JP2014069789A - グリルシャッタ - Google Patents

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義高 樋口
Masahiro Tashiro
昌宏 田代
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Abstract

【課題】出力が大きな駆動手段を用いることなく、水分が凍結した閉状態のブレードを開作動させることができるグリルシャッタを提供する。
【解決手段】車体(1)の前部に形成された外気導入開口3を開閉するグリルシャッタ10であって、外気導入開口3を囲繞する枠体11に回動自在に設けられ、外気導入開口3を閉鎖する閉位置と外気導入開口を開放する開位置との間で回転駆動される複数のブレード12と、複数のブレード12を回転駆動する単一の駆動手段(13)と、駆動手段の駆動力を複数のブレード12に伝達する動力伝達機構(12L、12R、20、22、24)とを備え、動力伝達機構が複数のブレード12の開作動を所定の時間差をもって順番に開始させる構成とする。
【選択図】図9

Description

本発明は、車体前部の外気導入開口を開閉するグリルシャッタに関する。
自動車では一般に、ラジエータに冷却用の外気を供給するため、車体前部に外気導入開口が形成される。外気導入開口が格子状のグリルにより覆われた単なる開口である場合、走行風はエンジンルーム内に常時流入可能である。ところが、寒冷地では外気導入開口から流入する外気がエンジンの暖機を遅らせ、燃費の悪化などを招くため、グリルシャッタを設け、外気導入開口を閉鎖できるようにすることがある。
グリルシャッタの構造としては、外気導入開口を囲繞する枠体部分に複数のブレードを回動自在に取り付け、これらブレードの回動により外気導入開口を開閉するものが多い。具体的には、ブレードが前後方向に延在する回動位置にあるときには外気導入開口が開放され、ブレードが外気導入開口面に沿って延在する回動位置にあるときには外気導入開口が閉鎖される。グリルシャッタには、左右方向に延在する(略水平な回動軸を有する)複数のブレードを上下方向に配置したものと(例えば、特許文献1)、上下方向に延在する(略垂直な回動軸を有する)複数のブレードを左右方向に配置したもの(例えば、特許文献2、3)とがある。
特開2001−195039号公報 特開昭62−203919号公報 特開平1−277616号公報
ところで、寒冷地ではブレードに付着している水が凍結することがある。ブレードが開いた状態で水分が凍結し、駆動力が足りずにブレードが閉作動できなくなる場合には、外気導入開口が開放された状態になるので、エンジンの暖機にかかる時間が長くなるだけである。一方、ブレードが閉じた状態で水分が凍結し、駆動力が足りずにブレードが開作動できなくなる場合には、外気導入開口が閉鎖された状態になるため、エンジンがオーバーヒートとなる虞がある。
しなしながら、従来のグリルシャッタは、連結部材によってすべてのブレードを連結し、連結部材を駆動することによってすべてのブレードの開作動を一斉に行うようにしている。そのため、凍結時にもブレードを開作動させるためには、出力が非常に大きな駆動手段を用いなければならず、不経済であった。
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、大きな出力の駆動手段を用いることなく、水分が凍結した閉状態のブレードを開作動させることができるグリルシャッタを提供することを主な目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、車体(バンパ1)の前部に形成された外気導入開口(3)を開閉するグリルシャッタ(10)であって、前記外気導入開口を囲繞する枠体(11)に回動自在に設けられ、前記外気導入開口を閉鎖する閉位置と前記外気導入開口を開放する開位置との間で回転駆動される複数のブレード(12)と、前記複数のブレードを回転駆動する単一の駆動手段(13)と、前記駆動手段の駆動力を前記複数のブレードに伝達する動力伝達機構(12L、12R、20、22、24)とを備え、前記動力伝達機構が前記複数のブレードの開作動を所定の時間差をもって順番に開始させる構成とする。
水分が凍結した閉状態のブレードを開作動させる際には、開作動の開始時に最も大きな駆動力が必要になる。そこでグリルシャッタをこのような構成とすることにより、各ブレードが最も大きな駆動力を必要とする開作動の開始タイミングがずれ、複数のブレードを開作動させるために必要な駆動力が小さくなる。したがって、出力が大きな駆動手段を用いることなく、水分が凍結した閉状態の複数のブレードを開作動させることができる。
