図1及び図2は、本発明による沈胴式ズームレンズ鏡筒ZLの一実施形態を示している。このズームレンズ鏡筒ZLの撮像光学系は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、シャッタ(シャッタ羽根)S、第2レンズ群LG2、第3レンズ群LG3、ローパスフィルタ25及び撮像素子26を備えている。またズームレンズ鏡筒ZLの撮像光学系は、第2レンズ群LG2の前方の光路上に挿脱可能な偏光フィルタ(回転光学要素)43を有している。以下の説明中で光軸方向とは、この撮影光学系の光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。また、光軸Oを中心とする径方向において、光軸Oに近い側を内径側、光軸Oから遠い側を外径側とする。
ズームレンズ鏡筒ZLは固定部材として筒状のハウジング22を有し、ハウジング22の後部に撮像素子ホルダ21が固定される。ローパスフィルタ25と撮像素子26はユニット化されて撮像素子ホルダ21の前面部に固定されている。
第3レンズ群LG3は、ズームレンズ鏡筒ZLにおけるフォーカスレンズ群であり、3群レンズ枠51に保持されている。3群レンズ枠51は、図示を省略するガイド軸を介して光軸方向に直進移動可能に支持されており、AFモータ160(図18)の駆動力によって前後に移動させることができる。
ハウジング22の内側には、3群レンズ枠51の支持駆動手段とは別に、鏡筒駆動モータ150(図18)により駆動制御される変倍群(カム環)ブロックが支持されている。変倍群(カム環)ブロックは、カム環11、繰出筒12、直進案内環13及び2群レンズブロック80を含んでいる。
カム環11は、繰出筒12と共にズームレンズ鏡筒ZLの外観筒を構成しており、ハウジング22の内周面に形成したカム環ガイド溝22aに対して摺動可能に嵌るガイド突起(不図示)を有する。カム環11は、鏡筒駆動モータ150により回転駆動されるズームギヤ(不図示)の駆動力を受けて回転され、カム環ガイド溝22aの案内により回転しながら光軸方向に移動する。ハウジング22内には直進案内環13が支持されている。直進案内環13は、ハウジング22の内面に形成した直進案内溝を介して光軸方向に直進移動可能に案内されており、カム環11とは相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように結合されている。
2群レンズブロック80は、2群レンズ移動環8と、シャッタユニット81と、偏光フィルタユニット(回転光学要素ユニット)40を備えている。2群レンズ移動環8の前部にシャッタユニット81が支持され、シャッタユニット81の前部に偏光フィルタユニット40が支持されている。シャッタユニット81は内部に開閉可能なシャッタ(シャッタ羽根)Sを有し、シャッタアクチュエータ82によってシャッタSを開閉駆動する。偏光フィルタユニット40は、光軸Oを通る光路上に偏光フィルタ43を挿脱させ、かつ挿入した偏光フィルタ43を偏光フィルタ駆動モータ(回転光学要素駆動モータ、駆動源)180の回転駆動力によって光軸Oを中心として回転させることが可能である。シャッタユニット81と偏光フィルタユニット40の構成と動作については、後に詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、2群レンズブロック80は、2群レンズ移動環8の本体部分を構成する筒状部8aの後端付近から外径方向に突出する直進案内キー8bを、直進案内環13に形成した光軸方向への長穴である直進案内スロット(不図示)に対して摺動可能に係合させることにより光軸方向へ直進案内されている。直進案内キー8bは周方向に位置を異ならせて3つ設けられており、図3及び図4にはそのうちの2つが示されている。なお、2群レンズ移動環8の筒状部8a内には保持枠部8cが形成されており、この保持枠部8cによって第2レンズ群LG2が保持されている。
2群レンズ移動環8の3つの直進案内キー8b上にはそれぞれ2群用カムフォロア8dが固定されている。2群用カムフォロア8dは、カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝CG2に対して摺動可能に係合している。2群レンズ移動環8(2群レンズブロック80)は直進案内環13を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群用カムフォロア8dが2群制御カム溝CG2の案内を受けて、2群レンズ移動枠8(2群レンズブロック80)が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
繰出筒12内には第1レンズ群LG1が保持されている。繰出筒12は内面側に設けた直進案内キー(不図示)を直進案内環13に形成した直進案内溝(不図示)に対して摺動可能に係合させることで光軸方向へ直進案内されている。繰出筒12の後端付近の外周面上には1群用カムフォロア12aが設けられ、この1群用カムフォロア12aがカム環11の内周面に形成した1群制御カム溝CG1に対して摺動可能に係合している。繰出筒12は直進案内環13を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群用カムフォロア12aが1群制御カム溝CG1の案内を受けて、繰出筒12が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
