JP2014101143A - 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法 - Google Patents

樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014101143A
JP2014101143A JP2012255874A JP2012255874A JP2014101143A JP 2014101143 A JP2014101143 A JP 2014101143A JP 2012255874 A JP2012255874 A JP 2012255874A JP 2012255874 A JP2012255874 A JP 2012255874A JP 2014101143 A JP2014101143 A JP 2014101143A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
lid
coated steel
resin layer
steel sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012255874A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6060643B2 (ja
Inventor
Yoichiro Yamanaka
洋一郎 山中
Yusuke Nakagawa
祐介 中川
Junichi Kitagawa
淳一 北川
Yoichi Tobiyama
洋一 飛山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2012255874A priority Critical patent/JP6060643B2/ja
Publication of JP2014101143A publication Critical patent/JP2014101143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6060643B2 publication Critical patent/JP6060643B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Containers Opened By Tearing Frangible Portions (AREA)

Abstract

【課題】開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない、樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂被覆鋼板からなる缶蓋1の両面に開口用溝2が形成され、該開口用溝を破断することにより開缶する樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋であり、前記樹脂被覆鋼板は、ポリエステルを主成分とする樹脂層4を両面に有し、少なくとも一方の面の樹脂層が2層以上の構造を有し、2層以上の構造のうち、鋼板と密着する樹脂層(a)が、(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上を、1.0〜50.0mass%含有し、前記開口用溝は、溝の断面形状、断面形状における傾斜3(Tp)が1.5以下、溝の最薄部の厚さが0.035mm以上0.075mm以下、最薄部の厚さと樹脂被覆鋼板の厚さとの比が、0.1以上に構成されている。
【選択図】図5

