JP2014133663A - セメント押出成形用混和剤および用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテルを含む混和剤であって、前記セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計量に占める前記セルロース系バインダーの重量割合が85〜95重量%であり、前記混和剤の1重量%水溶液の粘度が4000〜30000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)であり、前記混和剤の1重量%水溶液のTI値(チキソトロピーインデックス)が2.6以下である。
【選択図】 なし
Description
モルタルは粘土状高粘性物質であるために、セメント押出成形物を真空押出成形機を用いて製造する場合、真空押出成形機のパッグスクリュー部、真空脱気室の壁面、オーガスクリュー部、バレル内面等の押し出されるモルタルの経路に、モルタルの小粒物が付着し、長時間の運転によって小粒物が堆積し、次第に乾燥した強固なセメント固着体となる。成形物の品位は、そのセメント固着体が何らかの拍子で脱落し成形物に混入または付着することや、金型出口付近にメヤニとして堆積して成形物表面に筋を入れてしまうこと等によって低下し、成形物は不良品となる。
セメント等の水硬性材料には、有機質である押出成形用混和剤が使用されるが、その際、モルタルの凝結遅延が過剰に発現し、セメントの硬化に問題が生じる可能性が高い。この凝結遅延の問題に対処するために、凝結調整剤、硬化調整剤や急結剤等の薬剤が一般的に広く用いられているが、成形物の品位と強度に悪影響が出てしまう。現時点では押出成形の品位と強度に悪影響を出さない薬剤がないために、これらの剤の使用は最少限に留め、セメント成形用混和剤とその配合には細心の注意が必要である。
特許文献1では、高粘度セルロースエーテルバインダーを選択使用することにより、少ない添加量で、保形性が向上したセメント押出成形製品を能率よく製造することができるとされている。確かに、セルロースエーテルバインダーの添加量を減らしても、押出成形可能であることを教示している。しかし、特許文献1では、押出成形物が金型から出た状態での形状および寸法が維持される性能は良好となるとされているが、他の重要な品位である、良好な表面状態や、押出圧や押出速度等の押出性の向上は得られず、また設備の防汚性能は出ない。
一方で、モルタル付着を防止して設備の汚れの問題を改善するために、機械設備のモルタル接触面への被覆層の形成や、金属材料へのメッキ処理等の表面防着技術の検討が試みられている。しかし、現在のところ、セメント押出成形設備で求められる耐摩耗性を満足させる表面処理剤や表面処理技術は知られていない。また、セメント押出成形における設備の汚れを低減させる混和剤もない。
本発明のセメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテルを含む混和剤であって、前記セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計量に占める前記セルロース系バインダーの重量割合が85〜95重量%であり、前記混和剤の1重量%水溶液の粘度が4000〜30000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)であり、前記混和剤の1重量%水溶液のTI値(チキソトロピーインデックス)が2.6以下である。
前記非イオン界面活性剤が下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物であるとよい。
(但し、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基をそれぞれ示す。pおよびqは、それぞれの平均付加モル数を示し、p=20〜100およびq=5〜500である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダムまたはブロック付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
前記ポリアルキレンオキサイド付加物が、下記一般式(2)で表されるブロック重合体であり、その数平均分子量が1400〜28000であるとよい。
(但し、(EO)r、(PO)pおよび(EO)sはブロック付加してなり、p=20〜100、q=r+s=5〜500である。)
前記セルロース系バインダーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その1重量%水溶液の粘度が5000〜40000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)であると好ましい。
前記セルロース系バインダーがヒドロキシエチルメチルセルロースであると好ましい。
本発明のセメント押出成形用混合物が水をさらに含み、その配合割合が前記無機材料100重量部に対して18〜28重量部であると好ましい。