図18はズームレンズ鏡筒ZLを搭載するカメラの電気部品の一部を概念的に示したものである。鏡筒駆動モータ150、AFモータ160、シャッタユニット81及び偏光フィルタユニット40は、制御回路70によって制御される。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒ZLは次のように動作する。図1に示す撮影状態(ズーム域)では、ハウジング22に対してカム環11が光軸方向前方に繰り出され、カム環11の繰り出し量はカム環ガイド溝22aの軌跡により制御される。第1レンズ群LG1を支持する繰出筒12と、第2レンズ群LG2を支持する2群レンズブロック80はそれぞれ、カム環11の回転に応じてカム溝CG1、CG2の案内を受けて光軸方向に相対移動する。
図1に示す撮影状態から鏡筒駆動モータ150(図18)を鏡筒収納方向に駆動させると、カム環ガイド溝22aの案内を受けたカム環11が回転しながら光軸方向後方へ移動される。繰出筒12と2群レンズブロック80(2群レンズ移動環8)は、カム環11上のカム溝CG1、CG2の軌跡による所定の相対移動を伴いつつ、カム環11と共に光軸方向後方へ移動する。やがて図2の鏡筒収納状態まで達すると、鏡筒駆動モータ150の鏡筒収納方向の駆動が停止される。また、第3レンズ群LG3を保持する3群レンズ枠51も、図2に示す後退位置になるようにAFモータ160によって位置制御される。
偏光フィルタユニット40に保持された偏光フィルタ43は、第2レンズ群LG2の前方へ任意に挿脱させ、かつ光軸Oを中心とする回転を行わせることができる。この偏光フィルタ43の保持と駆動を行う偏光フィルタユニット40の詳細構造を説明する。
図5に示すように、偏光フィルタユニット(回転光学要素ユニット)40は、ベース部材100とモータ支持部材41の間に、フィルタ枠(保持部材)42、偏光フィルタ(回転光学要素)43、環状摩擦板(従動回転部材)44、回転環(従動回転部材)45、原動環(原動回転部材)46、摩擦シート47、保護シート(従動回転部材)48、抵抗付与バネ(抵抗付与手段)49といった部材を保持した構成になっている。
ベース部材100は、光軸Oを中心とする円形状の中央開口(光軸O上の撮影開口)100aを有する、光軸Oに対して略直交する支持壁部100bと、この支持壁部100bの外囲から前方に突出する、光軸Oを中心とした一定径の内壁面(内周面)からなる円筒壁部100cとを備えている。円筒壁部100cの周方向の一部には、円筒壁部100cに連続させて、光軸Oから離れる外径方向に突出する収納壁部100dが形成されている。この収納壁部100dは、円筒壁部100cよりも外径方向に突出しており、円筒壁部100cに比して曲率の大きい部分円筒状の内壁面(内周面)を有する壁部である。
図6と図9に示すように、収納壁部100dと円筒壁部100cとの境界付近に、径方向に貫通するセンサ用穴100eが形成されている。円筒壁部100cのうちセンサ用穴100eに臨む縁部に、円筒壁部100cの一部として規制壁部100iが形成されている。規制壁部100iの外側には薄板状のセンサ支持片100jが形成されている。また、円筒壁部100cの外周側には周方向位置を異ならせて3つの係止片100fと、3つの係止突起100hが設けられている。それぞれの係止片100fは前方に突出し、径方向に貫通する穴を有する。
モータ支持部材41は、ベース部材100に対応する外径サイズの環状部材であり、内周側には中央開口100aよりも大径の前方開口41aが形成され、外周上には、ベース部材100のセンサ用穴100eに対応する位置にセンサ支持部41bが形成され、3つの係止片100fに対応する位置に3つの係止突起41cが形成されている。この3つの係止突起41cをそれぞれ対応する係止片100fの穴に係合させて、モータ支持部材41とベース部材100が組み合わされる。モータ支持部材41のセンサ支持部41bには離脱検知センサ65が保持される。離脱検知センサ65は、モータ支持部材41とベース部材100の組み合わせ状態で、ベース部材100の規制壁部100iとセンサ支持片100jによる支持も受ける。離脱検知センサ65は、光軸方向に離間する発光部と受光部を有するフォトインタラプタからなり、発光部から受光部への光の入射の有無を検出して制御回路70(図18)へ出力する。
図11ないし図14に示すように、モータ支持部材41の内周部には、前方開口41aの後方に位置させて挿入規制面41dが形成され、挿入規制面41dの後方には、径方向と光軸方向に位置を異ならせて回転案内面41eと回転案内面41fが形成されている。回転案内面41eと回転案内面41fはいずれも光軸Oを中心とする円筒の内面であり、光軸方向の前方に位置する回転案内面41eよりも光軸方向の後方に位置する回転案内面41fの方が大径になっている。回転案内面41fの外周側には、ベース部材100の円筒壁部100cの前端が嵌合する外周嵌合部41gが形成されている。また、回転案内面41eと回転案内面41fの間の光軸方向位置には、当付凸部41hが後方に向けて突設されている。当付凸部41hは、光軸Oを中心とする環状の領域に形成された後方への突出部である。
モータ支持部材41のモータ支持部41iとベース部材100のギヤ支持部100gとの間に光軸Oと平行なギヤ支持軸60a、61aが設けられ、ギヤ支持軸60aに第1ギヤ60、ギヤ支持軸61aに第2ギヤ61がそれぞれ軸支されている(図14)。モータ支持部41iの前面側には、制御回路70によって駆動制御される偏光フィルタ駆動モータ180が支持される。偏光フィルタ駆動モータ180は光軸Oと平行な方向に回転軸を突出させたステッピングモータであり、この回転軸上にピニオン180aが設けられ、モータ本体のうち回転軸が突出する側の端部に支持板180bが設けられている。偏光フィルタ駆動モータ180はモータ支持部41iに対して支持板180bを当接させてモータ支持部材41に固定され、図14に示すように、この固定状態でピニオン180aが第1ギヤ60に噛合する。第1ギヤ60は大径ギヤと小径ギヤからなる2段ギヤであり、ピニオン180aは第1ギヤ60の大径ギヤに噛合し、第1ギヤ60の小径ギヤが第2ギヤ61に噛合する。第2ギヤ61は原動環46の外周に形成した周縁ギヤ46aに噛合する。
