JP2014110081A - 始動補助部材付高圧放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】従来に比べて耐久性に優れる始動補助部材付高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】
外囲器よりも高い比誘電率を有する材料からなる誘電体部材20は、外囲器の第一封止部101Aに外嵌されており、外囲器の発光部に対向する側とは反対側の端部に切り欠き220を有する。切り欠き220には、誘電体部材20の端部に付着して誘電体部材20を第一封止部101Aに固定する固着剤30が充填されている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、始動補助部材と高圧放電ランプとを備える始動補助部材付高圧放電ランプに関する。
液晶プロジェクタやDLP(Digital Light Processing)プロジェクタ等の画像表示装置等において、メタルハライドランプやキセノンランプや高圧水銀ランプ等の高圧放電ランプが利用されている。
高圧放電ランプは、放電空間を内包する略球状の発光部に対し、一対の封止部が連設された、石英ガラス製の外囲器を有する。各封止部の内部には、金属箔の長手方向両端部に、放電電極と外部リード線が設けられている。
従来より、高圧放電ランプにおいては、放電開始電圧の低減が要求されている。高圧放電ランプの放電開始電圧が高いと点灯回路は放電開始電圧を超える印加電圧を発生する必要があるために、その高電圧発生回路に大型のトランスや高耐圧の電子部品等を用いなければならない。また高電圧がかかっているケーブルやコネクタ等、ならびにその周辺部品には絶縁のための十分な配慮が必要になる。それらが、点灯回路を含むランプシステムの小型化や低価格化を図る上での大きな障害となるためである。
高圧放電ランプの放電開始電圧を低減させる方策として、特許文献1では、一方の封止部から露出した外部リード線にワイヤー状の近接導体の一端部を接続し、他方の封止部に筒状の誘電体部材を外嵌し、近接導体の他端部を誘電体部材表面に接触するように配設した構成の始動補助技術が開示されている。
始動補助部材として近接導体と誘電体部材とを用いる上述の構成では、始動時に外部リード線に電圧を印加することで、一対の放電電極間で生じる放電に先立ち、近接導体の他端部と誘電体部材表面との接触点近傍でコロナ放電(電子放出)が生じる。このコロナ放電によって発生する紫外線(UV)が照射され、放電電極の表面では、光電効果により電子(光電子)が放出される。これにより、放電開始が促され、放電開始電圧の低減が図られるものである。
WO2012/090344
しかしながら、誘電体部材と、当該誘電体部材を封止部に固定するために用いられるセメント等の固着剤とでは熱膨張率に差がある。
特に、誘電体部材は、コロナ放電に伴って発生する紫外線が発光部内の放電電極に好適に照射されるように、発光部に近い位置に固定することが望まれるが、このような位置は点灯時に高温に曝される部位である。そのため、点灯、消灯を繰り返すことで経時劣化により、誘電体部材と固着剤とが剥離することが危惧される。
このように、始動補助部材として筒状の誘電体部材を固着剤を用いて封止部に外嵌固定した始動補助部材付高圧放電ランプにおいては、耐久性の面で未だ改良の余地が存在する。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、従来に比べて耐久性に優れる始動補助部材付高圧放電ランプの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様にかかる始動補助部材付高圧放電ランプは、発光部に長尺状の第一封止部および第二封止部が連設された高圧放電ランプと、当該高圧放電ランプの始動補助部材とを備える始動補助部材付高圧放電ランプであって、前記始動補助部材は、前記第一封止部よりも高い比誘電率を有する材料からなる、前記第一封止部に外嵌された筒状の誘電体部材と、一端部が、前記第二封止部に封止されている放電電極に電気的に接続され、他端部が、前記誘電体部材に近接配置された金属線とを有し、前記誘電体部材は、前記外嵌状態で固着剤を介して前記第一封止部に固定され、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する領域には、前記固着剤との接着面積を増大させる増大部が設けられていることを特徴とする。
上記態様にかかる始動補助部材付高圧放電ランプは、誘電体部材において固着剤が付着する領域に増大部が設けられていることにより、誘電体部材と固着剤との間で増大部による広い接着面が生じる。そのため、誘電体部材と固着剤との間の接着強度が高まり、たとえ誘電体部材と固着剤との熱膨張率に差があり、経時劣化により誘電体部材と固着剤との剥離が進行する場合であっても、接着強度が実用上の下限に達するまでの時間を稼ぐことができる。従って、耐久性を向上させることができる。
実施の形態1に係る始動補助部材付高圧放電ランプを用いたランプユニット1の構成を示す一部断面図である。 高圧放電ランプ10の構成を示す正面図である。 (a)は誘電体部材の構成を示す斜視図であり、(b)は二重構造の誘電体部材の斜視図である。 (a)は誘電体部材20が取り付けられた高圧放電ランプ10の要部を示す斜視図であり、(b)はその一部断面図である。 (a)〜(c)は実施の形態1の変形例に係る誘電体部材の構成を示す斜視図である。 (a)〜(c)は実施の形態1の変形例に係る誘電体部材の構成を示す斜視図である。 (a)は実施の形態2に係る誘電体部材20Aの構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態2に係る誘電体部材20Aの断面図であり、(c)は実施の形態2に係る誘電体部材20Aが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。 (a)〜(d)は実施の形態2の変形例に係る誘電体部材の側面図である。 実施の形態3に係る誘電体部材20Bの構成を示す斜視図である。 (a)は実施の形態4に係る誘電体部材20Cの構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態4に係る誘電体部材20Cの断面図であり、(c)は実施の形態3の変形例に係る誘電体部材の断面図であり、(d)は実施の形態4に係る誘電体部材20Cが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。 (a)は実施の形態4の他の変形例に係る誘電体部材の構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態4の他の変形例に係る誘電体部材の断面図である。 (a)は実施の形態5に係る誘電体部材20Dの構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態5に係る誘電体部材20Dが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図であり、(c)は実施の形態5の変形例に係る誘電体部材の構成を示す斜視図であり、(d)は実施の形態5の他の変形例に係る誘電体部材の構成を示す斜視図である。 (a)は実施の形態6に係る誘電体部材20Eの構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態6に係る誘電体部材20Eが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図であり、(c)は実施の形態6の変形例に係る誘電体部材が取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。 (a)実施の形態1の誘電体部材20と金属線21の端部21aとの接触を示す要部拡大断面図であり、(b)は実施の形態7において、誘電体部材端面に金属線を接触させる構造を示す要部拡大断面図であり、(c)は端部21aを先鋭に加工した金属線と誘電体部材とを接触させる構造を示す要部拡大断面図であり、(d)は端部21aを誘電体部材の外周面に突き立てるように接触させた構造を示す要部拡大断面図である。 (a)実施の形態8に係る誘電体部材20Fの構成を示す斜視図であり、(b)は実施の形態8に係る誘電体部材20Fと金属線との構造を示す要部拡大断面図であり、(c)実施の形態8の変形例に係る誘電体部材20Gの構成を示す斜視図であり、(d)は実施の形態8の変形例に係る誘電体部材20Gと金属線との構造を示す要部拡大断面図である。 高圧放電ランプ10との組立工程における誘電体部材20の取り付けを説明する模式図である。 実施の形態9に係るランプユニット1Aの構成を示す一部断面図である。 実施の形態10に係るランプユニット1Bの構成を示す一部断面図である。 実施の形態1のランプユニット1と点灯回路からなるランプシステム(画像表示装置)の構成例を示す図である。
