JP2014143896A - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】交流電動機の回転数の急変時における制御の応答性を高めることが可能な交流電動機の制御装置を提供する。
【解決手段】交流電動機2の制御部15では、急変状態でないと判定された場合(S107:NO)、フィードバックする電流確定値id_fix、iq_fixとして、電流推定値id_est、iq_estを選択する(S108)。一方、急変状態であると判定された場合(S107:YES)、電流確定値として、電流検出値id_sns、iq_snsを選択する(S111)。これにより、回転数Nmgが急変していないときには1相制御とし、電流センサ12、13間の誤差による影響を低減することができるとともに、異常監視が可能となる。また、急変状態では、2相制御とし、制御の応答性を高めることができる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを1相に設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの3相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、特許文献2では、電流センサを2相に設け、低速時には2相の電流センサ値を用いて制御している。以下、2相の電流センサ値を用いた制御を「2相制御」という。また、それ以外の場合には、電流センサ間のゲイン誤差を要因とする3相不均衡によるトルクリプルを防ぐべく、1相の電流センサ値に基づく理想的な交流波形を得て電動機の制御を行っている。以下、1相の電流センサ値を用いた制御を「1相制御」という。
特開2008−86139号公報 特許第4942425号公報
特許文献1では、1相の電流センサ値に加え、他相はd軸電流指令値およびq軸電流指令値と電気角とで逆dq変換することにより得られる3相交流電流指令値を推定値として用いることにより1相制御としている。d軸電流指令値およびq軸電流指令値を逆dq変換した3相交流電流指令値は、実際の交流電動機の電流を正確に反映した情報とはならない。また、特許文献2における1相制御では、電流センサにて検出される1相の電流値の位相を単に120°ずらしているにすぎない。すなわち、特許文献1、2の1相制御方法では、いずれも交流電動機の駆動状態を正確に把握して制御しているとはいえない。
ところで、交流電動機を搭載したハイブリッド自動車や電気自動車等では、例えば段差や凍結等の路面の状態に応じ、駆動輪がスリップしたりグリップしたりすることがある。このとき、ハイブリッド自動車や電気自動車の主機に用いられる交流電動機では、駆動輪のスリップおよびグリップに伴い、回転数が急変することがある。そもそも正確な1相制御が困難な特許文献1、2の技術では、このような回転数の急変状況に対応できない可能性が高い。また、特許文献2では、低速時に制御性を高めるべく2相制御としているが、回転数が急変した場合における制御については、なんら言及されていない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電動機の回転数の急変時における制御の応答性を高めることが可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明の交流電動機の制御装置は、インバータによって印加電圧が制御される3相の交流電動機の駆動を制御するものであって、第1の電流取得手段と、第2の電流取得手段と、回転角取得手段と、2相制御電流値演算手段と、1相制御電流値演算手段と、回転数演算手段と、変動量演算手段と、急変判定手段と、切替手段と、電圧指令値演算手段と、を備える。
第1の電流取得手段は、交流電動機のいずれか1相である第1相に設けられる第1の電流センサから第1の電流検出値を取得する。第2の電流取得手段は、交流電動機の第1相以外の1相である第2相に設けられる第2の電流センサから第2の電流検出値を取得する。回転角取得手段は、交流電動機の回転角を検出する回転角センサから回転角検出値を取得する。
2相制御電流値演算手段は、第1の電流検出値、第2の電流検出値、および、回転角検出値に基づき、2相制御電流値を演算する。1相制御電流値演算手段は、第1の電流検出値、および、回転角検出値に基づき、1相制御電流値を演算する。なお、1相制御電流値演算手段において、第1の電流検出値および回転角検出値に加え、電流指令値に基づいて1相制御電流値を演算するようにしてもよい。
回転数演算手段は、回転角検出値に基づき、交流電動機の回転数を演算する。変動量演算手段は、回転数の変動量である回転数変動量を演算する。急変判定手段は、回転数変動量に基づき、急変状態か否かを判定する。
切替手段は、急変状態でないと判定された場合、電流確定値として1相制御電流値を選択し、急変状態であると判定された場合、電流確定値として2相制御電流値を選択する。電圧指令値演算手段は、電流確定値、および、交流電動機の駆動に係る指令値に基づき、インバータに印加する電圧に係る電圧指令値を演算する。
3相の交流電動機の2相に電流センサを設ける構成において、1相の電流センサからの電流検出値に基づく1相制御とすることにより、電流センサ間のゲイン誤差による影響を低減することができるとともに、電流センサの異常監視が可能となる。その反面、1相制御にすると、得られる実機情報が少ないため、2相の電流センサによる検出値に基づく2相制御と比較し、制御の安定性、応答性の面で劣る可能性がある。
そこで本発明では、急変状態ではない通常時には、電流確定値として1相制御電流値を選択して1相制御とすることにより、電流センサ間のゲイン誤差による影響を低減している。また、1相制御とすることにより、電流センサの異常監視が可能となる。
一方、急変状態である場合、電流確定値として2相制御電流値を選択して2相制御に切り替えることにより、制御の応答性を高めている。これにより、例えば交流電動機の制御装置を車両主機に適用した場合、路面の状況等に応じ、駆動輪のスリップおよびグリップに伴って交流電動機の回転数が急変したとしても、2相制御に切り替えることにより、制御の応答性を高め、交流電動機を適切に制御することができる。
本発明の第1実施形態の交流電動機駆動システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態の電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態のα軸およびβ軸を説明する図である。 本発明の第1実施形態による急変判定を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第3実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第4実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第4実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第5実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第5実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第6実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第6実施形態の判定保持処理を説明するフローチャートである。 本発明の第6実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第7実施形態の駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第8実施形態〜第10実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第8実施形態による電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第8実施形態におけるα軸電流およびβ軸電流を説明する説明図である。 本発明の第9実施形態による電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第9実施形態による電流推定を説明するベクトル図である。 本発明の第10実施形態による電流推定部の構成を示すブロック図である。 本発明の第10実施形態による電流推定を説明するベクトル図である。 本発明の第11実施形態による制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第11実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第12実施形態による制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第13実施形態による制御部の構成を示すブロック図である。 スリップ時およびグリップ時における交流電動機の挙動を説明する図である。
以下、本発明による交流電動機の駆動装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、および、交流電動機の制御装置としての電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、車両減速時等により生じる回生エネルギにより発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、電気自動車である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動により生じるトルクは、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ11(図2参照)と接続され、インバータ11を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、および、シフトスイッチからのシフト信号、車両の速度に関する車速信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。車速信号は、駆動輪6の回転数に関する情報である、と捉えることもできる。
また、車両制御回路9では、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ11および制御部15等を備える。
インバータ11には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したインバータ入力電圧VHが印加される。また、インバータ11は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部25(図3参照)から出力される駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ11は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ11により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。本実施形態では、交流電動機2は、正弦波PWM制御または過変調PWM制御がなされているものとする。正弦波PWM制御モードでは、一定期間(例えばPWM1周期)内における基本波成分が正弦波となるように制御される。また、過変調PWM制御モードでは、電圧指令を本来の正弦波波形から歪ませることにより、電圧利用率を高めている。
ここで、3相交流電圧vu、vv、vwが印加されてU相、V相、W相に通電される電流は、各相電流iu、iv、iwである。
第1の電流センサ12は、交流電動機のいずれか1相に設けられる。本実施形態では、第1の電流センサ12は、W相に設けられている。すなわち本実施形態では、W相が「第1相」に対応する。以下、第1の電流センサ12を、適宜「W相電流センサ12」という。W相電流センサ12は、W相に通電される電流に係るW相電流検出値iw_snsを検出し、制御部15に出力する。
第2の電流センサ13は、交流電動機の第1相であるW相以外の1相に設けられる。本実施形態では、第2の電流センサ13は、V相に設けられている。すなわち本実施形態では、V相が「第2相」に対応する。以下、第2の電流センサ13を、適宜「V相電流センサ13」という。V相電流センサ13は、V相に通電される電流に係るV相電流検出値iv_snsを検出し、制御部15に出力する。
制御部15は、W相電流検出値iw_snsおよびV相電流検出値iv_snsを取得する。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。制御部15は、電気角θeを取得する。本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバである。その他、回転角センサ14は、ロータリエンコーダ等、他種のセンサでもよい。
制御部15は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部15は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、交流電動機2の動作を制御する。
ここで、交流電動機の駆動制御について説明する。電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2の回転数Nmgおよび車両制御回路9あらのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、または、「発電機としての回生動作」により電力を生成し発電する。具体的には、回転数Nmgおよびトルク指令値trq*の正負によって、以下の4パターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nmgが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nmgが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nmgが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nmgが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数Nmg>0(正転)でトルク指令値trq*>0である場合(上記<1>)、または、回転数Nmg<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合(上記<3>)、インバータ11は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数Nmg>0(正転)でトルク指令値trq*<0である場合(上記<2>)、または、回転数Nmg<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合(上記<4>)、インバータ11は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
本実施形態では交流電動機2と駆動輪6とがギア4を介して接続されているため、交流電動機2の回転方向と駆動輪6の回転方向とは、反対となる。すなわち、駆動輪6を正転させるためには、交流電動機2を逆転させることになる。そのため、車両前進中に加速させるとき、交流電動機2は、<3.逆転力行>の状態である。このとき、交流電動機2は、負トルクを出力する。また、車両前進中に減速するとき、交流電動機2は、<4.逆転回生>の状態である。
次に、制御部15の詳細について図3に基づいて説明する。図3に示すように、制御部15は、電流指令値演算部21、減算器22、PI演算部23、3相電圧指令値演算部24、PWM信号生成部25、電流検出部30、電流推定部40、異常判定部50、回転数演算部60、変動量演算部61、および、切替判定部65等を有する。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。
減算器22は、d軸電流減算器221およびq軸電流減算器222を有する。d軸電流減算器221では、後述する切替判定部65からフィードバックされるd軸電流確定値id_fixとd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを演算する。また、q軸電流減算器222では、切替判定部65からフィードバックされるq軸電流確定値iq_fixとq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを演算する。
