JP2014083667A - 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 - Google Patents
切削インサートおよび刃先交換式切削工具 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2014083667A JP2014083667A JP2012236785A JP2012236785A JP2014083667A JP 2014083667 A JP2014083667 A JP 2014083667A JP 2012236785 A JP2012236785 A JP 2012236785A JP 2012236785 A JP2012236785 A JP 2012236785A JP 2014083667 A JP2014083667 A JP 2014083667A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- insert
- cutting edge
- polygonal
- parallelogram
- cutting
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】インサート本体の強度を損わずに取付安定性を確保する。
【解決手段】第1、第2の多角形面2と複数の側面4を有するインサート本体1の第1の側面と第1の多角形面2の交差稜線部に切刃が形成され、第2の多角形面2は着座面とされ、第2の多角形面2には切刃が延びる方向に並んで第1、第2の仮想平面P1、P2上に位置する平面状の第1、第2の当接面7A、7Bが形成され、第1、第2の仮想平面P1、P2は仮想基準線Cに直交する仮想基準平面Qに平行な交差稜線Lで互いに交差して断面V字状または逆V字状をなし、交差稜線Lは第1の多角形面2に対向する方向から見て第1の側面から反対の第2の側面に向けて延び、第2の側面はインサート取付座13の被当接部に当接する当接部を備え、第1、第2の仮想平面P1、P2はインサート仮想基準平面Qに対する傾斜角θ1、θ2が異なる。
【選択図】図15
【解決手段】第1、第2の多角形面2と複数の側面4を有するインサート本体1の第1の側面と第1の多角形面2の交差稜線部に切刃が形成され、第2の多角形面2は着座面とされ、第2の多角形面2には切刃が延びる方向に並んで第1、第2の仮想平面P1、P2上に位置する平面状の第1、第2の当接面7A、7Bが形成され、第1、第2の仮想平面P1、P2は仮想基準線Cに直交する仮想基準平面Qに平行な交差稜線Lで互いに交差して断面V字状または逆V字状をなし、交差稜線Lは第1の多角形面2に対向する方向から見て第1の側面から反対の第2の側面に向けて延び、第2の側面はインサート取付座13の被当接部に当接する当接部を備え、第1、第2の仮想平面P1、P2はインサート仮想基準平面Qに対する傾斜角θ1、θ2が異なる。
【選択図】図15
Description
本発明は、切削インサートのクランプ機構に係わり、特に転削加工に用いられる刃先交換式切削工具に着脱可能に取り付けられる切削インサート、および、その切削インサートを取り付けた刃先交換式切削工具に関する。
転削加工用の刃先交換式切削工具に取り付けられる切削インサート、および上記切削インサートを取り付けた刃先交換式切削工具としては、例えば特許文献1(国際公開第2011/122676号パンフレット)に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の切削インサートは、一対の多角形面と、その周囲に配置される複数の側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、上記多角形面の辺稜部には切刃が形成され、上記インサート本体は、上記一対の多角形面に関して、表裏反転対称形状とされ、これら一対の多角形面は互いに、一方の多角形面がすくい面とされたときに他方の多角形面が上記インサート取付座の底面に着座する着座面とされ、これら一対の多角形面には、それぞれ一対の平面である当接面が形成され、上記一対の当接面は、上記一方の多角形面が上記着座面とされたときに、上記インサート取付座の上記底面に形成された一対の被当接面にそれぞれ当接可能とされ、上記一対の当接面を延長した2つの仮想延長面は、交差稜線で断面V字状または断面逆V字状に交差し、上記インサート本体の上記側面のうち、上記一対の当接面の上記仮想延長面の上記交差稜線が延びる二方向のうちの一方向を向く側面には、上記インサート取付座の底面に対して立ち上がる1つの壁面に形成された被当接部に当接可能な当接部が形成されているものである。
このような特許文献1に記載の切削インサートまたは刃先交換式切削工具において、インサート本体は、上記一対の当接面の仮想延長面の交差稜線に沿う方向には、被当接面に沿って移動が許容されるものの、それ以外の方向には移動が拘束される。そして、この一対の当接面の仮想延長面の交差稜線が延びる方向のうち一方向を向く、1つの多角形面に対してインサート本体の1つの側面には、インサート取付座の1つの壁面に形成された被当接部に当接可能な当接部が形成されているので、インサート本体をこの一方向に押圧してインサート取付座に取り付けることにより、当接部が被当接部に当接してインサート本体は上記交差稜線方向にも拘束され、インサート取付座に固定される。すなわち、インサート本体は、インサート取付座底面の被当接面と1つのインサート取付座壁面の被当接部とにより固定され、これ以外の壁面を要することがない。
従って、この被当接部が設けられる壁面をインサート取付座底面の工具本体内周側に配置した場合には、工具本体後端側の壁面を小さくしたり、この壁面の後端側における工具本体の肉厚を小さくしたり、場合によっては壁面そのものを不要としたりすることができる。このため、インサート取付座の工具本体後端側に大きなチップポケットを形成したり、軸線方向に近接させて次のインサート取付座を形成することにより多くの切削インサートを取り付けたりすることが可能となる。
一方、被当接部が設けられる壁面をインサート取付座の工具本体後端側に配置した場合には、逆に工具本体内周側の壁面を小さくしたり、この壁面の内周側の工具本体の肉厚を小さくしたり、場合によっては壁面そのものを不要としたりすることができる。従って、インサート取付座の内周側のチップポケットを大きくしたり、極小径の刃先交換式切削工具であっても周方向に複数のインサート取付座を設けて、より多くの切削インサートを取り付けたりすることができる。
ところで、このような切削インサートは、上記一対の多角形面間を貫通するようにインサート本体に形成された取付孔にクランプネジを挿通してインサート取付座底面のネジ孔にねじ込むことにより、いわゆるスクリューオン方式で刃先交換式切削工具のインサート取付座に取り付けられることが多い。そして、特許文献1に記載の切削インサートは、インサート本体が表裏反転対称形状であるとともに、上記取付孔の中心を通る中心線に関して180°回転対称形状でもあるので、この中心線に直交するインサート本体の仮想の基準平面に対して一対の仮想延長面がなす交差角は互いに等しくされる。
ところが、特許文献1に記載の切削インサートでは、この仮想基準平面に対して一対の仮想延長面がなす交差角を大きく確保することは困難となる。すなわち、一対の仮想延長面が断面V字状に交差していて、一対の当接面が一対の仮想延長面の交差稜線に向かうに従いインサート本体の厚さ方向内側に凹むように形成されている場合には、これら一対の仮想延長面の交差角を大きくすると、インサート本体の肉厚が薄くなって強度が損なわれるおそれがある。
一方、逆に、一対の仮想延長面が断面逆V字状に交差していて、一対の当接面が一対の仮想延長面の交差稜線に向かうに従いインサート本体の厚さ方向外側に凸となるように形成されている場合には、これら一対の仮想延長面の交差角を大きくすると、すくい面とされた多角形面の一対の当接面が切屑の流出方向に対して急勾配で立ち上がるブレーカ壁面のようになり、切屑の擦過による摩耗が生じ易くなる。従って、この多角形面を着座面としてインサート本体をインサート取付座に取り付け直したときに、安定性が損なわれるおそれがある。また、インサート本体の肉厚が薄くなったり切屑擦過によって摩耗が生じたりするのを避けるために当接面を小さくすると、インサート本体を支持するのに十分な当接面積を確保することができなくなる。
このため、上述のようにインサート本体の仮想基準平面に対して一対の仮想延長面がなす交差角を大きく確保することは困難となって、一対の仮想延長面は比較的小さな交差角で仮想基準平面に交差するようにせざるを得ない。しかしながら、そのような切削インサートでは、仮想延長面が平坦に近いV字状または逆V字状に交差することになって、上述のようにスクリューオン方式でインサート本体をインサート取付座に取り付ける場合、取付孔に挿通したクランプネジを締め込んでインサート本体をインサート取付座底面に押圧した際に、インサート本体が上記中心線回りに回転するように僅かにずれ動いてしまい、やはり取り付けが不安定となるおそれがある。そして、このような状態で切削加工を行うとインサート本体にがたつきが生じ、加工精度の劣化を招くことになる。
本発明は、このような背景の下になされたもので、刃先交換式切削工具のインサート取付座の壁面に複数の支持面を要することがなく、これによりインサート取付座の後方側や内周側に大きなチップポケットを形成して切屑排出性の向上を図るとともに、工具本体の回転軸線方向や周方向により多くの切削インサートを取り付けて加工効率も向上させることが可能であるのは勿論、インサート本体の強度を損なうことなくインサート取付座への取付安定性を確保することが可能な切削インサートを提供することを目的としている。また、本発明は、上記切削インサートを取り付けた刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
本発明の一態様の切削インサートは、刃先交換式切削工具のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、以下のいずれかの構成を備える。
(1)刃先交換式切削工具のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、
第1の多角形面と、この第1の多角形面とは反対側を向く第2の多角形面と、これら第1、第2の多角形面に周囲に配置される複数の側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、
上記複数の側面のうち少なくとも1つである第1の側面と上記第1の多角形面との交差稜線部には、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
上記第2の多角形面は、上記インサート取付座の底面に着座する着座面とされ、
上記インサート本体には、インサート仮想基準線を中心として上記第1、第2の多角形面の間を貫通する取付孔が形成され、
上記第2の多角形面には、上記切刃が延びる方向に並ぶように第1、第2の当接面が形成され、
これら第1、第2の当接面は、それぞれ第1、第2の仮想平面の上に位置する平面状とされ、
上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準線に直交するインサート仮想基準平面に平行な交差稜線において互いに交差させられて、この交差稜線に直交する断面においてV字状または逆V字状をなし、
上記交差稜線は、上記第1の多角形面に対向する方向から見て、上記第1の側面から、この第1の側面とは反対側を向く上記複数の側面のうち他の少なくとも1つである第2の側面に向けて延びており、
上記第2の側面は、上記底面に対して立ち上がる上記インサート取付座の壁面に形成された被当接部に当接させられる当接部を備え、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準平面に対する傾斜角が異なる大きさとされている。
第1の多角形面と、この第1の多角形面とは反対側を向く第2の多角形面と、これら第1、第2の多角形面に周囲に配置される複数の側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、
上記複数の側面のうち少なくとも1つである第1の側面と上記第1の多角形面との交差稜線部には、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
上記第2の多角形面は、上記インサート取付座の底面に着座する着座面とされ、
上記インサート本体には、インサート仮想基準線を中心として上記第1、第2の多角形面の間を貫通する取付孔が形成され、
上記第2の多角形面には、上記切刃が延びる方向に並ぶように第1、第2の当接面が形成され、
これら第1、第2の当接面は、それぞれ第1、第2の仮想平面の上に位置する平面状とされ、
上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準線に直交するインサート仮想基準平面に平行な交差稜線において互いに交差させられて、この交差稜線に直交する断面においてV字状または逆V字状をなし、
上記交差稜線は、上記第1の多角形面に対向する方向から見て、上記第1の側面から、この第1の側面とは反対側を向く上記複数の側面のうち他の少なくとも1つである第2の側面に向けて延びており、
上記第2の側面は、上記底面に対して立ち上がる上記インサート取付座の壁面に形成された被当接部に当接させられる当接部を備え、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準平面に対する傾斜角が異なる大きさとされている。
(2)上記(1)において、上記第2の多角形面は四角形状面とされ、
上記第1、第2の当接面は、上記第2の多角形面において、上記取付孔の開口縁と上記第2の多角形面の4つの角部のうち少なくとも2つの角部との間に形成されている。
上記第1、第2の当接面は、上記第2の多角形面において、上記取付孔の開口縁と上記第2の多角形面の4つの角部のうち少なくとも2つの角部との間に形成されている。
(3)上記(1)または(2)において、上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成され、
上記第1の多角形面と上記第2の側面との交差稜線部にも、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成されるとともに、
上記第1の側面も上記インサート取付座の壁面に当接する当接部を備え、