(発明の一態様の概要)
本発明は、従来に比べて耐久性に優れる始動補助部材付高圧放電ランプの提供を目的とする。
本発明の第1態様である始動補助部材付高圧放電ランプは、発光部に長尺状の第一封止部および第二封止部が連設された高圧放電ランプと、当該高圧放電ランプの始動補助部材とを備える始動補助部材付高圧放電ランプであって、前記始動補助部材は、前記第一封止部よりも高い比誘電率を有する材料からなる、前記第一封止部に外嵌された筒状の誘電体部材と、一端部が、前記第二封止部に封止されている放電電極に電気的に接続され、他端部が、前記誘電体部材に近接配置された金属線とを有し、前記誘電体部材は、前記外嵌状態で固着剤を介して前記第一封止部に固定され、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する領域には、前記固着剤との接着面積を増大させる増大部が設けられている。
上記の構成によれば、誘電体部材と固着剤との間で増大部による広い接着面が生じ、誘電体部材と固着剤とが接着する強度を高めることができる。そのため、誘電体部材と固着剤との熱膨張率に差があり、経時劣化により誘電体部材と固着剤との剥離が進行する場合であっても、接着強度が実用上の下限に達するまでの時間を稼ぐことができる。従って、耐久性を向上させることができる。ここで、増大部とは、外径、内径および筒長が誘電体部材と同じであるが、増大部を有していない単純な円筒形状に比して、誘電体部材において固着剤をさらに多く配することのできる部位である。
また、本発明の第2態様は第1態様において、前記固着剤は、前記誘電体部材において前記発光部に対向する側とは反対側の開口端部に配されているよう構成してもよい。
上記本発明の第2態様の構成によれば、金属線の他端部と誘電体部材との間でコロナ放電に伴い発生する紫外線が、発光部側では固着剤により遮蔽されにくい。その結果、光電効果による電子放出が、放電電極においてより促進される。
また、本発明の第3態様は第1態様または第2態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面から前記誘電体部材の軸方向中央部に向けて設けられた少なくとも1以上の切り欠きであるよう構成してもよい。
また、本発明の第4態様は第3態様において、前記切り欠きは、前記誘電体部材の軸と直交する方向から見た形状が矩形状であるよう構成してもよい。
上記本発明の第3態様、あるいは本発明の第4態様の構成によれば、切り欠きを囲む面に固着剤が付着することで誘電体部材と固着剤との接着面積が広くなり、経時劣化による剥離に対して耐久性を向上することができる。
また、本発明の第5態様は第4態様において、前記切り欠きは複数個あり、前記端面の複数箇所から軸方向中央部に向けて設けられているよう構成してもよい。
上記本発明の第5態様の構成によれば、複数の切り欠きを複数有することで、組立工程において固着剤を切り欠きに充填する作業時に、切り欠きの位置を作業領域に合わせるために行う周方向の位置決めを速やかに行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
また、本発明の第6態様は第3態様において、前記切り欠きは、前記端面から他方の開口端部の端面まで設けられているよう構成してもよい。
点灯時に高温となる第一封止部に誘電体部材を外嵌していることで、第一封止部の熱が伝導して誘電体部材の温度も上昇する。誘電体部材が熱膨張する際に内部応力が生じるが、上記本発明の第6態様の構成によれば、一方の開口端部の端面から他方の開口端部の端面まで欠切することで、その内部応力を逃がすことができる。そのため、始動補助部材付高圧放電ランプの信頼性が向上する。
また、本発明の第7態様は第1態様または第2態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部から前記誘電体部材の軸方向中央部に向かって移るに従って、漸次内径が縮径するよう内周面に形成されたテーパであるよう構成してもよい。
上記本発明の第7態様の構成によれば、誘電体部材が第一封止部に外嵌された状態においてテーパに固着剤が付着することで、誘電体部材と固着剤との接着面積が広くなり、経時劣化による剥離に対して高い耐久性が得られる。
また、本発明の第8態様は第1態様または第2態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面から前記誘電体部材の軸方向中央部へ向けて延伸する前記誘電体部材の内周面に設けられた溝であるよう構成してもよい。
上記本発明の第8態様の構成によれば、溝に固着剤が入り込み付着することで誘電体部材と固着剤との接着面積が広くなり、経時劣化による剥離に対して高い耐久性が得られる。
また、本発明の第9態様は第8態様において、前記溝は、前記端面から他方の開口端部の端面まで設けられているよう構成してもよい。
上記本発明の第9態様の構成によれば、第一封止部に対して誘電体部材を外嵌させる向きに順逆がなく、組立工程における作業性の向上を図ることができる。
また、本発明の第10態様は第1態様または第2態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面に設けられている凹部および凸部の少なくとも一方であるよう構成してもよい。
また、本発明の第11態様は第1態様または第2態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の外周面に設けられている凹部および凸部の少なくとも一方であるよう構成してもよい。
上記本発明の第10態様、あるいは本発明の第11態様の構成においても、誘電体部材と固着剤との接着面積が広くなり、経時劣化による剥離に対して高い耐久性が得られる。
また、本発明の第12態様は第11態様において、前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の外周面において周方向に沿って設けられた環状の溝であるよう構成してもよい。
上記本発明の第12態様の構成によれば、外周面で周方向に沿った溝に入り込み付着する固着剤が、誘電体部材を軸方向で係止するため、誘電体部材の固定がより強固なものとなる。
また、本発明の第13態様は第1態様または第2態様において、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部に設けられた増大部と同様の構造が、前記誘電体部材の他方の開口端部に設けられており、前記金属線の前記他端部が前記他方の開口端部で前記同様の構造により係止されているよう構成してもよい。
上記本発明の第13態様の構成によれば、第一封止部に対して誘電体部材を外嵌させる向きに順逆がなく、組立工程における作業性の向上を図ることができる。さらに、金属線の他端部が誘電体部材の他方の開口端部に設けられ構造によって係止されることで、経時劣化により金属線の他端部が誘電体部材から離間することを防止することができる。
また、本発明の第14態様は第1態様または第2態様において、前記金属線の前記他端部が前記誘電体部材の前記発光部に対向する側の開口端部の端面に近接して配されているよう構成してもよい。
上記本発明の第14態様の構成によれば、誘電体部材と金属線の他端部との間で発生し発光部方向へ向かう紫外線が、誘電体部材により遮蔽されることなく、発光部内の放電電極に良好に照射される。その結果、放電電極において、光電効果による電子放出がより促進される。
また、本発明の第15態様は第1態様または第2態様において、前記金属線の前記他端部は、端部内よりの部位から端に向かって、断面積が縮小する形状であるよう構成してもよい。
誘電体部材と金属線の他端部との接点は面積が小さいほど、電圧印加時に電界が集中し、コロナ放電およびこれによる紫外線が生じ易い。従って、上記本発明の第15態様の構成によれば、金属線の他端部が先鋭な形状であるため、より低い印加電圧でコロナ放電を発生させることができる。
また、本発明の第16態様は第1態様または第2態様において、前記第一封止部が石英ガラスで構成されており、前記誘電体部材がチタン化合物を含むよう構成されてもよい。
また、本発明の第17態様は第16態様において、前記チタン化合物は、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムの内の1種以上であるよう構成してもよい。
上記本発明の第16態様、あるいは第17態様の構成によれば、電圧印加時に誘電体部材に豊富な電荷を蓄積させることができ、低い印加電圧でコロナ放電およびこれによる紫外線を発生させることができる。
