以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
図1は、電動自動車用モータ駆動システム1の全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システム1は、バッテリ10の電力を用いて走行用モータ40を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。尚、電動自動車は、電力を用いて走行用モータ40を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動自動車は、典型的には、動力源がエンジンと走行用モータ40であるハイブリッド自動車(HV)や、動力源が走行用モータ40のみである電気自動車を含む。
モータ駆動システム1は、図1に示すように、バッテリ10、DC/DCコンバータ20、インバータ30、走行用モータ40、及び、半導体駆動装置50を備える。
バッテリ10は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子から構成されてもよい。
DC/DCコンバータ20は、双方向のDC/DCコンバータ(可逆チョッパ方式の昇圧DC/DCコンバータ)であってよい。DC/DCコンバータ20は、例えば200Vから650Vへの昇圧変換、及び、650Vから200Vへの降圧変換が可能であってよい。DC/DCコンバータ20のリアクトル(コイル)L1の入力側と負極ラインとの間には平滑用コンデンサC1が接続されてよい。
図示の例では、DC/DCコンバータ20は、2つのスイッチング素子Q22,Q24と、リアクトルL1とを有する。2つのスイッチング素子Q22,Q24は、インバータ30の正極ラインと負極ラインとの間に互いに直列に接続される。リアクトルL1は、バッテリ10の正極側に直列に接続される。リアクトルL1は、出力側が2つのスイッチング素子Q22,Q24の接続部に接続される。
図示の例では、DC/DCコンバータ20の2つのスイッチング素子Q22,Q24は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。尚、スイッチング素子Q22,Q24は、ダイオード(例えばフリーホイールダイオード)D22,24を外付け素子と用いる通常のIGBTであってもよいし、ダイオードD22,24を内蔵した逆導通IGBT(RC(Reverse Conducting)−IGBT)であってもよい。いずれの場合も、上アームのスイッチング素子Q22のコレクタはインバータ30の正極ラインに接続されており、上アームのスイッチング素子Q22のエミッタは下アームのスイッチング素子Q24のコレクタに接続されている。また、下アームのスイッチング素子Q24のエミッタは、インバータ30の負極ライン及びバッテリ10の負極に接続されている。尚、スイッチング素子Q22、Q24は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
インバータ30は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームから構成される。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q1,Q2の直列接続からなり、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3,Q4の直列接続からなり、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5,Q6の直列接続からなる。また、各スイッチング素子Q1〜Q6のコレクタ−エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD1〜D6が配置される。尚、スイッチング素子Q1〜Q6は、MOSFETのような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
走行用モータ40は、3相の永久磁石モータであり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中点で共通接続されている。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1,Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3,Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5,Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑用コンデンサC2が接続される。尚、走行用モータ40は、電磁石と永久磁石とを組み合わせたハイブリッド型の3相モータであってもよい。
尚、走行用モータ40に加えて、第2の走行用モータ又は発電機が並列で追加されてもよい。この場合、対応するインバータも並列に追加されればよい。
半導体駆動装置50は、DC/DCコンバータ20及びインバータ30を制御する。半導体駆動装置50は、マイクロコンピューターを含むECU(電子制御ユニット)として具現化されてもよい。尚、半導体駆動装置50の各種機能(以下で説明する機能を含む)は、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせにより実現されてもよい。例えば、半導体駆動装置50の各種機能は、特定用途向けASIC(application-specific integrated circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現されてもよい。また、半導体駆動装置50の各種機能は、複数のECUにより協動して実現されてもよい。
DC/DCコンバータ20の制御方法の概要は任意であってよい。典型的には、半導体駆動装置50は、インバータ30の動作(力行又は回生)に応じて、DC/DCコンバータ20を制御する。例えば、半導体駆動装置50は、力行時は、DC/DCコンバータ20の下アームのスイッチング素子Q24のみをオン/オフ切換し(下アームによる片アーム駆動)、バッテリ10の電圧を昇圧してインバータ30側に出力する。この際、下アームのスイッチング素子Q24は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されてもよい。また、回生時は、DC/DCコンバータ20の上アームのスイッチング素子Q22のみをオン/オフ切換し(上アームによる片アーム駆動)、インバータ30側の電圧を降圧してバッテリ10側に出力する。この際、上アームのスイッチング素子Q22は、PWM制御されてよい。また、リアクトルL1を流れる電流が0を跨ぐ際(ゼロクロス時)、半導体駆動装置50は、2つのスイッチング素子Q22,Q24を逆相でオン/オフ駆動してもよい(両アーム駆動)。
インバータ30の制御方法の概要は任意であってよい。典型的には、半導体駆動装置50は、各相のコイルを流れる各相電流が例えば120度ずつ位相がずれた関係の正弦波波形となるように、U相に係る2つのスイッチング素子Q1,Q2をオン/オフ駆動し、V相に係る2つのスイッチング素子Q3,Q4をオン/オフ駆動し、W相に係る2つのスイッチング素子Q5,Q6をオン/オフ駆動する。この際、各相において、相電流が正の領域であるときは上アームのスイッチング素子Q1、Q3,Q5のみをオン/オフ切換(上アームによる片アーム駆動)し、相電流が負の領域であるときは下アームのスイッチング素子Q2、Q4,Q6のみをオン/オフ切換(下アームによる片アーム駆動)することとしてよい。この際、各スイッチング素子Q1〜Q6は、PWM制御されてよい。また、各相において、相電流が0を跨ぐ際(ゼロクロス時)、半導体駆動装置50は、上下アームのスイッチング素子(Q1、Q2;Q3,Q4;Q5,Q6)を逆相でオン/オフ駆動してよい(両アーム駆動)。
図2は、半導体駆動装置50におけるDC/DCコンバータ20の制御ブロック500の一例を示す図である。制御ブロック500は、例えばマイコンで構成されてよい。尚、図2には、DC/DCコンバータ20の制御ブロック500に関連した部(モータ制御部540や走行制御部560)も示されている。尚、モータ制御部540及び走行制御部560は、制御ブロック500を実現するECUにより実現されてもよいし、制御ブロック500を実現するECUとは異なるECUにより実現されてもよい。
尚、ここでは、DC/DCコンバータ20の制御ブロック500について主に説明するが、インバータ30の制御ブロック(モータ制御部540の各機能部)は、以下で説明するDC/DCコンバータ20の制御ブロック500と同様の構成(特に、電流制御部506、電圧制御部508、サンプリングモード設定部512、キャリア生成部513、ゲート信号生成部514、サンプリングタイミング算出部516、及び、駆動モード決定部518等に対応する機能部)を有してよい。但し、モータ制御部540は、モータトルク指令等に基づいてId指令及びIq指令を生成するトルク制御部や、3相と2相間の変換を行う変換部等のような、他の機能部を含んでよい。尚、モータ制御部の基本構成(サンプリングモード設定部512、サンプリングタイミング算出部516、及び、駆動モード決定部518に対応する機能部を除く構成)は、DC/DCコンバータ20の制御ブロック500と同様、任意であってよい。尚、モータ制御部540におけるADCは各相のコイルを流れる各相電流を検出する各電流センサ(図示せず)から検出信号のサンプリングを行う。
走行制御部560は、例えばアクセル開度と車速とに基づいて、モータトルク指令値(目標駆動トルク)を決定し、モータ制御部540に供給してよい。モータ制御部540は、モータトルク指令値や各種センサ値等(例えば、電流センサによる各相電流の検出値やレゾルバによるモータ回転数の検出値)に基づいて、インバータ30のスイッチング素子Q1〜Q6のオン/オフ切換のためのゲート信号(モータゲート信号)を生成してよい。モータゲート信号は、スイッチング素子Q1〜Q6のゲートに印加されてよい。
