JP2014069852A - 薬液容器および栓体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱可塑性エラストマー製の栓体を使用しても、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入を良好に防止でき、しかも、栓体の構造の簡素化が実現できる薬液容器および栓体を提供する。
【解決手段】 薬液容器10は、薬液12を収納する容器本体20と、容器本体20に設けられる口部30と、口部30を密封する栓体40と、を有する。栓体40は、容器本体20内の薬液12を取り出す針13を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体である。熱可塑性エラストマーの発泡成形体で栓体40を構成したので、栓体40の内部には、多数の気泡が形成される。これにより、栓体40の弾性復元力が高まり、且つ、針13の通し穴に形成される凹凸部に薬液12が保持される。
【選択図】 図1
【解決手段】 薬液容器10は、薬液12を収納する容器本体20と、容器本体20に設けられる口部30と、口部30を密封する栓体40と、を有する。栓体40は、容器本体20内の薬液12を取り出す針13を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体である。熱可塑性エラストマーの発泡成形体で栓体40を構成したので、栓体40の内部には、多数の気泡が形成される。これにより、栓体40の弾性復元力が高まり、且つ、針13の通し穴に形成される凹凸部に薬液12が保持される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、薬液容器および栓体に関し、より詳細には、栓体の弾性復元力を高める技術に関する。
注射用針や点滴用針等の針を栓体に刺し通し、この刺し通した針を介して薬液を外部に取り出す薬液容器が広く利用されている。
この種の薬液容器では、栓体に刺した針が一時的に抜かれることがある。このような場合、栓体の弾性復元力が低いと、針によって栓体に形成された通し穴を十分に閉塞することができないため、通し穴から薬液が漏れたり、通し穴を介して外部から容器本体内に異物が入ったりするおそれがある。このため、従来、栓体の材料には、弾性復元力に優れる加硫ゴムが用いられている。しかし、加硫ゴムは分子量が低いため、加硫ゴム中の添加物等が薬液中に溶出したり、一部が欠けて薬液に混入したりすることが懸念される。この対策として、近年、加硫ゴムの代わりに、薬液に溶出する成分を含まない熱可塑性エラストマーを栓体の材料に用いることが検討されている。
一般に、熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムに比べて弾性復元力が低い。また、熱可塑性エラストマーは熱に弱いことから、パストライザー等で薬液容器ごと薬液を加熱殺菌する場合、熱可塑性エラストマー製の栓体では、加熱によって弾性復元力がさらに低くなる。
そこで、熱可塑性エラストマー製の栓体において、弾性復元力を高める技術が各種提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
図7は、特許文献1の針刺し止栓の基本構成を示す図であり、針刺し止栓100は、点滴用針等の針101を刺し込む部分であって、熱可塑性合成樹脂弾性体(熱可塑性エラストマー)で作られた針刺部分102と、針刺部分102の材料よりも剛性が高い止栓本体103とを有する。そして、針刺部分102には、針刺凹部105が形成される。
この針刺し止栓100の製造方法では、針刺部分102を射出成形した後、止栓本体103の成形金型のキャビティに針刺部分102を載置し、白抜きの矢印で示す向きに針刺凹部105を加圧して撓ませながら、キャビティに溶融樹脂を射出して止栓本体103を成形する。
このように製造される針刺し止栓100によれば、止栓本体103を成形する溶融樹脂による射出圧力によって針刺部分102が加圧されるため、針刺部分102には、圧縮力が加わる。このため、針刺凹部105は、成形金型から解放されると、圧縮力で弾性変形した分、二点鎖線で示すように変形する。このように変形した針刺凹部105に針101を刺し通すと、針刺凹部105には、高い弾性復元力が生ずる。
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、針刺部分102に針刺凹部105を設ける必要があるため、針刺部分102の構造が複雑である。このため、成形金型の構造が複雑化し、製造コストが高くなる。また、特許文献1に記載される技術は、主に、針101を刺した状態での薬液の漏れを防ぐ技術であって、針101を抜いた状態での薬液の漏れや異物の混入を防ぐための対策としては不十分である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱可塑性エラストマー製の栓体を使用しても、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入を良好に防止でき、しかも、栓体の構造の簡素化を実現できる薬液容器および栓体を提供することにある。