以下、本実施の形態に係る始動補助部材付高圧放電ランプについて、図面を参照しながら説明する。
なお、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。また、本発明において、数値範囲を示す符号「〜」は、その両端の数値を含むものとする。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る始動補助部材付高圧放電ランプを用いたランプユニット1の構成を示す一部断面図である。当図では説明のため、反射鏡40及びコネクタ110の一部のみ断面を図示する。
図1に示されるように、ランプユニット1は大別すると高圧放電ランプ10、誘電体部材20、金属線21、固着剤30、反射鏡40、一対のリード線120A、120B及びコネクタ110を備える。
(高圧放電ランプ10の構成について)
図2は、高圧放電ランプ10の構成を示す正面図である。当図では説明のため、高圧放電ランプ10の内部も実線にて図示する。
高圧放電ランプ10は、例えば石英ガラスからなる放電容器(外囲器)108と、電極組立体107A、107Bとを有する。
放電容器108は、発光部100と、当該発光部100の両側から延設されて一対をなす細管からなる封止部101A、101Bとを一体的に形成してなる。
発光部100は、内部に放電空間105を有し、当該放電空間105には、例えば、発光物質としての水銀、始動時の放電ガスとしての希ガス、及び、ハロゲン物質が封入されている。
一対の封止部101A、101Bは、例えば略円柱状であり、その一方が反射鏡40(図1参照)と固着され、他方に誘電体部材20が取り付けられる。なお、反射鏡40と固定される側を第二封止部101Bと称し、誘電体部材20が取り付けられる側を第一封止部101Aと称する。
第一封止部101Aおよび第二封止部101Bには、それぞれ電極組立体107A、107Bが封止されている。
電極組立体107A、107Bは、金属箔103A、103Bの長手方向各一端側から放電電極104A、104Bを延設し、同方向各他端側から外部リード線102A、102Bを延設してなる。金属箔103A、103Bは、それぞれ放電電極104A、104Bおよび外部リード線102A、102Bと略一直線上に並べて配設され溶接等で接合されている。
電極組立体107A、107Bは、金属箔103A、103Bが封止部101A、101Bの長手方向中央付近に位置するように、封止されている。
外部リード線102A、102Bは、金属箔103A、103B側が封止部101A、101B内に埋め込まれ、金属箔103A、103Bとは反対側が封止部101A、101Bから外部に突出する。
放電電極104A、104Bは、互いの先端部において放電容器108の放電空間105内で対向する。
(始動補助部材について)
図2に示すように、始動補助部材は、外囲器108の外表面に配される誘電体部材20と、金属線21とからなる。
誘電体部材20は、高圧放電ランプ10の外囲器108の構成材料(石英ガラス)よりも高い比誘電率を有する。誘電体部材20は、高圧放電ランプ10の点灯中の発熱に対して十分な耐熱性を有する材料により構成される。具体的には、金属酸化物を高温で熱処理することによって焼き固めたセラミックス材料を利用して構成される。
図3(a)の斜視図に示すように、誘電体部材20は、外観的には筒形状をなす。筒形状の一方の開口端部には、切り欠き220を有する。切り欠き220を有する端面201側の端部は、図4(a)に示すように、固着剤30で第一封止部101Aの外表面に固定される。このとき、切り欠き220には固着剤が充填される。つまり、切り欠き220を囲む面が固着剤に覆われる増大部となる。
誘電体部材20の外径D1(図3(a)参照)は、発光部100の最大外径部分から第一封止部101Aの先端までを結ぶ仮想線(図2のA−A’)を想定するとき、当該仮想線から外にはみ出ない程度の値であることが最も望ましい。なぜなら、上記の外径D1の値は、第一封止部101Aに外嵌した際に発光部100からの発光を遮蔽しない寸法である。また、発光部100からの発光が反射鏡40によって反射され、光が前方へ出射されるのを遮蔽しないような寸法でもある。
誘電体部材20の内径D2としては、点灯時の熱膨張を考慮して、消灯時に誘電体部材20の内周面が第一封止部101Aの外表面に密着しない程度の値である必要がある。
切り欠き220の幅wおよび深さdとしては、外径D1、内径D2、および筒長Lが誘電体部材20と同サイズで切り欠きのない円筒形(以下、「単純円筒形」という)と比較して、一方の開口端部において後述するように固着剤を付着させる領域の表面積が、切り欠きを囲む面によって5%以上増大するように調整することが望ましい。具体的には、式1により得られる単純円筒形における一方の開口端面の面積Sと、
Figure 2014110081
式2により得られる、切り欠きにより増大する面積S’とを比較し、
Figure 2014110081
S’/S>0.05であればよい。
図2に戻って、金属線21について説明する。金属線21は、高圧放電ランプ10の外周面に沿って配されている。金属線21の一端部(端部21b)は、第二封止部101Bから突出した外部リード線102Bに対し、電気的に接続されている。金属線21の中央から他端部までが第一封止部101Aまで引き回され、当該第一封止部101Aの外表面に数度巻回されている。第一封止部101Aに巻回させることで金属線21は構造上安定する。また、巻回された金属線21によって発光部100周辺に強電界の発生を促すことで放電開始電圧の低減を期待できる。金属線21の他端部(端部21a)は、誘電体部材20の表面に対し、その先端が例えば点接触するように配設されている。この点接触以外に、端部21aと誘電体部材20の表面とは、始動補助部材を有していない高圧放電ランプを放電開始させるための印加電圧よりも低い印加電圧によってコロナ放電を起こす程度に、近接または接触して配設されていればよい。
上記配設では、端部21aを弾性付勢により、その先端を誘電体部材20の表面に突き立てるように接触させることで、より大きな効果が得られる。具体的には、金属線21を第一封止部101Aに巻回した後に端部21aの先端が第一封止部101Aの外表面に近接または接触する形状に金属線21を折り曲げ、端部21aの先端と第一封止部101Aの外表面とに挟み込まれるように誘電体部材20を取り付けることで、端部21aを誘電体部材20の表面に弾性的に付勢して接触させることができる。
(固着剤30)
図2に戻って、固着剤30は、第一封止部101Aに外嵌された誘電体部材20を、金属箔103Aが封止された位置で固定する固着剤であって、誘電体部材20と第一封止部101Aとを接着するよう塗り付けられたペースト状のセメント(以下、「固着剤ペースト」という)を加熱により硬化させたものである。なお、固着剤30の材料はセメントに限定されず、熱膨張率が低く耐熱性に優れる材料であれば、ランプ用の耐熱性固着剤として入手可能な他の市販品(例えばスミセラムS−10A、朝日化学工業株式会社製)を使用しても良い。
固着剤30は、図4(a)の斜視図に示すように、誘電体部材20が発光部100に対向する側と反対の側の開口端部にのみ配置されている。これにより、固着剤30は、コロナ放電に伴い発生する紫外線が発光部100へ照射されるのを遮らない。また、端面201側の端部に有する切り欠き220に固着剤30が充填されることで、誘電体部材20との広い付着面が形成されている。
さらに、端面201のみならず、外周面200の端面201よりの一部にも固着剤30が覆い被さるように付着する。これにより、誘電体部材20に対する接着力が向上する。但し、固着剤30が発光部100からの出射光を大きく遮蔽すると、ランプユニットとしての発光効率に影響するため注意する。特に、発光部100からの発光が反射鏡40によって反射され、光が前方へ出射されるのを遮蔽しないように、固着剤30の最大外径を調整する。そこで、固着剤30の最大外径は、誘電体部材20の外径D1と同様に、発光部100の最大外径部分から第一封止部101Aの先端までを結ぶ仮想線(図2のA−A’)を想定するとき、当該仮想線から外にはみ出ない程度の値であることが最も望ましい。
なお、誘電体部材20の開口端部の端面に付着するように固着剤30を配する構造では、使用する固着剤ペーストの量が多いと発光部100からの出射光の一部を固着剤30が遮ることでケラレを発生させる虞がある。しかし、発光部100から遠い側の開口端部に固着剤30を配した本実施形態の形態1の構成では、同量の固着剤ペーストを用いて発光部100に対向する側の開口端部に固着剤を配する構成に比して、ケラレを小さくすることができる。
(その他のランプユニット1の構成要素)