DC/DCコンバータ20の制御ブロック500は、図2に示すように、フィルタ502、ADC(Analog to Digital Converter)504、電流制御部506、電圧制御部508、モータ目標電圧算出部510、サンプリングモード設定部512、キャリア生成部513、ゲート信号生成部514、サンプリングタイミング算出部516、及び、駆動モード決定部518を含んでよい。
フィルタ502には、リアクトルL1を流れる電流(以下、リアクトル電流ILともいう)を検出する電流センサ(図示せず)から検出信号(アナログ信号)が入力される。フィルタ502は、検出信号をフィルタリングし、ADC504に出力する。
ADC504は、サンプリングタイミング算出部516が生成したサンプリングタイミングに応じて起動してフィルタ502からの検出信号のサンプリングを行い、リアクトル電流ILのサンプリング値(デジタル値)を得る。リアクトル電流ILのサンプリング値は、電流制御部506、サンプリングモード設定部512及び駆動モード決定部518に供給される。
電流制御部506は、ADC504からのリアクトル電流ILのサンプリング値と、電圧制御部508からのリアクトル電流ILの目標値IL*とに基づいて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24を駆動(オン/オフ切換)するためのデューティを算出する。この際、PI(Proportional Integral)制御やPID(Proportional Integral Derivative)制御が利用されてもよい。算出したデューティ(duty)は、ゲート信号生成部514及びサンプリングタイミング算出部516に供給される。尚、リアクトル電流ILの目標値IL*は、電圧制御部508において、モータ目標電圧VH*と、平滑用コンデンサC2の両端の電圧VHの検出値(VHセンサ値)と基づいて算出されてよい。モータ目標電圧VH*は、平滑用コンデンサC2の両端電圧VH(図1参照)の目標値である。モータ目標電圧VH*は、モータ制御部540からのモータ回転数及びモータトルク指令値に基づいて算出されてよい。
サンプリングモード設定部512は、ADC504からのリアクトル電流ILのサンプリング値に基づいて、通常サンプリングモードと、ゼロクロス検知用サンプリングモードとを切り換える。サンプリングモード設定部512は、常態(ゼロクロス付近以外)では通常サンプリングモードを設定し、リアクトル電流ILのサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以下となった場合に、ゼロクロス検知用サンプリングモードを設定してもよい。サンプリングモード設定部512は、ゼロクロス検知用サンプリングモードを設定した後は、後述の如く両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられた際に通常サンプリングモードに復帰させてよい。所定第1閾値Th1は、通常サンプリングモード中のリアクトル電流ILのリプル成分の取りうる幅(リプル幅)の最大値(又はそれに余裕分を付加した値)の半分に対応してもよい。
キャリア生成部513は、所定の周波数の基準信号をキャリア信号として生成する。キャリア信号は、三角波や矩形波の波形を有してよい。以下では、キャリア信号は、三角波の波形を有するものとして説明を続ける。キャリア生成部513は、通常サンプリングモード時と、ゼロクロス検知用サンプリングモード時とで、キャリア周波数を可変させてもよい。例えば、ゼロクロス検知用サンプリングモード時に生成されるキャリア信号のキャリア周波数は、通常サンプリングモード時に生成されるキャリア信号のキャリア周波数よりも大きくてもよい。但し、以下では、キャリア生成部513は、通常サンプリングモード時と、ゼロクロス検知用サンプリングモード時とで、キャリア周波数を可変せず、一定のキャリア周波数のキャリア信号を生成するものとする。キャリア信号は、ゲート信号生成部514及びサンプリングタイミング算出部516に供給される。
ゲート信号生成部514は、キャリア生成部513からのキャリア信号と、電流制御部506からのデューティとに基づいて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換のためのゲート信号を生成する。ゲート信号は、スイッチング素子Q22,Q24のそれぞれのゲートに印加される。
サンプリングタイミング算出部516は、キャリア生成部513からのキャリア信号と、電流制御部506からのデューティとに基づいて、リアクトル電流ILのサンプリング(検出)を行うためのサンプリングタイミングを決定し、決定したサンプリングタイミングを示す信号をADC504に送信する。サンプリングタイミング算出部516は、通常サンプリングモード時と、ゼロクロス検知用サンプリングモード時とで、サンプリングタイミングの決定方法を可変する。基本的には、サンプリングタイミング算出部516は、ゼロクロス検知用サンプリングモード時の方が、通常サンプリングモード時よりも、キャリア周波数の1周期当たりのサンプリング回数が増加するような態様で、サンプリングタイミングを決定する。
例えば、通常サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、スイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換周期毎に1回サンプリングが行われるように決定される。この際、サンプリングタイミングは、そのオン/オフ期間におけるリアクトル電流ILの電流値の平均値がサンプリングされるように決定される。また、ゼロクロス検知用サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、通常サンプリングモード時のサンプリングタイミングに加えて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換タイミングに同期したサンプリングタイミングを含んでよい。サンプリングタイミングの決定方法の一例は図5を参照して後述する。
駆動モード決定部518は、ADC504からのリアクトル電流ILのサンプリング値に基づいて、駆動モードを片アーム駆動と両アーム駆動の間で切り換える。この切換方法の詳細については後述する(但し、インバータ30に関する切換方法について後述するが、DC/DCコンバータ20についても同様である)。
図3は、キャリア信号とデューティとの関係で切り替わるスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ状態の時系列の一例を示す図であり、図3(A)は、上段から、キャリア信号とデューティの関係、力行時におけるスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ状態、及び、リアクトル電流ILの波形の一例を概略的に示す図であり、図3(B)は、上段から、キャリア信号とデューティの関係、回生時におけるスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ状態、及び、リアクトル電流ILの波形の一例を概略的に示す図である。
力行時(ゼロクロス時を除く)においては、図3(A)に示すように、下アームのスイッチング素子Q24のみがオン/オフ切換され、上アームのスイッチング素子Q22はオフ状態に維持されてよい(下アームによる片アーム駆動)。図3(A)に示す例では、下アームのスイッチング素子Q24は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを超えると、オンからオフに切り換えられ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、オフからオンに切り換えられる。
下アームのスイッチング素子Q24がオンすると、バッテリ10の正極側からリアクトルL1及びスイッチング素子Q24を通ってバッテリ10の負極側へと戻る電流ループが形成され、リアクトル電流ILが上昇する。この際、リアクトル電流ILは、図3(A)に示すように、一定の傾きで上昇する。次に下アームのスイッチング素子Q24がオフすると、リアクトルL1を流れ続けようとする電流は、上アームのダイオードD22を通ってインバータ30側に流れる。この際、リアクトル電流ILは、図3(A)に示すように、一定の傾きで減少する。このようにして、力行時は、リアクトル電流ILは、下アームのスイッチング素子Q24のオン/オフ切換毎に、正の領域で傾きを変化させつつ増減する。尚、リアクトル電流ILの増減は、デューティに依存し、デューティが大きいほど下アームのスイッチング素子Q24のオン期間が長くなりリアクトル電流ILが増加する。
回生時(ゼロクロス時を除く)においては、図3(B)に示すように、上アームのスイッチング素子Q22のみがオン/オフ切換され、下アームのスイッチング素子Q24はオフ状態に維持されてよい(上アームによる片アーム駆動)。同様に、図3(B)に示す例では、上アームのスイッチング素子Q22は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを超えると、オンからオフに切り換えられ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、オフからオンに切り換えられる。