上記第2の多角形面には、上記交差稜線が平行または一致させられた2つずつの上記第1、第2の当接面が形成されている。
上記第1の多角形面と上記第2の側面との交差稜線部にも、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成されるとともに、
上記第1の側面も上記インサート取付座の壁面に当接する当接部を備え、
上記第2の多角形面には、上記交差稜線が平行または一致させられた2つずつの上記第1、第2の当接面が形成されている。
(4)上記(3)において、上記インサート本体は、四角形板状をなして、上記第1、第2の側面と、これら第1、第2の側面に間に延びる第3、第4の側面とを備え、
上記切刃は主切刃とされるとともに、上記第1の多角形面と上記第3、第4の側面との交差稜線部には、上記第1の多角形面の周回り方向における上記主切刃の一端に連なる副切刃が形成され、
上記第1、第2の当接面は上記第3、第4の側面側を向くように形成されている。
上記切刃は主切刃とされるとともに、上記第1の多角形面と上記第3、第4の側面との交差稜線部には、上記第1の多角形面の周回り方向における上記主切刃の一端に連なる副切刃が形成され、
上記第1、第2の当接面は上記第3、第4の側面側を向くように形成されている。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つにおいて、上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面に関して表裏反転対称形状に形成され、
上記第2の多角形面と上記第1の側面との交差稜線部にも、上記第2の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
この第2の多角形面がすくい面とされたときには、上記第1の多角形面が上記着座面とされ、
上記第1の多角形面にも上記第1、第2の当接面が形成されている。
上記第2の多角形面と上記第1の側面との交差稜線部にも、上記第2の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
この第2の多角形面がすくい面とされたときには、上記第1の多角形面が上記着座面とされ、
上記第1の多角形面にも上記第1、第2の当接面が形成されている。
(6)上記(5)において、上記第1の側面は平行四辺形状面とされ、
上記切刃は、上記第1の側面がなす平行四辺形状面の鋭角角部に一端を有する主切刃とされ、
上記第1、第2の仮想平面は上記交差稜線に直交する断面においてV字状に交差し、
上記第1の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の一端が位置する角部に隣接して形成され、
上記第2の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の他端が位置する角部に隣接して形成され、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角が、上記第2の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角より大きくされている。
上記切刃は、上記第1の側面がなす平行四辺形状面の鋭角角部に一端を有する主切刃とされ、
上記第1、第2の仮想平面は上記交差稜線に直交する断面においてV字状に交差し、
上記第1の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の一端が位置する角部に隣接して形成され、
上記第2の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の他端が位置する角部に隣接して形成され、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角が、上記第2の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角より大きくされている。
また、本発明の一態様の刃先交換式切削工具は、以下の構成を備える。
(7)刃先交換式切削工具であって、
軸線回りに回転される工具本体と、
上記工具本体の外周に、着脱可能に取り付けられた、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサートとを具備し、
上記工具本体には、1または2以上の上記インサート取付座が、上記底面を工具回転方向に向けるとともに、上記1つの壁面を外周側または上記軸線方向先端側に向けて形成され、
上記インサート取付座の上記底面には、上記切削インサートの上記第1、第2の当接面と当接させられる第1、第2の被当接面がそれぞれ形成され、
上記第1、第2の被当接面を延長した第1、第2の仮想延長面は、上記第1、第2の仮想平面と相補的な断面逆V字状または断面V字状に交差し、
上記インサート取付座の上記一つの壁面には、上記交差稜線が向かう位置に、上記切削インサートの当接部と当接する被当接部が形成されている。
(7)刃先交換式切削工具であって、
軸線回りに回転される工具本体と、
上記工具本体の外周に、着脱可能に取り付けられた、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサートとを具備し、
上記工具本体には、1または2以上の上記インサート取付座が、上記底面を工具回転方向に向けるとともに、上記1つの壁面を外周側または上記軸線方向先端側に向けて形成され、
上記インサート取付座の上記底面には、上記切削インサートの上記第1、第2の当接面と当接させられる第1、第2の被当接面がそれぞれ形成され、
上記第1、第2の被当接面を延長した第1、第2の仮想延長面は、上記第1、第2の仮想平面と相補的な断面逆V字状または断面V字状に交差し、
上記インサート取付座の上記一つの壁面には、上記交差稜線が向かう位置に、上記切削インサートの当接部と当接する被当接部が形成されている。
上記構成の切削インサートまたは刃先交換式切削工具においては、上述のようにインサート本体の第2の多角形面が着座面とされ、この着座面にはインサート取付座の底面の第1、第2の被当接面に当接する第1、第2の当接面が形成されている。これら第1、第2の当接面が位置する第1、第2の仮想平面は、その交差稜線において断面V字状または逆V字状に交差し、この交差稜線はインサート仮想基準線に直交するインサート仮想基準平面に平行されているので、インサート本体はこの交差稜線が延びる方向への移動のみが許容され、他の方向への移動は拘束される。
さらに、上記交差稜線は、第1の多角形面に対向する方向から見て、第1の多角形面との交差稜線部に切刃が形成された第1の側面から、この第1の側面とは反対側を向く第2の側面に向けて延びており、この第2の側面は、インサート取付座の底面に対して立ち上がる壁面に形成された被当接部に当接させられる当接部を備えているので、この被当接部に当接部を押し付けるようにしてインサート本体を取り付けることにより、インサート本体は上記交差稜線の方向にも移動が拘束されてインサート取付座に固定される。
すなわち、特許文献1に記載の切削インサートまたは刃先交換式切削工具と同様に、上記被当接部が形成された壁面以外の壁面をインサート取付座に要することがないので、この壁面がインサート取付座の工具本体内周側に位置している場合には、インサート取付座の後方に大きなチップポケットを形成したり、軸線方向に近接させて多くの切削インサート取り付けたりすることができる。また、上記壁面がインサート取付座の工具本体後端側に位置している場合には、インサート取付座の内周側に大きなチップポケットを形成したり、小径の刃先交換式転削工具であっても周方向に多くの切削インサートを取り付けたりすることができる。
そして、上記交差稜線に直交する断面において、上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準平面に対する傾斜角が異なる大きさとされている。すなわち、第1、第2の当接面のうち1つの当接面は、この当接面が位置する仮想平面と交差する他の1つの仮想平面上の他の1つの当接面よりもインサート仮想基準平面に対して急勾配で傾斜することになる。
従って、上記取付孔にクランプネジを挿通してスクリューオン方式によりインサート本体を固定する場合でも、この1つの当接面が対応する被当接面と当接することにより、取付孔の中心となるインサート仮想基準線回りにインサート本体が回転するようにずれ動くのを防ぐことができる。このため、上記第1、第2の当接面をインサート取付座底面の第1、第2の被当接面に確実に当接させてインサート本体を安定的に取り付けることができ、切削加工時のインサート本体のがたつきを防いで高精度の切削加工を行うことが可能となる。
その一方で、こうしてインサート仮想基準平面に対する傾斜角が大きくされた1つの仮想平面は、上記交差稜線において上記1つの仮想平面よりも相対的にインサート仮想基準平面よりも緩勾配となる他の1つの仮想平面と交差している。このため、これらの仮想平面がなす断面V字または逆V字の上に形成される第1、第2の当接面が必要以上に深くなりすぎたり、逆に突出しすぎたりすることはない。
しかも、こうして他の1つの仮想平面は緩勾配であるので、この仮想平面上の当接面を大きくして被当接面との間に十分な当接面積を確保することができる。このため、上記構成の切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、インサート本体の肉厚が薄くなって強度が損なわれたり、急勾配となる仮想平面上の当接面が切屑擦過によって摩耗して、インサート本体を表裏反転してインサート取付座に取り付け直したときの着座安定性が損なわれたりするのを防ぐことができ、インサート本体を確実に支持して円滑な切削加工を行うことが可能となる。
また、上記第2の多角形面を四角形状面として、上記第1、第2の当接面を、上記第2の多角形面において、上記取付孔の開口縁と上記第2の多角形面の4つの角部のうち少なくとも2つの角部との間に形成することにより、この取付孔の中心となる上記インサート仮想基準線から離れた位置で第1、第2の当接面を第1、第2の被当接面に当接させてインサート本体を支持することができるので、一層安定して切削インサートをインサート取付座に固定することが可能となる。
さらに、上記インサート本体を、上記第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成し、上記第1の多角形面と上記第2の側面との交差稜線部にも、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃を形成するとともに、上記第1の側面にも上記インサート取付座の壁面に当接する当接部を備え、上記第2の多角形面には、上記交差稜線が平行または一致させられた2つずつの上記第1、第2の当接面を形成することにより、インサート本体を第1、第2の多角形面の周回り方向すなわちインサート仮想基準線回りに180°回転させて取り付け直すことで、第1の多角形面と第1、第2の側面との交差稜線部に形成された2つの切刃を使用することができる。そして、2つずつの第1、第2の当接面の一方が、それぞれ他方に対して急勾配で傾斜することになるので、スクリューオン方式で切削インサートをクランプする際に、さらに確実にインサート本体の回転を防止することができる。
また、こうしてインサート本体が第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成されて、第1の多角形面と第2の側面との交差稜線部にも切刃が形成されているときに、上記インサート本体が四角形板状をなして、上記第1、第2の側面と、これら第1、第2の側面に間に延びる第3、第4の側面とを備え、すなわち上述のように第2の多角形面が四角形状をなすとともに、第1の多角形面も四角形状面とされている場合、第1の多角形面と第1、第2の側面との交差稜線部に形成される2つの上記切刃は主切刃とするとともに、この第1の多角形面と上記第3、第4の側面との交差稜線部には、上記第1の多角形面の周回り方向における上記主切刃の一端に連なる副切刃を形成すれば、例えば切削インサートをエンドミルのような刃先交換式転削工具に取り付けたときに、主切刃によって形成された加工面をこの副切刃によって仕上げ加工することができる。
そして、この場合には、第1、第2の当接面を上記第3、第4の側面側を向くように形成することにより、2つずつの上記第1、第2の当接面のうち急勾配で傾斜する第1、第2の当接面の一方は、仕上げ加工を行う副切刃に切削負荷が作用する方向、すなわち上記刃先交換式切削工具の軸線方向後端側へのスラスト荷重が作用する方向に対向して、インサート取付座底面の第1、第2の被当接部のいずれか1つに当接させられることになる。このため、このようなスラスト荷重に対してもインサート本体を安定してインサート取付座に固定することが可能となる。
一方、上記インサート本体を、上記第1、第2の多角形面に関して表裏反転対称形状に形成して、上記第2の多角形面と上記第1の側面との交差稜線部にも、上記第2の多角形面にすくい面を有する切刃を形成し、この第2の多角形面がすくい面とされたときには、上記第1の多角形面が上記着座面とされるようにして、上記第1の多角形面にも上記第1、第2の当接面を形成すれば、上述のようにインサート本体を表裏反転してインサート取付座に取り付け直すことにより、第1、第2の多角形面と第1の側面との交差稜線部に形成された2つの切刃を使用することができる。従って、さらに上述のようにインサート本体が第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成されていれば、合計4つの切刃を使用することが可能となって、経済的である。
さらに、このようにインサート本体が表裏反転対称形状である場合には、上記第1の側面を平行四辺形状面として、上記切刃を、この第1の側面がなす平行四辺形状面の鋭角角部に一端を有する主切刃とすることにより、この主切刃は上記一端から他端に向かうに従いインサート仮想基準線の方向に漸次後退するように傾斜することになる。このため、表裏の第1、第2の多角形面のいずれのすくい面を使用する場合でも、この主切刃の一端を工具本体先端側に向けて切削インサートを上記エンドミルのような刃先交換式転削工具に取り付けることにより、主切刃の軸方向すくい角を正角側に大きくすることができ、切削抵抗の低減を図ることができる。これは、インサート本体が第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成されていて、すなわち第2の側面も平行四辺形状面とされている場合も同様である。