Description

本発明は、缶体の缶蓋に形成された開口部を破断して開缶する、食品缶詰の缶蓋に使用されるイージーオープン缶蓋及びその製造方法に関するものである。
魚、果物、野菜等の食物を収容する食品缶詰の蓋として、缶蓋に形成された開口部を指で破断し開缶するイージーオープン缶蓋が、広く使用されている。イージーオープン缶蓋は、主として食品缶詰に使用されるフルオープンタイプの缶蓋と、主として、飲料缶に使用されるパーシャルタイプの缶蓋とに大別される。
フルオープンタイプの缶蓋は、缶蓋の外周縁に沿って開口用溝が形成され、缶蓋外周縁近くのパネル部に取り付けられたタブを指先等で引き上げることによって、開口片を缶蓋から切り離すようになっている。
このようなイージーオープン缶蓋における開口用溝の形成は、従来、図1に示すように、所定の開口部輪郭が形成された刃先状(V字状)の突起を有する加工工具10を使用し、缶蓋の表面側より蓋板11の厚さの1/2以上の深さの開口用溝2が形成されるような高い荷重でプレスにより押圧成形することによって行われており、これによって、断面V字状の開口用溝2が形成されていた。
このように、開口用溝の形成は、加工工具を使用し、プレスによる高荷重の押圧成形で行われるために、両面を樹脂被覆された樹脂被覆鋼板からなる缶蓋の場合には、押圧成形時に、缶蓋の両面に形成されている樹脂皮膜が損傷し、耐食性が劣化する問題が生ずる。したがって、耐食性の劣化を防止するために、押圧成形後に補修塗装を行わなければならず、多くの手間及び費用を要していた。
このような背景から、近年、食品缶詰の缶蓋の材料に、樹脂皮膜が損傷を受けても錆の生じないアルミニウムが使用されているが、アルミニウムの使用は、コスト高となる上、リサイクルの点からも問題がある。
そこで、上述のように樹脂被覆鋼板からなる缶蓋に開口用溝を形成する際に生ずる問題の対策として、特許文献1〜3には、複合押し出し加工によって開口用溝を形成する方法が開示されている。
上記特許文献1〜3の記載によれば、複合押し出し加工によって、開口用溝が形成されるので、樹脂皮膜の損傷がなく補修塗装が不要であるとされている。しかし、複合押し出しの加工条件や溝形状の詳細が不明であり、安定して開口用溝が形成される再現性の判断が困難である。
また、特許文献4では、曲面型のスコア金型を用いる方法が開示されている。半径0.1〜1.0mmの曲面型である金型を使用し、最薄部の厚さが0.025〜0.08mmの範囲となるよう押圧成形を施すことが開示されている。曲面型とすることで、開口用溝加工時に生ずる圧縮応力を大幅に低減することができるため、フィルム損傷の軽減が期待できる。
この方法によると、確かに、従来のV字形状の開口用溝型に比較し、開口用溝部のフィルム損傷は軽減する。しかし、開缶性には未だ改善すべき余地があることが判明した。その理由を、以下に示す。
図1に従来のV字型形状の開口用溝断面を、図2に曲面形状の開口用溝断面を示す。図2のように曲面形状とすることで、開口用溝加工量が大幅に増加することがわかる。曲面型の金型を使用することで、素材との接触面積が増加し、加工時に発生する面圧(圧縮応力)を大幅に低下させることができるが、逆に、開口用溝の部分を水平方向(幅方向)に押し広げることとなる。このため、開口用溝の加工領域が拡大し、加工部から押し出された鋼板は、蓋のパネル上に顕著な加工皺(凸凹)を形成して残留する。
一般的なフルオープン蓋の製造プロセスでは、開口用溝を加工後にビード加工を行って、加工皺をビード加工部で吸収する。従来のV字形状の開口用溝型であれば、加工皺の発生量が少ないため問題とならなかったが、特許文献4が規定する曲面加工の場合は、加工皺の発生量が極めて多くなるため、ビード加工量を大幅に増加させないと、加工皺を解消することができない。その一方、ビード加工量を増加させるということは、開口用溝最薄部を変形させる危険性が増すということであり、図3に示すように、開口用溝部が大きく変形する問題が発生した。この現象(開口用溝部の変形)は、開口用溝の加工条件の影響を受け、開口用溝最薄部の厚みが低下するほど、またビード加工速度が上昇するほど、顕著となった。このように変形した開口用溝形状となると、外部から応力を加えても、開口用溝最薄部に力が集中し難く、蓋をあけるためには、必要以上に大きな力が必要となる。現在、食品缶詰分野においても、人にやさしい技術が志向されており、老人や子供でも、簡単にあけることの出来る蓋が強く要望されており、開口用溝の変形防止との両立が望まれる。また、近年の、BRICs諸国をはじめとする諸外国の著しい経済発展とともに、蓋の需要は今後も増大するものと考えられ、加工速度の更なる上昇は必然であり、開口用溝部は、ビード加工によって、より変形しやすく、変形量も増すものと考えられ、開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない缶蓋が待望されている。
これに対し、特許文献5には、両面がポリエステルを主成分とする樹脂被覆鋼板からなるイージーオープン缶蓋であり、缶蓋の両面に開口用溝が形成され、開口用溝の断面形状が、曲線および/または直線より構成され、開口用溝の断面形状における傾斜(Tp)が1.5以下、開口用溝の最薄部の厚さが0.035mm以上0.075mm以下、開口用溝の最薄部の厚さと樹脂被覆鋼板の厚さとの比が、0.1以上とすることによる、開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない缶蓋が開示されている。また、これだけでは若干不足する衝撃破壊特性に関しては、少なくとも一方の面を、複層構造とし、密着層にブロックフリーイソシアネート化合物を含有することにより、さらに衝撃破壊特性が改善されることが開示されている。この方法によると、確かに、開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない缶蓋が達成できる。
特開平6−115546号公報 特開平6−115547号公報 特開平6−115548号公報 特開平11−91775号公報 特開2010−105689号公報
しかしながら、特許文献5では、イソシアネート化合物が用いられており、毒性の強い未反応の単量体が残留している可能性があり、必ずしも安全な物質とは言えない。また、熱融着ラミネート法などの極めて短時間(1秒未満)の熱処理においては、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との架橋反応が十分に進行しないおそれがある。そのため、基材と樹脂層との強固な密着性を確保できない可能性があり、大きな変形が生ずる開口用溝加工部で樹脂層が剥離するおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、レトルト処理による樹脂の色調変化(以後、レトルト白化現象と称す)抑制など、食品缶詰に要求される多くの特性に対応可能であり、開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない、樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らが、課題解決のため鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
特定の樹脂構成からなるポリエステル樹脂を鋼板との密着層とし、さらに密着層の上層にポリエステルフィルムを積層した樹脂被覆鋼板からなる缶蓋に、底断面形状および最薄部の厚さ等を規定した開口用溝を形成することで、開口用溝加工部の最薄部においてもフィルム損傷が生ずることなく、更にはレトルト処理による樹脂の色調変化(以後、レトルト白化現象と称す)の抑制など多くの機能を有する、開缶性に優れた樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋が得られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]樹脂被覆鋼板からなる缶蓋の両面に開口用溝が形成され、該開口用溝を破断することにより開缶する樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋であり、
前記樹脂被覆鋼板は、ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有し、少なくとも一方の面の樹脂層が2層以上の構造を有し、2層以上の構造のうち、鋼板と密着する樹脂層(a)が、(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上を、1.0〜50.0mass%含有し、
前記開口用溝は、下記から構成されていることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
(A)開口用溝の断面形状が、曲線および/または直線より構成
(B)開口用溝の断面形状における傾斜(Tp)が1.5以下
(C)開口用溝の最薄部の厚さが0.035mm以上0.075mm以下
(D)開口用溝の最薄部の厚さと樹脂被覆鋼板の厚さとの比が、0.1以上
[2]前記開口用溝の断面形状が、半径0.1mm〜0.5mmの円弧曲線であることを特徴とする[1]に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[3]前記樹脂層(a)は、さらに、(ロ)エポキシ樹脂を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[4]前記樹脂層(a)は、さらに、(ハ)金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[5]前記樹脂層(a)の付着量は、0.1g/m以上3.0g/m以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[6]前記樹脂層(a)中に着色剤を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[7]前記樹脂層(a)中に腐食抑制剤を5PHR以上含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[8]前記樹脂層(a)中に導電性ポリマーを0.1〜30mass%含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[9]前記樹脂層(a)の上層を形成するポリエステル樹脂層(b)は、ポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
[10]樹脂層が被覆された鋼板からなる缶蓋パネルに対し、先端半径0.1mm〜0.5mmの曲面または半径0.1mm〜0.5mmの曲線および直線より構成される上下一対の金型を使用し、最薄部の厚さが0.035mmから0.075mmの範囲内となるように押圧成形を施すことによって、[1]〜[9]のいずれか一項の缶蓋を製造することを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋の製造方法。
[11][10]に記載の金型を用いて樹脂被覆金属板を押圧成形する際に、樹脂被覆鋼板の加工部全域が、金型と接触した状態を維持しながら押圧成形を行うことを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋の製造方法。
本発明によれば、食品缶詰に要求される多くの特性に対応可能であり、開缶性に優れ衝撃破壊の生ずることがない、樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋が得られる。
このように、本発明では、両面に樹脂層が形成された鋼板からなる缶蓋に開口用溝を形成する際に、缶蓋の両面に形成されているめっき層および樹脂被膜層の損傷による補修塗装を必要とせず、しかも、子供や老人でも容易に開缶することができる、開缶性の優れたイージーオープン缶蓋が得られ、工業上有用な効果がもたらされる。
缶蓋に形成された従来の開口用溝部分の断面構造を示す図である。 特許文献4に記載の缶蓋に形成された開口用溝部分の断面構造を示す図である。 特許文献4に記載の缶蓋に形成された開口用溝部分の製造後の開口用溝部分の断面構造を示す図である。 鋼板のラミネート装置の要部を示す図である。(実施例1) 缶蓋に形成された本発明の開口用溝部分の断面構造を示す図である。 樹脂被覆鋼板の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1) 開口用溝の断面構造を示す図である。(実施例1)
以下、本発明の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋について詳細に説明する。
まず、缶蓋に用いる本発明の鋼板について説明する。
本発明の鋼板としては、缶用材料として広く使用されている軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
本発明では、上記鋼板の両面にポリエステルを主成分とする樹脂層を被覆し樹脂被覆鋼板とする。本発明において、ポリエステルを主成分とする樹脂とは、ポリエステルを50mass%以上100質量%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂を含む場合には、ポリオレフィンなどの樹脂を含有することができる。
本発明において、ポリエステル樹脂としては、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものを用いることができる。多塩基酸成分としては、たとえば、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールよりなるポリエチレンテレフタレートに代表されるが、他のカルボン酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等と、また他のグリコール成分としてジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等と成分を置き換えた共重合樹脂等も含まれる。酸成分として、テレフタル酸は、機械的強度、耐熱性、化学的耐性などから必須であるが、更に、イソフタル酸と共重合させることで、柔軟性、引き裂き強度などが向上する。イソフタル酸成分を、10.0mol%以上60.0mol%以下の範囲でテレフタル酸成分と共重合させることで、深絞り成形性、加工後密着性を向上させるよう機能するため、好適である。グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオールなどの柔軟性に優れる低Tg(Tg=ガラス転移温度)成分と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの環構造を有する剛直な高Tg成分とを共重合させることが望ましい。強度と柔軟性をバランスできるためである。好適な例としては、酸成分がイソフタル酸10〜30mol%、テレフタル酸70〜90mol%で構成され、グリコール成分がエチレングリコール30〜50mol%、プロパンジオール50〜70mol%で構成されるポリエステル樹脂を挙げることができる。
樹脂層を形成するポリエステルの熱物性としては、ガラス転移点を50℃以上85℃以下の範囲に、軟化点を100℃以上200℃以下の範囲であることが望ましい。
樹脂被覆鋼板が保管・運搬される際には40℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は50℃以上であることが好ましい。一方、ガラス転移点が85℃を超えるポリエステルポリマーは、軟化点が上昇してしまい、本発明で規定する軟化点200℃以下の範囲を維持し難くなるためガラス転移点が85℃以下が好ましい。
また、食缶用のレトルト殺菌処理は、100℃以上の高温で1時間以上に及ぶことがあり、100℃以上の温度域で耐熱性を有することが求められる。よって、JIS K2425に定める軟化点を100℃以上とすることが好ましく、150℃以上にすることがさらに好ましい。一方、軟化点の上限は、200℃以下とすることが好ましい。軟化点が200℃超となると、樹脂の熱流動性が低下してしまい、鋼板とのラミネート時や、製缶加工時などの工程で、樹脂の柔軟性が不足することになる。ラミネート時の柔軟性不足は鋼板との密着性に影響を及ぼし、製缶加工時の柔軟性不足は缶高さ方向への伸び変形を抑制し、樹脂損傷の原因となり、缶胴部を破裂させる原因となる。
樹脂層を形成するポリエステル樹脂の質量平均分子量は、10000以上40000以下が好ましい。望ましくは、15000〜20000の範囲である。このような範囲の質量平均分子量を有するポリエステル樹脂は、加工性と強度のバランスに優れ、深絞り成形性及び成形加工後の密着性が良好となる。分子量10000以上とすることで樹脂の強度がアップし、深絞り成形時に樹脂が断裂することなく変形に追随する。その後のレトルト処理においても、さらに上層に形成したフィルムの熱収縮に対抗して、トリム端等からのデラミを抑制することができる。また、製缶後の耐衝撃性についても、欠陥の発生を抑制し、良好な性能を得ることができようになる。一方、分子量が40000超となると、樹脂の強度が過大となり、逆に柔軟性を損なうおそれがある。40000以下とすることで、強度と柔軟性のバランスを維持することができる。
少なくとも一方の面の樹脂層が2層以上の構造を有し、2層以上の構造のうち、鋼板と密着する樹脂層(a)は、主成分であるポリエステル樹脂に加えて、下記(イ)を含有し、好ましくは、(ロ)及び(ハ)の成分を含有する。
(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上:1.0〜50.0mass%
(ロ)エポキシ樹脂:0.5〜30mass%
(ハ)金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物:0.01〜10mass%
(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上
ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、メラミン樹脂などと比較して硬化速度が速く、強靭な皮膜を形成できる点で優れている。ポリエステル/メラミン系、エポキシ/メラミン系等からなる樹脂組成物と比較して硬化特性が優れるため、熱融着ラミネート法などの極めて短時間(1秒未満)の熱処理においても、樹脂間の架橋反応による高分子化が可能となる。そして、樹脂層(a)の強度と加工性を大幅に向上させるとともに、基材と上層フィルムとの強固な密着性を得ることができる。そのため、大きな変形が生じる開口用溝加工部においても、基材及び上層から剥離することなく変形に追従するため、良好な被覆性を確保することができる。

