JP2014114201A - アルミナ質セラミックス、およびそれを用いた配線基板 - Google Patents

アルミナ質セラミックス、およびそれを用いた配線基板 Download PDF

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Abstract

【課題】 体積固有抵抗が高くかつ寸法精度の優れたアルミナ質セラミックスと、それを絶縁基板とする配線基板を提供する。
【解決手段】 アルミナの結晶粒子と粒界相とを有し、AlをAl換算したもの100質量%に対して、SiをSiO換算で3.0〜5.0質量%、MgをMgO換算で0.2〜0.4質量%、CaをCaO換算で0.6〜0.9質量%、CrをCr換算で3.0〜6.0質量%含有するとともに、不可避不純物を含め、前記Si、Mg、CaおよびCrを除く他の元素の合計の含有量が1.0質量%以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、寸法精度の要求される基板および半導体素子収納用パッケージ等に適したアルミナ質セラミック基板と、そのアルミナ質セラミック基板を適用した配線基板に関する。
従来より、例えば、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を収納するパッケージに使用される多層配線基板として、高密度の配線設計が可能なセラミック配線基板が多用されている。
この種の多層セラミック配線基板は、アルミナやガラスセラミックなどの絶縁基板と、その表面または内部に形成されたWやMo、Cu、Ag等を主成分とする配線導体とから構成されるものである。
近年、高集積化が進むICやLSI等の半導体素子を搭載する半導体素子収納用パッケージや、各種電子部品が搭載される混成集積回路装置等に適用されるセラミック配線基板においては、高密度化、低抵抗化、小型軽量化が要求されており、アルミナ系セラミック材料に関しても、配線導体の低抵抗化に対応した手法として、Cu系導体を同時焼成にて得られる低抵抗導体アルミナ配線基板(LTCC)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、多量に混合されるガラス成分は機械的強度や体積固有抵抗といった特性にとっては負の要素となり、アルミナが本来有している高機械的強度、高体積固有抵抗といった特性を十分に引き出せるには至っていない。近年、LTCCを越える機械特性や誘電特性が電子部品に求められるようになり、アルミナを1600℃以下の低温で焼結させつつ、アルミナが有している高強度、低誘電損失、高体積固有抵抗などの特性を維持させる技術が求められている。加えて、上記した製法では、セラミックグリーンシートが焼成時にX,Y、Z方向にそれぞれ10〜20%程度収縮するため、収縮率を制御し、高い寸法精度を有するアルミナ質の配線基板を得ることを困難となっている。
特開平12−114724号公報
従って本発明は、体積固有抵抗が高くかつ寸法精度の優れたアルミナ質セラミックスと、それを絶縁基板とする配線基板を提供することを目的とする。
本発明のアルミナ質セラミックスは、アルミナの結晶粒子と粒界相とを有し、AlをAl換算したもの100質量%に対して、SiをSiO換算で3.0〜5.0質量%、MgをMgO換算で0.2〜0.4質量%、CaをCaO換算で0.6〜0.9質量%、CrをCr換算で3.0〜6.0質量%含有するとともに、前記Si、Mg、CaおよびCrを除き、不可避不純物を含めた他の元素の合計の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする。
本発明の配線基板は、複数の絶縁層が積層された絶縁基体と、該絶縁基体の表面または内部に設けられたMoまたはWの少なくとも1種の金属成分を含む導体層とを有し、前記
絶縁層が上記のアルミナ質セラミックスにより形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、体積固有抵抗が高くかつ寸法精度の優れたアルミナ質セラミックスと、それを絶縁基板とする配線基板を得ることができる。
本実施形態のアルミナ質セラミックスとなる成形体を加熱したときの収縮挙動を示すグラフである。 本発明の配線基板の一実施形態を示す断面模式図である。 配線基板の寸法精度を求めるときの一例を示す模式図である。
