以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
図1は、電動自動車用モータ駆動システム1の全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システム1は、バッテリ10の電力を用いて走行用モータ40を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。尚、電動自動車は、電力を用いて走行用モータ40を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動自動車は、典型的には、動力源がエンジンと走行用モータ40であるハイブリッド自動車(HV)や、動力源が走行用モータ40のみである電気自動車を含む。
モータ駆動システム1は、図1に示すように、バッテリ10、DC/DCコンバータ20、インバータ30、走行用モータ40、及び、半導体駆動装置50を備える。
バッテリ10は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子から形成されてもよい。尚、バッテリ10は、複数の単電池をスタックした電池パックにより形成されてもよい。
DC/DCコンバータ20は、双方向のDC/DCコンバータ(可逆チョッパ方式の昇圧DC/DCコンバータ)であってよい。DC/DCコンバータ20は、例えば200Vから650Vへの昇圧変換、及び、650Vから200Vへの降圧変換が可能であってよい。DC/DCコンバータ20のリアクトル(コイル)L1の入力側と負極ラインとの間には平滑用コンデンサC1が接続されてよい。
図示の例では、DC/DCコンバータ20は、2つのスイッチング素子Q22,Q24と、リアクトルL1とを有する。2つのスイッチング素子Q22,Q24は、インバータ30の正極ラインと負極ラインとの間に互いに直列に接続される。リアクトルL1は、バッテリ10の正極側に直列に接続される。リアクトルL1は、出力側が2つのスイッチング素子Q22,Q24の接続部(中点)に接続される。
図示の例では、DC/DCコンバータ20の2つのスイッチング素子Q22,Q24は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。尚、スイッチング素子Q22,Q24は、ダイオード(例えばフリーホイールダイオード)D22,D24を外付け素子と用いる通常のIGBTであってもよいし、ダイオードD22,D24を内蔵した逆導通IGBT(RC(Reverse Conducting)−IGBT)であってもよい。いずれの場合も、上アームのスイッチング素子Q22のコレクタはインバータ30の正極ラインに接続されており、上アームのスイッチング素子Q22のエミッタは下アームのスイッチング素子Q24のコレクタに接続されている。また、下アームのスイッチング素子Q24のエミッタは、インバータ30の負極ライン及びバッテリ10の負極に接続されている。尚、スイッチング素子Q22、Q24は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
インバータ30は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームから形成されてよい。尚、正極ラインと負極ラインとの間には、平滑用コンデンサC2が接続されてよい。
走行用モータ40は、例えば3相の永久磁石モータであり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中点で共通接続されている。U,V,W相の3つのコイルは、スター結線に限らず、Δ結線であってもよい。尚、走行用モータ40は、電磁石と永久磁石とを組み合わせたハイブリッド型の3相モータであってもよい。尚、図1に示す例では、走行用モータ40に加えて、第2の走行用モータ42が並列で追加されてもよい。第2の走行用モータ42は、走行用モータ40と協動して車両の駆動力を生成してよい。或いは、第2の走行用モータ42に代えて、発電のみを行う発電機が使用されてもよい。
半導体駆動装置50は、DC/DCコンバータ20及びインバータ30を制御する。半導体駆動装置50は、マイクロコンピューターを含むECU(電子制御ユニット)として具現化されてもよい。尚、半導体駆動装置50の各種機能(以下で説明する機能を含む)は、任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの組み合わせにより実現されてもよい。例えば、半導体駆動装置50の各種機能は、特定用途向けASIC(application-specific integrated circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)により実現されてもよい。また、半導体駆動装置50の各種機能は、複数のECUにより協動して実現されてもよい。
DC/DCコンバータ20の制御方法の詳細は、後述する。基本的には、半導体駆動装置50は、インバータ30の動作(力行又は回生)に応じて、DC/DCコンバータ20を制御する。例えば、半導体駆動装置50は、力行時は、DC/DCコンバータ20の下アームのスイッチング素子Q24のみをオン/オフ切換し(下アームによる片アーム駆動)、バッテリ10の電圧を昇圧してインバータ30側に出力する。この際、下アームのスイッチング素子Q24は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されてもよい。また、回生時は、DC/DCコンバータ20の上アームのスイッチング素子Q22のみをオン/オフ切換し(上アームによる片アーム駆動)、インバータ30側の電圧を降圧してバッテリ10側に出力する。この際、上アームのスイッチング素子Q22は、PWM制御されてよい。
インバータ30の制御方法の概要は任意であってよい。典型的には、半導体駆動装置50は、各相のコイルを流れる相電流が例えば120度ずつ位相がずれた関係の正弦波波形となるように、U相に係る2つのスイッチング素子(図示せず)をオン/オフ駆動し、V相に係る2つのスイッチング素子(図示せず)をオン/オフ駆動し、W相に係る2つのスイッチング素子(図示せず)をオン/オフ駆動する。