原動環46は、周縁ギヤ46aの内側に光軸Oを中心とする環状の回転ガイド部46bを有し、回転ガイド部46bの前端付近の外周部がモータ支持部材41の回転案内面41eに対して摺動可能に支持されている。この回転案内面41eの案内を受けることにより、原動環46は光軸Oを中心とする回転が可能に支持される。モータ支持部材41内の挿入規制面41dに対して回転ガイド部46bの前端部が当接することにより、原動環46はモータ支持部材41に対する前方への移動が規制される。原動環46にはさらに、回転ガイド部46bの内径側に光軸Oと直交する方向に延びる環状フランジ46cが形成され、環状フランジ46c上に光軸方向に貫通する回転伝達穴(長穴)46d(図6、図9、図11)が形成される。環状フランジ46cの内縁部は、ベース部材100の中央開口100aよりも大径の中央開口46fとなっている。また、環状フランジ46cの後面側には、周方向に位置を異ならせて3つの後方突出部46e(図7、図10、図12)が形成されており、後方突出部46eをベース部材100の支持壁部100bに当接させることで、原動環46の後方への移動が規制される(図12)。つまり、原動環46は、挿入規制面41dと支持壁部100bに挟まれてモータ支持部材41とベース部材100に対する光軸方向の移動が規制され、光軸Oを中心とする回転は可能となっている。
図11ないし図14に示すように、回転環45は原動環46の回転ガイド部46bの外側を囲む位置に配された環状部材であり、その外周部がモータ支持部材41の回転案内面41fに対して摺動可能に支持されている。この回転案内面41fの案内を受けることにより、回転環45は光軸Oを中心とする回転が可能に支持される。回転環45の前方に環状摩擦板44が位置し、環状摩擦板44の前方には摩擦シート47が位置する。環状摩擦板44と摩擦シート47はそれぞれ光軸Oを中心とする薄板の環状部材であり、回転環45に対応する径サイズを有する。回転環45の外周部に設けた係合突起45aと、環状摩擦板44に設けた係合片部44aを係合させることで環状摩擦板44と回転環45が結合される(図12)。より詳しくは、係合片部44aには係合突起45aを挿入させるスリットが形成され、このスリットは、光軸方向への係合突起45aの若干の相対移動を許す長さになっている。一方、光軸Oを中心とする周方向へは、係合片部44aのスリットに対して係合突起45aが移動を規制されて係合している。つまり、回転環45と環状摩擦板44は、回転方向には一体化され、光軸方向には若干の相対移動が許容された状態で結合されている。摩擦シート47は、環状摩擦板44とモータ支持部材41の当付凸部41hとの間に挿入されており、摩擦シート47が当付凸部41hに当接することで、環状摩擦板44(環状摩擦板44と回転環45の結合体)の前方への移動が規制される。
一方、回転環45は後面側に設けた複数の後方突出部45bをベース部材100の支持壁部100bに当接させることで、後方への移動が規制される(図12)。つまり、回転環45はモータ支持部材41の当付凸部41hとベース部材100の支持壁部100bの間に挟まれる光軸方向位置にあり、当付凸部41hと回転環45の間に環状摩擦板44と摩擦シート47が挿入された関係にある。回転環45には、前方に向けて開口するバネ支持穴45cが周方向位置を異ならせて3つ形成され、それぞれのバネ支持穴45c内に抵抗付与バネ49が挿入されている(図12)。抵抗付与バネ49は、前端部を環状摩擦板44に当接させ、後端部をバネ支持穴45cの底面に当接させた圧縮バネであり、環状摩擦板44と回転環45を光軸方向における離間方向に付勢している。すなわち、環状摩擦板44を前方、回転環45を後方に付勢している。この抵抗付与バネ49の付勢力によって、摩擦シート47が当付凸部41hに対して押し付けられ、回転環45の後方突出部45bが支持壁部100bに対して押し付けられ、環状摩擦板44と回転環45の結合体に対して光軸Oを中心とする回転方向へ所定の大きさの摩擦抵抗が付与される。なお、摩擦シート47は環状摩擦板44に対する摩擦の大きさを調整するものであり、環状摩擦板44と当付凸部41hの間で十分な摩擦力が得られる場合には摩擦シート47を省略することも可能である。
フィルタ枠42は概ね半月状の形状をなす薄板部材であり、一端部付近に前方へ突出する第1支持軸(軸支部)42aと第2支持軸(回転伝達部)42bが形成され、他端部に内径方向へ折れる鈎状のストッパ突起(挿入制御手段)42cが設けられている。フィルタ枠42の中央部分には円形のフィルタ開口42dが形成され、フィルタ開口42dを挟んだ外径側と内径側に、外径方向に突出する円弧状をなす外径側縁部(離脱制御手段)42eと、概ね直線状をなす内径側縁部42fが形成されている。また、外径側縁部42eに隣接する位置にセンサ通過片42gが形成されている。センサ通過片42gは、フィルタ枠42の本体部分と一体に形成され、光軸Oと直交する平面に沿って延設された突出部である。フィルタ枠42の前面側に偏光フィルタ43が固定される。偏光フィルタ43は、フィルタ開口42dの全体を覆い、かつ第1支持軸42a、第2支持軸42b、ストッパ突起42c及びセンサ通過片42gとは重ならない形状をなしている。