図1は、本実施形態のアルミナ質セラミックスとなる成形体を加熱したときの収縮挙動を示すグラフである。図1に示す収縮率(%)は、焼成後のアルミナ質セラミックスの寸法を焼成前の生の成形体の寸法で除したものを%表示したものである。図1のグラフに示した3つの曲線は、後述する実施例における試料の例を示したものであるが、図1に示しているグラフの試料No.1、試料No.3および試料No.4は、それぞれアルミナに対するSi、Mg、Ca、CrおよびTiの含有量が異なるものである。
本実施形態のアルミナ質セラミックスは、アルミナ(Al)の結晶粒子と粒界相とを有している。このアルミナ質セラミックスの組成は、AlをAl換算したもの100質量%に対して、Si(珪素)をSiO換算で3.0〜5.0質量%、Mg(マグネシウム)をMgO換算で0.2〜0.4質量%、Ca(カルシウム)をCaO換算で0.6〜0.9質量%、Cr(クロム)をCr換算で3.0〜6.0質量%である。また、これらSi、Mg、CaおよびCrを除き、不可避不純物を含めた他の元素の合計の含有量が1.0質量%以下である。
図1において、試料No.1が上記組成の範囲内にあるものであるが、試料No.1は他の試料である試料No.3および試料No.4に比較して1550〜1600℃の温度領域における収縮変化量が小さくなっている。
本実施形態のアルミナ質セラミックスは、上述のように、アルミナに対して、Si、Mg、CaおよびCrを所定の組成範囲とし、さらに、Si、Mg、CaおよびCrを除き、不可避不純物を含めた他の元素の合計の含有量を1.0質量%以下にしている。これによりアルミナ質セラミックスが緻密化する1550〜1600℃の温度範囲における収縮変化量を小さくすることができる。その結果、アルミナ質セラミックスを同時に多数個焼成した場合にも、焼結後のアルミナ質セラミックスは収縮量のばらつきが小さいものとなり、寸法精度を高くすることができる。また、このアルミナ質セラミックスは室温(25℃)から高温(約300℃付近)まで高い体積固有抵抗を示すものとなる。
これに対し、図1の試料No.3および試料No.4のグラフのように、アルミナ100質量%に対する、Si、Mg、CaおよびCrのそれぞれの含有量が、SiO換算で3.0〜5.0質量%、MgO換算で0.2〜0.4質量%、CaO換算で0.6〜0.9質量%およびCr換算で3.0〜6.0質量%の組成の範囲から外れるか、または、Si、Mg、CaおよびCrを除き、不可避不純物を含めた他の元素の合計の含有量が1.0質量%より多くなった場合には、焼結後のアルミナ質セラミックスは収縮量のばらつきが大きくなり、寸法精度が低下する。また、体積固有抵抗も低下する。
通常、アルミナの含有比率の高いセラミックスを緻密な焼結体にするには、種々の焼結
助剤が必要となるが、上述のように、焼結助剤の組成や添加量の種類によっては、最高温度付近においてもアルミナ質セラミックスの焼結が進み、例えば、上記の1550〜1600℃の温度範囲においても、依然として、わずかな収縮が起こってしまう(図1の試料3、4)。また、アルミナ質セラミックス内にボイド(欠陥)も形成されやすくなり、これにより機械的強度および体積固有抵抗が低下しやすくなる。また、Ti等の誘電材料を所定量以上に多く含ませた場合には誘電損失が大きくなる。
本実施形態のアルミナ質セラミックスを構成するアルミナの結晶粒子はCrを含んでいるが、Crはアルミナの結晶粒子中に固溶していることが望ましく、その結晶粒子中の含有量はCr換算で3.0〜4.0質量%であることが望ましい。アルミナの結晶粒子中にCrが上記割合で固溶した場合には、1550℃以上の高温での粒成長がさらに抑えられ、これによりアルミナ質セラミックスの寸法精度をさらに向上させることができる。
アルミナの結晶粒子中にCrが固溶すると、Cr以外の添加成分であるSi、Mg、Caのアルミナの結晶粒子への固溶を抑制できるとともに、アルミナの結晶粒子中へのCrの固溶により、Si、Mg、Caなどの元素が固溶し難くなり、主としてアルミナの結晶粒子の粒界相に存在しやすくなり、その結果、アルミナの結晶粒子の粒界に高抵抗の粒界相を形成することができるようになる。その結果、アルミナ質セラミックスの体積固有抵抗を25℃〜300℃の範囲において1010Ωm以上とすることができる。
