出方向側の端部よりも更に引出方向側で第1溝部230に入り込むように、切替ギヤ212の回転初期位置及びスプール20から切替ギヤ212までの回転の減速比が設定されている。
一方、コイル部224における切替部材222の他端からは第2アーム234が延びている。この第2アーム234の先端側(コイル部224とは反対側)は切替ギヤ212へ向けて屈曲されており、この屈曲された部分がパウル係合部236とされている。パウル係合部236は貫通孔194を介してパウル192の係合歯196とは反対側でパウル192に形成された係合溝238に係合しており、コイル部224を通過するシャフト周りに切替部材222が引出方向に回動すると、パウル係合部236がパウル192を押圧してパウル192を巻取方向へ回動させる。
さらに、センサギヤ190の内側にはエンドロック防止部材252が設けられている。エンドロック防止部材252は全体的にばね性を有する金属棒材を所定の形状に変形させることで形成されている。エンドロック防止部材252は取付部254を備えている。取付部254はシャフト82の軸方向と同方向に長手とされており、センサギヤ190の内側に設けられた図示しない支持部に、その長手方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持されている。エンドロック防止部材252は摺接部256を備えている。
摺接部256はリテーナ150の外表面に摺接しており、リテーナ150が回転すると、リテーナ150との摩擦でリテーナ150の回転に応じてエンドロック防止部材252が回動する。また、エンドロック防止部材252は規制部258を備えている。規制部258はエンドロック防止部材252が巻取方向に回動することでパウル192における貫通孔194よりも係合歯196の側の部分へ接近する。パウル192が巻取方向に回動していない状態、すなわち、パウル192の係合歯196がギヤ92のラチェット歯102に噛み合っていない状態でエンドロック防止部材252が巻取方向に回動して規制部258がパウル192における貫通孔194よりも係合歯196の側の部分へ接近すると、規制部258が係合歯196の近傍でパウル192に係合する。
但し、エンドロック防止部材252を回動させるための力は摺接部256とリテーナ150との間の摩擦力であるので、切替部材222のパウル係合部236がパウル192を巻取方向に回動させている状態では、パウル係合部236が付与する押圧力に摺接部256とリテーナ150との間の摩擦力は抗することができない(または、このように抗することができないように、摺接部256とリテーナ150との間の摩擦係数が設定されている)。
上記のように、規制部258がパウル192に係合した状態では、巻取方向へのパウル192の回動が規制部258によって規制される。このため、パウル192の係合歯196はギヤ92のラチェット歯102に噛み合うことができない。これにより、例えば、スプール20がウエビングベルト24を巻き取りきった全格納状態でパウル192の係合歯196がギヤ92のラチェット歯102に噛み合ってスプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制されてしまう所謂「エンドロック」の発生を防止又は効果的に抑制できるようになっている。
以上のようにパウル192や切替ギヤ212等が設けられたセンサギヤ190にはガイド溝272が形成されている。このガイド溝272に対応してロックパウル72にはピン273が形成されている。ピン273がロックパウル72の回動中心(すなわち、シャフト74の通過位置)よりも歯部76の側に形成されている。ロックパウル72からのピン273の突出方向はシャフト82の軸方向と同方向とされており、その先端側はガイド溝272に入り込んでいる。ガイド溝272を構成する内壁のうち、ピン273と対向する部位はシャフト82の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに適宜に湾曲しており、センサギヤ190が巻取方向に回動すると、ガイド溝272の内壁がピン273を押圧し、歯部76がロックベース34のラチェット歯に接近する向きへロックパウル72を回動させる。
また、センサギヤ190の外周部には保持突起274が形成されている。保持突起274は解除付勢手段としての圧縮コイルばね276の一端に入り込んでいる。圧縮コイルばね276の他端はインナハウジング70に係止されており、センサギヤ190が巻取方向に回動すると、圧縮コイルばね276が圧縮されてセンサギヤ190を引出方向へ付勢する。
一方、脚板18を介してセンサギヤ190とは反対側(すなわち、脚板18の外側)では、アウタハウジング60内に加速度センサ290が設けられている。加速度センサ290はアウタハウジング60に保持される台座292を備えている。台座292には略車両上方へ向けて開口した凹形状の湾曲面294が形成されている。湾曲面294内に加速度センサ用慣性質量体としてのボール296が載置されており、車両が急減速状態になるとボール296が慣性移動して湾曲面294の傾斜に逆らって湾曲面294を昇り上がる。
略車両左右方向一方の側の台座292の端部からは、上端側が略車両左右方向他方の側へ向けて鉤状に屈曲した縦壁298が立設されている。この縦壁298の上端部には軸方向が略車両前後方向を向いたシャフト300の両端部が回動可能に支持されている。シャフト300にはプレート302が設けられている。プレート302は平面視円形で且つ下方へ向けて開口した凹形状に湾曲した曲面とされている。プレート302はボール296に覆い被さっており、上記のように湾曲面294の傾斜に逆らってボール296が昇り上がると、ボール296にプレート302が持ち上げられ、シャフト300が自らの軸周りに回動する。