本発明は、以下に示す構成によって把握される。
(1)本発明の薬液容器は、薬液を収納する容器本体と、前記容器本体に設けられる口部と、前記口部を密封する栓体と、を有する薬液容器であって、前記栓体は、前記容器本体内の前記薬液を取り出す針を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造を有する発泡成形体であることを特徴とする。
(1)本発明の薬液容器は、薬液を収納する容器本体と、前記容器本体に設けられる口部と、前記口部を密封する栓体と、を有する薬液容器であって、前記栓体は、前記容器本体内の前記薬液を取り出す針を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造を有する発泡成形体であることを特徴とする。
この構成によれば、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体で栓体を構成したので、栓体の内部には、多数の微細な気泡が形成される。このような多数の気泡によって、栓体の弾性復元力を高めることができる。また、栓体に針を刺し通すことで形成される通し穴の周面には、多数の微細な気泡によって凹凸部が形成されるため、仮に通し穴に薬液が浸入しても、凹凸部によって薬液が保持される。これに対して、非発泡の熱可塑性エラストマーの栓体では、通し穴の周面が平滑である。このため、通し穴に浸入した薬液は、保持されることなく、通し穴を抜けて外部に漏れてしまう。この点、本発明では、通し穴の周面において、凹凸部による微細な密閉空間に薬液が保持されるので、薬液が通し穴を抜けて外部に漏れることを防ぐことができる。また、通し穴の周面では、凹凸部によって薬液が通る経路が狭くなるため、薬液は、その表面張力により経路に留まる。したがって、熱可塑性エラストマー製の栓体を使用しても、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入を良好に防止することができる。しかも、従来の技術のように針刺凹部を栓体に形成する必要がないため、栓体の構造の簡素化を実現することができる。
(2)本発明の薬液容器では、(1)の構成において、前記栓体は、超臨界流体からなる物理発泡剤により発泡させて成形した微細発泡成形体であることを特徴とする。
この構成によれば、超臨界流体を用いて成形した微細発泡成形体では、より小さく且つより多くの気泡を栓体の内部に密に得ることができる。このため、栓体の弾性復元力を一層高めることができると共に、通し穴の周面に、より細かい凹凸部を形成することができる。結果、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入をより確実に防止することができる。
(3)本発明の薬液容器では、(2)の構成において、前記栓体は、気泡径の平均値が100μm以下である多数の気泡を有することを特徴とする。
この構成によれば、気泡径の平均値を100μm以下にすることで、より高い弾性復元力を栓体に付与することができる。
(4)本発明の薬液容器では、(1)〜(3)のいずれかの構成において、前記栓体は、圧縮された状態で前記口部に設けられるものであることを特徴とする。
この構成によれば、栓体に刺し通された針に対して、栓体の外側から内側に高い応力が加わる。このため、針を抜いても栓体が良好に復元して、通し穴がより確実に塞がれる。すなわち、栓体には、針を突き刺したことによる圧縮永久歪が生じても、栓体に加わる応力により通し穴を塞ぐ方向に変形が生じ、これにより栓体の弾性復元力がより一層高まるため、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入をさらに確実に防止することができる。
(5)本発明の栓体は、容器本体に設けられる口部を密封する栓体であって、前記容器本体は、薬液を収納するものであり、前記栓体は、前記容器本体内の前記薬液を取り出す針を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造を有する発泡成形体であることを特徴とする。
