JP2014137892A - 電極、全固体電池、およびそれらの製造方法 - Google Patents

電極、全固体電池、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】全固体電池に適用したときに該全固体電池の出力を向上させることができ、且つ安価に生産できる電極を提供する。
【解決手段】LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、標準電極電位が1.0V以上である、電極とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極、該電極を備えた全固体電池、該電極の製造方法および該全固体電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、従来の二次電池よりもエネルギー密度が高く、高電圧で作動させることができる。そのため、小型軽量化を図りやすい二次電池として携帯電話等の情報機器に使用されている。近年、リチウムイオン二次電池は電気自動車用やハイブリッド自動車用等、大型の動力用としての需要も高まっている。
リチウムイオン二次電池は、正極層及び負極層と、これらの間に配置された電解質層とを有している。当該電解質層に用いられる電解質としては、例えば非水系の液体状や固体状の物質等が知られている。液体状の電解質(以下において、「電解液」という。)が用いられる場合には、電解液が正極層や負極層の内部へと浸透しやすい。そのため、正極層や負極層に含有されている活物質と電解液との界面が形成されやすく、性能を向上させやすい。ところが、広く用いられている電解液は可燃性であるため、安全性を確保するためのシステムを搭載する必要がある。一方、難燃性である固体状の電解質(以下において、「固体電解質」という。)を用いると、上記システムを簡素化できる。それゆえ、固体電解質を含有する層(以下において、「固体電解質層」という。)が備えられる形態のリチウムイオン二次電池(以下において、「全固体電池」ということがある。)の開発が進められている。
このような全固体電池に関する技術として、例えば特許文献1には、M元素、M元素およびS元素を含有し、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Znからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、P、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V、Nbからなる群から選択される少なくとも一種であり、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=29.58°±0.50°の位置にピークを有し、2θ=29.58°±0.50°のピークの回折強度をIとし、2θ=27.33°±0.50°のピークの回折強度をIとした場合に、I/Iの値が0.50未満であることを特徴とする硫化物固体電解質材料について開示されている。
また、特許文献2には、正極活物質と第一の固体電解質とを含む正極と、負極活物質と第二の固体電解質とを含む負極と、正極と負極との間に配される隔離体を備えた非水電解質電池において、隔離体の正極に接する部分が第三の固体電解質より構成され、隔離体の負極に接する部分が第四の固体電解質より構成され、第一の固体電解質および第三の固体電解質とが硫化物を含みヨウ素を含まず、第二の固体電解質および第四の固体電解質とが硫化物を含みケイ素とゲルマニウムを含まないことを特徴とする非水電解質電池について開示されている。
国際公開第2012/118801号 特開2003−217663号公報
特許文献1にはLiGePS系の結晶質の固体電解質を用いることが記載されている。LiGePS系の結晶質の固体電解質は非常に高いイオン伝導度を有しており、全固体電池の高出力化に有用であると考えられる。しかしながら、LiGePS系の結晶質の固体電解質は高価であり、LiGePS系の結晶質の固体電解質を用いて電極を作製すると、電極の製造コストが高くなるという問題があった。
そこで本発明は、全固体電池に適用したときに該全固体電池の出力を向上させることができ、且つ安価に生産できる電極を提供することを課題とする。また、該電極を備えた全固体電池、該電極の製造方法、および該全固体電池の製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、標準電極電位が1.0V以上である、電極である。
本発明において「LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質」とは、M元素、M元素およびS元素を含有し、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Znからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、P、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V、Nbからなる群から選択される少なくとも一種であり、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=29.58°±0.50°の位置にピークを有し、2θ=29.58°±0.50°のピークの回折強度をIとし、2θ=27.33°±0.50°のピークの回折強度をIとした場合に、I/Iの値が0.50未満であることを特徴とする硫化物固体電解質を意味する。
上記本発明の第1の態様において、第1の固体電解質がLi10GeP12を含むことが好ましい。
本発明の第2の態様は、正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池であって、正極層または負極層が上記本発明の第1の態様の電極である、全固体電池である。