PI演算部23は、d軸PI演算部231およびq軸PI演算部232を有する。d軸PI演算部231では、d軸電流確定値id_fixをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0[A]に収束するようにd軸電圧指令値vd*をPI演算により演算する。また、q軸PI演算部232では、q軸電流確定値iq_fixをq軸電流推定値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0[A]に収束するようにq軸電圧指令値vq*をPI演算により演算する。
3相電圧指令値演算部24では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部25では、インバータ11のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係る駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、3相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ11に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づいて演算する。
そして、駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ11のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。なお、3相交流電圧vu、vv、vwが「印加電圧」に対応する。
電流検出部30では、V相電流検出値iv_sns、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、dq変換により2相制御電流値としてのd軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを演算する。
ここで、dq変換の一般式を式(1)に示す。
Figure 2014143896
また、キルヒホッフの法則(式(2)参照)より算出される式(3)のV相電流ivをV相電流検出値iv_snsとし、W相電流iwをW相電流検出値iw_snsとし、上記式(1)に代入すると、式(4)が得られる。
iu+iv+iw=0 ・・・(2)
iu=−iv−iw ・・・(3)
Figure 2014143896
式(4)に示すように、3相のうちの2相の電流値がわかれば、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを算出可能であるので、他の相(本実施形態ではU相)の電流値を演算する必要はない。
電流検出部30にて算出されたd軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsは、切替判定部65に出力される。
電流推定部40では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、1相制御電流値としてのd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、電流推定部40では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、第2相電流推定値としてのV相電流推定値iv_estを演算する。
本実施形態では、電流推定部40において、電流推定精度を向上させるべく、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_estおよび、V相電流推定値iv_estを算出している。
本実施形態では、W相にW相電流センサ12、V相にV相電流センサ13が設けられているが、ここでは第1相であるW相を「センサ相」とみなし、d軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_estおよびV相電流推定値iv_estの演算に、W相電流センサ12の検出値であるW相電流検出値iw_snsを用いる場合について説明する。もちろん、V相電流検出値iv_snsに基づいてd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算することも可能である。さらには、V相電流センサ13とW相電流センサ12から演算されるどちらの電流推定値でも1相制御に移行できるよう、電流推定部40ではV相電流検出値iv_snsに基づく電流推定値とW相電流検出値iw_snsに基づく電流推定値の両方を並行して演算しておいても良い。
ここで、電流推定部40における電流推定方法について、図4に基づいて説明する。
図4に示すように、電流推定部40は、センサ相基準電流位相検知部41、基本波推定部42、ゼロクロス補間部43、および、dq変換部44を有する。
センサ相基準電流位相検知部41は、逆dq変換部411および位相検知部412を有する。
逆dq変換部411では、電流指令値演算部21により算出されたd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*と電気角θeとを取得し、逆dq変換により、U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*を演算する。なお、詳細は後述するが、U相電流指令値iu*またはV相電流指令値iv*の一方を演算するようにしてもよい。
位相検知部412では、逆dq変換部411にて算出されたU相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*の少なくとも一方と、W相電流検出値iw_snsとに基づき、センサ相基準電流位相θxを演算する。
センサ相基準電流位相θxは、図5に示すように、センサ相であるW相を基準としてW相と一致する軸をα軸とし、α軸と直交する軸をβ軸としたとき、α−β座標系において、α軸と電流ベクトルIa∠θxとがなす角度である。また、センサ相基準電流位相θxは、正回転、正トルクの力行状態において、W相電流検出値iw_snsの波形が負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは0[°]であり、W相電流検出値iw_snsの波形が正から負にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxは180[°]となる。すなわち、センサ相基準電流位相θxは、W相電流検出値iw_snsに同期した角度である。
本実施形態では、位相検知部412において、α軸電流iαおよびβ軸電流iβに基づき、センサ相基準電流位相θxを演算する。
ここで、センサ相基準電流位相θxの算出に用いるα軸電流iαおよびβ軸電流iβについて説明する。α軸電流iαおよびβ軸電流iβを各相電流iu、iv、iwを用いて表すと、式(5)、(6)となる。なお、式(5)、(6)中のKtは、変換係数である。
Figure 2014143896
ここで、キルヒホッフの法則(式(2))を用いて式(5)を変形すると、式(7)となる。
Figure 2014143896
すなわち、式(7)に示すように、α軸電流iαは、W相電流iwに基づいて算出可能である。ここで、W相電流iwとして、W相電流検出値iw_snsを用いると、α軸電流検出値iα_snsは、式(8)のように表される。
Figure 2014143896
また、式(6)を参照し、U相電流iuとしてU相電流指令値iu*、V相電流ivとしてV相電流指令値iv*を用いると、β軸電流推定値iβ_estは、式(9)のように表される。
Figure 2014143896
式(9)では、β軸電流推定値iβ_estは、U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*から算出されており、W相電流検出値iw_snsの成分が含まれていない。そこで、β軸電流推定値iβ_estについて、実電流を精度よく反映した情報にすべく、キルヒホッフの法則(式(2))を用いて式(9)を変形し、W相電流検出値iw_snsの値を含ませた式(10)としてもよい。
Figure 2014143896
式(10)のように、実電流であるW相電流検出値iw_snsをβ軸電流推定値iβ_estに含ませることにより、制御変動への応答性が向上し、W相軸成分が小さく収束しにくい領域を狭小化できるため、β軸電流推定値iβ_estの精度を向上することができる。つまりは、β軸電流推定値iβ_estに基づいて算出されるセンサ相基準電流位相θxの検知精度を向上させることができる。
算出されたα軸電流検出値iα_sns(式(8)参照)、および、β軸電流推定値iβ_est(式(10)参照)に基づき、センサ相基準電流位相θxは、以下の式(11)により演算することができる。なお、β軸電流推定値iβ_estは、式(10)に替えて式(9)を用いてもよい。
Figure 2014143896
ここで、式(11)のように、センサ相基準電流位相θxを逆正接関数(tan-1)で計算する場合、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの定義によっては、センサ相基準電流位相θxは、センサ相であるW相と同期した角度にならない場合がある。これは、軸の定義(例えば、α軸とβ軸との入れ替わりや符号反転)によるものである。そこで、正回転、正トルクにおいて、W相電流検出値iw_snsが負から正にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxが0[°]となり、正から負にゼロクロスするときのセンサ相基準電流位相θxが180[°]となるように、すなわちセンサ相基準電流位相θxがW相電流検出値iw_snsと同期した角度となるように、例えばα軸電流iαおよびβ軸電流iβの符号を操作してからセンサ相基準電流位相θxを算出したり、α軸電流iαおよびβ軸電流iβ自体を入れ替えたり、算出したセンサ相基準電流位相θxに直交関係による位相差90[°]を適宜加減したりしてもよい。
このように、位相検知部412にて、α軸電流検出値iα_snsおよびβ軸電流推定値iβ_estに基づいて算出されたセンサ相基準電流位相θxは、基本波推定部42に出力される。
基本波推定部42は、他相推定部421を有する。他相推定部421は、位相検知部412にて算出されたセンサ相基準電流位相θx、および、W相電流検出値iw_snsに基づき、他相電流推定値を演算する。ここでは、他相電流推定値として、V相電流推定値iv_estを推定する例を説明する。
各相の位相差が120[°]であるので、センサ相基準電流位相θxを用いてW相電流検出値iw_snsおよびV相電流推定値iv_estを表すと、式(12)、(13)となる。なお、式(12)、(13)中のIaは、電流振幅である。
iw_sns=Ia×sin(θx) ・・・(12)
iv_est=Ia×sin(θx+120°) ・・・(13)
また、V相電流推定値iv_estについて、加法定理により式(13)を変形すると、センサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づき、以下の式(14)のように表される。
Figure 2014143896
また、推定係数iv_kpを式(15)とすれば、V相電流推定値iv_estは、式(16)のように表すこともできる。
Figure 2014143896
ここで、推定係数iv_kpは、式(15)を用いて直接演算してもよいし、式(15)の一部あるいは全体をセンサ相基準電流位相θxに基づいて予めマップ化しておき、当該マップを参照することにより算出してもよい。
なお、制御部15が一般的な電子制御回路(マイコン)である場合、制御部15に演算式を実装すると、連続時間ではなく離散時間で処理され、各種センサによる検出値や各演算値も指定された分解能(LSB)に基づく離散値として扱われる。ここで「演算式を実装する」とは、ソフトウェアのプログラムや、ハードウェア回路の構築等を含むものとする。また、演算負荷の大きい乗算や除算を避けるため、引数をセンサ相基準電流位相θxとし、推定係数iv_kp、あるいは、推定係数iv_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことが、演算負荷低減に有効である。このようなマップを設けることにより、離散系への適用を容易にし、マイコンの処理負荷を最小限に留めることができる。これにより、演算処理能力の高い高価なマイコンを用いる必要がなくなる。
また、式(14)または式(16)を参照すると、V相電流推定値iv_estをセンサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づいて演算する場合、電流振幅Iaを用いていない。したがって、電流振幅Iaを求める必要はなく、演算すべき変数を削減することができる。
他相推定部421において、センサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づいて算出されたV相電流推定値iv_estは、V相電流推定値(参照値)iv_est_refとしてゼロクロス補間部43に出力される。
ここで、W相電流検出値iw_snsが0[A]となるとき、或いは、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)が無限大となるとき、式(14)において、ゼロで乗算する「ゼロ掛け」が生じる。また、センサ相基準電流位相θxの正接tan(θx)がゼロとなるとき、式(14)において、ゼロで除算する「ゼロ割り」が生じてしまう。このような場合には、V相電流推定値iv_estが適切な値とならない虞がある。
そこで本実施形態では、ゼロクロス補間部43において、V相電流推定値(参照値)iv_est_refを補間することにより、ゼロ割りおよびゼロ掛けをマスクしている。
ゼロクロス補間部43は、ゼロクロス判定部431および前回値保持部432を有する。
ゼロクロス判定部431では、ゼロクロス条件が成立するか否かを判定する。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsが0[A]を含む所定範囲内であるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定する。「所定範囲内の値である」とは、W相電流検出値iw_snsの絶対値が所定値以下であること、或いは、推定係数iv_kpの絶対値が所定値以上であることをいう。ここで「所定値」とは、例えば±5[A]といった具合に電流値で設定してもよいし、5[LSB]といった具合に離散系における分解能に基づいて設定してもよいし、数式等で設定してもよい。また、センサ相基準電流位相θxに基づき、センサ相基準電流位相θxが所定のゼロクロス範囲内にあるとき、ゼロクロス条件が成立する、と判定するようにしてもよい。
ゼロクロス条件が成立しないと判定された場合、他相推定部421にて算出されたV相推定値(参照値)iv_est_refを、そのままV相電流推定値(確定値)iv_est_fixとしてdq変換部44および異常判定部50へ出力する。以下、dq変換部44および異常判定部50へ出力されるV相電流推定値(確定値)iv_est_fixを、適宜単に「V相電流推定値iv_est」という。
一方、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値保持部432から、V相電流推定値(補間値)iv_est_cmpを取得し、このV相電流推定値(補間値)iv_est_cmpを、V相電流推定値(確定値)iv_est_fixとしてdq変換部44および異常判定部50へ出力する。
前回値保持部432では、予め前回値を保持しておき、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、V相電流推定値(補間値)iv_est_cmpを算出し、ゼロクロス判定部431に出力する。
例えば、前回値保持部432では、以前に算出されたV相電流推定値(確定値)iv_est_fixについて、直近の所定回数分を、V相電流推定値(保持値)iv_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値であるV相電流推定値(保持値)iv_est_hldを、V相電流推定値(補間値)iv_est_cmpとしてゼロクロス判定部431に出力する。