図11に示すように、フィルタ枠42の第1支持軸42aは、回転環45に形成した軸穴45eに対して挿入されている。第1支持軸42aは円筒状の外周面形状を有し、軸穴45eはこれに対応する円筒状の内周面形状を有する。これにより、フィルタ枠42は回転環45に対して第1支持軸42aを中心とする回動(揺動)が可能に支持されている。フィルタ枠42の第2支持軸42bは、原動環46に形成した回転伝達穴46dに対して嵌合している。図6や図9に示すように、第2支持軸42bは円筒状の外周面形状を有する一方、回転伝達穴46dは光軸Oを中心とする径方向への長穴として形成されており、回転伝達穴46dの対向する一対の内面によって第2支持軸42bを挟むことにより、原動環46の回転力を第2支持軸42bに伝える。つまり、第2支持軸42bと回転伝達穴46dの嵌合関係により、フィルタ枠42は原動環46と共に光軸Oを中心として回転する。回転伝達穴46dが径方向への長穴であるため、原動環46に対するフィルタ枠42の径方向への若干量の相対移動が許容される。
フィルタ枠42は、後述する回転環45と原動環46の動作によって、フィルタ開口42dの中心を光軸Oと一致させる挿入位置(図9、図10、図15(B)ないし(F)、図16(C)ないし(E)、図17(A))と、光軸Oを通る光路上からフィルタ開口42dを離脱させた完全離脱位置(図6、図7、図15(A)、図16(A)、図17(F))との間で移動可能である。フィルタ枠42の完全離脱位置では、外径側縁部42eが収納壁部100dの内周面に近接しており、さらなる離脱方向(外径方向)へのフィルタ枠42の回動が、外径側縁部42eと収納壁部100dとの当接によって規制される。外径側縁部42eが収納壁部100dに対応しない回転方向位置にあるときは、図17(B)ないし(D)のように、外径側縁部42eが円筒壁部100cの内周面に当接することによって、完全離脱位置よりも手前(内径側)の制限離脱位置で、光軸Oからの離脱方向(外径方向)へのフィルタ枠42の回動が制限される。図12に示すように、回転環45と原動環46にフィルタ枠42を支持させた状態で、フィルタ枠42と回転環45の後方突出部45bは光軸方向における同位置にあり(共通の光軸直交平面内に位置し)、フィルタ枠42を挿入位置に回動させると、図10のように複数の後方突出部45bのうちの1つに対してストッパ突起42cが当接して、フィルタ枠42のそれ以上の挿入方向への回動が規制される。このフィルタ枠42の挿入位置でのストッパ突起42cの当接対象である後方突出部45bをストッパ部(挿入制御手段)45b-1と呼ぶ。なお、ストッパ部45b-1は、他の後方突出部45bのようにベース部材100の支持壁部100bへ当接させず、フィルタ枠42の回動規制のみを行う部位とすることも可能である。
回転環45及び原動環46とフィルタ枠42との間には、薄板状の保護シート48が支持される。保護シート48は、回転環45及び原動環46に対するフィルタ枠42の引っ掛かりを防いでスムーズな動作を行わせる機能を有しており、光軸Oが通る中央付近から外径側に向けて貫通する開放開口48aを有するC字状の形状をなしている。開放開口48aを挟んで一対の位置決め穴48bが形成され、それぞれの位置決め穴48bに対して回転環45に突設した位置決め突起45d(図7、図10)が係合することにより、保護シート48は回転環45に対して固定的に支持されている。保護シート48には、開放開口48aの周囲に周方向に位置を異ならせて3つの周方向長穴48cが形成されている。それぞれの周方向長穴48cは光軸Oを中心とする円弧状の長穴であり、各周方向長穴48cに対して原動環46の後方突出部46eが挿入されている。周方向長穴48cは後方突出部46eよりも周方向に長く、保護シート48及び回転環45に対する原動環46の所定量の相対回転を許す。3つの周方向長穴48cのうちの1つに連通させて、第1支持軸42aや第2支持軸42bとの干渉を防ぐ逃げ穴48dが形成されている(図5、図10、図11)。また、保護シート48は、回転環45の後方突出部45bと重なる位置に複数の切欠き48eを有しており、回転環45の後部に支持させたときに後方突出部45bと干渉しない。
偏光フィルタユニット40を組み立てる際には、モータ支持部材41に対して後方側から各部材を組み付け、最後にモータ支持部材41の後部にベース部材100を取り付ける。詳細には、まず原動環46の回転ガイド部46bの前端部を、モータ支持部材41の挿入規制面41dに当接させる。これにより原動環46は、モータ支持部材41に対する前方への移動が規制されると共に、回転案内面41eに沿う光軸中心の回転が可能に支持される。続いて、環状摩擦板44とモータ支持部材41の当付凸部41hの間に摩擦シート47を挟持させつつ、環状摩擦板44と回転環45の結合体をモータ支持部材41に組み付ける。これにより環状摩擦板44と回転環45は、モータ支持部材41に対する前方への移動が規制されると共に、回転案内面41fに沿う光軸中心の回転が可能に支持される。なお、環状摩擦板44と回転環45は、抵抗付与バネ49を互いの間に挿入したアッセンブリとして予め組み立てておくことが望ましい。さらに回転環45の後部に保護シート48が取り付けられ、保護シート48に形成した周方向長穴48cに対して原動環46の後方突出部46eが挿入される。この段階で、回転環45の軸穴45eと原動環46の回転伝達穴46dが後方に向けて露出しており、軸穴45eと回転伝達穴46dに対してそれぞれに対応する第1支持軸42aと第2支持軸42bを挿入させてフィルタ枠42を組み付ける。フィルタ枠42には偏光フィルタ43を予め取り付けておく。
最後に、外周嵌合部41gに対して円筒壁部100cの前端を嵌合させ、かつ3つの係止突起41cと係止片100fを係合させて、モータ支持部材41の後部にベース部材100を固定する。各係止突起41cは、後方から前方に進むにつれて外径方向への突出量を大きくするテーパー面を有し、モータ支持部材41に対してベース部材100を相対的に前方に移動させると、係止片100fが弾性変形しながら係止突起41cのテーパー面を乗り越え、係止片100fの穴が係止突起41cに対応する位置まで達すると、係止片100fの弾性変形が解除されて係止突起41cとの係合状態が維持される。こうしてモータ支持部材41とベース部材100を組み合わせた状態では、モータ支持部材41内に組み付けた各部材の後方への脱落が、ベース部材100の支持壁部100bによって防がれる。つまり、モータ支持部材41とベース部材100の間に各部材が保持される。また、抵抗付与バネ49が環状摩擦板44と回転環45の間で圧縮された状態になり、環状摩擦板44と回転環45に対して前述した摩擦抵抗が作用するようになる。