この構成によれば、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体で栓体を構成したので、栓体の内部には、多数の気泡が形成される。このような多数の気泡によって、栓体の弾性復元力を高めることができる。また、栓体に針を刺し通すことで形成される通し穴の周面には、多数の気泡によって凹凸部が形成されるため、仮に通し穴に薬液が浸入しても、凹凸部によって薬液が保持される。これに対して、非発泡の熱可塑性エラストマーの栓体では、通し穴の周面が平滑である。このため、通し穴に浸入した薬液は、保持されることなく、通し穴を抜けて外部に漏れてしまう。この点、本発明では、通し穴の周面において、凹凸部に薬液が保持されるので、薬液が通し穴を抜けて外部に漏れることを防ぐことができる。また、通し穴の周面では、凹凸部によって薬液が通る経路が狭くなるため、薬液は、その表面張力により経路に留まる。したがって、熱可塑性エラストマー製の栓体を使用しても、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入を良好に防止することができる。しかも、従来の技術のように針刺凹部を栓体に形成する必要がないため、栓体の構造の簡素化を実現することができる。
(6)本発明の栓体は、(5)の構成において、超臨界流体からなる物理発泡剤により発泡させて成形した微細発泡成形体であることを特徴とする。
この構成によれば、超臨界流体を用いて成形した微細発泡成形体では、より小さく且つより多くの気泡を栓体の内部に密に得ることができる。このため、栓体の弾性復元力を一層高めることができると共に、通し穴の周面に、より細かい凹凸部を形成することができる。結果、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入をより確実に防止することができる。
(7)本発明の栓体は、(6)の構成において、気泡径の平均値が100μm以下である多数の気泡を有することを特徴とする。
この構成によれば、気泡径の平均値を100μm以下にすることで、より高い弾性復元力を栓体に付与することができる。
(8)本発明の栓体は、(5)〜(7)のいずれかの構成において、圧縮された状態で前記口部に設けられるものであることを特徴とする。
この構成によれば、栓体に刺し通された針に対して、栓体の外側から内側に高い応力が加わる。このため、針を抜いても栓体が良好に復元して、通し穴がより確実に塞がれる。すなわち、栓体には、針を突き刺したことによる圧縮永久歪が生じても、栓体に加わる応力により通し穴を塞ぐ方向に気泡の変形が生じ、これにより栓体の弾性復元力がより一層高まるため、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入をさらに確実に防止することができる。
本発明によれば、熱可塑性エラストマー製の栓体を使用しても、針の抜き刺しによる薬液の漏れや異物の混入を良好に防止でき、しかも、栓体の構造の簡素化を実現できる薬液容器および栓体を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る薬液容器10は、フック(例えば、点滴用スタンドのフック)11に吊り下げられる容器であって、薬液12を収納する容器本体20と、容器本体20に設けられる口部30と、口部30を密封する栓体40とを有する。ここで、薬液12は、静脈内に注入される輸液、栄養物、輸血などをいう。
図1に示すように、第1実施形態に係る薬液容器10は、フック(例えば、点滴用スタンドのフック)11に吊り下げられる容器であって、薬液12を収納する容器本体20と、容器本体20に設けられる口部30と、口部30を密封する栓体40とを有する。ここで、薬液12は、静脈内に注入される輸液、栄養物、輸血などをいう。
容器本体20は、合成樹脂製の軟包装袋である。容器本体20は、胴部21と、胴部21の上端を塞ぐ上部22と、胴部21の下端に連なり下方に行くに従って縮径する縮径部23とからなる。上部22には、フック11に引っ掛ける吊り孔部25が上方に突出して設けられる。縮径部23の下端には、円筒状の筒部26が設けられており、筒部26下端の開口端27の外周には、第1フランジ部28が鍔状に形成される。なお、容器本体20の構成材料は、各種の材料から選択可能であるが、例えば、透明性を有し且つガスバリア性の高い材料が好適である。また、この例では、容器本体20に筒部26を一体成形したが、容器本体20に対して筒部26を別部品で構成してもよく、容器本体20や筒部26の構成は、適宜変更可能である。
次に、口部30および栓体40の構成を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、口部30は、第1フランジ部28に合わさる鍔状の第2フランジ部31と、第2フランジ部31から下方に円筒状に形成される周壁32とを有する。周壁32下端の開口端33には、他の部分に比べて肉厚が大きい厚肉部35が形成される。このような口部30は、例えば、合成樹脂成形体で構成される。
図2に示すように、口部30は、第1フランジ部28に合わさる鍔状の第2フランジ部31と、第2フランジ部31から下方に円筒状に形成される周壁32とを有する。周壁32下端の開口端33には、他の部分に比べて肉厚が大きい厚肉部35が形成される。このような口部30は、例えば、合成樹脂成形体で構成される。