また例えば、前回値保持部432では、以前にdq変換部44にて算出されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estについて、直近の所定回数分をd軸電流推定値(保持値)id_est_hldおよびq軸電流推定値(保持値)iq_est_hldとして保持しておく。そして、ゼロクロス条件が成立すると判定された場合、前回値またはそれ以前の値であるd軸電流推定値(保持値)id_est_hldおよびq軸電流推定値(保持値)iq_est_hldを逆dq変換して得られたV相成分を、V相電流推定値(補間値)iv_est_cmpとしてゼロクロス判定部431に出力する。
dq変換部44では、電気角θe、W相電流検出値iw_sns、および、ゼロクロス補間部43から出力されたV相電流推定値iv_estに基づき、dq変換により、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの算出式を、式(17)に示す。
算出されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、切替判定部65に出力される。
Figure 2014143896
図3に戻り、異常判定部50では、電流推定部40にて算出されたV相電流推定値iv_estとV相電流検出値iv_snsとを比較し、W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じているか否かを判定する。本実施形態では、V相電流推定値iv_estとV相電流検出値iv_snsとの差が、所定の異常判定閾値Aeより大きい場合、W相電流センサ12またはV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じていると判定する。
回転数演算部60では、電気角θeに基づき、交流電動機2のロータの回転数Nmg(以下適宜、単に「交流電動機2の回転数Nmg」という。)を演算する。
変動量演算部61では、回転数演算部60にて算出された交流電動機2の回転数Nmgに基づき、回転数変動量ΔNを演算する。回転数変動量ΔNは、例えば前回値と今回値との差や、所定期間内の最大値と最小値との差や、移動平均値など、回転数Nmgの急変判定が可能な値であれば、どのような値であってもよい。本実施形態の回転数変動量ΔNは、例えば20msec毎の移動平均値とするが、この値に限定されないものとする。
切替判定部65では、変動量演算部61にて算出された回転数変動量ΔNに基づき、交流電動機2の回転数Nmgが急変したか否かを判定し、判定結果に基づき、減算器22にフィードバックする電流を切り替える。本実施形態では、回転数変動量ΔNが所定の急変判定閾値Anより大きい場合、回転数Nmgが急変したと判定する。交流電動機2の回転数Nmgが急変していない場合、フィードバックするd軸電流確定値id_fixを電流推定部40にて算出されたd軸電流推定値id_estとし、フィードバックするq軸電流確定値iq_fixを電流推定部40にて算出されたq軸電流推定値iq_estとし、1相制御モードとする。一方、交流電動機2の回転数Nmgが急変した場合、フィードバックするd軸電流確定値id_fixを電流検出部30にて算出されたd軸電流検出値id_snsとし、フィードバックするq軸電流確定値iq_fixを電流検出部30にて算出されたq軸電流検出値iq_snsとし、2相制御モードとする。
ここで、交流電動機2の回転数Nmgの急変について、図30に基づいて説明する。まず、図30について説明しておくと、(a)がトルク、(b)が交流電動機の回転数Nmg、(c)が回転数変動量ΔN、(d)がd軸電流、(e)がq軸電流、(f)がd軸電圧指令値vd*、(g)がq軸電流指令値vq*を示している。(a)においては、破線がトルク指令値trq*、破線が実トルク値trq、(d)、(e)においては、破線がd軸電流指令値id*またはq軸電流指令値iq*、実線がd軸実電流値idまたはq軸実電流値iqを示している。
また、図30に示す例では、交流電動機2は、1相制御により制御されているものとする。
上述の通り、交流電動機2と駆動輪6とは、ギア4を介して接続しているので(図1参照)、車両前進時、すなわち駆動輪6が正転方向に回転するとき、交流電動機2は逆転方向に回転する。すなわち、図30(b)においては、下側に向かうほど、回転数Nmgが逆転方向に増大することを示している。また、車両前進時、すなわち駆動輪6を正転方向に回転させる場合、交流電動機2としては負トルクを出力する。そのため、車両前進時には、図30(a)、(e)に示すように、トルク、および、q軸電流は、いずれも負の値となる。なお、図30(d)に示すように、d軸電流は、トルクや回転数によらず、常に負の値となる。
例えば車両が段差路を走行する場合、車両が段差路に乗り上げると、駆動輪6が路面から一時的に離れることにより、駆動輪6がスリップ(空転)し、駆動輪6の回転数Nwが正転方向に急増する。また、駆動輪6のスリップ後、駆動輪6が路面にグリップ(接地)すると、駆動輪6の回転数Nwは、急減する。なお、駆動輪6の回転数Nwは、ギア比を考慮した交流電動機2の回転数Nmg、といえるので、以降は交流電動機2の回転数Nmgに置き換えるものとする。
駆動輪6のスリップにより回転数Nmgが急増すると、トルクを減少させようとする方向に制御することになり、破線で示すトルク指令値trq*の絶対値が急減する。一方、駆動輪6のグリップにより回転数Nmgが急減すると、トルクを増加させようとする方向に制御することになり、トルク指令値trq*の絶対値が急増する。したがって、図30(a)に示すように、駆動輪6のスリップおよびグリップに伴い、トルク指令値trq*も急変する。
また、駆動輪6と交流電動機2とは、ギア4を介して接続されているので、駆動輪6が路面をスリップすると、図30(b)に矢印Sで示すように、交流電動機2の回転数Nmgは逆転方向に急増する。また、駆動輪6が路面をグリップすると、図30(b)に矢印Gで示すように、交流電動機2の回転数Nmgも急減する。
また、交流電動機2の回転数Nmgが急変すると、図30(c)に示すように、回転数変動量ΔNも急変する。
スリップおよびグリップに伴い、図30(a)に示すトルク指令値trq*が急変すると、図30(d)に破線で示すように、トルク指令値trq*に基づいて算出されるd軸電流指令値id*が急変する。同様に、図30(e)に破線で示すように、トルク指令値trq*に基づいて算出されるq軸電流指令値iq*が急変する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変すると、図30(d)、(e)に実線で示すように、制御が応答しきれず、d軸電流指令値id*とd軸実電流値idとの乖離、および、q軸電流指令値iq*とq軸実電流値iqとの乖離が大きくなってしまう。d軸実電流値idとd軸電流指令値id*とが乖離し、q軸実電流値iqとd軸電流指令値iq*とが乖離してしまうと、図30(a)に示すように、トルク指令値trq*と実トルク値trqとが乖離してしまう。
また、スリップおよびグリップ収束後も、d軸実電流値idがd軸電流指令値id*に、q軸実電流値iqがq軸電流指令値iq*に収束せず、制御が不安定になってしまう虞がある。
さらに、d軸電圧指令値vd*は、d軸電流指令値id*とフィードバックされるd軸電流推定値id_estに基づいて算出され、q軸電圧指令値vq*は、q軸電流指令値iq*とフィードバックされるq軸電流推定値iq_estとに基づいて算出される。そのため、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変すると、図30(f)、(g)に示すように、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*も急変する。
このように、車両が段差路を走行する場合や、路面が凍結している場合等、駆動輪6がスリップおよびグリップし、交流電動機2の回転数Nmgが急変する場合、各種パラメータが急変するため、より高い制御の応答性が要求される。
そこで本実施形態では、図6に示すように、通常時は上述のような応答性の比較的高い1相制御とすることにより電流センサ間のゲイン誤差による影響を低減するとともに電流センサ12、13の異常検出を行っている。一方、急変状態である場合、すなわち回転数変動量ΔNの絶対値が所定の急変判定閾値Anより大きい期間P1〜P5において、2相制御とすることにより制御の応答性をより高めている。なお、図6においては加速中の例を説明しているが、減速中や定常走行中についても同様である。
本実施形態における「急変状態」とは、1相制御では対応しきれない程度に交流電動機2の回転数Nmgが急変する状態であり、通常より高い応答性が要求される状態のことを示すものとする。したがって、「急変状態」であるかどうかは、1相制御時における電流推定精度、制御部15の演算速度、および、交流電動機2の応答性等によって変わってくるものであり、急変状態の判定に係る各種の閾値は、1相制御時における電流推定精度、制御部15の演算速度、および、交流電動機2の応答性等のシステムに応じて適宜設定することができる。
ここで、図7に示すフローチャートに基づき、本実施形態による駆動制御処理を説明する。なお、この制御処理は、例えば電動機駆動システム1の電源がオンされているときに、制御部15にて所定の間隔で実行されるものとする。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、回転角センサ14から電気角θeを取得する。
S102では、W相電流センサ12からW相電流検出値iw_snsを取得し、V相電流センサ13からV相電流検出値iv_snsを取得する。
S103では、電流検出部30にて、電気角θe、W相電流検出値iw_snsおよびV相電流検出値iv_snsに基づき、dq変換によりd軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを演算する。
S104では、電流推定部40にて、電気角θe、および、W相電流検出値iw_snsに基づき、d軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_estおよびV相電流推定値iv_estを演算する。本実施形態では、電気角θe、および、W相電流検出値iw_snsに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいてd軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_estおよびV相電流推定値iv_estの演算を行う。
S105では、回転数演算部60にて、S101にて取得した電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nmgを演算する。
S106では、変動量演算部61にて、回転数Nmgに基づき、回転数変動量ΔNを演算する。
S107では、切替判定部65にて、回転数Nmgが急変したか否かを判断する。本実施形態では、回転数変動量ΔNの絶対値が所定の急変判定閾値Anより大きい場合、回転数Nmgが急変したと判断する。回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)、すなわち回転数変動量ΔNの絶対値が急変判定閾値Anより大きい場合、S111へ移行する。S107にて肯定判断された場合に実行されるS111の処理が「2相制御モード」である。回転数Nmgが急変していないと判断された場合(S107:NO)、すなわち回転数変動量ΔNの絶対値が急変判定閾値An以下である場合、S108へ移行する。S107にて否定判断された場合に実行されるS108〜S110の処理が「1相制御モード」である。なお、S109およびS110の処理は「異常検出モード」と捉えることもできる。
S108では、切替判定部65にて、減算器22にフィードバックするd軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixとして、電流推定部40にて演算されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを選択する。
S109では、異常判定部50にて、W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じているか否かを判断する。本実施形態では、電流推定部40にて算出されるV相電流推定値iv_estと、V相電流センサ13により検出されるV相電流検出値iv_snsとの差が所定の異常判定閾値Aeより大きい場合、W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じていると判断する。W相電流センサ12およびV相電流センサ13に異常が生じていないと判断された場合(S109:NO)、すなわちV相電流推定値iv_estとV相電流検出値iv_snsとの差が異常判定閾値Ae以下である場合、S112へ移行する。W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じていると判断された場合(S109:YES)、すなわちV相電流推定値iv_estとV相電流検出値iv_snsとの差が異常判定閾値Aeより大きい場合、電流センサ異常フラグをセットし、S110へ移行する。
S110では、W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じている旨の情報を車両制御回路9へ通知し、電動機制御装置10による交流電動機2の駆動を停止する。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS111では、切替判定部65にて、減算器22にフィードバックするd軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixとして、電流検出部30にて演算されたd軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを選択する。
S109にて否定判断された場合、および、S111に続いて移行するS112では、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、フィードバックされたd軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixに基づき、減算器22にてd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを算出し、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqがゼロに収束するように、PI演算部23にてPI演算によりd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を演算する。
S113では、3相電圧指令値演算部24にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を電気角θeに基づいて逆dq変換し、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を演算する。
S114では、PWM信号生成部25にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*をインバータ入力電圧VHに基づいてPWM変調して駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ11へ出力する。
そして、駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ11のスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力される。
以上詳述したように、交流電動機2の電動機制御装置10は、インバータ11によって印加電圧である3相交流電圧vu、vv、vwが制御される3相の交流電動機2の駆動を制御する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか1相である第1相(本実施形態ではW相)に設けられるW相電流センサ12からW相電流検出値iw_snsを取得し、交流電動機2の第1相であるW相以外の1相である第2相(本実施形態ではV相)に設けられるV相電流センサ13からV相電流検出値iv_snsを取得する(図7中のS102)。また、交流電動機の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。
電流検出部30では、W相電流検出値iw_sns、V相電流検出値iv_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを演算する(S103)。