上アームのスイッチング素子Q22がオンすると、インバータ30の正極側から上アームのスイッチング素子Q22及びリアクトルL1を通ってバッテリ10の正極へと電流が流れる。この際、リアクトル電流ILは、図3(B)に示すように、一定の傾きで減少する(負方向では増加する)。次に上アームのスイッチング素子Q22がオフすると、リアクトルL1を流れ続けようとする電流は、下アームのダイオードD24を通ってバッテリ10の正極へと流れる。この際、リアクトル電流ILは、図3(B)に示すように、一定の傾きで上昇する。このようにして、回生時は、リアクトル電流ILは、上アームのスイッチング素子Q22のオン/オフ切換毎に、負の領域で傾きを変化させつつ増減する。尚、リアクトル電流ILの増減は、デューティに依存し、デューティが大きいほど上アームのスイッチング素子Q22のオン期間が長くなりリアクトル電流ILが減少(負方向に増加)する。
尚、図3に示す例では、デューティは一定であるが、デューティは、キャリア信号の半周期に対応した所定のデューティ設定周期毎に変更(設定)される。この際、デューティは、キャリア信号の山(上側の頂点)と谷(下側の頂点)で変更されてよい。
図4は、両アーム駆動時におけるスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ状態の時系列の一例を示す図である。図4には、上段から、リアクトルL1を流れる電流が0を跨ぐ際(ゼロクロス時)のリアクトル電流ILの波形、及び、スイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ状態の一例を概略的に示されている。
両アーム駆動時には、2つのスイッチング素子Q22,Q24は、適切なデットタイム(図示せず)を持ちつつ、図4に示すように、逆相でオン/オフ駆動される。両アーム駆動は、例えばリアクトル電流ILがゼロを跨ぐゼロクロス時に実行される。尚、図4に示す例は、リアクトルL1が正から負へと移行するとき(即ち力行から回生への移行時)におけるゼロクロス時に関するものであるが、リアクトルL1が負から正へと移行するとき(即ち回生から力行への移行時)におけるゼロクロス時の場合も同様である。
尚、この両アーム駆動時には、スイッチング素子Q22側では、スイッチング素子Q22がオンする際、スイッチング素子Q24がオンからオフしていることによって電流が上アームのダイオードD22を通って流れていることに起因して、ゲート干渉が生じる。また、スイッチング素子Q24側では、スイッチング素子Q24がオンする際、スイッチング素子Q23がオンからオフしていることによって電流が下アームのダイオードD24を通って流れていることに起因して、ゲート干渉が生じる。かかるゲート干渉による損失は、スイッチング素子Q22及びダイオードD22と、スイッチング素子Q23及びダイオードD23とが、それぞれ、RC−IGBTで構成される場合に特に顕著となる。
図5は、インバータ30のU相のコイルを流れる電流(U相電流)の波形の一例を概略的に示す図である。尚、以下では、代表として、インバータ30のU相のコイルを流れる電流(U相電流)に関して説明するが、V相及びW相についても同様である。
図5には、比較的に誇張してリプル成分が図示されているが、U相電流には、上述したリアクトル電流ILと同様、PWM制御によりリプル成分が乗る。
図6は、インバータ30のU相電流の向きの説明図である。図7(A)は、図5のA部におけるキャリア信号とデューティとの関係で切り替わるスイッチング素子Q1,Q2のオン/オフ状態の時系列の一例を示す図であり、図7(B)は、図5のB部におけるキャリア信号とデューティとの関係で切り替わるスイッチング素子Q1,Q2のオン/オフ状態の時系列の一例を示す図である。
U相電流が正の領域である場合(ゼロクロス時を除く)は、図7(A)に示すように、上アームのスイッチング素子Q1のみがオン/オフ切換され、下アームのスイッチング素子Q2はオフ状態に維持されてよい(上アームによる片アーム駆動)。図7(A)に示す例では、上アームのスイッチング素子Q1は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを超えると、オンからオフに切り換えられ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、オフからオンに切り換えられる。
上アームのスイッチング素子Q1がオンすると、バッテリ10の正極側からリアクトルL1、スイッチング素子Q22及び上アームのスイッチング素子Q1を通ってU相のコイルへと電流が流れ、図7(A)に示すように、正方向のU相電流Iu1が上昇する。次に上アームのスイッチング素子Q1がオフすると、U相のコイルを流れ続けようとする電流は、下アームのダイオードD4を通ってU相のコイルへ流れる。この際、正方向のU相電流Iu1は、図7(A)に示すように、一定の傾きで減少する。このようにして、正方向のU相電流Iu1は、上アームのスイッチング素子Q1のオン/オフ切換毎に、正の領域で傾きを変化させつつ増減する。尚、正方向のU相電流Iu1の増減は、デューティに依存し、デューティが大きいほど上アームのスイッチング素子Q1のオン期間が長くなり正方向のU相電流Iu1(振幅)が増加する。
U相電流が負の領域である場合(ゼロクロス時を除く)は、図7(B)に示すように、下アームのスイッチング素子Q2のみがオン/オフ切換され、上アームのスイッチング素子Q1はオフ状態に維持されてよい(下アームによる片アーム駆動)。図7(B)に示す例では、下アームのスイッチング素子Q2は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを超えると、オンからオフに切り換えられ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、オフからオンに切り換えられる。
下アームのスイッチング素子Q2がオンすると、U相のコイルから下アームのスイッチング素子Q2を通ってグランド側に電流が流れ、図7(B)に示すように、負方向のU相電流Iu2が上昇する(ゼロから遠ざかる)。次に下アームのスイッチング素子Q2がオフすると、U相のコイルを流れ続けようとする電流は、上アームのダイオードD3を通って正極側へ流れる。この際、負方向のU相電流Iu2は、図7(B)に示すように、一定の傾きで減少する(ゼロに近づく)。このようにして、負方向のU相電流Iu2は、下アームのスイッチング素子Q2のオン/オフ切換毎に、負の領域で傾きを変化させつつ増減する。尚、負方向のU相電流Iu2の増減は、デューティに依存し、デューティが大きいほど下アームのスイッチング素子Q2のオン期間が長くなり負方向のU相電流Iu2(振幅)が増加する。
スイッチング素子Q1,Q2は、U相電流が負の領域から正の領域に移行するゼロクロス時(図5のY2参照)、及び、U相電流が正の領域から負の領域に移行するゼロクロス時(図5のY1参照)に、U相電流の歪の発生を防止するために、両アーム駆動される。この際、スイッチング素子Q1,Q2は、適切なデットタイムを持ちつつ、逆相でオン/オフ駆動される。
尚、この両アーム駆動時には、スイッチング素子Q1側では、スイッチング素子Q1がオンする際、スイッチング素子Q2がオンからオフしていることによって電流が上アームのダイオードD3を通って流れていることに起因して、ゲート干渉が生じる。また、スイッチング素子Q2側では、スイッチング素子Q2がオンする際、スイッチング素子Q1がオンからオフしていることによって電流が下アームのダイオードD4を通って流れていることに起因して、ゲート干渉が生じる。かかるゲート干渉による損失は、スイッチング素子Q1及びダイオードD3と、スイッチング素子Q2及びダイオードD4とが、それぞれ、RC−IGBTで構成される場合に特に顕著となる。
尚、図6及び図7は、インバータ30の力行時の状態を示しているが、インバータ30の回生時も実質的に同様である。以下では、説明の複雑化を防止するため、インバータ30の力行を前提とするが、インバータ30の回生時に対しても同様に適用可能である。
図8は、サンプリングタイミングの決定方法の一例を示す図である。図8には、キャリア信号と、電流制御部506により算出されるデューティ(duty0、duty1、duty2、duty3)に応じたレベルが示されている。ここでは、一例として、スイッチング素子Q22について説明するが(図3(B)の回生時について説明するが)、スイッチング素子Q24について(図3(A)の力行時について)も同様であってよい。尚、両アーム駆動時には、いずれか一方のスイッチング素子Q22,Q24について同様であってよい。
図8に示す例では、時点t0にて、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを超えて、スイッチング素子Q22がオフし、オフ期間が開始する。時点t1には、キャリア信号の山が発生することに応じて、デューティがduty1からduty2に変更(設定)される。時刻t3では、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回り、スイッチング素子Q22がオンし、時点t1からのオフ期間が終了する(オン期間が開始する)。時刻t4では、キャリア信号の谷が発生することに応じて、デューティがduty2からduty3に変更(設定)される。
第1サンプリングタイミングは、上述の如く、オン/オフ期間におけるリアクトル電流ILの電流値の平均値がサンプリングされるように決定される。具体的には、第1サンプリングタイミングは、オン/オフ期間における中間時点に設定される。図8に示す例では、今回のオフ期間(時点t0から時点t3までの期間)におけるオフ期間の中間時点は、時刻t2である。図8には、キャリア信号上における通常サンプリングモード時のサンプリングタイミングに対応した位置が白丸で示されている。オフ期間の開始時(時点t0)からキャリア信号の山までの時間を"a"とし、キャリア信号の山からオフ期間の終了時(時点t3)までの時間を"b"とすると、通常サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、オフ期間の開始時(時点t0)から時間"(a+b)/2"が経過した時点に設定される。以下、通常サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、「第1サンプリングタイミング」とも称する。