図1に戻って、反射鏡40は、発光部100からの出射光のうち、特定波長の光を選択的に前面に反射する凹状の反射面41が形成された椀部42と、当該椀部42の後方に延設された筒部43とを有する。高圧放電ランプ10の第二封止部101Bおよび金属線21は、椀部42の反射面41側から筒部43内へと挿入され、反射面41の焦点と高圧放電ランプ10の一対の放電電極104A、104B間の中央位置とが略一致させられた状態で、第二封止部101Bと前記筒部43との隙間に固着剤44としてのセメントが充填されて固着されている。なお、固着剤44としてはセメントに限定されず、ランプ用の耐熱性固着剤として入手可能な市販品を使用しても良い。
各リード線120A、120Bは、被覆導線126A、126B、ニッケル線122A、122B、及び、それらを接続する接続部材124A、124Bからなる。各リード線120A、120Bのニッケル線122A、122B側の先端部は、高圧放電ランプ10の外部リード線102A、102Bと、スリーブ121A、121Bを介して接続されており、被覆導線126A、126B側の先端部には、内部空間112に接続端子127A、127B(127Aは不図示)を内包する樹脂製の外部接続用コネクタ110が取り付けられている。
被覆導線126A、126Bは、導電性を有する芯材123A、123Bを絶縁性の被覆材125A、125Bで被覆したものである。芯材123A、123Bとニッケル線122A、122Bとが接続部材124A、124Bによって接続されている。
(実施例)
(1)誘電体部材20を構成する材料
誘電体部材20を構成する材料は、石英ガラス(高純度SiO2)の比誘電率が3.5〜4.0程度であるため、これらの上限値よりも比誘電率が高い材料であればよい。即ち、比誘電率が5以上であれば始動電圧を低減させる効果を有し、好ましくは比誘電率20以上、より好ましくは比誘電率が100以上の物質を選定する。具体的には、チタン酸バリウム(BaTiO3、比誘電率1150〜3200)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3、比誘電率300程度)、二酸化チタン(TiO2、比誘電率100程度)等のチタン化合物(チタン酸化物等)の中から選んだ1種以上を用いるのが好適である。特にチタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウムの比誘電率は石英ガラスに比べて非常に高いため望ましい。
(2)金属線21の材料
金属線21は、例えば鉄―クロム(Fe−Cr)系合金材、ニッケル−クロム(Ni−Cr)系合金、またはモリブデン材で構成される。
(3)放電空間に封入される水銀、始動時の放電ガスとしての希ガス、及び、ハロゲン物質
プロジェクタ用の高圧水銀ランプの場合、水銀は、放電容器の内容積あたり0.15[mg/mm3]〜0.40[mg/mm3]封入されており、一例として0.30[mg/mm3]である。
希ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のいずれか又はそれらの少なくとも2種の混合ガス等が、ランプ消灯時かつ常温放置下での封入圧力として0.01[MPa]以上1[MPa]以下の範囲内で封入される。一例としてアルゴンが0.03[MPa](25[℃])である。
ハロゲン物質としては、例えば、ヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)のいずれか又はそれらの少なくとも2種の混合物質などが、発光管の単位内容積あたり1×10−6[μmol/mm3]以上1×10−2[μmol/mm3]以下の範囲内で封入されており、一例として臭素が5×10−4[μmol/mm3]である。
(4)電極組立体
外部リード線102A、102Bは、例えばモリブデン材やタングステン材で構成される。外部リード線102A、102Bの直径は、封止部101A、101Bの気密性を高めるために、0.5[mm]以下であることが好ましい。一例として、約0.4[mm]である。
金属箔103A、103Bは、例えば、モリブデン(Mo)材で構成される。
放電電極104A、104Bは、例えばタングステン(W)材で構成される。放電電極104A、104Bの先端部間の距離である電極間距離(放電ギャップ)は、任意に設定できる。ショートアーク形の場合、例えば0.5[mm]〜2.0[mm]の範囲に設定することができる。
(効果)
本実施の形態1の構成によれば、誘電体部材20は、切り欠き220を有しているため固着剤30との接触面積が広く、誘電体部材20と固着剤30との間で強い接着力が得られる。特に、誘電体部材と固着剤との熱膨張率に差があり、経時劣化により誘電体部材と固着剤との剥離が進行する場合であっても、接着力が実用上の下限に達するまでの時間を稼ぐことができる。
なお、本実施の形態1においては、外周面200の一部にも固着剤30を覆い被せるように配した例を説明した。しかし、切り欠き220は、端面201と切り欠き220を囲む面とに付着するように固着剤30が配されていれば、誘電体部材において固着剤が付着する領域に外周面200が含まれない場合にも、増大部として作用する。
この場合、単純円筒形において一端面にのみ固着剤を付着させる場合と比較して、誘電体部材20では、端面201と切り欠き220を囲む面とに固着剤30が付着することで、固着剤との接着面積が増大している。
(変形例について)
(1)切り欠きの数
誘電体部材20が有する切り欠き220の数は1に限らず、図5(a)〜(c)に示すように複数の切り欠き220を有してもよい。端面201側の端部に複数の切り欠き220を有することで、誘電体部材20と固着剤30とのより良好な接着性が得られる。また、切り欠きの数が多いほど、高圧放電ランプ10との組立工程において固着剤ペーストを切り欠きに充填する作業時に、切り欠き位置を作業領域に合わせるために行う周方向の位置決めを速やかに行うことができ、作業性の向上に寄与する。但し、有する切り欠きの数が多いほど構造的に割れを生じやすくなるため、切り欠きの数は割れを生じない範囲で選定することが必要となる。
また、誘電体部材20は、誘電体部材20の一方の開口端部のみならず、両方の開口端部に切り欠き220を有する構造であってもよい。このように両端に切り欠き220を有する場合、第一封止部101Aに対して誘電体部材20の向きに順逆がなく、高圧放電ランプ10との組立工程において、作業性の向上を期待できる。
(2)切り欠きの大きさ
誘電体部材20の他の変形例として、図6(a)に示すように、誘電体部材20の周面を端面201から他方の端面まで欠切することで、周面にスリット230を有するよう構成してもよい。なお、周面にスリットを有し、軸方向に直交する断面がC型になる形状も、本明細書においては円筒形とする。
点灯時に高温となる第一封止部101Aに誘電体部材20を外嵌していることで、第一封止部101Aの熱が伝導して誘電体部材20の温度も上昇する。この誘電体部材20が熱膨張する際に内部応力が生じるが、スリット230を有することにより、その応力を逃がすことができる。そのため、始動補助部材付高圧放電ランプの信頼性が向上する。
なお、図6(a)に示す誘電体部材20を用いた高圧放電ランプ10との組立工程において固着剤ペーストを塗り付ける作業では、発光部100に対向する側の反対側から端面201およびスリット230に固着剤ペーストを注入するが、必ずしも端面201側から他方の端面側までスリット230の全体に固着剤ペーストを充填する必要はない。単純円筒形の一開口端面の面積に比して接着面積が5%以上増大するように、スリット230に固着剤ペーストを注入して固着剤30を形成することで、耐久性の向上が期待できる。
(3)切り欠きの形状
切り欠き220は固着剤30が入り込むことで付着面積を増大させる構造であればよく、その形状は図3(a)に示す矩形に限定されるものではない。例えば、図6(b)や図6(c)に示す形状であってもよい。特に図6(c)に示す端面201側が絞られた台形状の切り欠きでは、切り欠き220に充填され加熱により硬化した固着剤30との係合により、誘電体部材20の固定がより良好なものとなる。
(4)二層構造
誘電体部材20は単一材料からなる構成に限定されず、図3(b)に示すように、端面201および外周面200を持つ第一層に対し、第一層と異なる材料からなる第二層210を積層した多重構造(当図では2重構造)としてもよい。ここで、第一層は比誘電率の高いセラミックス材料とし、第二層210は前記セラミックス材料に限定されず石英ガラスやアルミナ、金属等でも良い。
(5)誘電体部材の寸法
誘電体部材の外径D1は、発光部100の最大外径以下の値としても好ましい。しかしながら、外径D1の寸法は必ずしも上述した条件に限られず、若干であれば、発光部100の最大外径以上の値であっても許容できる場合がある。
(6)金属線21の端部21aと誘電体部材20の接触