ポリアミン樹脂として特に代表的なものを例示すると、脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、脂環式ポリアミンとしてはイソホロンジアミンなどが挙げられる。また、作業性改善や低刺激化、機械物性の向上のために脂肪族ポリアミンにエポキシ樹脂やアクリロニトリルを付加させたり、ホルムアルデヒドとフェノールを反応させて変性したものなども挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン酸、ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。市販品としては、DIC(株)製EPICRON EXB−353、エアープロダクツジャパン(株)製アンカミン2596、アンカミン2605などが挙げられる。
ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂は、例えば、油脂脂肪酸とポリアミンの脱水縮合反応により合成される化合物である。市販品としては、三洋化成ポリマイドL−15−3、ポリマイドL−45−3、エアープロダクツジャパン(株)製アンカマイド2137、サンマイド330、サンマイドX−2000などが挙げられる。
ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上の添加量としては、1.0〜50.0mass%の範囲とする。添加量が、1.0mass%より低いと硬化性が不足し耐レトルト性が劣り、50.0mass%を超えると加工性が悪化する場合がある。より好ましくは、3〜30mass%の範囲である。
(ロ)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、主に樹脂層(a)の密着性を向上させるものである。エポキシ樹脂の種類は特に限定するものではないが、近年、ビスフェノールA型エポキシ樹脂では、内分泌攪乱作用が懸念されているため、このような懸念のない樹脂であることが好ましく、ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂とすることが好ましい。ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などがあげられ、特にノボラック型エポキシ樹脂であることが好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型などがあげられる。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC(株)社製のエピクロンN−665、670、673、680、690、695、730、740、770、865、870、ダウケミカル(株)社製のXD−7855、旭化成エポキシ(株)社製のECN−1273、1299などが挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂としては、三菱化学(株)製のYL6121H、YX7399が挙げられる。
樹脂層(a)中へのエポキシ樹脂の添加量としては、0.5〜30mass%の範囲が好適である。エポキシ樹脂の比率が、0.5mass%よりも低いと、密着性向上効果が乏しく、逆に、30mass%を超えると、加工性が低下させてしまう場合がある。より好ましくは、5〜25mass%の範囲である。
(ホ)金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物
金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート系化合物は、樹脂層(a)の主成分であるポリエステル樹脂、(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上、(ロ)エポキシ樹脂と反応を起こす。各々の樹脂の官能基と金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート系化合物の間で架橋反応が進行する。この架橋反応は、金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート系化合物が無い場合と比較して、その皮膜の硬化速度が著しく速いために、結果として極めて少ない熱エネルギーで優れた密着性、加工性、耐レトルト性、耐食性を発現することが可能となる。例えば、既存のラミネート缶はフィルムをラミネートした後に180℃以上で、数秒〜数分間焼付けが施され、その後の後加熱を利用し樹脂皮膜を硬化させ、上記の各種要求性能を確保するものである。しかし、本発明において、金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物を含有した場合の樹脂層は、熱融着ラミネートを行う際の、1秒程度の短時間加熱のみで樹脂層が十分に硬化し、後加熱を施したものと同等以上の性能を得ることができる。したがって、製造プロセスにおける後加熱工程が不要となり、製造効率が格段に向上する。加えて、二酸化炭素の排出低減も可能となり、実用上極めて有用な技術となりうる。更に、皮膜中に金属が組み込まれることで、皮膜の強度が向上し、結果として耐衝撃性や耐食性が大幅に向上する。以上の理由により、前記樹脂層(a)は、さらに、金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物を含有することが好ましい。
金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、チタン、錫、ジルコニウムなどのアルコキシド金属化合物、アセト酢酸が金属に配位した金属キレート化合物などが挙げられる。中でも、チタンアルコキシド系化合物及び/またはチタンキレート化合物を用いるのが好ましい。
金属アルコキシド系化合物及び/または金属キレート化合物の添加量としては、0.01〜10mass%の範囲が好適である。0.01mass%未満であると、期待した速硬化性等の効果が得られず、逆に10mass%を超えると、樹脂皮膜が硬くなり、加工性が劣るようになるのに加え、コーティング液作製時にゲル化を引き起こす場合がある。より好ましくは、0.1〜7mass%の範囲である。
密着層となる樹脂層(a)の鋼板への付着量は、0.1g/m以上3.0g/m以下の範囲に規定するのが好ましい。0.1g/m未満では、鋼板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になってしまう場合がある。改質剤を添加した場合は、改質剤の付着量が変動することとなり、安定した機能を得ることができず、不適である。一方、3.0g/m超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう場合がある。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。よって、付着量は、0.1g/mm以上3.0g/m以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0.5g/m以上2.5g/mの範囲である。
更に、樹脂層(a)中に、染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の鋼板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の鋼色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。なお、本願において、着色剤を、樹脂層(a)中に添加する場合は、外割(樹脂性能に関わる、ポリエステル樹脂、(イ)〜(ハ)等の成分の合計を100質量部としたときの着色剤の質量部(PHR))で示した。すなわち、カーボンブラックの添加量は、5PHR以上40PHR以下が望ましい。5PHR未満では黒色度が不十分であるとともに下地鋼の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない場合がある。一方、40PHR超としても、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製缶加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう場合がある。添加量を5PHR以上40PHR以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものが好ましいが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲がさらに好適である。
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の鋼光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。二酸化チタンの添加量は、対象樹脂層に対して、5〜40PHRであることが望ましい。5PHR以上であれば、充分な白色度が得られ、良好な意匠性が確保できる。一方、40PHRを超えて添加しても、白色度が飽和するため、経済上の理由で40PHR以下とすることが望ましい。より好ましくは、10〜30PHRの範囲である。