尚、オン/オフ期間における中間時点は、スイッチング素子Q22,Q24のゲート信号の反転タイミングに基づく中間時点であってもよいし、スイッチング素子Q22,Q24の導通状態に基づく厳密な中間時点であってもよい。また、第1サンプリングタイミングは、オン/オフ期間における中間時点に対して前後にオフセットされてもよい。
他方、ゼロクロス検知用サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、上述の如く、第1サンプリングタイミングに加えて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換タイミングに同期したサンプリングタイミングを含む。DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換タイミングに同期したサンプリングタイミングとは、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回るタイミング、及び、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回るタイミングである。図8に示す例では、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回るタイミング、及び、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回るタイミングは、それぞれ、時点t0と時点t3である。従って、ゼロクロス検知用サンプリングモード時のサンプリングタイミングは、時点t0と時点t2と時点t3となる。
以下、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換タイミングに同期したサンプリングタイミングのうち、リアクトル電流ILが極大値となるサンプリングタイミングを、「第2サンプリングタイミング」とも称し、リアクトル電流ILが極小値となるサンプリングタイミングを、「第3サンプリングタイミング」とも称する。例えば、図3(A)に示す例では、スイッチング素子Q24がオフするタイミングが第2サンプリングタイミングに対応し、スイッチング素子Q24がオンするタイミングが第3サンプリングタイミングに対応する。尚、ここでいう「極大値」及び「極小値」は、リプル成分による「極大値」及び「極小値」(即ち、1キャリア周期毎の「極大値」及び「極小値」)を意味し、波形全体として「最大値」及び「最小値」を意味しない。
尚、図8では、リアクトル電流ILのサンプリングタイミングの決定方法について説明したが、インバータ30の各相のコイルを流れる電流のサンプリングタイミングの決定方法について同様であってよい。
以下では、一例として、主にインバータ30について、通常サンプリングモード及びゼロクロス検知用サンプリングモード間の切換、及び、片アーム駆動及び両アーム駆動の切換等について説明する。しかしながら、DC/DCコンバータ20について(スイッチング素子Q22,Q24について)も同様であってよい。また、一例として、主にインバータ30のU相を代表して説明するが、V相及びW相についても同様である。
図9は、U相電流が正から負に向かって減少する場合に半導体駆動装置50(モータ制御部540)により実行されるインバータ30の制御処理の一例を示すフローチャートである。図9に示す処理ルーチンは、U相電流が正領域にあり且つ片アーム駆動中に所定周期毎に繰り返し実行されてよい。
ステップ900では、通常サンプリングモード中のU相電流Iuのサンプリング値が所定第1閾値Th1以下となったか否かを判定する。尚、所定第1閾値Th1については、通常サンプリングモード中のU相電流のリプル成分の取りうる幅(リプル幅)の最大値(又はそれに余裕分を付加した値)の半分に対応してもよい。U相電流Iuのサンプリング値が所定第1閾値Th1以下となった場合は、ステップ902に進み、それ以外の場合は、U相電流Iuのサンプリング値が所定第1閾値Th1以下となるのを待機する状態となる。
ステップ902では、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードにモードを移行する。
ステップ904では、U相電流Iuの極小値が得られる次の第3サンプリングタイミングにおいて、ゼロを下回るU相電流Iuの極小値が得られるか否かを予測的に判定する。予測方法は、任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流Iuの複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流Iuの次の極小値を予測し、当該予測した極小値がゼロを下回るか否か判定してもよい。リプル幅は、連続する第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングで得られる2つのサンプリング値の差により算出されてもよいし、連続する第1サンプリングタイミングと第2サンプリングタイミング又は第3サンプリングタイミングとで得られる2つのサンプリング値の差の2倍により算出されてもよい。ゼロを下回るU相電流Iuの極小値が得られると予測される場合は、ステップ906に進み、それ以外は待機状態となる。
尚、ステップ904では、次の3サンプリングタイミングにおいてゼロを下回るU相電流Iuの極小値が得られるか否かを予測的に判定しているが、次の第3サンプリングタイミングにおいてゼロよりも大きい所定第2閾値Th2(<所定第1閾値Th1)を下回るU相電流Iuの極小値が得られるか否かを予測的に判定してもよい。所定第2閾値Th2は、ゼロよりも僅かに大きい値であってよい(図10参照)。
ステップ906では、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換える。片アーム駆動から両アーム駆動への切換は、上記ステップ904の判定と同時に実現されてもよいし、判定後の最も早い切換可能なタイミングで実現されてもよい。
ステップ908では、ゼロクロス検知用サンプリングモード中のU相電流Iuの極大値のサンプリング値がゼロを下回ったか否かを判定する。U相電流Iuの極大値がゼロを下回った場合は、ステップ910に進み、それ以外は待機状態となる。
ステップ910では、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換える。これに伴い、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードに復帰する。
尚、図9に示す処理において、ステップ908では、次の第2サンプリングタイミングにおいてゼロを下回るU相電流Iuの極大値が得られるか否かを予測的に判定してもよい。予測方法は、任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流Iuの複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流Iuの次の極大値を予測し、当該予測した極大値がゼロを下回るか否か判定してもよい。リプル幅は、連続する第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングで得られる2つのサンプリング値の差により算出されてもよいし、連続する第1サンプリングタイミングと第2サンプリングタイミング又は第3サンプリングタイミングとで得られる2つのサンプリング値の差の2倍により算出されてもよい。この場合、ゼロを下回るU相電流Iuの極大値が得られると予測される場合は、ステップ910に進み、それ以外は待機状態となる。この場合、ステップ910では、サンプリングモードから通常サンプリングモードへの復帰は直ぐに実現される一方、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、それ以降のサンプリングタイミングで得られたサンプリング値がゼロを下回った時点以降に実現されてもよい。
図10は、U相電流が正から負に向かって減少する場合における本実施例による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)は、U相電流Iuの波形の一例を示し、(B)は、サンプリングモードの変化を示し、(C)は、片アーム駆動と両アーム駆動との間の切換態様の一例を示す。
図10においては、リプル成分を含むU相電流が、正から負に向かって減少する方向でゼロクロスする場合(図5のY1参照)が示されている。尚、リプル成分は、上述の如くスイッチング素子Q1,Q2のオン/オフ切換により発生する(図7参照)。U相電流の波形上には、白丸にて、第1サンプリングタイミングが示され、白□及び黒■にて、第3及び第2サンプリングタイミングがそれぞれ示されている。即ち、白□は、U相電流の極小値が表れる第3サンプリングタイミングに対応し、黒■は、U相電流の極大値が表れる第2サンプリングタイミングに対応する。
図10に示す例では、片アーム駆動状態であり、且つ、通常サンプリングモード中の状態において、第1サンプリングタイミングT1にて、U相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以内(U相電流のサンプリング値がTh1以下)となる。従って、この第1サンプリングタイミングT1で、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードに切り替わる。ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、上述の如く、通常サンプリングモード時に比べて1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングが増加される(第1サンプリングタイミングに第2及び第3サンプリングタイミングが追加される)。