半導体駆動装置50は、図1に示すように、昇圧CNV演算部52と、PWM生成部54と、マスク回路56とを含む。半導体駆動装置50には、2つのスイッチング素子Q22,Q24の間の電圧(中点電圧)VMを測定する電圧測定手段60が接続される。
昇圧CNV演算部52は、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24を駆動(オン/オフ切換)するためのデューティを算出する。例えば、昇圧CNV演算部52は、リアクトル電流ILのサンプリング値と、リアクトル電流ILの目標値IL*とに基づいて、リアクトル電流ILが目標値IL*となるようにデューティを算出する。この際、PI(Proportional Integral)制御やPID(Proportional Integral Derivative)制御が利用されてもよい。
PWM生成部54は、キャリア信号とデューティとの関係に基づいて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換のためのゲート信号(PWM信号)を生成する。キャリア信号は、三角波やノコギリ波の波形を有してよい。以下では、キャリア信号は、三角波の波形を有するものとして説明を続ける。キャリア信号の周波数は、一定であってもよいし、可変であってもよい。例えば、キャリア信号の周波数は、DC/DCコンバータ20の温度が上昇したときに低下される態様で可変されてもよい。
図2は、PWM生成部54によるゲート信号の生成方法の一例を示すタイミング図である。図2においては、上から順に、キャリア信号及びデューティ(Duty指令値)の波形と、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の波形と、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の波形と、電圧VMの測定値の波形とが示されている。尚、図2に示す例では、説明の便宜上、デューティは一定であるが、デューティは変化しうる。例えば、デューティは、キャリア信号の山(上側の頂点)と谷(下側の頂点)で変更される。
PWM生成部54は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると(t1、t3)、下アームのスイッチング素子Q24のゲート信号を立ち下げると共に、その後所定のデッドタイムが経過してから、上アームのスイッチング素子Q22のゲート信号を立ち上げる。また、PWM生成部54は、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回ると(t2、t4)、上アームのスイッチング素子Q22のゲート信号を立ち下げると共に、その後所定のデッドタイムが経過してから、下アームのスイッチング素子Q24のゲート信号を立ち上げる。このようにして、PWM生成部54は、キャリア信号とデューティとの関係に基づいて、DC/DCコンバータ20のスイッチング素子Q22,Q24のオン/オフ切換のためのゲート信号を生成してよい。このようにして生成された各ゲート信号は、マスク回路56を介して、スイッチング素子Q22,Q24のそれぞれのゲートに印加される。
尚、図2に示す例では、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、下アームのスイッチング素子Q24のゲート信号を立ち下げ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回ると、上アームのスイッチング素子Q22のゲート信号を立ち下げているが、逆であってもよい。即ち、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを下回ると、上アームのスイッチング素子Q22のゲート信号を立ち下げ、キャリア信号のレベルがデューティのレベルを上回ると、下アームのスイッチング素子Q24のゲート信号を立ち下げることとしてもよい。
マスク回路56は、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値に基づいて、スイッチング素子Q22,Q24のそれぞれのゲート信号を選択的にマスクする。ここで、「マスクする」とは、ゲート信号のオンパルスを無効化すること、即ちゲート信号のHiレベルをLoレベルに変更することを意味する。従って、スイッチング素子Q22,Q24のそれぞれのゲート信号がマスクされると、スイッチング素子Q22,Q24はオフになる。
図3は、電圧VMと各ゲート信号との関係の一例を示す図である。図3においては、上から順に、リアクトル電流ILの波形と、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の波形と、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の波形と、電圧VMの測定値の波形と、通電素子の変化とが示されている。尚、図3では、リアクトル電流ILがゼロを跨ぐゼロクロス時に、両アーム駆動が実行される波形を示しているが、これは、あくまで説明の便宜上のものであり、実際には後述の如く両アーム駆動を実行されない。また、図3に示す例では、説明の便宜上、デューティは一定であるが、デューティは変化しうる。
図3において、時刻t1以前は、リアクトル電流ILが負である。この場合、上アームに係るスイッチング素子Q22がオン状態からオフすると、それに伴い、下アームに係るダイオードD24がオン(通電)し、電圧VMがゼロに落ちる。上アームに係るスイッチング素子Q22がオフした後、所定のデットタイムが経過してから、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号が立ち上がる。従って、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはゼロである(図3の矢印P1,P3参照)。上アームに係るスイッチング素子Q22がオフ状態からオンすると、それに伴い、下アームに係るダイオードD24がオフし、電圧VMが電圧VH(平滑用コンデンサC2の両端電圧)に立ち上がる。従って、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはゼロである(図3の矢印P2参照)。