栓体40は、容器本体20内の薬液12を取り出す針(ここでは、点滴用針)13を刺し通すものである。栓体40は、厚肉部35の内周面に嵌め込まれて保持される。栓体40の形状は、口部30の形状に合わせて各種の形状から選択可能であるが、ここでは、厚肉部35の内周面を密封可能な円板状に形成される。この栓体40は、射出成形により成形することができ、射出成形後、例えば、インサート成形により、口部30の射出成形時に口部30に一体成形することができる。一体化された口部30および栓体40は、容器本体20に薬液12を充填した後、第1フランジ部28に第2フランジ部31を溶着することで容器本体20に取り付けられ、容器本体20を密封する。なお、薬液12は、いわゆる無菌充填によって殺菌後に容器本体20に充填されたり、あるいは、容器本体20に充填されて口部30および栓体40で密封された後、薬液容器10ごと加熱殺菌されたりすることで、滅菌処理される。
栓体40は、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体で構成される。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフイン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニール系エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。これらの中でも、耐薬品性及び密封性の観点から、スチレン系エラストマーであることが好ましく、水添SBSブロックコポリマーであることが更に好ましい。さらに、海相である熱可塑性樹脂中に、架橋ゴム粒子が島相として細かく分散した海島構造を特徴とする動的架橋熱可塑性エラストマーを用いることで圧縮永久歪みが小さな値となり弾性復元性を向上させることができる。熱可塑性エラストマーは、JIS K7210の規格に準拠した230℃、49Nにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜12g/10minであることが好ましい。MFRが0.1g/10min未満であると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、流動性が悪く成形性が低下する傾向がある。また、MFRが12g/10minを超えると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、オートクレープ等による滅菌処理時に変形又は融着してしまう恐れがある。さらに、融点が135〜200℃のものが好ましい。融点が135℃未満であると、融点が上記範囲内にある場合と比較して、耐熱性が劣るので、オートクレープ等による滅菌処理が困難となる場合がある。また、融点が200℃を超えると、融点が上記範囲内にある場合と比較して、成形性が著しく低下し所望の栓体形状に成形することが困難となる欠点がある。また、耐久性の観点から、JIS K6251の規格に準拠したT/S=500mm/minにおける引張破壊強さが6〜25MPaであることが好ましく、引張破壊伸びが300〜1200%、更には820〜1200%であることがより更に好ましい。例えば、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが上記範囲でない場合、繰り返し使用に耐えられず、薬液容器用栓体10に切れ目又は破れが生じる恐れがある。
発泡成形に用いる発泡剤には、物理発泡剤、化学発泡剤あるいはこれらの混合物から任意に選択可能であり、より具体的には、空気、二酸化炭素、窒素、水等の無機系物理発泡剤、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、あるいは、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤、さらに、これらの物理発泡剤と化学発泡剤を併用して用いることができる。
そして、より高い弾力復元性を栓体40に付与するため、例えば、Mucell(米、TREXEL社、登録商標)プロセスにより、超臨界流体からなる物理発泡剤(例えば、二酸化炭素、窒素など)により、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形することが望ましい。超臨界流体からなる物理発泡剤により成形することで、残留化学発泡剤またはその反応生成物を実質的に含まないものとすることができるため、内容物である薬液を変質、劣化させることがない。
ここで、超臨界流体を用いた栓体40の成形方法の一例を図3、図4に基づいて説明する。
