JP2014151525A - 成形金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ピンポイントゲート式成形金型において、ランナロック解除時の樹脂の割れや欠け等を防止する成形金型を提供する。
【解決手段】 樹脂の流動起点から製品キャビティまでの経路となるランナ体801は、ランナPL面に沿って延びる横ランナ部821、及び、横ランナ部821の端部からピンポイントゲートに接続するスプルー部831を含む。ランナロックピン5は、先端部53に奥側がアンダーカット部58となっているロック溝56が形成されており、ランナ板と固定側型板との型開き時にランナ体801を支持し、固定側型板から離型させる。また、ランナ体801をロック溝56に沿ってランナPL面に対して平行にスライドさせることで、ロック部84をランナロックピン5から離脱させる。ランナロック解除時にランナ体801をアンダーカットに逆らう方向に強制的に引き抜かないため、ランナ体801に加わる応力を低減することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、トランスファ成形や射出成形等に用いられる成形金型に関する。
従来、主に熱硬化性樹脂用のトランスファ成形や主に熱可塑性樹脂用の射出成形において、ピンポイントゲートを用いて製品キャビティに樹脂を充填させる成形金型が知られている。ピンポイントゲート式の成形金型は、一般に、固定型が、固定側取付板、ランナ板及び固定側型板のスリープレートで構成されており、ランナ体を取り出すためにランナ板と固定側型板とを型開きする。ランナ板が固定側型板から離間するとき、ピンポイントゲートの先端で樹脂を切断しランナ体を固定側型板から離型させるため、ランナロックピン等のランナロック機構が設けられている。
例えば、特許文献1に開示された熱硬化性樹脂用のトランスファ成形金型は、ランナロックピンの係止部に横ランナ部の側部を係止させた状態でランナ体を支持し、スプルー部(特許文献1の縦ランナ部24c)を固定側型板(特許文献1の上金型24)から離型させる。その後、カル部を中心に回転させるように横ランナ部を係止部開口側に移動させることで、ランナロックを解除し、ランナ体を取り出すというものである。
特開平07−205188号公報
従来のピンポイントゲート式の成形金型は、一般に図9に示すように、ランナロックピン95の先端部953の根元に形成されたアンダーカット部958に樹脂が流れ込んで充填されることにより、ランナ体980がランナロックピン95にロックされる。そして、スプルー部83を固定側型板96の穴964から離型させた後、ランナストリッパピン939等によって、ランナ体980を押し下げランナロックピン95から離脱させることでランナロックを解除する。このとき、ランナロック部の樹脂は、ランナロックピン95の先端部953からアンダーカットに逆らう方向、すなわち、広い側から狭い側に向かう方向に強制的に引き抜かれる。
ランナロック解除時において、例えば、破断伸び特性の低い材料や、充填材を多く含有し靱性が低い材料を用いた場合には、図10に示すように、ランナロック部の樹脂が割れたり欠けたりする不具合が生じることがある。その場合、金型内に残った樹脂片99を確実に除去しないと次の成形サイクルに移行することができず、樹脂片99の除去作業のため生産性が低下するという問題がある。
或いは、例えば成形時に不飽和基を多く含む材料のように、金型との密着性の高い材料を用いた場合、スプルー部やランナ体の末端部等が金型に張り付き、離型時に折損して金型内に残留しやすくなる。そのため、上記と同様に生産性が低下するという問題がある。
一方、特許文献1の成形金型は、固定側型板からスプルー部を離型させるとき、横ランナ部の軸に対して片方の側部を支持してスプルー部を引き上げるため、スプルー部の軸上での応力分布が偏り、スプルー部に曲げモーメントが発生する。その結果、固定側型板からの離型時にスプルー部が折損しやすくなる。この場合も、残留した樹脂を除去しないと次の成形サイクルに移行することができず、生産性が低下するという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピンポイントゲート式成形金型において、ランナロック解除時の樹脂の割れや欠け、又は離型時のスプルー部の折損を防止する成形金型を提供することにある。
