JP2014131972A - 化合物、及びその製造方法、並びにリン酸オセルタミビルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物である。
ただし、前記一般式(1)中、R1は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R2及びR3は、それぞれ独立にアミノ基の保護基を表す。Xは、CO2R4基(前記R4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。)、ヒドロキシメチル基、及びアルデヒド基のいずれかを表す。
【選択図】なし
Description
シキミ酸はトウシキミの実(八角)から抽出及び精製するか、又は大腸菌によるD−グルコースからの発酵を経て調製される。しかし、これらのプロセスは時間及びコストがかかるという問題を有している。また、トウシキミの実などの植物原料は安定的な供給が困難になる場合もある。したがって、容易に入手可能な原料化合物からリン酸オセルタミビルを効率的に化学合成する手段の開発が求められている。
また、非特許文献2に記載のリン酸オセルタミビルの合成に至る中間体としてのジエン化合物(図1に記載の化合物A)を合成する他の方法が提案されている(例えば、非特許文献3、及び図1参照)。
しかし、これらの提案の技術は、工業的観点からは十分とはいえない。例えば、合成物がラセミ体であること、及び高い毒性を持つチオール化合物を量論的に用いていることなどの問題がある。
この提案の技術は、これまでの従来技術よりも、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な技術である。
しかし、近年、更にリン酸オセルタミビルの需要が高まっている中で、更に光学純度が良く、安価にリン酸オセルタミビルを製造できる技術が求められている。
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
<2> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> 下記一般式(7)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(1)で表される化合物を、下記一般式(3)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(3)で表される化合物を環化し、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(4)で表される化合物のカルボニル基を還元し、下記一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物のNR2R3基をNHR6基(ただし、前記R6は、アミノ基の保護基であって、前記R2及びR3と異なる保護基である)に変換し、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(7)で表される化合物を得る工程とを少なくともこの順で含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<4> 前記<2>から前記<3>のいずれかに記載の化合物の製造方法を含むことを特徴とするリン酸オセルタミビルの製造方法である。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
前記カルボキシル基の保護基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、トリアルキルシリル基、置換基を有していてもよいアリール基などが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。前記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアルキル基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、フェニル基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。前記フェニル基は、更に置換基を有していてもよい。前記フェニル基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。 前記置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ベンジル基などが挙げられる。
前記トリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などが挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフタレン基、アントラセン基などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいアリール基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
これらの中でも、前記R1としては、エチル基が、保護基の除去、交換を行わずに、リン酸オセルタミビルに誘導できる、即ち、リン酸オセルタミビル中のエチルエステルをエステル交換の必要なく導入できることから、リン酸オセルタミビルの製造工程を短縮できる点で好ましい。
前記R4としては、前記R1を脱保護せずに前記R4のみを選択的に脱保護できる保護基であることが好ましい。
また、前記R4としては、温和な酸性条件により脱保護可能な保護基が好ましい。温和な酸性条件とは、例えば、ギ酸を用いた酸性条件である。そのような前記R4としては、t−ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、メトキシエトキシメチル基が好ましい。
また、前記R4としては、メチル基も好ましい。
前記置換基を有していてもよいベンジル基における置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化された炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。前記置換基を有していてもよいベンジル基としては、例えば、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、以降の変換で高収率を与え、かつ脱保護が容易な点で、置換基を有していてもよいアリル基、p−メトキシベンジル基が好ましく、置換基を有していてもよいアリル基がより好ましい。