図3に示すように、栓体40(図2参照)の製造方法では、射出成形装置50を用いる。射出成形装置50は、射出装置51および金型装置52を有する。射出装置51は、ノズル53を先端に備える加熱筒55と、加熱筒55に設けられるホッパー56とを有する。金型装置52は、固定型57および可動型58からなる成形金型61を有し、型閉めされた成形金型61には、栓体40(図2参照)を成形するキャビティ62が形成される。
さらに、射出成形装置50は、超臨界流体を発生させる超臨界流体発生装置63と、超臨界流体発生装置63で発生した超臨界流体を加熱筒55内に注入する超臨界流体注入装置65とを有する。ここで、超臨界流体とは、気体と液体の両方の性質を有する流体である。
射出成形装置50では、ホッパー56から加熱筒55に落下した樹脂材料(熱可塑性エラストマー)をスクリュー(図示省略)で混練・可塑化し、計量する。これと同時に、超臨界流体発生装置63で発生した超臨界流体を超臨界流体注入装置65によって加熱筒55内の溶融樹脂に注入する。これにより、超臨界流体を細かく溶融樹脂内に分散させ、溶融樹脂をノズル53から成形金型61のキャビティ62に噴射し、図4(a)および(b)に示すように、微細発泡成形体の栓体40を得る。この微細発泡成形体の栓体40の内部には、より小さく且つより多くの気泡41が密に形成される一方で、成形時に成形金型61のキャビティ62と接触する栓体40の表面には発泡による微細な凹凸のないスキン層が形成され、薬液との接触面、周壁32との溶着面および針刺し面となる上表面は平滑な表面状態を有する。本発明者は、鋭意研究に努めた結果、気泡径dの平均値(平均気泡径)を100μm以下、好ましくは20μm以下でかつ、発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造のものとすることで、針刺しによる永久歪みが発生し難く、高い弾性復元力を発揮することを見出した。
以上、説明した薬液容器10の作用・効果について述べる。
薬液容器10では、熱可塑性エラストマーの発泡成形体で栓体40を構成したので、栓体40の内部には、多数の微細な独立気泡構造の気泡41が形成される。このような多数の微細な独立気泡構造の気泡41によって、栓体40の圧縮永久歪みが発生しにくくなり、弾性復元力を高めることができるとともに通し穴42の内面の界面張力を向上させることができる。これにより、図5(a)に示すように、栓体40に針13を刺し通した後、図5(b)に示すように、針13を抜くと、図5(c)に示すように、通し穴42の周面には、多数の気泡41(図4参照)によって凹凸部43が形成される。このため、仮に通し穴42に薬液12が浸入しても、凹凸部43に(例えば、凹部43aの中に)薬液12が保持される。
薬液容器10では、熱可塑性エラストマーの発泡成形体で栓体40を構成したので、栓体40の内部には、多数の微細な独立気泡構造の気泡41が形成される。このような多数の微細な独立気泡構造の気泡41によって、栓体40の圧縮永久歪みが発生しにくくなり、弾性復元力を高めることができるとともに通し穴42の内面の界面張力を向上させることができる。これにより、図5(a)に示すように、栓体40に針13を刺し通した後、図5(b)に示すように、針13を抜くと、図5(c)に示すように、通し穴42の周面には、多数の気泡41(図4参照)によって凹凸部43が形成される。このため、仮に通し穴42に薬液12が浸入しても、凹凸部43に(例えば、凹部43aの中に)薬液12が保持される。
これに対して、非発泡の熱可塑性エラストマーの栓体では、通し穴の周面が平滑である。このため、通し穴に浸入した薬液は、保持されることなく、通し穴を抜けて外部に漏れてしまう。
この点、栓体40では、通し穴42の周面において、凹凸部43に薬液12が保持されるので、薬液12が通し穴42を抜けて外部に漏れることを防ぐことができる。また、通し穴42の周面では、凹凸部43によって薬液12が通る経路45が狭くなるため、薬液12は、その表面張力により経路45に留まる。
したがって、熱可塑性エラストマー製の栓体40を使用しても、針13の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入を良好に防止することができる。しかも、従来の技術のように針刺凹部を栓体に形成する必要がないため、栓体40の構造の簡素化を実現することができる。
また、超臨界流体を用いて成形した微細発泡成形体で栓体40を構成すれば、より小さく且つより多くの気泡41(図4参照)を栓体40の内部に密に得ることができる。このため、栓体40の弾性復元力を一層高めることができると共に、通し穴42の周面に、より細かい凹凸部43を形成することができる。結果、針13の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入をより確実に防止できる。