ゼロクロス検知用サンプリングモードが開始されると、U相電流の極小値(白□)がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス開始タイミング)T2が予測される。予測方法は任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流の複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流の次の極小値を予測し、当該予測した極小値がゼロを下回るか否か判定してもよい。具体的には、例えば第2サンプリングタイミングT4及び第3サンプリングタイミングT5にてそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅として算出し、次の第2サンプリングタイミングT6で得られるU相電流のサンプリング値から、当該算出したリプル幅を引いた予測値(第3サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを下回るか否か判定してもよい。或いは、第3サンプリングタイミングT5及び第2サンプリングタイミングT6にてそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅として算出し、第2サンプリングタイミングT6で得られるU相電流のサンプリング値から、当該算出したリプル幅を引いた予測値(第3サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを下回るか否か判定してもよい。尚、リプル幅は、第1サンプリングタイミング(白丸参照)でのサンプリング値と、その前後の第3又は第2サンプリングタイミングでのサンプリング値との差を2倍することで予測されてもよい。
U相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回ると判定した場合は、その時点で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。或いは、例えば、第2サンプリングタイミングT6でU相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回ると判定した場合は、図10に示すように、次のサンプリングタイミングT8で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。これにより、U相電流がゼロを跨ぐ前に、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えることができる。
両アーム駆動に切り換えられると、U相電流の極大値がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測される。予測方法は、上述のゼロクロス開始タイミングの予測方法と同様であってよい。U相電流の極大値がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測されると、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられる。これと同時に、ゼロクロス検知用サンプリングモードは、通常サンプリングモードに戻される。尚、ゼロクロス終了タイミングT3が予測された時点でU相電流がゼロより大きい場合は、その時点以後であって、U相電流がゼロより小さくなった時点(例えば次の第1サンプリングタイミング)で両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられてもよい。図10に示す例では、第3サンプリングタイミングT9でU相電流の次の極大値の予測値がゼロを下回ると判定され、その時点で、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードへの切換が実現される一方、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、第3サンプリングタイミングT9の次の第1サンプリングタイミングT10にて実現されている。但し、図10に示す例では、第3サンプリングタイミングT9でU相電流がゼロより小さいので、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードへの切換と同時に実現されてもよい。
図11は、U相電流が負から正に向かって増加する場合に半導体駆動装置50(モータ制御部540)により実行されるインバータ30の制御処理の一例を示すフローチャートである。図11に示す処理ルーチンは、U相電流が負領域にあり且つ片アーム駆動中に所定周期毎に繰り返し実行されてよい。
ステップ1100では、通常サンプリングモード中のU相電流Iuのサンプリング値が所定第1閾値Th1の負の値(−Th1)以上となったか否かを判定する。U相電流Iuのサンプリング値が−Th1以上となった場合は、ステップ1102に進み、それ以外の場合は、U相電流Iuのサンプリング値が−Th1以上となるのを待機する状態となる。
ステップ1102では、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードにモードを移行する。
ステップ1104では、U相電流Iuの極大値が得られる次の第2サンプリングタイミングにおいて、ゼロを上回るU相電流Iuの極大値が得られるか否かを予測的に判定する。予測方法は、上述の通りであってよい。ゼロを上回るU相電流Iuの極大値が得られると予測される場合は、ステップ1106に進み、それ以外は待機状態となる。
尚、ステップ1104では、次の3サンプリングタイミングにおいてゼロを上回るU相電流Iuの極大値が得られるか否かを予測的に判定しているが、次の第2サンプリングタイミングにおいて所定第2閾値(−Th2)を上回るU相電流Iuの極大値が得られるか否かを予測的に判定してもよい。−Th2は、ゼロよりも僅かに小さい値であって、−Th1よりも大きい値であってよい(図12参照)。
ステップ1106では、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換える。片アーム駆動から両アーム駆動への切換は、上記ステップ1104の判定と同時に実現されてもよいし、判定後の最も早い切換可能なタイミングで実現されてもよい。
ステップ1108では、ゼロクロス検知用サンプリングモード中のU相電流Iuの極小値のサンプリング値がゼロを上回ったか否かを判定する。U相電流Iuの極小値がゼロを上回った場合は、ステップ1110に進み、それ以外は待機状態となる。
ステップ1110では、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換える。これに伴い、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードに復帰する。
尚、図11に示す処理において、ステップ1108では、次の第3サンプリングタイミングにおいてゼロを上回るU相電流Iuの極小値が得られるか否かを予測的に判定してもよい。予測方法は、上述の通りであってよい。この場合、ゼロを上回るU相電流Iuの極小値が得られると予測される場合は、ステップ1110に進み、それ以外は待機状態となる。この場合、ステップ1110では、サンプリングモードから通常サンプリングモードへの復帰は直ぐに実現される一方、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、それ以降のサンプリングタイミングで得られたサンプリング値がゼロを上回った時点で実現されてもよい。
図12は、U相電流が負から正に向かって増加する場合における本実施例による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)は、U相電流Iuの波形の一例を示し、(B)は、サンプリングモードの変化を示し、(C)は、片アーム駆動と両アーム駆動との間の切換態様の一例を示す。
図12においては、リプル成分を含むU相電流が、負から正に向かって増加する方向でゼロクロスする場合(図5のY2参照)が示されている。同様に、U相電流の波形上には、白丸にて、第1サンプリングタイミングが示され、白□及び黒■にて、第3及び第2サンプリングタイミングがそれぞれ示されている。
図12に示す例では、片アーム駆動状態であり、且つ、通常サンプリングモード中の状態において、第1サンプリングタイミングT1にて、U相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以内(U相電流のサンプリング値が−Th1以上)となる。従って、この第1サンプリングタイミングT1で、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードに切り替わる。ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、上述の如く、通常サンプリングモード時に比べて1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングが増加される(第1サンプリングタイミングに第2及び第3サンプリングタイミングが追加される)。