本発明の化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物を、前記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
第1の変換工程:前記一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1−1)で表される化合物に変換する第1の変換処理を含む工程
第2の変換工程:前記第1の変換処理と、前記第1の変換処理に続いて、下記一般式(1−1)で表される化合物を、下記一般式(1−2)で表される化合物に変換する第2の変換処理とを含む工程
第3の変換工程:前記第1の変換処理と、前記第2の変換処理と、前記第2の変換処理に続いて、下記一般式(1−2)で表される化合物を、下記一般式(1−3)で表される化合物に変換する第3の変換処理とを含む工程
ただし、前記一般式(1−1)中、R1は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R2及びR3は、それぞれ独立にアミノ基の保護基を表す。R4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
前記第1の変換処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(2)で表される化合物のアミノ基に、アミノ基の保護基を付加する保護処理などが挙げられる。
前記第2の変換処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1−1)におけるカルボキシル基の保護基である前記R4の脱保護反応と、前記脱保護反応により生成したカルボキシル基をヒドロキシメチル基に変換する変換反応とを含む処理などが挙げられる。
前記酸を用いた脱保護の温度及び時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第3の変換処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1−2)で表される化合物のヒドロキシメチル基をアルデヒド基に酸化する酸化処理などが挙げられる。
前記酸化処理の温度及び時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
そのため、本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、容易に光学純度が高い状態で得ることができる。そして、光学純度が高い状態の前記一般式(1)で表される化合物は、後述する一般式(7)で表される化合物の製造、及びリン酸オセルタミビルの製造に用いることができる。
したがって、本発明の前記一般式(1)で表される化合物、及び本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法を用いると、後述する一般式(7)で表される化合物、及びリン酸オセルタミビルを、光学収率が良くかつ安価に製造できる。
本発明の化合物の製造方法は、下記一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程(変換工程A)と、
前記一般式(1)で表される化合物を、下記一般式(3)で表される化合物に変換する変換工程(変換工程B)と、
前記一般式(3)で表される化合物を環化し、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程(環化工程)と、
前記一般式(4)で表される化合物のカルボニル基を還元し、下記一般式(5)で表される化合物を得る工程(還元工程)と、
前記一般式(5)で表される化合物のNR2R3基をNHR6基(ただし、前記R6は、アミノ基の保護基であって、前記R2及びR3と異なる保護基である)に変換し、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程(保護基変換工程)と、
前記一般式(6)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(7)で表される化合物を得る工程(脱水工程)とを少なくともこの順で含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記一般式(3)におけるR5の例示としては、例えば、前記一般式(1)中のR1の説明で例示したものなどが挙げられる。
前記一般式(6)〜(7)におけるR6の例示としては、例えば、前記一般式(1)中のアミノ基の保護基の説明で例示したものなどが挙げられる。
なお、(MeO)2PO−CH2−CO2Meを用いる場合には、塩基としてt−ブトキシカリウムを併用する。そうすることで、緩やかなZ−選択性を発現する。すなわち、このホスホン酸エステルを用いて適切に塩基を選択することで目的とするZ体が支配的に得られる。
これらの中でも、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸エチルが、Z選択性及び収率がより優れる点で好ましい。
そして、光学純度が高い状態の前記一般式(7)で表される化合物は、リン酸オセルタミビルの製造に用いることができる。
したがって、本発明の前記一般式(7)で表される化合物の製造方法を用いると、リン酸オセルタミビルを、光学収率が良くかつ安価に製造できる。
本発明のリン酸オセルタミビルの製造方法は、本発明の前記一般式(1)で表される化合物の製造方法、及び本発明の前記一般式(7)で表される化合物の製造方法のいずれかを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記その他の工程としては、前記一般式(7)で表される化合物を用いて、前記リン酸オセルタミビルを合成する工程が挙げられる。該工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、J. Am. Chem. Soc., 128, 6310, 2006に記載の工程が挙げられる。この工程の一例としては、例えば、以下の合成スキームで表される工程が挙げられる。
なお、上記合成スキーム中に示した反応条件及び試薬は、一例であって、前記工程は、その条件及び試薬に限定されるものではない。
赤外吸収スペクトル(IR)は、日本分光株式会社(JASCO)製のFT/IR−4100フーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定した。