さらに、圧縮された状態で微細発泡成形体からなる栓体40を口部30に設けることにより、針13の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入をさらに確実に防止することができる。ここで、栓体40を圧縮し、且つ、栓体40の圧縮状態を保持する手段は、各種の成形技術や各種の固定技術から選択可能である。例えば、口部30を射出成形により成形する際、成形金型に栓体40をインサートし、特許第3939590号公報に代表される成形技術を用い、溶融樹脂の射出圧を通常よりも高く設定することによって、成形された口部30に栓体40を圧縮した状態で組み込むことができる。あるいは、成形金型に栓体40をインサートした後、成形金型の型締め時に、例えば、特許第4526091号公報に代表される成形技術を用い、成形金型に設けた凸部で栓体40を潰して圧縮し、この栓体40の圧縮状態を保持したまま口部30を成形することにより、圧縮した状態で栓体40を口部30に組み込んでもよい。あるいは、栓体40を口部30に組み付ける際、例えば、特許第4477216号公報に代表される固定技術を用い、楔状の部材を栓体40に圧入することにより、栓体40を加圧・圧縮して口部30に固定してもよい。
このように圧縮された状態で栓体40を口部30に設けることにより、図5(a)において白抜きの矢印で示すように、栓体40に刺し通された針13に対し、栓体40の外側から内側に高い応力が加わる。このため、針13を抜いても栓体40が良好に復元して、通し穴42がより確実に塞がれる。すなわち、栓体40には、針刺しによる圧縮永久歪が生じても、栓体に加わる応力により通し穴を塞ぐ方向に気泡の変形が生じ、栓体40の弾性復元力がより一層高まるため、針13の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入をさらに確実に防止することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る薬液容器を図6に基づいて説明する。なお、前述した薬液容器10と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
次に、本発明の第2実施形態に係る薬液容器を図6に基づいて説明する。なお、前述した薬液容器10と共通する要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
前述した第1実施形態においては、吊り下げ式の薬液容器10に本発明を適用したが、本発明は、この他、瓶型の薬液容器にも適用可能である。
第2実施形態に係る薬液容器70は、いわゆるバイアル瓶であって、薬液12を収納する容器本体80と、容器本体80に設けられる口部81と、口部81を密封する栓体90とを有する。また、薬液容器70は、栓体90を封止する封止体71を有する。
容器本体80は、合成樹脂やガラスなど任意の材料で構成され、有底筒状を呈する。容器本体80は、円筒状の胴部82と、胴部82の下端を塞ぐ底部83と、胴部82の上端に連なり上方に行くに従って縮径する肩部85とを有する。口部81は、肩部85の上端に一体成形される。なお、この例では、容器本体80に口部81を一体成形したが、容器本体80に対して口部81を別部品で構成してもよく、容器本体80や口部81の構成は、適宜変更可能である。
封止体71は、口部81を密封した栓体90を封止するキャップであり、栓体90の改ざんを防ぐ、いわゆるピルファープルーフキャップとしての機能も有する。この例では、封止体71は、栓体90の周囲を側方から覆う周壁部72と、栓体90の上面の周縁部を覆う天面部73とを一体成形した合成樹脂製のキャップである。なお、使用済みの薬液容器70を廃棄する際に、封止体71を口部81から容易に分離させるため、封止体71には、周壁部72の一部および天面部73の一部を切り取るための線状の薄肉部75および線状の隙間部76を設けてもよい。
栓体90は、容器本体80内の薬液12を取り出す針(ここでは、注射用針)77を刺し通すものである。栓体90は、口部81の内周面に嵌合する円筒状の嵌合部91と、嵌合部91の上端に形成され口部81の天面に接触する円板部92とからなる。栓体90は、容器本体80に薬液12を充填した後、口部81に嵌合されて口部81を密封する。
栓体90は、前述した第1実施形態と同様に、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡成形体で構成される。そして、栓体90についても、より高い弾力復元性を付与するため、例えば、Mucell(米、TREXEL社、登録商標)プロセスにより、超臨界流体からなる物理発泡剤(例えば、二酸化炭素、窒素など)を用いて成形することが望ましい。なお、栓体90を成形するための熱可塑性エラストマー、発泡剤、および、成形方法は、前述した栓体40(図4参照)と同様である。