この場合、粒界相の組成は、AlがAl換算で10〜20質量%、SiがSiO換算で50〜70質量%、MgがMgO換算で5〜20質量%およびCaがCaO換算で5〜20質量%であることが望ましい。
また、粒界には、ガラス以外に、添加成分に由来する結晶相(例えば、Ca(AlSi)、Ca(SiO)、CaCrOなど)も実質的に含まれないものとなっているのが良い。
アルミナ質セラミックスを構成するアルミナの結晶粒子は、アスペクト比が2.4〜2.9、平均粒径が10〜13μmであることが好ましい。アルミナの結晶粒子が上記の形状およびサイズであると、高温(約300℃)での体積固有抵抗の高いアルミナ質セラミックスを得ることができる。これはアルミナの結晶粒子が扁平形状でありかつサイズが大きいために、これらの結晶粒子が焼結体中において二面が互いに向い合うように配列しやすく、二面間粒界に、添加成分に由来するCa(AlSi)、Ca(SiO)、CaCrOなどの結晶相が形成されにくいためであると考えられる。
この場合、アルミナ質セラミックスは高密度であるのがよく、吸水率が0.2%以下であることが望ましく、これにより比誘電率が9.5〜9.7でありながら誘電正接が3×10−4以下となる。
また、本実施形態のアルミナ質セラミックス中には、他の元素として、モリブデン(Mo)をMoO換算で0.3〜0.7質量%の割合で含有させても良い。MoをMoOとして所定の割合で含有させたときには、高寸法精度であることに加えて、誘電率や絶縁抵抗の低下がほとんど無い状態でアルミナ質セラミックスを黒色系に着色させることができる。黒色系に着色したアルミナ質セラミックスを配線基板の絶縁基体として用いたときには、導体層とのコントラストが高くなり、チップ部品などを実装する際の画像の二値化処理の速度を高めることが可能となり量産性を向上させることができる。
なお、本実施形態のアルミナ質セラミックスでは、高い寸法精度を得るという理由から
、Si,Mg、Ca、CrおよびMo以外の元素(例えば、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ta、W、Sr、Ba、アルカリ金属、ハロゲンおよび希土類元素(RE))を極力含まない方が良く、その含有量はこれらの元素を酸化物換算(周期表に基づく価数による換算)した割合で0.05質量%以下が望ましい。
図2は、本発明の配線基板の一実施形態を示す断面模式図である。図1に示す配線基板は、複数の絶縁層1a、1b、1cおよび1d(以下、1a〜1dと記す場合がある。)が積層された絶縁基体1と、絶縁基体1の表面または内部に導体層3(ビアホール導体も含む)を有し、絶縁基体1が上記のアルミナ質セラミックスにより形成されている。また、導体層3はMoまたはWの少なくとも1種の金属成分を主成分として含むものである。絶縁基体1が上述したアルミナ質セラミックスにより形成されているために、絶縁基体1をMoまたはWの少なくとも1種の金属成分を含む導体層3とともに同時焼成した場合においても、絶縁基体1は室温(25℃)から高温(約300℃付近)まで高い体積固有抵抗を示し、焼結後の絶縁基体1の収縮量のばらつきが小さく、高い寸法精度を有する配線基板を得ることができる。
また、本実施形態の配線基板では、導体層3がアルミナを含有するとともに、導体層3中に含まれるMoまたはWの少なくとも1種の金属成分の含有量が80〜95体積%、アルミナの含有量が5〜20体積%であることが望ましい。導体層3が上記構成であると、上述したアルミナ質セラミックスを適用した絶縁基体1との同時焼成して得られた配線基板において、絶縁基体1の表面に形成した導体層3の接着強度をさらに高めることができる。
また、本実施形態のアルミナ質セラミックスは、絶縁基体1に適用したときに、反りの小さい絶縁基体を得ることができる。
通常、絶縁基体1の反りは高温で収縮する際にその絶縁基体1の表裏における収縮率の差によって発生すると考えられるが、本実施形態のアルミナ質セラミックスは、これに含まれるSi、Mg、CaおよびCrを所定の組成範囲にすることで、1550〜1600℃の温度領域における収縮量を小さくすることができることから、絶縁基体1の表裏における収縮率の差を小さくすることができる。その結果、絶縁基体1の反りが小さくなる。この場合、絶縁基板の厚みが0.1μm以上、2.0mm以下であるものに適している。
