JP2014114493A - 蒸着用プラスチック成形体、ガスバリア性プラスチック成形体及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、プラスチック成形体の材質にかかわらず、薄膜の密着性に優れた表面を有する蒸着用プラスチック成形体及び高いガスバリア性を有するガスバリア性プラスチック成形体並びにそれらの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、前記アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、前記アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、蒸着用プラスチック成形体、ガスバリア性プラスチック成形体及びそれらの製造方法に関する。
プラスチック成形体のガスバリア性を高めることを目的として、DLC(Diamond Like Carbon)膜、無機酸化膜などのガスバリア性薄膜が施される。しかし、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンは、化学的に不活性な性質を有し、かつ、球晶の性質及び成形性の影響によって、表面が粗くなる傾向にあるため、薄膜の密着性が低いことが知られている。このため、ポリオレフィンからなる成形体にガスバリア性薄膜を形成しても、高いガスバリア性を発現することができなかった。ところで、ポリオレフィンは、飲料又は食品用途に有用な材料である。このため、ガスバリア性薄膜の密着性を改善して、高いガスバリア性を付与することが望まれている。
そこで、膜の密着力を高めるために、酸変性された樹脂を少なくとも含む樹脂層を表面に配置したバリア性容器の提案がある(例えば、特許文献1を参照。)。
また、ポリオレフィンにα,β‐エチレン性不飽和カルボン酸をグラフトして変性した変性ポリオレフィンであって、該変性ポリオレフィン中の不飽和カルボン酸に基づく構成単位濃度が0.01〜10重量%である変性ポリオレフィンの成形品の表面に、無機酸化物薄膜を形成した、ガスバリア性の付与されたオレフィン系樹脂成形品の提案がある(例えば、特許文献2を参照。)。
また、プラスチックフィルムの表面の粗さを平滑化して、ガスバリア薄膜のピンホールの発生を抑制し、該ピンホールを原因とするガス透過性能の低下を防止する提案がある(例えば、特許文献3を参照。)。
ところで、プラスチック成形体の表面にガスバリア性薄膜を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献4〜6を参照。)。特許文献4は、プラズマCVD法で、プラスチック容器の内壁面に硬質炭素膜を形成する技術を開示している。また、特許文献5又は6は、発熱体CVD法で、プラスチック容器の内壁面又は外壁面にガスバリア性薄膜を形成する技術を開示している。
しかし、特許文献1に記載の技術では、酸変性した樹脂そのものを表面層として積層するため、また、特許文献2に記載の技術では、酸変性した樹脂そのもので容器を成形しているため、薄膜の成長に関して重要な数nm〜数十nmのスケールで考えた場合に、グラフト化された箇所が疎らに分布しており、薄膜の密着性が得られたとしても、充分なガスバリア性が得られていない。また、酸変性した樹脂そのものでは、機械物性が低下する懸念がある。特許文献3に記載の技術では、ガスバリア性薄膜のピンホールは少なくなる可能性はあるが、ポリオレフィンが薄膜の密着に適した官能基を有さないことによる問題を解決できるわけではない。
本発明の目的は、プラスチック成形体の材質にかかわらず、薄膜の密着性に優れた表面を有する蒸着用プラスチック成形体及び高いガスバリア性を有するガスバリア性プラスチック成形体並びにそれらの製造方法を提供することである。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、前記プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、前記ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、該アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質であって、該ラジカル発生物質の(数1)で表されるラジカル濃度が0.15〜0.7M(mol/L)であることが好ましい。ガスバリア性薄膜の密着性に優れたグラフト重合層を形成することができる。
(数1)ラジカル濃度[M]=ラジカル発生物質濃度[M]×理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数
(数1)ラジカル濃度[M]=ラジカル発生物質濃度[M]×理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面である形態を包含する。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施したコロナ放電処理面である形態を包含する。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施した火炎処理面である形態を包含する。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記中間膜形成工程を2回以上繰り返すことが好ましい。適度な長さのグラフト鎖を形成して、ガスバリア薄膜の密着性に優れた表面とすることができる。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、中間膜形成工程とその次に行う中間膜形成工程との間に、洗浄工程を行うことが好ましい。プラスチック成形体の表面に密着しない余剰なポリアクリル酸を除去して、グラフト重合層をより緻密に形成して、ガスバリア薄膜の密着性に優れた表面とすることができる。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、前記中間膜形成工程中に、前記プラスチック成形体の表面での前記溶液の滞留を抑制するために、前記溶液の強制的な流動を行うことが好ましい。プラスチック成形体の表面に密着しない余剰なポリアクリル酸を除去して、グラフト重合層をより緻密に形成して、ガスバリア薄膜の密着性に優れた表面とすることができる。
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法は、本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体の前記グラフト重合層上に、前記ガスバリア性薄膜を形成するガスバリア性薄膜形成工程を有することを特徴とする。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体において、前記プラスチック成形体の表面にアクリル酸がグラフト重合したグラフト重合層が設けられ、該グラフト重合層を深さ方向に二分して、前記プラスチック成形体とは反対側を上層とし、前記プラスチック成形体側を下層としたとき、前記グラフト重合層を深さ方向にX線光電子分光分析すると、前記上層の(数2)で表される酸素含有率が、前記下層の(数2)で表される酸素含有率よりも高いことを特徴とする。
(数2)酸素含有率={酸素含有量[atomic%]/(酸素含有量[atomic%]+炭素含有量[atomic%])}×100
(数2)酸素含有率={酸素含有量[atomic%]/(酸素含有量[atomic%]+炭素含有量[atomic%])}×100