核磁気共鳴(NMR,1H NMRは、400MHz、13C NMRは、100MHz)スペクトルは、日本電子株式会社(JEOL)製のECS400を用いて測定した。化学シフト値(δ値)は、溶媒ピーク(CHCl3に関し、1H NMRは、δ=7.24ppm、13C NMRは、δ=77.0ppm)をリファレンスとしてppm単位で記載した。
旋光度は、JASCO社製のP−1030を用いて測定した。
ESI−HRMSスペクトルは、Thermo Fisher Scientific社製のLTQ−Orbitrap XLを用いて測定した。
カラムクロマトグラフィーには、Merck社製のシリカゲルMerck 60(230−400 mesh ASTM)を使用した。
鏡像体過剰率(ee)は、キラル固定相カラムを利用したHPLC法により決定した。HPLC分析には、JASCO社製のHPLCシステム(ポンプ:PU−2080 plus,検出器:UV−2075 plus)を使用した。
<(S)−1−tert−ブチル 5−エチル 2−アミノペンタンジオエート(化合物3)の合成>
L−グルタミン酸γ−エチルエステル(10.0g,57.1mmol,>99%ee,渡辺化学工業株式会社製)を60質量%過塩素酸水溶液(3.43mL,31.4mmol)に懸濁し氷浴下撹拌した。ここに酢酸tert−ブチル(250mL)を加え、均一な溶液となった後、室温で2日間撹拌した。得られた反応溶液に0.1規定塩酸(350mL)を加え、ジエチルエーテルで洗浄した。水層は、炭酸ナトリウムを添加しpHを約9とした上で酢酸エチルにより3回抽出し、得られた有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた。これを減圧濃縮すると、下記化合物3が無色油状物として得られた(10.14g、収率77%)。このものは、NMR測定により純品と確認されたので、特にこれ以上の精製操作を行うことなく次の工程に利用した。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ4.07(q, J=7.1Hz, 2H), 3.28(dd, J=8.2Hz, 5.3Hz, 1H), 2.38(dd, J=7.6Hz, 7.6Hz, 2H), 2.02−1.92(m, 1H), 1.80−1.68(m, 1H), 1.51(s, 2H), 1.40(s, 9H), 1.19(t, J=7.1Hz, 3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ174.8, 173.2, 81.1, 60.3, 54.2, 30.6, 29.8, 27.9, 14.1
IR (neat, cm−1):3385, 2979, 2935, 1731
ESI−HRMS Calcd for C11H22NO4 [M+H]+: 232.1543, Found: 232.1546;
[α]D 25=12.4 (c=1.04, CHCl3)
上記で得られた化合物3(3.0g,13mmol)をアセトニトリル(75mL)に溶解し、粉末無水炭酸カリウム(7.16g,51.8mmol)、臭化アリル(6.73mL,77.8mmol)、及びテトラブチルアンモニウムヨージド(0.480g,1.30mmol)を順次室温の下添加した。反応液は、70℃において7時間撹拌の後、室温へと戻し、不溶物をセライト濾過し酢酸エチルで洗浄した。ろ液を減圧濃縮して得られた残渣は、シリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/32(体積比))により精製することで下記化合物4を無色油状物として得た(3.10g,収率77%)。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ5.78−5.65(m, 2H), 5.15(d, J=17.2Hz, 2H), 5.07(d, J=10.1Hz, 2H), 4.10(q, J=7.1Hz, 2H), 3.38−3.28(m, 3H), 3.01(dd, J=14.4Hz, 8.0Hz, 2H), 2.45−2.26(m, 2H), 2.00−1.80(m, 2H), 1.45(s, 9H), 1.23(t, J=7.1Hz, 3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ173.5, 171.9, 136.7, 116.9, 80.9, 61.1, 60.2, 53.3, 30.9, 28.3, 24.6, 14.2
IR(neat, cm−1):3078, 2978, 2819, 2934, 2841, 1734
ESI−HRMS Calcd for C17H29NO4Na [M+Na]+: 334.1989, Found: 334.1987
[α]D 25=−55.7 (c=1.1, CHCl3).
<(S)−2−(ジアリルアミノ)−5−エトキシ−5−オキソペンタン酸(化合物5)の合成>
実施例1で得られた化合物4(1.40g,4.50mmol)をギ酸(15mL)に溶解し、80℃に加熱し1時間撹拌した。室温に戻した後減圧濃縮し、痕跡量のギ酸をトルエン、及びクロロホルムでそれぞれ3回共沸させることで除去し、下記化合物5を含む淡褐色油状物の残渣を得た。これは精製することなく次の工程に用いた。
<(S)−エチル 4−(ジアリルアミノ)−5−ヒドロキシペンタノエート(化合物6)の合成>
実施例2で得られた化合物5を含む淡褐色油状物(最大で化合物5を4.50mmol含む)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解した後、−10℃に冷却し、トリエチルアミン(3.14mL,22.5mmol)、及びクロロ炭酸エチル(1.28mL,13.4mmol)を順次添加した。15分間撹拌した後、水素化ホウ素ナトリウム(1.02g,27.0mmol)を一度に加え、メタノール(30mL)を滴下し、−10℃のまま30分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を中和し、減圧濃縮を行った後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/4(体積比))で精製することで下記化合物6を無色油状物として得た(869mg,収率80%)。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ5.80−5.67(m, 2H), 5.21−5.05(m, 4H), 4.10(q, J=7.1Hz, 2H), 3.47(dd, J=10.6, 5.2Hz, 1H), 3.34−3.21(m, 3H), 2.96(dd, J=14.2Hz, 7.8Hz, 2H), 2.90−2.78(m, 1H), 2.32−2.17(m, 2H), 1.95−1.83(m, 1H), 1.48−1.35(m, 1H), 1.23(t, J=7.1Hz, 3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ173.1, 136.4, 117.4, 60.6, 60.5, 59.2, 52.1, 31.6, 21.0, 14.2