電流推定部40では、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する(S104)。
回転数演算部60では、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nmgを演算する(S105)。変動量演算部61では、回転数Nmgに基づき、回転数変動量ΔNを演算する(S106)。
切替判定部65では、回転数変動量ΔNに基づき、急変状態か否かを判定する(S107)。急変状態でないと判定された場合(S107:NO)、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流推定値id_est、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流推定値iq_estを選択する(S108)。一方、急変状態であると判定された場合(S107:YES)、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsを選択する(S111)。
PI演算部23では、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fix、および、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、インバータ11に印加する電圧に係るd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を演算する。
3相の交流電動機2の2相(本実施形態ではW相およびV相)に電流センサ12、13を設ける構成において、1相の電流センサ(本実施形態ではW相電流センサ12)による検出値であるW相電流検出値iw_snsに基づいて1相制御とすることにより、電流センサ12、13間のゲイン誤差による影響を低減することができるとともに、電流センサ12、13の異常監視が可能となる。その反面、1相制御にすると、得られる実機情報が少ないため、2相の電流センサ12、13による検出値であるW相電流検出値iw_snsおよびV相電流検出値iv_snsに基づく2相制御と比較し、制御の安定性、応答性の面で劣る可能性がある。
そこで本実施形態では、急変状態ではない通常時には、フィードバックするd軸電流確定値id_fixとしてd軸電流推定値id_est、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流推定値iq_estを選択して1相制御とすることにより、電流センサ12、13間のゲイン誤差による影響を低減している。また、1相制御とすることにより、電流センサ12、13の異常監視が可能となる。
一方、急変状態である場合、フィードバックするd軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsを選択して2相制御に切り替えることにより、制御の応答性を高めている。これにより、例えば本実施形態のように電動機制御装置10を車両主機に適用した場合、路面の状況等に応じ、駆動輪6のスリップおよびグリップに伴って交流電動機2の回転数Nmgが急変したとしても、2相制御に切り替えることにより、制御の応答性を高め、交流電動機2を適切に制御することができる。
また本実施形態では、電流推定部40では、W相電流検出値iw_sns、電気角θeに加え、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出している。
より詳細には、電流推定部40のセンサ相基準電流位相検知部41にて、W相電流検出値、電気角θe、および、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、センサ相基準電流位相θxを演算する。基本波推定部42では、算出されたセンサ相基準電流位相θx、および、W相電流検出値iw_snsに基づき、V相電流推定値iv_estを演算する。また、ゼロクロス補間部43では、V相電流推定値iv_estをゼロクロス補間し、V相電流推定値(確定値)iv_est_fixを演算する。dq変換部44では、V相電流推定値(確定値)iv_est_fix、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。
これにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを精度よく推定できるので、従来技術に比べ、1相制御における応答性をより向上することができる。
ここで、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づいて演算されていれば、どのような方法であってもよい。本実施形態では、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づく演算方法について説明したが、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θe以外に、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、および、他のパラメータの一部または全てを適宜組み合わせて用いてもよいし、演算方法もどのようであってもよい。
さらに本実施形態では、フィードバックされる電流値によらず、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsと、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estとを常時演算している。換言すると、2相制御中においても1相制御電流値であるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算を行っている。これにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを常に誤差の小さい状態にしておくことができるので、電流推定部40における演算に遅れが存在するフィルタ系の演算が含まれていたとしても、2相制御から1相制御に切り替えた直後の電流制御の乱れを抑制可能であり、交流電動機2の制御が不安定になるのを避けることができる。
また本実施形態では、電流推定部40では、W相電流検出値iw_snsに基づくV相電流推定値iv_estを演算している(S104)。また、異常判定部50では、フィードバックされる電流確定値としてd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが選択されているとき、V相電流検出値iv_snsとV相電流推定値iv_estとの比較結果に基づき、W相電流センサ12およびV相電流センサ13の少なくとも一方に異常が生じているか否かを判定する(S109)。
これにより、1相制御中にW相電流センサ12およびV相電流センサ13の異常監視を適切に行うことができ、フェールセーフ面において好ましい。
また、本実施形態では、PI演算部23では、フィードバックされるd軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fix、および、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令値vd*およびq軸電流指令値vq*を演算する。すなわち、本実施形態では、電流フィードバック制御方式にてd軸電圧指令値vd*およびq軸電流指令値vq*を演算する。電流フィードバック制御方式を採用することにより、特に低回転域でのトルク脈動を小さくすることができる。
本実施形態では、W相電流センサ12が「第1の電流センサ」に対応し、V相電流センサ13が「第2の電流センサ」に対応している。また、制御部15が「第1の電流取得手段」、「第2の電流取得手段」、「回転角取得手段」、「2相制御電流値演算手段」、「1相制御電流値演算手段」、「回転数演算手段」、「変動量演算手段」、「切替手段」、「電圧指令値演算手段」、「他相電流推定手段」、「異常判定手段」を構成する。より詳細には、電流検出部30が「2相制御電流値演算手段」を構成し、電流推定部40が「1相制御電流値演算手段」および「他相電流推定手段」を構成し、回転数演算部60が「回転数演算手段」を構成し、変動量演算部61が「変動量演算手段」を構成し、切替判定部65が「急変判定手段」および「切替手段」を構成する。また、PI演算部23が「電圧指令値演算手段」を構成し、異常判定部50が「異常判定手段」を構成する。
また、図7中のS102が「第1の電流取得手段」および「第2の電流取得手段」の機能としての処理に相当し、S101が「回転角取得手段」の機能としての処理に相当し、S103が「2相制御電流値演算手段」の機能としての処理に相当し、S104が「1相制御電流値演算手段」および「他相電流推定手段」の機能としての処理に相当する。また、S105が「回転数演算手段」の機能としての処理に相当し、S106が「変動量演算手段」の機能としての処理に相当し、S107が「急変判定手段」の機能としての処理に相当し、S108およびS111が「切替手段」の機能としての処理に相当する。また、S112が「電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S109が「異常判定手段」の機能としての処理に相当する。
さらに本実施形態では、W相が「第1相」に対応し、W相電流検出値iw_snsが「第1の電流検出値」に対応し、V相が「第2相」に対応し、V相電流検出値iv_snsが「第2の電流検出値」に対応し、V相電流推定値iv_estが「第2相電流推定値」に対応し、電気角θeが「回転角検出値」に対応する。また、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsが「2相制御電流値」に対応し、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが「1相制御電流値」に対応し、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixが「電流確定値」に対応する。さらにまた、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が「指令値」および「電流指令値」に対応し、d軸電圧指令値vd*およびq軸電流指令値vq*が「電圧指令値」に対応する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、切替判定部65における処理が第1実施形態と異なるので、この点を中心に説明し、他の構成や処理等についての説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態では、急変状態か否かの判定に、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*、q軸電流指令値iq*、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを用いている。
具体的には、回転数変動量ΔNが大きくても、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が小さければ、1相制御でも十分に応答できると見なせるので、1相制御としても差し支えない。一方、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、または、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が大きい場合、1相制御では応答しきれない可能性があるため、2相制御に切り替える。
ここで、本実施形態による駆動制御処理を図9に基づいて説明する。図9に示すフローチャートは、図7のフローチャートのS107にて肯定判断された後に移行するS121が追加されているので、この点を中心に説明する。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS121では、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が所定の応答判定閾値Arより大きいか否かを判断する。応答判定閾値Arは、1相制御時の電流推定精度、制御部15の演算速度、および、交流電動機2の応答性等に応じて適宜設定可能である。以下、第3実施形態〜第5実施形態の各パラメータの急変判定に係る各閾値についても同様である。
d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が応答判定閾値Ar以下である場合(S121:NO)、S108へ移行する。すなわち、回転数Nmgが急変していても、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が応答判定閾値Ar以下であれば、急変状態ではない、とみなし、1相制御とする。d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、または、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が応答判定閾値Arより大きい場合(S121:YES)、S111へ移行する。すなわち、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、または、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差が応答判定閾値Arより大きければ、急変状態とみなし、2相制御とする。
本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差に基づき、急変状態か否かを判定している。これにより、1相制御と2相制御との切り替えをより適切に行うことができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、S107に加え、S121が「急変判定手段」の機能としての処理に相当する。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*とd軸電流検出値id_snsとの差、および、q軸電流指令値iq*とq軸電流検出値iq_snsとの差に基づいて、急変状態か否かを判定した。第3実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*そのものが急変したか否かに基づき、急変状態か否かを判定している。
上記実施形態のように、電流推定部40におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算にd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いている場合、回転数Nmgが急変したとしても、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していなければ、1相制御でも応答できる蓋然性が高いため、1相制御を継続する。
ここで、本実施形態による駆動制御処理を図10に基づいて説明する。図10に示すフローチャートは、S121に替えてS122となっている以外は、図9に示す第2実施形態のフローチャートと同様である。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS122では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かを判断する。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変は、回転数Nmgの急変と同様、前回値と今回値との差や、所定期間内の最大値と最小値との差や、移動平均値など、どのような値に基づいて判断してもよい。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変していないと判断された場合(S122:NO)、急変状態ではないとみなし、S108へ移行し、1相制御とする。d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したと判断された場合(S122:YES)、急変状態であるとみなし、S111へ移行し、2相制御とする。
本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、急変状態か否かを判定している。これにより、1相制御と2相制御との切り替えをより適切に行うことができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、S107に加え、S122が「急変判定手段」の機能としての処理に相当する。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第3実施形態の変形例である。