また、シャフト300にはアーム304が設けられている。アーム304はセンサギヤ190に形成された開口部306を通過してセンサギヤ190内に入り込んでいる。ボール296にプレート302が持ち上げられることでシャフト300が回動するとシャフト300と共にアーム304が回動する。このようにアーム304が回動すると、アーム304がパウル192に係合し、ギヤ92のラチェット歯102に接近する向きへパウル192を押圧して回動させる。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、車両の座席に着座した乗員がウエビングベルト24に設けられた図示しないタングを引っ張ると、スプール本体22に巻き取られているウエビングベルト24が引き出される。このように引き出されたウエビングベルト24が乗員の身体に掛け回されて、上記のタングが、例えば、座席の側方に設けられたバックルに装着されると、乗員の身体に対するウエビングベルト24の装着状態になる。
(VSIR機能に基づくELR機構としての動作)
このような乗員の身体に対するウエビングベルト24の装着状態で車両が急減速状態になると、慣性により加速度センサ290のボール296が湾曲面294上を略車両前方側へ転動する。これにより、ボール296が湾曲面294を昇り上がるとボール296がプレート302を持ち上げ、プレート302と共にアーム304を回動させる。このようにアーム304が回動するとアーム304がパウル192に係合し、係合歯196がギヤ92のラチェット歯102に接近する向きへパウル192を回動させる。このようにしてパウル192が回動するとギヤ92のラチェット歯102に係合歯196が係合する。
一方、車両が急減速することで乗員の身体が略車両前方側へ慣性移動しようとすると、乗員の身体に装着されているウエビングベルト24が乗員の身体に引っ張られる。このようにウエビングベルト24に引っ張り力が付与されることでスプール本体22が引出方向へ回転すると、スプール本体22の回転がギヤ50を介してギヤ92に伝わりギヤ92を巻取方向へ回転させる。
ギヤ92のラチェット歯102にパウル192の係合歯196が係合している状態では、ギヤ92の巻取方向への回転がパウル192を介してセンサギヤ190に伝わり、センサギヤ190を巻取方向に回動させる。圧縮コイルばね276の付勢力に抗してセンサギヤ190が巻取方向に回動すると、センサギヤ190に形成されたガイド溝272の内壁がロックパウル72に設けられたピン273を押圧してロックパウル72を巻取方向に回動させる。
このようにロックパウル72が巻取方向に回動することでロックベース本体36の外周部に形成されたラチェット歯にロックパウル72の歯部76が係合すると、引出方向へのロックベース34の回転をロックパウル72の歯部76が規制する。このようにロックベース34の引出方向への回転が規制されることで、トーションシャフト26を介しスプール本体22の引出方向への回転が規制される。
(WSIR機能に基づくELR機構としての動作)
一方、車両が急減速することで略車両前方へ慣性移動しようとする乗員の身体が急激にウエビングベルト24を引っ張ると、スプール20が急激に引出方向に回転しようとする。上記のように、スプール20の引出方向への回転はギヤ50を介してギヤ92に伝わり、ギヤ92を急激に巻取方向に回転させる。
ギヤ92が回転すると基本的にイナーシャルプレート104はギヤ92に追従して回転する。しかしながら、ギヤ92が急激に巻取方向に回転すると、イナーシャルプレート104は慣性でギヤ92の回転に追従できず、この結果、イナーシャルプレート104とギヤ92との間に圧縮コイルばね120の付勢力に抗した相対回転が生じる。この場合、イナーシャルプレート104に対してギヤ92が巻取方向に回転するということは、言い換えるとイナーシャルプレート104がギヤ92に対して引出方向に相対回転することである。
このような相対回転がギヤ92とイナーシャルプレート104との間に生じると、図3に示される状態から図4に示されるように、ギヤ92のカム182が突起184を押し上げる。これにより、ギヤ92の底壁94から離間するようにスライダ140が脚部158に案内されてスライドする。このように、スライダ140がギヤ92の底壁94から離間するようにスライドすると、スライダ本体142(スライダ140)の斜面がパウル192に当接してパウル192を押圧する。このように、スライダ本体142の斜面に押圧されたパウル192は回動して、ギヤ92のラチェット歯102に係合歯196が係合する。
この状態では、既に述べたように、ギヤ92と共にセンサギヤ190が巻取方向に回動し、センサギヤ190に形成されたガイド溝272の内壁がロックパウル72に設けられたピン273を押圧してロックパウル72を巻取方向に回動させる。これにより、ロックベース34のラチェット歯にロックパウル72の歯部76が係合して、引出方向へのロックベース34の回転、ひいては、スプール本体22の引出方向への回転が規制される。
以上のように、本ウエビング巻取装置10では、車両が急減速状態になって、加速度センサ290が作動した場合、スプール20が急激に引出方向に回転した場合の何れの場合でも、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制され、ウエビングベルト24が車両の乗員の身体を強固に保持して乗員の身体が略車両前方側へ移動することを規制する。