また、図3において、時刻t1以後は、リアクトル電流ILが正である。この場合、下アームに係るスイッチング素子Q24がオン状態からオフすると、それに伴い、上アームに係るダイオードD22がオン(通電)し、電圧VMが電圧VHに立ち上がる。下アームに係るスイッチング素子Q24がオフした後、所定のデットタイムが経過してから、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号が立ち上がる。従って、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMは電圧VHである(図3の矢印P4,P6参照)。下アームに係るスイッチング素子Q24がオフ状態からオンすると、それに伴い、上アームに係るダイオードD22がオフし、電圧VMがゼロに落ちる。従って、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMは電圧VHである(図3の矢印P5参照)。
このように、リアクトル電流ILが負であるときは、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時、及び、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時、電圧VMはゼロである。他方、リアクトル電流ILが正であるときは、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時、及び、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時、電圧VMは電圧VHである。従って、スイッチング素子Q22、Q24のゲート信号の立ち上がり時又はその直前の電圧VMに基づいて、リアクトル電流ILの流れる方向(正方向又は負方向)を検知することができる。
そこで、本実施例では、マスク回路56は、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値が所定閾値Thよりも低い場合は、上アームに係るスイッチング素子Q22のみをオン/オフ駆動(上アームによる片アーム駆動)するように、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクする。また、マスク回路56は、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値が所定閾値Thよりも高い場合は、下アームに係るスイッチング素子Q24のみをオン/オフ駆動(下アームによる片アーム駆動)するように、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクする。尚、所定閾値Thは、電圧0と電圧VHとを仕切る閾値であり、電圧VHが比較的大きな値(例えば約650V)であることから、比較的広い範囲の値を用いることができる。また、所定閾値Thは、後述の如く2つの閾値(Th1,Th2)を含んでもよい。
このようにして本実施例によれば、電圧測定手段60からの電圧VMに応じて、両アーム駆動を介さずに、上アームによる片アーム駆動及び下アームによる片アーム駆動間の切り替えを行うことができる。これにより、両アーム駆動時に生じる損失を防止しつつ、片アーム駆動の上下アームの切り替えを行うことが可能となる。尚、スイッチング素子Q22、Q24が逆導通IGBTの場合は、両アーム駆動時にゲート間干渉による損失も生じるが、本実施例によれば、スイッチング素子Q22、Q24が逆導通IGBTの場合であっても、両アーム駆動時におけるゲート間干渉による損失を防止することができる。
図4は、マスク回路56により実行される処理の一例(実施例1)を示すフローチャートである。図4に示す処理ルーチンは、走行用モータ40の駆動中に、所定周期毎に繰り返し実行されてよい。
ステップ400では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりエッジを待機し、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりエッジにて、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値をラッチする。
ステップ402では、上記ステップ400でラッチした電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも低いか否かを判定する。ここでは、一例として、所定閾値Th1は、0よりも大きく、バッテリ10の電圧に対応する所定値VBよりも低い値であるとする。電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも低い場合は、ステップ410に進み、それ以外の場合は、ステップ404に進む。
ステップ404では、上記ステップ400でラッチした電圧VMの測定値が所定値VBであるか否かを判定する。所定値VBは、バッテリ10の電圧に対応する値であってよい。尚、実際には、バッテリ10の電圧の変動や測定誤差等に起因して電圧VMの測定値がちょうど所定値VBに一致する可能性は低いことを考慮して、上記ステップ400でラッチした電圧VMの測定値が所定の中間範囲内であるか否かを判定してもよい。所定の中間範囲は、所定値VBを含む任意の範囲(但し、下限値は、0よりも大きく、上限値は、VHよりも小さい)であり、例えば所定値VBを中心とした範囲であってよい。例えば、所定の中間範囲は、下限値が所定閾値Th1よりも大きく且つ上限値が所定閾値Th2(ステップ414参照)よりも小さい範囲であってよい。電圧VMの測定値が所定値VBである場合は、ステップ406に進み、それ以外の場合は、ステップ408に進む。