第3実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変したか否かに基づき、急変状態か否かを判定している。本実施形態では、図11に示すように、回転数変動量ΔNに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に替えて、トルク指令値trq*が急変したか否かに基づき、急変状態か否かを判定している。
第1実施形態で説明したように、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*はトルク指令値trq*に基づいて算出されるため、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の急変と、トルク指令値trq*との急変は、概ね同義であると考えられる。ただし、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、特性に応じて各種演算により変化させている場合があり、このような場合にはd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が急変しているか否かがわかりにくく、上位指令であるトルク指令値trq*の方が急変状態か否かを把握しやすい場合がある。そこで本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、上位指令であるトルク指令値trq*に基づいて急変状態か否かを判定している。
ここで、本実施形態による駆動制御処理を図12に基づいて説明する。図12に示すフローチャートは、S121に替えてS123となっている以外は、図9に示す第3実施形態のフローチャートと同様である。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS123では、トルク指令値trq*が急変したか否かを判断する。トルク指令値trq*の急変は、回転数Nmg等と同様、前回値と今回値との差や、所定期間内の最大値と最小値との差や、移動平均値など、どのような値に基づいて判断してもよい。トルク指令値trq*が急変していないと判断された場合(S123:NO)、急変状態ではないとみなし、S108へ移行し、1相制御とする。トルク指令値trq*が急変したと判断された場合(S123:YES)、急変状態であるとみなし、S111へ移行し、2相制御とする。
本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、トルク指令値trq*に基づき、急変状態か否かを判定している。これにより、1相制御と2相制御との切り替えをより適切に行うことができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、S107に加え、S123が「急変判定手段」の機能としての処理に相当する。
(第5実施形態)
第5実施形態では、図13に示すように、回転数変動量ΔNに加え、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変したか否かに基づいて、急変状態か否かを判定している。すなわち本実施形態では、演算結果としてのd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変していなければ、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwも急変せず、1相制御でも十分に応答できるとみなせるので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを用いた1相制御としても差し支えない。一方、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変した場合、1相制御では応答しきれていないため、2相制御に切り替える。
ここで、本実施形態による駆動制御処理を図14に基づいて説明する。図14に示すフローチャートは、S121に替えてS124となっている以外は、図9に示す第2実施形態のフローチャートと同様である。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS124では、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変したか否かを判断する。d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変は、回転数Nmg等と同様、前回値と今回値との差や、所定期間内の最大値と最小値との差や、移動平均値など、どのような値に基づいて判断してもよい。d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変していないと判断された場合(S124:NO)、急変状態ではないとみなし、S108へ移行し、1相制御とする。d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が急変したと判断された場合(S124:YES)、急変状態であるとみなし、S111へ移行し、2相制御とする。
本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*に基づき、急変状態か否かを判定している。これにより、1相制御と2相制御との切り替えをより適切に行うことができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、S107に加え、S124が「急変判定手段」の機能としての処理に相当する。
(第6実施形態)
例えば、凸凹が繰り返されるような路面を車両が走行する場合等、路面の状況等によっては、駆動輪6のスリップとグリップとが繰り返されることにより、2相制御と1相制御とが頻繁に切り替えられる場合がある。図6に示す例では、例えば2相制御が行われる期間P1と期間P2との間にて、1相制御が行われる期間が短くなっている。このように、2相制御と1相制御とが短い期間で切り替えられる場合、制御の切り替えに伴うハンチングが生じる虞がある。
そこで第6実施形態では、急変判定されて2相制御に切り替えられた場合、2相制御を所定期間継続するようにしている。より詳細には、急変状態であると判定されて1相制御から2相制御に切り替えられた後、急変状態ではないと判定されたとしても、所定期間は2相制御を継続している。
本実施形態による電流フィードバック制御処理を図15および図16に基づいて説明する。図15に示すフローチャートは、図7中のS107で否定判断された後に移行するS130およびS140が追加されており、S107にて肯定判断された後に移行するS136が追加されているので、この点を中心に説明する。なお、図16は、S130における判定保持処理を説明するサブフローである。
回転数Nmgが急変していないと判断された場合(S107:NO)に移行するS130では、判定保持処理を行う。
ここで、判定保持処理を図16に基づいて説明する。
S131では、前回の駆動制御処理が1相制御であったか否かを判断する。前回の駆動制御処理が1相制御であると判断された場合(S131:YES)、すなわち切替判定部65からフィードバックされるd軸電流確定値id_fixとしてd軸電流推定値id_est、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流推定値iq_estが選択されていた場合、判定保持処理を終了し、図15中のS140へ移行する。このとき、後述の判定保持フラグはリセットされた状態である。前回の駆動制御処理が1相制御ではないと判断された場合(S131:NO)、すなわち前回の駆動制御処理が2相制御であり、切替判定部65からフィードバックされるd軸電流確定値としてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsが選択されていた場合、S132へ移行する。
S132では、判定保持カウンタのカウント値Cをインクリメントする。
S133では、判定保持カウンタのカウント値Cが、2相制御を継続する所定期間に対応する所定回数Acより小さいか否かを判断する。判定保持カウンタのカウント値Cが所定回数Ac以上であると判断された場合(S133:NO)、S135へ移行する。判定保持カウンタのカウント値Cが所定回数Acより小さいと判断された場合(S133:YES)、S134へ移行する。
S134では、判定保持フラグをセットし、判定保持処理を終了し、図15中のS140へ移行する。
判定保持カウンタのカウント値Cが、所定回数Ac以上であると判断された場合(S133:NO)に移行するS135では、判定保持フラグをリセットし判定保持カウンタのカウント値Cをクリアし、判定保持処理を終了し、図15中のS140へ移行する。
図15に戻り、判定保持処理終了後に移行するS140では、判定保持フラグに基づき、判定を保持するか否かを判断する。判定保持しないと判断された場合(S140:NO)、すなわち判定保持フラグがセットされていない場合、判定を保持せず、S108へ移行し、1相制御とする。判定保持すると判断された場合(S140:YES)、すなわち判定保持フラグがセットされている場合、判定を保持し、S111へ移行し、2相制御とする。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS136では、判定保持カウンタのカウント値Cをクリアし、S111へ移行する。
本実施形態では、急変状態であると判定され、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsを選択した後、急変状態でないと判定された場合、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsの選択を所定期間継続する。急変状態でないと判定された後、所定期間経過後は、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流推定値id_est、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流推定値iq_estを選択する。
このように、急変状態であると判定されて1相制御から2相制御に切り替えられた後、急変状態ではないと判定された場合、所定期間は2相制御を継続している。換言すると、急変状態の終了から所定期間は、2相制御を継続する、ということである。これにより、2相制御と1相制御とが頻繁に切り替えられることによる切り替えハンチングを回避することができる。特に、凹凸のある路面や凍結路面を走行することによりスリップとグリップとが繰り返される場合、2相制御が継続されることになるので、精度よく交流電動機2を制御することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、図15および図16に示す例では、S108およびS111に加え、S130〜S136およびS140が「切替手段」の機能としての処理に相当する。
本実施形態のように、「急変状態であると判定され、電流確定値として2相制御電流値を選択した後、急変状態でないと判定された場合、電流確定値として2相制御電流値の選択を所定期間継続する」ことは、「電流確定値として2相制御電流値を選択した場合、2相制御電流値の選択を所定期間継続する」という概念に含まれるものとする。
もちろん、図17に示すように、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsを選択した場合、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsのフィードバックを所定期間継続するようにしてもよい。換言すると、急変状態の開始から所定期間は、2相制御を継続するようにしてもよい、ということである。
図17のフローチャートは、図7中のS107にて肯定判断された後に移行するS145が追加されており、S107にて否定判断された後に移行するS146およびS147が追加されている。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS145では、判定保持カウンタのカウント値Cをインクリメントし、S111へ移行し、2相制御とする。
回転数Nmgが急変していないと判断された場合(S107:NO)に移行するS146では、判定保持カウンタのカウント値Cが0か否かを判断する。判定保持カウンタのカウント値が0であると判断された場合(S146:YES)、S108へ移行し、1相制御とする。判定保持カウンタのカウント値Cが0でないと判断された場合(S146:NO)、S147へ移行する。
S147では、判定保持カウンタのカウント値Cが、2相制御を継続する所定期間に対応する所定回数Adより小さいか否かを判定する。判定保持カウンタのカウント値Cが所定回数Adより小さいと判断された場合(S147:YES)、S145へ移行し、判定保持カウンタのカウント値Cをインクリメントし(S145)、S111へ移行して2相制御とする。判定保持カウンタのカウント値Cが所定回数Ad以上であると判断された場合(S146:NO)、判定保持カウンタのカウント値Cをクリアし、S108へ移行し、1相制御とする。
本実施形態では、d軸電流確定値id_fixとしてd軸電流検出値id_sns、q軸電流確定値iq_fixとしてq軸電流検出値iq_snsを選択した場合、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsのフィードバックを所定期間継続する(S147:YES、S111)。
このようにしても、2相制御と1相制御とが頻繁に切り替えられることにより切り替えハンチングを回避することができ、上記と同様、精度よく交流電動機2を制御することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
なお、図17の例では、S108およびS111に加え、S145〜S147が「切替手段」の機能としての処理に相当する。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態による駆動制御処理を図18に基づいて説明する。図18に示す駆動制御処理は、図7中のS103およびS104が省略されており、S107にて否定判断された場合に移行するS115が追加されており、S108にて肯定判断された場合に移行するS116が追加されている点が異なるので、この点を中心に説明する。
回転数Nmgが急変していないと判断された場合(S107:NO)に移行するS115は、図7中のS104の処理と同様であり、電流推定部40にて、電気角θe、W相電流検出値iw_sns、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_estおよびV相電流推定値iv_estを演算する。そして、S108へ移行する。
回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS116は、図7中のS103の処理と同様であり、電流検出部30にて、電気角θe、W相電流検出値iw_snsおよびV相電流検出値iv_snsに基づき、dq変換によりd軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを演算する。そして、S111へ移行する。
すなわち本実施形態では、急変状態ではない通常時には、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを算出せず、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出している。一方、急変状態では、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出せず、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsを算出している。
これにより、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsと、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estとを常時演算する場合と比較し、演算負荷を低減し、リソースを節約することができる。