(ALR機構としての動作)
座席上に載置したチャイルドシート等の乗員以外の搭載物にウエビングベルト24を掛け回して、ウエビングベルト24で搭載物を座席上に固定する場合には、先ず、スプール本体22(スプール20)から全てのウエビングベルト24が引き出される。上記のように、スプール20の引出方向への回転はギヤ50を介してギヤ92に伝わりギヤ92を巻取方向に回転させる。ギヤ92の巻取方向への回転は、更に、リテーナ150に伝わり、リテーナ150を巻取方向に回転させる。
リテーナ150のボス156に形成された外歯216は切替ギヤ212の外歯に噛合可能であるので、リテーナ150が回転して外歯216が切替ギヤ212に噛み合うと、切替ギヤ212が断続的に引出方向に回転する。切替ギヤ212の周方向に沿った第2溝部232の両端部は第1溝部230に繋がっているので、スプール本体22から全てのウエビングベルト24が引き出されるまでスプール20が引出方向に回転すると、第2溝部232に入り込んでいたギヤ係合部228が第2溝部232の巻取方向側の端部から第1溝部230に入り込む。
このように、ギヤ係合部228が第1溝部230に移る際に、コイル部224に入り込んでいる図示しないシャフトを軸に切替部材222が引出方向に回動する。切替部材222が引出方向に回動すると、パウル係合部236がパウル192を押圧して係合歯196をギヤ92のラチェット歯102に係合させる。これまでに説明したように、パウル192の係合歯196がギヤ92のラチェット歯102に係合した状態でスプール20が引出方向に回転しようとすると、ロックパウル72の歯部76がロックベース34のラチェット歯に噛み合ってロックベース34、ひいては、スプール20の引出方向への回転を規制する。
しかも、パウル係合部236がパウル192を押圧してギヤ92のラチェット歯102に係合歯196を係合させている状態では、パウル192に付与するパウル係合部236からの押圧力が解消されるまでスプール20の引出方向への回転規制が継続される。このため、この状態では車両の状態等に関係なくウエビングベルト24をスプール20から引き出すことができないので、座席の搭載物に掛け回されたウエビングベルト24に緩みが生じ難く、ウエビングベルト24で座席の搭載物を強固に固定できる。
ウエビングベルト24で座席の搭載物を固定した状態でも、ウエビングベルト24に設けられたタングはバックルに装着される。バックルからタングを抜き取って、スプール20にウエビングベルト24をそれ以上巻き取ることができない所謂「全格納状態」までスプール20にウエビングベルト24を巻き取らせると、第1溝部230における第2溝部232の引出方向側の端部と繋がる部分よりも僅かに引出方向側にギヤ係合部228が位置する。
この状態で、ウエビングベルト24を引っ張ってスプール20を引出方向に回転させると、ギヤ係合部228が第1溝部230から第2溝部232に移り、巻取方向側へ切替部材222が回動する。これにより、パウル係合部236からパウル192への押圧力の付与が解消され、パウル192は引出方向へ回動する。このようにしてパウル192が引出方向に回動するとパウル192の係合歯196とギヤ92のラチェット歯102との噛み合いが解消される。これにより、ギヤ92からセンサギヤ190への回転伝達が解消され、センサギヤ190は圧縮コイルばね276の付勢力で引出方向に回動する。
このようにセンサギヤ190が引出方向に回動することで、ピン273がガイド溝272の内壁に押圧されてロックパウル72は引出方向に回動する。ロックパウル72が引出方向に回動することで、ロックパウル72の歯部76とロックベース34のラチェット歯との噛み合いが解消される。これにより、引出方向へのロックベース34の回転規制、ひいては、引出方向へのスプール20の回転規制が解消されて、スプール本体22からウエビングベルト24を引き出すことができる。したがって、本ウエビング巻取装置10が全格納状態に戻った状態では、不用意にロックベース34の引出方向への回転が規制されることがなく、又、このような不用意な回転規制の発生を効果的に低減できる。
(本ウエビング巻取装置10の特有の作用、効果)
以上説明したように、本ウエビング巻取装置10は、VSIR及びWSIRの双方に基づくELRとしての機能と、ALRとしての機能の双方を併せ持ち、しかも、全格納状態で不用意に引出方向へのロックベース34の回転が規制されることを防止又は抑制できる。すなわち、機能面においては、従来のウエビング巻取装置の機能をウエビング巻取装置10は有している。
ここで、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10では、スプール本体22に設けられたギヤ50により、脚板18と脚板16との間で、しかも、スプール20の回転半径方向に沿ってスプール20の下方(側方)に設けられたギヤ92にスプール20の回転を伝えることができる。このため、ギヤ92を含めて加速度センサ290の作動状態やスプール20が急激に引出方向へ回転した際のスプール20の引出方向への回転に連動してロックパウル72に巻取方向への回転力を付与するための構成や、スプール20のスプール本体22から全てのウエビングベルト24が引き出された状態で巻取方向側へパウル192が回動した状態で維持するための構成を脚板18と脚板16との間で、しかも、スプール20の回転半径方向に沿ってスプール20の下方(側方)に設けることができる。