本発明はピンポイントゲート式の樹脂成形金型であって、型開き時に互いに離間するランナ板及び固定側型板を備え、製品の他にランナ体が成形される。ここで、ランナ体は、樹脂の流動起点である起点部、起点部からランナ板と固定側型板との型分割面であるランナPL面に沿って延びる横ランナ部、及び、横ランナ部の起点部と反対側の端部から製品キャビティのピンポイントゲートに接続するスプルー部を含む。
なお、トランスファ成形金型の場合にはカル部が起点部となり、射出成形金型の場合にはノズルスプルー部が起点部となる。
本発明の成形金型は、スプルー部が成形されるスプルー穴のランナ板への延長線上に形成された挿入穴に摺動可能に挿入されるランナロックピンを備える。このランナロックピンは、ランナ板が固定側型板から離間したとき、先端部が固定側型板に向かって所定距離前進しつつランナ体をランナ板側に支持する。
このランナロックピンは、固定側型板側から視たとき奥側がアンダーカットとなっているロック溝が先端部に形成されている。
ロック溝は、横ランナ部が成形されるランナ溝との接続方向に沿って形成されており、ランナ体をランナPL面に対して平行にスライドさせることでランナ体をランナロックピンから離脱可能であることを特徴とする。
この構成によると、ランナ体をロック溝に沿ってランナPL面に対して平行にスライドさせることでランナロックピンから離脱させることができる。つまり、ランナロック解除時にランナ体をアンダーカットに逆らう方向に強制的に引き抜かないため、ランナ体に加わる応力を低減することができる。したがって、特に、破断伸び特性の低い材料や、充填材を多く含有し靱性が低い材料、或いは金型との密着性の高い材料を用いた場合、ランナロック部での樹脂の割れや欠けを防止することができる。
また、固定側取付板側を「上」とすれば、ランナロックピンは、スプルー部の直上でランナ体を支持し、スプルー部を固定側型板から真っ直ぐ離型させるため、離型時のスプルー軸上の応力分布が均一となる。したがって、特許文献1の成形金型のように、離型時の応力分布が偏り、曲げモーメントが発生することがないため、スプルー部の折損を防止することができる。
本発明の第1実施形態によるトランスファ成形金型の樹脂充填後型開き前の状態を示す部分断面図である。 本発明の第1実施形態によるトランスファ成形金型の型開き時の状態を示す部分断面図である。 本発明の第1実施形態によるトランスファ成形金型の(a)要部断面図、(b)(a)のIIIb−IIIb線断面図である。 図3の(a)IVa−IVa線断面図、(b)IVb−IVb線断面図である。 本発明の第1実施形態によるランナロックピン及びランナ体の斜視図である。 本発明の第2、第3実施形態による多数個取りトランスファ成形金型のランナ体を示す模式図である。 本発明の第4実施形態による射出成形金型の樹脂充填後型開き前の状態を示す部分断面図である。 本発明の第4実施形態による射出成形金型の型開き時の状態を示す部分断面図である。 比較例の成形金型のランナロックピン及びランナ体の(a)断面図、(b)斜視図である。 比較例の成形金型の問題点を説明する模式図である。
以下、本発明の複数の実施形態による成形金型を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による成形金型について、図1〜図5を参照して説明する。
最初に成形金型の全体構成について、図1、図2を参照して説明する。第1実施形態の成形金型11は、主に、エポキシ、フェノール等の熱硬化性樹脂の成形に用いられるトランスファ成形金型である。成形金型11において、樹脂はピンポイントゲート65から製品キャビティ72に充填され、製品88が成形される。本実施形態ではピンポイントゲート65は1箇所にのみ設定されている。
成形金型11は、固定型が固定側取付板2、ランナ板3、固定側型板6から構成されるスリープレート式の成形金型である。ランナ板3と固定側型板6との型分割面は、ランナ体801を取り出すためのランナPL面PLrである。ランナ板3及び固定側型板6は、型開き時にサポートピン25によって案内されて互いに離間する。
また、成形金型11は、ランナ板自体が移動しランナストリッパ板として機能する方式のものではなく、固定側取付板2及びランナ板3は互いに固定されている。
筒状のポット21は、固定側取付板2の中心穴28、及びランナ板3の中心穴38に跨って挿入されている。成形時、ポット21には、所定温度に加熱された熱硬化性樹脂の樹脂タブレット87が投入される。トランスファ成形機のプランジャ41は、ポット21内に前進し、溶融した樹脂タブレット87を加圧する。