このように、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを常時演算しない構成とすると、電流推定部40において、遅れが存在するフィルタ系の演算を含んでいる場合、2相制御から1相制御に切り替えた直後のd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定誤差が大きく、電流制御が乱れる虞がある。この場合、例えば、S107にて肯定判断された場合、S107にて用いた急変判定閾値Anより大きい値である第2の急変判定閾値An2より回転数変動量ΔNが小さいと判断された場合、1相制御への復帰が近いとみなし、電流推定部40におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算を開始するように構成してもよい。これにより、d軸電流検出値id_snsおよびq軸電流検出値iq_snsと、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estとを常時演算する場合と比較し、演算負荷を低減し、リソースを節約しつつ、2相制御から1相制御に切り替えた直後の電流制御の乱れを抑制することができる。
(第8実施形態)
第8実施形態〜第10実施形態は、電流推定部40における演算方法、フローチャートについていえばS104またはS115における処理が異なっているので、この点を中心に説明する。第8実施形態〜第10実施形態の電流推定方法は、上記第1実施形態〜第7実施形態のいずれの実施形態の電流推定方法としてもよい。以下の実施形態においても、第1相であるW相を「センサ相」とし、W相電流検出値iw_snsを用いる例を説明する。
図19に示すように、第8実施形態〜第10実施形態では、電流推定部40にd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が入力されておらず、電流推定部40では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いずに、d軸電流推定値id_est、q軸電流推定値iq_est、および、V相電流推定値iv_estを演算している。
図20に示すように、本発明の第8実施形態による電流推定部40は、センサ相基準電流位相検知部45が上記実施形態と異なっている。本実施形態のセンサ相基準電流位相検知部45には、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が入力されず、逆dq変換部を有していない。そのため、位相検知部452では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いずにセンサ相基準電流位相θxを算出している。
本実施形態の位相検知部452では、α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。なお、α軸電流微分値Δiαが「α軸電流検出値の微分値」に対応する。
まず、W相電流検出値iw_snsに基づき、上記式(8)によりα軸電流検出値iα_snsを演算する。
また、α軸電流検出値iα_snsを演算するタイミング間での「電気角移動量Δθe[rad]に対するα軸電流検出値iα_snsの変化量」、すなわち、「α軸電流検出値iα_snsの今回値と前回値との差」に基づき、α軸電流微分値Δiαを式(18)により演算する。
Δiα=−{iα(n)−iα(n−1)}/Δθe ・・・(18)
式(18)中のΔθeは、前回の電流検出タイミングから今回の電流検出タイミングまでの電気角移動量をラジアン単位で表した値である。また、iα(n)はα軸電流検出値iα_snsの今回値であり、iα(n−1)はα軸電流検出値iα_snsの前回値である。
なお、式(18)において、α軸電流iαやβ軸電流iβの定義によって、符号が反転する場合は、式(11)における「tan-1(iβ/iα)」の計算に適するように、必要に応じて符号を操作してもよい。或いは、計算した結果、センサ相基準電流位相θxがW相電流検出値iw_snsに同期しない場合には、符号操作だけでなく、算出されたセンサ相基準電流位相θxに位相差90[°]を適宜加減してもよい。この点は、上記実施形態と同様である。
続いて、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算するときの補正について、図21を参照して説明する。図21において、横軸は電気角θeであり、波形上にマークがあるタイミングにおいて電流検出が行われたことを示しており、ここでは電気角移動量Δθeがπ/6[rad]=30[°]である場合を示している。
α軸電流iαおよびβ軸電流iβが理想的な正弦波である場合、実際のβ軸電流iβ0は、α軸電流iαの微分波形であり、「無限小の電気角移動量Δθeにおけるα軸電流iαの変化量」として定義される。
しかしながら、現実の電動機制御装置10におけるα軸電流微分値Δiαは、無限小ではない電気角移動量Δθeにおけるα軸電流検出値iα_snsの差分値である。したがって、図21(a)に示すように、α軸電流微分値Δiαの波形は、実際のβ軸電流iβ0の波形に対し、電気角移動量Δθeの半分、すなわち(Δθe/2)だけ遅れることになる。
そこで、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する場合、補正量Hを式(19)により算出し、この補正量Hをα軸電流微分値Δiαに加算してβ軸電流推定値iβ_estを演算することが好ましい(式(20)参照)。
Figure 2014143896
式(19)に示す通り、補正量Hは、「α軸電流検出値iα_snsの前回値iα(n−1)と今回値iα(n)の平均値」に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗算した値である。
図21(b)に示すように、式(20)により算出したβ軸電流推定値iβ_estは、実際のβ軸電流iβ0の波形によく一致する。
このように、β軸電流推定値iβ_estが精度よく算出できれば、センサ相基準電流位相θx検知精度と向上させることができ、ひいてはd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを精度よく推定することができる。
本実施形態では、W相に一致する軸をα軸とし、α軸に直交する軸をβ軸としている。
また、電流推定部40では、W相電流検出値iw_snsに基づいて算出されるα軸電流検出値iα_sns、および、α軸電流微分値Δiαに基づいて算出されるβ軸電流推定値iβ_estに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est演算する。より詳細には、α軸電流検出値iα_sns、および、α軸電流微分値Δiαに基づいて算出されるβ軸電流推定値iβ_estに基づいて算出されるW相を基準とするセンサ相基準電流位相θxに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。
これにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを精度よく推定できるので、従来技術に比べ、1相制御における応答性をより向上することができる。
また、本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いずにd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出しているので、例えばトルク推定値trq_estとトルク指令値trq*との変化に基づく矩形波電圧パルスの位相制御による矩形波制御のように(後述の第11実施形態参照)、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いないトルクフィードバック方式のような制御方式にも適用可能である。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
ところで、α軸電流検出値iα_snsは、インバータ11のスイッチング素子のオン/オフの切り替えの影響を受け、スイッチング素子のオン/オフの切り替えタイミング(以下、「スイッチングタイミング」という。)で波形が歪むことがある。そこで、スイッチングタイミング同士のα軸電流検出値iα_snsを用いてα軸電流微分値Δiαを演算することに加え、スイッチングタイミング間の所定のタイミングである中間タイミング同士のα軸電流検出値iα_snsを用いてα軸電流微分値Δiαを算出するようにしてもよい。このようにすることで、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度をより高めることができる。
(第9実施形態)
第9実施形態による電流推定部40を図22に示す。
本実施形態では、第8実施形態と同様、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いず、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出している。本実施形態では、回転座標系であるdq軸平面上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiwを積算してd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させることにより、精度よくd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出している。
図22に示すように、電流推定部40は、電流基準値算出部461、減算器462、ゲイン補正部463、センサ相方向補正値算出部464、減算器465、他相電流推定部466、および、遅延素子467を有する。ここで、今回入力されるW相電流検出値iw_snsに基づく電流推定処理を第n回目の処理とし、入力されるW相電流検出値を「iw_sns(n)」、電気角を「θ(n)」とし、この処理によって得られる電流推定値を「i#_est(n)」(ただし、#は、d、q、u、v、w)のように表す。
電流基準値算出部461には、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_est(n−1)およびq軸電流推定値iq_est(n−1)が入力され、d軸電流推定値id_est(n−1)およびq軸電流推定値iq_est(n−1)、電気角θe(n)を用いて逆dq変換し、センサ相であるW相成分の電流基準値iw_bfを演算する。
減算器462では、電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_sns(n)との差分であるW相推定誤差Δiwを演算する。
ゲイン補正部463では、W相推定誤差ΔiwにゲインKを乗じ、補正後誤差KΔiwを演算する。ゲインKは、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに設けられたローパスフィルタ(以下、「LPF」という。)の役割をなすものであり、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの変化を緩やかにするものである(詳細は後述)。ゲインKの値は、そのLPFの所望の時定数の処理回数(時定数÷処理周期)をKlpfとすると、1/Klpfで表され、0<K<1の範囲となる。
センサ相方向補正値算出部464では、Δiu=0、Δiv=0とし、補正後誤差KΔiwをdq変換し、センサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)を演算する。本実施形態では、センサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)が「補正ベクトル」に対応する。以下、センサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)をベクトルとして扱う場合、適宜「補正ベクトル(Δid、Δiq)」ということにする。
なお、補正ベクトルは、常に(Δid、Δiq)のセットで示すものであり、電流フィードバック制御方式でPI演算部23等に入力されるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiq(図3等)とは異なるものであることを注意的に述べておく。
減算器465では、遅延素子467を経由してフィードバックされた前回のd軸電流推定値id_est(n−1)からセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)を減算し、d軸電流推定値id_est(n)を演算する。また、遅延素子467を経由してフィードバックされた前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)からセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)を減算し、q軸電流推定値iq_est(n)を演算する。なお、減算器465において、前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対しセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)を減算し、前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対しセンサ相方向q軸補正値を減算することが「補正ベクトルをdq軸平面上にて積算する」ことに対応する。
また、算出されたd軸電流推定値id_est(n)およびq軸電流推定値iq_est(n)は、遅延素子467を経由して電流基準値算出部461へフィードバックされる。
他相電流推定部466では、電気角θe(n)に基づき、d軸電流推定値id_est(n)およびq軸電流推定値iq_est(n)を逆dq変換し、3相電流推定値iu_est(n)、iv_est(n)、iw_est(n)を演算する。なお、必要に応じ、例えばV相電流推定値iv_est(n)だけを演算する、といった具合に、必要な相に限って演算するようにしてもよい。
ここで、本実施形態における電流推定処理を表した漸化式を式(21)に示す。
ただし、式中のθw(n)は、θe(n)+120[°]である。また、式中のKcos(θw(n))Δiwがセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)に対応し、−Ksin(θw(n))Δiwがセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)に対応する。
Figure 2014143896
式(21)に示す漸化式をベクトル図で表現すると、図23(a)のようになる。
ここで、本実施形態ではゲインKを0<K<1となるように設定しているので、図23(b)に示すように、回転座標系であるdq軸平面上において、W相軸が相対的に回転することを利用し、矢印YIで示す補正ベクトル(Δid、Δiq)を積算していくことにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させている。
なお、ゲインKは、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近する速度を律するためのフィルタ要素である。ゲインKが大きすぎると、すなわち1に比較的近い値であると、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estと、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqとの差である誤差ベクトルΔieとW相軸とが直交に近くなってしまい、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqを中心とする円周方向に動き、渦を描いてしまうため、漸近しにくくなってしまう。このような点を考慮し、ゲインKは、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近しやすいような値を0<K<1の範囲で適宜設定可能である。
本実施形態では、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estのW相成分である電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとに基づいて算出されるセンサ相方向d軸補正値id_crrおよびセンサ相方向q軸補正値iq_crrをdq軸平面上にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出している。