本発明の第3の態様は、LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含む組成物をプレスして成形する工程を含む、電極の製造方法である。
上記本発明の第3の態様において、プレスをするときの温度が第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度以上で該ガラス部分の結晶化温度より50℃高い温度以下であることが好ましい。すなわち、プレスをするときの温度をT、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度をTg、該ガラス部分の結晶化温度をTcとしたとき、Tg≦T≦(Tc+50)であることが好ましい。
上記本発明の第3の態様において、第1の固体電解質がLi10GeP12を含むことが好ましい。
本発明の第4の態様は、正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池の製造方法であって、上記本発明の第3の態様にかかる電極の製造方法によって正極層または負極層を製造する、全固体電池の製造方法である。
本発明によれば、安価に全固体電池の出力を向上させることができる。
図1(A)は第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合およびプレス時の温度とイオン伝導抵抗との関係を示す図である。図1(B)は第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。 図2(A)は第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合およびプレス時の温度とイオン伝導抵抗との関係を示す図である。図2(B)は第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。 全固体電池10を説明する断面図である。 出力特性の評価結果を示す図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
1.電極
本発明の電極は、LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、標準電極電位が1.0V以上である。本発明の電極に含まれるこれらの要素について以下に説明する。
(第1の固体電解質)
第1の固体電解質は、LiGePS型の結晶構造を有する固体電解質である。「LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質」とは、M元素、M元素およびS元素を含有し、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Znからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、P、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V、Nbからなる群から選択される少なくとも一種であり、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=29.58°±0.50°の位置にピークを有し、2θ=29.58°±0.50°のピークの回折強度をIとし、2θ=27.33°±0.50°のピークの回折強度をIとした場合に、I/Iの値が0.50未満であることを特徴とする硫化物固体電解質である。このような結晶構造を有する固体電解質は、Liイオン伝導度が高いことが知られている。第1の固体電解質の具体例としては、Li4−xGe1−x(0.5≦x≦0.7)、Li4−xSn1−x(0.65≦x≦0.75)、Li4−xSi1−x(0.6≦x≦0.75)、Li4−xSi1−x1−y(0.65≦x≦0.75,0.1≦y≦0.35)などを挙げることができる。これらの中で、特にLiイオン伝導度が高いという観点から、Li4−xGe1−x(0.5≦x≦0.7)が好ましい。
(第2の固体電解質)
第2の固体電解質は、少なくとも一部がガラスである固体電解質である。第2の固体電解質は、本発明の電極を製造する前にはガラスであって、本発明の電極の製造過程において少なくとも一部が結晶化したものであってもよい。また、第2の固体電解質としては、加圧したときに第1の固体電解質より変形しやすく、第1の固体電解質より軟化点が低いものを用いる。第2の固体電解質としては、安価で成形性が良好な硫化物系非晶質固体電解質を用いることが好ましい。
このような第2の固体電解質の具体例としては、70(0.75LiS−0.25P)−30LiI、75LiS−25P、60LiS−40SiS、67LiS−33GeS、75LiS−25Al、75LiS−25B、95(0.6LiS−0.4SiS)−5LiPO、70LiS−30P、70(0.6LiS−0.4SiS)−30LiIなどを挙げることができる。これらの中で、イオン伝導度が高いという観点から、70(0.75LiS−0.25P)−30LiI、75LiS−25P、95(0.6LiS−0.4SiS)−5LiPO、70(0.6LiS−0.4SiS)−30LiIが好ましい。特に、70(0.75LiS−0.25P)−30LiIは高いイオン伝導性と安全性の面から望ましい材料である。