以上のように組み立てた偏光フィルタユニット40は、筒状部8aの前端部に形成した挿入規制部8e(図1、図2、図4)に対してシャッタユニット81の後部を当接させて(第2レンズ移動環8との間にシャッタユニット81を介在させて)、2群レンズ移動環8の前部に固定される。2群レンズ移動環8は筒状部8aから前方に突出する3つの係止片8fを有し、この係止片8fをそれぞれベース部材100の係止突起100hに係合させることで、偏光フィルタユニット40が固定される。各係止片8fは、径方向に貫通する穴を有している。各係止突起100hは、後方から前方に進むにつれて外径方向への突出量を大きくするテーパー面を有し、偏光フィルタユニット40に対して2群レンズ移動環8を相対的に前方に移動させると、係止片8fが弾性変形しながら係止突起100hのテーパー面を乗り越え、係止片8fの穴が係止突起100hに対応する位置まで達すると、係止片8fの弾性変形が解除されて係止突起100hとの係合状態が維持される。
図18に示すように、ズームレンズ鏡筒ZLが搭載されるカメラには、偏光フィルタユニット40に関する操作手段として、偏光フィルタ挿入スイッチ71、偏光フィルタ離脱スイッチ72、偏光フィルタ回転スイッチ73が設けられている。偏光フィルタ43が離脱位置にあるときに偏光フィルタ挿入スイッチ71が操作されると、偏光フィルタ挿入スイッチ71から制御回路70に挿入駆動指示信号が入力する。偏光フィルタ43が挿入位置にあるときに偏光フィルタ離脱スイッチ72が操作されると、偏光フィルタ離脱スイッチ72から制御回路70に離脱駆動指示信号が入力する。偏光フィルタ回転スイッチ73が操作されると、偏光フィルタ回転スイッチ73から制御回路70にフィルタ回転指示信号が入力する。
以上の構成による偏光フィルタユニット40の動作を説明する。前述のように、偏光フィルタユニット40は、モータ支持部材41とベース部材100の間に、環状摩擦板44、回転環45、原動環46、摩擦シート47、保護シート48といった環状の部材を保持しており、これらの各部材が光路(光軸O)上に有する開口よりもベース部材100の中央開口100aの方が小径である(図11ないし図14参照)。つまり、フィルタ枠42と偏光フィルタ43を除いた偏光フィルタユニット40における光路上の最小開口は、ベース部材100の中央開口100aによって規定される。偏光フィルタ43は、この中央開口100aの前方に進出する挿入状態(挿入位置)と、中央開口100aの外径側に離脱する離脱状態(離脱位置)にすることが可能であり、さらに挿入状態では光軸Oを中心とする回転(自転)を行うことができる。光路に対する偏光フィルタ43の挿脱は、前述したフィルタ枠42の挿入位置と完全離脱位置との回動によって行われ、挿入状態での偏光フィルタ43の回転は、回転環45と原動環46の回転によって行われる。
図6、図7、図15(A)、図16(A)、図17(F)は偏光フィルタ43の離脱状態(離脱位置)を示している。フィルタ枠42は、ベース部材100の収納壁部100d内に進入した完全離脱位置にあり、収納壁部100dの内壁面に沿って外径側縁部42eが位置し、フィルタ枠42のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制される。フィルタ枠42の内径側縁部42fはベース部材100の中央開口100aよりも外径側に位置していて、フィルタ枠42が中央開口100aを通る光束を遮ることがない。フィルタ枠42のセンサ通過片42gが、センサ用穴100eを通して、離脱検知センサ65を構成するフォトインタラプタの発光部と受光部の間に進入している。センサ通過片42gによってフォトインタラプタの受光部への光の入射が遮られることで、フィルタ枠42が完全離脱位置にあることが検出される。
偏光フィルタ挿入スイッチ71の操作によって偏光フィルタ43の挿入動作が実行される。偏光フィルタ43の挿入時には、偏光フィルタ駆動モータ180によって原動環46が図15及び図16のN1方向に回転される。N1は、偏光フィルタ43を挿入させる方向の回転である。原動環46がN1方向に回転すると、回転伝達穴46dの側面からフィルタ枠42の第2支持軸42bに対して光軸中心の回転方向の力が伝えられる。ここで、フィルタ枠42の第1支持軸42aを軸穴45eで支持する回転環45には、抵抗付与バネ49の付勢力によって回転方向への摩擦抵抗が作用しており、第1支持軸42aと偏心した位置にある第2支持軸42bを原動環46によってN1方向に押圧されたフィルタ枠42が、第1支持軸42aと軸穴45eの軸線を中心として、完全離脱位置から挿入位置方向へ回動しようとする。しかし、センサ用穴100eに挿入されたフィルタ枠42のセンサ通過片42gに対向して、光軸Oに近い径方向内側にベース部材100の規制壁部100iが位置しており、センサ通過片42gと規制壁部100iの当接によって挿入位置方向へのフィルタ枠42の回動が規制される。すると、第1支持軸42aと軸穴45eの嵌合によってフィルタ枠42から回転環45に伝達されるN1方向の回転駆動力が、抵抗付与バネ49の付勢力による摩擦抵抗を上回り、回転環45(環状摩擦板44と回転環45と保護シート48の結合体)が原動環46と共にN1方向に回転する。回転環45に伴ってフィルタ枠42もN1方向に回転し、センサ通過片42gがセンサ用穴100eから抜ける。