IR(neat, cm−1):3440, 2978, 2934, 2876, 1733, 1642
ESI−HRMS Calcd for C13H24NO3 [M+H]+: 242.1751, Found: 242.1752
[α]D 25=23.1 (c=1.0, CHCl3)
<(S)−エチル 4−(ジアリルアミノ)−5−オキソペンタノエート(化合物7)の合成>
化合物6(100mg、0.414mmol)にトリエチルアミン(0.21mL、1.51mmol)を0℃にて加えた後、ピリジン・三酸化硫黄錯体(シグマ−アルドリッチ社製,264mg、1.66mmol)をジメチルスルホキシド(1.5mL)に溶解したものを同じ温度で滴下した。得られた溶液を2時間撹拌したのち、氷冷水1mLを加え反応を中和した。反応液をジエチルエーテルで抽出した後、有機層は5質量%クエン酸水溶液、及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、及び減圧濃縮し下記化合物7を含む粗生成物を得た。これを精製することなく次の反応に用いた。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ9.66(s, 1H), 5.75−5.65(m, 2H), 5.16−5.05(m, 4H), 4.06(q, J=7.1Hz, 2H), 3.26−3.11(m, 5H), 2.44−2.37(m, 1H), 2.31−2.23(m, 1H), 1.97−1.88(m, 1H), 1.81−1.72(m, 1H), 1.19(t, J=7.1Hz, 3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ203.6, 173.2, 136.0, 117.8, 66.9, 60.4, 53.7, 31.0, 19.9, 14.2
<(S)−ジエチル 4−(ジアリルアミノ)−(Z)−ヘプト−2−エンジオエート(化合物9)の合成>
0℃においてジフェニルホスホノ酢酸エチルエステル(化合物8、144mg,0.450mmol、東京化成工業株式会社製)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を、ヨウ化ナトリウム(74.0mg,0.494mmol)を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU,0.070mL,0.468mmol)に懸濁したものに滴下した。得られた反応液を0℃で10分間撹拌した後、−78℃まで冷却し、実施例4で得られた化合物7を含む粗生成物(最大で化合物7を0.414mmol含む)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液を滴下した。この反応液を−78℃で更に15分間撹拌した後、1.5時間かけて−10℃まで徐々に昇温した。ここに飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えることで反応を中和し、有機溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣は酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮することで下記化合物9(Z/E比は80/20)を含む残渣を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15.6/1.0(体積比))で精製することで下記化合物9を無色油状物として得た(80.0mg、収率62%(実施例4の合成を含む2工程通算での収率))。
なお、Z/E比は、精製前のクルードサンプルの1H NMR測定によって求めた。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ6.12(dd, J=11.4Hz, 10.3Hz, 1H), 5.89(d, J=11.4Hz, 1H), 5.80−5.70(m, 2H), 5.13−5.04(m, 4H), 4.45(m, 1H), 4.15−4.07(m, 4H), 3.26(m, 2H), 2.91(dd, J=14.4Hz, 7.4Hz, 2H), 2.46(m, 1H), 2.30(m, 1H), 1.93(m, 1H), 1.73(m, 1H), 1.28−1.21(m, 6H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ173.7, 165.8, 147.4, 136.5, 122.1, 116.7, 60.2, 60.1, 56.0, 52.5, 31.1, 27.3, 14.2
IR (neat,cm−1):2980, 2936, 1734, 1732
ESI−HRMS Calcd for C17H28NO4 [M+H]+: 310.2013, Found: 310.2015
[α]D 25=138.5 (c=0.91, CHCl3).
上記で得られた化合物9(340mg,1.10mmol)をTHF(テトラヒドロフラン,5.49mL)に溶かし、−40℃にてリチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS、シグマ−アルドリッチ社製)のTHF溶液(1.0M,3.30mL,3.30mmol,3当量)をゆっくり加え、30分間攪拌した。酢酸エチルで希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去し、下記化合物10(314mg)をケト−エノール混合物として得た。得られた粗生成物は次の反応にそのまま用いた。
ESI−MS m/z 286.1 [M+Na]+
ESI−HRMS Calcd for C15H22NO3 [M+H]+: 264.1594, Found: 264.1592.