そして、こうして第1の側面が平行四辺形状面とされている場合には、上記第1、第2の仮想平面を上記交差稜線に直交する断面においてV字状に交差するようにして、上記第1の当接面を、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の一端が位置する角部に隣接して形成し、また上記第2の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の他端が位置する角部に隣接して形成して、上記交差稜線に直交する断面において、上記第1の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角が、上記第2の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角より大きくなるようにすることにより、上述のように傾斜する主切刃に対して、その一端に隣接する第1の当接面の傾斜を主切刃の傾斜に合わせ、しかも傾斜角を大きくすることができるので、主切刃によって生成された切屑が第1の当接面に干渉するのを防いで切屑排出性の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明の切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、インサート取付座の被当接部が形成される壁面を1つとして、チップポケットの拡大による切屑排出性の向上や、工具本体の軸線方向または周方向に取付可能なインサート数の増加による切削効率の向上を図ることができる上、当接面の面積を確保しつつ、スクリューオン方式クランプによってインサート本体がずれ動くのを防いで、切削インサートの取付安定性の向上も図ることができ、高精度の切削加工を行うことが可能となる。
図1ないし図4は、本発明の切削インサートの一実施形態の外観を示し、図5ないし図9、および図14はこの実施形態の切削インサートを取り付けた本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態である刃先交換式転削工具、具体的には刃先交換式エンドミルの外観を示す。さらに、図10ないし図13はこの一実施形態の刃先交換式切削工具において切削インサートが取り外された状態の工具本体の外観を示す。また、図15ないし図18は、それぞれ図14および図8におけるAA断面図、BB断面図を示すものである。
本実施形態の切削インサートはインサート本体1を有する。インサート本体1は、超硬合金、サーメット、表面被覆超硬合金、および表面被覆サーメット等から選択される硬質材料により、多角形の板状、詳しくは多角形面が四角形状をなす板状、さらに詳しくは多角形面が概略平行四辺形状をなす板状に形成され、周回り方向に各一対の鋭角角部Aと鈍角角部Bとが交互に配置される一対の平行四辺形面(第1、第2の多角形面)2と、それらの辺稜部をつなぐ一対の長側面(第1、第2の側面)3および一対の短側面(第3、第4の側面)4とを備えている。
一方の平行四辺形面2が第1の多角形面としてすくい面とされたときに、他方の平行四辺形面2が第2の多角形面として後述するインサート取付座の底面に着座する着座面とされ、他方の平行四辺形面2がすくい面とされたときには、一方の平行四辺形面2が着座面とされる。なお、この例のインサート本体1は平行四辺形状の多角形面を有するが、多角形面は長方形であってもよい。その場合には、一方の対角線の両端部を平行四辺形面2の鈍角角部、他方の対角線の両端部を鋭角角部と見なせばよい。
インサート本体1には取付孔5が形成されている。この取付孔5は、上記一対の平行四辺形面2の中心同士を結ぶ中心線であるインサート仮想基準線Cを中心とした断面円形とされ、このインサート仮想基準線Cの方向(インサート本体1の厚さ方向)にインサート本体1を貫通している。取付孔5の中央部には、図15や図16に示すように、一段縮径する環状の縮径部5Aが形成されている。この縮径部5Aは、インサート仮想基準線C方向中央部に向かう部分が、インサート仮想基準線Cに沿った断面において凸曲線状をなしている。
インサート本体1は、インサート仮想基準線C方向におけるインサート本体1の中心でこのインサート仮想基準線Cと直交して長側面3に略平行に延びる対称線(図示略)と、この対称線とインサート仮想基準線Cとに直交して長側面3の中心を通る対称線(図史略)とに関して、それぞれ180°回転対称形状に形成されている。すなわち、インサート本体1は、一対の平行四辺形面2に関して表裏反転対称形状とされている。
また、インサート本体1は、一対の平行四辺形面2の周回り方向にも180°回転対称形状とされ、すなわち上記インサート仮想基準線Cに関して180°回転対称形状に形成されている。従って、図2に示すように一方の平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視においては、この一方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の位置には他方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bが位置し、また一方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部B側の位置には他方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部Aが位置することになる。
一方の平行四辺形面2の第1の側面との交差稜線部である一方の長辺稜部(第1の辺稜部)には、本実施形態における切刃としての主切刃(第1の主切刃)6Aが形成され、他方の平行四辺形面2の第1の側面との交差稜線部である一方の長辺稜部(第2の辺稜部)にも、本実施形態における切刃としての主切刃(第2の主切刃)6Aが形成されている。また、他方の平行四辺形面2の第2の側面との交差稜線部である他方の長辺稜部(第1の辺稜部)にも、本実施形態における切刃としての主切刃(第1の主切刃)6Aが形成され、一方の平行四辺形面2の第2の側面との交差稜線部である他方の長辺稜部(第2の辺稜部)にも、本実施形態における切刃としての主切刃(第2の主切刃)6Aが形成されている。インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視において図2に示すように主切刃6Aは略直線状とされている。
また、一方の平行四辺形面2の第3の側面との交差稜線部である一方の短辺稜部の鋭角角部A(第1の角部)側には、副切刃6Bが形成され、一方の平行四辺形面2の第4の側面との交差稜線部である他方の短辺稜部の鋭角角部A(第1の角部)側にも、副切刃6Bが形成されている。さらに、他方の平行四辺形面2の第3の側面との交差稜線部である一方の短辺稜部の鋭角角部A(第1の角部)側にも、副切刃6Bが形成され、他方の平行四辺形面2の第4の側面との交差稜線部である他方の短辺稜部の鋭角角部A(第1の角部)側にも、副切刃6Bが形成されている。インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で、副切刃6Bは主切刃6Aに対して僅かに鈍角に交差する方向に延びる直線状とされている。
さらにまた、長側面3と短側面4との交差稜線部は全長に亙って断面円弧状に面取りされており、平行四辺形面2の辺稜部のうち鋭角角部Aには、上記断面円弧状に面取りされた部分に、コーナ刃6Cが形成されている。コーナ刃6Cは、インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で略1/4円弧状をなし、主切刃6Aと副切刃6Bとに接するように連なっている。また、平行四辺形面2の鈍角角部Bも円弧状に面取りされている。
主切刃6Aは、長側面3に対向する側面視においては図3に示すように、コーナ刃6C(鋭角角部A)に連なる一端から離間して鈍角角部B側の他端に向かうに従い上記インサート仮想基準線C方向に漸次後退するように、すなわち主切刃6Aが辺稜部に形成された平行四辺形面2とは反対側の平行四辺形面2側に向かうように、略一定の傾斜角で略直線状に傾斜させられている。従って、図3に示すように、長側面3も略平行四辺形状をなしていて、その長手方向(図3において上下方向)に向けてインサート仮想基準線C方向に傾斜している。さらに、この長側面3に対向する側面視において、1つの平行四辺形面2に形成される一対の主切刃6Aは、X字状に交差するように配設される。
また、副切刃6Bも、短側面4に対向する正面視において図4に示すように、コーナ刃6C(鋭角角部A)に連なる一端から離間するに従い上記インサート仮想基準線C方向に漸次後退して該副切刃6Bが形成された平行四辺形面2とは反対側の平行四辺形面2に向かうように、略一定の傾斜角で略直線状に傾斜させられている。さらに、コーナ刃6Cは側面視においては、上記1/4円弧を略二等分する位置に、インサート仮想基準線C方向に最も突出する突端を有して主切刃6Aと副切刃6Bとに接するように連なる凸曲線状とされている。
なお、平行四辺形面2と短側面4との交差稜線部のうち副切刃6Bから平行四辺形面2の鈍角角部Bに向かう部分は、平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で図2に示すように、副切刃6Bと鈍角に交差して副切刃6Bから離間するに従い平行四辺形面2の内側に向かうように直線状に延び、後述するランピング加工の際に切削に使用されるランピング刃6Dとされる。このランピング刃6Dは、短側面4に対向する正面視においても図4に示すように副切刃6Bに鈍角に交差して僅かに折れ曲がる直線状とされ、副切刃6Bから離間するに従いインサート仮想基準線C方向に後退するように傾斜している。さらに、このランピング刃6Dと鈍角角部Bとの間の部分は、平面視ではランピング刃6Dから平行四辺形面2の外側に折れ曲がるようにして平行四辺形面2の鈍角角部Bに形成された円弧状の面取りに接し、正面視でもランピング刃6Dからインサート仮想基準線Cに垂直な方向に折れ曲がって鈍角角部Bに連なるようにされている。
また、一対の平行四辺形面2において、主切刃6A、副切刃6B、コーナ刃6C、およびランピング刃6Dの内側には、ポジすくい面2Aが形成されている。ポジすくい面2Aは、平行四辺形面2の内方に向かうに従いインサート仮想基準線C方向に漸次後退するように形成されている。本実施形態では、このポジすくい面2Aは、上記ランピング刃6Dと鈍角角部Bとの間の部分を除いて平行四辺形面2の全周に亙って略一定の幅で形成されている。インサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見て副切刃6Bおよびコーナ刃6Cに直交する断面においては、インサート仮想基準線Cに垂直な方向に対するポジすくい面2Aの傾斜角は略一定とされている。
一方、インサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視において主切刃6Aに直交する断面では、このポジすくい面2Aのインサート仮想基準線Cに垂直な方向に対する傾斜角は、主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角角部A)から離間するに従い漸次小さくなるようにされている。すなわち、このポジすくい面2Aは、主切刃6Aに対しては鋭角角部A側の一端から鈍角角部B側の他端に向かうに従いすくい角が漸次小さくなるようにされた捩れ面状とされている。
そして、第1、第2の多角形面である一対の平行四辺形面2には、第1、第2の当接面7A、7Bが、主切刃6Aが延びる方向に並ぶように形成されている。これら第1、第2の当接面7A、7Bは、後述する刃先交換式エンドミル(刃先交換式切削工具)のインサート取付座の底面に形成された第1、第2の被当接面に当接させられてインサート本体1を支持するものである。
ここで、第1、第2の多角形面が四角形面状の平行四辺形面2である本実施形態では、一方の平行四辺形面2がすくい面とされたときの着座面とされる他方の平行四辺形面2において、この他方の平行四辺形面2の4つの角部のうち、すくい面とされる一方の平行四辺形面2の1つの主切刃6Aが延びる方向に並ぶ2つの角部、すなわち他方の平行四辺形面2の1つの主切刃6Aに隣接する上記鋭角角部Aおよび鈍角角部Bと、この他方の平行四辺形面2に開口する取付孔5の開口縁との間に、それぞれ1つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成されている。第1の当接面7Aは主切刃6Aの一端側の鋭角角部Aと取付孔5開口縁との間に形成され、第2の当接面7Bは主切刃6Aの他端側の鈍角角部Bと取付孔5開口縁との間に形成されている。
また、インサート本体1は一対の平行四辺形面2の周回り方向に180°回転対称形状であるので、それぞれの平行四辺形面2において、一対の鋭角角部Aに隣接する位置には第1の当接面7Aが1つずつ形成され、また一対の鈍角角部Bに隣接する位置には第2の当接面7Bが1つずつ形成される。すなわち、1つの平行四辺形面2に2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成される。
さらに、インサート本体1は一対の平行四辺形面2に関して表裏反転対称形状でもあるので、一方の平行四辺形面2の2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bと他方の平行四辺形面2の2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bは、互いに表裏反転対称な位置にそれぞれ同形同大に形成される。また、一対の平行四辺形面2同士では、第1の当接面7Aの反対側に第2の当接面7Bが位置し、逆に第2の当接面7Bの反対側に第1の当接面7Aが位置する。
このうち、第1の当接面7Aは、本実施形態では鋭角角部Aのコーナ刃6Cと、このコーナ刃6Cに連なる主切刃6Aの一端側、副切刃6B、および該副切刃6Bに連なるランピング刃6Dのポジすくい面2Aの内側において、この鋭角角部Aと取付孔5の開口部との間に形成されている。また、第1の当接面7Aは、コーナ刃6Cおよび主切刃6Aの一端側に連なるポジすくい面2Aと取付孔5の開口部周縁からはインサート仮想基準線C方向に凹むとともに、副切刃6Bおよびランピング刃6Dに連なるポジすくい面2Aからは凸となるように形成され、インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する平面視において図2に示すように、主切刃6Aが延びる方向に長手方向を有する概略長円状をなし、ただし隣接する主切刃6Aと反対側は僅かに膨らむように凸曲している。