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体では、前記上層の(数2)で表される酸素含有率が、前記下層の(数2)で表される酸素含有率の1.3倍以上であることが好ましい。ガスバリア性の密着性をより高めることができる。
本発明に係る蒸着用プラスチック成形体では、前記プラスチック成形体が、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有する樹脂で形成されていることが好ましい。これらの樹脂は不活性でありガスバリア性薄膜の形成が困難であることが知られているが、ガスバリア性の密着性をより高めることができる。
本発明に係るガスバリア性プラスチック成形体は、本発明に係る蒸着用プラスチック成形体の前記グラフト重合層上に前記ガスバリア性薄膜が設けられ、該ガスバリア性薄膜が、DLC膜、SiOx膜、SiOC膜、SiON膜、SiN膜、Al膜又はAlOx膜であることを特徴とする。
本発明は、プラスチック成形体の材質にかかわらず、薄膜の密着性に優れた表面を有する蒸着用プラスチック成形体及び高いガスバリア性を有するガスバリア性プラスチック成形体並びにそれらの製造方法を提供することができる。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
(蒸着用プラスチック成形体の製造方法)
(第一実施形態)
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、前記アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有する。
(第一実施形態)
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、前記アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有する。
表面処理工程は、プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける工程である。ラジカル発生手段は、プラスチック成形体の表面を活性化するための手段である。
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質であって、ラジカル発生物質の(数1)で表されるラジカル濃度が0.15〜0.7Mであることが好ましい。
(数1)ラジカル濃度[M]=ラジカル発生物質濃度[M]×理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数
(数1)ラジカル濃度[M]=ラジカル発生物質濃度[M]×理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数
ラジカル発生物質は、ラジカル開始剤とも呼ばれ、プラスチック成形体の表面に作用して水素の引き抜き反応を起こさせる物質である。ラジカル発生物質のラジカル生成機構は、例えば、熱又は光によって自らが分解してラジカルを生成する形態、光の作用によって励起状態となってラジカルを生成する形態である。自らが分解してラジカルを生成する形態を有するラジカル発生物質は、例えば、塩素分子などのジハロゲン、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物である。また、励起状態となってラジカルを生成する形態を有するラジカル発生物質は、例えば、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物(ペルオキシド)又はベンゾフェノンなどのケトンである。このうち、水素原子を引き抜く効果が高い点で、ペルオキシド、ケトンであることが好ましく、ベンゾフェノンであることがより好ましい。
数1において、理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数とは、ラジカル物質が分解又は励起して生成する不対電子の数の理論値をいう。理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数の具体例としては、ジハロゲンは2であり、AIBNは2であり、過酸化ベンゾイルは2であり、ベンゾフェノンは1である。
ラジカル発生物質の(数1)で表されるラジカル濃度は、0.15〜0.7Mであることが好ましく、0.2〜0.7Mであることがより好ましい。0.15M未満では、所望の厚さのグラフト重合層が得られない。その結果、ガスバリア性薄膜の密着性が劣る場合がある。0.7Mを超えると、プラスチック成形体の表面がラジカルに破壊されて粗くなり、グラフト重合層の表面が粗くなる場合がある。その結果、ガスバリア性薄膜の密着性に優れた表面を得ることができない場合がある。
ラジカル発生物質の溶媒は、特に制限はなく、例えば、アセトン、エタノール、デカヒドロナフタレンである。
ラジカル発生物質の塗布方法は、特に制限はないが、例えば、浸漬法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法又は真空中で行う蒸発法若しくは噴霧法である。また、プラスチック成形体が容器であり、その内壁面にグラフト重合層を形成する場合には、ラジカル発生物質を容器内に注入して注出する方法を採用してもよい。
ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質である場合、表面処理工程を中間膜形成工程に先立って別工程で行うことで、プラスチック成形体の表面近傍にラジカル発生物質を局所的に存在させることができる。その結果、プラスチック成形体の表面でグラフト重合反応を効率的に進めて、ガスバリア性薄膜の密着性の高い表面を得ることができる。一方、ラジカル発生物質をモノマー溶液に分散すると、プラスチック成形体の表面に密着しないポリアクリル酸が過剰に発生して、ガスバリア性薄膜の密着性の高い表面が得られない場合がある。
中間膜形成工程は、表面処理工程で設けたラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、グラフト重合層を形成する工程である。ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質である場合、グラフト重合反応は、光重合反応又は熱重合反応であることが好ましい。より好ましくは、光重合反応である。
グラフト重合反応は、プラスチック成形体を、アクリル酸モノマーを含有する溶液(以降、モノマー溶液ということもある。)に浸漬した状態で行うことが好ましい。プラスチック成形体が容器であり、その内壁面にグラフト重合層を形成する場合には、処理液を容器内に注入する方法を採用してもよい。アクリル酸モノマーは、示性式CH2=CHCOOHで表される不飽和カルボン酸モノマーであり、重合するとポリアクリル酸となる。モノマー溶液を十分に供給できる場合には、モノマー溶液を塗布又は噴霧によってプラスチック成形体に供給してもよい。
ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質である場合について、グラフト重合層の形成機構を簡単に説明する。プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬したところへ、光又は熱を与えると、プラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質がラジカルを発生する。このラジカルがプラスチック成形体の表面から水素原子を引き抜いて、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成する。そして、このラジカルを反応開始点として、アクリル酸モノマーがプラスチック成形体の表面にグラフト重合してグラフト重合層が形成する。