ゼロクロス検知用サンプリングモードが開始されると、U相電流の極大値(黒■)がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス開始タイミング)T2が予測される。予測方法は任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流の複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流の次の極大値を予測し、当該予測した極大値がゼロを上回るか否か判定してもよい。具体的には、例えば第3サンプリングタイミングT4及び第2サンプリングタイミングT5にてそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅として算出し、次の第3サンプリングタイミングT6で得られるU相電流のサンプリング値に、当該算出したリプル幅を加えた予測値(第2サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを上回るか否か判定してもよい。或いは、第2サンプリングタイミングT5及び第3サンプリングタイミングT6にてそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅として算出し、第3サンプリングタイミングT6で得られるU相電流のサンプリング値に、当該算出したリプル幅を加えた予測値(第2サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを上回るか否か判定してもよい。尚、リプル幅は、第1サンプリングタイミング(白丸参照)でのサンプリング値と、その前後の第2又は第3サンプリングタイミングでのサンプリング値との差を2倍することで予測されてもよい。
U相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回ると判定した場合は、その時点で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。或いは、例えば、第3サンプリングタイミングT6でU相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回ると判定した場合は、図12に示すように、次のサンプリングタイミングT8で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。これにより、U相電流がゼロを跨ぐ前に、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えることができる。
両アーム駆動に切り換えられると、U相電流の極小値がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測される。予測方法は、上述のゼロクロス開始タイミングの予測方法と同様であってよい。U相電流の極小値がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測されると、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられる。これと同時に、ゼロクロス検知用サンプリングモードは、通常サンプリングモードに戻される。尚、ゼロクロス終了タイミングT3が予測された時点でU相電流がゼロより小さい場合は、その時点以後であって、U相電流がゼロより大きくなった時点(例えば次の第1サンプリングタイミング)で両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられてもよい。図12に示す例では、第2サンプリングタイミングT9でU相電流の次の極小値の予測値がゼロを上回ると判定され、その時点で、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードへの切換が実現される一方、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、第2サンプリングタイミングT9の次の第1サンプリングタイミングT10にて実現されている。但し、図12に示す例では、第2サンプリングタイミングT9でU相電流がゼロよりも大きいので、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、ゼロクロス検知用サンプリングモードから通常サンプリングモードへの切換と同時に実現されてもよい。
図13は、比較例による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)はリプル幅が大きい場合を示し、(B)はリプル幅が小さい場合を示す。比較例では、通常サンプリングモードが常に維持される。また、比較例では、第1サンプリングタイミング(白丸)で得られたU相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以内(U相電流のサンプリング値が−Th1以上)となった場合に、図13に示すように、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられる。両アーム駆動に切り換えられると、図13に示すように、第1サンプリングタイミング(白丸)で得られたU相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1より大きく(U相電流のサンプリング値が所定第1閾値Th1より大きく)なった場合に、両アーム駆動から片アーム駆動に戻される。このように図13に示す比較例では、両アーム駆動期間が比較的に長くなる。これは、図13(A)及び図13(B)に示すように、リプル幅の大きさによらず、ゲート干渉による損失が常に一定割合で発生することを意味する。
図14は、図13との対比で本実施例による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)はリプル幅が大きい場合を示し、(B)はリプル幅が小さい場合を示す。図14(A)及び図14(B)において、−Th3及びTh3は、両アーム駆動期間を定める第1サンプリングタイミングのサンプリング値に対する実質的な閾値を表す。
図13及び図14を対比すると明らかなように、本実施例によれば、ゼロクロス検知用サンプリングモードを設定して、通常サンプリングモード時に比べて、1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングの数を増加させることで、リプル幅を算出することが可能となる。従って、算出したリプル幅に基づいて、U相電流の極大値又は極小値を予測して片アーム駆動から両アーム駆動への切換を行うことが可能となるので、片アーム駆動から両アーム駆動への切換に対する実質的な判定閾値Th3を、第1閾値Th1に比べて低減することができる。これにより、両アーム駆動期間を短くして、ゲート干渉による損失を低減することができる。他方、ゼロクロス検知用サンプリングモードは、比較的限定した期間のみで実現されるので、1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングが増加することによる処理負荷の増加を抑制することができる。
また、図13(A)及び図13(B)に示すように、リプル幅が大きい場合とリプル幅が小さい場合とでは、片アーム駆動から両アーム駆動への切換に関する理想切換タイミングは異なる。この点、本実施例によれば、上述の如く片アーム駆動から両アーム駆動への切換に対する実質的な判定閾値の大きさTh3を、第1閾値Th1に比べて低減することができるので、図14(A)及び図14(B)に示すように、理想切換タイミングに近いタイミングで、片アーム駆動から両アーム駆動への切換を実現することが可能となる。
尚、上述した実施例では、ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、第1サンプリングタイミングに加えて、第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングの双方でサンプリングを行っているが、ゼロクロス検知用サンプリングモードにおいて、第1サンプリングタイミングに加えて、第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングのいずれか一方のみでサンプリングを行うこととしてもよい。この場合も、連続する第1サンプリングタイミングと第2サンプリングタイミング又は第3サンプリングタイミングとで得られる各サンプリング値の差を算出することでリプル幅を予測することができるためである。
次に、ゼロクロス検知用サンプリングモードにおいて、第1サンプリングタイミングに加えて、第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングのいずれか一方のみでサンプリングを行う構成を実施例2として説明する。尚、以下では、上述した実施例については、"実施例1"とも称する。
図15は、U相電流が負から正に向かって増加する場合における本実施例2による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)は、U相電流Iuの波形の一例を示し、(B)は、サンプリングモードの変化を示し、(C)は、片アーム駆動と両アーム駆動との間の切換態様の一例を示す。
図15においては、リプル成分を含むU相電流が、負から正に向かって増加する方向でゼロクロスする場合(図5のY2参照)が示されている。同様に、U相電流の波形上には、白丸にて、第1サンプリングタイミングが示され、白□及び黒■にて、第3及び第2サンプリングタイミングがそれぞれ示されている。
図15に示す例では、片アーム駆動状態であり、且つ、通常サンプリングモード中の状態において、第1サンプリングタイミングT1にて、U相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以内(U相電流のサンプリング値が−Th1以上)となる。従って、この第1サンプリングタイミングT1で、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードに切り替わる。ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、通常サンプリングモード時に比べて1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングが増加される。ここでは、第1サンプリングタイミングに加えて、第2サンプリングタイミングが追加される(第3サンプリングタイミングでのサンプリングは行われない)。