金属線21の端部21aと誘電体部材20とは、点接触に限らず、始動補助部材を有していない高圧放電ランプを放電開始させるための印加電圧よりも低い印加電圧によってコロナ放電を起こす程度に近接して配されていればよい。但し、金属線21の端部21aと誘電体部材20の表面との距離が近いほど、低い印加電圧でコロナ放電が発生しやすい。また接触させる場合には、接点の面積が小さいほど、電圧印加時に電界が集中し、コロナ放電およびこれによる紫外線が生じ易い。
以下、実施の形態1とは形状の異なる誘電体部材を始動補助部材に用いる本発明の別の実施形態について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
(7)固着剤の配置
固着剤30の配置は、誘電体部材20が発光部100に対向する側と反対の側の開口端部のみに必ずしも限定されず、固着剤30が発光部100からの出射光を甚だしく遮蔽しない限りにおいて、発光部100に近い側の開口端部にも固着剤30を配するよう構成してもよい。
<実施の形態2>
図7(a)は実施の形態2に係る誘電体部材20Aの構成を示す斜視図であり、図7(b)は誘電体部材20Aの断面図であり、図7(c)は誘電体部材20Aが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。
実施の形態1で説明した誘電体部材20との違いは、誘電体部材20Aの端部に切り欠き220がなく、固着剤30により固定される側の端部内周面を、開口端から軸方向の中央部に向かって移るに従って漸次内径が縮径するテーパ状に成形している点である。
この誘電体部材20Aにおいても、図7(c)に示すように、テーパ面201aに固着剤30を付着させることで、単純円筒形において一端面のみに固着剤を付着させる場合に比して固着剤30との接着面積を増大させることができる。つまり、テーパ面201aが固着剤に覆われる増大部となる。
具体的には、軸方向に直交する面とテーパ面201aとの成す角をR(図7(c)参照)とした場合、単純円筒形の一端面の面積に比して、誘電体部材20Aのテーパ面201aの面積は1/cosR倍になる。従って、R>5[°]であれば、単純円筒形に比して固着剤30との接着面積が5%以上増大し、固着剤30との接着力は有意に向上する。なお、良好な接着力を期待する場合、20[°]<R<80[°]であることが望ましい。一例としてR=45[°]である。但し、Rが大きいほど誘電体部材20Aの端部が肉薄になるため、誘電体部材20Aを第一封止部101Aに外嵌する工程等で割れや欠けを生じやすく、美観が損なわれやすくなる。よって、Rはそれら不具合が生じない範囲で選定する必要がある。
なお、図8(a)に示すようにテーパ面201は、誘電体部材の両端にあってもよい。このように両端を同形状に成形した場合、第一封止部101Aに対して誘電体部材の向きに順逆がなく、高圧放電ランプ10との組立工程において、作業性の向上を期待できる。さらに、発光部100に対向させる側にテーパを有することで、誘電体部材を第一封止部101Aに外嵌する作業において、テーパによるガイド機能を期待できる。
また、図8(b)に示すように、端面201の一部が残るようにテーパを成形した変形例や、断面が直線的なテーパではなく図8(c)に示すようなテーパ面201bの断面に曲率を持たせた形状に成形した変形例や、図8(d)に示すように、開口端から軸方向の中央部に向かって移るに従って、内周面202a、内周面202b、内周面202の順に内径が段階的に縮径するよう成形した変形例でも、第一封止部101Aに外嵌した際に第一封止部101Aの外表面との間に生じる隙間に固着剤30を入り込ませることで、接着面積を増大させることができる。
これらの変形例においても、単純円筒形の端面に比して固着剤30との接着面積を5%以上度増大するように、増大部となるテーパの形状を調整することが望ましい。
以上のように、封止部に外嵌した際に端部で封止部の外表面との間に間隙を生じる構造では、この間隙に充填された固着剤と一端面に付着した固着剤との合計の接着面積が、単純円筒形の一端面にのみ付着する固着剤の接着面積に比較して広なる。従って、上記の構造は、増大部として作用する。
<実施の形態3>
図9は、実施の形態3に係る誘電体部材20Bの構成を示す斜視図である。
この誘電体部材20Bの特徴は、固着剤30との接着面積を増大させるための立体的構造として、固着剤30により固定される側の端面を粗く加工している点である。
発明者らの行った計測では、粗面処理を施さず無加工で円筒形に成形し焼結した誘電体部材の端面は、表面粗さを表すRa値が、実測値で1〜4[μm]程度であった。本実施の形態3に係る誘電体部材20Bは、Ra値=5[μm]の粗い端面201cを有する。
このような誘電体部材20Bは、例えば、焼結前に一端面をサンドペーパー等で表面が粗くなるよう加工しておき、その後に焼結することで得られる。ここで、無加工で焼結した場合に端面のRa値が実測値最大の4[μm]であるとしても、これに比して誘電体部材20Bの端面201cは、約20%の表面積増とすることができる。そのため端面201cにおいては微細な凹凸が増大部となり、この凹凸に固着剤30が入り込んで付着することで、固着剤30との接着力が向上する。表面粗さを大きくすることによって、固着剤30との接着力はさらに増強するものであることはいうまでもない。
なお、端面201cにおいて固着剤30との接着面積を増大させる構造は、焼結前にサンドペーパー等で加工しておくことで表面に微細な凹凸を有する構造に限らず、単純円筒形の開口端面に比して端面に表面積を増大させるための様々なサイズの凹凸を有する構造であればよい。例えば、端面201cに窪みや畝を有する構造であってもよい。あるいは、端面201cに環状や放射状の溝を有することでも、表面積の増大を図ることができる。
以上のように、単純円筒形における無加工の一端面と比較して、誘電体部材の一端面においてその表面積を増大させる立体的な構造は、増大部として作用する。
これらの変形例においても、単純円筒形の端面に比して固着剤30との接着面積を5%以上度増大するように、増大部の形状を調整することが望ましい。
<実施の形態4>
図10(a)は実施の形態4に係る誘電体部材20Cの構成を示す斜視図であり、図10(b)は誘電体部材20Cの断面図である。図10(d)は誘電体部材20Cが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。
この誘電体部材20Cの特徴は、固着剤30により覆われることで固着剤30との接着面積を増大させる増大部として、誘電体部材20Cの内周面202に溝240を有する点である。
誘電体部材20Cを第一封止部101Aに外嵌した場合、図10(d)に示すように、溝240では第一封止部101Aの外表面との間に間隙が生じるため、高圧放電ランプ10との組立工程において、端面201に固着剤ペーストを付着させるとともに、発光部200に対向する側の反対側からこの間隙に固着剤ペーストを注入することで、単純円筒形に比して固着剤30との接着面積を増大させることができる。
なお、固着剤ペーストは、必ずしも端面201側から他方の端面側まで溝240の全体に充填する必要はない。単純円筒形の一開口端面の面積に比して接着面積が5%以上増大するように、溝240に固着剤30を貫入させることで、接着力は有意に向上する。
また、溝240は固着剤30との接着面積を増大させる構造であればよく、図10(b)に示すように端面201側から他方の端面側まで達している構造に限定されるものではない。例えば、図10(c)に示すように、端面201側から誘電体部材20Cの内周面202の途中まで溝240が連続する構造であってもよい。あるいは、端面201側から内周面202の途中まで連続する溝240に加えて、端面203側からも内周面202の途中まで連続する溝が有る構造であってもよい。このように溝240が一端から他端まで連続していなくても、両端に内周面202の途中まで連続する溝が有る構造では、第一封止部101Aに対して誘電体部材20Cの向きに順逆がなく、高圧放電ランプ10との組立工程において、作業性の向上を期待できる。
また、溝240の断面形状は、矩形に限らず、半円形や三角形等の他の形状であってもよい。また、内周面202に有する溝240の数は、1本に限らず、複数本の溝240を内周面202に有する構造であってもよい。
内周面202に複数本の溝240を有することで、誘電体部材20Cと固着剤30との広い接着面積が得られる。また、実施の形態1で説明した切り欠き220と同様に、溝240についても数が多いほど、高圧放電ランプ10との組立工程において固着剤ペーストを充填する作業時に、周方向の位置決めを速やかに行うことができる。