本発明の電極において、第1の固体電解質と第2の固体電解質との合計量に対する第2の固体電解質の割合(体積%)は、0%より大きく50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。第2の固体電解質は通常、第1の固体電解質よりも安価である。第1の固体電解質と第2の固体電解質とを混合して用いることによって、電極を安価に製造することができる。ただし、第2の固体電解質は第1の固体電解質に比べてイオン伝導度が低い。よって、第2の固体電解質の割合を上記範囲の上限以下とすることによって、電極のイオン伝導度が低下することを抑制できる。また、第2の固体電解質は第1の固体電解質に比べて変形しやすい。第1の固体電解質と第2の固体電解質とを上記所定の割合で混合して用いることによって、電極の充填密度を高め、活物質と固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)とが接触する界面を増大させやすくなる。その結果、本発明の電極を全固体電池に適用したときに該全固体電池の出力特性を向上させることができると考えられる。
(活物質)
本発明の電極には、本発明の電極の標準電極電位が1.0V以上となる活物質を用いる。本発明の電極の標準電極電位が1.0V未満であると、上述した第1の固体電解質が分解する虞があるからである。
本発明の電極に含有させる活物質の具体例としては、チタン酸リチウム(LiTi12など)、LiCoOやLiNi1/3Co1/3Mn1/3などの層状化合物、LiMnやLiNi0.5Mn1.5などのスピネル化合物、LiCoPOやLiMnPOやLiFePOなどのポリアニオン化合物、LiMnO−LiNi1/3Co1/3Mn1/3などのLi過剰正極活物物質、CuMoなどのシェブレル化合物、などを挙げることができる。これらの中で、本発明の電極を正極に用いる場合は電子伝導性が高いLiNi1/3Co1/3Mn1/3などの層状化合物が好ましく、本発明の電極を負極に用いる場合は第1の固体電解質よりも還元電位が高いチタン酸リチウムなどが好ましい。
(他の構成)
本発明の電極は、上述した第1の固体電解質、第2の固体電解質および活物質の外に、導電性を向上させる導電助剤や活物質と固体電解質とを結着させるバインダー等を含んでいてもよい。
上記導電助剤としては、従来の全固体電池の電極に用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、気相成長炭素繊維、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料のほか、固体電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を用いることができる。
上記バインダーについても、従来の全固体電池の電極に用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、ブチレンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム性状樹脂やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂等を用いることができる。
本発明の電極に含まれる各物質の混合比は、本発明の電極を適用した全固体電池を適切に作動可能な比率であれば特に限定されない。例えば、質量比で、活物質:固体電解質(第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計):導電助剤:バインダー=99〜40:1〜50:0〜5:0〜5の混合比とすることができる。
また、本発明の電極の厚みや形状等は特に限定されるものではない。例えば、5μm以上500μm以下程度の厚みの薄膜とすることができる。
(作用)
上述したように、第1の固体電解質はイオン伝導度が高い。しかしながら、第1の固体電解質は高価である。本発明の電極は、第1の固体電解質と第1の固体電解質より安価な第2の固体電解質とを併用することによって、イオン伝導度が高く、安価に生産できる電極とすることができる。
また、第1の固体電解質は硬くて変形しにくいため、第1の固体電解質および活物質のみを混合して電極を作製すると、第1の固体電解質と活物質とが接触する界面を増大させ難かった。電極反応は固体電解質と活物質との界面で起こるので、固体電解質と活物質との接触面積が大きい方が電極反応を生じさせやすくなり、全固体電池に適用したときに出力特性を向上させやすくなると考えられる。本発明の電極は、第1の固体電解質と第1の固体電解質より変形しやすい第2の固体電解質とを上述した所定の割合で混合して用いることによって、固体電解質として第1の固体電解質のみを用いた場合に比べて、活物質と固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)とが接触する界面を増大させることができる。その結果、全固体電池に適用したときに該全固体電池の出力特性を向上させやすくなると考えられる。なお、固体電解質と活物質とが接触する界面の大きさは、後に説明する電極充填率を用いて間接的に評価することができる。すなわち、電極充填率が高いほど固体電解質と活物質とが接触する界面が大きいと考えられる。
本発明の電極は、全固体電池の負極層または正極層のいずれにも使用可能である。本発明の電極を全固体電池の正極層とするか負極層とするかは、本発明の電極と対になる電極に含まれる活物質によって決まる。すなわち、本発明の電極に含まれる活物質と対極に含まれる活物質との充放電電位を比較して貴な電位を示す活物質を含む方の電極を正極層に、卑な電位を示す活物質を含む方の電極を負極層として、任意の電圧の全固体電池を構成することができる。
ただし、上述したように本発明の電極は電位をある程度高くする必要がある。負極層の電位を高くすると全固体電池のエネルギーを高くすることが難しくなるため、本発明の電極は全固体電池の正極層に適用することが好ましい。
2.電極の製造方法
本発明の電極は、上述した固体電解質や活物質等を含む電極合剤をプレス成形することにより、製造することができる。電極合剤をプレスすることによって、第2の固体電解質が変形し、固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)と活物質とが接触する界面を増大させることができる。