これにより、スプール20の回転軸方向に沿ってスプール20の側方にこれらの構成を順次配置するこれまでのウエビング巻取装置に比べて、スプール20の軸方向に沿った全体的な寸法を短くできる。しかも、脚板16と脚板18との間におけるスプール20の下方は、所謂デッドスペースになりやすい部位であり、この部分に上記のような構成を配置できることで、脚板16と脚板18との間の空間を部材搭載スペースとして有効活用でき、この結果、ウエビング巻取装置10の全体的な小型化を図ることができる。
<第2の本実施の形態の構成>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図6には本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置400の要部であるロック手段としてのロック機構402の全体構成が分解斜視図により示されている。
この図に示されるように、ウエビング巻取装置400のロック機構402は、スプール本体22の脚板18側の端部とロックベース34との間にギヤ50が設けられておらず、代わりに二段ギヤ404が設けられている。図6では図示を省略したインナハウジング70内に収容された二段ギヤ404は、出力側伝達ギヤとしての第1ギヤ部406を備えている。第1ギヤ部406はロックベース34のロックベース本体36や図6では図示を省略したスプール本体22に対して同軸の外歯の平歯車とされている。
ウエビング巻取装置10の上下方向に沿った第1ギヤ部406の下側には、入力側伝達ギヤとしてのギヤ408が設けられている。ギヤ408に対応してインナハウジング70にはシャフト410が設けられている。シャフト410は、軸方向がスプール20の軸方向に対して平行(同方向)とされた状態で、例えば、脚板18及びインナハウジング70の少なくとも何れかの一方に支持されている。ギヤ408はこのシャフト410に回転自在に支持されている。ギヤ408の軸方向一方(脚板16の側)の端面にはボス412がギヤ408に対して同軸的に形成されている。
このボス412には前記第1の実施の形態においてはリテーナ本体152のボス156に形成されていた外歯216が形成されている。また、ギヤ408の軸方向一方の側で且つギヤ408の回転半径方向に沿ったボス412の側方には切替ギヤ212がインナハウジング70に設けられた支持軸414にスプール20の軸方向に対して平行な向きを軸方向とする軸周りに回転自在に支持されている。前記第1の実施の形態と同様に、切替ギヤ212の外周部に形成された外歯は外歯216に噛み合えるようになっている。
スプール20の軸方向に対して平行な向きに突出するようにインナハウジング70に形成されたシャフト416には切替部材222に代わる切替部材418が設けられている。切替部材418は切替部材222と同様にコイル部224を備えており、このコイル部224にシャフト416が入り込むようにしてシャフト416に切替部材418が設けられている。
また、切替部材418のコイル部224からは第1アーム226が形成されており、この第1アーム226の先端に形成されたギヤ係合部228は、図6では図示を省略した切替ギヤ212の第1溝部230又は第2溝部232に入り込んでおり、前記第1の実施の形態と同様に切替ギヤ212の回転に伴いギヤ係合部228は第1溝部230又は第2溝部232の内側を移動し、第1溝部230及び第2溝部232の何れかの一方から他方へギヤ係合部228が移動することで切替部材418がシャフト416を中心に回動する。
一方、切替部材418には第2アーム234が形成されておらず、代わりに第2アーム420が形成されている。第2アーム420はギヤ408の軸方向他方の面(すなわち、ボス412が形成された方とは反対側の面)の側を通っており、その先端側は更にギヤ408の軸方向に沿ってギヤ408の軸方向他方の面から離間する向きに屈曲されている。このように屈曲された第2アーム420の先端側はセンサ係合部422とされている。
センサ係合部422は脚板18に形成された長孔426を通過して、脚板18の脚板16とは反対側に突出している。脚板18の脚板16とは反対側の面における長孔426の近傍にはセンサ装着部428が形成されている。このセンサ装着部428には加速度センサ290に代わる加速度センサ430の台座292が装着されている。加速度センサ430はスプール20の軸方向に対して略同方向を軸方向とする軸周りに回動可能なシャフト300の外周一部から、その回動半径外方へ向けて爪部432が突出するように形成されている。
この爪部432には長孔426を通過したセンサ係合部422が係合可能とされており、第2溝部232から第1溝部230へギヤ係合部228が移動した際の切替部材418の回動でセンサ係合部422が爪部432を押圧する。このように爪部432がセンサ係合部422に押圧されることで、ボール296により押し上げられなくてもプレート302がシャフト300周りに回動して上昇する。
一方、図6に示されるように、脚板18の脚板16とは反対側の面にはスライダガイド442が設けられている。スライダガイド442はスプール20の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りにロックパウル72を回動自在に支持する支持シャフト444によって脚板18に取り付けられている。スプール20の回転半径方向に沿ったスライダガイド442の側方にはスプリング係合部446が配置されている。また、脚板18を介してスプリング係合部446とは反対側にはスライダ448が設けられている。