上記で得られた化合物10(粗生成物,312mg)をメタノール(5.49mL)に溶かし、−20℃にて水素化ホウ素ナトリウム(83.2mg,2.20mmol)を加え、30分攪拌した。飽和塩化アンモニア水溶液を加えた後、減圧下でメタノールを留去した。更に酢酸エチルを加え、生じた水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒留去、及びシリカゲル精製(SiO2=15g,ヘキサン/酢酸エチル=2/1(体積比))を行い、下記化合物11(180mg、0.680mmol)をジアステレオマー混合物(淡黄色油状物)として62%の収率(2段階の収率)で得た。
ESI−MS m/z 288.2 [M+Na]+
ESI−HRMS Calcd for C15H24NO3 [M+H]+: 266.1751, Found: 266.1750
[α]D 25=23.1 (c=1.0, CHCl3)
上記で得られた化合物11(180mg,0.680mmol)を塩化メチレン(3.39mL)に溶かし、室温でPd(PPh3)4(東京化成工業株式会社製,テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0),78.4mg,0.0678mmol,10mol%)、及びN,N−ジメチルバルビツール酸(636mg,4.07mmol,6当量,和光純薬工業株式会社製)を順次加えた後、1時間攪拌した。溶媒を留去し、Boc2O(二炭酸ジ−tert−ブチル)のアセトニトリル溶液(0.82M,4.13mL,3.39mmol,5当量)、及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3.39mL)を順次加え、室温で3時間攪拌した。酢酸エチルで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去、及びシリカゲル精製(SiO2=25g,ヘキサン/酢酸エチル=1/1(体積比))により下記化合物12(175mg、0.613mmol)をジアステレオマー混合物(淡黄色固体)として91%の収率で得た。
ESI−MS m/z 308.1 [M+Na]+
ESI−HRMS Calcd for C14H23NO5Na [M+Na]+: 308.1468, Found: 308.1468.
[α]D 25=23.1 (c=1.0, CHCl3)
上記で得られた化合物12(172mg,0.603mmol)を塩化メチレン(3.01mL)に溶かし、4℃でメタンスルホニルクロリド(0.0513mL,0.663mmol,1.1当量,和光純薬工業株式会社製)、及びトリエチルアミン(0.167mL,1.21mmol、2当量)を順次加え、10分間攪拌した後、さらに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU,0.279mL,1.87mmol,3.1当量)を加えて25℃で1時間攪拌した。塩化メチレン及び水で希釈した後、水層を塩化メチレンで抽出した。有機層を1N塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒留去し、シリカゲル精製(ヘキサン/ジエチルエーテル=3/1→2/1(体積比))を経て、下記化合物13(140mg、0.523mmol)を87%の収率で得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz):δ7.03(d, J=3.9Hz, 1H), 6.18−6.09(m, 2H), 4.61(m, 1H), 4.42(m, 1H), 4.20(q, J=7.1Hz, 2H), 2.76−2.61(m, 2H), 1.42(s, 9H), 1.29(t, J=7.1Hz, 3H)
13C NMR(CDCl3,100MHz):δ166.8, 154.9, 132.7, 131.7, 127.0, 124.8, 79.5, 60.6, 43.5, 28.8, 28.4, 14.3
IR(neat, cm−1)3352, 2978, 1705
ESI−MS m/z 290.1 [M+Na]+
ESI−HRMS Calcd for C14H21NO4Na [M+Na]+: 290.1363, Found: 290.1361,
[α]D 25=−205.5 (98.9%ee, c=1.1, CHCl3)
lit. [α]D 20=−217 (>99%ee, c=1.1, CHCl3)(Bromfield, K. M.; Graden, H.; Hagberg, D. P.; Olsson, T.; Kann, N. Chem. Commun. 2007, 3183.)