固定側型板6には、ランナPL面PLrに面して、樹脂の充填経路となるカル受部61及びランナ溝621が形成されている。カル受部61における樹脂の流動起点の中心を、以下、モールディングセンタMCという。本実施形態では、モールディングセンタMCはプランジャ41の軸と略一致する。なお、モールディングセンタMCは、必ずしも金型センタと一致するとは限らない。
ランナ溝621は、例えば断面が台形に形成される(図4(b)参照)。なお、台形に限らず、多角形状や半円形状であってもよい。
ランナ溝621のカル受部61と反対側の端部には、ランナロックピン5の先端部53が嵌合する嵌合穴63が形成されている。嵌合穴63の底には、ピンポイントゲート65に接続するテーパ状のスプルー穴64がランナPL面PLrと垂直に形成されている。
ランナ板3においてスプルー穴64の延長線上には、ランナロックピン5が挿入される挿入穴31が形成されている。挿入穴31は、大径のばね収容穴32、及び小径の摺動穴33が段部34を境界として同軸上に形成されている。摺動穴33には、ランナロックピン5の摺動部52が挿入される。ばね収容穴32には、ランナロックピン5の基端側に形成されたフランジ部51、及び、一端が当該フランジ部51に当接しランナロックピン5を固定側型板6側に付勢する「付勢手段」としてのコイルばね37が収容される。コイルばね37の他端は、ランナ板3に固定された押さえ板36によって支持されている。
ランナ板3と固定側型板6との型開きに連動して、ランナロックピン5は、摺動部52が摺動穴33に沿って摺動し、フランジ部51が段部34に当接する位置まで前進する。言い換えれば、フランジ部51が段部34に当接することで、ランナロックピン5の前進ストロークStが規制される。
こうしてランナロックピン5の先端部53がランナPL面PLrから突出することで、ランナ用取り出し機又は作業者がランナ体801を容易に把持することができる。本実施形態ではカル部81のランナ板3側の端面位置がほぼランナPL面PLrと同じであるので、前進ストロークStは、ランナ体801を把持可能な程度の高さに設定すればよい。
この成形金型11で成形されるランナ体801は、カル部81、横ランナ部821、スプルー部831を含み、樹脂の流動起点から製品キャビティまでの経路となる。カル部81は、樹脂の流動起点である「起点部」に相当する。横ランナ部821は、カル部81からランナPL面PLrに沿って延びている。スプルー部831は、横ランナ部821のカル部81と反対側の端部から製品キャビティ72のピンポイントゲート65に接続する。
ポット21内の樹脂は、カル部81、横ランナ部821、スプルー部831を経由してピンポイントゲート65を通り、製品キャビティ72へ充填され、加熱されて硬化する。
成形された製品88は、固定側型板6と可動側型板71との型分割面である製品PL面PLpが開くことにより、取り出される。
成形金型11の可動型については一般的な構成であるので簡単に説明する。可動型は、可動側型板71、受け板75、スペーサブロック76、上下のイジェクタプレート77、78、可動側取付板79等を含む。製品PL面PLpの型開き時、製品88は、イジェクタプレート77、78に支持されたイジェクタピン73によって突き出される。
その他、型開きリンク機構、ガイドピン、型温調、ガス抜き等の一般的な構成については、図示及び説明を省略する。
次に、本実施形態の特徴であるランナロックピン5の先端部53の構成について、図3〜図5を参照して説明する。図3、図4は、樹脂が充填されていない状態の成形金型を示し、図5は、ランナロックピン5の先端部53からランナ体801を引き抜くときの挙動を模式的に示している。
図3〜図5に示すように、ランナロックピン5の先端部53は略円錐台形状を呈しており、スプルー穴64の直上に形成された嵌合穴63に嵌合する。先端部53にはランナ溝621との接続方向(図3(b)の左右方向)に沿って、且つランナ軸Arに対して対称に、ロック溝56が形成されている。ここで、ランナロックピン5は、ロック溝56の方向が変わることのないように、図示しない回り止めピン等によって挿入穴31に対して回り止めされている。
ロック溝56は、先端部53の先端面54から底面55に向かって溝幅が広がるように傾斜するアリ溝形状に形成されている。したがって、先端面54から視たとき奥側がアンダーカットとなる。このアンダーカットとなる空間をアンダーカット部58という。
また、ロック溝56の溝幅は、径方向において、ランナ溝62に接続する側が広く、ランナ溝62と反対側が狭く形成されている。