本発明のセメント押出成形物は、上記セメント押出成形用混合物を押出成形し固化してなる成形物である。
本発明のセメント押出成形物は、その製造の際、押出性の問題、押出機汚れの問題および凝結遅延の問題が解決されており、得られるセメント押出成形物の品位は高い。
本発明のセメント押出成形用混和剤(以下では、単に混和剤ということもある。)は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテルを含み、セメント押出成形に用いられる混和剤である。
セルロース系バインダーは、セメント押出成形用混和剤の主成分であり、後述の水を含むセメント押出成形用混合物(以下では、この混合物をモルタルということもある。)に可塑性と保水性を付与し、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物に良好な押出性と高い品位を与える成分である。セルロース系バインダーは、通常、固体であり、粉体である。
セルロース系バインダーの粘度は、混和剤およびセメント押出成形用混合物(以下では、単に混合物ということもある。)の粘度に大きく影響する。また粘度がこの範囲にあると、モルタルを押出成形して得られるセメント押出成形物の保形性が高くなる。本発明でいう保形性とは、金型より吐出された押出成形物の形状が維持できる性能をいい、品位に大きく関わる物性である。
セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が5000mPa・s未満であると、保形性が不充分であることがあり、セルロースエーテルの配合を増やす必要があることがある。一方、セルロース系バインダーの1%水溶液の粘度が40000mPa・sを超えると、水への溶解が困難となり、また低粘度のセルロースエーテルよりも保水性の点でも劣ることから、混和剤として配合され、押出の際の潤滑効果が不充分となり良好な押出性が得られないことがある。
スターチエーテルは、保水性を有した高分子材料であるが、一般には、セルロース系バインダーに比べ著しく粘度が低い。特に高粘性のセルロース系バインダーと併用することで、セルロース系バインダーの粘度および粘性を改質することができる。スターチエーテルはセメントの凝結遅延を非常に大きくする作用があり、硬化特性に悪影響を与えれば、当然、成形品の強度にも問題が発生する。そのために、混和剤への配合には細心の注意を要する。
スターチエーテルの1重量%水溶液の粘度(ヘプラー粘度計で測定、測定温度20℃)については、特に限定はなく、好ましくは5〜100mPa・s、より好ましくは6〜95mPa・s、さらに好ましくは7〜90mPa・s、特に好ましくは8〜85mPa・sである。スターチエーテルの粘度がこの範囲にあると、混和剤の粘性改質に有効である。スターチエーテルの粘度が5mPa・s未満であると、凝結遅延効果が過剰に発現しセメントの硬化に問題を引き起すことがある。一方、スターチエーテルの粘度が100mPa・sを超える場合は粘性改質効果が得られ難く、防汚効果が低下することがある。
本発明のセメント押出成形用混和剤は、非イオン界面活性剤をさらに含むと好ましく、モルタル中の無機材料や繊維類等へ作用し、分散性およびベアリング効果を発揮することにより、押出性の向上、特に押出速度の向上へ寄与することが可能になる。
非イオン界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルや、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤のうちでも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
また、非イオン界面活性剤としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
(但し、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基をそれぞれ示す。pおよびqは、それぞれの平均付加モル数を示し、p=20〜100およびq=5〜500である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダムまたはブロック付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
オキシプロピレン基(PO)の平均付加モル数pとしては、20〜100であれば特に限定はないが、好ましくは21〜95、より好ましくは22〜90、さらに好ましくは23〜85、特に好ましくは24〜80、最も好ましくは25〜75である。pが20未満であると、疎水性材料への相溶性が十分ではないことがある。一方、pが100超であると、疎水性が強くなりすぎ、材料によっては凝集を引き起こすことがある。
オキシプロピレン基の平均付加モル数(p)とオキシエチレン基の平均付加モル数(q)との比(p/q)は、好ましくは0.04〜20、より好ましくは0.05〜19、さらに好ましくは0.06〜18、よりさらに好ましくは0.07〜17、特に好ましくは0.08〜16、最も好ましくは0.09〜15である。p/qが0.04未満であると、親水性材料への相溶性が十分ではない場合がある。一方、p/qが20超であると、疎水性が強くなりすぎ、材料によっては凝集を引き起こすことがある。