そのため、本発明を用いると、光学収率が良くかつ安価に、リン酸オセルタミビルの中間体及びリン酸オセルタミビルが得られることが確認できた。
<(S)−1−tert−ブチル 5−エチル 2−(ジアリルアミノ)ペンタンジオエート(化合物4)の合成>
実施例1における化合物3から化合物4を得る反応において、反応試薬を変更することにより、収率の向上を確認した。具体的には以下の通りである。
実施例1で得られた化合物3(9.4g,40.6mmol)をエタノール(100mL)に溶解し、粉末無水炭酸水素ナトリウム(13.65g,163mmol)、及び臭化アリル(21.1mL,244mmol)を順次室温の下添加した。反応液は20時間加熱還流下撹拌の後、室温へと戻し、不溶物をセライト濾過し酢酸エチルで洗浄した。ろ液を減圧濃縮して得られた残渣は、シリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=32/1(体積比))により精製することで下記化合物4を無色油状物として得た(10.59g,収率84%)。
<(S)−ジエチル 4−(ジアリルアミノ)−(Z)−ヘプト−2−エンジオエート(化合物9)の合成>
実施例5における化合物7から化合物9を得る反応において、反応試薬を変更することにより、収率及びZ体比率の向上を確認した。具体的には以下の通りである。
−78℃においてビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸エチル(151mg,0.455mmol、シグマ−アルドリッチ社製)と18−crown−6(547mg、2.07mmol、東京化成工業株式会社製)のテトラヒドロフラン(4mL)溶液に、カリウムヘキサメチルジシラジドの0.5Mトルエン溶液(KHMDS、0.95mL、0.476mmol、シグマ−アルドリッチ社製)を加え得られた反応液を−78℃で45分間撹拌した後、実施例4で得られた化合物7を含む粗生成物(最大で化合物7を0.410mmol含む)のテトラヒドロフラン(3mL)溶液をゆっくり滴下した。この反応液を−78℃で更に2時間間撹拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えることで反応を中和し、室温まで昇温した。続いて、有機溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣は酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮することで下記化合物9(Z/E比は98/2)を含む残渣を得た。このものをシリカゲルカラムクロマトフラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=11.5/1.0(体積比))で精製することで下記化合物9を無色油状物として得た(103mg、収率80%(実施例4の合成を含む2工程通算での収率))。
なお、Z/E比は、精製前のクルードサンプルの1H NMR測定によって求めた。
本発明の化合物の製造方法は、リン酸オセルタミビルの工業的製造に有用な中間体を製造することができる。
本発明のリン酸オセルタミビルの製造方法は、工業的製造に適した製造方法であり、リン酸オセルタミビルの工業的製造に好適に用いることができる。
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
<2> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> 変換工程が、一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1−1)で表される化合物に変換する変換処理を含む前記<2>に記載の化合物の製造方法である。
ただし、前記一般式(1−1)中、R1は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。R2及びR3は、それぞれ独立にアミノ基の保護基を表す。R4は、カルボキシル基の保護基及び水素原子のいずれかを表す。
<4> 変換工程が、更に一般式(1−1)で表される化合物を、下記一般式(1−2)で表される化合物に変換する変換処理を含む前記<3>に記載の化合物の製造方法である。
<5> 変換工程が、更に一般式(1−2)で表される化合物を、下記一般式(1−3)で表される化合物に変換する変換処理を含む前記<4>に記載の化合物の製造方法である。
<6> 下記一般式(7)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(1)で表される化合物を、下記一般式(3)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(3)で表される化合物を環化し、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(4)で表される化合物のカルボニル基を還元し、下記一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物のNR2R3基をNHR6基(ただし、前記R6は、アミノ基の保護基であって、前記R2及びR3と異なる保護基である)に変換し、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(7)で表される化合物を得る工程とを少なくともこの順で含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<7> 前記<2>から<6>のいずれかに記載の化合物の製造方法を含むことを特徴とするリン酸オセルタミビルの製造方法である。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
- 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程を含むことを特徴とする化合物の製造方法。
- 変換工程が、一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1−1)で表される化合物に変換する変換処理を含む請求項2に記載の化合物の製造方法。
- 変換工程が、更に一般式(1−1)で表される化合物を、下記一般式(1−2)で表される化合物に変換する変換処理を含む請求項3に記載の化合物の製造方法。
- 変換工程が、更に一般式(1−2)で表される化合物を、下記一般式(1−3)で表される化合物に変換する変換処理を含む請求項4に記載の化合物の製造方法。
- 下記一般式(7)で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物を、下記一般式(1)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(1)で表される化合物を、下記一般式(3)で表される化合物に変換する変換工程と、
前記一般式(3)で表される化合物を環化し、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(4)で表される化合物のカルボニル基を還元し、下記一般式(5)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(5)で表される化合物のNR2R3基をNHR6基(ただし、前記R6は、アミノ基の保護基であって、前記R2及びR3と異なる保護基である)に変換し、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程と、
前記一般式(6)で表される化合物を脱水反応により脱水し、下記一般式(7)で表される化合物を得る工程とを少なくともこの順で含むことを特徴とする化合物の製造方法。
- 請求項2から6のいずれかに記載の化合物の製造方法を含むことを特徴とするリン酸オセルタミビルの製造方法。
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