容器表面に光輝色を望む場合には、アゾ系顔料の使用も好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できるアゾ系顔料としては、カラーインデックス(略称:C.I.)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、レトルト殺菌処理環境での耐ブリーディング性(顔料がフィルム表面に析出する現象に対する抑制能)などの観点から、分子量が大きく、PET樹脂への溶解性が乏しい顔料が望ましい。例えば、分子利用が700以上の、ベンズイミダゾロン構造を有するC.I.ピグメントイエロー180がより好ましく用いられる。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが望ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
樹脂層(a)中に、腐食抑制剤を5PHR以上添加することで、樹脂層に欠陥が生じて鋼板表面が露出した場合でも、金属の溶出を抑制することができる。腐食抑制剤としては、還元作用を有するアスコルビン酸、トコフェノール、カロテノイドなどの食品安全性が確認されている物質を使用することができる。これらの物質は、樹脂欠陥部において、自身が優先的に酸化することで、金属のアノード溶解を抑制する効果がある。
また、樹脂層(a)中に、導電性ポリマーを、0.1〜30mass%の範囲で添加することも、欠陥部における鉄の溶出を抑制するうえで効果的である。導電性ポリマーとしては、複素環式共役系またはヘテロ原子含有共役系のπ共役ポリマーが好適である。π共役ポリマーは、下地鋼板に対して貴な電位にあるため下地鋼板との界面では還元反応を受ける。π共役ポリマーの還元に伴い、下地鋼板が酸化され、緻密な不働態皮膜が下地鋼板の表面に形成される。一方、空気に接触する表面側ではπ共役ポリマーが空気酸化され、元の状態に戻る。このような酸化還元反応の繰り返しにより、バリア性の高い不働態皮膜が下地鋼板表面に形成される。スクラッチ等の皮膜欠陥が生じても不働態化が促進されるため、欠陥部を起点とする腐食進行が抑制される。π共役ポリマーとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが使用でき、なかでもポリアニリンが最も好適に使用できる。
なお、樹脂層(a)の耐水性を更に向上させるためには、脂肪酸由来の疎水性ポリオール樹脂を5mass%以上15mass%以下の範囲で含むことが好ましい。疎水性ポリオール樹脂としては、ダイマー酸系ポリオール、ポリジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール等が挙げられる。中でも、長鎖アルキル基の炭素数20〜50のものを適用することで、エステル結合部を水から遮蔽し、レトルト処理等の湿潤環境下におけるフィルム剥離を効果的に防止することができる。
疎水性ポリオール樹脂の添加量は5mass%以上15mass%以下であることが望ましい。5mass%未満では、十分な耐水性を得ることができず、15mass%超となると、ポリエステル樹脂の表面自由エネルギーが過度に低下するため、ポリエステルフィルム及び鋼板との密着性が阻害されてしまう場合がある。5mass%以上15mass%以下の範囲に規定することで、耐水性及び密着性の両立が可能となる。更に好ましくは、7mass%以上10mass%以下の範囲である。
また、疎水性を阻害しない範囲で、ポリエステルポリオールを添加することができる。この場合、疎水性ポリオールとして、全ポリオール質量の50%以上の範囲が好適である。ポリエステルポリオールとしては、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール成分と、マレイン酸、アジピン酸、オレイン酸、これらのダイマー酸等のエステルを用いることができる。特に好ましくは、オレイン酸のダイマー酸を用いたポリエステルポリオールである。
次に、樹脂層(a)の上層に形成するポリエステル樹脂層(b)について説明する。
樹脂層(a)の上層に形成するポリエステル樹脂層(b)は、ポリエステルフィルムから形成される(以下、単にポリエステルフィルムと称することがある。)。ポリエステルフィルムとしては、レトルト後の味特性を良好とする点、および製蓋工程での摩耗粉の発生を抑制する点から、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルであることが望ましい。すなわち、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であるポリエステルである。さらに好ましくは95mass%以上である。金属缶に食品を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、芳香族グリコールのビスフェノールAは、内分泌撹乱作用が懸念されているため、グリコール成分として使用しないことが望ましい。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
樹脂層(a)の上層を形成するポリエステル樹脂層(b)は、粒子:面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することが好ましい。
本発明で用いるポリエステル樹脂層(b)における粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではない。
耐摩耗性、加工性、味特性等の点から面積換算平均粒子径は0.005〜5.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜3.0μmである。
また、耐摩耗性等の点から、下記式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.3以下である。
粒子の長径/短径比としては、耐摩耗性などの点から、1.0〜1.2であることが好ましい。モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが好ましい。そして、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが好ましい。
具体的には、無機粒子として、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。中でも、粒子表面の官能基とポリエステルフィルムを構成するポリエステルとが反応してカルボン酸金属塩を生成するものが好ましく、具体的には、粒子1gに対し、10−5mol以上有するものが、ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとの親和性、耐摩耗性などの点で好ましく、さらには2×10−5mol以上であることが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルフィルムを構成するポリエステルに対し不溶の粒子であれば、いかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などを使用することができるが、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂層(b)を得ることができる。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を添加しても構わない。
更に、耐熱性・味特性の観点から、ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、延伸条件、熱処理条件を特定化し、フィルムの厚さ方向の屈折率が1.50以上であることが、ラミネート性、成形性を良好とする点で好ましい。さらに厚さ方向屈折率が1.51以上、特に1.52以上であると、ラミネート時に多少のばらつきがあっても成形性、耐衝撃性を両立させる上で面配向係数を特定の範囲に制御することが可能となるので好ましい。
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、製缶加工する際の加工性、耐衝撃性の点で固体高分解能NMRによる構造解析におけるカルボニル部の緩和時間が270msec以上であることが好ましい。さらに好ましくは、280msec以上、特に好ましくは300msec以上である。本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
レトルト白化を抑制する技術として、密着する樹脂層(a)の上層に形成するポリエステル樹脂層(b)の残存配向度を、2%〜30%の範囲に制御することも有効である。なお、ここでいう残存配向度とは、X線回折法により求められた値であって、以下により定義されるものとする。
(1)ラミネート前の配向ポリエステル樹脂(もしくは配向ポリエステルフィルム)及びラミネート後の樹脂(もしくはフィルム)について、X線回折強度を2θ=20〜30°の範囲で測定する。
(2)2θ=20°、2θ=30°におけるX線回折強度を直線で結びベースラインとする。
(3)2θ=22〜28°近辺にあらわれる最も高いピークの高さをベースラインより測定する。