これにより、規制壁部100iによる規制が解除されてフィルタ枠42が挿入位置へ回動可能になる。抵抗付与バネ49の付勢力は、フィルタ枠42の挿脱方向の回動が規制されない状態では、フィルタ枠42のみを挿脱方向に回動させて回転環45を回転させない摩擦抵抗を与える大きさに設定されている。よって、センサ通過片42gがセンサ用穴100eから抜けると、回転環45が原動環46と連れ回りせずに停止した状態になり、第2支持軸42bを原動環46によってN1方向に押圧されたフィルタ枠42が、第1支持軸42aと軸穴45eの軸線を中心として、完全離脱位置から挿入位置方向への回動を開
始する(図16(B))。この回転環45に対する原動環46の相対回動時には、後方突出部46eが周方向長穴48c内を周方向に移動し、保護シート48が原動環46の回転を妨げない。
フィルタ枠42が図9、図10、図15(B)、図16(C)の挿入位置まで達すると、回転環45に設けたストッパ部45b-1(複数の後方突出部45bのうちの1つ)に対してストッパ突起42cが当接する。このときフィルタ枠42のフィルタ開口42dの中心が光軸Oと一致し、偏光フィルタ43がベース部材100の中央開口100aの前方の光路上に挿入された状態になる。ストッパ突起42cがストッパ部45b-1に当接すると、回転環45に対するフィルタ枠42の挿入位置方向への回動が規制される。
フィルタ枠42が挿入位置にある状態で、偏光フィルタ回転スイッチ73の操作に応じて偏光フィルタ43を光軸中心に回転させることができる。偏光フィルタ43の光軸中心の回転を行わせるときには、偏光フィルタ駆動モータ180によって原動環46がN1方向に回転される。すると、回転伝達穴46dと第2支持軸42bとの嵌合関係によってフィルタ枠42に対してN1方向の回転力が伝えられる。ここで、ストッパ突起42cとストッパ部45b-1の当接によって回転環45に対するフィルタ枠42の挿入位置方向への回動が規制されているため、第1支持軸42aと軸穴45eの嵌合によってフィルタ枠42から回転環45に伝達されるN1方向の回転駆動力が、抵抗付与バネ49の付勢力による摩擦抵抗を上回り、回転環45(環状摩擦板44と回転環45と保護シート48の結合体)が原動環46と共にN1方向に回転する(図15(C)〜(F)、図16(D)〜(E))。回転環45と原動環46が連れ回りする状態では、フィルタ枠42の第1支持軸42aと第2支持軸42bが挿入する軸穴45eと回転伝達穴46dの相対位置が変化しないため、フィルタ枠42は偏光フィルタ43を光路上に挿入した挿入位置を保ちつつ、回転環45及び原動環46と共に光軸Oを中心として回転する。つまり、偏光フィルタ43が光軸Oを中心として回転される。偏光フィルタ駆動モータ180を停止させると偏光フィルタ43の回転が停止する。
偏光フィルタ離脱スイッチ72の操作によって偏光フィルタ43の離脱動作が実行される。偏光フィルタ43の離脱時には、偏光フィルタ駆動モータ180によって原動環46が図17のN2方向に回転される。N2は、偏光フィルタ43を離脱させる方向の回転である。原動環46のN2方向の回転力が回転伝達穴46dと第2支持軸42bを介してフィルタ枠42に対して伝えられると、回転環45に対してフィルタ枠42が、第1支持軸42aと軸穴45eの軸線を中心として、ストッパ突起42cをストッパ部45b-1から離間させる方向、すなわち挿入位置から離脱位置方向へ回動される。このとき回転環45には抵抗付与バネ49の付勢力による摩擦抵抗が作用しており、回転環45は原動環46と連れ回りせずに停止した状態を保つ。
フィルタ枠42が離脱位置方向へ向けて回動すると、図17(B)のように、フィルタ枠42の外径側縁部42eがベース部材100の円筒壁部100cの内壁面に当接し、フィルタ枠42が完全離脱位置よりも離脱量の小さい制限離脱位置で停止される。この状態で原動環46をさらにN2方向に回転させると、フィルタ枠42の第1支持軸42aと軸穴45eの嵌合によって回転環45に伝達されるN2方向の回転駆動力が、抵抗付与バネ49の付勢力による摩擦抵抗を上回り、回転環45(環状摩擦板44と回転環45と保護シート48の結合体)が原動環46と共に回転する。回転環45と原動環46がN2方向に連れ回りすると、図17(C)〜(D)のように円筒壁部100cに対して外径側縁部42eを摺接させながら、フィルタ枠42が光軸Oを中心とするN2方向の回転動作を行う。
ベース部材100の円筒壁部100cと収納壁部100dの境界部を超える位置までフィルタ枠42がN2方向に回転されると、フィルタ枠42は、円筒壁部100cによる制限離脱位置での保持が解除され、図17(E)のように外径側縁部42eを収納壁部100dの内壁面に当接させる位置まで離脱位置方向へ回動され、外径側縁部42eを収納壁部100dの内壁面に対して摺接させながら引き続きN2方向に回転される。円筒壁部100cの内壁面は光軸Oを中心とする円筒面であるため、フィルタ枠42が円筒壁部100cに対して外径側縁部42eを摺接させている図17(C)〜(D)の状態では、回転環45と原動環46は一体的に回転されている。一方、収納壁部100dの内壁面は、円筒壁部100cの内壁面よりも曲率の大きい曲面であるため、外径側縁部42eを収納壁部100dの内壁面に沿って移動させるときのフィルタ枠42は、光軸Oを中心とするN2方向への回転動作(原動環46に伴う回転)に加えて、第1支持軸42aと軸穴45eの軸線を中心とする回動(回転環45に対する相対回動)も行う。この回転環45に対するフィルタ枠42の相対回動時には、N2方向への回転を継続する原動環46と、抵抗付与バネ49による摩擦抵抗で回転停止しようとする回転環45との間で単位時間あたりの回転量に差が生じ、回転環45よりも原動環46の方が回転量が大きくなる。これによりフィルタ枠42が完全離脱位置まで回動される。つまり、収納壁部100dの内壁面が、フィルタ枠42を制限離脱位置から完全離脱位置まで案内するガイド面として機能する。そして、フィルタ枠42の離脱動作の最終段階で、センサ通過片42gがセンサ用穴100eを通して離脱検知センサ65の発光部と受光部の間に進入し、フィルタ枠42の完全離脱位置への到達が検出される。このセンサ検出に応じて偏光フィルタ駆動モータ180が停止され、偏光フィルタ43の離脱動作(退避動作)が完了する(図17(F))。換言すれば、フィルタ枠42は、収納壁部100dの内壁面によって案内されるときの光軸中心(N2方向)回転と第1支持軸42aを中心とする回動との複合動作によって、確実に完全離脱位置まで到達すると共に、センサ通過片42gを離脱検知センサ65による検出位置まで進入させるようになっている。