ゼロクロス検知用サンプリングモードが開始されると、U相電流の極大値がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス開始タイミング)T2が予測される。予測方法は任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流の複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流の次の極大値を予測し、当該予測した極大値がゼロを上回るか否か判定してもよい。具体的には、例えば第2サンプリングタイミングT5と、それに隣接する第1サンプリングタイミングT4又はT6とでそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅の半分として算出し、第1サンプリングタイミングT0で得られるU相電流のサンプリング値に、当該算出したリプル幅の半分を加えた予測値(第2サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを上回るか否か判定してもよい。
U相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回ると判定した場合は、その時点で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。これにより、U相電流がゼロを跨ぐ前に、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えることができる。
また、U相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回ると判定した場合は、その時点で、ゼロクロス検知用サンプリングモードでのサンプリング方法を変化させてもよい。図15に示す例では、第1サンプリングタイミング及び第2サンプリングタイミングでのサンプリング方法に代えて、第1サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングでのサンプリング方法へと変化される(第2サンプリングタイミングでのサンプリングは行われない)。尚、このゼロクロス検知用サンプリングモードでのサンプリング方法の変化は、U相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回ると判定した時点以後に実行されてもよい。
尚、U相電流の次の極大値の予測値がゼロを上回るか否かの判定に代えて、U相電流の次の極大値の予測値が、ゼロよりも小さい所定第2閾値(−Th2)を上回るか否かの判定を行ってもよい。−Th2は、上述の如く、ゼロよりも僅かに小さい値であって、−Th1よりも大きい値であってよい(図15参照)。
両アーム駆動に切り換えられると、U相電流の極小値がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測又は検出される。予測方法は、上述のゼロクロス開始タイミングの予測方法と同様であってよい。例えば、第3サンプリングタイミングT8と、それに隣接する第1サンプリングタイミングT7又はT9とでそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅の半分として算出し、第1サンプリングタイミングT10で得られるU相電流のサンプリング値から、当該算出したリプル幅の半分を引いた予測値(第3サンプリングタイミングT3で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを上回るか否か判定してもよい。U相電流の極小値がゼロを上回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測されると、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられる。これと同時に、ゼロクロス検知用サンプリングモードは、通常サンプリングモードに戻されてよい。
図16は、U相電流が正から負に向かって減少する場合における本実施例2による片アーム駆動と両アーム駆動間の切換方法を示す図であり、(A)は、U相電流Iuの波形の一例を示し、(B)は、サンプリングモードの変化を示し、(C)は、片アーム駆動と両アーム駆動との間の切換態様の一例を示す。
図16においては、リプル成分を含むU相電流が、正から負に向かって減少する方向でゼロクロスする場合(図5のY1参照)が示されている。同様に、U相電流の波形上には、白丸にて、第1サンプリングタイミングが示され、白□及び黒■にて、第3及び第2サンプリングタイミングがそれぞれ示されている。
図16に示す例では、片アーム駆動状態であり、且つ、通常サンプリングモード中の状態において、第1サンプリングタイミングT1にて、U相電流のサンプリング値の絶対値が所定第1閾値Th1以内(U相電流のサンプリング値がTh1以下)となる。従って、この第1サンプリングタイミングT1で、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードに切り替わる。ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、通常サンプリングモード時に比べて1キャリア周期当たりのサンプリングタイミングが増加される。ここでは、第1サンプリングタイミングに加えて、第3サンプリングタイミングが追加される(第2サンプリングタイミングでのサンプリングは行われない)。
ゼロクロス検知用サンプリングモードが開始されると、U相電流の極小値がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス開始タイミング)T2が予測される。予測方法は任意であるが、例えばゼロクロス検知用サンプリングモード中に検出されるU相電流の複数のサンプリング値からリプル幅を算出し、当該算出したリプル幅に基づいて、U相電流の次の極小値を予測し、当該予測した極小値がゼロを下回るか否か判定してもよい。具体的には、例えば第3サンプリングタイミングT5と、それに隣接する第1サンプリングタイミングT4又はT6とでそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅の半分として算出し、第1サンプリングタイミングT0で得られるU相電流のサンプリング値から、当該算出したリプル幅の半分を引いた予測値(第3サンプリングタイミングT2で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを下回るか否か判定してもよい。
U相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回ると判定した場合は、その時点で、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えられてよい。これにより、U相電流がゼロを跨ぐ前に、片アーム駆動から両アーム駆動に切り換えることができる。
また、U相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回ると判定した場合は、その時点で、ゼロクロス検知用サンプリングモードでのサンプリング方法を変化させてもよい。図16に示す例では、第1サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングでのサンプリング方法に代えて、第1サンプリングタイミング及び第2サンプリングタイミングでのサンプリング方法へと変化される(第3サンプリングタイミングでのサンプリングは行われない)。尚、このゼロクロス検知用サンプリングモードでのサンプリング方法の変化は、U相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回ると判定した時点以後に実行されてもよい。
尚、U相電流の次の極小値の予測値がゼロを下回るか否かの判定に代えて、U相電流の次の極小値の予測値が、ゼロよりも大きい所定第2閾値(Th2)を下回るか否かの判定を行ってもよい。Th2は、上述の如く、ゼロよりも僅かに大きい値であって、Th1よりも小さい値であってよい(図16参照)。
両アーム駆動に切り換えられると、U相電流の極大値がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測又は検出される。予測方法は、上述のゼロクロス開始タイミングの予測方法と同様であってよい。例えば、第2サンプリングタイミングT8と、それに隣接する第1サンプリングタイミングT7又はT9とでそれぞれ得られたU相電流のサンプリング値の差をリプル幅の半分として算出し、第1サンプリングタイミングT10で得られるU相電流のサンプリング値に、当該算出したリプル幅の半分を加えた予測値(第3サンプリングタイミングT3で得られるサンプリング値に対する予測値)が、ゼロを下回るか否か判定してもよい。U相電流の極大値がゼロを下回るタイミング(ゼロクロス終了タイミング)T3が予測されると、両アーム駆動から片アーム駆動に切り換えられる。これと同時に、ゼロクロス検知用サンプリングモードは、通常サンプリングモードに戻されてよい。
図17は、本実施例2における半導体駆動装置50(モータ制御部540)により実行されるインバータ30の制御処理の一例を示すフローチャートである。尚、ここでは、一例として、インバータ30のU相について説明するが、V相及びW相についても同様である。