ステップ406では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回の出力がHiレベルであったか否か(即ち上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされなかったか否か)を判定する。上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回の出力がHiレベルであった場合、即ち、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされなかった場合は、ステップ408に進む。他方、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回の出力がHiレベルでなかった場合、即ち、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされた場合は、ステップ410に進む。
ステップ408では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクする。即ち、今回の上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりに関して、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号のHiレベルをLoレベルに変更する。
ステップ410では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクしない。即ち、今回の上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりに関して、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号のHiレベルをそのまま出力する。尚、ステップ410の処理は、説明用であり、実際には何も実行しない処理であるので、ステップ410の処理は省略されてもよい。
ステップ412では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりエッジを待機し、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりエッジにて、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値をラッチする。
ステップ414では、上記ステップ412でラッチした電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも高いか否かを判定する。ここでは、一例として、所定閾値Th2は、電圧VHよりも低く、バッテリ10の電圧に対応する所定値VBよりも高い値であるとする。電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも高い場合は、ステップ422に進み、それ以外の場合は、ステップ416に進む。
ステップ416では、上記ステップ412でラッチした電圧VMの測定値が所定値VBであるか否かを判定する。所定値VBは、バッテリ10の電圧に対応する値であってよい。尚、実際には、誤差等に起因して電圧VMの測定値がちょうど所定値VBに一致する可能性は低いことを考慮して、上記ステップ412でラッチした電圧VMの測定値が所定の中間範囲内であるか否かを判定してもよい。所定の中間範囲は、所定値VBを含む任意の範囲であり、例えば所定値VBを中心とした範囲であってよい。電圧VMの測定値が所定値VBである場合は、ステップ418に進み、それ以外の場合は、ステップ420に進む。
ステップ418では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回の出力がHiレベルであったか否か(即ち下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされなかったか否か)を判定する。下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回の出力がHiレベルであった場合、即ち、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされなかった場合は、ステップ420に進む。他方、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回の出力がHiレベルでなかった場合、即ち、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の前回のオンパルスがマスクされた場合は、ステップ422に進む。
ステップ420では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクする。即ち、今回の下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりに関して、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号のHiレベルをLoレベルに変更する。
ステップ422では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクしない。即ち、今回の下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりに関して、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号のHiレベルをそのまま出力する。尚、ステップ422の処理は、説明用であり、実際には何も実行しない処理であるので、ステップ422の処理は省略されてもよい。
図5は、図4の説明図であり、電圧VMに応じて各ゲート信号がマスクされる態様の一例を示す図である。図5においては、上述の図3と同様、上から順に、リアクトル電流ILの波形と、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の波形と、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の波形と、電圧VMの測定値の波形と、通電素子の変化とが示されている。尚、破線で示すゲート信号は、マスク回路56によりマスクされていることを表す。