モノマー溶液中のアクリル酸モノマーの濃度(以降、モノマー濃度ということもある。)は、0.01〜5.0Mである。より好ましくは、0.25〜1.0Mである。モノマー濃度が0.01M未満では、所望の厚さのグラフト重合層を得るのに要する反応時間が長すぎて実用的でない。モノマー濃度が0.5Mを超えると、プラスチック成形体の表面近傍以外でも重合反応が進行してポリアクリル酸が過剰に生成する。その結果、ガスバリア性薄膜の密着性に優れた表面を得ることができない。
モノマー溶液の溶媒は、例えば、水、アルコールなどを含有する水溶液である。飲料・食品用途に対しては、有機溶剤を不要とできる点は安全衛生性の観点でメリットがあり、本発明においては、水を溶媒とすることが好ましい。
モノマー溶液は、アクリル酸モノマー以外に、安定剤などの添加剤を含有してもよい。安定剤は、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p‐ヒドロキシアニソールである。
グラフト重合反応の反応温度は、40℃以上である。より好ましくは60℃以上である。本明細書において、グラフト重合反応の反応温度は、モノマー溶液の温度である。反応温度が40℃未満では、グラフト重合層を形成することができない。また、反応温度は、100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
グラフト重合反応の反応時間は、1〜60分間であることが好ましく、20〜40分間であることがより好ましい。ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質である場合、グラフト重合反応の反応時間は、グラフト重合が光重合の場合は所定の温度のモノマー溶液に浸漬した状態で光を照射した時間であり、グラフト重合が熱重合の場合は所定の温度に加熱したモノマー溶液に浸漬した時間である。
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、中間膜形成工程を2回以上繰り返すことが好ましい。2回以上繰り返すことで、グラフト鎖を適度な長さにすることができる。その結果、ガスバリア薄膜の密着性をより高めることができる。中間膜形成工程を2回以上繰り返す形態は、グラフト重合反応が光重合である場合は、例えば、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬した状態のまま光の点灯及び消灯を2回以上繰り返し行う形態、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬して光照射し一旦取り出して再度所定の温度のモノマー溶液に浸漬して光照射することを2回以上繰り返す形態である。また、グラフト重合反応が熱重合である場合は、例えば、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬した状態のまま冷却し再度所定の温度に加熱することを2回以上繰り返し行う形態、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬した状態から一旦取り出し再度所定の温度のモノマー溶液に浸漬することを2回以上繰り返す形態である。ここで、中間膜形成工程を2回以上行うときは、反応時間は各回のグラフト重合の反応時間を合計した時間である。また、各中間膜形成工程では、反応条件(例えば、モノマー濃度、反応温度又は反応時間)を同一の条件で行うか又は異なる条件で行ってもよい。同一条件で行う場合であっても、複数回の中間膜形成工程を行うことで、モノマー濃度の管理は容易となる。
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、中間膜形成工程とその次に行う中間膜形成工程との間に、洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程は、成形体の表面から溶液を除去して、プラスチック成形体の表面に密着しない余剰なポリアクリル酸を除去することができる。洗浄工程を行うことで、グラフト重合層をより緻密に形成することができる。その結果、ガスバリア薄膜の密着性をより高めることができる。洗浄は、例えば、プラスチック成形体をモノマー溶液から取り出して液切りする形態、プラスチック成形体をモノマー溶液から取り出して水洗する形態を包含する。また、洗浄工程後に、乾燥工程を更に行ってもよい。
中間膜形成工程を2回以上繰り返す場合において、中間膜形成工程とその次に行う中間膜形成工程との間に、グラフト重合層の表面にラジカル発生手段を設ける工程を行うことが好ましい。次に行う中間膜形成工程において、より効率的にグラフト重合層を形成することができる。ラジカル発生手段は、プラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質であるか、又は後述するプラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面、コロナ放電処理面若しくは火炎処理面であってもよい。
第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、中間膜形成工程中に、プラスチック成形体の表面での溶液の滞留を抑制するために、溶液の強制的な流動を行うことが好ましい。溶液の強制的な流動は、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬した状態のままプラスチック成形体の表面近傍に存在するアクリル酸モノマーを移動させて、プラスチック成形体の表面に密着しない余剰なポリアクリル酸を除去することを目的とする。溶液の強制的な流動を行うことで、グラフト重合層をより緻密に形成することができる。その結果、ガスバリア薄膜の密着性をより高めることができる。また、中間膜形成工程を一旦中止することなく連続的に行いながら、緻密なグラフト重合層を形成することができるため、作業の効率を図ることができる。溶液の強制的な流動は、例えば、モノマー溶液の撹拌、モノマー溶液の循環、反応容器又はプラスチック成形体の振とうを包含する。溶液の強制的な流動は、中間膜形成工程を通して連続的に行うか、又は断続的に行ってもよい。また、中間膜形成工程を2回以上行う場合は、溶液の強制的な流動を各工程の全てで行うか、又は溶液の強制的な流動を行わない工程があってもよい。
次に、第二〜第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法について説明する。第二〜第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法は、ラジカル発生手段が異なる以外は、第一実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法と基本的な構成を同じくする。このため、ここでは共通する点についての説明を省略し、相違する点について説明する。
(第二実施形態)
第二実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面にプラズマ処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