ステップ1700では、U相電流の増減状態を判定する。U相電流が0に向かって増加している場合、ステップ1702に進み、U相電流が0に向かって減少している場合、ステップ1722に進む。尚、他の場合(例えばU相電流が0を過ぎて増加している場合や、U相電流が0を過ぎて減少している場合)には、U相電流が0に向かって増加するか、U相電流が0に向かって減少するのを待機する待機状態となってよい。
ステップ1702では、サンプリングタイミングの初期値を"第2サンプリングタイミング(極大値が現れるサンプリングタイミング)"に設定する。
ステップ1704では、U相電流Iuのサンプリング値が−Th1以上となったか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ1706に進む。他方、否定判定の場合は、ステップ1705に進んで、ステップ1704に戻る。
ステップ1705では、通常サンプリングモードを維持し、第1サンプリングタイミングにてU相電流Iuのサンプリングを実行する。
ステップ1706では、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードにモードを移行し、初期値である第2サンプリングタイミングにてU相電流Iuのサンプリングを実行する。
ステップ1708では、次回のU相電流Iuの極大値を予測し、予測したU相電流Iuの極大値が0より大きくなるか否かを判定する。予測方法は上述の通りであってよい。予測したU相電流Iuの極大値が0より大きくなる場合は、ステップ1712に進む。他方、それ以外の場合は、ステップ1710に進んで、ステップ1708に戻る。
ステップ1710では、片アーム駆動状態を維持する。また、サンプリングタイミングについても、前回のサンプリングタイミングを維持する。但し、ゼロクロス検知用サンプリングモードにモードでは、上述の如く、第1サンプリングタイミングでのサンプリングは依然として継続される。
ステップ1712では、片アーム駆動から両アーム駆動に変更する。
ステップ1714では、サンプリングタイミングについて第3サンプリングタイミングに変更する。但し、ゼロクロス検知用サンプリングモードにモードでは、上述の如く、第1サンプリングタイミングでのサンプリングは依然として継続される。
ステップ1716では、次回のU相電流Iuの極小値を予測し、予測したU相電流Iuの極小値が0より大きくなるか否かを判定する。予測方法は上述の通りであってよい。予測したU相電流Iuの極小値が0より大きくなる場合は、ステップ1720に進む。他方、それ以外の場合は、ステップ1718に進んで、ステップ1716に戻る。
ステップ1718では、両アーム駆動状態を維持する。また、サンプリングタイミングについても、前回のサンプリングタイミングを維持する。但し、同様に、第1サンプリングタイミングでのサンプリングは依然として継続される。
ステップ1720では、ゼロクロス検知用サンプリングモードを終了して、通常サンプリングモードに復帰する。
ステップ1722では、両アーム駆動から片アーム駆動に変更する。
このようにして、U相電流が0に向かって増加している場合の処理が実行される。U相電流が0に向かって減少している場合は、ステップ1723以降の処理となる。
ステップ1723では、サンプリングタイミングの初期値を"第3サンプリングタイミング(極小値が現れるサンプリングタイミング)"に設定する。
ステップ1724では、U相電流Iuのサンプリング値がTh1以下となったか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ1726に進む。他方、否定判定の場合は、ステップ1705に進んで、ステップ1724に戻る。
ステップ1726では、通常サンプリングモードからゼロクロス検知用サンプリングモードにモードを移行し、初期値である第3サンプリングタイミングにてU相電流Iuのサンプリングを実行する。
ステップ1728では、次回のU相電流Iuの極小値を予測し、予測したU相電流Iuの極小値が0より小さくなるか否かを判定する。予測方法は上述の通りであってよい。予測したU相電流Iuの極小値が0より小さくなる場合は、ステップ1730に進む。他方、それ以外の場合は、ステップ1710に進んで、ステップ1728に戻る。
ステップ1730では、片アーム駆動から両アーム駆動に変更する。
ステップ1732では、サンプリングタイミングについて第2サンプリングタイミングに変更する。但し、ゼロクロス検知用サンプリングモードにモードでは、上述の如く、第1サンプリングタイミングでのサンプリングは依然として継続される。
ステップ1734では、次回のU相電流Iuの極大値を予測し、予測したU相電流Iuの極大値が0より小さくなるか否かを判定する。予測方法は上述の通りであってよい。予測したU相電流Iuの極大値が0より小さくなる場合は、ステップ1720に進む。他方、それ以外の場合は、ステップ1718に進んで、ステップ1734に戻る。
図15乃至図17を参照して説明した実施例2によっても、上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。特に、本実施例2では、ゼロクロス検知用サンプリングモードにおける1キャリア周期当たりのサンプリング回数を、上述した実施例1における1キャリア周期当たりのサンプリング回数よりも低減することができる。即ち、第2サンプリングタイミング及び第3サンプリングタイミングのうちの一方のみが使用されるので、上述した実施例1における1キャリア周期当たりのサンプリング回数よりも低減することができる。これにより、処理負荷を低減しつつ、ゲート干渉による損失を低減することができる。
尚、本実施例2における予測方法(リプル幅の半分を算出して、次回のU相電流Iuの極大値や次回のU相電流Iuの極小値を予測する方法)は、上述した実施例1においても使用されてもよい。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例において、両アーム駆動中においては、上下アームのスイッチング素子Q1,Q2の逆相のオン/オフタイミングは、デットタイムに起因して厳密に同一タイミングでないが、両アーム駆動中における第2サンプリングタイミング(第3サンプリングタイミングについても同様)は、スイッチング素子Q1,Q2のいずれか任意のスイッチングのオン/オフタイミングに同期してもよい。
また、上述した実施例1では、ゼロクロス検知用サンプリングモードでは、第1サンプリングタイミングでのサンプリングが維持されているが、第1サンプリングタイミングでのサンプリングは省略されてもよい。
また、上述した実施例2では、好ましい実施例として、両アーム駆動から片アーム駆動への切換(復帰)のためにも、リプル幅(及びリプル幅の半分)を算出して予測を行っているが、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、単に検出に基づいて実現されてもよい(上述した実施例1では、かかる検出による切換が開示されている)。具体的には、U相電流が正から負に向かってゼロクロスする場合については、0より小さいU相電流の極大値が検出されたときに、両アーム駆動から片アーム駆動への切換を実現することとしてよい。また、U相電流が負から正に向かってゼロクロスする場合については、0より大きいU相電流の極小値が検出されたときに、両アーム駆動から片アーム駆動への切換を実現することとしてよい。但し、この場合、予測の場合よりも両アーム駆動期間が長くなる点で不利となる。
また、上述した実施例では、第1サンプリングタイミングは、そのオン/オフ期間におけるリアクトル電流ILの電流値の平均値がサンプリングされるように決定されているが、第1サンプリングタイミングは、キャリア信号の山(上側の頂点)と谷(下側の頂点)のタイミングであってもよい。
また、上述した実施例では、片アーム駆動から両アーム駆動への切換、及び、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、サンプリングタイミングに同期して行われているが、他の態様であってもよい。例えば、片アーム駆動から両アーム駆動への切換、及び、両アーム駆動から片アーム駆動への切換は、次のスイッチング素子Q22,Q24(スイッチング素子Q1,Q2等についても同様)のオン/オフ切換タイミング(キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回るタイミング、及び、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回るタイミング)のみで実行されてもよい。この場合、片アーム駆動から両アーム駆動への切換がゼロクロス前に確実に実現されるように、所定第2閾値Th2(−Th2)を使用することとしてもよい。例えば、図12に示す例において、第3サンプリングタイミングT6にて片アーム駆動から両アーム駆動への切換を行うのが理想である場合において、第3サンプリングタイミングT6までに、当該切換を行うことを事前に決定しておく必要がある場合には、第3サンプリングタイミングT4において、第2サンプリングタイミングT5での極大値が所定第2閾値−Th2を越えると予測した場合に、それ以降の切換可能なタイミングT5又はT6で片アーム駆動から両アーム駆動への切換を行うこととしてもよい。或いは、上述の如く第3サンプリングタイミングT6で、次の極大値がゼロを越えると予測した場合に、その時点で切換を行えないことから、次の切換可能なタイミング(サンプリングタイミングT2)で片アーム駆動から両アーム駆動への切換を行うこととしてもよい。この場合、ゼロクロス後に切換が実現されてしまうものの、ゼロクロス後の片アーム駆動状態を最小限に抑えることができる。
また、上述した実施例では、電力変換装置の一例であるDC/DCコンバータ20及びインバータ30は、車両用に使用されているが、他の用途(例えば、他の電動装置の電源装置等)に使用されてもよい。また、DC/DCコンバータ20及びインバータ30は、車両用としても他の用途(例えば、電動ステアリング装置用)に使用されてもよい。