さらに、誘電体部材20Cの変形例として、内周面202二有する溝240は螺旋状であってもよい。図11(a)は螺旋状の溝240を有する誘電体部材20Cの構成を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。高圧放電ランプ10との組立工程においては、固着剤ペーストを端面201側に塗り付けた後、本変形例に係る誘電体部材20Cを回転させながら固着剤ペーストを塗り付けた側へ移動させることで、溝240に固着剤ペーストをねじ込むことができる。溝240を螺旋状にすることで、溝240に貫入され加熱により硬化した固着剤30が係止のための構造体として機能し、誘電体部材20Cの固定がより良好なものとなる。
以上のように、封止部に外嵌した際に、端部で封止部の外表面との間に間隙を生じる構造は、この間隙に充填された固着剤と一端面に付着した固着剤との合計の接着面積が、単純円筒形の一端面にのみ付着する固着剤の接着面積に比較して広くなり、増大部として作用する。
<実施の形態5>
図12(a)は実施の形態5に係る誘電体部材20Dの構成を示す斜視図であり、(b)は誘電体部材20Dが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。
この誘電体部材20Dの特徴は、固着剤30に覆われることで接着面積を増大させる増大部として、誘電体部材20Dの外周面200において固着剤30が覆い被さるように付着する端面201近傍領域に、周方向に連続する溝250を有する点である。
外周面200の端面201よりの領域が固着剤30により覆い被さるように接着されるために、図12(b)に示すように、溝250にも固着剤30が充填されることで接着力が向上する。また、固着剤30が剥離した場合にも、溝250と当該溝250に充填された固着剤30との係合による固定も期待できる。
但し、固着剤30が発光部100からの出射光を大きく遮蔽しないように、固着剤30で外周面200を被覆する厚みを調整する必要がある。
なお、溝250の構造は、図12(a)に示される構造に限定されるものではない。例えば、溝250の断面形状は、矩形に限らず、半円形や三角形等の他の形状であってもよい。また、外周面200に有する溝250の数は、1本、あるいは、3本以上の複数本であってもよい。溝250の数を増やすことで、誘電体部材20Dと固着剤30とのより良好な接着性が得られる。
また、外周面200において端面201よりの固着剤30により覆い被さる領域に有する構造は、固着剤30との接着面積を増大させる構造であればよく、周方向に連続する環状の溝250に限定されない。例えば、図12(c)に示すように、開口端から軸方向の中央部に向かって外周面200a、外周面200b、外周面200の順に外径が段階的に拡径する構造であってもよい。
あるいは、このような外径が段階的に拡径する構造ではなく、外周面がテーパ状に形成された構造であってもよい。例えば、固着剤30により固定される側の端部外周面を、開口端から軸方向の中央部に向かって移るに従って漸次外径が拡径するテーパ状に成形してもよい。このような形状であれば、実施の形態2で説明した内周面にテーパを形成する場合と同様に固着剤30との接着面積を増大させることができ、かつ、内周面にテーパを形成する場合に比して、固着剤ペーストの塗り付けが容易である。
さらに、一方の端部外周面を上述のようにテーパ状に形成し、他方の端部内周面を、開口端から軸方向の中央部に向かって移るに従って漸次内径が縮径するテーパ状に成形してもよい。このように成形した場合、高圧放電ランプ10との組立工程で、誘電体部材を第一封止部101Aに外嵌する作業において、内周面をテーパ状に形成した側の開口端部を発光部100に対向させることで、内周面のテーパによるガイド機能を期待できる。
また、誘電体部材20Dにおいて環状の溝250を有する端面201よりの領域200c(図12(d)参照)に、環状の溝250に替えて螺旋状の溝や軸方向に連続する直線状の溝、窪み、畝、あるいは周方向に連続する環状の突出部等の構造を有することでも、これらの立体構造に固着剤30が覆い被さるように接着されることで、固着剤30との接着面積を増大させることができる。
これらの凹状の構造、凸状の構造を、外周面を上述のようにテーパ状に形成した場合のテーパ面が有するよう誘電体部材を構成してもよい。
さらに、領域200cや外周面を上述のようにテーパ状に形成した場合のテーパ面を、実施の形態3で説明した端面201cと同様に、焼結前にサンドペーパー等で加工しておくことによって焼結後の表面を粗くすることでも、表面積の増大を図ることができる。
なお、領域200cに突出部を有する場合には、突出部が発光部100からの出射光を大きく遮蔽しないように、誘電体部材の外径を、実施の形態1で説明した値よりも小さくすることが望ましい。
以上のように、一端面から軸方向に所定幅までの外周面において誘電体部材が有する凹状の構造、凸状の構造は、誘電体部材の一端面と当該一端面から軸方向に前記所定幅までの外周面とに固着剤を固着させる場合に、これらの構造を囲む面に固着剤が付着することで、単純円筒形の一端面と当該一端面から軸方向に前記所定幅までの外周面とに固着剤を付着させる場合と比較して、固着剤との接着面積が増大する。従って、上記の構造は、増大部として作用する。
<実施の形態6>
図13(a)は実施の形態6に係る誘電体部材20Eの構成を示す斜視図であり、(b)は誘電体部材20Eが取り付けられた高圧放電ランプ10の一部断面図である。
この誘電体部材20Eの特徴は、固着剤30が入り込むことで接着面積を増大させる増大部として、誘電体部材20Eの外周面200において固着剤30が覆い被さるように接着される端面201近傍領域に、外周面200から内周面202まで貫通する貫通孔260を有する点である。貫通孔260の形状は、直管状であり、その内径は、固着剤30を充填できる程度の大きさである。
端面201側の端部が固着剤30により覆い被さるように接着される際に、図13(b)に示すように、貫通孔260にも固着剤30が充填されることで、誘電体部材20Eが強固に固定される。また、貫通孔260と当該貫通孔260に充填された固着剤30との係合による固定も期待できる。但し、本実施形態においても、固着剤30が発光部100からの出射光を大きく遮蔽しないように、固着剤30で外周面200を被覆する厚みを調整する必要がある。
なお、貫通孔260の構造は、図13(a)に示される構造に限定されるものではない。例えば、図13(c)に示すように、テーパ状の貫通孔260aを有してもよい。また、貫通孔260の数は、1、あるいは、3以上の複数であってもよい。貫通孔260の数が多いほど、誘電体部材20Eと固着剤30との接着性が向上する。但し、貫通孔260の内径が大きいほど、また貫通孔260の数が多いほど構造的に割れが生じやすくなるため、貫通孔260の内径や数は割れを生じない範囲で選定することが必要になる。
なお、本実施の形態6においては、外周面200の一部にも固着剤30を覆い被せるように配した例を説明した。しかし、端面201に付着するように固着剤30が配され、さらに、貫通孔260に充填された固着剤が貫通孔260の内面と第一封止部101Aとに接着していれば、誘電体部材20Eにおいて固着剤が付着する領域に外周面200が含まれない場合にも、貫通孔260は、増大部として作用する。
この場合、単純円筒形において一端面にのみ固着剤を付着させる場合と比較して、誘電体部材20Eでは、端面201と貫通孔260を囲む面とに固着剤30が付着することで、固着剤との接着面積が増大している。
<実施の形態7>
次に、誘電体部材と金属線との接触形態について説明する。図14は、誘電体部材と金属線との接触の形態を示す要部拡大図である。
実施の形態1の場合、図14(a)のように、誘電体部材20の外周面200に金属線21の端部21aを点接触させる。なお、本明細書において「点接触」とは数学的定義に限定されず、金属線21と誘電体部材20の互いの接触面積を小さく抑えた接触を指す。具体的には、図14(a)の例では、誘電体部材20の表面に端部21aの端面を接触させるのではなく、接触面積が小さくなるように、端部21aの先端が外周面200に対して斜めに突き立てられている。これにより、電圧印加時の電界集中が大きくなり、コロナ放電が良好に生じ易い。
ここで、誘電体部材20を構成するチタン酸化物は高い比誘電率を有し、耐熱性も良好であるが、紫外線を吸収する性質がある。そのためコロナ放電にともなって発生した紫外線の一部も、誘電体部材20により吸収されることになる。
そこで、本実施の形態7では、図14(b)に示すように、発光部に対向する誘電体部材20の端面203に端部21aを接触させている。このような構成により、誘電体部材20と金属線21との接点から発光部方向へ向かう紫外線が誘電体部材により遮蔽されることなく、発光部内の放電電極に良好に照射される。その結果、放電電極において光電効果による電子放出がより促進される。