一方、第2の当接面7Bは、平行四辺形面2の鈍角角部Bに隣接して、この鈍角角部Bと取付孔5の開口縁との間に少なくとも一部が位置し、取付孔5の開口部周縁からはインサート仮想基準線C方向に凹むとともに、ランピング刃6Dと主切刃6Aの鈍角角部B側の他端に連なるポジすくい面2Aからは僅かに凸となるように形成されている。また、この第2の当接面7Bは、インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する平面視において図2に示すように、取付孔5の開口部周縁側が幅広で平行四辺形面2の外周側に向かうに従い漸次幅狭となる概略台形状をなしており、この平行四辺形面2の外周側で短側面4と交差していて、その交差稜線部が平行四辺形面2の辺稜部のうち上記ランピング刃6Dと鈍角角部Bとの間の部分とされる。なお、インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2対向する平面視において、この第2の当接面7Bは第1の当接面7Aよりも面積が大きくされている。
さらに、これら第1、第2の当接面7A、7Bは、図15ないし図18に示すようにそれぞれ第1、第2の仮想平面P1、P2上に位置する平面状とされている。1つの平行四辺形面2に形成される2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bのうち、それぞれ1つの主切刃6Aが延びる方向に並ぶ第1、第2の当接面7A、7Bは、図15および図16に示すように交差稜線Lにおいて互いに交差する第1、第2の仮想平面P1、P2上に形成させられており、これら第1、第2の仮想平面P1、P2は、本実施形態では交差稜線Lに直交する断面において交差稜線Lに向かうに従いインサート仮想基準線C方向にインサート本体1の内側に凹むV字状をなしている。
また、1つの平行四辺形面2に形成される2つずつの第1、第2の当接面7A、7B同士においては、それぞれの第1、第2の当接面7A、7Bが位置する第1、第2の仮想平面P1、P2の交差稜線Lは本実施形態では互いに平行に延びている。すなわち、1つの平行四辺形面2に2つずつ形成される第1、第2の仮想平面P1、P2の断面がなすV字は、上記交差稜線Lがずれて互いに重なり合うようにされている。ただし、これらの交差稜線Lは一致させられていてもよい。
さらに、これらの交差稜線Lは、インサート仮想基準線Cに直交するインサート仮想基準平面Qに対しても平行とされ、すくい面とされる一方の平行四辺形面2に対向する方向から見て一方の長側面(第1の側面)3から、この長側面3とは反対側を向く他方の長側面(第2の側面)3に向けて延びている。従って、第1、第2の当接面7A、7Bは短側面4側を向くように傾斜することになる。
そして、図15および図16に示すように、各交差稜線Lに直交する断面においてこの交差稜線Lに交差する第1、第2の仮想平面P1、P2が上記インサート仮想基準平面Qに対してなす傾斜角θ1、θ2は、異なる大きさとされている。本実施形態では、1つの主切刃6Aの延びる方向に並ぶ第1、第2の当接面7A、7Bのうち、この主切刃6Aの一端側の平行四辺形面2の鋭角角部Aに形成された第1の当接面7Aが位置する第1の仮想平面P1がインサート仮想基準平面Qに対してなす傾斜角θ1が例えば25°とされ、主切刃6A他端側の鈍角角部Bに形成された第2の当接面7Bが位置する第2の仮想平面P2がなす傾斜角θ2が例えば10°とされ、第1の仮想平面P1の傾斜角θ1が第2の仮想平面P2の傾斜角θ2よりも大きくされている。
一方、インサート本体1の上記長側面3と短側面4のうち、上記第1、第2の仮想平面P1、P2の交差稜線Lが延びる二方向のうちの一の方向を向く、1つの平行四辺形面(第2の多角形面)2に対して1つの側面(第2の側面)には当接部8が形成されており、この当接部8は、後述するインサート取付座の1つの壁面に形成された被当接部に当接可能とされている。本実施形態では、上述したように平行四辺形面2に対向する方向から見て交差稜線Lは一対の長側面3間に亙って延びており、従って当接部8はこの長側面3に形成される。
また、本実施形態ではインサート本体1が一対の平行四辺形面(第1、第2の多角形面)2の周回り方向に上記インサート仮想基準線Cに関して180°回転対称形状とされているので、上記交差稜線Lが延びる二方向のうちの他の方向を向く、1つの平行四辺形面2に対して他の1つの長側面(第1の側面)3にも、他の当接部8が形成され、この他の当接部8もインサート本体1をインサート仮想基準線C回りに180°回転させたときに上記被当接部に当接可能とされる。本実施形態では、交差稜線Lは、長側面3の中心を通る上記対称線Nと平行とされている。
なお、1つの平行四辺形面2に形成された2つの第1の当接面7Aが位置する第1の仮想平面P1同士の交差稜線と、2つの第2の当接面7Bが位置する第2の仮想平面P2同士の交差稜線は、ともにインサート仮想基準線Cに直交することになる。また、上述のように交差稜線Lが一致しているときには、これら第1の仮想平面P1同士の交差稜線と第2の仮想平面P2同士の交差稜線も交差稜線Lと一致して、すべての交差稜線がインサート仮想基準線Cに直交することになる。
さらに、上述のように当接部8が形成されるインサート本体1の長側面3には主切刃6Aの逃げ面(主逃げ面)が形成され、また短側面4には副切刃6Bの逃げ面(副逃げ面)が形成される。このうち、短側面4には、一対の平行四辺形面2間で互いに一方の平行四辺形面2の副切刃6Bから他方の平行四辺形面2側に向けて順に、第1副逃げ面4Aと、第2副逃げ面4Bと、ネガ面4Cとが形成されている。また、短側面4のランピング刃6Dに連なる部分にはランピング逃げ面4Dが形成されている。
副切刃6Bに連なる第1副逃げ面4Aはインサート中心線Cに平行とされ、第2副逃げ面4Bは同じく他方の平行四辺形面2側に向かうに従い漸次インサート本体1の内側に凹んで後退するように形成され、これら第1、第2副逃げ面4A、4Bの交差稜線部は短側面4に対向する側面視においてインサート中心線Cに略垂直な方向に延びている。また、ネガ面4Cは、第2副逃げ面4Bからインサート仮想基準線Cに略平行に延びて、他方の平行四辺形面2に形成された第2の当接面7Bに交差させられている。
さらに、ランピング逃げ面4Dは、このランピング逃げ面4Dが連なるランピング刃6Dから離間してインサート仮想基準線C方向に該ランピング刃6Dが形成された平行四辺形面2とは反対側の平行四辺形面2に向かうに従い、インサート本体1の内側に凹んで漸次後退するように傾斜させられている。また、本実施形態では、ランピング刃6Dに直交する断面においてランピング逃げ面4Dが後退する傾斜角が略一定となるようにされ、これに伴いインサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見たときのランピング刃6Dに直交する断面においても、ランピング逃げ面4Dは上記反対側の他方の平行四辺形面2に向かうに従いインサート本体1の内側に後退傾斜させられている。
さらにまた、ランピング逃げ面4Dと第2副逃げ面4Bとの交差稜線部は、短側面4に対向する側面視において図4に示すように、ランピング刃6Dと副切刃6Bとの交点から上記反対側の平行四辺形面2側に向かうに従いインサート中心線C側に向かうように傾斜しており、一対の平行四辺形面2両側のランピング逃げ面4Dと第2副逃げ面4Bとの交差稜線部同士は、同側面視において略一直線上をなすようにされている。なお、1つの短側面4に形成される一対のランピング逃げ面4D同士の間には、インサート本体1の内側に凹む凹曲面部4Eが形成され、この凹曲面部4Eは、短側面4に対向する側面視において、同じく1つの短側面4に形成される一対のネガ面4Cを結ぶように、ランピング逃げ面4Dと第2副逃げ面4Bとの交差稜線部に直交する方向に延びている。
一方、長側面3には、一対の平行四辺形面2からそれぞれインサート仮想基準線C方向の中央部に向けて順に、一対の平行四辺形面2の主切刃6Aにそれぞれ連なる一対の上述した主逃げ面3Aと、これらの主逃げ面3Aに連なる一対の凸曲面部3Bと、これらの凸曲面部3Bに連なって長側面3のインサート仮想基準線C方向中央部に位置する1つの凹曲面部3Cとが形成されている。短側面4に対向する側面視において、凸曲面部3Bはインサート本体1の外側に凸となる凸曲面状をなすように湾曲しており、凹曲面部3Cは逆にインサート本体1の内側に凹む凹曲面状に湾曲している。
そして、本実施形態における上記当接部8は、長側面3のうちでも上記凸曲面部3Bに形成されている。さらに、一方の平行四辺形面2がすくい面とされて、その長辺稜部に形成された一対の主切刃6Aのうち一方の主切刃6Aが切削に使用されるときには、1つの長側面3に形成された一対の凸曲面部3Bのうちでも、上記一方の平行四辺形面2においてこの一方の主切刃6Aとは反対側の他方の主切刃6Aに主逃げ面3Aを介して連なる凸曲面部3Bに形成された当接部8が、後述する被当接部に当接させられる。
また、長側面3に対向する側面視において図3に示すように、主逃げ面3Aのインサート仮想基準線C方向の幅は、該主逃げ面3Aが連なる主切刃6Aに沿ってこの主切刃6Aの鋭角角部Aから鈍角角部Bに向かうに従い漸次小さくなるとともに、一対の凸曲面部3Bのインサート仮想基準線C方向の幅は、各凸曲面部3Bが主逃げ面3Aを介して連なる側の主切刃6Aの鋭角角部Aから鈍角角部Bに向かうに従い漸次大きくなるようにされている。さらに、上記1つの凹曲面部3Cのインサート仮想基準線C方向の幅は一定とされている。
これら主逃げ面3A、凸曲面部3B、および凹曲面部3Cは全体として、長側面3と同様に長側面3の長手方向に向かうに従いインサート仮想基準線C方向に傾斜させられている。なお、凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径と凹曲面部3Cがなす湾曲の曲率半径は、主切刃6Aが延びる方向である長側面3の長手方向に向けてそれぞれ一定とされ、すなわちこれら凸曲面部3Bと凹曲面部3Cとは凸凹の円筒面状に形成されている。
これに対して、主逃げ面3Aは、インサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視に主切刃6Aに直交する断面においては、主切刃6Aから離間するに従いインサート本体1の外側に向けて僅かに突出するように傾斜して形成されている。ただし、同断面において主逃げ面3Aがインサート仮想基準線C方向に対してなす傾斜角は、主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角角部A)から離間するに従い漸次小さくなるようにされている。
すなわち、このようにインサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視における主切刃6Aに直交する断面において、インサート仮想基準線Cに平行で主切刃6Aを通る直線に対して主逃げ面3Aがなす角度は、主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角角部A)から鈍角角部B側に向かうに従い漸次小さくなるようにされていて、主逃げ面3Aは、主切刃6Aに対する逃げ角が鋭角角部Aから鈍角角部B側に向かうに従い正角側に漸次大きくなるようにされた捩れ面状とされている。従って、凸曲面部3Bは、本実施形態ではインサート仮想基準線C方向中央部に向けて主逃げ面3Aから一旦インサート本体1の外側に突出した後、内側に向かう凸曲面状とされる。
さらに、本実施形態では、インサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で図2に示すように、一対の平行四辺形面2がインサート仮想基準線C回りに僅かに回転させられて捩られるように形成されており、これによって主切刃6Aが一対の平行四辺形面2同士でずれて交差するようにされている。より詳しくは、同平面視で、一対の平行四辺形面2同士で互いに、一方の平行四辺形面2の鋭角角部A側の主切刃6Aから他方の平行四辺形面2の鈍角角部Bがインサート本体1の外側に僅かにはみ出すように、主切刃6Aが形成される長辺稜部が互いに交差させられている。
つまり、主切刃(第1の主切刃)6Aは、一方の平行四辺形面2に対向する方向から見て、平行四辺形面2の鈍角角部(第2の角部)Bが、他方の平行四辺形面2の主切刃(第2の主切刃)6Aよりも外側にはみ出るように、主切刃(第2の主切刃)6Aと交差している。一方、主切刃(第2の主切刃)6Aは、他方の平行四辺形面2に対向する方向から見て、平行四辺形面2の鈍角角部(第2の角部)Bが、一方の平行四辺形面2の主切刃(第1の主切刃)6Aよりも外側にはみ出るように、主切刃(第1の主切刃)6Aと交差している。
さらに、上記主逃げ面3A自体は、主切刃6Aに連なる凸円弧状をなす第1主逃げ面3aと、この第1主逃げ面3aのインサート仮想基準線C方向中央部側に連なる断面直線状の第2主逃げ面3bとから構成されている。本実施形態では、第1主逃げ面3aのインサート仮想基準線C方向の幅は略一定とされ、第2主逃げ面3bのインサート仮想基準線C方向の幅が鋭角角部Aから鈍角角部Bに向かうに従い漸次小さくなることにより、主逃げ面3A全体の上記幅が鋭角角部Aから鈍角角部Bに向けて小さくされている。
なお、主逃げ面3Aは、上述のような捩れ面であれば、工具本体11に取り付けた状態で次述する軸線Oに直交する断面において主逃げ面3A上のいずれの位置でも逃げ角βが一定となる、いわゆるエキセントリック(偏心)逃げ面であってもよい。また、主逃げ面3Aは、円板型砥石の外周面によって形成されるような断面凹曲線状をなす、いわゆるコンケーブ逃げ面であってもよく、さらに断面直線状をなす直線二番面であってもよい。
さらに、主逃げ面(第1の逃げ面)3Aは、インサート仮想基準線Cに沿って一方の平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で主切刃6Aに直交する断面において、主切刃6Aから離間するに従いインサート本体1の内側に向かうように傾斜し、ただしインサート仮想基準線Cに平行な直線に対する傾斜角(逃げ角)が主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角角部A)から離間するに従い漸次大きくなるようにされて、主切刃6Aに対する逃げ角が正角側に漸次大きくなるようにされた捩れ面状とされていてもよく、すなわち正角の範囲内で上記逃げ角が正角側に漸次大きくなる捩れ面であってもよい。さらに、主逃げ面3Aは、鋭角角部A側では主切刃6Aから離間するに従いインサート本体1の外側に突出するように傾斜し、鈍角角部Bに向けて上記逃げ角が正角側に大きくなって、鈍角角部B側では主切刃6Aから離間するに従いインサート本体1の内側に向かうように傾斜する捩れ面状とされていてもよい。