図5において、時刻t1以前は、リアクトル電流ILが負である。この場合、図3を参照して上述した如く、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはゼロである(図5の矢印P2参照)。従って、図4のステップ402で肯定判定され、ステップ410により上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はマスクされずに出力される。他方、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはゼロである(図5の矢印P1,P3参照)。従って、図4のステップ414で否定判定され、ステップ416で否定判定され、ステップ420により下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされる。この結果、上アームによる片アーム駆動が実現されることになる。
このようにして上アームによる片アーム駆動が行われている状況下で、時刻t1になると、リアクトル電流ILは、図5に示すように、0になる。即ちゼロクロスする。このとき、下アームに係るダイオードD24がオン状態からオフ状態となる。また、このとき、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はオフ期間であり、また、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされている状態である。即ち、通電素子は無くなる。従って、電圧VMは、バッテリ10の電圧に対応する値VBまで増加し、値VBを維持する(図5のY1参照)。以下、この状態を「電流停滞状態」とも称し、電流停滞状態の継続期間を「電流停滞期間」とも称する。この電流停滞状態で、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号が立ち上がると、電圧VMは値VBであるため(図5の矢印P4参照)、図4のステップ402で否定判定され、ステップ404で肯定判定され、ステップ406で肯定判定され、ステップ408により上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はマスクされる。従って、電圧VMが依然として値VBを維持する。即ち、電流停滞状態が維持される。次いで、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号が立ち上がると、電圧VMは値VBであるため(図5の矢印P5参照)、図4のステップ414で否定判定され、ステップ416は肯定判定され、ステップ418は否定判定され、ステップ422により下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされずに出力される(即ちマスクが解除される)。これにより、下アームに係るスイッチング素子Q24がオンし、リアクトル電流ILが正の方向に増加する(電流停滞期間Q1が終了する)。
この結果、時刻t2以後は、リアクトル電流ILが正となる。この場合、図3を参照して上述した如く、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはVHである(図5では図示されず、図3の矢印P5参照)。従って、図4のステップ414で肯定判定され、ステップ422により下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされずに出力される。他方、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはVHである(図5の矢印P6参照)。従って、図4のステップ402で否定判定され、ステップ404で否定され、ステップ408により上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はマスクされる。この結果、下アームによる片アーム駆動が実現されることになる。
このようにして図4に示す処理によれば、ゲート信号の立ち上がり時の電圧VMに応じて、両アーム駆動を介さずに、上アームによる片アーム駆動及び下アームによる片アーム駆動間の切り替えを行うことができる。これにより、両アーム駆動時に生じる損失を防止しつつ、片アーム駆動の上下アームの切り替えを短い電流停滞期間で行うことが可能となる。また、スイッチング素子Q22、Q24が逆導通IGBTの場合には、両アーム駆動時におけるゲート間干渉による損失を防止することができる。尚、図5に示す例では、電流停滞期間が発生することから、図3に示す理想的なリアクトル電流ILの変化態様に対して、多少のずれが生じる。しかしながら、かかるずれは制御上問題が生じないレベルである。
尚、図5に示す例では、リアクトル電流ILが負から正に移行する際の説明を行っているが、リアクトル電流ILが正から負に移行する場合も同様である。この場合、リアクトル電流ILが正から0に低下すると、図4のステップ414で否定判定され、ステップ416で肯定判定され、ステップ418で肯定判定され、ステップ420により下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされる。これにより、電流停滞状態が形成され、次に上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号が立ち上がると、図4のステップ402で否定判定され、ステップ404で肯定判定され、ステップ406で否定判定され、ステップ410により上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はマスクされずに出力される。このようにして、下アームによる片アーム駆動から上アームによる片アーム駆動へと移行される。
図6は、マスク回路56により実行される処理の他の一例(実施例2)を示すフローチャートである。図6に示す処理ルーチンは、走行用モータ40の駆動中に、所定周期毎に繰り返し実行されてよい。
ステップ600では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりエッジを待機し、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりエッジにて、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値をラッチする。