これにより、図5に示すように、ロック溝56に充填される樹脂によって形成されるランナ体801のロック部84は、横ランナ部821の方向である一方向のみに引き抜くことが可能となっている。
次に、本実施形態の成形金型11による成形手順を説明する。
まず、所定温度に加熱された樹脂タブレット87をポット21に投入し、樹脂が溶融したところをプランジャ41で押圧する。すると、溶融した樹脂は、カル受部61からランナ溝621、ランナロックピン5のロック溝56、スプルー穴64を経て、ピンポイントゲート65を通り、製品キャビティ72に充填される。そして、樹脂が硬化すると、製品88が成形されるとともに、ランナ体801が成形される。
続いて、ランナ板3と固定側型板6、及び、固定側型板6と可動側型板71とが型開きされる。なお、この場合の動作の順序は、型開きリンク機構の構成によって異なる。
ランナ板3が固定側型板6から離間することにより、ランナロックピン5にロックされたランナ体801は固定側型板6のスプルー穴64から離型する。同時に、コイルばね37によってランナロックピン5が付勢されて前進する。
そして、ランナ用の取り出し機又は作業者がランナ体801を把持し、カル部81側に向かって横ランナ部821と平行な方向にスライドさせることで、ロック部84をロック溝56から離脱させ、ランナロックを解除する。一方、イジェクタピン73によって突き出された製品88は、製品用の取り出し機又は作業者によって取り出される。
本実施形態の成形金型11の効果について、従来の一般的なピンポイントゲート式成形金型に相当する比較例、及び特許文献1に記載の先行技術と対比しつつ説明する。
(1)比較例の成形金型におけるランナロックの構成、及びその問題点について図9、図10を参照して説明する。
図9(a)、(b)及び図10(a)に示す比較例は、ランナロックピン95の先端に玉状に突起した先端部953が形成されている。この先端部953は、根元の径が最大径よりも小さく、アンダーカット部958を有している。固定側型板96のランナ溝982を通りスプルー部983へ流れる溶融樹脂の一部は、先端部953の周りのロック部984に充填され、アンダーカット部958に流れ込む。
樹脂が硬化した後、ランナ板93と固定側型板6とを型開きすると、ランナロックピン5にロックされたランナ体980は、固定側型板6から離型する。続いて、図9(b)、図10(a)にブロック矢印DNで示すように、ランナストリッパピン939がランナ体980を押し下げることによって、ランナ体980は、ランナロックピン5の先端部953から強制的に引き抜かれる。すなわち、図9(b)において、アンダーカットに逆らう真下方向が引き抜き方向となる。こうして、ランナロックが解除され、ランナ体980を取り出すことができる。
この過程でロック部984の樹脂に引っ張り応力や圧縮応力が加わる。そのため、破断伸び特性の低い材料や、充填剤を多く含有し靱性の低い材料を用いた場合、図10(a)に示すように、ロック部984が割れたり欠けたりする場合がある。或いは、例えば成形時に不飽和基を多く含む材料のように、金型との密着性の高い材料を用いた場合、末端部の張り付きによって同様の不具合が生じやすくなる。
割れや欠けによる樹脂片99が金型内に残留した場合、それを確実に除去しないと次の成形サイクルに移行することができない。よって、樹脂片99の除去作業のために成形が中断し、生産性が低下するという問題がある。
図10(b)に示す別の比較例は、ランナストリッパピン939に代えて、ランナ板93自体が「ランナストリッパプレート」として固定側取付板92から離間しつつランナ体980を押し下げる方式の成形金型である。この例でも同様に、破断伸び特性の低い材料、靱性の低い材料、或いは、金型との密着性が高い材料等を使用した場合、ランナロック部での割れや欠けにより樹脂片99が金型内に残留し、生産性が低下するおそれがある。
上記の比較例に対し本実施形態では、ランナ体801のロック部84を、ロック溝56から、ランナPL面PLrと平行な方向にスライドさせて引き抜く(図5参照)ため、アンダーカットに逆らう方向に引き抜くことによる応力が発生しない。したがって、破断伸び特性の低い材料、靱性の低い材料、或いは、金型との密着性が高い材料等を使用した場合、ランナロック部での割れや欠けを防止することができる。よって、樹脂片99の除去作業を廃止し、生産性を向上することができる。
(2)特許文献1に記載の先行技術では、横ランナ部の軸に対して片方の側部を支持してスプルー部を引き上げるため、スプルー部の軸上での応力分布が偏り、スプルー部に曲げモーメントが発生する。その結果、離型時にスプルー部が折損しやすくなる。