ここで、絶縁基体1であるアルミナ質セラミックスに含まれるSi、Mg、Ca、Crの含有量は、絶縁基体1を酸に溶解させ、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析により求めることができ、この場合、アルミナ100質量%に対して、SiO、MgO、CaOおよびCrのように、それぞれの元素を酸化物換算した値として求める。
絶縁基体1の吸水率は、配線基板から切り出した絶縁基体1の切断片を用いて、JIS−C2141に基づき測定する。
配線基板の表面に形成した導体層3の接着強度は、配線基板を所定の形状になるように切り出し、導体層3上に形成されためっき膜の表面に銀ロウを用いて金具を接合し、金具を引き剥がす際の引き剥がし荷重を測定し、得られた荷重の値を接着強度とすることにより求める。
アルミナ質セラミックスまたは配線基板1の寸法精度は次のように求める。図3は、配線基板の寸法精度を求めるときの一例を示す模式図である。この場合、配線基板の平面図を示している。まず、焼成後のアルミナ質セラミックスまたは配線基板の表面に所定の間隔で配置された、例えば、導体層3について、配線基板のお互いに垂直な2つの方向(図
3では、Xの間隔の方向、Yの間隔の方向)を指定し、これらの間隔の少なくとも一方の間隔を寸法測定装置を用いて位置を測定する。この測定を、例えば、50個の試料について行うことにより、その寸法の平均値(x)と標準偏差(σ)を求め、標準偏差(σ)/平均値(x)から寸法のばらつきを求め、そのばらつきを寸法精度の値とする。
アルミナ質セラミックスを構成しているアルミナ結晶粒子の形状は、配線基板から切り出した絶縁基体の試料片の断面に鏡面研磨を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。この場合、互いに向かい合う二面がほぼ平行であるアルミナ結晶粒子の平均粒径は、線インターセプト法により測定する。すなわち、走査型電子顕微鏡を用いて得られた画像に対角線方向に2本の直線を描画し、これらの直線が横切る全てのアルミナ結晶粒子について直線ごとの平均粒径を求め、2本の各直線における平均粒径の平均値をアルミナの結晶粒子の平均粒径とする。また、上記、アルミナの結晶粒子のアスペクト比は、上記と同様にして描画された各直線が横切る全てのアルミナ結晶粒子について(長径)/(短径)の計算によるアスペクト比を算出し、直線ごとの平均アスペクト比を求め、更にこれら2本の各直線における平均アスペクト比の平均値をアルミナ結晶粒子のアスペクト比とする。
絶縁基体の比誘電率および誘電正接(tanδ)は、ブリッジ回路法を用いて周波数1MHzにおいて測定する。
アルミナの結晶粒子に固溶しているCrの含有量は、配線基板から切り出した絶縁基体の試料片をミクロトーム、電解研磨法、イオンエッチング法、収束イオンビーム(FIB)法などにより薄膜試料片へ加工を行った後、薄膜試料片に透過型電子顕微鏡およびEDS分析装置を用いて求める。具体的には、結晶粒子の粒界が一視野の中に一箇所確認できるまで電子顕微鏡像を拡大し、結晶粒子の粒界から内側に少なくとも0.2μm以上離れた部位を結晶粒子の内部と定義し、その部位においてEDS分析を実施し、結晶粒子中に固溶しているCr元素を確認する。次に、EDS分析値から定量的にCr元素の組成比を質量%として求め、同様の測定を10箇所に対して実施し、各測定位置で得られた組成比を平均化して、アルミナの結晶粒子に含まれるCrの含有量を求める。同様に、粒界相におけるAl、Si、Ca、Mgの含有量は、結晶粒子の粒界から外側に少なくとも0.2μm以上離れた部位を粒界相と定義し、その部位においてEDS分析を実施し、粒界相の成分を確認し、組成比を質量%として求める。
なお、本実施形態のアルミナ質セラミックスを構成しているAl、Si、Mg、Caを含む添加成分で構成されるガラスは、絶縁基体を定量分析した組成と同じ組成の酸化物粉末を1200〜1300℃の温度範囲にて平行板回転法により測定した粘度が1×10〜1×10ポイズであるのがよい。このような粘度特性を示す組成のガラスは、1200℃〜1300℃の温度でガラスが低粘度化していくことに伴い、アルミナの焼結を進行させるが、1500℃以上の温度において粘度低下が小さくなるためである。なお、アルミナ質セラミックスの粒界相におけるガラス成分の特定および組成の定量は、アルミナに固溶しているCrの固溶比と同様に、配線基板から切り出した絶縁基体の試料片をミクロトーム、イオンエッチング法、FIB法などにより薄膜試料片へ加工を行った後、薄膜試料片に透過型電子顕微鏡及びEDS分析装置を用いて求める。