ステップ602では、上記ステップ600でラッチした電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも低いか否かを判定する。ここでは、一例として、所定閾値Th1は、0よりも大きく、バッテリ10の電圧に対応する所定値VBよりも低い値であるとする。電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも低い場合は、ステップ610に進み、それ以外の場合は、ステップ604に進む。
ステップ604では、上記ステップ600でラッチした電圧VMの測定値が所定値VBであるか否かを判定する。所定値VBは、バッテリ10の電圧に対応する値であってよい。尚、実際には、誤差等に起因して電圧VMの測定値がちょうど所定値VBに一致する可能性は低いことを考慮して、上記ステップ600でラッチした電圧VMの測定値が所定の中間範囲内であるか否かを判定してもよい。所定の中間範囲は、所定値VBを含む任意の範囲であり、例えば所定値VBを中心とした範囲であってよい。電圧VMの測定値が所定値VBである場合は、ステップ609に進み、それ以外の場合は、ステップ608に進む。
ステップ608では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクする。即ち、今回の上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりに関して、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号のHiレベルをLoレベルに変更する。
ステップ609では、キャリア信号を反転しつつ、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をHiレベルに立ち上げる。即ち、キャリア信号の位相を半周期分進めることで、下アームに係るスイッチング素子Q24のオンタイミングを早める。尚、その後、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号は、反転したキャリア信号とデューティとの関係に基づいて、立ち下げられる。
ステップ610では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクしない。即ち、今回の上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりに関して、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号のHiレベルをそのまま出力する。尚、ステップ610の処理は、説明用であり、実際には何も実行しない処理であるので、ステップ610の処理は省略されてもよい。
ステップ612では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりエッジを待機し、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりエッジにて、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値をラッチする。
ステップ614では、上記ステップ612でラッチした電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも高いか否かを判定する。ここでは、一例として、所定閾値Th2は、電圧VHよりも低く、バッテリ10の電圧に対応する所定値VBよりも高い値であるとする。電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも高い場合は、ステップ622に進み、それ以外の場合は、ステップ616に進む。
ステップ616では、上記ステップ612でラッチした電圧VMの測定値が所定値VBであるか否かを判定する。所定値VBは、バッテリ10の電圧に対応する値であってよい。尚、実際には、誤差等に起因して電圧VMの測定値がちょうど所定値VBに一致する可能性は低いことを考慮して、上記ステップ612でラッチした電圧VMの測定値が所定の中間範囲内であるか否かを判定してもよい。所定の中間範囲は、所定値VBを含む任意の範囲であり、例えば所定値VBを中心とした範囲であってよい。電圧VMの測定値が所定値VBである場合は、ステップ619に進み、それ以外の場合は、ステップ620に進む。
ステップ619では、キャリア信号を反転しつつ、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をHiレベルに立ち上げる。即ち、キャリア信号の位相を半周期分進めることで、上アームに係るスイッチング素子Q22のオンタイミングを早める。尚、その後、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号は、反転したキャリア信号とデューティとの関係に基づいて、立ち下げられる。
ステップ620では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクする。即ち、今回の下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりに関して、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号のHiレベルをLoレベルに変更する。
ステップ622では、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクしない。即ち、今回の下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりに関して、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号のHiレベルをそのまま出力する。尚、ステップ622の処理は、説明用であり、実際には何も実行しない処理であるので、ステップ622の処理は省略されてもよい。
図7は、図6の説明図であり、電圧VMに応じて各ゲート信号がマスクされる態様の一例を示す図である。図7においては、上から順に、キャリア信号及びデューティ(Duty指令値)の波形と、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の波形と、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の波形と、電圧VMの測定値の波形と、リアクトル電流ILの波形とが示されている。尚、破線で示すゲート信号は、マスク回路56によりマスクされていることを表す。また、図7に示す例では、説明の便宜上、デューティは一定であるが、デューティは変化しうる。