このように、交流電動機2の回転に伴って変化する情報であるセンサ相方向d軸補正値id_crrおよびセンサ相方向q軸補正値iq_crrを用いてd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを算出しているので、W相電流検出値iw_snsに加え、残りの1次元部分を補い、2次元量を精度よく推定し、2次元上のベクトル制御を高精度に行うことができる。これにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを精度よく推定できるので、従来技術に比べ、1相制御における応答性をより向上することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第10実施形態)
第10実施形態は、第9実施形態の変形例である。
第10実施形態による電流推定部40を図24に示す。第9実施形態では、センサ相方向の補正ベクトル(Δid、Δiq)をdq軸平面上にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estへのd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqへの収束性を高めていた。換言すると、第9実施形態では、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをセンサ相であるW相の方向に補正していた。本実施形態では、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estのd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqへの収束性を高めるべく、センサ相に直交する方向にも補正している。
詳細には、図24に示すように、電流推定部40は、第9実施形態の構成に加え、直交方向補正値算出部468を有している。
本実施形態では、センサ相方向補正値算出部464にてセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)を算出する。また、減算器465にて、遅延素子467を経由してフィードバックされた前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対し、センサ相方向d軸補正値id_crr(n)を減算し、W相方向に補正されたd軸電流暫定推定値id_est’(n)を算出する。同様に、減算器465にて、遅延素子467を経由してフィードバックされた前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対し、センサ相方向q軸補正値iq_crr(n)を減算し、W相方向に補正されたq軸電流暫定推定値iq_est’(n)を算出する。d軸電流暫定推定値id_est’(n)およびq軸電流暫定推定値iq_est’(n)は、第9実施形態のd軸電流推定値id_est(n)およびq軸電流推定値iq_est(n)と同様である。
直交方向補正値算出部468では、センサ相と一致するα軸に直交する成分であるβ軸推定誤差Δiβを式(22)により演算する。また、式(23)により、β軸推定誤差Δiβを用い、dq変換により直交方向d軸補正値id_crr_β(n)および直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)を演算する。
減算器469では、d軸電流暫定推定値id_est’(n)から直交方向d軸補正値id_crr_β(n)を減算し、d軸電流推定値id_est(n)を演算する。また、q軸電流暫定推定値iq_est’(n)から直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)を減算し、q軸電流推定値iq_est(n)を演算する。
Figure 2014143896
ここで、本実施形態における電流推定処理を表した漸化式を式(24)に示す。
Figure 2014143896
また、式(24)に示す漸化式をベクトル図で表現すると、図25のようになる。図25では、センサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)と、直交方向d軸補正値id_crr_β(n)および直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)との合成ベクトルを「補正ベクトル(Δid、Δiq)」と表している。
図25に示すように、本実施形態の電流推定部40では、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_est(n−1)およびq軸電流推定値iq_est(n−1)のセンサ相成分である電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとに基づいて算出されるセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)と、直交方向d軸補正値id_crr_β(n)および直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)との合成ベクトルである補正ベクトル(Δid、Δiq)を、dq軸平面上にて積算することにより、d軸電流推定値id_est(n)およびq軸電流推定値iq_est(n)を算出している。換言すると、本実施形態では、前回の演算で算出されたd軸電流推定値id_est(n−1)およびq軸電流推定値iq_est(n−1)に対し、dq軸平面上にて補正ベクトル(Δid、Δiq)を積算している、ということである。
これにより、交流電動機2の回転に伴って回転するセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)およびセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)と、直交方向d軸補正値id_crr_β(n)および直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)とを用いることにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを精度よく演算することができ、上記第9実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、センサ相方向d軸補正値id_crrおよびセンサ相方向q軸補正値iq_crrと、直交方向d軸補正値id_crr_βおよび直交方向q軸補正値iq_crr_βとの合成ベクトルが「補正ベクトル」に対応する。また、前回のd軸電流推定値id_est(n−1)に対し、減算器465にてセンサ相方向d軸補正値id_crr(n)を減算し、減算器469にて直交方向d軸補正値id_crr_β(n)を減算するとともに、前回のq軸電流推定値iq_est(n−1)に対し、減算器465にてセンサ相方向q軸補正値iq_crr(n)を減算し、減算器469にて直交方向q軸補正値iq_crr_β(n)を減算することが、「補正ベクトルをdq軸平面上にて積算する」ことに対応する。
(第11実施形態)
上記実施形態では、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixがフィードバックされ、フィードバックされるd軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixおよびd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいてd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が演算される「電流フィードバック制御方式」を中心に説明した。
電流フィードバック制御方式では、トルク脈動を低減できる反面、特開2010−124544に開示されているように、取り得る電圧利用率が低い。そこで本実施形態では、図26に示すように、電圧利用率を高めるべく、「トルクフィードバック制御方式」を採用する。
本実施形態におけるトルクフィードバック制御方式は、例えば矩形波制御モードとして実現される。矩形波制御モードでは、電流一周期内でハイレベル期間およびローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分を交流電動機2に印加する。これにより、電圧利用率を過変調PWM制御モードよりもさらに高めることができる。
図26に基づき、本実施形態の制御部16の詳細について説明する。
制御部16は、トルク推定部81、減算器82、PI演算部83、矩形波発生器84、信号発生器85、電流検出部30、電流推定部40、異常判定部50、回転数演算部60、変動量演算部61、および、切替判定部65等を有する。
トルク推定部81は、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixに基づき、マップまたは数式等を用いてトルク推定値trq_estを演算する。演算されたトルク推定値trq_estは、減算器82にフィードバックされる。
減算器82は、トルク推定部81からフィードバックされるトルク推定値trq_estとトルク指令値trq*との差であるトルク偏差Δtrqを算出する。
PI演算部83は、トルク推定値trq_estをトルク指令値trq*に追従させるべく、トルク偏差Δtrqがゼロに収束するように、電圧指令値としての電圧指令位相vφをPI演算により算出する。
矩形波発生器84は、電圧指令位相vφと電気角θeとに基づいて矩形波を発生し、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*を出力する。
信号発生器85は、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、W相電圧指令値vw*、および、インバータ11に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づき、インバータ11のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係る駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを演算する。
そして、駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ11のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。
矩形波制御モードでは、電圧指令の演算にd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いていない。そのため、電流推定部40におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算として、第8実施形態〜第10実施形態にて説明したd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いない方法を採用することが望ましい。また、電圧指令位相vφの演算には用いないが、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を別途演算し、電流推定部40におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算として、第1実施形態にて説明したd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*を用いる方法を採用してもよい。
また、切替判定部65における判定処理は、第1実施形態と同様とする。
ここで、図27に示すフローチャートに基づき、本実施形態における駆動制御処理を説明する。
図27のフローチャートにおいて、S101〜S111は図7と同様であり、図7中のS112〜S114に替えてS151〜S154となっている点が異なっているので、ここでは、S151〜S154について説明する。
S109にて否定判断された場合、または、S111に続いて移行するS151では、トルク推定部81にて、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixに基づき、トルク推定値trq_estを演算する。
S152では、トルク指令値trq*、および、フィードバックされるトルク推定値trq_estに基づき、減算器82にてトルク偏差Δtrqを算出し、トルク偏差Δtrqがゼロに収束するように、PI演算部83にてPI演算により電圧指令位相vφを演算する。
S153では、矩形波発生器84にて、電圧指令位相vφに基づき、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を演算する。
S154では、信号発生器85にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ入力電圧VHに基づき、駆動信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ11へ出力する。
本実施形態では、トルク推定値trq_estを演算するトルク推定部81をさらに備える。
また、PI演算部83では、フィードバックされるトルク推定値trq_est、および、交流電動機2の駆動に係るトルク指令値trq*に基づき、電圧指令位相vφを演算する。
本実施形態では、トルクフィードバック制御方式を採用し、矩形波制御とすることにより、電圧利用率を高めることができる。なお、トルクフィードバック制御方式について、フィードバックするトルク推定値trq_estは、d軸電流確定値id_fixおよびq軸電流確定値iq_fixから推定されるものであるため、広義での「電流フィードバック制御」と捉えてもよい。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、制御部16が、制御部15と同様、各手段を構成する。以下、対応関係については第1実施形態と異なる点について述べる。
トルク推定部81が「トルク推定手段」を構成し、PI演算部83が「電圧指令値演算手段」を構成する。
また、図27中のS151が「トルク推定手段」の機能としての処理に相当し、S152が「電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当する。
さらに、トルク指令値trq*が「指令値」および「トルク指令値」に対応し、電圧指令位相vφが「電圧指令値」に対応する。
(第12実施形態)
第12実施形態は、切替判定部65における処理が第11実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。
図28に示すように、本実施形態では、回転数変動量ΔNに加え、電圧指令位相vφが急変したか否かに基づいて、急変状態か否かを判定している。すなわち本実施形態では、演算結果としての電圧指令位相vφが急変していなければ、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwも急変せず、1相制御でも十分に応答できるとみなせるので、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを用いた1相制御としても差し支えない。
本実施形態による駆動制御処理は、図14中のS112〜S114を図27中のS151〜S154に置き換えたものと略同様である。
本実施形態では、回転数Nmgが急変したと判断された場合(S107:YES)に移行するS124では、電圧指令位相vφが急変したか否かを判断する。電圧指令位相vφの急変は、回転数Nmg等と同様、前回値と今回値との差や、所定期間内の最大値と最小値との差や、移動平均値など、どのような値に基づいて判断してもよい。電圧指令位相vφが急変していないと判断された場合(S124:NO)、急変状態ではないとみなし、S108へ移行し1相制御とする。電圧指令位相vφが急変したと判断された場合(S124:YES)、急変状態であるとみなし、S111へ移行し、2相制御とする。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第13実施形態)
第13実施形態は、切替判定部65における処理が第11実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。