スライダ448とスプリング係合部446とは脚板18に形成された開口の内周縁を跨いだ状態で一体的に連結されている。スライダ448には係合片452が形成されている。この係合片452に対応して脚板18にはガイド孔454が形成されており、係合片452がガイド孔454に入り込んでいる。ガイド孔454はスプール20の中心軸線を曲率の中心として湾曲しており、このため、ガイド孔454に案内されて係合片452はスプール20の中心軸線周りに回動できる。
また、スライダ448に一体的に連結されたスプリング係合部446には、圧縮コイルばね456の一端が係合している。圧縮コイルばね456の他端は上記のスライダガイド442に係合しており、スライダ448と共にスプリング係合部446が引出方向(図6の矢印B方向)へ回動すると圧縮コイルばね456が圧縮されてスプリング係合部446を巻取方向(図6の矢印A方向)へ付勢する。
一方、図6に示されるように、本ロック機構402(本ウエビング巻取装置400)のロックパウル72にはピン273が形成されておらず、代わりにピン458が形成されている。ピン458は、ロックパウル72の回動中心からロックパウル72の回動半径方向外側に離間した位置に形成されており、スプール20の軸方向と同方向にロックパウル72から脚板16の側へ向けて突出している。このようにロックパウル72に形成されたピン458は開口部450を通過しており、その先端はスライダ448に形成されたガイド溝460に入り込んでいる。
上記のように、スライダ448はスプール20の中心軸線周りに回動可能とされており、スライダ448が引出方向(図6の矢印B方向)へ回動すると、ガイド溝460の内壁がピン458を押圧する。このようにガイド溝460の内壁にピン458が押圧されることでロックパウル72は支持シャフト444周りに回動して、歯部76(ロックパウル72)がロックベース本体36(ロックベース34)の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。また、引出方向に回動したスライダ448が圧縮コイルばね456の付勢力で巻取方向(図6の矢印A方向)へ回動すると、ガイド溝460の内壁がピン458を押圧し、歯部76がロックベース本体36のラチェット歯から離間するようにロックパウル72が回動する。
一方、スライダ448の脚板16の側にはパウル472が設けられている。パウル472にはスライダ448の側へ向けて開口した嵌挿孔474が形成されている。嵌挿孔474に対応してスライダ448の脚板16の側の面からはシャフト(図示省略)が突出形成されており、嵌挿孔474に嵌め込まれている。このようにスライダ448に形成されたシャフトが嵌挿孔474に嵌め込まれることで、スライダ448に対してパウル472がスプール20の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動可能に支持されている。また、この嵌挿孔474には歯部476が形成されている。
歯部476は、第1ギヤ部406のロックベース34側で第1ギヤ部406に一体形成されたVギヤ部478(すなわち、第1ギヤ部406と共に二段ギヤ404を構成するVギヤ部478)の外周部の側方に位置している。Vギヤ部478の外周部にはラチェット歯が形成されており、スライダ448に対してパウル472が巻取方向に回動すると、歯部476がVギヤ部478の外周部に接近して、Vギヤ部478のラチェット歯に噛み合う。
Vギヤ部478は二段ギヤ404が巻取方向に回転していれば歯部476はVギヤ部478のラチェット歯上を滑り、Vギヤ部478がパウル472を伴い回転させることはない。しかしながら、二段ギヤ404が引出方向に回転していればVギヤ部478のラチェット歯が歯部476を引出方向に押圧して二段ギヤ404の中心軸線周り(すなわち、スプール20の中心軸線周り)にパウル472を引出方向へ回動させようとする。上記のように、パウル472はスライダ448に連結されているので、Vギヤ部478(二段ギヤ404)に伴われてパウル472が引出方向に回動すると、スライダ448が引出方向に回動する。これにより、歯部76(ロックパウル72)がロックベース本体36(ロックベース34)の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。
一方、パウル472には受圧板492が形成されている。受圧板492は歯部476とは反対側に形成されている。この受圧板492には、開口部450を通過したアーム304の先端側が対向している。このため、シャフト300周りにプレート302が上昇回動すると、アーム304が受圧板492を押圧して歯部476をVギヤ部478の外周部へ接近させる向きへパウル472を回動させる。
一方、上述したギヤ408の回転半径方向に沿ったギヤ408の側方にはギヤホルダ502が設けられている。ギヤホルダ502は厚さ方向がスプール20の軸方向に沿った底板504を備えている。底板504の脚板16とは反対側の面からは、軸方向がスプール20の軸方向と同方向の支持シャフト506が形成されている。また、底板504の外周部のうち、ギヤ408の回転半径方向に沿ったギヤ408の側を除いた部分の少なくとも一部には周壁508が形成されている。周壁508は支持シャフト506を曲率の中心とするように湾曲しており、底板504からの支持シャフト506の突出方向と同方向へ向けて立設されている。
周壁508には軸受部510が形成されている。軸受部510は軸方向がスプール20の軸方向に沿い、脚板16とは反対側の端部が閉止された有底筒形状に形成されている。軸受部510にはインナハウジング70に形成された支持シャフト512が入り込んでおり、支持シャフト512により軸受部510、ひいては、ギヤホルダ502が支持シャフト512周り、すなわち、スプール20の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動自在に支持されている。