なお、特定の回転方向位置からフィルタ枠42の離脱動作を開始した場合は、外径側縁部42eが円筒壁部100cに当接する制限離脱位置の段階を経ずに、最初から図17(E)のように収納壁部100dの内壁面に当接する。この場合も離脱動作の最終段階は前述と同様であり、フィルタ枠42は、第1支持軸42aを中心とする回動を行いながらN2方向に回転し、センサ通過片42gをセンサ用穴100eに進入させて完全離脱位置に達する。
続いて、図19〜図24を参照して、シャッタユニット81の構成と動作について詳細に説明する。
前述のように、シャッタユニット81はベース部材100の後部に固定されている(図19、図21及び図23)。シャッタユニット81は、前方から順に、ベース部材100の収納壁部100dと略同径の大径環状部83と、この大径環状部83より小径の小径環状部84とを有している。大径環状部83と小径環状部84の内径側には、ベース部材100の中央開口100aと略同径の中央開口85が形成されている。
大径環状部83の内部の周方向の一部にはNDフィルタ収納室83aが形成されており、このNDフィルタ収納室83aにNDフィルタ110が挿脱自在に収納されている(シャッタユニット81にNDフィルタ110が内蔵されている)。NDフィルタ110は、第2レンズ群LG2以降のレンズ群に入射する光量を減少させる減光フィルタであり、NDフィルタ110を使うことで、撮影の際の絞りを開くこと、あるいはシャッタスピードを下げることが可能になる。これにより、明るいレンズ使用時の屋外ポートレート撮影など晴天時でも開放状態で後ろをボカして撮影する、川の流れを糸の集まりのように撮影する、人通りのある街並みから人を消して撮影するなどといった、長時間露出による特殊効果を出して撮影することが可能になる。
図20、図22及び図24に示すように、NDフィルタ110は、シャッタユニット81に回動軸111aを中心に回動自在に支持されたNDフィルタホルダ111に固定されている。NDフィルタホルダ111は、概ね半月状の形状をなす薄板部材であり、その一端部に回動軸111aが形成されている。NDフィルタホルダ111の中央部分には円形のフィルタ開口111bが形成されており、このフィルタ開口111bを挟んだ外径側と内径側に、外径方向に突出する円弧状をなす外径側縁部111cと、概ね直線状をなす内径側縁部111dが形成されている。NDフィルタ110は、NDフィルタホルダ111の前面側にフィルタ開口111bを覆うようにして固定されている。
シャッタユニット81には、NDフィルタ110を固定したNDフィルタホルダ111を回動軸111a中心に回動させる電磁駆動機構(図示せず)が備えられている。この電磁駆動機構によってNDフィルタ110が、撮影光学系の光路上への挿入位置と、同光路上から離脱した離脱位置との間で移動可能となっている。
NDフィルタ110が挿入位置にあるときは、NDフィルタホルダ111のフィルタ開口111bの中心が光軸Oと一致し、NDフィルタ110がベース部材100の中央開口100aの後方の光路上に挿入される。NDフィルタ110が離脱位置にあるときは、NDフィルタホルダ111がシャッタユニット81のNDフィルタ挿入室83a内に進入しており、NDフィルタ挿入室83aの内壁面に沿って外径側縁部111cが位置し、NDフィルタホルダ111のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制される。NDフィルタホルダ111の内径側縁部111dはベース部材100の中央開口100aよりも外径側に位置していて、NDフィルタホルダ111が中央開口100aを通る光束を遮ることがない。
図18に示すように、ズームレンズ鏡筒ZLが搭載されるカメラには、NDフィルタ110に関する操作手段として、NDフィルタ挿入スイッチ74とNDフィルタ離脱スイッチ75が設けられている。NDフィルタ110が離脱位置にあるときにNDフィルタ挿入スイッチ74が操作されると、NDフィルタ挿入スイッチ74から制御回路70に挿入駆動指示信号が入力する。NDフィルタ110が挿入位置にあるときにNDフィルタ離脱スイッチ75が操作されると、NDフィルタ離脱スイッチ75から制御回路70に離脱駆動指示信号が入力する。
小径環状部84の内部には、前方から順に、シャッタ(シャッタ羽根)Sと、可変開口絞り(虹彩絞り)120と、絞り駆動環130とが内蔵されている。シャッタSは、シャッタアクチュエータ82によって駆動されることで、シャッタユニット81の中央開口85から内方に突出して、ベース部材100の中央開口100aを開閉する。可変開口絞り120は、絞り駆動環130によって駆動されることで、シャッタユニット81の中央開口85から内方に突出してその開口径を可変して、撮影光学系を通過する光量(光束の太さ)を調整する。
本実施形態のレンズ鏡筒ZLは、撮影光学系による撮影効果を変化させるための光学要素として、偏光フィルタ43とNDフィルタ110を備えている。偏光フィルタ43とNDフィルタ110は、これまで詳細に説明したように、偏光フィルタユニット40とシャッタユニット81によって、それぞれ異なる移動軌跡で、撮影光学系の光路上への挿入位置と、同光路上から離脱した離脱位置との間で移動する。