このような切削インサートを着脱可能に備えた本発明の一実施形態の刃先交換式切削工具は、刃先交換式の転削工具であって、特に刃先交換式エンドミルであり、工具本体11を有する。工具本体11は、鋼材等から形成され、軸線Oを中心とした多段円柱状をなしている。工具本体11の後端側部分(図5、図6および図10において上側部分。図6、図7および図11、図12においては右側部分)はシャンク部11Aとされ、先端部が切刃部11Bとされている。
このような刃先交換式切削工具は、上記シャンク部11Aが工作機械の主軸に把持されて、工具本体11が軸線O回りに工具回転方向Tに回転されつつ、上記軸線Oに交差する方向(通常は軸線Oに垂直な方向)に送り出されることにより、切刃部11Bに取り付けられた上記切削インサートの主切刃6A、副切刃6B、およびコーナ刃6Cによって被削材を切削してゆく。
工具本体11先端部の切刃部11Bの外周には、チップポケット12が、周方向に複数(本実施形態では2つ)等間隔に、すなわち軸線Oを挟んで互いに反対側に形成されている。チップポケット12は、切刃部11Bの先端面すなわち工具本体11の先端面に開口して後端側に延びている。さらに、これらのチップポケット12の工具回転方向T側を向く壁面には、上記切削インサートが取り付けられるインサート取付座13が形成されている。インサート取付座13は、図10ないし図13に示すように切刃部11Bの先端面と外周面とに開口して、チップポケット12の上記壁面から工具回転方向Tの後方側に一段凹むように形成されている。
インサート取付座13は、工具回転方向Tを向く底面14と、工具本体11の外周側を向く壁面15と、工具本体11の先端側を向く壁面16とを有する。インサート本体1の一対の平行四辺形面2のうち、一方の平行四辺形面2がすくい面として工具回転方向Tに向けられたときに、他方の平行四辺形面2が着座面として底面14に着座させられる。壁面15は、上記底面14の工具本体11内周側の縁部から外周側に向けて立ち上がって、チップポケット12の工具回転方向Tを向く上記壁面に連なる。壁面16は、上記底面14の工具本体11後端側の縁部から工具回転方向T側に向けて立ち上がって、チップポケット12の工具回転方向Tを向く上記壁面に連なる。
ただし、底面14と壁面15、16との交差稜線部および壁面15、16同士の交差稜線部は、上記着座面とされた他方の平行四辺形面2のそれぞれ工具本体11内周側に配置される主切刃6Aと、工具本体11後端側に配置される副切刃6Bと、後端内周側に配置されるコーナ刃6Cと、さらに上記主切刃6Aに連なる長側面3の他方の平行四辺形面2側の主逃げ面3A、凸曲面部3B、および凹曲面部3Cとの干渉を避けるため、凹溝状をなす逃げ部17Aによって切り欠かれている。
底面14と切刃部11Bの外周面および先端面との交差稜線部にも、同じく着座面とされた平行四辺形面2の工具本体11外周側に配置される主切刃6A、先端側に配置される副切刃6B、先端外周側に配置されるコーナ刃6C、および、その内側のポジすくい面2A等との干渉を避けるために、面取り状の逃げ部17Bが形成されている。また、チップポケット12には、シャンク部11Aから切刃部11Bにかけて工具本体11内に穿設されたクーラント孔11Cが、インサート取付座13に取り付けられた切削インサートの切刃(主切刃6A、副切刃6B、コーナ刃6C、およびランピング刃6D)に向けて開口させられている。
底面14の中央部には、ネジ孔14Aが形成されている。このネジ孔14Aには、上述のようにインサート取付座13にインサート本体1が着座させられた状態で、すくい面とされた一方の平行四辺形面2側から取付孔5に挿通されたクランプネジ18がねじ込まれる。ネジ孔14Aは、底面14への開口部から孔底側(工具回転方向Tの後方側)に向かうに従い工具本体11後端側に向かうように僅かに傾斜させられている。インサート本体1は、ネジ孔14Aにねじ込まれたクランプネジ18の頭部裏面が取付孔5の上記縮径部5Aを押圧することにより、インサート取付座13に取り付けられる。底面14のネジ孔14Aの周りにも、着座面とされる平行四辺形面2側の取付孔5開口部周縁との干渉を避けるための凹状の逃げ部17Cが形成されている。
底面14には、図10および図15ないし図18にハッチングを付けて示すように平面状の第1、第2の被当接面19A、19Bが形成されており、これら第1、第2の被当接面19A、19Bに切削インサートの着座面とされた平行四辺形面2の上記第1、第2の当接面7A、7Bが当接可能とされている。ここで、本実施形態では、上記第1、第2の被当接面19A、19Bも、図10および図12あるいは図15ないし図18に示されるように底面14の工具本体11の先端外周側に1つの第1の被当接面19Aが、後端外周側に1つの第2の被当接面19Bが、先端内周側には1つの第2の被当接面19Bが、後端内周側には1つの第1の被当接面19Aが形成され、上記実施形態の切削インサートの1つの平行四辺形面2における当接面7A、7Bと同様に、1つの底面14に2つずつ形成されている。
なお、ネジ孔14Aの中心線方向に底面14に対向する方向から見て、第2の被当接面19Bは第1の被当接面19Aよりも大きな面積とされている。また、工具本体11先端側の第1、第2の被当接面19A、19B同士の間と、工具本体11後端側の第1、第2の被当接面19A、19B同士の間にも、図17および図18に示すようにインサート本体1との干渉を避けるための逃げ部17Dが形成されている。
従って、上述のようにインサート本体1が着座させられた着座状態で、図15に示すように、底面14の工具本体11外周側の第1、第2の被当接面19A、19Bには、インサート本体1の着座面とされた平行四辺形面(第2の多角形面)2の工具本体11外周側を向く長側面(第1の側面)3側の第1、第2の当接面7A、7Bが密着して当接し、これら第1、第2の被当接面19A、19Bを延長した仮想延長面は、同じく工具本体11外周側を向く長側面3側の第1、第2の当接面7A、7Bの第1、第2の仮想平面P1、P2と一致して、これらの第1、第2の仮想平面P1、P2の交差稜線Lで交差する。
同様に、上記着座状態で図16に示すように、底面14の工具本体11内周側の第1、第2の被当接面19A、19Bには、インサート本体1の着座面とされた平行四辺形面(第2の多角形面)2の工具本体11内周側を向く長側面(第2の側面)3側の第1、第2の当接面7A、7Bが密着して当接し、これら第1、第2の被当接面19A、19Bを延長した第1、第2の仮想延長面は、同じく工具本体11内周側を向く長側面3側の第1、第2の当接面7A、7Bの第1、第2の仮想平面P1、P2と一致して、これらの第1、第2の仮想平面P1、P2の交差稜線Lで交差する。すなわち、工具本体11の内周側と外周側において、第1、第2の被当接面19A、19Bを延長した第1、第2の仮想延長面は、それぞれに当接する第1、第2の当接面7A、7Bの第1、第2の仮想平面P1、P2と相補的な本実施形態では断面逆V字状、すなわち交差稜線Lに向かうに従い漸次突出する断面凸V字状をなしている。
さらに、こうして交差させられる2つずつの第1、第2の被当接面19A、19Bの第1、第2の仮想延長面の2つの交差稜線Lは、互いに平行とされるとともに、ネジ孔14Aの中心線と直交する平面とも平行とされ、底面14に対向する方向から見て底面14から立ち上がる壁面15、16のうち1つの壁面に交差するように延びている。なお、インサート本体1側の交差稜線Lが一致している場合には、第1、第2の仮想延長面の2つの交差稜線Lも一致する。本実施形態では、これらの交差稜線Lは工具本体11の外周側を向く壁面15に交差するように延びていて、この壁面15に、切削インサートの当接部8と当接させられる被当接部20が形成される。
この被当接部20は、底面14の工具本体11内周側の縁部から外周側に立ち上がる壁面15の工具本体11径方向における略中央部に形成されている。被当接部20は平面状とされ、壁面15に対向する方向から見て図11に示すように工具本体11の先端側から後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜して延びるとともに、図13に示すように工具本体11の内周側から外周側に向かうに従い工具回転方向T側にも僅かに傾斜するように形成されている。ここで、壁面15に対向する方向から見たときのネジ孔14Aの中心線に対する被当接部20の傾斜は、インサート本体1の長側面3に対向する方向から見たときのインサート仮想基準線Cに対する当接部8(凸曲面部3B)に対し、傾斜の向きが反対で傾斜角が略等しくされている。なお、被当接部20の中央部には切欠20Aが形成されている。
また、第1、第2の被当接面19A、19Bの第1、第2の仮想延長面が交差した交差稜線Lは、ネジ孔14Aの中心線に沿って底面14に対向する方向から見て、工具本体11の軸線Oに略直交する方向、あるいは工具本体11の内周側に向かうに従い先端側に向かうように極僅かに傾斜する方向に延びている。さらに、この交差稜線Lがネジ孔14Aの中心線方向視に被当接部20に対してなす交差角は、切削インサートのインサート本体1においてすくい面とされる平行四辺形面(第1の多角形面)2側からインサート仮想基準線C方向視に見たときの着座面とされる平行四辺形面(第2の多角形面)2における交差稜線Lが、この着座面に対する当接部8が形成された凸曲面部3B(すくい面とされる平行四辺形面2側の凸曲面部3B)に対してなす交差角と等しくされる。
このように形成されたインサート取付座13に、上記切削インサートは上述のように、そのインサート本体1の一方の平行四辺形面2をすくい面として工具回転方向Tに向けるとともに、一方の長側面3を工具本体11外周側に、一方の短側面4を工具本体11先端側に向け、他方の平行四辺形面2が底面14に向けられて着座させられる。このとき、本実施形態では、上述のように底面14の2つずつの第1、第2の被当接面19A、19Bに他方の平行四辺形面2の2つずつの当接面7A、7Bがそれぞれ当接される。
この状態で、インサート本体1は、インサート仮想基準線Cがネジ孔14Aの中心線と平行とされ、互いに一致させられた仮想平面P1、P2および仮想延長面の交差稜線Lに沿った方向への移動のみが許容され、それ以外の方向には拘束される。そこで、こうしてインサート本体1を着座させたまま、この交差稜線Lに沿って、上記一方の長側面3とは反対の他方の長側面3側に向けて、すなわち工具本体11の内周側に向けて、インサート本体1を移動させると、図17および図18に示すように壁面15の被当接部20に他方の長側面3の一方の平行四辺形面2側の当接部8が当接してインサート本体1が位置決めされる。
すなわち、(1)この他方の長側面3の一方の平行四辺形面2側の当接部8と他方の平行四辺形面2の交差稜線Lとがインサート仮想基準線C方向視になす交差角と、インサート取付座13の壁面15に形成された被当接部20と第1、第2の被当接面19A、19Bの交差稜線Lとがネジ孔14Aの中心線方向視になす交差角が、互いに等しくされている。(2)当接部8が形成される凸曲面部3Bは長側面3の長手方向に亙って断面が略一定の曲率半径の凸曲線をなす凸曲面とされ、被当接部20は工具本体11の外周側に向かうに従い工具回転方向T側に僅かに傾いた傾斜平面状とされている。上記(1)、(2)の理由により、図17および図18に示すように傾斜平面状の被当接部20に凸曲面状の当接部8が切欠20Aを除いて長側面3の全長に亙って当接し、インサート本体1が安定して位置決めされる。
さらに、こうして位置決めされた状態で、インサート本体1の取付孔5の中心線であるインサート仮想基準線Cは、ネジ孔14Aの中心線に対して、僅かに工具本体11の外周側に偏心させられている。従って、クランプネジ18を取付孔5から挿入してネジ孔14Aにねじ込むと、クランプネジ18の頭部裏面によって、取付孔5の縮径部5Aのうち工具本体11の内周側に位置する部分が押圧される。このため、インサート本体1は、底面14に押し付けられるとともに、他方の長側面3における一方の平行四辺形面2側の凸曲面部3Bに形成された当接部8が壁面15の被当接部20にも押し付けられるようにして、インサート取付座13に着脱可能に固定される。
このようにインサート取付座13に固定された状態で、長側面3の中心を通る対称線はこの対称線に平行で軸線Oに交差する直線よりも工具回転方向T側に位置させられる。また、すくい面とされる一方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に向けられた切削に使用される主切刃6Aは、工具本体11の軸線Oを中心とする円筒面上に略位置させられ、あるいは極小さなバックテーパが与えられ、主切刃6Aが傾斜していることによって正の軸方向すくい角と、ポジすくい面2Aによって望ましくは正または0°の径方向すくい角とが与えられる。また、この主切刃6Aに連なる主逃げ面3Aにも正または0°の逃げ角が与えられる。なお、この主切刃6Aの裏側の、着座面とされる他方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に向けられた主切刃6Aは、上記切削に使用される主切刃6Aの軸線O回りの回転軌跡である上記円筒面の内側に配置されて被削材の加工面と干渉することがない。
一方、上記切削に使用される主切刃6Aにコーナ刃6Cを介して連なる、切削に使用される副切刃6Bは軸線Oに垂直な平面上に略位置させられ、略0°の径方向すくい角と、ポジすくい面2Aによって正の軸方向すくい角が与えられ、さらに第1、第2副逃げ面4A、4Bにも正の逃げ角が与えられる。従って、本実施形態の切削に使用される副切刃6Bはサライ刃とされる。なお、着座面とされる他方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられる副切刃6Bは、切削に使用される副切刃6Bが位置する上記軸線Oに垂直な平面よりも工具本体11後端側に位置して、やはり被削材と干渉することはない。