(4)ラミネート前のフィルムの最も高いピークの高さをP1、ラミネート後のフィルムの最も高いピークをP2とした時、P2/P1×100を残存配向度(%)とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、残存配向度の上昇に伴い、樹脂層内部を透過する水蒸気量が低下することを見出した。残存配向度を2%以上とすることで、鋼板との界面に到達する水蒸気量が低減し、前述のポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上を添加する効果とあわせ、レトルト白化を完全に抑制することができる。残存配向度の上昇とともに、透過水蒸気量は減少傾向となり、耐レトルト白化性は良好となるが、一方、樹脂の柔軟性・伸び特性は、低下する。残存配向度が30%超となると、製缶加工への追随が不十分となり、フィルムの剥離や素材の断裂が生じてしまう。残存配向度を2%〜30%の範囲に調整することで、耐レトルト白化性と樹脂の柔軟性、成形性を両立することができる。
本発明の樹脂層(a)とその上層を形成するポリエステル樹脂層(b)の厚みの合計としては、全体として5μm以上100μm以下であることが好ましく、更には8μm以上50μm以下、特に10μm以上25μm以下の範囲であることが好ましい。樹脂層(a)および(b)それぞれの好ましい厚みは、特に限定するものではないが、樹脂層(a)の好ましい厚みは、好ましい付着量(0.1〜3.0g/m)に比重をかければわかる。すなわち、樹脂は比重が1程度の場合が多いので、その場合は、0.1μm〜3.0μmが好ましく、着色剤等を添加して比重が変化した場合は、その物質の比重と配合比率を勘案して算出した膜厚が好ましいことになる。樹脂層(b)の好ましい膜厚範囲は、樹脂層(a)の膜厚を差し引けばよい。
次に、この発明の樹脂被覆鋼板の一例となる製造方法について説明する。
本発明の樹脂被覆鋼板は、鋼板上にまず、上記からなる樹脂層(a)を形成してからポリエステル樹脂層(b)を形成してもよいが、ここでは、樹脂層(a)をポリエステル樹脂層(b)を形成するポリエステルフィルムの表面に形成する。次いで、鋼板とポリエステルフィルムの界面に樹脂層(a)が存在するように、樹脂層(a)が形成されたポリエステルフィルムを鋼板表面にラミネートする。
まず、樹脂層(a)をポリエステルフィルム表面に形成する方法について説明する。本発明で規定するポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させコーティング液とする。次いで、前記コーティング液を、ポリエステルフィルム成膜時もしくは製膜後に、ポリエステルフィルム表面に塗布し乾燥する。形成方法は特に限定しないが、前述した方法が、本発明の目的・用途に適合しており好ましい。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定するポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂や、エポキシ樹脂、金属アルコキシド系化合物、金属キレート化合物、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤は、有機溶剤中に溶解または分散させて使用するのが望ましい。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため、好適である。
上記により作製した樹脂層(a)用のコーティング液を、ポリエステルフィルム成膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥する。
樹脂層(a)用のコーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。
次に、上記方法により作製された、樹脂層(a)が形成されてなるポリエステルフィルムを、樹脂層(a)を鋼板に密着させるように鋼板表面にラミネートする。
本発明では、例えば、鋼板を加熱装置にて一定温度以上に昇温し、その表面にポリエステルフィルムを圧着ロール(以後、ラミネートロールと称す)を用いて鋼板に接触させ熱融着させる方法を用いることができる。以下、ラミネート条件の詳細について記す。
熱融着開始時の鋼板の温度は、ポリエステルフィルムの融点もしくは密着する樹脂層(a)(ポリエステル樹脂)の軟化点の、いずれか高いほうの値を基準として、+5℃〜+30℃の範囲とすることが望ましい。熱融着法によって、鋼板−樹脂層(a)−ポリエステルフィルムの層間密着性を確保するためには、密着界面における樹脂の熱流動が必要である。鋼板の温度を、ポリエステルフィルムの融点もしくは密着する樹脂層(a)の軟化点の、いずれか高いほうの値を基準として、+5℃以上の温度範囲とすることで、各層間における樹脂が熱流動し、界面における濡れが相互に良好となって、優れた密着性を得ることができる。一方、+30℃超としても、更なる密着性の改善効果が期待できないことと、フィルムの溶融が過度となり、ラミロール表面の型押しによる表面荒れ、圧着ロールへの溶融物の転写などの問題が生じる懸念があるためである。
ラミネート時にフィルムが受ける熱履歴としては、ポリエステルフィルムの融点もしくは密着する樹脂層(a)の軟化点の、いずれか高いほうの温度以上で、相互に接している時間が5msec以上であることが望ましい。界面における濡れが良好となるためである。なお、時間の増加とともに濡れ性は良好となるものの、40msec超では、ほぼ一定の性能を呈すようになり、効果が認められなくなる。生産性の低下を招く懸念もあるため、40msec以下とすることが望ましい。よって、5〜40msecの範囲が好適である。
このようなラミネート条件を達成するためには、150mpm以上の高速操業に加え、熱融着中の冷却も必要である。例えば、ラミネートロールが内部水冷式の場合、冷却水を通過させることで、ポリエステルフィルム及び密着する樹脂層(a)が過度に加熱されるのを抑制することができる。更に、冷却水の温度を変化させることで、ポリエステルフィルム及び密着する樹脂層(a)の熱履歴をコントロールできるため、好適である。
ラミネートロールの加圧は、面圧として9.8〜294N/cm(1〜30kgf/cm)が望ましい。9.8N/cm未満の場合、たとえ熱融着開始時の温度がフィルムの融点+5℃以上であって、十分な流動性が確保できていたとしても、鋼表面に樹脂を押し広げる力が弱いため十分な被覆性が得られず、結果として密着性、耐食性などの性能に影響を及ぼす可能性がある。また、294N/cm超となると、ラミネート鋼板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
次に、本発明のイージーオープン缶蓋およびその製造方法を、図面を参照しながら説明する。
図5は、本発明のイージーオープン缶蓋の一実施態様を示す、缶蓋に形成された開口用溝部分の断面図である。この実施態様においては、図5に示すように、両面に樹脂フィルム層4を有する、厚さt0の缶蓋1の表面1a及び裏面1bに、各々半径(R)が0.1〜0.5mmであって、断面の傾斜3(Tp)が1.5以下であり、最薄部2aの厚さ(ts)が0.035〜0.075mmの範囲内の、断面が曲面形状の開口用溝2が形成されている。ここで、断面の傾斜(Tp)とは、開口用溝断面内の、曲線部の接線の傾きもしくは直線部の傾きであり、傾きの最大値(Tanθ)を示す。開口用溝断面形状が曲線部のみの場合は、接線の最大傾き(Tanθ)であり、直線部を含む場合は、直線部の傾き(Tanθ)である。
缶蓋1の表面1a及び裏面1bに、上述した半径(R)の、曲面形状の開口用溝2が形成されていることによって、子供や老人でも容易に開缶することができる程度にまで開缶力を安定して低減化することができ、しかも衝撃破壊の発生が防止される。
開口溝の断面形状は曲線および/または直線より構成される。例えば、開口部の断面は傾斜(Tp)が1.5以下であればどのような曲線および/または直線であってもかまわない。曲率の異なる複数の曲線の組み合わせや更に直線が組合さった断面でもよい。ただし、加工用の金型としては単一の曲率の曲線が製作しやすく実用性は高い。
また、開口部の断面が、曲線と直線の組み合わせからなる場合は、単一の曲率を有する曲線と、その曲線の接線から構成される形状が製作しやすく、実用性が高い。
ここで、開口用溝2の半径(R)が0.1mm未満では、樹脂層を損傷することなく、缶蓋パネルに上記開口用溝2を形成することが困難となる。一方、開口用溝2の半径(R)が0.5mmを超えると、開口用溝部が幅方向に伸ばされ、開口用溝加工量が過度に多くなるために、加工皺が発生してしまう。開口用溝2の半径(R)を0.1mm〜0.5mmの範囲とすることで、樹脂層を損傷させることなく、開口用溝が形成できる。より好ましくは、0.2mm〜0.3mmの範囲である。
また、開口用溝2の最薄部2aの厚さが0.035mm未満では、成形加工時に樹脂層が損傷し、また缶蓋パネルが破断する恐れがある。このような缶蓋が取り付けられた缶体を落としたり、また缶体が外部から衝撃を受けたときに、その開口部が破断する危険が生ずる。一方、開口用溝2の最薄部2aの厚さが0.075mmを超えると、最薄部が断裂し難く、大きな開缶力が必要になる問題が生ずる。
更に本発明では、開口用溝2の最薄部2aの板厚tsと、樹脂被覆金属板の板厚t0の比(=ts/t0)の値を、0.1以上の範囲に規定する。開缶力(ポップ値・ティア値)は、開口用溝の最薄部厚さtsと相関し、金属板の厚さt0には依存しない。t0の値が変化しても、開缶性が良好となるtsの値は、ほぼ一定である。したがって、t0が増加すれば、最薄部tsまでのスコア加工量が増加することとなる。