但し、金属線21の端部21aは、経時変化により図外の端部21b側、即ち、図14では左方向へその先端が移動する傾向がある。そのため経時変化に伴って、端部21aと端面203とが離間することを防止するために、端部21aを端面203に突き立てる場合には、図14(a)の例に比して弾性的に強く付勢することが望ましい。例えば、誘電体部材20の取り付け前に、誘電体部材20を配置する位置に端部21aの先端を配置しておき、その後に誘電体部材20のを端部21aに押し付けるように取り付けることで、弾性力を付勢できる。
次の図14(c)に示す変形例では、端部21aの先端が、端部内よりの部位から端に向かって断面積が縮小するように、先鋭に加工された金属線を用いている。誘電体部材と金属線との接点は面積が小さいほど、電圧印加時の電界集中が大きくなり、コロナ放電およびこれによる紫外線が生じ易い。従って、図14(c)のように、金属線の先端を先鋭なものとすることで、図14(a)に示すものよりも低い印加電圧でコロナ放電を発生させることができる。
なお、実際には、端部21aの先端や、誘電体部材の外周面200には微細な凹凸がある。そのため、図14(d)に示すように、金属線の端部21aの先端を外周面200に略直角に突き立てるようにして接触させる構成であっても、接触面積は端部21a端面と等しい面積ではなく、微細構造においてより小さな面積となる。従って、誘電体部材と金属線との接触形態として、図14(d)に示す構成をとる場合にも、金属線の端部21aと誘電体部材の外周面200との間に、コロナ放電を生じさせることができる。
また、誘電体部材と金属線との接点では、誘電体部材の表面に金属膜や金属の針状結晶等からなる電子放出層を設けることで、コロナ放電およびこれによる紫外線が生じ易くなる。電子放出層の材料には仕事関数が低い金属を用いることが望ましい。このような電子放出層の形成には、蒸着や焼成用導電性ペーストの塗布焼成等といった基板上に導体パターンを形成する技術、或いは、メッキ技術等を用いることができる。なお、電子放出層は、金属線との接点近傍のみならず、誘電体部材の外表面全体に形成されていてもよい。
なお、図14(a)〜(d)では、金属線の端部21aと誘電体部材とが接触する構成を図示した。しかし、端部21aと誘電体部材とは、必ずしも接触している必要はなく、始動補助部材を有していない高圧放電ランプを放電開始させるための印加電圧よりも低い印加電圧によってコロナ放電を起こす程度に近接して配されていればよい。
<実施の形態8>
次に、誘電体部材の他端に増大部と同様の構造を有する実施形態8について説明する。
図15(a)は実施の形態8に係る誘電体部材20Fの構成を示す斜視図であり、(b)は誘電体部材20Fと金属線との接触の形態を示す要部拡大断面図である。
この誘電体部材20Fの特徴は、外周面200の両端部に周方向に連続する断面半円形状の突出部270を有する点である。
図15(b)に示すように、端面201側の端部では、突出部270に固着剤30が覆い被さるように付着する。その一方、発光部100に対向する側に有する突出部270では、金属線の端部21aが係止される。これにより経時変化により端部21aが外周面200から離間することを防止することができる。
また、誘電体部材20Fは両端の形状が同じであるため、第一封止部101Aに対して誘電体部材20Fの向きに順逆がなく、高圧放電ランプ10との組立工程において、作業性の向上を期待できる。
なお、誘電体部材の両端に有する構造は、図15(a)に示される構造に限定されるものではない。例えば、凸部270の断面形状は、半円形に限らず、矩形や三角形等の他の形状であってもよい。また、外周面200に有する突出部270の数は、1本、あるいは、3本以上の複数本であってもよい。
さらに、本実施の形態8で外周面200の両端に有する構造は、図15(a)に示した構造に限らず、実施の形態5、6で説明した外周面200に有する構造も採用することができる。例えば、図15(c)に示すように、外周面200の両端に実施の形態6で説明した貫通孔260を有する誘電体部材20Gでも、発光部100に対向する側では、図15(d)に示すように、貫通孔260の位置を端部21aに対応させることで、貫通孔260による金属線の端部21aの係止効果を期待することができる。
<誘電体部材の製造方法について>
次に、誘電体部材20の製造方法について説明する。実施の形態1で説明した端部に切り欠き220を有する誘電体部材20や、実施の形態2で説明した端部がテーパ状をなす誘電体部材20A、実施の形態4で説明した内周面において軸方向に直線状の溝240を有する誘電体部材20Cは、チタン酸化物等の誘電体材料の粉体をエチルセルロース等の有機バインダーと混合し、これを噴霧乾燥したスプレードライの状態で所望の形状に金型で成形し、焼結することで製造することができる。
一般に筒形状の成形では、金型から軸方向に抜き出される。そのため、実施の形態5で説明した外周面200において周方向に連続する環状の溝250を有する誘電体部材20Dや、実施の形態6で説明した側面に貫通孔260を有する誘電体部材20Eは、金型によるプレスのみでは成形が困難な場合がある。このような金型による成形が困難な構造を有する誘電体部材は、金型にて単純円筒形に成形して焼結したものを、研磨加工、切削加工、旋削加工、穴あけ加工、溝加工等により所望の形状に加工することで製造することができる。
なお、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態4で説明した構造の誘電体部材については、単純円筒形に成形したものを焼結した後に、増大部となる構造を付加するよう加工することでも製造することができる。
<始動補助部材付高圧放電ランプの組立工程について>
続いて、高圧放電ランプ10との組立において、始動補助部材を取り付ける工程を説明する。図16は、始動補助部材を取り付ける工程を説明する模式図である。
図16(a)は、高圧放電ランプ10に金属線21および誘電体部材20を取り付ける前の状態を示す模式図である。誘電体部材20を取り付ける位置は、第一封止部101Aにおいて、内部に金属箔が配されている固定位置130である。
先ず、図16(b)に示すように、金属線21は、発光部100と固定位置110との間で第一封止部101Aの外表面に数度巻回された後に、端部21aが固定位置110に対向するように取り付けられる。この時、端部21aの先端を、第一封止部101Aの外表面に接触する程度に近接して配することで、後の工程で誘電体部材20に対して、先端を弾性的に付勢して接触させることができる。
図16(c)の工程では、誘電体部材20を第一封止部101Aに外嵌する。ここで、実施の形態1で説明したように、誘電体部材20は、切り欠き220を有する側が、発光部100の反対側を向くように外嵌される。但し、実施の形態8で説明したような、両端に同様の構造を有する誘電体部材20Fや誘電体部材20Gでは、外嵌する向きを考慮する必要はない。
第一封止部101Aに外嵌された誘電体部材20は、固定位置110において、第一封止部101Aの外表面と金属線21の先端とにより挟まれる。その結果、端部21aが第一封止部101Aの外表面から離れるようになり、端部21aに弾性力が付勢される。
このような状態で、図16(c)に示すように、シリンジ等の注入器具300を用いて、固着剤ペーストを切り欠き220に注入するとともに、端面201と第一封止部101Aの外表面とを接着するように固着剤ペーストを注入し塗り付ける。
その後、加熱により固着剤ペーストが硬化した固着剤30によって、誘電体部材20が第一封止部101Aの外表面に固着されることで、高圧放電ランプ10が完成する。
<実施の形態9、10>
図17は、実施の形態9に係るランプユニット1Aの構成を示す、一部断面図(副反射鏡45、反射鏡40のみ断面を図示)である。
当図に示す構成は、第一封止部101Aに副反射鏡45が取り付けられており、さらに、誘電体部材20は、第一封止部101Aに外嵌され、外部リード線102Bに端部24bが接続された金属線24が、その端部24aにおいて誘電体部材20の外周面と点接触されている。
以上の構成を持つランプユニット1Aでは、始動時には前記点接触部分と、誘電体部材20が配設された第一封止部101Aの内部においてコロナ放電が発生し、これによる紫外線が発光部100内部に照射されることで、比較的低い印加電圧にて放電が開始する。
次に示す図18は、実施の形態10に係るランプユニット1Bの構成を示す、一部断面図(副反射鏡45、反射鏡40のみ断面を図示)である。ランプユニット1Aとの違いとして、ランプユニット1Bでは誘電体部材20が第二封止部101Bに外嵌され、外部リード線102Aより延長された金属線22の端部22aが、誘電体部材20の外周面と点接触している。