第二実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面にプラズマ処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理であることが好ましい。プラズマ化するガスの種類は、例えば、窒素、酸素、空気である。例えば、プラスチック基板の表面処理向けの大気圧プラズマトーチを用いた場合、2秒以内の処理によって、ラジカルを処理面に発生させることができる。
ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面である場合、グラフト重合反応の反応時間は、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬している時間である。中間膜形成工程を2回以上繰り返す形態は、例えば、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬した状態から一旦取り出し再度浸漬することを2回以上繰り返す形態である。
(第三実施形態)
第三実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施したコロナ放電処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面にコロナ放電処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
第三実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施したコロナ放電処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面にコロナ放電処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
コロナ放電処理の放電量は、30〜170W/m2/minであることが好ましく、60〜140W/m2/minであることがより好ましい。
ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に施したコロナ放電処理面である場合、グラフト重合反応の反応時間は、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬している時間である。また、中間膜形成工程を2回以上繰り返す形態は、例えば、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬した状態から一旦取り出し再度浸漬することを2回以上繰り返す形態である。
(第四実施形態)
第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施した火炎処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面に火炎処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法では、ラジカル発生手段が、プラスチック成形体の表面に施した火炎処理面であることが好ましい。プラスチック成形体の表面に火炎処理を施すことで、プラスチック成形体の表面にラジカルを生成することができる。そして、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬すると、プラスチック成形体の表面に残留するラジカルを反応開始点としてグラフト重合反応が進行する。
火炎処理のガスの種類は、炭化水素ガスであることが好ましい。ガスには、ケイ素を混合することがより好ましい。また、火炎の温度は、800〜1500℃であることが好ましい。処理時間は、2秒以内であることが好ましい。ここで、火炎の温度は、火炎がプラスチック成形体の表面に接している部分の温度であり、例えば、放射温度計で測定する。
ラジカル発生手段がプラスチック成形体の表面に施した火炎処理面である場合、グラフト重合反応の反応時間は、プラスチック成形体を所定の温度のモノマー溶液に浸漬している時間である。また、中間膜形成工程を2回以上繰り返す形態は、例えば、プラスチック成形体をモノマー溶液に浸漬した状態から一旦取り出し再度浸漬することを2回以上繰り返す形態である。
(ガスバリア性プラスチック成形体の製造方法)
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法は、第一〜第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体のグラフト重合層上に、ガスバリア性薄膜を形成するガスバリア性薄膜形成工程を有する。
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体の製造方法は、第一〜第四実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体のグラフト重合層上に、ガスバリア性薄膜を形成するガスバリア性薄膜形成工程を有する。
ガスバリア性薄膜の形成方法は、特に制限はなく公知の成膜方法を用いることができる。公知の成膜方法は、例えば、プラズマCVD法、発熱体CVD法などの化学気相成長(CVD)法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相成長(PVD)法である。本明細書では、発熱体CVD法とは、発熱体CVD法、Cat‐CVD法又はホットワイヤーCVD法と呼ばれるCVD法をいう。プラスチック成形体が、飲料又は食品向け容器である場合には、プラズマCVD法又は発熱体CVD法であることがより好ましい。これらは、立体的な各種容器形状に対して応用可能で、かつ、他の手法と比較して低コストに成膜することができる。ガスバリア薄膜の原料ガスは、公知のガスを用いることができる。公知のガスは、例えば、特許文献4〜6に記載した原料ガスである。
(蒸着用プラスチック成形体)
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体において、プラスチック成形体の表面にアクリル酸がグラフト重合したグラフト重合層が設けられ、グラフト重合層を深さ方向に二分して、プラスチック成形体とは反対側を上層とし、プラスチック成形体側を下層としたとき、グラフト重合層を深さ方向にX線光電子分光分析(以降、XPS分析ということもある。)すると、上層の(数2)で表される酸素含有率が、下層の(数2)で表される酸素含有率よりも高い。
(数2)酸素含有率={酸素含有量[atomic%]/(酸素含有量[atomic%]+炭素含有量[atomic%])}×100
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体は、プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体において、プラスチック成形体の表面にアクリル酸がグラフト重合したグラフト重合層が設けられ、グラフト重合層を深さ方向に二分して、プラスチック成形体とは反対側を上層とし、プラスチック成形体側を下層としたとき、グラフト重合層を深さ方向にX線光電子分光分析(以降、XPS分析ということもある。)すると、上層の(数2)で表される酸素含有率が、下層の(数2)で表される酸素含有率よりも高い。
(数2)酸素含有率={酸素含有量[atomic%]/(酸素含有量[atomic%]+炭素含有量[atomic%])}×100
グラフト重合層を深さ方向に二分して、プラスチック成形体とは反対側を上層とし、プラスチック成形体側を下層としたとき、グラフト重合層を深さ方向にX線光電子分光分析すると、上層の(数2)で表される酸素含有率が、下層の(数2)で表される酸素含有率よりも高い。上層の(数2)で表される酸素含有率が下層の(数2)で表される酸素含有率と同じか又は低いと、ガスバリア性薄膜の密着性に優れた表面を得ることができない。