図7において、時刻t1以前は、リアクトル電流ILが負である。リアクトル電流ILが負であるときの状態は、図5を参照して説明した時刻t1以前の状態と同じであり、説明を省略する。
上アームによる片アーム駆動が行われている状況下で、時刻t1になると、リアクトル電流ILは、図7に示すように、0になる。即ちゼロクロスする。このとき、下アームに係るダイオードD24がオン状態からオフ状態となる。また、このとき、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はオフ期間であり、また、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされている状態である。従って、電圧VMは、バッテリ10の電圧に対応する値VBまで増加し、値VBを維持する。この電流停滞状態で、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号が時刻t2にて立ち上がると、電圧VMは値VBであるため(図7の矢印P4参照)、図6のステップ602で否定判定され、ステップ604で肯定判定され、ステップ609によりキャリア信号が反転され(図7の矢印P7参照)、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号が立ち上がる。これにより、下アームに係るスイッチング素子Q24がオンし、リアクトル電流ILが正の方向に増加する(電流停滞期間Q1が終了する)。
この結果、時刻t2以後は、リアクトル電流ILが正となる。この場合、図3を参照して上述した如く、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはVHである。従って、図6のステップ614で肯定判定され、ステップ622により下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされずに出力される。他方、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がり時は、電圧VMはVHである。従って、図6のステップ602で否定判定され、ステップ604で否定され、ステップ608により上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はマスクされる。この結果、下アームによる片アーム駆動が実現されることになる。
このようにして図6に示す処理によれば、ゲート信号の立ち上がり時の電圧VMに応じて、両アーム駆動を介さずに、上アームによる片アーム駆動及び下アームによる片アーム駆動間の切り替えを行うことができる。これにより、両アーム駆動時に生じる損失を防止しつつ、片アーム駆動の上下アームの切り替えを短い電流停滞期間で行うことが可能となる。また、スイッチング素子Q22、Q24が逆導通IGBTの場合には、両アーム駆動時におけるゲート間干渉による損失を防止することができる。
特に、図6に示す処理によれば、電流停滞状態で上アーム又は下アームに係るスイッチング素子Q22又はQ24のゲート信号が立ち上がると、キャリア信号が反転され、本来そのゲート信号の立ち上がりでオンするはずのスイッチング素子Q22又はQ24とは逆側のスイッチング素子Q24又はQ22がオンされる。これにより、電流停滞期間を短縮することができる。また、キャリア信号を反転させることで、図3に示す理想的なリアクトル電流ILの変化態様に対するずれを低減することができる。即ち、キャリア信号を反転させない場合は、本来そのゲート信号の立ち上がりでオンするはずのスイッチング素子Q22又はQ24とは逆側のスイッチング素子Q24又はQ22がオンされることから、リアクトル電流ILの変化態様が意図しない変化態様へと変化しうる。これに対して、キャリア信号を反転させる場合には、かかるスイッチング素子の逆転に対応して、リアクトル電流ILの変化態様を適切に維持することができる。
尚、図7に示す例では、リアクトル電流ILが負から正に移行する際の説明を行っているが、リアクトル電流ILが正から負に移行する場合も同様である。この場合、リアクトル電流ILが正から0に低下すると、図6のステップ614で否定判定され、ステップ616で肯定判定され、ステップ619によりキャリア信号が反転され、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号が立ち上がる。このようにして、下アームによる片アーム駆動から上アームによる片アーム駆動へと移行される。
図8は、図6及び図7に示した実施例2に対する変形例を示す図である。図8に示す変形例では、キャリア信号を反転しない点が、図6及び図7に示した実施例2と異なる。即ち、図8に示す変形例では、図6のステップ609において、キャリア信号を反転せずに、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をHiレベルに立ち上げる。また、図6のステップ619において、キャリア信号を反転せずに、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号を立ち上げる。この場合も、その後、可能な限り早い段階でデューティを補正(反映)することで(図8のP8参照)、図3に示す理想的なリアクトル電流ILの変化態様に対するずれを低減することができる。この際、デューティは、キャリア信号との関係が反転(即ち、デューティが上下アームで反転)するように補正される。尚、図8に示す例では、デューティは、キャリア信号の山(上側の頂点)と谷(下側の頂点)で変更される。従って、図8に示す例では、デューティは、ステップ604又はステップ616の肯定判定時から最も早いキャリア信号の谷のタイミングで変更されている。
図9は、マスク回路56により実行される処理の他の一例(実施例3)を示すフローチャートである。図6(A)に示す処理ルーチンは、走行用モータ40の駆動中に、所定周期毎に繰り返し実行されてよい。図6(B)は、図6(A)に示す処理ルーチンに対する割り込みルーチンである。