このような一実施形態の切削インサートおよびこれを取り付けた一実施形態の刃先交換式切削工具においては、上述のようにインサート本体1の第1、第2の当接面7A、7Bおよび当接部8と、インサート取付座13の底面14の第1、第2の被当接面19A、19Bおよび壁面15の被当接部20とによってインサート本体1が拘束されて固定され、工具本体11の先端側を向くインサート取付座13の壁面16はこの切削インサートの取り付けに関与することがない。すなわち、1つの平行四辺形面2に対して交差稜線Lが延びる方向のうち一方向については、本実施形態では1つの長側面3の1つのみの当接部8が、インサート取付座13の1つの壁面15の1つの被当接部20に当接させられる。
このため、インサート取付座13の工具本体11後端側に大きなチップポケット12を形成することにより、壁面16が小さくなったり、工具本体11後端側に向けられた他方の短側面4と壁面16との間に間隔が空いたり、場合によっては壁面16自体が形成されなかったりしても、切削インサートの取り付けに支障が生じることはない。従って、大きなチップポケット12を形成しても安定して切削インサートを保持することができ、大きなチップポケット12によって切屑排出性の向上を図ることができる。
また、本実施形態の刃先交換式切削工具では、工具本体11先端部の切刃部11Bに軸線O方向においては1つのインサート取付座13しか形成されていない。しかし、本発明はこれに限定されず、インサート取付座13の後端側に、1または複数のインサート取付座13を形成して、工具の多刃化を図ることもできる。このような場合でも、上記切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、上述のようにインサート取付座13の後端側に壁面16を形成する必要が無いことから、軸線O方向に隣接するインサート取付座13を近接して形成することができる。
例えば、軸線O方向後端側に隣接するインサート取付座13をインサート本体1の厚さ分程度、工具回転方向Tの後方側にずらして形成することにより、1列のインサート取付座13に取り付けられた切削インサートによって、主切刃6Aの回転軌跡が連続した切刃列を形成することも可能となる。このため、このような切刃列を1つの工具本体11により多く設けることが可能となって、切削効率の向上を図ることができる。
そして、さらに、インサート本体1を拘束する第1、第2の当接面7A、7Bが位置する第1、第2の仮想平面P1、P2は、その上記交差稜線Lに直交する断面において、上記インサート仮想基準平面Qに対する傾斜角θ1、θ2が異なる大きさとされていて、本実施形態では第1の仮想平面P1の傾斜角θ1が、第2の仮想平面P2の傾斜角θ2よりも大きくされている。従って、第1の仮想平面P1上に位置する第1の当接面7Aは、第2の仮想平面P2上に位置する第2の当接面7Bよりも、インサート仮想基準平面Qに対して急勾配で傾斜することになり、これに伴いインサート取付座13の第1の被当接面19Aも第2の被当接面19Bより急勾配でネジ孔14Aの中心線に直交する平面に対して傾斜することになる。
このため、これら第1の当接面7Aと第1の被当接面19Aとがインサート仮想基準線C回り方向に対向するように急勾配で傾斜して立ち上がることになるので、スクリューオン方式によってインサート本体1をインサート取付座13に固定する際に、取付孔5に挿通したクランプネジ18をネジ孔14Aにねじ込んで締め付けるときでも、インサート本体1がインサート仮想基準線C回りに回転するようにしてずれ動くのを防ぐことができる。これにより、第1、第2の当接面7A、7Bを第1、第2の被当接面19A、19Bに確実に密着するように当接させて、インサート本体1を安定的に固定して取り付けることができ、切削加工時にインサート本体1にがたつきが生じるのを防いで高精度の切削加工を行うことが可能となる。
また、第2の当接面7Bおよび第2の被当接面19Bは、相対的に第1の当接面7Aおよび第1の被当接面19Aよりもインサート仮想基準平面Qおよびネジ孔14Aの中心線に直交する平面に対する傾斜が緩勾配となるので、本実施形態のように第2の当接面7Bと第2の被当接面19Bを第1の当接面7Aおよび第1の被当接面19Aよりも大きな面積として、十分な当接面積を確保することができる。従って、インサート本体1をさらに安定してインサート取付座13に取り付けることができ、一層高精度で円滑な切削加工を行うことができる。
さらに、急傾斜とされた第1の仮想平面P1は交差稜線Lにおいて緩傾斜とされた第2の仮想平面P2と交差しているので、これら第1、第2の仮想平面P1、P2上に形成される第1、第2の当接面7A、当接面7Bがこの交差稜線よりも深くインサート本体1の厚さ方向内側に彫り込まれることはない。従って、インサート本体1の肉厚が薄くなって強度が低下することにより破損を生じ易くなるようなこともなく、安定的な切削加工を行うことができる。
なお、本実施形態では、第1、第2の仮想平面P1、P2が交差稜線Lに直交する断面においてV字状、すなわち交差稜線Lに向かうに従いインサート本体1の厚さ方向内側に向かうように傾斜しているが、これとは逆に交差稜線Lに向かうに従いインサート本体1の厚さ方向外側に漸次突出する凸V字状すなわち逆V字状に形成されていてもよく、この場合にインサート取付座13の第1、第2の被当接面19A、19Bの仮想延長面は、第1、第2の仮想平面P1、P2とは相補的な断面凹V字状をなすことになる。そして、この場合でも、第1、第2の当接面7A、7Bはすくい面とされる平行四辺形面2から大きく突出することはないので、急勾配とされた第1の当接面7Aが切屑擦過によって摩耗するのも避けることができ、後述するようにインサート本体1を反転させて取り付け直したときに着座安定性が損なわれるのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、着座面とされる上記第2の多角形面が四角形状面である平行四辺形面2とされて、上記第1、第2の当接面7A、7Bが、上記取付孔5の開口部周縁と平行四辺形面2の角部である鋭角角部Aおよび鈍角角部Bとの間に形成されている。このため、インサート本体1が回転しようとするときに中心となるインサート仮想基準線Cから離れた位置で第1、第2の当接面7A、7Bを第1、第2の被当接面19A、19Bに当接させてインサート本体1を拘束することができ、さらに安定的な切削インサートの取り付けを図ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、インサート本体1が第1、第2の多角形面である一対の平行四辺形面2の周回り方向に180°回転対称形状に形成されており、すくい面とされる一方の平行四辺形面2と2つの長側面3との交差稜線部にそれぞれ主切刃6Aが形成されるとともに、2つの長側面3に当接部8が形成され、さらに着座面とされる平行四辺形面2には2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成されている。
このため、一方の主切刃6Aが摩耗等によって寿命になったときは、インサート本体1を平行四辺形面2の周回り方向に180°回転させてインサート取付座13に取り付け直すことにより、他方の主切刃6Aを切削に使用することができる。そして、この場合には、着座面とされた平行四辺形面2の2つずつの第1の当接面7Aが急勾配となるので、一層確実にインサート本体1の回転を防ぐことが可能となる。
さらにまた、本実施形態では、すくい面とされる一方の平行四辺形面2と短側面4との交差稜線部に、上記主切刃6Aの一端にコーナ刃6Cを介して連なる副切刃6Bが形成されており、刃先交換式エンドミルの工具本体11を軸線Oに垂直な方向に送り出して切削加工を行うときには、この副切刃6Bによって加工面の仕上げ加工を行うことができる。そして、上記第1、第2の当接面7A、7Bは、この副切刃6Bが形成されたインサート本体1の第3、第4の側面である短側面4側を向くようにして傾斜しており、従って副切刃6Bを用いた仕上げ加工の際に、工具本体11の軸線O方向後端側に向けてインサート本体1に作用するスラスト荷重に対しても、インサート本体1を確実に支持して安定した切削加工を行うことができる。
特に、本実施形態では、2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成されていて、これらの第1、第2の当接面7A、7Bがそれぞれ長側面3間に亙って延びる交差稜線Lに交差する第1、第2の仮想平面P1、P2上に形成されており、従って傾斜が急勾配とされた第1の当接面7Aの1つは工具本体11の後端側に位置する短側面4側を向くことになる。このため、上述のようなスラスト荷重をこの工具本体11後端側を向く急勾配の第1の当接面7Aによって受け止めることができ、一層確実にインサート本体1を安定支持することが可能となる。
一方、本実施形態では、インサート本体1が第1、第2の多角形面である一対の平行四辺形面2に関しても表裏反転対称形状に形成されており、一方の平行四辺形面2がすくい面とされたときに着座面となる他方の平行四辺形面2と、第1の側面である長側面3との交差稜線部にも切刃(主切刃6A)が形成されている。このため、インサート本体1をこの長側面3の中心を通る対称線回りに表裏反転させてインサート取付座13に取り付け直すことにより、これら一対の平行四辺形面2の辺稜部に形成された切刃を使用することができる。従って、本実施形態によれば、インサート本体1が平行四辺形面2の周回り方向に180°回転対称とされているのと合わせて、1つのインサート本体1で合計4つの切刃の使用が可能となる。
さらに、こうしてインサート本体1が表裏反転対称形状とされているのに併せて、本実施形態では、上記一対の平行四辺形面2との交差稜線部に主切刃6Aが形成される長側面3も平行四辺形状面とされている。また、主切刃6Aは、この平行四辺形状面の鋭角角部(すくい面とされる平行四辺形面2の鋭角角部A)側に、副切刃6Bやコーナ刃6Cに連なる一端を有するようにされている。
このため、本実施形態のようにインサート仮想基準線Cが工具回転方向T後方側(着座面とされる平行四辺形面2側)に向かうに従い軸線O方向後端側に向かうように傾けられてインサート本体1が取り付けられていても、この一端を工具本体11先端側に向けて取り付けることにより、切削に使用される主切刃6Aの軸方向すくい角を正角側に大きく設定することができ、切削抵抗の低減を図ることが可能となる。
そして、このように長側面3が平行四辺形状面とされているのに併せて、本実施形態では第1、第2の当接面7A、7Bが位置する第1、第2の仮想平面P1、P2が交差稜線Lに向かうに従いインサート仮想基準線C方向(インサート本体1の厚さ方向)に後退するように凹むV字状とされている。さらに、このうちインサート仮想基準平面Qに対して大きな傾斜角θ1で傾斜する第1の仮想平面P1上の第1の当接面7Aが、主切刃6Aの一端が位置する長側面3の鋭角角部側に隣接して形成されている。
従って、この主切刃6Aの一端側ではすくい面とされる平行四辺形面2上の第1の当接面7Aの傾斜を主切刃6Aの傾きに合わせることができ、しかもこの第1の当接面7Aは大きな傾斜角θ1で傾斜しているので、主切刃6Aやその一端に連なる副切刃6B、コーナ刃6Cによって生成された切屑が第1の当接面7Aに干渉するのを避けることができ、良好な切屑排出性を得ることができる。また、切屑擦過によって第1の当接面7Aに摩耗が生じたりするのも防ぐことができる。
一方、本実施形態では、この主切刃6Aの主逃げ面3Aが、長側面3において一対の平行四辺形面2の周回り方向に互い違いの角部となる鋭角角部Aから鈍角角部B側に向かうに従い、主切刃6Aに対する逃げ角が正角側に漸次大きくなるようにされた捩れ面状とされている。従って、上述のようにすくい面とされる平行四辺形面2の鋭角角部Aを工具本体11の先端側に向けるとともに切削に使用される主切刃6Aに正の軸方向すくい角を与えてインサート本体1を取り付けたときに、主切刃6Aの逃げ角を主切刃6Aの全長に亙って略一定とすることが可能となり、逃げ量の不足によって部分的に切削抵抗が増大したりするのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、主切刃6Aに連なるポジすくい面2Aは、鋭角角部A側から鈍角角部B側に向かうに従い主切刃6Aに対するすくい角が漸次小さくなるようにされた捩れ面状とされており、従って、同様に主切刃6Aに正の軸方向すくい角を与えてインサート本体1を取り付けたときには、主切刃6Aの径方向すくい角も主切刃6Aの全長に亙って略一定とすることができる。このため、主切刃6Aの切れ味も全長に亙って略一定として、部分的に切れ味が鈍ることによる切削抵抗の増加も防ぐことができる。
さらに、こうして主切刃6Aの径方向すくい角と逃げ角とが略一定とされるのに伴い、ポジすくい面2Aと主逃げ面3Aとがなす主切刃6Aの刃物角も、主切刃6Aの全長に亙って略一定とすることができる。このため、部分的に刃先強度が低下して主切刃6Aに損傷が生じたりするのも防ぐことが可能となる。
ところで、上述のように主逃げ面3Aが捩れ面状に形成されている場合において、平行四辺形面2に対向する方向から見て略直線状をなす主切刃6Aが一対の平行四辺形面2同士で重なり合うようにされていると、主切刃6Aの鋭角角部A側から鈍角角部B側に向けて主逃げ面3Aの主切刃6Aに対する逃げ角が正角側に漸次大きくなるのに伴い、主逃げ面3Aのインサート仮想基準線C方向内側でのインサート本体1の外側に向けた突出量は漸次小さくなる。
このため、その場合に、一方の平行四辺形面2の鋭角角部A側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bと、他方の平行四辺形面2の鈍角角部B側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bとをそのまま延長すると、長側面3の長手方向においてこれらの凸曲面部3Bが交差する位置がインサート仮想基準線C方向にずれてしまう。従って、このような場合には、長側面3に段差が生じてしまって長側面3を滑らかに形成することができなくなったり、上述のようにインサート本体1を工具本体11に取り付けた状態での主逃げ面3Aがなす逃げ角を主切刃6Aの全長に亙って確実に略一定とすることができずに、切削抵抗の低減等の効果を確実に奏することができなくなったりするおそれがある。
また、このような場合には、鈍角角部B側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bが小さくなったり、場合によっては主切刃6Aの鈍角角部B側に凸曲面部3Bを形成すること自体ができなくなったりしてしまう。従って、これに伴い、この凸曲面部3Bに形成されるべき当接部8も小さくなったり、鈍角角部Bに当接部8を設けることができなくなったりするために被当接部20への当接面積も小さくなって、インサート本体1を安定してインサート取付座13に取り付けることが困難となるおそれも生じる。