図19と図20は、偏光フィルタ43が挿入位置にありNDフィルタ110が離脱位置にある状態を示している。この状態では、フィルタ枠42のフィルタ開口42dの中心が光軸Oと一致し、偏光フィルタ43がベース部材100の中央開口100aの前方の光路上に挿入されている。一方、NDフィルタホルダ111がシャッタユニット81のNDフィルタ挿入室83a内に進入しており、NDフィルタ挿入室83aの内壁面に沿って外径側縁部111cが位置し、NDフィルタホルダ111のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制されている。NDフィルタホルダ111の内径側縁部111dはベース部材100の中央開口100aよりも外径側に位置していて、NDフィルタホルダ111が中央開口100aを通る光束を遮ることがない。
図21と図22は、NDフィルタ110が挿入位置にあり偏光フィルタ43が離脱位置にある状態を示している。この状態では、NDフィルタホルダ111のフィルタ開口111bの中心が光軸Oと一致し、NDフィルタ110がベース部材100の中央開口100aの後方の光路上に挿入されている。一方、フィルタ枠42がベース部材100の収納壁部100d内に進入した完全離脱位置にあり、収納壁部100dの内壁面に沿って外径側縁部42eが位置し、フィルタ枠42のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制されている。フィルタ枠42の内径側縁部42fはベース部材100の中央開口100aよりも外径側に位置していて、フィルタ枠42が中央開口100aを通る光束を遮ることがない。
なお、図示は省略しているが、NDフィルタ110と偏光フィルタ43をともに挿入位置に位置させて、NDフィルタ110による減光効果と偏光フィルタ43による偏光効果を同時に得ることも可能である。
図23と図24は、NDフィルタ110と偏光フィルタ43がともに離脱位置にある状態を示している。この状態では、NDフィルタホルダ111がシャッタユニット81のNDフィルタ挿入室83a内に進入しており、NDフィルタ挿入室83aの内壁面に沿って外径側縁部111cが位置し、NDフィルタホルダ111のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制されている。また、フィルタ枠42がベース部材100の収納壁部100d内に進入した完全離脱位置にあり、収納壁部100dの内壁面に沿って外径側縁部42eが位置し、フィルタ枠42のそれ以上の離脱位置方向(外径方向)への回動が規制されている。さらに、NDフィルタホルダ111の内径側縁部111dとフィルタ枠42の内径側縁部42fは、ベース部材100の中央開口100aよりも外径側に位置していて、NDフィルタホルダ111とフィルタ枠42が中央開口100aを通る光束を遮ることがない。
NDフィルタ110と偏光フィルタ43は、両者の離脱位置においてベース部材100を正面視したとき、ベース部材100の収納壁部100dの内部に、光軸Oと平行な方向の前後に重なって位置している。収納壁部100dは中央開口100aを通る光軸から離れる方向に突出して形成したものであるので、収納壁部100dを利用してNDフィルタ110を退避収納させることができる結果、NDフィルタ110の径を大きく設定することが可能になる。図22に示すように、本実施形態では、NDフィルタ110の径をベース部材100の中央開口100aに近い値にまで大きく設定することに成功している。もちろん、収納壁部100d(NDフィルタ挿入室83a)の外径方向への突出量を大きくする、あるいは中央開口100aの径を小さくするといった工夫を施すことにより、ベース部材100の中央開口100aの全体をNDフィルタ110で覆うことも可能である。
図25は、本願発明の優位性を実証するための比較対象例として、ベース部材100の収納壁部100dを利用することなくNDフィルタ110を退避収納した場合を示している。シャッタユニット81は、ベース部材100の収納壁部100dより小径の小径環状部86を有しており、この小径環状部86の内部に、前方から順に、NDフィルタ110(NDフィルタホルダ111)と、シャッタ(シャッタ羽根)Sと、可変開口絞り(虹彩絞り)120と、絞り駆動環130とが内蔵されている。この比較対象例では、NDフィルタ110(NDフィルタホルダ111)の退避収納スペースが小径環状部86の内部に制限されるため、NDフィルタホルダ111が中央開口100aを通る光束を遮ってケラレが発生するのを防止するべく、NDフィルタ110の径を小さく設定せざるを得ない。
以上の実施形態では、偏光フィルタ挿入スイッチ71、偏光フィルタ離脱スイッチ72及び偏光フィルタ回転スイッチ73の操作によって偏光フィルタ43の挿脱動作と光路上での回転動作を行わせているが、これ以外の操作手段によって偏光フィルタ43の動作を行わせてもよい。あるいは、手動操作によらず自動制御で偏光フィルタ43を動作させるタイプの光学機器にも適用が可能である。
以上の実施形態では、NDフィルタ挿入スイッチ74及びNDフィルタ離脱スイッチ75の操作によってNDフィルタ110の挿脱動作を行わせているが、これ以外の操作手段によってNDフィルタ110の挿脱動作を行わせてもよい。あるいは、手動操作によらず自動制御でNDフィルタ110を挿脱動作させるタイプの光学機器にも適用が可能である。
以上の実施形態では、回転光学要素として偏光フィルタ43を適用しているが、偏光フィルタ以外にもクロスフィルタや多面効果フィルタなど、光路上に挿入された状態で回転することにより光学的効果を生ずる種々の回転光学要素に対して本発明は適用可能である。