本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体では、上層の(数2)で表される酸素含有率が、下層の(数2)で表される酸素含有率の1.3倍以上であることが好ましい。より好ましくは1.5倍以上である。上層の酸素含有率が、下層の酸素含有率の1.3倍未満では、ガスバリア性薄膜の密着性が劣る場合がある。
プラスチック成形体を構成する樹脂は、分子構造中に水素原子を有することが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリウレタン樹脂(PU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体では、プラスチック成形体が、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有する樹脂で形成されていることが好ましい。これらの樹脂は不活性でありガスバリア性薄膜の形成が困難であることが知られている。また、ポリプロピレンからなる成形体は表面に深さ50nm程度の凹凸を有するため、ガスバリア性薄膜の形成が更に困難であることが知られている。しかし、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体では、表面にグラフト重合層を設けることによって、ガスバリア性薄膜の密着性をより高めることができる。プラスチック成形体は、1種の樹脂からなるか又は2種以上の樹脂の混合物であってもよい。また、プラスチック成形体は、単層体であるか又は2層以上の積層体であってもよい。また、プラスチック成形体は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、軟化剤などの各種助剤を含有していてもよい。
ポリプロピレンは、例えば、イソスタチックポリプロピレン(iPP)、シンジオスタチックポリプロピレン(sPP)を包含する。また、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を包含する。
プラスチック成形体の形状は、特に制限はないが、例えば、容器、フィルムである。グラフト重合層を形成する表面は、例えば、プラスチック成形体が容器である場合には、その内壁面若しくは外壁面のいずれか一方又は両方であり、プラスチック成形体がフィルムである場合には、片面又は両面である。
プラスチック成形体の厚さは、目的及び用途に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。プラスチック成形体が、例えば、飲料用ボトルなどの容器である場合には、ボトルの肉厚は、100〜500μmであることが好ましく、150〜300μmであることがより好ましい。また、プラスチック成形体が、包装袋を構成するフィルムである場合には、フィルムの厚さは、3〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
グラフト重合層は、プラスチック成形体とガスバリア性薄膜との接着性を良好にするための中間膜としての役割をもつ。グラフト重合層は、プラスチック成形体の表面に存在するポリマーにアクリル酸が枝状に重合して形成した層である。グラフト重合層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。0.1μm未満では、プラスチック成形体の表面の凹凸を覆うことができず、ガスバリア性薄膜の密着性が劣る場合がある。10μmを超えると、容器やフィルムの寸法精度の関係上好ましくない場合がある。また、凹凸の不均一な粗い表面となり好ましくない場合がある。
(ガスバリア性プラスチック成形体)
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体は、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体のグラフト重合層上にガスバリア性薄膜が設けられ、ガスバリア性薄膜が、DLC膜、SiOx膜、SiOC膜、SiON膜、SiN膜、Al膜又はAlOx膜である。
本実施形態に係るガスバリア性プラスチック成形体は、本実施形態に係る蒸着用プラスチック成形体のグラフト重合層上にガスバリア性薄膜が設けられ、ガスバリア性薄膜が、DLC膜、SiOx膜、SiOC膜、SiON膜、SiN膜、Al膜又はAlOx膜である。
ガスバリア薄膜の厚さは、5〜100nmであることが好ましく、20〜40nmであることがより好ましい。
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(試験例I−1)
(蒸着用プラスチック成形体の製造)
試験例I−1として、モノマー濃度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。プラスチック成形体として、市販のiPP樹脂(SigmaAldrich社製)を熱プレスして100μm厚のポリプロピレン製フィルム(以降、PPフィルムという。)を用意した。表面処理工程は、ラジカル発生物質としてベンゾフェノンをアセトンにラジカル濃度0.158Mになるように溶解して調製した処理液に、PPフィルムを1分間浸漬して取り出し、直ちに次の中間膜形成工程に移行した。中間膜形成工程では、PPフィルムを、所定のアクリル酸モノマー濃度を含有する60℃のモノマー水溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を60分間照射してグラフト重合反応を進めた。ここで、モノマー溶液の温度を反応温度とし、紫外線の照射時間を反応時間とした。その後、PPフィルムをモノマー溶液から取り出して、室温の純水中に移して16時間浸漬した後、更にPPフィルムを取り出して室温の空気中で16時間乾燥し、蒸着用PPフィルムを得た。各実施例又は比較例のモノマー濃度を表1に示す。
(蒸着用プラスチック成形体の製造)
試験例I−1として、モノマー濃度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。プラスチック成形体として、市販のiPP樹脂(SigmaAldrich社製)を熱プレスして100μm厚のポリプロピレン製フィルム(以降、PPフィルムという。)を用意した。表面処理工程は、ラジカル発生物質としてベンゾフェノンをアセトンにラジカル濃度0.158Mになるように溶解して調製した処理液に、PPフィルムを1分間浸漬して取り出し、直ちに次の中間膜形成工程に移行した。中間膜形成工程では、PPフィルムを、所定のアクリル酸モノマー濃度を含有する60℃のモノマー水溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を60分間照射してグラフト重合反応を進めた。ここで、モノマー溶液の温度を反応温度とし、紫外線の照射時間を反応時間とした。その後、PPフィルムをモノマー溶液から取り出して、室温の純水中に移して16時間浸漬した後、更にPPフィルムを取り出して室温の空気中で16時間乾燥し、蒸着用PPフィルムを得た。各実施例又は比較例のモノマー濃度を表1に示す。
(試験例I−2)
(蒸着用プラスチック成形体の製造)