また、上記のようにプレスするとき、所定の温度まで加熱してプレス(ホットプレス)することが好ましい。このようにホットプレスすることによって、第2の固体電解質が軟化してより変形しやすくなり、電極を高密度化させ、固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)と活物質とが接触する界面をより増大させるやすくなる。
なお、ホットプレス時の温度は、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度以上であり、該ガラス部分の結晶化温度を大きく超えない範囲であることが望ましい。一般にガラスはガラス転位温度以上で大きく軟化するためである。また、結晶化すると自由体積の観点からガラスより硬くなるため、結晶化温度を大きく超えないことが望ましいと考えられる。したがって、ホットプレス時の最適温度は、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度や結晶化温度によって異なる。ホットプレス時の温度は、例えば第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度以上で該ガラス部分の結晶化温度より50℃高い温度以下であることが好ましく、30℃高い温度以下であることがより好ましく、20℃高い温度以下であることがさらに好ましい。すなわち、ホットプレス時の温度をT、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度をTg、該ガラス部分の結晶化温度をTcとしたとき、Tg≦T≦(Tc+50℃)であることが好ましく、Tg≦T≦(Tc+30℃)であることがより好ましく、Tg≦T≦(Tc+20℃)であることがさらに好ましい。
電極合剤を室温でプレス成形した電極と180℃でホットプレス成形した電極とを以下のようにして作製し、これらの電極についてイオン伝導抵抗および電極充填率を測定した結果を図1および図2に示した。
第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiIまたは75LiS−25P)を所定の割合で混合した固体電解質と、活物質(LiTi12)と、を体積比で活物質:固体電解質=60:40となるようにヘプタン中で混合し、100℃で乾燥させて電極合剤を得た。次に、この電極合剤を4ton/cmのプレス圧で成形し、電極を得た。この電極について、イオン伝導抵抗と電極充填率とを評価した。
図1(A)は第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)の合計量に対する第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度とイオン伝導抵抗との関係を示す図である。
図1(B)は第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)の合計量に対する第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。
図2(A)は第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(75LiS−25P)の合計量に対する第2の固体電解質(75LiS−25P)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度とイオン伝導抵抗との関係を示す図である。
図2(B)は第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(75LiS−25P)の合計量に対する第2の固体電解質(75LiS−25P)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。
なお、図1および図2において、第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合が0%とは、第1の固体電解質のみを用いた場合を意味し、第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合が100%とは、第2の固体電解質のみを用いた場合を意味する。
図1および図2に示したイオン伝導抵抗は、電極合剤50[mg]を用いて作製した電極のインピーダンス測定による100MHz時のイオン伝導抵抗である。また、図1および図2に示した電極充填率は以下のように測定した。
まず、電極合剤に用いる各材料の真密度と混合割合とから電極合剤の真密度を求める。例えば、LiTi12、Li10GeP12、および70(0.75LiS−0.25P)−30LiIの真密度は、3.49[g/cm]、2.0[g/cm]、2.41[g/cm]なので、体積比で「LiTi12:Li10GeP12:70(0.75LiS−0.25P)−30LiI=60:32:8」としたときの電極合剤の真密度は、3.49[g/cm]×0.6+2.0[g/cm]×0.32+2.41[g/cm]×0.08=2.9268[g/cm]となる。
次に、上記のようにして求めた電極合剤の真密度から求めた膜厚および実際に作製した電極の膜厚から、電極充填率を算出できる。例えば、上記例の電極合剤50[mg]を内径断面積1[cm]のプレスセルに入れてプレスし、全く隙間がない電極(電極充填率100%)を作製したとすると、その膜厚は、50[mg]/2.9268[g/cm]/1[cm]=170[μm]となる。このとき、実際に作製した電極の膜厚が200μmだとすると、電極充填率は170/200×100=85%となる。