次に、本実施形態のアルミナ質セラミックスおよびそれを用いた配線基板の製造方法について説明する。
まず、絶縁基体1となるアルミナ質セラミックスを作製するために、アルミナ粉末として純度が99%以上、平均粒径が1.0〜10.0μmのものを用いる。アルミナ粉末の平均粒径を1.0μm以上とすることでシート成形性を良好なものとし、10.0μm以
下とすることで1620℃以下の温度での焼成によって緻密化を促進させることが可能となる。
次に、アルミナ粉末100質量%に対して、SiO粉末を3.0〜5.0質量%、MgO粉末を0.2〜0.4質量%、CaO粉末を0.6〜0.9質量%およびCr粉末を3.0〜6.0質量%添加して混合粉末を調製する。この場合、添加剤として用いるSiO粉末は平均粒径が1.0〜5.0μm、MgO粉末は平均粒径が1.0〜5.0μm、CaO粉末は平均粒径が1.0〜5.0μm及びCr粉末は平均粒径が1.0〜5.0μmであるものを用いるのがよい。また、SiO粉末、MgO粉末、CaO粉末及びCr粉末の純度はともに99%以上であるものがよい。これにより、シート成形性を良好なものとし、Si、Mg、Ca及びCrの拡散やアルミナ粉末への固溶を制御することが可能となり、しかも1580〜1620℃の温度での焼結性を高めることができる。
この場合、Si、Mg、Ca及びCrは、上記の酸化物粉末以外に焼成によって酸化物を形成しうる炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩等として添加しても良い。なお、着色したアルミナ質セラミックスを得る場合にはMoO粉末を0.3〜0.9質量%添加するのが良く、この場合、MoO粉末は平均粒径が1.0〜5.0μmであり、純度としては99%以上であるのを用いるのがよい。
次に、この複合粉末に対して有機バインダー、溶媒を添加してセラミックスラリーを調製した後、これをプレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法などの成形方法によって所定の厚みのグリーンシートを作製する。なおグリーンシートの厚みはセラミック多層配線基板1の設計上の理由により、たとえば50〜300μmまで自由に設定することができるが、特に限定されるものではない。
次に、作製したセラミックグリーンシートのうち、最上層に積層するセラミックグリーンシートの表面に、例えば、図3に示すような導体パターンを印刷し、導体パターンを印刷していない他のセラミックグリーンシートを複数枚重ねて、プレスを行って、積層成形体を作製する。
次に、この積層成形体を所定の温度条件にて焼成を行う。焼成条件は、非酸化性雰囲気(窒素雰囲気あるいは窒素と水素との混合雰囲気)中、最高温度を1580〜1620℃とする。
配線基板を作製する場合には、セラミックグリーンシートの表面に所定の形状に設計された導体パターンを上記と同様に印刷により形成し、場合によっては、マイクロドリル、レーザー等により、ビア導体となる直径50〜250μmの貫通孔を形成する。
次に、導体パターンを形成したセラミックグリーンシートを位置合わせして積層し、積層成形体を形成した後、上記と同様の条件にて焼成する。以上述べた方法により作製されたアルミナ質セラミックスおよびそれを絶縁基体1とする配線基板は体積固有抵抗が高く、寸法精度の優れたものとなる。
純度が99%で平均粒子径が1.8μmのAl粉末に対して、純度が99%で平均粒子径が2.0μmのSiO粉末、純度が99%以上で平均粒子径が2.0μmのMgO粉末、純度が99%で平均粒子径が2.0μmのCaO粉末、純度が99%で平均粒子径が2.0μmのCr粉末、純度が99%で平均粒子径が1.5μmのTiO粉末を表1に示すような割合で混合した後、さらに成形用有機樹脂(有機バインダー)とし
てアクリル系バインダーと、有機溶媒としてトルエンとを混合してセラミックスラリーを調製した後、ドクターブレード法にて厚さ200μmのシート状に成形し、セラミックグリーンシートを作製した。