また、本発明の一側面によれば、前記動力伝達機構が、前記複数のブレードを連結する連結バー(20、22)を含み、各ブレードと前記連結バーとは、どちらか一方に形成された凹部(21、23)と、どちから他方に形成された凸部(19)との係合により互いに連結され、前記複数の凹部の長さが前記ブレードの配置に応じて異なることにより、前記連結バーが前記複数のブレードの開作動を所定の時間差を持って順番に開始させる構成とすることができる。
このような構成とすることにより、従来の構成のグリルシャッタに対し、凹部の長さをブレードの配置に応じて異ならせるという簡単な構成により、複数のブレードの開作動を順番に開始させる動作を実現することができる。
また、本発明の一側面によれば、前記複数のブレードが、前記外気導入開口の左右方向の中央(CL)を対称軸にして左右対称に配置され、前記外気導入開口の左側半分に配置された左側ブレード(12L)と前記外気導入開口の右側半分に配置された右側ブレード(12R)とが、前記動力伝達機構を介して対称的に回転駆動される構成とすることができる。
この構成によれば、複数のブレードを順番に開作動させる動作を左右対称に行うことができ、グリルシャッタの商品性を高めることができる。
また、本発明の一側面によれば、前記複数のブレードが、前記外気導入開口の左右方向の中央(CL)を対称軸にして左右対称に配置され、前記外気導入開口の左側半分に配置された左側ブレード(12L)と前記外気導入開口の右側半分に配置された右側ブレード(12R)とが、前記動力伝達機構を介して交互に回転駆動される構成とすることができる。
この構成によれば、すべてのブレードの開作動の開始タイミングをずらしつつ、複数のブレードを順番に開作動させる動作を概ね左右対称に行うことができ、駆動手段の小型化とグリルシャッタの商品性向上とを両立させることができる。
このように本発明によれば、大きな出力の駆動手段を用いることなく、水分が凍結した閉状態のブレードを開作動させることができるグリルシャッタを提供することができる。
実施形態に係るグリルシャッタを斜め後方から見た斜視図 車体前部の左側半分を示す正面図 図1中のIII部拡大図 開状態のグリルシャッタの左側半分を上から見た図 閉状態のグリルシャッタの左側半分を上から見た図 グリルシャッタを上から見た模式図 ブレードの回動角度と各種トルクとの相関を示すグラフ ブレードの回動角度と各種トルクとの相関を示すグラフ 開作動中のグリルシャッタの左側半分を上から見た図 第1変形実施形態に係るグリルシャッタの要部を斜め後方から見た斜視図 第2変形実施形態に係るグリルシャッタの左側半分を上から見た図
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、グリルシャッタ10が設けられる自動車の進行方向を前方とし、前方を基準にして左右を定めるている。
図1および図2に示すように、自動車の車体前部に設けられるバンパ1の前面下部には、エンジンルーム2内に走行風を取り入れるための外気導入開口3が形成されている。外気導入開口3は、上下方向に比べて左右方向に長い矩形を呈しており、バンパ1の左右方向の中央に配置されている。外気導入開口3には、格子状のグリル4が取付けられ、外気導入開口3からエンジンルーム2内に大きな異物が進入しないようになっている。なお、図2では、仮想線でバンパ1を示している。
外気導入開口3は矩形を呈しているが、グリル4およびグリル4が形成されるバンパ1の前面に形成された凹部5は、意匠性の向上を図るために、外気導入開口3から左右に突出し、突出した部分が湾曲形状となっている。外気導入開口3の後方には、エンジン冷却水を冷却するための図示しないラジエータが設けられ、外気導入開口3から流入した外気によりラジエータが冷却される。
グリル4の後方には、外気導入開口3を開閉するグリルシャッタ10が設けられている。グリルシャッタ10は、バンパ1に取付けられた枠体11と、枠体11に回動自在に取付けられ、外気導入開口3の全幅にわたって左右方向に配設された複数のブレード12と、これらブレード12を回転駆動するためのモータ13とを主要構成要素として備えている。なお、ここでは枠体11はバンパ1と別部材とされるが、バンパ1と一体形成されてもよい。
枠体11は、樹脂を素材とする射出成形品であり、正面視で外気導入開口3を囲繞する矩形枠状を呈している。枠体11は、それぞれ平板状を呈する上枠11U、下枠11B、右側枠11Rおよび左側枠11Lを有し、外気導入開口3を後方に延長させている。言い換えれば、上枠11U、下枠11B、右側枠11Rおよび左側枠11Lが外気導入開口3の後部を画成している。枠体11の右側枠11Rおよび左側枠11Lにはそれぞれ取付フランジ14が一体形成されており、バンパ1に取付フランジ14がボルト締結されることにより枠体11がバンパ1に固定される。枠体11には、上枠11Uと下枠11Bとを連結する縦リブ15が一体形成されている。縦リブ15は、枠体11の左右方向の中央すなわち車体の中央線CL上と、中央と左右の端部との中間位置との3箇所に設けられている。