一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物は、セルロース系バインダーやセメントと均一分散し易いことから、20℃での外観が固体であると好ましく、粉体であるとさらに好ましい。ポリアルキレンオキサイド付加物が粉体の場合または液体のポリアルキレンオキサイド付加物をケイ石粉又はシリカ等の無機粒子に吸着させた粉体状物の場合は、その粉体の粒子径がセルロース系バインダーの粒子径と同程度の粒子径、たとえば、24mesh(目開き740μm)以下の粒子が80重量%以上であると、セルロース系バインダーおよび界面活性剤について分離や偏在が生じず、均一粉体となったセメント押出成形用混和剤を得ることから好ましい。
HO−(EO)r(PO)p(EO)s−H (2)
(但し、(EO)r、(PO)pおよび(EO)sはブロック付加してなり、p=20〜100、q=r+s=5〜500である。)
一般式(2)のpおよびqの説明は、一般式(1)で説明されているものと同じである。
ブロック重合体の数平均分子量については、特に限定はないが、セメント系の無機材料の水への分散の観点からは、好ましくは1400〜28000、より好ましくは1500〜26000、さらに好ましくは1600〜24000、特に好ましくは1700〜22000である。ブロック重合体の数平均分子量が1400未満であると、30〜40℃の低温で析出し、界面活性剤としての機能を果さない場合があり、真空押出時の工程の不安定化を引き起こすことがある。一方、ブロック重合体の数平均分子量が28000を超えると、材料の分散性の効果が低下する場合がある。
セメント押出成形用混和剤は、その1重量%水溶液の粘度(JIS K 7117、B型粘度計、測定温度20℃)が、通常4000〜30000mPa・sであり、好ましくは4200〜29000mPa・s、さらに好ましくは4400〜28000mPa・s、特に好ましくは4500〜27000mPa・sである。セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液の粘度が4000mPa・s未満であると、保形性が不充分であることがあり、セメント押出成形用混和剤として押出成形用混合物への配合を増やす必要がある。一方、セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液の粘度が30000mPa・sを超えると、水への溶解性が困難となり、また保水性も低粘度品に劣ることから、押出の際の潤滑効果も不充分となり良好な押出性が得られない。
セメント押出成形用混和剤の1重量%水溶液のTI値が2.6を超えるとモルタルの粘着性が強くなり防汚効果が低下し不適である。一方、TI値が0.9未満であると、モルタルがパサついた状態で、固まりとなり難くなる場合がある。また、粘土系鉱物で多くの場合、低TI値となる混和剤が得られるのだが、粘度系鉱物を添加したセメント押出成形用混和剤は、セメントと混合して使用すると、粘土によるセメント水硬作用物質であるカルシウム成分等の吸着作用等があるため、モルタル中への配合は差し控えることが望ましい。
セメント押出成形用混和剤の凝結遅延時間は、より好ましくは始発時間について(標準始発時間±50分以内)および終結時間について(標準終結時間±50分以内)であり、さらに好ましくは始発時間について(標準始発時間±40分以内)および終結時間について(標準終結時間±40分以内)であり、特に好ましくは始発時間について(標準始発時間±30分以内)および終結時間について(標準終結時間±30分以内)である。
セメント押出成形用混和剤には、上記で説明したセルロース系バインダーやスターチエーテル、必要に応じて配合される非イオン界面活性剤以外に、後述のその他成分を配合してもよい。
セメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダーおよびスターチエーテル、さらに非イオン界面活性剤や後述のその他成分を、たとえば、ナウタミキサー混合機やヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等を用いて混合することによって得られる。
本発明のセメント押出成形用混合物は、セメントおよび細骨材を必須とする無機材料と、上記で説明したセメント押出成形用混和剤とを含む混合物であって、セメント押出成形用混和剤の配合割合が無機材料100重量部に対して0.5〜3重量部である混合物である。
セメントとしては、たとえば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
無機材料は、細骨材よりも粗い粗骨材を含んでもよいが、粗骨材を含まないほうが、押出成形品の表面性が良好となるので好ましい。ここで、粗骨材とは5mm目開きフルイ通過しないものが85重量%を超える無機骨材を意味するものとする。