また、軸受部510にはばね係止部514が形成されており、このばね係止部514には引っ張りコイルばね516の一端が係止されている。引っ張りコイルばね516の他端は図示を省略するインナハウジング70に形成されたばね係止部に係止されており、支持シャフト512周りに引出方向へギヤホルダ502が回動すると引っ張りコイルばね516が圧縮され、これにより増加した引っ張りコイルばね516の付勢力がギヤホルダ502を巻取方向へ付勢する。
さらに、ギヤホルダ502にはトリガレバー518が設けられている。トリガレバー518には支持シャフト506の先端部近傍が貫通する透孔520が形成されていると共に、軸受部510を外側から覆うように軸受部510に装着される装着部522が形成されている。また、トリガレバー518において透孔520を中心に装着壁524から一定角度離間した部位には装着壁524が形成されている。装着部522には支持シャフト512の軸方向に沿って脚板16とは反対側へ向けて開口する切欠部526が形成されており、装着壁524には略矩形の開口部528が形成されている。
トリガレバー518をギヤホルダ502に装着すると、支持シャフト506の先端部近傍が透孔520に嵌挿されると共に装着部522が軸受部510に装着される。このように、装着部522が軸受部510に装着された状態では、軸受部510に形成された干渉爪530が切欠部526の内縁に干渉し、周壁508に形成された干渉爪532が開口部528に入り込んで開口部528の内周部に干渉する。これにより、トリガレバー518はギヤホルダ502に固定される。
トリガレバー518にはパウル472の側へ向けてレバー部534が延出されている。レバー部534の先端部はパウル472の歯部476の近傍に形成された受圧部536に対向しており、ギヤホルダ502と共にトリガレバー518が支持シャフト512周りに引出方向へ回動すると、レバー部534の先端が受圧部536に接近する。このように、受圧部536にレバー部534が接近してレバー部534が受圧部536を押圧すると、歯部476をVギヤ部478の外周部へ接近させる方向へパウル472を回動させる。
一方、ギヤホルダ502には慣性質量体544が設けられている。慣性質量体544は支持シャフト506に対して同軸的な円板状に形成されており、支持シャフト506に回転自在に支持されている。慣性質量体544の底板504とは反対側の面にはギヤ546が慣性質量体544に対して同軸的に形成されている。ギヤ546はギヤ408よりも充分に歯数が少ない外歯の平歯車とされておりギヤ408に噛み合っている。
上記のように、ギヤ546が同軸的且つ一体的に形成された慣性質量体544は、スプール20の軸方向と同方向、ひいては、シャフト410の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動自在に支持されているので、ギヤ408が回転するとギヤ408の回転方向とは反対方向へ向けてギヤ546が支持シャフト506周りに自転しつつ、ギヤ408周りに公転しようとする。
但し、ギヤ546はその自重に加えて慣性質量体544の質量が付加されているうえ、ギヤホルダ502の質量が付加される。これらの質量に基づく慣性と、更には、引っ張りコイルばね516の付勢力により、一定の大きさ以上の加速度でギヤ408が回転するまでギヤ546は公転しない。
一方、支持シャフト512の近傍ではインナハウジング70(図示省略)に装着筒550が設けられている。装着筒550はスプール20の軸方向に沿って脚板16とは反対向きに開口した筒形状に形成されており、この装着筒550にはエンドロック防止部材552の取付部554がスプール20の軸方向と同方向を軸方向とする軸周りに回動自在に支持されている。エンドロック防止部材552は前記第1の実施の形態におけるエンドロック防止部材252と同様に全体的にばね性を有する金属棒材を所定の形状に変形させることで形成されている。
取付部554の先端からは凹形状に屈曲した係合部556が形成されている。係合部556はギヤホルダ502の周壁508に形成された受圧部558の内側に入り込んでおり、エンドロック防止部材552が取付部554周りに巻取方向に回動すると、係合部556が受圧部558の内壁を巻取方向に押圧する。また、係合部556の取付部554とは反対側の端部からは連続して摺接部560が形成されている。摺接部560はギヤ408の脚板16側の面に摺接しており、引出方向にギヤ408が回転すると、ギヤ408との摩擦で摺接部560、すなわち、エンドロック防止部材552が巻取方向に回動するようになっている。
引出方向へのギヤ408の回転によりエンドロック防止部材552が巻取方向へ回転することで係合部556が受圧部558の内壁を巻取方向に押圧する。これにより、ギヤ408が引出方向へ回転した際、すなわち、スプール20が巻取方向へ回転した際の引出方向へのギヤホルダ502の回動を規制している。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置400の動作の説明を通して、本ウエビング巻取装置400の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置400ではウエビングベルト24を引っ張ってスプール20に巻き取られているウエビングベルト24を引き出すことでスプール20が引出方向へ回転すると、このスプール20の引出方向の回転が、トーションシャフト26を介して二段ギヤ404に伝わり、二段ギヤ404を引出方向(図6の矢印B方向)へ回転させる。