試験例I−2として、中間膜形成工程を2回行ってグラフト重合層を設けて蒸着用プラスチック成形体として蒸着用PPフィルムを形成した。すなわち、試験例I−1において、中間膜形成工程として、PPフィルムを、モノマー溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を照射し、一旦モノマー溶液から取り出し、再度モノマー溶液に浸漬して紫外線を照射してグラフト重合反応を進めた以外は、試験例I−1と同様に行った。各実施例の表面処理工程における処理液のラジカル発生物質の種類及びラジカル濃度、各中間膜形成工程におけるモノマー濃度、重合反応温度及び重合時間、並びにグラフト重合層の厚さを表2に示す。
(蒸着用プラスチック成形体の製造)
試験例I−2として、中間膜形成工程を2回行ってグラフト重合層を設けて蒸着用プラスチック成形体として蒸着用PPフィルムを形成した。すなわち、試験例I−1において、中間膜形成工程として、PPフィルムを、モノマー溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を照射し、一旦モノマー溶液から取り出し、再度モノマー溶液に浸漬して紫外線を照射してグラフト重合反応を進めた以外は、試験例I−1と同様に行った。各実施例の表面処理工程における処理液のラジカル発生物質の種類及びラジカル濃度、各中間膜形成工程におけるモノマー濃度、重合反応温度及び重合時間、並びにグラフト重合層の厚さを表2に示す。
(試験例I−3)
試験例I−3として、表面処理工程を、プラズマ処理面、コロナ放電処理面又は火炎処理面に変更して、蒸着用プラスチック成形体として蒸着用PPフィルムを形成した。表面処理工程は、それぞれ次のとおり行った。また、中間膜形成工程は、試験例I−1に準じてそれぞれ行った。このとき、モノマー濃度、重合反応温度及び重合時間は表3に示す条件で行った。
試験例I−3として、表面処理工程を、プラズマ処理面、コロナ放電処理面又は火炎処理面に変更して、蒸着用プラスチック成形体として蒸着用PPフィルムを形成した。表面処理工程は、それぞれ次のとおり行った。また、中間膜形成工程は、試験例I−1に準じてそれぞれ行った。このとき、モノマー濃度、重合反応温度及び重合時間は表3に示す条件で行った。
(実施例11)
表面処理工程としてプラズマ処理を行った。プラズマ処理は、プラズマ装置(プラズマトリーターAS400、プラズマトリート社製)を用いて、手作業で一様に空気プラズマ処理する作業を2秒間行った。
表面処理工程としてプラズマ処理を行った。プラズマ処理は、プラズマ装置(プラズマトリーターAS400、プラズマトリート社製)を用いて、手作業で一様に空気プラズマ処理する作業を2秒間行った。
(実施例12)
表面処理工程としてコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理は、コロナ放電装置(CTW−0112、浅草製作所社製)を用いて、150W/m2/minとなるように実施した。
表面処理工程としてコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理は、コロナ放電装置(CTW−0112、浅草製作所社製)を用いて、150W/m2/minとなるように実施した。
(実施例13)
表面処理工程として火炎処理を行った。火炎処理は、実験用の一般的なガスバーナーでプロパンガスを用いて行った。
表面処理工程として火炎処理を行った。火炎処理は、実験用の一般的なガスバーナーでプロパンガスを用いて行った。
(ガスバリア性プラスチック成形体の製造)
試験例I−1、I−2及びI−3で得た実施例及び比較例の各蒸着用PPフィルムについて、グラフト重合層の表面にガスバリア性薄膜としてDLC膜を形成した。各蒸着用PPフィルムを、500mlのPET製のボトル(高さ200mm、胴外径66mm、口部外径24mm、口部内径22mm、肉厚300μm及び樹脂量29g)(以降、PETボトルという。)の内壁面に沿って、グラフト重合層を容器内部空間側に向けた状態で固定し、特許文献4に開示されるプラズマCVD成膜装置を用いて、20nmのDLC膜を形成した。その際、PETボトルを真空チャンバ内に収容し、13.3Paに到達するまで減圧した。次いで、アセチレンガスを80ml/minの流量で供給し、13.56MHzの高周波電力1000Wを2秒間印加した。成膜後、PETボトルからPPフィルムを取り出して、ガスバリア性PPフィルムを得た。
試験例I−1、I−2及びI−3で得た実施例及び比較例の各蒸着用PPフィルムについて、グラフト重合層の表面にガスバリア性薄膜としてDLC膜を形成した。各蒸着用PPフィルムを、500mlのPET製のボトル(高さ200mm、胴外径66mm、口部外径24mm、口部内径22mm、肉厚300μm及び樹脂量29g)(以降、PETボトルという。)の内壁面に沿って、グラフト重合層を容器内部空間側に向けた状態で固定し、特許文献4に開示されるプラズマCVD成膜装置を用いて、20nmのDLC膜を形成した。その際、PETボトルを真空チャンバ内に収容し、13.3Paに到達するまで減圧した。次いで、アセチレンガスを80ml/minの流量で供給し、13.56MHzの高周波電力1000Wを2秒間印加した。成膜後、PETボトルからPPフィルムを取り出して、ガスバリア性PPフィルムを得た。
得られたガスバリア性PPフィルムについて、ガスバリア性評価として酸素透過率を測定した。測定方法及び評価基準は、次のとおりである。測定結果を表1〜表3に示す。さらに、試験例I−1に関し、モノマー濃度と酸素透過率との関係を図1に示す。
(酸素透過率(OTR)の測定)
ガスバリア性の評価は、酸素透過率で行った。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を次の方法で測定した。酸素透過率は、酸素透過度測定装置(型式:Oxtran 2/21、Modern Control社製)を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、測定開始から5時間コンディションし、測定開始から6時間経過後の値とした。評価基準は、酸素透過率が300ml/m2/日以下を実用レベルとし、300ml/m2/日超えを実用不適レベルとした。また、対照区として、実施例又は比較例で用いたPPフィルムと同種のフィルム(以降、未処理のPPフィルムという。)について同様の方法で酸素透過率を測定した。未処理のPPフィルムの酸素透過率は786ml/m2/dayであった。
ガスバリア性の評価は、酸素透過率で行った。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を次の方法で測定した。酸素透過率は、酸素透過度測定装置(型式:Oxtran 2/21、Modern Control社製)を用いて、23℃、90%RHの条件にて測定し、測定開始から5時間コンディションし、測定開始から6時間経過後の値とした。評価基準は、酸素透過率が300ml/m2/日以下を実用レベルとし、300ml/m2/日超えを実用不適レベルとした。また、対照区として、実施例又は比較例で用いたPPフィルムと同種のフィルム(以降、未処理のPPフィルムという。)について同様の方法で酸素透過率を測定した。未処理のPPフィルムの酸素透過率は786ml/m2/dayであった。
表1及び図1からわかるように、各実施例のガスバリア性PPフィルムは、いずれも比較例1と比較して高いガスバリア性を有していた。また、比較例1はモノマー濃度が0Mの溶液(アクリル酸モノマーを含まない溶液)を用いたため、グラフト重合層が形成されず、DLC膜を形成してもガスバリア性が劣った。この結果から、グラフト重合層を設けることで、薄膜の密着性に優れた表面を得られることが確認できた。比較例2はモノマー濃度が高すぎたため、グラフト重合層は形成されたが、ガスバリア性が劣った。