図1および図2に示したように、室温でプレス成形した場合より180℃でホットプレス成形した場合の方が、電極充填率が高く、イオン伝導抵抗が低くなっていることがわかる。すなわち、室温でプレス成形した場合より180℃でホットプレス成形した場合の方が、固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)と活物質とが接触する界面を増大させることができ、イオン伝導抵抗が低くなっていることがわかる。
3.全固体電池
次に、本発明の全固体電池について説明する。以下本発明の全固体電池を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明の全固体電池は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図は構成を概略的に示したものであり、各構成要素の大きさや形状を正確に示すものではない。
図3は、本発明の全固体電池10を説明する断面図である。図3では、電極層や固体電解質層等を収容する外装体等の記載を省略している。
図3に示したように、全固体電池10は、負極層1及び正極層2と、これらに挟まれた固体電解質層3と、負極層1に接続された負極集電体4と、正極層2に接続された正極集電体5と、を有している。以下、これらの構成要素について説明する。
(負極層1、正極層2)
負極層1および正極層2には、それぞれ活物質と固体電解質とを含む層である。上述した本発明の電極は、負極層1および/または正極層2に適用される。上述したように、本発明の電極は負極層1にも正極層2にも適用可能である。本発明の電極を全固体電池10の正極層2とするか負極層1とするかは、本発明の電極と対になる電極に含まれる活物質によって決まる。すなわち、本発明の電極に含まれる活物質と対極に含まれる活物質との充放電電位を比較して貴な電位を示す活物質を含む方の電極を正極層2に、卑な電位を示す活物質を含む方の電極を負極層1に用いて、任意の電圧の全固体電池10を構成することができる。
ただし、上述したように本発明の電極は電位をある程度高くする必要がある。負極層1の電位を高くすると全固体電池10のエネルギーを高くすることが難しくなるので、本発明の電極は全固体電池10の正極層2に適用することが好ましい。
上述した本発明の電極を負極層1のみに適用した場合、正極層2は例えば以下のような構成とすることができる。
正極層2に含有させる正極活物質としては、全固体電池で使用可能な公知の正極活物質を適宜用いることができる。そのような正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)やニッケル酸リチウム(LiNiO)等の層状活物質のほか、Li1+xNi1/3Mn1/3Co1/3(xは正の数である。)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li1+xMn2−x−y(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znから選ばれる一種以上である。x及びyは正の数である。)で表わされる組成の異種元素置換Li−Mnスピネル、チタン酸リチウム(LiTiO)(x及びyは正の数である。)、LiMPO(MはFe、Mn、CoまたはNiである。)で表わされるリン酸金属リチウム等を例示することができる。
また、正極層2に含有させる固体電解質としては、全固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができる。そのような固体電解質としては、Li−Ge−P−S、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P、LiPS等の硫化物系非晶質固体電解質を例示することができる。全固体電池10の性能を高めやすくする等の観点から、固体電解質として硫化物固体電解質を用いることが好ましい。
また、正極層2は、導電性を向上させる導電助剤や、正極活物質と固体電解質とを結着させるバインダーを含んでいてもよく、場合によっては増粘剤を含んでいてもよい。
正極層2に含有させる導電助材としては、固体電池に使用可能な公知の導電助材を適宜用いることができる。例えば、気相成長炭素繊維、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料のほか、固体電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を用いることができる。
正極層2に含有させるバインダーとしては、固体電池の正極層に含有させることが可能な公知のバインダーを適宜用いることができる。そのようなバインダーとしては、ブチレンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。
また、上記正極活物質等を液体に分散して調整したスラリー状の正極層用組成物を用いて正極層2を作製する場合、使用可能な液体としてはヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。
また、全固体電池10の性能を高めやすくするために、正極層2はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。
一方、上述した本発明の電極を正極層2のみに適用した場合、負極層1は以下のような構成とすることができる。