これに対し本実施形態では、ランナロックピン5のロック溝56は、スプルー部831の直上に設けられるため、固定側型板6からのスプルー部831の離型時の応力分布を均一にでき、曲げモーメントが発生しない。したがって、スプルー部831の折損を防止することができる。よって、折損したスプルー部831の除去作業を廃止し、生産性を向上することができる。
(3)上記比較例では、ランナロックピン95の先端部953の周りに樹脂が充填されるスペースとして、ランナ板93側に突出するロック部984が形成されており、廃材量が増加するという問題がある。これに対し本実施形態では、ランナ溝621の高さ範囲内にロック部84が形成されるため、廃材量を低減することができる。
(4)本実施形態では、ランナロックピン5は、固定側取付板2側からコイルばね37によって付勢されており、ランナ板3と固定側型板6との型開きに連動して前進する。したがって、簡易な構成でランナロックピン5を駆動することができる。
(5)本実施形態では、ランナロックピン5のフランジ部51が挿入穴31の段部34に当接することにより、簡易な構成でランナロックピン5の前進ストロークStを規制することができる。
(第2、第3実施形態)
本発明の第2、第3実施形態について、図6(a)、(b)を参照して説明する。第2、第3実施形態は、複数のピンポイントゲートを有するトランスファ成形金型であり、複数のピンポイントゲートに対応して複数のランナロックピンが設定される。ここでは、特に複数のランナロックピンにおけるロック溝の配置について説明する。
図6(a)、(b)は、ランナPL面から固定側型板側を視たときのランナ体の模式図であり、ランナ体802、803を実線で示し、金型側の構成であるランナロックピン5、ロック溝56、57、カル受部61、ランナ溝622〜628を2点鎖線で示している。
ここで、図6(a)、(b)毎に複数のランナロックピン5及びロック溝56については個性が無いものとし同一の符号を付す。ランナロックピン5については、先端部53が図示されている。一方、ランナ体の横ランナ部及びスプルー部については、対応するゲート毎に符号を区別する。
また、スプルー部832〜838はピンポイントゲートの直上に設けられる(図1参照)ことを前提としており、スプルー部832〜838の図示を以て、スプルー部832〜838の紙面奥側中央にピンポイントゲートが設定されていることを示している。
なお、複数のピンポイントゲートを有する成形金型には、1つの製品キャビティに対し複数のゲートから樹脂を充填させる多点ゲート、同一形状の複数の製品キャビティに対し各1点又は多点のゲートから樹脂を充填させる多数個取り、異なる形状の複数の製品キャビティに対し各1点又は多点のゲートから樹脂を充填させるファミリーモールド等の成形金型が含まれる。ただし、本発明ではランナ体の離型にのみ着目しており、これらの製品キャビティに対するゲートの設定形態については関係ない。
図6(a)に示す第2実施形態の成形金型12は、カル受部61に対し一方側に3点のピンポイントゲートが設定されており、それに対応して3つのランナロックピン5が配置されている。3つのランナ溝622、623、624は、カル受部61と各ランナロックピン5との間を接続する。
ランナ溝623は、ランナロックピン5まで真っ直ぐ延びている。ランナ溝622、624は、カル受部61からランナ溝623とは異なる方向に延びてからランナ溝623と平行な方向に向きを変え、ランナロックピン5に接続している。このように、複数のランナ溝622、623、624は、互いに平行且つ同一方向から複数のロック溝56に接続している。各ランナロックピン5のロック溝56は、ランナ溝622、623、624との接続方向に沿って、互いに平行に配置されている。
この成形金型12で成形されるランナ体802は、カル部81、横ランナ部822、823、824、及びスプルー部832、833、834からなる。上述のロック溝56の配置構成により、ランナ体802を一方向(図6(a)の矢印SL方向)に直線的にスライドさせることで、各ランナロックピン5から離脱させ、取り出すことができる。
図6(b)に示す第3実施形態の成形金型13は、モールディングセンタMCを中心とする仮想円Cv上で、周方向に等間隔に4点のピンポイントゲートが設定されており、それに対応して4つのランナロックピン5が配置されている。4つのランナ溝625〜628は、モールディングセンタMCに対して回転対称に配置され、カル受部61と各ランナロックピン5との間を接続する。