表2に示すように、各実施例のガスバリア性PPフィルムは、いずれも比較例1と比較して高いガスバリア性を有していた。この結果から、中間膜形成工程を2回行うことで、ガスバリア性を非常に良好にすることができることが確認できた。
表3に示すように、各実施例のガスバリア性PPフィルムは、いずれも比較例1と比較して高いガスバリア性を有していた。この結果から、ラジカル発生手段がプラズマ処理面、コロナ処理面又は火炎処理面であっても、薄膜の密着性に優れた表面を得られることが確認できた。
(試験例II)
試験例IIとして、重合温度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。試験例I−1において、表面処理工程のラジカル濃度を0.165Mで一定とし、中間膜形成工程のモノマー濃度を0.75Mで一定とし、重合温度を25℃、40℃、60℃又は70℃のいずれかに変更し、更に重合時間を表2に示す所定の時間に変更した以外は試験例I−1と同様にして蒸着用PPフィルムを得た。さらに、試験例I−1と同様にしてDLC膜を形成し、ガスバリア性PPフィルムを得た。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を測定した。測定方法及び評価基準は試験例I−1と同様である。結果を表4に示す。また、各重合温度における、重合時間と酸素透過率との関係を図2に示す。
試験例IIとして、重合温度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。試験例I−1において、表面処理工程のラジカル濃度を0.165Mで一定とし、中間膜形成工程のモノマー濃度を0.75Mで一定とし、重合温度を25℃、40℃、60℃又は70℃のいずれかに変更し、更に重合時間を表2に示す所定の時間に変更した以外は試験例I−1と同様にして蒸着用PPフィルムを得た。さらに、試験例I−1と同様にしてDLC膜を形成し、ガスバリア性PPフィルムを得た。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を測定した。測定方法及び評価基準は試験例I−1と同様である。結果を表4に示す。また、各重合温度における、重合時間と酸素透過率との関係を図2に示す。
表4及び図2からわかるように、重合温度を40℃以上とすることで、重合温度が25℃である場合と比較して、酸素透過率を低くすることができることが確認できた。また、重合温度が40℃及び60℃では反応時間が増えるにつれて酸素透過率が低下する傾向が見られた。一方、重合温度が25℃では反応時間を50分まで延長しても酸素透過率を実用レベルにすることができなかった。以上より、重合温度を40℃以上とすることで、効率的に薄膜の密着性に優れた表面を得られることが確認できた。
(試験例III)
試験例IIIとして、ラジカル濃度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。試験例I−1において、表面処理工程のラジカル濃度を表5に示す所定の濃度に変更し、中間膜形成工程のモノマー濃度を0.75Mで一定とし、重合温度を40℃で一定とし、更に重合時間を40分間で一定とした以外は試験例I−1と同様にして蒸着用PPフィルムを得た。さらに、試験例I−1と同様にしてDLC膜を形成し、ガスバリア性PPフィルムを得た。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を測定した。測定方法及び評価基準は試験例I−1と同様である。結果を表5に示す。また、ラジカル濃度と酸素透過率との関係を図3に示す。
試験例IIIとして、ラジカル濃度とガスバリア性との関係を確認する試験を行った。試験例I−1において、表面処理工程のラジカル濃度を表5に示す所定の濃度に変更し、中間膜形成工程のモノマー濃度を0.75Mで一定とし、重合温度を40℃で一定とし、更に重合時間を40分間で一定とした以外は試験例I−1と同様にして蒸着用PPフィルムを得た。さらに、試験例I−1と同様にしてDLC膜を形成し、ガスバリア性PPフィルムを得た。得られたガスバリア性PPフィルムについて、酸素透過率を測定した。測定方法及び評価基準は試験例I−1と同様である。結果を表5に示す。また、ラジカル濃度と酸素透過率との関係を図3に示す。
表5及び図3からわかるように、ラジカル濃度を0.15M〜0.7Mとすることで、酸素透過率を実用レベルにすることができることが確認できた。
(試験例IV)
試験例IVとして、接着強度試験を行った。接着強度試験は、試験片として、(1)未処理のプラスチック成形体(以降、「pure sample」と表記する。)、(2)未処理のプラスチック成形体の表面に直接DLC膜を設けたプラスチック成形体(以降、「DLC/sample」と表記する。)及び(3)未処理のプラスチック成形体の表面にグラフト重合層を設け、グラフト重合層の表面にDLC膜を設けたプラスチック成形体(以降、「DLC/graft/sample」と表記する。)を、各々2枚ずつ用意した。
試験例IVとして、接着強度試験を行った。接着強度試験は、試験片として、(1)未処理のプラスチック成形体(以降、「pure sample」と表記する。)、(2)未処理のプラスチック成形体の表面に直接DLC膜を設けたプラスチック成形体(以降、「DLC/sample」と表記する。)及び(3)未処理のプラスチック成形体の表面にグラフト重合層を設け、グラフト重合層の表面にDLC膜を設けたプラスチック成形体(以降、「DLC/graft/sample」と表記する。)を、各々2枚ずつ用意した。
試験片の寸法は、幅14mm、長さ70mmとした。プラスチック成形体としては、次の材料から、熱プレス機を用いて100μmの厚さのフィルムに成形したものを用いた。
LDPE:低密度ポリエチレン、SigmaAldrich社製
iPP:イソスタチックポリプロピレン、SigmaAldrich社製
sPP:シンジオスタチックポリプロピレン、SigmaAldrich社製
PS:ポリスチレン、SigmaAldrich社製
PMMA:ポリメタクリル酸メチル、SigmaAldrich社製
PU:ポリウレタン、SigmaAldrich社製
PDMS:ポリジメチルシロキサン、SigmaAldrich社製
ただし、PET(ポリエチレンテレフタレート)は、100μmの東レ社製ルミラーを用いた。
LDPE:低密度ポリエチレン、SigmaAldrich社製
iPP:イソスタチックポリプロピレン、SigmaAldrich社製
sPP:シンジオスタチックポリプロピレン、SigmaAldrich社製
PS:ポリスチレン、SigmaAldrich社製
PMMA:ポリメタクリル酸メチル、SigmaAldrich社製
PU:ポリウレタン、SigmaAldrich社製
PDMS:ポリジメチルシロキサン、SigmaAldrich社製
ただし、PET(ポリエチレンテレフタレート)は、100μmの東レ社製ルミラーを用いた。
グラフト重合層の形成は、試験例I−1に準じて行った。このとき、表面処理工程は、ラジカル発生物質としてベンゾフェノンを用い、ラジカル濃度0.158Mで行った。また、中間処理工程は、モノマー濃度1.0M、重合反応温度60℃及び重合時間を30分間で行った。また、DLC膜の形成は、試験例I−1に準じて行った。
接着強度の測定は、次のとおり行った。まず、pure sampleはいずれか一方の表面、DLC/sapmle及びDLC/graft/sampleはそれぞれDLC膜の表面にエポキシ樹脂を塗布した後、同種の2枚の試験片同士を5MPaで5分間で密着させ、設定温度60℃の乾燥機の中で24時間乾燥した。その後、引張試験機(AJ−IS、島津製作所社製)を用いて試験速度10mm/minでT字剥離して最大強度を接着強度として記録した。接着強度を表6に示す。