各ブレード12は縦長の板状を呈しており、板状部の上下端には上側軸16および下側軸17が一体形成されている。下側軸17は、円柱状を呈して板状部から下方へ突出し、下枠11Bに形成された図示しない円形断面の下側支持孔に挿入されて軸支される。上側軸16は、図3および図4の部分拡大図に併せて示すように、円柱状を呈して板状部から上方へ突出する軸部16aと軸部16aの上端に形成されたフランジ部16bとを有しており、フランジ部16bと板状部とにより上枠11Uを挟んだ状態で、軸部16aが上枠11Uに貫通形成された上側支持孔18に軸支される。
上側支持孔18は、上側軸16の軸部16aに対応する小径孔18aと、上側軸16のフランジ部16bよりも大きな径を有し、小径孔18aに連設する大径孔18bとを有する瓢箪形を呈しており、大径孔18bにフランジ部16bを挿入させた上側軸16を小径孔18a側に移動させることで、軸部16aを小径孔18aに嵌着できるようになっている。上側軸16および上側支持孔18がこのように形成されることにより、ブレード12の着脱が容易になっている。
これらのブレード12は、外気導入開口3の左右方向の中央すなわち車体の中央線CLを対称軸にして左右対称に配置されており、図4に示す、前後方向に延在して外気導入開口3を開放する開位置と、図5に示す、左右方向に延在して外気導入開口3を閉鎖する閉位置との間で回転駆動される。ブレード12が開位置にある図4の開状態では、外気導入開口3を通ってエンジンルーム2内に流入しようとする外気は小さな抵抗でグリルシャッタ10を通過する。なお、図4の開状態において、ブレード12は回動軸(上側軸16および下側軸17を結ぶ直線)から前端までの寸法が回動軸から後端までの寸法よりも小さくなっている。
一方、各ブレード12の前後方向長さ(開位置にあるときの前後方向長さ)および間隔(図示しない下側支持孔および上側支持孔18の間隔)は、ブレード12が閉位置にある図5の閉状態において、1つのブレード12の前端とこれに隣接するブレード12の後端とが正面視(図2)で重なるように設定され、外気導入開口3の左右方向の中央部を除く部分の全域がブレード12により覆われる。したがって、図5の閉状態では、外気導入開口3を通ってエンジンルーム2内に流入しようとする外気はほとんどグリルシャッタ10を通過できない。なお、左右方向の最も外側に配置されたブレード12は、左側枠11Lおよび右側枠11Rに形成された後向き肩面11s(図3参照)にそれぞれ後端が当接し、閉状態において正面視で枠体11と重なる。また、左右方向の最も中央寄り(内側)に配置される2つのブレード12は、閉状態においてそれぞれ前端が中央の縦リブ15に正面視で重なる(図5参照)。
図3および図4に示すように、開状態において各ブレード12の後部には、上方に突出する凸部19が形成されている。左側半部に配置されたブレード12(以下、左側ブレード12Lと称する。)は、ぞれぞれの凸部19を係合させる複数の貫通孔21(図示例では上下に貫通する溝も含んでいるが、ここではすべてを貫通孔と呼ぶものとする。後述する貫通孔23についても同様とする。)が形成された左連結バー20により連結されており、左連結バー20が駆動されることにより一連の動作を行う。一方、右側半分に配置されたブレード12(以下、右側ブレード12Rと称する。)も同様に、それぞれの凸部19を係合させる複数の貫通孔23(図1参照)が形成された右連結バー22により連結されており、右連結バー22が駆動されることにより一連の動作を行う。
左側ブレード12Lのうち最も中央寄りに配置された左側ブレード12Lの上側軸16には、フランジ部16bの外周面に凹凸が形成されており、この左側ブレード12Lのフランジ部16bに係合するようにモータ13が上枠11Uの上面に取付けられる。左側ブレード12Lは、最も中央寄りの左側ブレード12Lがモータ13に駆動されることにより、左連結バー20を介して回転駆動される。つまり、モータ13が直接駆動する最も中央寄りの左側ブレード12Lと左連結バー20とが、モータ13の駆動力を左側ブレード12Lに伝達する動力伝達機構を構成する。