この第2実施形態の薬液容器70によれば、熱可塑性エラストマーの発泡成形体で栓体90を構成したので、栓体90の内部には、前述した栓体40(図4参照)と同様に、多数の気泡が形成される。このような多数の気泡によって、栓体90の弾性復元力を高めることができる。また、栓体90においても、針77を刺し通すことで形成される通し穴の周面には、多数の気泡によって凹凸部が形成されるため、通し穴に薬液12が浸入しても、凹凸部によって薬液12が保持される。
したがって、熱可塑性エラストマー製の栓体90を使用しても、針77の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入を良好に防止することができる。しかも、従来の技術のように針刺凹部を栓体に形成する必要がないため、栓体90の構造の簡素化を実現することができる。
さらに、第2実施形態の薬液容器70においても、超臨界流体を用いて成形した微細発泡成形体で栓体90を構成すれば、より小さく且つより多くの気泡を栓体90の内部に密に得ることができ、針77の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入をより確実に防止することができる。
なお、この第2実施形態においても、針77の抜き刺しによる薬液12の漏れや異物の混入をさらに確実に防止するため、圧縮された状態で栓体90を口部81に設けることができる。栓体90の圧縮状態を保持する手段は、前述した栓体40の場合と同様に、各種の成形技術や各種の固定技術を用いることができる他、バイアル瓶の口部に押圧変形させた状態で圧入させて封止体71により固定することにより達成することができる。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 薬液容器
12 薬液
13 針
20 容器本体
30 口部
40 栓体
41 気泡
70 薬液容器
77 針
80 容器本体
81 口部
90 栓体
d 気泡径
12 薬液
13 針
20 容器本体
30 口部
40 栓体
41 気泡
70 薬液容器
77 針
80 容器本体
81 口部
90 栓体
d 気泡径
Claims (8)
- 薬液を収納する容器本体と、前記容器本体に設けられる口部と、前記口部を密封する栓体と、を有する薬液容器であって、
前記栓体は、前記容器本体内の前記薬液を取り出す針を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造を有する発泡成形体であることを特徴とする薬液容器。 - 前記栓体は、超臨界流体からなる物理発泡剤により発泡させて成形した微細発泡成形体であることを特徴とする請求項1に記載の薬液容器。
- 前記栓体は、気泡径の平均値が100μm以下である多数の気泡を有することを特徴とする請求項2に記載の薬液容器。
- 前記栓体は、圧縮された状態で前記口部に設けられるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液容器。
- 容器本体に設けられる口部を密封する栓体であって、
前記容器本体は、薬液を収納するものであり、
前記栓体は、前記容器本体内の前記薬液を取り出す針を刺し通すものであり、且つ、熱可塑性エラストマーを発泡させて成形した発泡倍率が1.1〜5.0倍の独立気泡構造を有する発泡成形体であることを特徴とする栓体。 - 前記栓体は、超臨界流体からなる物理発泡剤により発泡させて成形した微細発泡成形体であることを特徴とする請求項5に記載の栓体。
- 前記栓体は、気泡径の平均値が100μm以下である多数の気泡を有することを特徴とする請求項6に記載の栓体。
- 前記栓体は、圧縮された状態で前記口部に設けられるものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の栓体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012217327A JP2014069852A (ja) | 2012-09-28 | 2012-09-28 | 薬液容器および栓体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2021054270A1 (ja) * | 2019-09-18 | 2021-03-25 | 積水メディカル株式会社 | 栓体 |
-
2012
- 2012-09-28 JP JP2012217327A patent/JP2014069852A/ja active Pending
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WO2021054270A1 (ja) * | 2019-09-18 | 2021-03-25 | 積水メディカル株式会社 | 栓体 |
JP6904629B1 (ja) * | 2019-09-18 | 2021-07-21 | 積水メディカル株式会社 | 栓体 |
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