表6からわかるように、各種のプラスチック成形体は、いずれもDLC/graft/sampleがpure sample又はDLC/sampleよりも接着強度が強かった。この結果から、プラスチック成形体の材質にかかわらず、グラフト重合層を設けることで、薄膜の密着性が向上することが確認できた。
(試験例V)
試験例Vとして、中間膜形成工程を、1回行う場合と2回以上に分けて行う場合とのグラフト重合層の組成の比較を行った。プラスチック成形体としては、試験例I−1で用いたPPフィルムと同種のフィルムを使用した。表面処理工程は、試験例IVの表面処理工程に準じて行った。中間膜形成工程は、PPフィルムを、モノマー濃度0.75Mであって60℃のモノマー溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を所定の時間照射してグラフト重合反応を進めた。その後、PPフィルムをモノマー溶液から取り出して、更に別の回の中間膜形成工程を施すか、上述した水洗及び乾燥を行った。中間膜形成工程を2回以上に分けて行う場合は、PPフィルムを一旦モノマー溶液から取り出して穏やかに純水でリンスした後、同条件で中間膜形成工程を繰り返して行った。中間膜形成工程の回数及び反応時間は、表7に示す。
試験例Vとして、中間膜形成工程を、1回行う場合と2回以上に分けて行う場合とのグラフト重合層の組成の比較を行った。プラスチック成形体としては、試験例I−1で用いたPPフィルムと同種のフィルムを使用した。表面処理工程は、試験例IVの表面処理工程に準じて行った。中間膜形成工程は、PPフィルムを、モノマー濃度0.75Mであって60℃のモノマー溶液に浸漬したところへ、紫外線ランプ(波長365nm)を所定の時間照射してグラフト重合反応を進めた。その後、PPフィルムをモノマー溶液から取り出して、更に別の回の中間膜形成工程を施すか、上述した水洗及び乾燥を行った。中間膜形成工程を2回以上に分けて行う場合は、PPフィルムを一旦モノマー溶液から取り出して穏やかに純水でリンスした後、同条件で中間膜形成工程を繰り返して行った。中間膜形成工程の回数及び反応時間は、表7に示す。
(XPS分析)
各条件で形成したグラフト重合層の表面をXPS装置(型式:QUANTERASXM、PHI社製)を用いて分析した。各グラフト重合層の表面の構成元素の比率を表7に示す。中間膜形成工程を2回以上行う場合は、各回の中間膜形成工程が終了する毎にXPS分析を行った。XPS分析の条件は、次の通りである。
X線源:単色化Al(1486.6ev)
検出領域:100μmφ
スパッタ条件:Ar+1.0kv
各条件で形成したグラフト重合層の表面をXPS装置(型式:QUANTERASXM、PHI社製)を用いて分析した。各グラフト重合層の表面の構成元素の比率を表7に示す。中間膜形成工程を2回以上行う場合は、各回の中間膜形成工程が終了する毎にXPS分析を行った。XPS分析の条件は、次の通りである。
X線源:単色化Al(1486.6ev)
検出領域:100μmφ
スパッタ条件:Ar+1.0kv
表7からわかるように、中間膜形成工程を1回行う場合と2回以上行う場合とを比較すると、中間膜形成工程を1回行う場合では、グラフト重合層の酸素含有率は、反応時間を長くしてもあまり変化しなかった。これに対して、中間膜形成工程を2回以上行う場合では、グラフト重合層の酸素含有率は、回数を増すにつれて多くなる傾向が見られた。
Claims (13)
- プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体の製造方法において、
前記プラスチック成形体の表面にラジカル発生手段を設ける表面処理工程と、
アクリル酸モノマーを0.01〜5.0Mの濃度で含有する40℃以上の溶液中で、前記ラジカル発生手段の表面に、アクリル酸をグラフト重合して、該アクリル酸をグラフト重合層として固定する中間膜形成工程とを有することを特徴とする蒸着用プラスチック成形体の製造方法。 - 前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に塗布したラジカル発生物質であって、該ラジカル発生物質の(数1)で表されるラジカル濃度が0.15〜0.7Mであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
(数1)ラジカル濃度[M]=ラジカル発生物質濃度[M]×理論的なラジカル発生物質1分子あたりに発生するラジカル原子数 - 前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施したプラズマ処理面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施したコロナ放電処理面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 前記ラジカル発生手段が、前記プラスチック成形体の表面に施した火炎処理面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 前記中間膜形成工程を2回以上繰り返すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 前記中間膜形成工程とその次に行う中間膜形成工程との間に、洗浄工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 前記中間膜形成工程中に、前記プラスチック成形体の表面での前記溶液の滞留を抑制するために、前記溶液の強制的な流動を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の製造方法で得た蒸着用プラスチック成形体の前記グラフト重合層上に、前記ガスバリア性薄膜を形成するガスバリア性薄膜形成工程を有することを特徴とするガスバリア性プラスチック成形体の製造方法。
- プラスチック成形体にガスバリア性薄膜を形成してガスバリア性プラスチック成形体とするための蒸着用プラスチック成形体において、
前記プラスチック成形体の表面にアクリル酸がグラフト重合したグラフト重合層が設けられ、
該グラフト重合層を深さ方向に二分して、前記プラスチック成形体とは反対側を上層とし、前記プラスチック成形体側を下層としたとき、
前記グラフト重合層を深さ方向にX線光電子分光分析すると、前記上層の(数2)で表される酸素含有率が、前記下層の(数2)で表される酸素含有率よりも高いことを特徴とする蒸着用プラスチック成形体。
(数2)酸素含有率={酸素含有量[atomic%]/(酸素含有量[atomic%]+炭素含有量[atomic%])}×100 - 前記上層の(数2)で表される酸素含有率が、前記下層の(数2)で表される酸素含有率の1.3倍以上であることを特徴とする請求項10に記載に蒸着用プラスチック成形体。
- 前記プラスチック成形体が、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有する樹脂で形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の蒸着用プラスチック成形体。
- 請求項10〜12のいずれか一つに記載の蒸着用プラスチック成形体の前記グラフト重合層上に前記ガスバリア性薄膜が設けられ、
該ガスバリア性薄膜が、DLC膜、SiOx膜、SiOC膜、SiON膜、SiN膜、Al膜又はAlOx膜であることを特徴とするガスバリア性プラスチック成形体。
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