樹脂被覆金属板に対するスコア加工量が増せば、樹脂層に加わる応力及び歪み量が増大し、損傷の危険性が高まるため、t0の選定には注意が必要である。本発明者らが、t0及びtsの値が、性能に及ぼす影響を調査した結果、ts/t0の値を0.1以上の範囲に規定することで、スコア加工量が限定され、樹脂層の損傷を確実に抑制できることがわかった。よって、開口用溝の最薄部の厚さと樹脂被覆金属板の厚さの比は0.1以上とする。
したがって、缶蓋の表面及び裏面に形成された開口用溝の断面形状は、開口溝の断面形状が、曲線および/または直線より構成(好ましくは半径0.1〜0.5mmの円弧曲線)され、最薄部の厚さが0.035〜0.075mm、開口用溝の最薄部の厚さと樹脂被覆金属板の厚さの比が、0.1以上の範囲内とする。
更に、断面の傾斜(Tp)は、1.5以下の範囲に規定する。ここで、開口用溝部の傾斜とは、上述した通り、開口用溝断面内の最大傾斜を意味する。開口用溝断面形状が曲線のみの場合は、接線の最大傾斜である。この値を1.5以下に規定することで、開口用溝加工時に、フィルム内のせん断応力を適正な範囲にコントロールすることができる。1.5超となると、せん断応力が過大となり、最大応力発生箇所を起点として樹脂が断裂することとなる。
本発明の缶蓋は、先端半径0.1mm〜0.5mmの曲面または半径0.1mm〜0.5mmの曲線および直線より構成される上下一対の金型を使用し、最薄部の厚さが0.035〜0.075mmの範囲内になるよう、両面に樹脂層が形成された缶蓋パネルに対しプレス加工を施すことによって形成することができる。曲面型金型を上記寸法形状としたのは、缶蓋に前記寸法形状の開口用溝部を形成するためであって、開口用溝部の寸法形状の限定理由は、前述した通りである。
また、金型を用いて樹脂被覆金属板を押圧成形する際に、樹脂被覆金属板の加工部全域が、金型と接触した状態を維持しながら押圧成形を行うこと、すなわち、金型と樹脂被覆金属板が開口用溝加工領域内で離れることなく常に接触した状態を維持することが望ましい。金型と樹脂被覆金属板が非接触となる領域が発生すると、接触/非接触の境界では接触圧が急激に変化する。外力分布の急激な変化によって、境界近傍のフィルムは大きく変形するため、損傷しやすくなる。接触が維持されれば、接触圧分布の変化も少なく、フィルム変形及び損傷が抑制される。
缶蓋パネルにプレス加工を施す際に、潤滑剤を使用すれば、金型と樹脂との間の摩擦力が低減するため、樹脂に発生するせん断応力が小さくなり、樹脂と鋼板との界面における剥離の発生を抑制することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、樹脂層(a)の上層に形成するポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出し、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
次いで、樹脂層(a)を、上記にて作製したポリエステルフィルムの表面に形成する。ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂とポリアミドアミン樹脂などの各種添加剤を、表1および表2に示す質量比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。このコーティング液を前記にて得られたポリエステルフィルムの片面に、グラビアロールコーターで用いて塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層の付着量を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。なお、表1は缶蓋内面側になる樹脂層成分を示し、表2では缶蓋外面側となる樹脂層成分を示す。
鋼板としては、クロムめっき鋼板を用いた。厚さ0.18mm、幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い製造した。クロムめっきは、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
次いで、図4に示すラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板5を鋼板加熱装置6で加熱し、ラミネートロール7で前記クロムめっき鋼板5の一方の面に、容器成形後に容器内面側になるポリエステルフィルムとして、表1から作製したフィルム8aをラミネート(熱融着)し、他方の面に、容器成形後に容器外面側となるポリエステルフィルムとして、表2から作製したフィルム8bをラミネート(熱融着)した。その後、鋼板冷却装置9にて水冷を行い、樹脂被覆金属板を製造した。図6に、本発明の樹脂被覆金属板の断面構造を示す。
ラミネートロール7は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。フィルムを鋼板にラミネートする際に、鋼板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
以上の方法にて得られた樹脂被覆鋼板に対し、本発明に規定する形状の、1対の金型を使用し、最薄部の厚さが0.035〜0.075mmの範囲内になるように、缶蓋パネルにプレス加工を施して、その表面に開口用溝加工、ビード加工を行い、表3に示す本発明の範囲内のイージーオープン缶蓋の供試体を作製した。加工速度は、1.0cm/分に設定した。なお、比較のために、上記クロムめっき鋼板に対し、樹脂フィルムの構成及び特性、曲面型金型の開口用溝の半径および/または最薄部の厚みが本発明の範囲外である供試体も、あわせて作製した。
ここで、実施例の開口用溝の断面構造を図7〜11に示す。図7〜11によると、缶蓋の断面で開口用溝の中心線に対して左右対称となっている。しかし、本発明はこれに限定されず、左右対称でない場合も本発明の技術範囲内であれば同じ作用効果を有する。なお、図12の開口用溝の断片構造は、傾斜(Tp)が外れた比較例である。
上述した本発明の供試体および比較用の供試体の、開缶力(ポップ値、ティア値)および樹脂皮膜の健全性、耐衝撃性、耐レトルト白化性を、以下の方法によって、測定・評価した。また、以上の方法で得られた鋼板上に有する樹脂層の特性について、下記の方法によりそれぞれ測定、評価した。なお、下記(1)および(2)はラミネート前の、フィルムの段階で測定した。
(1)粒径比、面積換算平均粒子径、数平均粒子径、粒子径の測定及び相対標準偏差σの計算
粒子をポリエステルに配合し、0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し粒子径の測定を行なった。相対標準偏差σ、数平均粒子径の計算式は下記の通りである。
(2)モース硬度の測定
ダイアモンド・砥石などで平滑な平面に仕上げた順位にある標準鉱石を用意する。各々の面を合わせ、その間に、粒子を挟んで擦り動かし、下位の基準鉱石にキズがつき、上位の基準鉱石にキズがつかない場合、その粒子の硬さは両基準鉱石の中間にあるものとした。
(3)開缶性(ポップ値)
引張試験機を用い、缶蓋に取り付けたタブを一定の速度で引き起こし、蓋開口部が開き始める最初の段階における極大ピーク値によって評価した。
(評点について)
◎:15(N)未満
○:15(N)以上 20(N)未満
△:20(N)以上 25(N)未満
×:25(N)以上
(4)開缶性(ティア値)
引き裂き開缶値は、タブを蓋面と90度の角度まで引き起こした後、蓋面に対して垂直方向に引き上げた時に観測される初期の極大ピーク値を評価した。
(評点について)
◎:30(N)未満
○:30(N)以上 40(N)未満
△:40(N)以上 50(N)未満
×:50(N)以上
(5)樹脂皮膜の損傷度の評価(通電試験)
3%塩化カリウム溶液を電解液とし、供試体(缶蓋)を陽極、白金電極を陰極として、印加電圧6.2Vで4秒間通電後の電流値を計測し、評価した。
◎:0.001(mA)未満
○:0.001(mA)以上 0.01(mA)未満
△:0.01(mA)以上 0.1(mA)未満
×:0.1(mA)以上
(6)耐衝撃性
各供試体(缶蓋)につき10個を、水道水を充填した缶胴部に巻き締めて密閉した。缶を蓋を下向きにして、高さ1.0mから塩ビタイル床面に落下させ、衝撃力が付加されたときの衝撃破壊の有無によって評価した。
(評点について)
○:開口用溝加工部の破損なし
×:開口用溝加工部に破損あり
(7)耐レトルト白化性
缶内に常温の水道水を満たした後、本発明の供試体および比較用の供試体である蓋を巻き締めて密閉した。その後、蓋を下向きにしてレトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
△:外観が白濁(白化発生)
×:外観が顕著に白濁(顕著な白化発生)
以上により得られた結果を表4に示す。
(8)開口用溝加工部の樹脂密着性
缶蓋の両面に形成された開口用溝加工部を目視観察し、樹脂層の密着状態を評価した。
(評点について)
◎:異常なし
○:溝加工部の一部に、僅かなフィルム浮きが認められる
×:溝加工部に、フィルム浮きが認められる
表4より、本発明例によれば、両面に樹脂層が形成された鋼板からなる缶蓋に開口用溝を形成する際に、缶蓋の両面に形成されているめっき層および樹脂被覆層の損傷による補修塗装を必要とせず、しかもレトルト処理後も良好な色調を維持できる、開缶性に優れたイージーオープン缶蓋が得られる。
食品缶詰の蓋等を中心に、容器用途として好適な素材である。
1 缶蓋
2 開口用溝
3 傾斜
4 樹脂層
5 鋼板(クロムめっき鋼板)
6 鋼帯加熱装置
7 ラミネートロール
8a、8b フィルム
9 鋼帯冷却装置
10 加工工具
11 蓋板