次に、得られたセラミックグリーンシートのうち、最上層に積層するセラミックグリーンシートの表面に、図2に示すような配線状の導体パターンを印刷し、導体パターンを印刷していない他のセラミックグリーンシートを14枚重ねて、プレス成形を行い積層成形体を作製した。この場合、導体層の接着強度の測定用に2.4mm×28mmの矩形状の導体パターンが10個配置されているものを用いた。
次に、この積層成形体を下記の条件にて焼成してアルミナ質セラミックスの基板を得た。焼成は露点が+17.5℃の窒素水素混合雰囲気にて脱脂を行った後、引き続き、昇温速度150℃/hrで1000℃から1600℃まで昇温し、1600℃にて1時間保持した後、冷却速度100℃/時で室温まで冷却するという条件とした。
次に、作製したアルミナ質セラミックスおよび配線基板について、下記の評価を行った。
吸水率は、JIS−C2141に基づき測定した。試料数は3個とし平均値を求めた。
体積固有抵抗は、四端子法を用いて室温(25℃および300℃の温度にて測定し、試料数は3個として平均値を求めた。
アルミナ質セラミックスを構成しているアルミナ結晶粒子の形状は、配線基板から切り出した絶縁基体の試料片の断面に鏡面研磨を施し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。さらに、互いに向かい合う二面が並行であるアルミナ結晶粒子の平均粒径は、線インターセプト法により測定した。すなわち、走査型電子顕微鏡を用いて得られた画像に対角線方向に2本の直線を描画し、これらの直線が横切る全てのアルミナ結晶粒子について直線ごとの平均粒径を求め、2本の各直線における平均粒径の平均値をアルミナ結晶粒子の平均粒径とした。また、上記、アルミナ結晶粒子のアスペクト比は、上記と同様にして描画された各直線が横切る全てのアルミナ結晶粒子について(長径)/(短径)の計算によるアスペクト比を算出し、直線ごとの平均アスペクト比を求め、更にこれら2本の各直線における平均アスペクト比の平均値をアルミナ結晶粒子のアスペクト比とした。
アルミナの結晶粒子に固溶しているCrの含有量は、配線基板から切り出した絶縁基体の試料片をミクロトーム、電解研磨法、イオンエッチング法、収束イオンビーム(FIB)法により薄膜試料片へ加工を行った後、薄膜試料片に透過型電子顕微鏡およびEDS分析装置を用いて求めた。この場合、結晶粒子の粒界が一視野の中に一箇所確認できるまで電子顕微鏡像を拡大し、結晶粒子の粒界から内側に少なくとも0.2μm以上離れた部位を結晶粒子の内部と定義し、その部位においてEDS分析を実施し、結晶粒子中に固溶しているCr元素を確認した。次に、EDS分析値から定量的にCr元素の組成比を質量%として求め、同様の測定を10箇所に対して実施し、各測定位置で得られた組成比を平均化して、アルミナの結晶粒子に含まれるCrの含有量を求めた。試料数は1個とし、平均値を求めた。
また粒界相におけるAl、Si、MgおよびCaの含有量は、上記と同様の方法で試料を加工し、結晶粒子の粒界が一視野の中に一箇所確認できるまで電子顕微鏡像を拡大し、結晶粒子の粒界から外側に少なくとも0.2μm以上離れた部位を粒界相と定義し、その部位においてEDS分析を実施し、粒界相の成分と組成比を求めた。
アルミナ質セラミックスに含まれるSi、Mg、Ca、Crの含有量は、絶縁基体を酸に溶解させ、ICP分析により求めた。この場合、アルミナ100質量%に対して、SiO、MgO、CaOおよびCrに換算した値として求めた。焼結体の組成は表1の調合組成に一致していた。試料数は1個とした。
作製したアルミナ質セラミックスの基板の寸法精度は、平面の面積が30mm×30mmの基板を用い、図3に示した、Xの間隔およびYの間隔を、寸法測定装置を用いて測定した。この測定は50個の試料について行い、その寸法の平均値(x)と標準偏差(σ)から、標準偏差(σ)/平均値(x)として寸法のばらつきを求めた。これを寸法精度の値とした。寸法精度が0.03%以下の場合、寸法精度が優れているため合格と判定し、寸法精度が0.03%よりも大きい場合、寸法精度が不合格と判定した。
また、作製したアルミナ質セラミックスの基板の反りは、同様に平面の面積が30mm×30mmの基板に対して、形状測定装置を用いてXY平面内における(Zの最大値)−(Zの最小値)を求めた。この測定は10個の試料について行い、その平均値を算出し、これを基板の反りの値とした。基板反りが50μm以下の場合、基板反りが優れているため合格と判定し、基板反りが50μmよりも大きい場合、基板反りが不合格と判定した。