図29に示すように、本実施形態では、第4実施形態と同様、回転数変動量ΔNに加え、トルク指令値trq*が急変したか否かに基づき、急変状態か否かを判断している。
本実施形態による駆動制御処理は、図12中のS112〜S114を図27中のS151〜S154に置き換えたものと同様である。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(他の実施形態)
(ア)上記第2実施形態〜第5実施形態、第12実施形態および第13実施形態では、急変状態の判定に、交流電動機の回転数に加え、(1)d軸電流指令値とd軸電流検出値との差およびq軸電流指令値とq軸電流検出値との差、(2)d軸電流指令値およびq軸電流指令値、(3)トルク指令値、(4)d軸電圧指令値およびq軸電圧指令値、または、(5)電圧指令位相を用いていた。他の実施形態では、急変状態の判定に、交流電動機の回転数に加え、(1)〜(5)の全てまたは一部を組み合わせて用いてもよい。(1)〜(5)の全てを組み合わせた場合を例に、フローチャートについて言及しておくと、図7のS107にて肯定判断された場合、S121〜S124の判断ステップを追加し、肯定判断された場合にはS111へ移行し、否定判断された場合にはS108へ移行する。また、追加したS121〜S124において、全てで否定判断された場合にS111へ移行するように構成してもよい。また、S121〜S124のうちの複数を組み合わせる場合、判断の順番はどのようであってもよい。
(イ)上記第6実施形態のように、2相制御を所定期間継続する構成は、どの実施形態と組み合わせてもよい。
また、上記第7実施形態のように、d軸電流検出値およびq軸電流検出値と、d軸電流推定値およびq軸電流推定値とについて、常時演算せず、d軸電流検出値およびq軸電流検出値、または、d軸電流推定値およびq軸電流推定値の一方を演算する期間がある構成は、上記第2実施形態以外のどの実施形態と組み合わせてもよい。なお、第2実施形態は、1相制御中もd軸電流検出値およびq軸電流検出値を演算する必要があるので、組み合わせることはできない。
(ウ)上記第1実施形態では、電流推定部におけるd軸電流推定値およびq軸電流推定値の演算にd軸電流指令値およびq軸電流指令値を用いていた。ここで、d軸電流指令値およびq軸電流指令値の更新周期は、各相の電流検出周期や電圧指令値の演算周期よりも長い場合がある。このような場合には、d軸電流推定値およびq軸電流推定値の演算に用いるd軸電流指令値およびq軸電流指令値を高速更新したり、LPF処理したりするようにしてもよい。
(エ)上記実施形態の電流推定部のゼロクロス補間部におけるゼロクロス補間方法は、上記実施形態で説明した以外の方法であってもよいし、必要に応じてゼロクロス補間を行わなくてもよい。
なお、ゼロ割りに関しては、式(15)において離散系の影響により推定値が意図しない値で算出されるのを防ぐため、推定係数iv_kp、或いは推定係数iv_kp内の{1/tan(θx)}項に制限値を設けておくことでも対策できる。また、式(15)を制御部15に実装する場合は、上述のように推定係数iv_kp、或いは推定係数iv_kp内の{1/tan(θx)}項をマップ化しておくことも有効であり、その場合、マップ上で制限値を設けておくことでも対策できる。
(オ)上記実施形態では、「2相制御電流値」、「1相制御電流値」、「電流確定値」、「電圧指令値」、「電流指令値」は、いずれもdq軸上のものについて説明したが、電流フィードバック制御に利用可能な値であれば、各相の値や、その他の軸に基づくものであってもよい。また、電流推定値は、第1相の電流検出値、および、回転角検出値に基づいて算出されていればどのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。さらにまた、電圧指令値は、交流電動機の駆動に係る指令値(例えば電流指令値やトルク指令値)、および、電流確定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。また、電圧指令値は、電圧値そのものに係る指令に限らず、トルクフィードバック制御方式にて用いる電圧指令位相、或いは電圧指令の振幅等、インバータに印加する電圧に係る指令値であればどのような値としてもよい。
上記実施形態では、「交流電動機の駆動に係る指令値」は、電流フィードバック制御方式では電流指令値であり、トルクフィードバック制御方式ではトルク指令値である。他の実施形態では、「交流電動機の駆動に係る指令値」は、交流電動機の駆動に係る指令値であれば、どのようなものであってもよい。
また、例えば電圧指令値の演算にはトルク指令値を用い、急変判定には電流指令値を用いる、といった具合に、電圧指令値演算に用いる指令値と急変判定に用いる指令値とは、必ずしも一致していなくてもよい。
(カ)第1実施形態〜第10実施形態では、電圧指令値は電流フィードバック制御方式にて演算される。第11実施形態〜第13実施形態では、電圧指令値はトルクフィードバック方式にて演算される。他の実施形態では、交流電動機の印加電圧を制御するインバータは、電流フィードバック制御がなされる制御方法であれば、どのような方法で制御されてもよい。また、第1実施形態〜第10実施形態にて説明した電流フィードバック制御方式と、第11実施形態〜第13実施形態にて説明したトルクフィードバック方式とを、交流電動機の回転数やトルク等に応じ、適宜切り替えてもよい。
(キ)上記実施形態では、第1相がW相であり、第2相がV相である例について説明した。他の実施形態では、第1相は、U相、V相、W相のいずれとしてもよく、第2相は、第1相以外のどちらの相としてもよい。
(ク)上記実施形態では、電流センサが3相のうちの2相に設けられている例について説明した。他の実施形態では、電流センサが3相に設けられており、いずれか1相にて異常が生じており、異常が生じていない2相で制御を行う場合において、上記駆動制御処理を行うようにしてもよい。その場合、異常が生じていない2相のうちの一方を第1相とみなし、他方を第2相とみなせばよい。なお、3相のうちの1相に生じた異常の検出方法や、異常が生じた相の特定方法は、どのような方法であってもよい。
(ケ)上記実施形態では、1相制御中には常に電流センサの異常検出を行っていた。他の実施形態では、1相制御中における電流センサの異常検出を省略してもよい。また、異常検出を駆動制御処理とは別処理としてもよい。さらにまた、異常検出処理は、駆動制御処理とは異なる頻度で行われるようにしてもよい。
上記実施形態では、W相電流検出値に基づいて算出されたV相電流推定値と、V相電流検出値との比較結果に基づき、W相電流センサおよびV相電流センサの少なくとも一方に異常が生じているか否かを判定していた。
他の実施形態では、V相電流検出値に基づいて算出されたW相電流推定値と、W相電流検出値との比較結果に基づき、W相電流センサおよびV相電流センサの少なくとも一方に異常が生じているかを判定するようにしてもよい。すなわち、「第2の電流検出値に基づいて推定される第1相電流推定値と、第1の電流検出値との比較結果に基づき、第1の電流センサおよび第2の電流センサの少なくとも一方に異常が生じているか否かを判定する」ようにしてもよい、ということである。
この例では、交流電動機の駆動を制御するための電流センサを第1相であるW相に設けられるW相電流センサとし、電流センサの異常を検出するための電流センサを第2相であるV相に設けられるV相電流センサとしている、といえる。換言すると、交流電動機の駆動制御用の電流センサと、異常検出用の電流センサとを明確に区別している、ということである。駆動制御用の電流センサと異常検出用の電流センサとが区別されていない場合、高速かつ精密にフィードバック制御がなされるシステムでは、所望の正弦波電流となるように制御されるため、あたかも電流センサに異常がないようにみえてしまう「電流フィードバックの干渉」が起こり得る。駆動制御用の電流センサと異常検出用の電流センサとが明確に区別され、1相制御時にフィードバックされる1相制御電流値の演算に用いられていないV相電流検出値に基づいてW相電流推定値を算出すれば、算出されるW相電流推定値は、電流フィードバックの干渉を受けない。このように、異常検出用の電流センサを電流フィードバックループから独立させれば、電流フィードバックの干渉が生じず、適切に電流センサの異常を検出することができる。
(コ)上記実施形態では、回転角センサは電気角θeを検出し、制御部へ出力した。他の実施形態では、回転角センサは機械角θmを検出し、制御部へ出力し、制御部の内部にて電気角θeに換算してもよい。また、電気角θeに替えて、機械角θmを「回転角検出値」としてもよい。さらにまた、回転数Nmgは、機械角θmに基づいて算出してもよい。
(サ)上記実施形態では、交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能および発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たない電動機であってもよい。
また、交流電動機と接続されるエンジンを設け、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように交流電動機を構成してもよいし、エンジンの動力を利用して発電機として動作するようにしても良い。また、交流電動機を複数設けてもよいし、エンジンや複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
(シ)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を1組設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を2組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
2・・・交流電動機
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
11・・・インバータ
12・・・W相電流センサ(第1の電流センサ)
13・・・V相電流センサ(第2の電流センサ)
14・・・回転角センサ
15、16・・・制御部(第1の電流取得手段、第2の電流取得手段、回転角取得手段、2相制御電流値演算手段、1相制御電流値演算手段、回転数演算手段、変動量演算手段、急変判定手段、切替手段、電圧指令値演算手段、他相電流推定手段、異常判定手段、トルク推定手段)

Claims (13)

  1. インバータ(11)によって印加電圧が制御される3相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
    前記交流電動機のいずれか1相である第1相に設けられる第1の電流センサ(12)から第1の電流検出値を取得する第1の電流取得手段(15、16)と、
    前記交流電動機の前記第1相以外の1相である第2相に設けられる第2の電流センサ(13)から第2の電流検出値を取得する第2の電流取得手段(15、16)と、
    前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(15、16)と、
    前記第1の電流検出値、前記第2の電流検出値、および、前記回転角検出値に基づき、2相制御電流値を演算する2相制御電流値演算手段(30)と、
    前記第1の電流検出値、および、前記回転角検出値に基づき、1相制御電流値を演算する1相制御電流値演算手段(40)と、
    前記回転角検出値に基づき、前記交流電動機の回転数を演算する回転数演算手段(60)と、
    前記回転数の変動量である回転数変動量を演算する変動量演算手段(61)と、
    前記回転数変動量に基づき、急変状態か否かを判定する急変判定手段(65)と、
    前記急変状態でないと判定された場合、電流確定値として前記1相制御電流値を選択し、前記急変状態であると判定された場合、前記電流確定値として前記2相制御電流値を選択する切替手段(65)と、
    前記電流確定値、および、前記交流電動機の駆動に係る指令値に基づき、前記インバータに印加する電圧に係る電圧指令値を演算する電圧指令値演算手段(23、83)と、
    を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記急変判定手段は、前記回転数変動量に加え、前記交流電動機の駆動に係る電流指令値と前記2相制御電流値との差に基づき、前記急変状態か否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記急変判定手段は、前記回転数変動量に加え、前記交流電動機の駆動に係る電流指令値に基づき、前記急変状態か否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記急変判定手段は、前記回転数変動量に加え、前記交流電動機の駆動に係るトルク指令値に基づき、前記急変状態か否かを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記急変判定手段は、前記回転数変動量に加え、前記電圧指令値に基づき、前記急変状態か否かを判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  6. 前記切替手段は、前記電流確定値として前記2相制御電流値を選択した場合、前記2相制御電流値の選択を所定期間継続することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  7. 前記1相制御電流値演算手段は、前記第1の電流検出値、および、前記回転角検出値に加え、前記交流電動機の駆動に係る電流指令値に基づき、前記1相制御電流値を演算することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  8. 前記第1相に一致する軸をα軸とし、前記α軸に直交する軸をβ軸とすると、
    前記1相制御電流値演算手段は、前記第1の電流検出値に基づいて演算されるα軸電流検出値、および、前記α軸電流検出値の微分値に基づいて推定されるβ軸電流推定値に基づき、前記1相制御電流値を演算することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  9. 前記1相制御電流値演算手段は、前回の演算で算出された前記1相制御電流値の前記第1相の成分である電流基準値と前記第1の電流検出値とに基づいて算出される補正ベクトルをdq軸平面上にて積算することにより前記1相制御電流値を演算することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  10. 前記第1の電流検出値に基づく第2相電流推定値、および、前記第2の電流検出値に基づく第1相電流推定値の少なくとも一方を演算する他相電流推定手段(40)と、
    前記電流確定値として前記1相制御電流値が選択されているとき、前記第1の電流検出値と前記第1相電流推定値との比較結果、および、前記第2の電流検出値と前記第2相電流推定値との比較結果の少なくとも一方に基づき、前記第1の電流センサおよび前記第2の電流センサの少なくとも一方に異常が生じているか否かを判定する異常判定手段(50)と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  11. 前記電圧指令値演算手段(23)は、フィードバックされる前記電流確定値、および、前記交流電動機の駆動に係る電流指令値に基づき、前記電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  12. 前記電流確定値に基づき、トルク推定値を演算するトルク推定手段(81)をさらに備え、
    前記電圧指令値演算手段(83)は、フィードバックされる前記トルク推定値、および、前記交流電動機の駆動に係るトルク指令値に基づき、前記電圧指令値を演算することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
  13. 前記電流確定値に基づき、トルク推定値を演算するトルク推定手段(81)をさらに備え、
    前記電圧指令値演算手段は、
    フィードバックされる前記電流確定値、および、前記交流電動機の駆動に係る電流指令値に基づいて前記電圧指令値を演算する電流フィードバック制御方式と、
    フィードバックされる前記トルク推定値、および、前記交流電動機の駆動に係るトルク指令値に基づいて前記電圧指令値を演算するトルクフィードバック制御方式と、
    を切り替え可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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