その一方で、無理に凸曲面部3Bの幅を確保しつつ、捩れ面状の主逃げ面3Aと一対の平行四辺形面2との交差稜線部に主切刃6Aを形成しようとすると、凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径を長側面3の長手方向に向けて変化させたり、場合によっては凸曲面部3B自体や被当接部20も捩れ面状に形成したりしなければならなくなる。従って、インサート本体1の当接部8やインサート取付座13の被当接部20の形状の複雑化を招くおそれがある。
これに対して、上記構成の切削インサートでは、図2に示したように一対の平行四辺形面2をインサート仮想基準線C回りに僅かに回転させて捩るように形成しており、これによって平行四辺形面2に対向する方向から見て主切刃6Aが一対の平行四辺形面2同士でずれるようにしている。すなわち、インサート仮想基準線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見た平面視で、一対の平行四辺形面2同士が互いに、一方の平行四辺形面2の鋭角角部A側の主切刃6Aから他方の平行四辺形面2の鈍角角部Bがインサート本体1の外側に僅かにはみ出すようにされており、言い換えれば、主切刃6Aが形成された長側面3の一対の長辺稜部が、一方の長辺稜部の鈍角角部(他方の角部)Bが他方の長辺稜部の外側にはみ出すように交差させられている。
従って、このように構成された切削インサートでは、鋭角角部Aから鈍角角部B側に向けて捩れ面状とされた主逃げ面3Aの長側面3におけるインサート仮想基準線C方向中央部側でのインサート本体1の外側に向けた突出量が漸次小さくなるのに対し、この鈍角角部B側では主切刃6A自体が反対側の平行四辺形面2の鋭角角部A側の主切刃6Aに対してインサート本体1の外側に僅かにはみ出すように、主切刃6A同士が上記インサート仮想基準線C方向視に交差させられているので、一対の平行四辺形面2両側の主逃げ面3Aと凸曲面部3Bとの交差稜線のインサート本体1の外側への突出位置は互いに略等しくすることができる。
このため、本実施形態の切削インサートによれば、長側面3において段差等を生じることなく主逃げ面3Aと凸曲面部3Bおよび凹曲面部3Cを滑らかに連続させたりして、主逃げ面3Aの主切刃6Aに対する逃げ角を鋭角角部Aから鈍角角部B側に向けて確実に正角側に大きくなるように形成することができ、工具本体11に取り付けた状態での逃げ角を上述のように略一定とすることができる。従って、主切刃6Aの逃げ量を十分に確保して上述した切削抵抗の低減効果等を確実に奏功することができる。
しかも、このように構成することにより、本実施形態の切削インサートによれば、長側面3に形成された当接部8をインサート取付座13の壁面15に形成された被当接部20に当接させて取り付ける場合に、上述のように凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径が長側面3の長手方向に亙って略一定であっても、鈍角角部B側でこの凸曲面部3Bの幅が小さくなりすぎたり、凸曲面部3Bを設けることができなくなったりするのを防いで、当接部8と被当接部20との当接面積を確保し、インサート取付座13への安定した取付を図ることができる。また、インサート本体1の当接部8やインサート取付座13の被当接部20の形状の複雑化を招くこともない。
さらに、本実施形態では、こうして一対の平行四辺形面2がインサート仮想基準線C回りに捩られているのに対して、コーナ刃6Cを介して連なる主切刃6Aと副切刃6Bとは平行四辺形面2に対向する方向から見て鈍角に交差する方向に配置されているので、着座面とされた他方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられる副切刃6Bは、すくい面とされる一方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられて切削に使用される副切刃6Bが位置する上記軸線Oに垂直な平面に対し、工具本体11の内周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して後退させることができる。
従って、この他方の平行四辺形面2の副切刃6Bが一方の平行四辺形面2の副切刃6Bによって形成された仕上げ面に干渉するのを確実に防止することができ、これにより仕上げ面精度の向上を図るとともに、例えば工具本体11を軸線O方向にも送り出して被削材を斜めに掘り下げるランピング加工を行うことも可能となる。加えて、本実施形態では、上述のようにインサート仮想基準線Cが着座面とされる平行四辺形面2側に向けて工具本体11の後端側に向かうようにインサート本体1が取り付けられていることによっても、着座面とされた平行四辺形面2の工具本体11先端側の副切刃6Bを、切削に使用される副切刃6Bが位置する上記平面に対して後退させることができるので、仕上げ面への干渉をより確実に防ぐとともにランピング加工を円滑に行うことが可能となる。
なお、こうしてインサート仮想基準線C回りに回転させて捩られるようにずらされる一対の平行四辺形面2同士のずれ角は、1°〜10°程度とされるのが望ましい。このずれ角が1°より小さいと上記効果が奏功されないおそれがある一方、10°より大きいと、着座面とされた他方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に位置する鈍角角部Bが、すくい面とされた一方の平行四辺形面2の主切刃6Aにより形成される被削材の加工面と干渉するおそれが生じる。
さらに、このように一対の平行四辺形面2が捩られて、平行四辺形面2に対向する方向から見たときに、主切刃6Aが形成された長側面3の一対の辺稜部が、一方の辺稜部の鈍角角部Bが他方の辺稜部の外側にはみ出すように互いに交差させられている場合に、上記交差稜線Lは厳密には、同じく平行四辺形面2に対向する方向から見たときに長側面3の中心を通る上記対称線に垂直で一対の辺稜部の鈍角角部Bに外接する仮想長側面に直交することになる。ただし、本実施形態では、こうして平行四辺形面2に対向する方向から見たときに、交差稜線Lが長側面3または上記仮想長側面に直交する方向に延びていて上記対称線と重なり合うようにされているが、上記対称線に対して±10°程度の範囲内であれば傾斜していてもよい。
また、工具本体11の軸線Oに直交する断面において、主切刃6Aの径方向すくい角は0°〜20°の範囲とされるのが望ましい。さらに、主逃げ面3Aを工具本体11の軸線Oに直交する断面において主切刃6Aに連なる凸円弧状をなす第1主逃げ面3aと、この第1主逃げ面3aのインサート仮想基準線C方向中央部側に連なる断面直線状の第2主逃げ面3bとから構成した場合には、主切刃6Aの位置で上記凸円弧に接する接線がなす第1主逃げ面3aの逃げ角は0°〜15°の範囲、第2主逃げ面3bの逃げ角は第1主逃げ面3aの逃げ角から+20°までの範囲、第1主逃げ面3aの断面がなす凸円弧の半径は、工具本体11に取り付けられた切削インサートの切削に使用される主切刃6Aの軸線Oに対する外径(直径)Dに対してD/2〜2×Dの範囲、第1主逃げ面3aの幅は0.03×D〜0.15×Dの範囲とされるのが望ましい。
一方、本実施形態では、上記平行四辺形面2の辺稜部に、副切刃6Bに連なるようにランピング刃6Dが形成されており、通常の工具本体11を軸線Oに垂直に送り出して切削加工を行うほかに、このランピング刃6Dを用いて上述のようなランピング加工を行うことができる。そして、短側面4のうちこのランピング刃6Dに連なるランピング逃げ面4Dは、ランピング刃6Dから離間して該ランピング刃6Dが形成された平行四辺形面2とは反対の平行四辺形面2側に向かうに従い、インサート本体1の内側に漸次後退するように傾斜させられている。
このため、本実施形態の切削インサートによれば、例えばランピング逃げ面4Dがインサート仮想基準線Cに平行に延びているのに比べ、ランピング刃6Dに連なる短側面4部分であるランピング逃げ面4Dをランピング刃6Dの回転軌跡に対して大きく逃がすことが可能となる。このため、ランピング加工の際にこのランピング逃げ面4Dが被削材と干渉するのをより確実に避けることができ、この干渉による切削抵抗の増大やランピング逃げ面4Dの摩耗を防いで一層円滑なランピング加工を行うことが可能となる。
さらにまた、本実施形態では、上記主切刃6Aにコーナ刃6Cを介して連なるように副切刃6Bが形成されており、この副切刃6Bは短側面4に対向する方向から見てコーナ刃6Cから離間するに従いインサート仮想基準線C方向に後退して、該副切刃6Bが形成された平行四辺形面2とは反対の平行四辺形面2側に向かうように傾斜させられている。これにより、切削に使用される主切刃6Aの主逃げ面3Aに正または0°の逃げ角を与えるために、工具本体11の正面視で長側面3の中心を通る対称線を該対称線に平行で軸線Oに交差する直線よりも工具回転方向T側に位置させても、副切刃6Bの径方向すくい角は負角に大きくなるのは防いで、上述のように略0°と正角側に向けて大きな径方向すくい角とすることができ、副切刃6Bによる切削抵抗が増大するのを防ぐことができる。
なお、本実施形態では、短側面4はインサート本体1の取り付けに関与することがないため、この短側面4の第1副逃げ面4Aと一対の平行四辺形面2との交差稜線部に形成される副切刃6Bや、あるいはコーナ刃6Cの形状、寸法を異なるものとしても、そのまま同じインサート取付座13に取り付けることが可能となる。従って、上述のように軸線O方向に複数のインサート取付座13を形成した場合に、最先端のインサート取付座13に取り付けられる切削インサートは、例えば第1、第2副逃げ面4A、4Bの上記長手方向へのせり出し量を大きくして半径の大きなコーナ刃6Cを形成した切削インサートとしても取付可能である。すなわち、1つの工具本体11に異なる半径のコーナ刃6Cを有する複数種の切削インサートを取り付けることができるから、肩削りの際に異なる半径の隅部を形成するような場合でも、最先端の切削インサートを上記半径に応じた半径のコーナ刃6Cのものに交換するだけで、1つの工具本体11で対応することが可能となる。
ただし、本実施形態では、インサート仮想基準線C方向に平行四辺形面2に対向する平面視において交差稜線Lを長側面3に交差するようにして、このように短側面4はインサート本体1の取り付けに関与することがないようにしているが、逆に交差稜線Lを短側面4に交差するように第1、第2の仮想平面P1、P2を傾斜させるとともに、インサート取付座13の第1、第2の被当接面19A、19Bが形成される第1、第2の仮想延長面も、その交差稜線がインサート取付座13の工具本体11先端側を向く壁面16に交差するようにしてもよい。この場合には、インサート取付座13の内周側に大きなチップポケット12を形成したり、小径の刃先交換式転削工具であっても周方向に多くの切削インサートを取り付けたりすることができる。
また、本実施形態では、インサート本体1が、第1、第2の多角形面である一対の平行四辺形面2の周回り方向に180°回転対称形状とされるとともに、これら一対の平行四辺形面2に関して表裏反転対称形状とされているが、例えば第1の多角形面のみをすくい面として使用するような切削インサートの場合は表裏反転対称形状とされていなくてもよく、また第1、第2の多角形面と第2の側面との交差稜線部に切刃が形成されない場合には、180°回転対称形状とされていなくてもよい。さらに、本実施形態では、着座面とされる第2の多角形面に2つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成されているが、このようにインサート本体1が第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状とされていない場合には、1つずつの第1、第2の当接面7A、7Bが形成されているだけでもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以上説明したように、本発明の切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、切屑排出性の向上や切削効率の向上を図ることができるとともに、切削インサートの取付安定性の向上も図ることができ、高精度の切削加工を行うことが可能となる。従って、産業上の利用が可能である。
1 インサート本体
2 平行四辺形面(第1、第2の多角形面)
2A ポジすくい面
3 長側面(第1、第2の側面)
4 短側面(第3、第4の側面)
5 取付孔
6A 主切刃
6B 副切刃
6C コーナ刃
6D ランピング刃
7A 第1の当接面
7B 第2の当接面
8 当接部
11 工具本体
13 インサート取付座
14 インサート取付座13の底面
14A ネジ孔
15、16 インサート取付座13の壁面
18 クランプネジ
19A 第1の被当接面
19B 第2の被当接面
20 被当接部
A 鋭角角部
B 鈍角角部
C インサート仮想基準線
L 交差稜線
P1 第1の仮想平面
P2 第2の仮想平面
Q インサート仮想基準平面
O 工具本体11の軸線
T 工具回転方向
2 平行四辺形面(第1、第2の多角形面)
2A ポジすくい面
3 長側面(第1、第2の側面)
4 短側面(第3、第4の側面)
5 取付孔
6A 主切刃
6B 副切刃
6C コーナ刃
6D ランピング刃
7A 第1の当接面
7B 第2の当接面
8 当接部
11 工具本体
13 インサート取付座
14 インサート取付座13の底面
14A ネジ孔
15、16 インサート取付座13の壁面
18 クランプネジ
19A 第1の被当接面
19B 第2の被当接面
20 被当接部
A 鋭角角部
B 鈍角角部
C インサート仮想基準線
L 交差稜線
P1 第1の仮想平面
P2 第2の仮想平面
Q インサート仮想基準平面
O 工具本体11の軸線
T 工具回転方向
Claims (7)
- 刃先交換式切削工具のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、
第1の多角形面と、この第1の多角形面とは反対側を向く第2の多角形面と、これら第1、第2の多角形面に周囲に配置される複数の側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、
上記複数の側面のうち少なくとも1つである第1の側面と上記第1の多角形面との交差稜線部には、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