ランナ溝625〜628は、カル受部61から径方向に延びてから図の反時計回り方向に向きを変え、仮想円Cvの周方向に沿ってランナロックピン5に接続している。各ランナロックピン5のロック溝57は、複数のランナ溝625〜628が通る仮想円Cvに沿って配置されている。
この成形金型13で成形されるランナ体803は、カル部81、横ランナ部825〜828、及びスプルー部835〜838からなる。上述のロック溝57の配置構成により、ランナ体803を図の時計回り方向(図6(b)の矢印SL方向)に回転させることで、各ランナロックピン5から離脱させ、取り出すことができる。この場合の「回転」は、スライドの一態様である。
以上のように、複数のピンポイントゲートを有する成形金型において、複数のランナロックピンにおけるロック溝の配置構成を第2、第3実施形態のようにすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について、図7、図8を参照して説明する。第4実施形態は、主に熱可塑性樹脂の成形に用いられる射出成形金型である。射出成形機は、小型機や特殊機を除き横型が主流であるため、図7、図8では、横方向に開閉する成形金型14を操作側視で示している。第4実施形態の成形金型14の構成について、第1実施形態のトランスファ成形金型11との相違点のみを簡単に説明する。
図7、図8に示すように、成形金型14は、固定側取付板2の中心穴29の周囲に、射出成形機の台盤(図示しない)との位置決めのためのロケートリング22が設けられている。また、ランナ板3の中心穴39にノズルスプルーブッシュ43が設けられている。ノズルスプルーブッシュ43のノズルタッチ部44には、射出シリンダ(図示しない)のノズル42が当接する。ノズルスプルーブッシュ43の内側には、ノズルタッチ部44から円錐状に広がるノズルスプルー穴45が形成されている。
固定側型板6には、ノズルスプルー穴45と対向するノズルスプルー受部66が形成されている。モールディングセンタMCは、射出成形機のノズル42の軸と一致する。
なお、第4実施形態では、型開きリンク機構として、可動側型板71の移動に伴って固定側型板6を牽引する牽引リンク74が設けられている。
この成形金型14で成形されるランナ体85は、ノズルスプルー部86が「起点部」に相当する。射出成形機から射出された溶融樹脂は、ノズルスプルー部86、横ランナ部821、スプルー部831を経由してピンポイントゲート65を通り、製品キャビティ67へ充填される。これにより、製品89が成形される。
図8に示すように、製品89の冷却固化後、ランナ板3と固定側型板6とを離間するとき、ランナ体85はランナロックピン5にロックされ固定側型板6から離型する。このとき同時に、コイルばね37の付勢力によって、ランナロックピン5がランナ体85を支持したまま前進する。
ここで、第4実施形態のランナ体85は、ノズルスプルー部86の高さが第1実施形態のカル部81の高さよりも高い点が異なる。したがって、ノズルスプルー部86のスライド距離Xを確保できるように、ランナロックピン5の前進ストロークStを設定する必要がある。或いは、ノズルスプルー部86の全高がランナ板3の端面から抜けるように、ランナロックピン5の前進ストロークStを設定してもよい。
このように、本発明は射出成形金型に適用することもでき、第1実施形態のトランスファ成形金型と同様の効果を奏する。また、複数のピンポイントゲートを有する射出成形金型について、上記第2、第3実施形態と同様の構成を採用することができる。
(その他の実施形態)
(ア)上記実施形態ではランナ溝621等は固定側型板6に形成されている。これに対し、ランナ溝の一部又は全部をランナ板側に形成してもよい。また、ランナPL面を一平面でなく段状に構成してもよい。
(イ)ロック溝の形状や抜き勾配は、上記実施形態で図示したものに限らず、ランナ体をランナPL面と平行にスライドさせることができる形状であればよい。
(ウ)上記第2実施形態では、図の上下に示したランナ溝622、624はランナ溝623に対して対称に図示されている。また、上記第3実施形態では、4つのランナ溝625〜628は、モールディングセンタMCに対して回転対称に配置されている。しかし、ランナ体を一定方向へスライドさせることで取り出し可能であれば、このような対称配置に限らず、複数のランナ溝が非対称に配置されてもよい。