無機材料では、用途に応じた最適な配合をするべきであるが、無機材料に含まれるセメントおよび無機骨材の重量比(セメント/無機骨材)は、好ましくは80/20〜30/70、さらに好ましくは75/25〜35/65、特に好ましくは70/30〜40/60である。セメント/無機骨材が80/20を超えると、水硬前後の寸法変化が大きくなり過ぎ不適である。一方、セメント/無機骨材が30/70より小さいと、得られるセメント押出成形物の硬化後の強度に問題が発生する。
上記セメント押出成形用混合物は、セメント押出成形用混和剤および無機材料を、たとえば、ナウタミキサー混合機やヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等を用いて混合して得られる。
モルタルは、たとえば、セメント押出成形用混合物を混合機内にて乾式分散し、乾式分散しつつ所定量の水を添加し、必要に応じて混練機等にて混練りすることによって得られる。モルタルの製造に用いる混合機としては、液添加機構が備わった混合機が好ましく、たとえば、主羽根による浮遊拡散混合とチョッパー羽根による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機;プロシェアミキサー、レーディゲミキサーや、拡散混練方式の混合機;オムニミキサーや、逆流式高速混合機;アイリッヒミキサー等が好ましい。
本発明のセメント押出成形物は、水を含むセメント押出成形用混合物(モルタル)を押出成形してなる成形物である。セメント押出成形物は、モルタルを真空押出成形してなる成形物であると好ましい。
セメント押出成形物は、モルタルを押出成形して得られるが、ここで行う押出成形が真空押出成形であると、押出成形物中の気泡が低減され、外観や寸法安定性が良好となる。また、押出成形物が金型から吐出される際のスプリングバック等が防止できるために好ましい。
セメント押出成形は、たとえば、次のようにして行われる。1)モルタルを真空押出成形機のパグミル・パグスクリュー部において予備混練し、その後モルタルを真空脱気室に送り、モルタル中に取り込まれていた気泡を除去する。2)モルタルをさらにバレルに落とし、スクリューまたはプランジャーによってバレル終端部に装着された金型まで送り、金型を通過させることによって各種断面形状のセメント押出成形物が得られる。
この真空押出成形における重要な押出条件として、押出圧力、押出速度等が挙げられる。押出圧力は高すぎると、機械への負担の増大や、金型、スクリュー、バレル等の寿命が短くなることがある。また、電力消費の増大について問題となることがある。したがって、一般には低い押出圧力が望まれる。
得られたセメント押出成形物は、乾燥および養生後、必要に応じてオートクレーブによる高温高圧での養生や蒸気養生、裁断や仕上げ等の各工程を経て、セメント押出成形板やセメント押出製品として建築用資材等に広く使用されている。
上記で説明したセメント押出成形用混和剤やセメント押出成形用混合物には、下記に説明するその他の成分を、本発明によって得られる効果に大きな悪影響を及ぼさない範囲で、配合することができる。なお、押出成形用混和剤は、固体であり、粉体であるのが望ましく、そのような状態になることを妨げるその他の成分は、押出成形用混和剤には配合しないほうが良く、セメント押出成形用混合物に配合することが望ましい。
セメント押出成形物の強度向上に用いられ、安全衛生面で影響がないものとして、ガラス繊維等の無機繊維;パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維等の繊維状材料を配合できる。無機繊維はアスベストを含有しないものであるとよい。
軽量化のために、パーライト等の無機軽量骨材;ポリスチレン系等の有機発泡剤、フライアッシュ、有機質中空微小球等の有機軽量化材を配合できる。
凝結時間調整剤として、また、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物;チオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸塩;亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸塩;硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩;硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;珪酸ナトリウム(水ガラス)等の無機系化合物による凝結促進剤・急結剤等を配合できる。
押出成形板や押出製品の水硬前後の過度の収縮を防止するために、ポリプロビレングリコール、ポリプロピレンポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、アルコキシポリプロピレングリコールアクリレート類等の収縮低減剤を配合できる。
次に、セメント押出成形用混合物に配合することが好ましい成分について説明する。