Claims (11)

  1. 樹脂被覆鋼板からなる缶蓋の両面に開口用溝が形成され、該開口用溝を破断することにより開缶する樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋であり、
    前記樹脂被覆鋼板は、ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有し、少なくとも一方の面の樹脂層が2層以上の構造を有し、2層以上の構造のうち、鋼板と密着する樹脂層(a)が、(イ)ポリアミン樹脂、ポリアミドアミン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれるいずれか一種以上を、1.0〜50.0mass%含有し、
    前記開口用溝は、下記から構成されていることを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
    (A)開口用溝の断面形状が、曲線および/または直線より構成
    (B)開口用溝の断面形状における傾斜(Tp)が1.5以下
    (C)開口用溝の最薄部の厚さが0.035mm以上0.075mm以下
    (D)開口用溝の最薄部の厚さと樹脂被覆鋼板の厚さとの比が、0.1以上
  2. 前記開口用溝の断面形状が、半径0.1mm〜0.5mmの円弧曲線であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  3. 前記樹脂層(a)は、さらに、(ロ)エポキシ樹脂を0.5〜30mass%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  4. 前記樹脂層(a)は、さらに、(ハ)金属アルコキシド系化合物および/または金属キレート化合物を0.01〜10mass%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  5. 前記樹脂層(a)の付着量は、0.1g/m以上3.0g/m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  6. 前記樹脂層(a)中に着色剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  7. 前記樹脂層(a)中に腐食抑制剤を5PHR以上含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  8. 前記樹脂層(a)中に導電性ポリマーを0.1〜30mass%含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  9. 前記樹脂層(a)の上層を形成するポリエステル樹脂層(b)は、ポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは、ポリエステルの構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10mass%含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋。
  10. 樹脂層が被覆された鋼板からなる缶蓋パネルに対し、先端半径0.1mm〜0.5mmの曲面または半径0.1mm〜0.5mmの曲線および直線より構成される上下一対の金型を使用し、最薄部の厚さが0.035mmから0.075mmの範囲内となるように押圧成形を施すことによって、請求項1〜9のいずれか一項の缶蓋を製造することを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋の製造方法。
  11. 請求項10に記載の金型を用いて樹脂被覆金属板を押圧成形する際に、樹脂被覆鋼板の加工部全域が、金型と接触した状態を維持しながら押圧成形を行うことを特徴とする樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋の製造方法。
JP2012255874A 2012-11-22 2012-11-22 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法 Active JP6060643B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012255874A JP6060643B2 (ja) 2012-11-22 2012-11-22 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012255874A JP6060643B2 (ja) 2012-11-22 2012-11-22 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014101143A true JP2014101143A (ja) 2014-06-05
JP6060643B2 JP6060643B2 (ja) 2017-01-18