負極層1に含有させる負極活物質としては、全固体電池で使用可能な公知の負極活物質を適宜用いることができる。そのような負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質、及び、金属活物質等を挙げることができる。カーボン活物質は、炭素を含有していれば特に限定されず、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えばNb、LiTi12、SiO等を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、Si、及び、Snやこれらの合金等を挙げることができる。また、負極活物質として、リチウム含有金属活物質を用いても良い。リチウム含有金属活物質としては、少なくともLiを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属であっても良く、Li合金であっても良い。Li合金としては、例えば、Liと、In、Al、Si、及び、Snの少なくとも一種とを含有する合金を挙げることができる。
また、負極層1に含有させる固体電解質としては、上述した正極層2に含有させることが可能な固体電解質を例示することができる。また、負極層1には導電性を向上させる導電助剤を含有させてもよい。当該導電助材としては、上述した正極層2に含有させることが可能な導電助剤を例示することができる。また、負極層1には負極活物質や固体電解質を結着させるバインダーを含有させることもできる。当該バインダーとしては、上述した正極層2に含有させることが可能なバインダーを例示することができる。
また、液体に上記負極活物質等を分散して調整したスラリー状の負極層用組成物を用いて負極層1を作製する場合、負極活物質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。
また、全固体電池10の性能を高めやすくするために、負極層1はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。
(固体電解質層3)
固体電解質層3は固体電解質を含む層である。
固体電解質層3に含有させる固体電解質としては、全固体電池の固体電解質層に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができる。このような固体電解質としては、上述した負極層1や正極層2に含有させることが可能な上記固体電解質を例示することができる。このほか、固体電解質層3にはバインダーを含有させることができる。固体電解質層3に含有させるバインダーとしては、全固体電池の固体電解質層に使用可能な公知のバインダーを適宜用いることができる。このようなバインダーとしては、上述した負極層1や正極層2に含有させることが可能な上記バインダーを例示することができる。
また、上記固体電解質等を液体に分散して調整したスラリー状の固体電解質用組成物を正極層や負極層等に塗布する過程を経て固体電解質層3を作製する場合、固体電解質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。
(負極集電体4、正極集電体5)
負極集電体4及び正極集電体5は、それぞれ全固体電池10に適用できる集電体であれば、その材質等は特に限定されない。例えば、金属箔や金属メッシュ、金属蒸着フィルム等を用いることができる。具体的には、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Zn、Ge、In、ステンレス鋼等の金属箔やメッシュ、或いは、ポリアミド、ポリイミド、PET、PPS、ポリプロピレンなどのフィルムやガラス、シリコン板等の上に上記金属を蒸着したもの等を用いることができる。負極集電体4及び正極集電体5の厚みや大きさは特に限定されるものではない。例えば、5μm以上500μm以下程度の厚みとすることができる。
(他の構成)
図示していないが、全固体電池10はラミネートフィルム等の外装体に密封された状態で使用することができる。そのようなラミネートフィルムとしては、樹脂製のラミネートフィルムや、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルム等を例示することができる。
4.全固体電池の製造方法
次に、本発明の全固体電池の製造方法について説明する。
本発明の全固体電池の製造方法は、正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池の製造方法であって、上述した本発明の電極の製造方法によって正極層および/または負極層を製造する。例えば、まず、正極層、負極層及び固体電解質層を構成する各原料を準備する。これらの原料は、上述した通りであり、正極層および/または負極層には、本発明の電極を作製するための原料を用いる。これらの原料を準備した後、それぞれ混練してから塗工して乾燥させることによって、正極層、負極層及び固体電解質層を形成することができる。そして、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体等を積層してセル化した後、積層方向にプレスして拘束することによって、全固体電池を製造することができる。
正極層は、例えば正極活物質及び固体電解質を含むスラリー状の正極層用組成物を正極集電体の表面に塗布して乾燥する過程を経て形成することができる。負極層は、例えば負極活物質及び固体電解質を含むスラリー状の負極層用組成物を負極集電体の表面に塗布して乾燥する過程を経て形成することができる。固体電解質層は、例えば上記のようにして形成した正極層または負極層の表面に固体電解質及びバインダーを含むスラリー状の固体電解質層用組成物を塗布して乾燥する過程を経て形成することができる。上記のようにして正極層、負極層、および固体電解質層を形成した後、固体電解質層が正極層および負極層に挟まれるように、負極集電体、負極層、固体電解質層、正極層および正極集電体を積層した積層体を作製し、積層方向にプレスして拘束することによって、全固体電池を製造することができる。