消泡剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを主成分とするポリオキシアルキレン系消泡剤、ポリプロピレングリコール系消泡剤や鉱物油系消泡剤、変性シリコーン系消泡剤、ジメチルポリシロキサン等を配合できる。
膨張剤として、アルミニウム粉体等を配合できる。また防錆剤、着色剤等を配合できる。
セメントや無機材料の流動化等に寄与し、流動性やワーカービリティを向上させるために、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、高性能AE減水剤等として、以下の成分を配合することができる。
減水剤・AE減水剤として、リグニンスルホン酸塩またはその誘導体、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル誘導体、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸系高分子化合物等を配合できる。
高性能AE減水剤として、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とリグニンスルホン酸類の混合物や、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とポリカルボン酸系高分子化合物の混合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とスランプロス低減剤の混合物、ポリカルボン酸化合物、ポリカルボン酸エーテル系化合物、芳香族アミノスルホン酸化合物等を、本発明の効果に悪い影響のない範囲で必要により配合できる。
なお、本発明のセメント押出成形用混和剤、セメント押出成形用混合物およびセメント押出成形物では、アスベストは一切含まれないと最もよい。
実施例および比較例では、セメント押出成形用混和剤を用いて、セメント押出成形用混合物を調製し、水を加えてモルタルを製造し、押出成形を行ってセメント押出成形物を得た。上記で説明したセメント押出成形用混合物のうちで水を25〜26重量部含むものを、以下の実施例および比較例ではモルタルといい、水を所定量含まぬものをセメント押出成形用混合物ということにする。
(セメント押出成形用混和剤)
表1に示す押出成形用混和剤の成分(合計1.2重量部)をジューサーミキサー(ナショナル MX−X53型)内に入れ、回転数19000rpmで15秒間攪拌し十分に混合して、セメント押出成形用混和剤を得た。
得られた混和剤の1重量%水溶液について、JIS K 7117に従ってB型粘度計を用いた20℃で粘度を測定すると、NO4ローターを使用して、回転数12rpmでは7500mPa・s、回転数6rpmでは9600mPa・s、回転数60rpmでは4150mPa・sであった。この結果から、粘度は7500mPa・s(NO4、12rpm)である。また、TI値は、(6rpm時の粘度)/(60rpm時の粘度)=9600/4150=2.31である。
また、混和剤の凝結遅延時間測定(「JIS R5201 8.凝結試験」に準拠)を実施し、押出成形用混和剤としての適性の判定を行い、合格であった。
表1に示す押出成形用混合物の成分(合計104.2重量部)をレーディゲミキサー(M20型、マツボー製)内に入れ、回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間攪拌し十分に混合して、セメント押出成形用混合物を得た。
得られたセメント押出成形用混合物を、引続きレーディゲミキサー内で撹拌しつつ、このセメント押出成形用混合物に水26重量部を約2〜2.5分間で噴霧するとともに、水噴霧開始から回転100rpmおよびチョッパー2400rpmの攪拌条件下で5分間撹拌し、溶解させ、均質な混合物を得た。
得られた均質な混合物を、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)内に入れ、3分間、充分に混練を行った後、粘土様の高粘性物質であるモルタルを調製した。
このモルタルをゴム手袋にてテニスボール位の団子状物を作成した際、ゴム手袋の汚れは非常に少ないが、モルタルとしてのまとまりは非常に良好であった。
得られたモルタルを真空押出成形機(DE−50D、本田鐵工製)を用いて押出成形し、セメント成形板(セメント押出成形物)を作製した。
なお、成形条件は、真空押出成形機の系内温度は30℃、真空度は−0.096MPa以下であり、金型(40mm×10mm)を使用し、室温25℃、湿度60%の下で平板状のセメント押出成形物を得た。
得られたセメント押出成形物の品位(表面状態、吐出状態、寸法精度)、押出成形時の押出性(押出圧、押出速度、速度の標準偏差)、押出実施の後の各設備の汚れ状況(防汚性)およびセメント押出成形物の硬度を以下に示す評価基準にしたがって評価し、その結果を表1に示した。なお、評価は室温25℃、湿度60%の下で行った。
実施例1において、混和剤の種類および量を表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
実施例1において、混和剤の種類および量を表1に示すものに変更する以外は実施例1と同様に混合してセメント押出成形用混合物をそれぞれ得た。