引出方向へ回転した二段ギヤ404は、二段ギヤ404の第1ギヤ部406に噛み合うギヤ408に回転を伝えてギヤ408を巻取方向(図6の矢印A方向)へ回転させ、更に、ギヤ408に噛み合うギヤ546を引出方向へ回転させる。但し、乗員がウエビングベルト24を装着するためにウエビングベルト24を引っ張った場合等で、スプール20に付与された引出方向への回転力が所定の大きさ未満である場合、ギヤ408の回転力を受けた圧縮コイルばね456は、上述したギヤ408の質量等の関係でギヤ408周りの公転はせずギヤ408周りに引出方向に自転する。
したがって、この状態では、支持シャフト512周りのトリガレバー518の回動は生じないので、トリガレバー518のレバー部534に受圧部536が押圧されることもない。このため、この状態で歯部476がVギヤ部478のラチェット歯に噛み合うこともないので、スライダ448によりロックパウル72がロックベース本体36(ロックベース34)のラチェット歯に噛み合う向きに回動させられることもない。これにより、この状態では、ロックベース34は引出方向に回転でき、スプール20からウエビングベルト24を引き出すことができる。
(VSIR機能に基づくELR機構としての動作)
前記第1の実施の形態でも説明したように、車両が急減速状態になった際に慣性により加速度センサ430のボール296が湾曲面294上を略車両前方側へ転動すると、ボール296がプレート302を持ち上げ、プレート302と共にアーム304を回動させる。このようにアーム304が回動すると受圧板492を押圧する。受圧板492がアーム304に押圧されたパウル472は、歯部476をVギヤ部478の外周部へ接近させるように、スライダ448に対して巻取方向に回動する。これにより、歯部476がVギヤ部478の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。
一方、上記のような車両急減速により乗員の身体がウエビングベルト24を引っ張り、これにより、スプール20と共に二段ギヤ404が引出方向に回転しようとすれば、第1ギヤ部406のラチェット歯に歯部476が噛み合ったパウル472も二段ギヤ404に伴われて引出方向に回動する。このように、二段ギヤ404に伴われてパウル472が引出方向に回動することで、パウル472が支持されているスライダ448も引出方向に回動する。スライダ448が引出方向に回動すると、ガイド溝460の内壁がロックパウル72のピン458を押圧してロックパウル72を支持シャフト444周りに巻取方向に回動させる。
ロックパウル72が巻取方向に回動すると、歯部76がロックベース本体36(ロックベース34)の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。これにより、ロックベース34の引出方向への回転、ひいては、スプール20の引出方向への回転が規制され、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制される。このように、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制されることで、乗員の身体はウエビングベルト24により強く拘束され、略車両前方側への慣性移動が防止又は効果的に抑制される。
(WSIR機能に基づくELR機構としての動作)
一方、前記第1の実施の形態でも説明したように、車両が急減速状態になることで乗員の身体がウエビングベルト24を急激に引っ張り、これにより、スプール20が急激に引出方向に回転させられることで、巻取方向へのギヤ408の回転の加速度が一定の大きさを越えると、ギヤ546が自転しつつも、ギヤ408周りに公転しようとする。ギヤ546と一体の慣性質量体544はギヤホルダ502の支持シャフト506に支持されており、ギヤホルダ502は支持シャフト512に支持されているので、公転しようとするギヤ546の自転以外の回動は支持シャフト512周りの回動に拘束される。
このため、ギヤ546が公転しようとすると、ギヤ546に伴われてギヤホルダ502が支持シャフト512周りに引出方向へ回動する。ギヤホルダ502が引出方向へ回動することで、ギヤホルダ502に装着されたトリガレバー518が支持シャフト512周りに引出方向へ回動するので、レバー部534の先端が受圧部536を押圧する。レバー部534に受圧部536が押圧されたパウル472は、スライダ448に対して巻取方向に回動し、これにより、Vギヤ部478の外周部に形成されたラチェット歯に歯部476が噛み合う。
この状態でVギヤ部478(すなわち、二段ギヤ404)は引出方向へ回転しているので、歯部476がVギヤ部478のラチェット歯に噛み合うことでパウル472がVギヤ部478と共に引出方向に回動する。このように、パウル472が引出方向に回動することで、上述した「VSIR機能に基づくELR機構としての動作」と同様に歯部76がロックベース本体36(ロックベース34)の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合い、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制される。