上記第2の多角形面は、上記インサート取付座の底面に着座する着座面とされ、
上記インサート本体には、インサート仮想基準線を中心として上記第1、第2の多角形面の間を貫通する取付孔が形成され、
上記第2の多角形面には、上記切刃が延びる方向に並ぶように第1、第2の当接面が形成され、
これら第1、第2の当接面は、それぞれ第1、第2の仮想平面の上に位置する平面状とされ、
上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準線に直交するインサート仮想基準平面に平行な交差稜線において互いに交差させられて、この交差稜線に直交する断面においてV字状または逆V字状をなし、
上記交差稜線は、上記第1の多角形面に対向する方向から見て、上記第1の側面から、この第1の側面とは反対側を向く上記複数の側面のうち他の少なくとも1つである第2の側面に向けて延びており、
上記第2の側面は、上記底面に対して立ち上がる上記インサート取付座の壁面に形成された被当接部に当接させられる当接部を備え、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1、第2の仮想平面は、上記インサート仮想基準平面に対する傾斜角が異なる大きさとされていることを特徴とする切削インサート。 - 上記第2の多角形面は四角形状面とされ、
上記第1、第2の当接面は、上記第2の多角形面において、上記取付孔の開口縁と上記第2の多角形面の4つの角部のうち少なくとも2つの角部との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。 - 上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面の周回り方向に180°回転対称形状に形成され、
上記第1の多角形面と上記第2の側面との交差稜線部にも、上記第1の多角形面にすくい面を有する切刃が形成されるとともに、
上記第1の側面も上記インサート取付座の壁面に当接する当接部を備え、
上記第2の多角形面には2つずつの上記第1、第2の当接面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削インサート。 - 上記インサート本体は、四角形板状をなして、上記第1、第2の側面と、これら第1、第2の側面に間に延びる第3、第4の側面とを備え、
上記切刃は主切刃とされるとともに、上記第1の多角形面と上記第3、第4の側面との交差稜線部には、上記第1の多角形面の周回り方向における上記主切刃の一端に連なる副切刃が形成され、
上記第1、第2の当接面は上記第3、第4の側面側を向くように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の切削インサート。 - 上記インサート本体は、上記第1、第2の多角形面に関して表裏反転対称形状に形成され、
上記第2の多角形面と上記第1の側面との交差稜線部にも、上記第2の多角形面にすくい面を有する切刃が形成され、
この第2の多角形面がすくい面とされたときには、上記第1の多角形面が上記着座面とされ、
上記第1の多角形面にも上記第1、第2の当接面が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の切削インサート。 - 上記第1の側面は平行四辺形状面とされ、
上記切刃は、上記第1の側面がなす平行四辺形状面の鋭角角部に一端を有する主切刃とされ、
上記第1、第2の仮想平面は上記交差稜線に直交する断面においてV字状に交差し、
上記第1の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の一端が位置する角部に隣接して形成され、
上記第2の当接面は、上記第1、第2の多角形面の角部のうち上記主切刃の他端が位置する角部に隣接して形成され、
上記交差稜線に直交する断面において、上記第1の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角が、上記第2の仮想平面の上記インサート仮想基準平面にする傾斜角より大きくされていることを特徴とする請求項5に記載の切削インサート。 - 刃先交換式切削工具であって、
軸線回りに回転される工具本体と、
上記工具本体の外周に、着脱可能に取り付けられた、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサートとを具備し、
上記工具本体には、1または2以上の上記インサート取付座が、上記底面を工具回転方向に向けるとともに、上記1つの壁面を外周側または上記軸線方向先端側に向けて形成され、
上記インサート取付座の上記底面には、上記切削インサートの上記第1、第2の当接面と当接させられる第1、第2の被当接面がそれぞれ形成され、
上記第1、第2の被当接面を延長した第1、第2の仮想延長面は、上記第1、第2の仮想平面と相補的な断面逆V字状または断面V字状に交差し、
上記インサート取付座の上記一つの壁面には、上記交差稜線が向かう位置に、上記切削インサートの当接部と当接する被当接部が形成されていることを特徴とする刃先交換式切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012236785A JP2014083667A (ja) | 2012-10-26 | 2012-10-26 | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012236785A JP2014083667A (ja) | 2012-10-26 | 2012-10-26 | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014083667A true JP2014083667A (ja) | 2014-05-12 |
Family
ID=50787236
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012236785A Pending JP2014083667A (ja) | 2012-10-26 | 2012-10-26 | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2014083667A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017056552A (ja) * | 2015-09-15 | 2017-03-23 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサート及び刃先交換式切削工具 |
JP2018509306A (ja) * | 2015-03-25 | 2018-04-05 | サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ | 切削インサート及びフライス工具 |
JP2020517468A (ja) * | 2017-04-21 | 2020-06-18 | イスカル リミテッド | 非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート |
WO2020203463A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサートおよび転削工具 |
EP3808482A1 (en) * | 2019-10-14 | 2021-04-21 | Seco Tools Ab | Cutting insert and milling tool |
CN113199071A (zh) * | 2014-10-16 | 2021-08-03 | 株式会社泰珂洛 | 切削刀片及刀尖更换式旋转切削刀具 |
WO2021246283A1 (ja) * | 2020-06-03 | 2021-12-09 | 京セラ株式会社 | 切削インサート、切削工具及び切削加工物の製造方法 |
-
2012
- 2012-10-26 JP JP2012236785A patent/JP2014083667A/ja active Pending
Cited By (15)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113199071A (zh) * | 2014-10-16 | 2021-08-03 | 株式会社泰珂洛 | 切削刀片及刀尖更换式旋转切削刀具 |
CN113199071B (zh) * | 2014-10-16 | 2023-09-01 | 株式会社泰珂洛 | 切削刀片及刀尖更换式旋转切削刀具 |
JP2018509306A (ja) * | 2015-03-25 | 2018-04-05 | サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ | 切削インサート及びフライス工具 |
JP2017056552A (ja) * | 2015-09-15 | 2017-03-23 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサート及び刃先交換式切削工具 |
JP2020517468A (ja) * | 2017-04-21 | 2020-06-18 | イスカル リミテッド | 非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート |
JP7344121B2 (ja) | 2017-04-21 | 2023-09-13 | イスカル リミテッド | 非ポジティブカッティングジオメトリーとランピングツールを有するランピングインサート、ランピングツール |
JP7156139B2 (ja) | 2019-03-29 | 2022-10-19 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサートおよび転削工具 |
WO2020203463A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサートおよび転削工具 |
JP2020163544A (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 三菱マテリアル株式会社 | 切削インサートおよび転削工具 |
CN113631309A (zh) * | 2019-03-29 | 2021-11-09 | 三菱综合材料株式会社 | 切削刀片及旋转切削工具 |
WO2021073885A1 (en) * | 2019-10-14 | 2021-04-22 | Seco Tools Ab | Cutting insert and milling tool |
CN114585465A (zh) * | 2019-10-14 | 2022-06-03 | 山高刀具公司 | 切削刀片和铣刀 |
EP3808482A1 (en) * | 2019-10-14 | 2021-04-21 | Seco Tools Ab | Cutting insert and milling tool |
WO2021246283A1 (ja) * | 2020-06-03 | 2021-12-09 | 京セラ株式会社 | 切削インサート、切削工具及び切削加工物の製造方法 |
JP7445758B2 (ja) | 2020-06-03 | 2024-03-07 | 京セラ株式会社 | 切削インサート、切削工具及び切削加工物の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5906976B2 (ja) | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 | |
US9555489B2 (en) | Cutting insert and indexable cutting tool | |
CN108472751B (zh) | 切削刀片及可转位刀片式切削工具 | |
EP2101947B1 (en) | Cutting insert and cutting tool | |
KR101549717B1 (ko) | 와이퍼 날을 갖는 절삭 인서트 | |
JP6330913B2 (ja) | 切削インサート及び刃先交換式回転切削工具 | |
JP2007223020A (ja) | インサート式切削工具、インサート、及びインサート式切削工具におけるインサートの固定方法 | |
JP4857958B2 (ja) | 丸駒インサート着脱式切削工具および丸駒インサート | |
JP2014083667A (ja) | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 | |
JP7049263B2 (ja) | 金属切削のための面溝入れ工具体 | |
JP2018534159A (ja) | 旋削インサートおよび方法 | |
JP2018529535A (ja) | 旋削インサート | |
KR20160101158A (ko) | 드릴용 인서트 및 날끝 교환식 드릴 | |
JP5938868B2 (ja) | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 | |
WO2014024862A1 (ja) | 旋削加工用工具 | |
KR20190034266A (ko) | 절삭 인서트 및 날끝 교환식 회전 절삭 공구 | |
JP5515966B2 (ja) | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 | |
JPWO2017068922A1 (ja) | 切削インサートおよび切削工具 | |
JP2007260788A (ja) | 切削インサート及び切削工具 | |
JP4983351B2 (ja) | 切削インサートおよびインサート着脱式転削工具 | |
JP2017164849A (ja) | 切削インサート、切削インサート群、および刃先交換式切削工具 | |
JP4661229B2 (ja) | ガンドリル用インサート及びインサート式ガンドリル | |
JP2007098506A (ja) | スローアウェイチップ及びスローアウェイ式エンドミル | |
JP2014200878A (ja) | 切削インサートおよび刃先交換式切削工具 | |
CN112313025A (zh) | 切向切削刀片和铣削刀具 |