得られたセメント押出成形用混合物から、実施例1と同様にして、それぞれモルタルを調製し、押出成形してセメント押出成形物を作製し、実施例1と同様に評価して、その結果を表1に示した。
比較例1は、品位、押出性ともに妥当ではあるが、防汚性に劣るものである。このセメント押出成形用混合物を用いて、10Lの双腕ニーダー(HBN−10D、本田鐵工製)で調製したモルタルをゴム手袋にてテニスボール位の団子状物を作成した際、モルタルとしてのまとまりは非常に良好であったが、ゴム手袋の汚れは著しかった。
(表面状態)
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により表面状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物の表面が平滑で良好。
△:セメント押出成形物の表面に凹凸がやや見られる。
×:セメント押出成形物の表面に凹凸が見られるか、または、セメント押出成形物にひび割れが見られる。
セメント押出成形時に金型より押出されるセメント押出成形物を目視により観察し、以下の評価基準により吐出状態の評価を行った。
○:セメント押出成形物が安定に真っ直ぐに押出される。
△:セメント押出成形物が押出される際やや変化が見られる。
×:セメント押出成形物が押出される際蛇行や浪打ち、フクレ等の変化が見られ、安定に真っ直ぐに押出されない。
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物の寸法を測定し、金型寸法と比較することにより以下の評価基準により寸法精度の評価を行った。
○:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以下
△:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以上0.3mm以下
×:セメント押出成形物の幅、厚みの誤差が共に0.3mm以上
(押出圧)
セメント押出成形時に、真空押出成形機に取り付けてある圧力計が示す平均圧力の読み取り値をxとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の平均圧力の読み取り値をyとして、(x/y)×100を計算して押出圧とした。そして、以下の評価基準により押出圧の評価を行った。ここで、押出圧が低いほど、押出成形機への負荷が低く、押出性が良好である。
×:115以上
△:105以上115未満
○:95以上105未満
◎:95未満
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度を測定した値をaとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の速度の読み取り値をbとして、(a/b)×100を計算して押出速度とした。そして、以下の評価基準により押出速度の評価を行った。ここで、押出速度が速いほど生産性が高く、押出性が良好である。
◎:105以上
○:95以上105未満
△:85以上95未満
×:85未満
セメント押出成形時に、真空押出成形機より押出される際のセメント押出成形物の流れる速度の標準偏差をAとし、標準的な押出例と考えられる比較例1の場合の速度の標準偏差をBとして、(A/B)×100を計算して速度の標準偏差とした。そして、以下の評価基準により速度の標準偏差の評価を行った。ここで、速度の標準偏差が小さいほどモルタルの出来上がり状態が均一であり、押出性が良好である。
×:150以上
△:125以上150未満
○:75以上125未満
◎:75未満
(防汚性)
モルタル約5.2Kg(セメントおよびケイ石粉を各々2kg含有、総使用材料の質量)を調整・排出した後の機体内のモルタル残渣を回収し、モルタル残留量%で防汚性を評価した。
レーディゲミキサー(M20型、マツボー製)にてモルタル作成し排出後、羽根を撤去し、機体内に残留したモルタル残渣質量:rグラム
真空押出成形機(DE−50D、本田鐵工製)にて押出成形終了後、金型より吐出が見られなくなるまで排出し、パッグスクリュー・オーガスクリュー等を撤去し、シュレッダー〜真空脱気室間に残留したモルタル残渣質量:tグラム
モルタル残留量%=(総モルタル残留質量)/(総使用材料の質量)×100として、以下の評価基準により防汚性の評価を行った。
〇:3%以下(合格、防汚性良好と判断)
△:3%超〜5%以下(やや不良)
×:5%超(不良)
(凝結遅延性)
各混和剤が0.5重量%となるようにセメントへ配合し、JIS R5201 8.凝結試験に準拠し、50℃での凝結遅延時間の測定を実施した。
標準と考えられる比較例1の混和剤(マーポローズME−350T)の始発時間(約2.5時間)および終結時間(約3.5時間)を標準時間として、以下の評価基準により凝結遅延性の評価を行った。
〇:標準始発時間±1時間以内、且つ、終結時間±1時間以内(合格)
△:標準始発時間±1時間超〜2時間以内、且つ、標準終結時間±1時間超〜2時間以内(やや不良)
×:標準始発時間±2時間超、且つ、標準終結時間±2時間超(不良)