開状態において(図4)、最も中央寄りに配置された左側ブレード12Lの後部と、右側ブレード12Rのうち最も中央寄りに配置された右側ブレード12Rの前部とは、S字状のリンク24により連結されている。これにより、右連結バー22が左連結バー20と同期して揺動し、右側ブレード12Rと左側ブレード12Lとが同時且つ左右対称に開閉作動を行う。つまり、リンク24が、左連結バー20と右連結バー22とを同期して揺動させる同期手段を構成する。
例えば、図4の開状態において左側ブレード12Lがモータ13により閉方向に駆動され、図5に示すように左側ブレード12Lの後部が左方に移動すると、リンク24が連結する最も内側の右側ブレード12Rの前部も左方に移動し、右連結バー22によって連結されたすべての右側ブレード12Rが閉方向に駆動される。つまり、モータ13が直接駆動する最も中央寄りの左側ブレード12Lと、この左側ブレード12Lに一端が連結するリンク24と、リンク24の他端が連結する最も中央寄りの右側ブレード12Rと、右連結バー22とが、モータ13の駆動力を右側ブレード12Rに伝達する動力伝達機構を構成する。
このように動力伝達機構が構成されたことにより、外気導入開口3の左右方向の中央を対称軸にして左右対称に配置された右側ブレード12Rと左側ブレード12Lとを対称的に回動させることができる。
左連結バー20の右端付近には、一端が上枠11Uに係止された第1引張コイルばね25の他端が係止されている。第1引張コイルばね25は、左連結バー20を常時右方すなわち開方向に付勢しており、モータ13が故障した場合などにもモータ13のロータを回転させてブレード12を開位置に回動させるフェールセール機能を果たす。
ここでは第1引張コイルばね25は、図6に示すように、開状態において11.6Nで左連結バー20を引張り、閉状態において27.7Nで左連結バー20を引張り、ブレード12が中間位置にある状態(以下、半開状態と称する)において22.1Nで左連結バー20を引張っている。そのため、左側ブレード12Lには、図7(A)に示すように、ブレード12の位置(回動角度)に応じ、第1引張コイルばね25の引張力のうち回動方向(ブレード12の回動角度に直交する方向)の分力が開方向トルク(以下、第1ばねトルクT25と称する。)として作用する。
また、図4および図5に示すように、左連結バー20の左端近傍には、一端が上枠11Uに係止された左第2引張コイルばね26Lの他端が係止されている。同様に、右連結バー22の右端付近には、一端が上枠11Uに係止された右第2引張コイルばね26R(図1)の他端が係止されている。左第2引張コイルばね26Lは、ブレード12が開位置にあるとき(図4)には、ブレード12の延在方向である前方に対して斜め右に左連結バー20を引張っており、ブレード12が閉位置にあるとき(図5)には、ブレード12の延在方向である右方に対して斜め前方に左連結バー20を引張っている。つまり、両第2引張コイルばね26L、26Rは、ブレード12が開位置にあるときに対応する連結バー20、22を開方向に付勢し、ブレード12が閉位置にあるときに対応する連結バー20、22を閉方向に付勢するターンオーバースプリングである。
ここでは両第2引張コイルばね26は、図6に示すように、開状態において4.0Nで左連結バー20を引張り、閉状態において4.0Nで左連結バー20を引張り、半開状態において4.8Nで左連結バー20を引張っている。そのため、ブレード12には、図7(B)に示すように、ブレード12の位置(回動角度)に応じ、第2引張コイルばね26の引張力のうち回動方向(ブレード12の回動角度に直交する方向)の分力が開方向トルクまたは閉方向トルク(以下、第2ばねトルクT26と称する。)として作用する。
したがって、左連結バー20および右連結バー22には、第1ばねトルクT25および第2ばねトルクT26の合算値(以下、合計ばねトルクTsと称する。)が、図7(C)に示すように負荷される。合計ばねトルクTsは、全閉位置において最も小さく、ブレード12が開方向に回動するにつれて大きくなっている。全閉状態での合計ばねトルクTsは、図7(C)に破線で示す、非通電状態のモータ13のロータを回転させてブレード12を回動させるために必要なトルク(ブレード12および動力伝達機構の摩擦抵抗並びにモータ13のコギングトルクに対抗するトルク。以下、フェールセーフトルクTfsと称する。)よりも大きく、且つこのフェールセーフトルクTfsに近い値となるように設定されている。また、第1引張コイルばね25および第2引張コイルばね26を組み合わせることにより、合計ばねトルクTsは、全閉近傍の回動角度においてフェールセールとして機能し得る開方向範囲で小さな値となる一方で、それ以外の広い回動角度範囲において、開方向の比較的大きく且つ突出しない(変化が少ない)値となっている。