図9(A)において、ステップ900、ステップ902、ステップ908、ステップ910、ステップ912、ステップ914、ステップ920,ステップ922の各処理は、上述した図4のステップ400、ステップ402、ステップ408、ステップ410、ステップ412、ステップ414、ステップ420,ステップ422の各処理と同様であってよい。従って、これらの処理の内容については説明を省略する。
図9(A)に示す処理では、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の立ち上がりエッジを検出した際、電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも低い場合は、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクせず、電圧VMの測定値が所定閾値Th1よりも高い場合に、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号をマスクする。同様に、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の立ち上がりエッジを検出した際、電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも高い場合は、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクせず、電圧VMの測定値が所定閾値Th2よりも低い場合に、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号をマスクする。
図9(B)に示す処理は、電圧測定手段60からの電圧VMの測定値を常時で監視し、電圧VMの測定値が所定値VBとなると、割り込みを発生し、マスク解除を実行する(ステップ930)。「常時」とは、非常に短い周期であってよく、キャリア信号の半周期よりも有意に短い周期であってよい。尚、実際には、電圧VMの測定値がちょうど所定値VBに一致する可能性は低いことを考慮して、電圧VMの測定値が所定の中間範囲内に入ったときにマスク解除を実行することとしてもよい。所定の中間範囲は、所定値VBを含む任意の範囲であり、例えば所定値VBを中心とした範囲であってよい。図9(B)に示す処理による割り込みが発生すると、図9(A)に示す処理におけるステップ908又はステップ920で実行中のマスクが解除される。
図10は、図9の説明図であり、電圧VMに応じて各ゲート信号がマスクされる態様の一例を示す図である。図10においては、上から順に、キャリア信号及びデューティ(Duty指令値)の波形と、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号の波形と、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号の波形と、電圧VMの測定値の波形と、リアクトル電流ILの波形とが示されている。尚、破線で示すゲート信号は、マスク回路56によりマスクされていることを表す。また、図10に示す例では、説明の便宜上、デューティは一定であるが、デューティは変化しうる。
図10において、時刻t1以前は、リアクトル電流ILが負である。リアクトル電流ILが負であるときの状態は、図5を参照して説明した時刻t1以前の状態と同じであり、説明を省略する。
上アームによる片アーム駆動が行われている状況下で、時刻t1になると、リアクトル電流ILは、図10に示すように、0になる。即ちゼロクロスする。このとき、下アームに係るダイオードD24がオン状態からオフ状態となる。また、このとき、上アームに係るスイッチング素子Q22のゲート信号はオフ期間であり、また、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号はマスクされている状態である。従って、電圧VMは、バッテリ10の電圧に対応する値VBまで増加する(図10のX1参照)。この電流停滞状態は、直ぐに図9(B)の処理により検知され、割り込み処理が発生する。これにより、図9(B)のステップ930によりマスク状態が解除される(図10の矢印P9参照)。即ち、下アームに係るスイッチング素子Q24のゲート信号に対するマスクが解除される。これにより、下アームに係るスイッチング素子Q24がオンし、リアクトル電流ILが正の方向に増加する。従って、この場合、図10のX1に示すように、電流停滞期間が瞬時に終了する。
このようにして図9に示す処理によれば、ゲート信号の立ち上がり時の電圧VMに応じて、両アーム駆動を介さずに、上アームによる片アーム駆動及び下アームによる片アーム駆動間の切り替えを行うことができる。これにより、両アーム駆動時に生じる損失を防止しつつ、片アーム駆動の上下アームの切り替えを短い電流停滞期間で行うことが可能となる。また、スイッチング素子Q22、Q24が逆導通IGBTの場合には、両アーム駆動時におけるゲート間干渉による損失を防止することができる。
特に、図9に示す処理によれば、電圧VMを監視して電流停滞状態を検知すると、直ちにゲート信号のマスクが解除される。これにより、電流停滞期間を更に短縮して、図3に示す理想的なリアクトル電流ILの変化態様に対するずれを更に低減することができる。
尚、図9に示す例では、リアクトル電流ILが負から正に移行する際の説明を行っているが、リアクトル電流ILが正から負に移行する場合も同様である。この場合、リアクトル電流ILが正から0に低下すると、電流停滞状態が検知され、図9(B)のステップ930によりマスク状態が解除される。このようにして、下アームによる片アーム駆動から上アームによる片アーム駆動へと移行される。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
例えば、上述した実施例では、電力変換装置の一例であるDC/DCコンバータ20は、車両用に使用されているが、他の用途(例えば、他の電動装置の電源装置等)に使用されてもよい。また、DC/DCコンバータ20は、車両用としても他の用途(例えば、電動ステアリング装置用)に使用されてもよい。