凝結遅延性△では、凝結促進剤を添加が必須となり、品位の低下が避けられない。また、凝結遅延性が×では、水硬性阻害が危惧されるので、混和剤の配合を再考せねばならない。凝結遅延性が×では、セメント等の水硬材に不適と考えられる。
セメント押出成形時に金型より押出されたセメント押出成形物をクレー硬度計(日本碍子製)で硬度を測定し、以下の評価基準により硬度の評価を行った。ここで、「硬」の場合は一般に押出圧が高いことを表す。「軟」の場合は押出圧が低いことを表すが、押出圧が低いことは必要だが、モルタル硬度が「軟」であると保形性の低下でのエッジ部分の意匠性低下や寸法精度に問題が発生する場合がある。「適」の場合は品位および押出性ともに問題発生は少ない。
硬:12.5以上
適:11.5以上、12.5未満
軟:11.5未満
品位の3つの評価項目のうちで、○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
押出性の3つの評価項目のうちで、◎および/または○が2つ以上で、×が1つもない場合を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
また、凝結遅延性評価のうちで〇を合格(合)とし、それ以外を不合格(不)とした。
これらの判定結果より、本出願によるセメント押出成形用混和剤、セメント押出成形用混合物では全てが合格(合)となる。
Claims (10)
- セルロース系バインダーおよびスターチエーテルを含む混和剤であって、
前記セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計量に占める前記セルロース系バインダーの重量割合が85〜95重量%であり、
前記混和剤の1重量%水溶液の粘度が4000〜30000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)であり、
前記混和剤の1重量%水溶液のTI値(チキソトロピーインデックス)が2.6以下である、
セメント押出成形用混和剤。 - 非イオン界面活性剤をさらに含み、その配合割合が前記セルロース系バインダーおよびスターチエーテルの合計100重量部に対して1〜10重量部である、請求項1に記載のセメント押出成形用混和剤。
- 前記非イオン界面活性剤が下記一般式(1)で表されるポリアルキレンオキサイド付加物である、請求項2に記載のセメント押出成形用混和剤。
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(但し、Rは水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基をそれぞれ示す。pおよびqは、それぞれの平均付加モル数を示し、p=20〜100およびq=5〜500である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダムまたはブロック付加してなるポリオキシアルキレン基である。) - 前記ポリアルキレンオキサイド付加物が下記一般式(2)で表されるブロック重合体であり、その数平均分子量が1400〜28000である、請求項3に記載のセメント押出成形用混和剤。
HO−(EO)r(PO)p(EO)s−H (2)
(但し、(EO)r、(PO)pおよび(EO)sはブロック付加してなり、p=20〜100、q=r+s=5〜500である。) - 前記セルロース系バインダーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、その1重量%水溶液の粘度が5000〜40000mPa・s(B型粘度計、測定温度20℃)である、請求項1〜4のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤。
- 前記スターチエーテルが、ヒドロキシルプロピル基の置換度が0.1〜15%である水溶性ヒドロキシプロピル化澱粉であり、その1重量%水溶液の粘度が5〜100mPa・s(ヘプラー粘度計、測定温度20℃)である、請求項1〜5のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤。
- 前記セルロース系バインダーがヒドロキシエチルメチルセルロースである、請求項1〜6のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤。
- セメントおよび細骨材を必須とする無機材料と、請求項1〜7のいずれかに記載のセメント押出成形用混和剤とを含む混合物であって、
前記セメント押出成形用混和剤の配合割合が前記無機材料100重量部に対して0.5〜3重量部である、
セメント押出成形用混合物。 - 水をさらに含み、その配合割合が前記無機材料100重量部に対して18〜28重量部である、請求項8に記載のセメント押出成形用混合物。
- 請求項9記載のセメント押出成形用混合物を押出成形し固化してなる、セメント押出成形物。
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