(エ)ランナロックピン5を駆動する構成は、型開きと連動してコイルばね37等の付勢手段によって付勢される形態に限らない。例えば、個別に設けたエアシリンダ等のアクチェータによってランナロックピン5を駆動してもよい。
(オ)ランナロックピン5の前進ストロークStを規制する構成は、フランジ部51が段部34に当接する形態に限らない。例えば、個別に設けたアクチュエータの前進限によってランナロックピン5のストロークを規制してもよい。
その他、本発明の特徴部分以外の部分についての成形金型の構成は、上記実施形態にて説明又は図示した構成に限定されない。例えば、図1、2又は図7、8において、固定側取付板2とランナ板3とを一体としてもよい。
以上、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施することができる。
11、12、13、14 ・・・成形金型、
3 ・・・ランナ板、 31 ・・・挿入穴、
5 ・・・ランナロックピン、
53 ・・・先端部、 56 ・・・ロック溝、
6 ・・・固定側型板、
621、622〜624、625〜628 ・・・ランナ溝、
65 ・・・ピンポイントゲート、 67、72 ・・・製品キャビティ、
801、802、803、85 ・・・ランナ体、
81 ・・・カル部(起点部)、 86 ・・・ノズルスプルー部(起点部)、
821、822〜824、825〜828 ・・・横ランナ部、
831、832〜834、835〜838 ・・・スプルー部。

Claims (5)

  1. 型開き時に互いに離間するランナ板(3)及び固定側型板(6)を備え、樹脂の流動起点である起点部(81、86)、当該起点部から前記ランナ板と前記固定側型板との型分割面であるランナPL面(PLr)に沿って延びる横ランナ部(821)、及び前記横ランナ部の前記起点部と反対側の端部から製品キャビティ(67、72)のピンポイントゲート(65)に接続するスプルー部(831)を含むランナ体(801、802、803、85)が成形される成形金型(11、12、13、14)であって、
    前記スプルー部が成形されるスプルー穴(64)の前記ランナ板への延長線上に形成された挿入穴(31)に摺動可能に挿入され、前記ランナ板が前記固定側型板から離間したとき、先端部(53)が前記固定側型板に向かって所定距離前進しつつ前記ランナ体を前記ランナ板側に支持するランナロックピン(5)を備え、
    前記ランナロックピンは、前記固定側型板から視たとき奥側がアンダーカットとなっているロック溝(56)が前記先端部に形成されており、
    前記ロック溝は、前記横ランナ部が成形されるランナ溝(621)との接続方向に沿って形成されており、前記ランナ体を前記ランナPL面に対して平行にスライドさせることで前記ランナ体を前記ランナロックピンから離脱可能であることを特徴とする成形金型。
  2. 複数のピンポイントゲートに対応して設けられた複数の前記ランナロックピンを備え、
    複数の前記ランナ溝(622、623、624)は、互いに平行且つ同一方向から複数の前記ランナロックピンの前記ロック溝に接続し、複数の前記ロック溝は、互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成形金型(12)。
  3. 複数のピンポイントゲートに対応して設けられた複数の前記ランナロックピンを備え、
    複数の前記ランナ溝(625、626、627、628)は、樹脂の流動起点の中心(MC)に対して回転対称となる方向から複数の前記ランナロックピンの複数の前記ロック溝に接続し、複数の前記ロック溝は、複数の前記ランナ溝が通る仮想円(Cv)に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成形金型(13)。
  4. 前記ランナロックピンの前記ロック溝は、先端面から底面に向かって溝幅が広がるように傾斜するアリ溝形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形金型。
  5. 前記ランナロックピンを前記固定側型板に向かって付勢する付勢手段(37)を備え、
    前記ランナロックピンは、基端側に形成されたフランジ部(51)が前記挿入穴の段部(34)に当接することで前進ストロークが規制されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形金型。
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