なお、上記の全固体電池の製造例では、正極層、負極層、および固体電解質層の各層について、各層を構成する材料をスラリー状の組成物にして塗布して乾燥させる方法を例示したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、蒸着や静電粉体塗装などのドライ工程によって正極層、負極層、および固体電解質層を形成してもよい。
1.全固体電池の作製
以下のようにして各例にかかる全固体電池を作製した。
<実施例1>
第1の固体電解質(Li10GeP12)および第2の固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)(ガラス転位温度:約150℃、結晶化温度:約160℃)を、体積比で「第1の固体電解質:第2の固体電解質=80:20」となるように混合し、固体電解質を得た。
次に、上記のようにして混合した固体電解質と、正極活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)と、導電助剤(気相法炭素繊維(VGCF(登録商標)))と、バインダー(ブチルゴム)とを、体積比で「固体電解質:正極活物質:導電助剤:バインダー=40:60:5:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の正極層用組成物を得た。なお、バインダーは、ヘプタンに溶解させて5質量%ヘプタン溶液として用いた(以下のバインダーも同様にプタン溶液として用いた。)。
次に、上記正極層用組成物を正極集電体上に塗布して100℃にて乾燥して正極層(本発明の電極)を得た。
一方、固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)と、負極活物質(カーボン)と、バインダー(ブチルゴム)とが、体積比で「固体電解質:負極活物質:バインダー=40:60:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の負極層用組成物を得た。
次に、上記負極層用組成物を負極集電体上に塗布して100℃にて乾燥して負極層を得た。
また、固体電解質(70(0.75LiS−0.25P)−30LiI)と、バインダー(ブチルゴム)とが、体積比で「固体電解質:バインダー=100:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の固体電解質層用組成物を得た。
次に、上記電解質層用組成物を金属箔上に塗布して乾燥して固体電解質層を得た。その後、固体電解質層を負極層に重ねてプレスし、金属箔から負極層に固体電解質層を転写し、負極層の固体電解質層が転写された側とは反対側の面に負極集電体を接続した。
上記のようにして正極層、固体電解質層、負極層を形成した後、正極層と負極層との間に固体電解質層が配置されるように積層し、積層方向に4ton/cmのプレス圧で加圧した。その後、正極集電体および負極集電体に端子を付けて実施例1にかかる全固体電池を作製した。
<実施例2>
積層方向にプレスする際に180℃に加熱した以外は実施例1と同様にして実施例2にかかる全固体電池を作製した。
<比較例1>
正極層に第1の固体電解質を用いなかった以外は実施例1と同様にして比較例1にかかる全固体電池を作製した。
2.出力特性の評価
上記のようにして作製した実施例1、実施例2、比較例1にかかる全固体電池について、出力特性を測定した。なお、出力特性は、作製した全固体電池を定電流・定電圧(CC/CV)充電で3.6Vに調整した後、定電力(CP)放電を行って測定した。CP放電は放電して10秒後に2.5Vになるように電力(W)を調整して25℃で行った。調整された電力を全固体電池の出力特性として、作製した全固体電池の比較を行った。比較例1の出力特性を100%として、実施例1、2の出力特性を表わした結果を図4に示した。
図4に示した結果からわかるように、第2の固体電解質のみを用いた比較例1に比べて、第1の固体電解質と第2の固体電解質とを併用した実施例1および実施例2は出力特性が向上していた。実施例2は出力特性が特に高くなっており、第1の固体電解質と第2の固体電解質とを併用したうえで電極を作製する際に所定の温度でホットプレスを行うことが好ましいことがわかる。
1 負極層
2 正極層
3 固体電解質層
4 負極集電体
5 正極集電体

Claims (7)

  1. LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、
    標準電極電位が1.0V以上である、電極。
  2. 前記第1の固体電解質がLi10GeP12を含む、請求項1に記載の電極。
  3. 正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池であって、
    前記正極層または前記負極層が請求項1または2に記載の電極である、全固体電池。
  4. LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含む組成物をプレスして成形する工程を含む、電極の製造方法。
  5. 前記プレスをするときの温度が前記第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転位温度以上で該ガラス部分の結晶化温度より50℃高い温度以下である、請求項4に記載の電極の製造方法。
  6. 前記第1の固体電解質がLi10GeP12を含む、請求項4または5に記載の電極の製造方法。
  7. 正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池の製造方法であって、
    請求項4乃至6のいずれかに記載の電極の製造方法によって前記正極層または前記負極層を製造する、全固体電池の製造方法。
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