絶縁基体に対する導体層の接着強度(メタライズ強度)は、配線基板の表面に形成れた2mm×25mmの導体配線に、無電解Niめっきを施した後、銀ロウを用いて金具を接合し、金具を引き剥がす際の引き剥がし荷重を測定した。引き剥がし荷重が4.9kgf以上の場合、メタライズの接着強度が高いと判定し、引き剥がし荷重が4.9kgfよりも低い場合、メタライズの接着強度が低いと判定した。この評価は10個の導体層について測定し平均値を求めた。これらの結果を表1に示す。
Figure 2014114201
表1の結果から明らかなように、試料No.1、6、7、10、11、14、15、18、19および21〜25では、寸法精度が0.04%以下であった。また、これらの試料は体積固有抵抗が25℃と300℃において1×1010Ωm以上であった。
また、これらの試料は吸水率が0.04%以下であった。
TiOの含有量が0.1質量%よりも少ない試料(試料No.1、6、7、10、11、14、15、18、19および21〜24)では、いずれの試料も寸法精度が0.02%であった。また、このうち導体層の金属成分(W)の組成を80〜95体積%とした試料(試料No.1、6、7、10、11、14、15、18、19、21および22)では、導体層の接着強度が4.9kgf以上であった。
なお、TiOの代わりに、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Ta、W、および希土類元素(RE)を試料No.25と同じモル量だけ添加して作製したアルミナ質セラミックスについても試料No.25と同様の結果となった。
さらに、表1では、導体層の金属成分がWの場合を例示したが、Wの代わりにMoを同じ組成で適用した場合にも同様の結果が得られた。
これに対し、試料No.2〜5、8、9、12、13,16、17および20では、寸法精度がいずれも0.04%よりも大きかった。
本発明における第2の態様のアルミナ質セラミックスを表2に示した組成に基づき、実施例1と同様の手順で試料を作製し、同様の評価を行った。
Figure 2014114201
表2によれば、アルミナ質セラミックス中にMoを含有させた場合にも、寸法精度が0.04%以下、体積固有抵抗が25℃と300℃において1×1010Ωm以上という結果であった。
また、これらのアルミナ質セラミックスを配線基板の絶縁基体に適用し、半導体チップを実装する試験を行ったところ、絶縁基体として実施例1のアルミナ質セラミックスを適
用したときに比べて、配線基板の導体層(パッド)の画像の二値化処理の速度を1.2倍ほどに高めることができた。
1・・・・・・・・・・・・・・絶縁基体
1a、1b、1c、1d・・・・絶縁層
3・・・・・・・・・・・・・・導体層

Claims (4)

  1. アルミナの結晶粒子と粒界相とを有し、AlをAl換算したもの100質量%に対して、SiをSiO換算で3.0〜5.0質量%、MgをMgO換算で0.2〜0.4質量%、CaをCaO換算で0.6〜0.9質量%、CrをCr換算で3.0〜6.0質量%含有するとともに、前記Si、Mg、CaおよびCrを除き、不可避不純物を含めた他の元素の合計の含有量が1.0質量%以下であることを特徴とするアルミナ質セラミックス。
  2. 前記他の元素として、Moを含み、該Moの含有量がMoO換算で0.3〜0.7質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミナ質セラミックス。
  3. 複数の絶縁層が積層された絶縁基体と、該絶縁基体の表面または内部に設けられたMoまたはWの少なくとも1種の金属成分を含む導体層とを有し、前記絶縁層が請求項1または2に記載のアルミナ質セラミックスにより形成されていることを特徴とする配線基板。
  4. 前記導体層がアルミナを含有するとともに、該導体層中に含まれる前記金属成分の含有量が80〜95体積%、前記アルミナの含有量が5〜20体積%であることを特徴とする請求項3に記載の配線基板。
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