以上のように、本ウエビング巻取装置10では、車両が急減速状態になって、加速度センサ290が作動した場合、スプール20が急激に引出方向に回転した場合の何れの場合でも、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制され、ウエビングベルト24が車両の乗員の身体を強固に保持して乗員の身体が略車両前方側へ移動することを規制する。
一方、上記のように、ギヤホルダ502が引出方向へ回動すると、レバー部534が受圧部536を押圧してパウル472の歯部476をVギヤ部478のラチェット歯に噛み合わせるが、スプール20が巻取方向へ回転している際にはギヤ408との摩擦で巻取方向へ回転したエンドロック防止部材552の係合部556が受圧部558の内壁を巻取方向に押圧し、引出方向へのギヤホルダ502の回動を規制するので、トリガレバー518の回動も規制される。
このため、スプール20が巻取方向へ回転している際には、レバー部534が受圧部536を押圧することはなく、したがって、スプール20によりウエビングベルト24が巻き取られた際に引出方向へのVギヤ部478(すなわち、二段ギヤ404)の回転がパウル472に規制されることもない。これにより、スプール20によるウエビングベルト24の巻き取りが終了した状態で不用意にパウル472がVギヤ部478に噛み合うことでウエビングベルト24の引き出しが規制される所謂「エンドロック」の発生を防止できる。
(ALR機構としての動作)
ALR機構としての本ウエビング巻取装置400の動作としては、スプール本体22(スプール20)から全てのウエビングベルト24が引き出されるまでスプール20が回転することによるギヤ408の回転で、切替ギヤ212及び切替部材418が前記第1の実施の形態における切替ギヤ212及び切替部材222と同様に動作し、切替ギヤ212のギヤ係合部228が第2溝部232から第1溝部230へ移動することでシャフト416周りに切替部材418が回動する。この切替部材418の回動でセンサ係合部422が加速度センサ430の爪部432を押圧すると、ボール296により押し上げられなくてもプレート302がシャフト300周りに回動して上昇する。
これにより、アーム304が受圧板492を押圧すると、上述した「VSIR機能に基づくELR機構としての動作」と同様に歯部76がロックベース本体36(ロックベース34)の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合い、スプール20からのウエビングベルト24の引き出しが規制される。但し、「VSIR機能に基づくELR機構としての動作」とは異なり、スプール20にウエビングベルト24をそれ以上巻き取ることができない所謂「全格納状態」までスプール20にウエビングベルト24を巻き取らせ、第1溝部230から第2溝部232へギヤ係合部228を移動させない限り、センサ係合部422による爪部432の押圧が解消されないので、「全格納状態」となるまでスプール20を巻取方向に回転させるまでは前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10のALR機構と同様にスプール20からのウエビングベルト24の引出規制が継続される。
(本ウエビング巻取装置400の特有の作用、効果)
以上説明したように、本ウエビング巻取装置400は、VSIR及びWSIRの双方に基づくELRとしての機能と、ALRとしての機能の双方を併せ持ち、しかも、全格納状態で不用意に引出方向へのロックベース34の回転が規制されることを防止又は抑制できる。すなわち、機能面においては、従来のウエビング巻取装置の機能をウエビング巻取装置400は有している。
ここで、本実施の形態に係るウエビング巻取装置400では、二段ギヤ404の第1ギヤ部406により、脚板18と脚板16との間で、しかも、スプール20の回転半径方向に沿ってスプール20の下方(側方)に設けられたギヤ408にスプール20の回転を伝えることができる。このため、車両急減速状態や、乗員の身体が急激にウエビングベルト24を引っ張ることに起因した引出方向へのスプール20の急激な回転を検出するための構成を、脚板18と脚板16との間で、しかも、スプール20の回転半径方向に沿ってスプール20の下方(側方)に設けることができる。
これにより、スプール20の回転軸方向に沿ってスプール20の側方にこれらの構成を順次配置するこれまでのウエビング巻取装置に比べて、スプール20の軸方向に沿った全体的な寸法を短くできる。しかも、脚板16と脚板18との間におけるスプール20の下方は、所謂デッドスペースになりやすい部位であり、この部分に上記のような構成を配置できることで、脚板16と脚板18との間の空間を部材搭載スペースとして有効活用でき、この結果、ウエビング巻取装置10の全体的な小型化を図ることができる。
しかも、本実施の形態では、前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10とは異なり、脚板16と脚板18との間におけるスプール20の下方にはロック機構402のうち、車両急減速状態や、乗員の身体が急激にウエビングベルト24を引っ張ることに起因した引出方向へのスプール20の急激な回転を検出するための構成だけである。このため、ロックベース本体36(ロックベース34)にロックパウル72の歯部76が噛み合っている状態で、スプール20に対して引出方向への大きな回転力が入力された際の衝撃がギヤ408に伝わることがないので、ギヤ408自体の機械的強度は小さくてもよい。これにより、ギヤ408を比較的軽量な材料でスプール20の軸方向に薄く形成できるので、ロック機構402の更なる小型化、ひいては、ウエビング巻取装置400の更なる小型化を実現できる。