このような構成を持つ、実施の形態10に係るランプユニット1Bにおいても、実施の形態1と同様の効果を期待できる。
なお、高圧放電ランプ10に誘電体部材を配設する場合には、第一封止部101Aおよび第二封止部101Bのいずれに配設してもよい。但し、配設した誘電体部材20が発光部100からの出射光を大きく遮蔽すると、発光効率に影響するため注意する。実施の形態10では、副反射鏡45からの出射光が誘電体部材20に若干当たるため、高圧放電ランプ10の最大外径よりも誘電体部材20の外径を小さくすることが望ましい。
<ランプシステムの実施の形態>
図19は、実施の形態1のランプユニット1と点灯回路からなるランプシステムを備えた画像表示装置500を示す一部破断斜視図であって、内部の様子がわかるように筐体の天板を取り除いている。当図に示す画像表示装置500は、前方に設置したスクリーン(不図示)に向けて画像を投影する投射型の液晶フロントプロジェクタである。当該画像表示装置500は、筐体501内に、光源としてのランプユニット1、3枚の液晶パネル(不図示)等を有する光学ユニット502、前記液晶パネル等を駆動制御する制御ユニット503、投射レンズ504、冷却ファンユニット505、及び、商用電源から供給される電力を前記制御ユニット503や前記ランプユニット1の点灯回路(不図示)に供給する電源ユニット506等が収納された構成を有する。
当該画像表示装置500は、固着剤30との良好な接着力が得られる誘電体部材20を用いたランプユニット1を備えているため、従来の画像表示装置に比べて耐久性の向上を図ることができる。
なお、当該画像表示装置500に適用するランプユニットは、当然ながらその他の実施の形態のランプユニットであってもよい。
<その他の変形例>
本発明の実施の形態において、誘電体と金属線の端部とが接触している例を示したが、始動補助部材を有していない高圧放電ランプを放電開始させるための印加電圧よりも低い印加電圧によってコロナ放電を起こす程度に近接している場合にも、始動電圧を低減することができる。
なお、「始動補助部材を有していない高圧放電ランプを放電開始させるための印加電圧よりも低い印加電圧によってコロナ放電を起こす程度に近接」とは、具体的には、誘電体部材と金属線の他端側との最短距離が2[mm]以内であることが好ましい。この場合には、誘電体と金属線とが接触していなかったとしても、放電開始電圧の低減効果をより確実に得ることができる。
1、1A〜1B ランプユニット
10 高圧放電ランプ
20、20A〜20G 誘電体部材
21、22 金属線
21a、22a 端部
21b、22b 端部
40 反射鏡
41 反射面
45 副反射鏡
100 発光部
101A 第一封止部
101B 第二封止部
102A、102B 外部リード線
103A、103B 金属箔
104A、104B 放電電極
105 放電空間
107A、107B 電極組立体
108 放電容器(外囲器)
112 内部空間
126A〜126C 被覆導線
200 誘電体外周面
201、203 端面
202 内周面
500 ランプシステム(投射型フロントプロジェクタ)

Claims (17)

  1. 発光部に長尺状の第一封止部および第二封止部が連設された高圧放電ランプと、当該高圧放電ランプの始動補助部材とを備える始動補助部材付高圧放電ランプであって、
    前記始動補助部材は、
    前記第一封止部よりも高い比誘電率を有する材料からなる、前記第一封止部に外嵌された筒状の誘電体部材と、
    一端部が、前記第二封止部に封止されている放電電極に電気的に接続され、他端部が、前記誘電体部材に近接配置された金属線とを有し、
    前記誘電体部材は、前記外嵌状態で固着剤を介して前記第一封止部に固定され、
    前記誘電体部材において前記固着剤が付着する領域には、前記固着剤との接着面積を増大させる増大部が設けられている
    ことを特徴とする始動補助部材付高圧放電ランプ。
  2. 前記固着剤は、前記誘電体部材において前記発光部に対向する側とは反対側の開口端部に配されている
    ことを特徴とする、請求項1に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  3. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面から前記誘電体部材の軸方向中央部に向けて設けられた少なくとも1以上の切り欠きである
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  4. 前記切り欠きは、前記誘電体部材の軸と直交する方向から見た形状が矩形状であることを特徴とする、請求項3に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  5. 前記切り欠きは複数個あり、前記端面の複数箇所から軸方向中央部に向けて設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  6. 前記切り欠きは、前記端面から他方の開口端部の端面まで設けられている
    ことを特徴とする、請求項3に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  7. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部から前記誘電体部材の軸方向中央部に向かって移るに従って、漸次内径が縮径するよう内周面に形成されたテーパである
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  8. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面から前記誘電体部材の軸方向中央部へ向けて延伸する前記誘電体部材の内周面に設けられた溝である
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  9. 前記溝は、前記端面から他方の開口端部の端面まで設けられている
    ことを特徴とする、請求項8に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  10. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の端面に設けられている凹部および凸部の少なくとも一方である
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  11. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の外周面に設けられている凹部および凸部の少なくとも一方である
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  12. 前記増大部は、前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部の外周面において周方向に沿って設けられた環状の溝である
    ことを特徴とする、請求項11に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  13. 前記誘電体部材において前記固着剤が付着する開口端部に設けられた増大部と同様の構造が、前記誘電体部材の他方の開口端部に設けられており、
    前記金属線の前記他端部が前記他方の開口端部で前記同様の構造により係止されている
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  14. 前記金属線の前記他端部が前記誘電体部材の前記発光部に対向する側の開口端部の端面に近接して配されている
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  15. 前記金属線の前記他端部は、端部内よりの部位から端に向かって、断面積が縮小する形状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  16. 前記第一封止部が石英ガラスで構成されており、
    前記誘電体部材がチタン化合物を含んで構成されている
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
  17. 前記チタン化合物は、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムの内の1種以上である
    ことを特徴とする、請求項16に記載の始動補助部材付高圧放電ランプ。
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