Family

ID=51024034

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012255874A Active JP6060643B2 (ja) 2012-11-22 2012-11-22 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6060643B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020017466A1 (ja) * 2018-07-20 2020-01-23 大和製罐株式会社 缶蓋

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09108758A (ja) * 1995-10-23 1997-04-28 Nippon Steel Corp 開缶性に優れた蓋の製造方法
JP2000302127A (ja) * 1999-04-20 2000-10-31 Nkk Corp 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋およびその製造方法
JP2003238775A (ja) * 2002-02-13 2003-08-27 Toray Ind Inc 樹脂組成物および成形体
JP2010105689A (ja) * 2008-10-30 2010-05-13 Jfe Steel Corp 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
JP2010149929A (ja) * 2008-11-27 2010-07-08 Jfe Steel Corp 缶切不要蓋の製造方法
JP2012025132A (ja) * 2010-07-28 2012-02-09 Jfe Steel Corp 容器用樹脂被覆金属板

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09108758A (ja) * 1995-10-23 1997-04-28 Nippon Steel Corp 開缶性に優れた蓋の製造方法
JP2000302127A (ja) * 1999-04-20 2000-10-31 Nkk Corp 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋およびその製造方法
JP2003238775A (ja) * 2002-02-13 2003-08-27 Toray Ind Inc 樹脂組成物および成形体
JP2010105689A (ja) * 2008-10-30 2010-05-13 Jfe Steel Corp 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
JP2010149929A (ja) * 2008-11-27 2010-07-08 Jfe Steel Corp 缶切不要蓋の製造方法
JP2012025132A (ja) * 2010-07-28 2012-02-09 Jfe Steel Corp 容器用樹脂被覆金属板

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020017466A1 (ja) * 2018-07-20 2020-01-23 大和製罐株式会社 缶蓋
JPWO2020017466A1 (ja) * 2018-07-20 2021-08-02 大和製罐株式会社 缶蓋
JP7279045B2 (ja) 2018-07-20 2023-05-22 大和製罐株式会社 缶蓋
TWI816841B (zh) * 2018-07-20 2023-10-01 日商大和製罐股份有限公司 罐蓋

Also Published As

Publication number Publication date
JP6060643B2 (ja) 2017-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5358994B2 (ja) 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板
WO2013046687A1 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP6380280B2 (ja) 容器用樹脂被膜金属板
JP5146327B2 (ja) 耐加水分解性に優れる容器用ポリ乳酸系樹脂被覆金属板
JP5772452B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP5347343B2 (ja) 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板
JP5765391B2 (ja) 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
JP5200707B2 (ja) 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板
JP6060643B2 (ja) 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
JP5669344B2 (ja) 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
JP5407279B2 (ja) 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋及びその製造方法
WO2013046688A1 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP5605012B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP4445787B2 (ja) ポリエステル樹脂フィルム被覆金属板及びポリエステル樹脂フィルム被覆金属缶
US11760064B2 (en) Laminated steel having extremely low interface bubble rate and method for manufacturing same
JPWO2016136099A1 (ja) 樹脂被膜金属板、樹脂被膜金属板の製造方法、及び金属容器
JP4405301B2 (ja) 耐カジリ性に優れたポリエステル樹脂フィルム被覆金属板
JP5811122B2 (ja) 2ピース缶用ラミネート金属板および2ピースラミネート缶体
JP5605013B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP5962369B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP5978945B2 (ja) 容器用ポリ乳酸系樹脂被覆金属板
JP4946981B2 (ja) 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板
JP6056733B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP5605011B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板
JP6003852B2 (ja) 容器用樹脂被覆金属板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150825

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160411

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160419

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161128

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6060643

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250