また、図6に示すように、閉位置にあるブレード12は走行風による風圧を受ける。この風圧は車速に応じて変化する。したがって、ブレード12には合計ばねトルクTsに加え、車速およびブレード12の回動角度に応じて変化する風圧によるトルクが作用する。この風圧によるトルクの最大値(以下、風圧トルクTwと称する。)は、走行風を受けてもブレード12を閉じておくべき所定車速における風圧の値に、閉位置にあるブレード12における回動軸に対して右側および左側の受圧面積の差(開位置にあるブレード12の回動軸から前端および後端(正確には隣接するブレード12によって覆われない位置)までの寸法差に応じた受圧面積の差)を乗算した荷重に応じた値である。風圧トルクTwは、図8(A)に示すように、全閉状態において最も大きな値(全閉状態での風圧トルクTw)となり、全開状態において最も小さくなる。
したがって、所定車速での車両走行時には、図8(B)に実線で示すような合計トルクTtがブレード12に作用する。なお、図8(B)中、仮想線(二点鎖線)は合計ばねトルクTsを示しており、合計ばねトルクTsに図8(A)の風圧トルクTwを合算した値が合計トルクTtとなる。
モータ13は、エンジン冷却水の温度などに応じて駆動制御される。エンジン始動時などの冷却水温度が低いときには、ブレード12を閉位置に回転駆動すべく、図8(B)に破線で示す閉方向の駆動トルクTdに応じた比較的大きな閉方向の電流がモータ13に供給される。この駆動トルクTdは、合計トルクTtの最大値よりも大きな値(絶対値)に設定される。その後、閉状態を維持する間は、ブレード12を閉位置に保持すべく、図8(B)に一点鎖線で示す保持トルクThに応じた比較的小さな閉方向の電流がモータ13に供給され続ける。一方、暖機により冷却水温度が上昇してくると、ブレード12を開位置に回転駆動すべく、図8(B)に破線で示す開方向の駆動トルクTdに応じた比較的大きな開方向の電流がモータ13に供給される。
ここでは、図8(B)に破線で示す閉方向および開方向の駆動トルクTdを、方向が異なる同一の大きさとしている。また、図8(B)に一点鎖線で示す保持トルクThを、全閉状態での合計トルクTtと方向が異なる同一の大きさとしている。
このように、ブレード12を閉じている間は電流が常時モータ13に供給されるが、全閉状態における合計ばねトルクTsがフェールセーフ機能を発揮し得る範囲で(Ts>Tfs)小さな値に設定されることにより、閉状態を維持するための電流を小さくすることが可能になる。また、全閉位置近傍以外の広い回動角度範囲において、合計ばねトルクTsが比較的大きく且つ突出しない開方向の値となることにより、開方向へのフェールセーフ作動の信頼性確保と、ブレード12の駆動に必要なモータ13の出力低減との両立が可能になる。
さらに、モータ13が、全閉状態での合計トルクTtに相当する保持トルクThをもってブレード12を閉位置に保持するため、全閉状態での合計ばねトルクTsに加え、所定車速での走行風を受けても、ブレード12を閉位置に保持できるうえ、所定車速での走行による風圧よりも大きな、水溜り突入時の水圧などの圧力が加わったときには、保持トルクThに抗してブレード12が開作動するため、過大圧力によるブレード12の破損が防止される。
また、図4の開状態において、ブレード12における回動軸から前端までの寸法が回動軸から後端に重なる隣接するブレード12の先端までの寸法よりも小さくなる、すなわち、正面視において、閉位置にあるブレード12における閉方向のトルクを発生させる後端側の受圧面積が開方向のトルクを発生させる前端側の受圧面積よりも小さくなる位置に回動軸(上側軸16および下側軸17)が設定されたことにより、走行風圧が開方向の風圧トルクTwとなってブレード12に作用するため、モータ13が故障したときにブレードが閉位置に留まったとしても、エンジンが高温になりやすい車両走行時には、風圧トルクTwがブレード12の開方向作動を補助し、エンジンがオーバーヒートになることがより確実に防止される。
ところで、暖機により冷却水温度が上昇したときであっても、外気温が低い場合、特に暖機中に自動車の走行を開始した場合などには、ブレード12に付着している水分が凍結し、互いに隣接するブレード12における閉状態で接触する(または近接する)部分や、最も外側のブレード12における側枠と接触する(または近接する)部分が固着することがある。このような事態が生じると、ラジエータに冷却用空気が供給されず、エンジン冷却水温が上昇してしまう。そのため、このような場合にもブレード12の回転駆動を可能にするために、本実施形態では、動力伝達機構が前記複数のブレード12の開作動を時間差をもって順番に開始させるようにしている。以下に、時間差機構の構成について説明する。なお、時間差機構は、左側ブレード12Lおよび右側ブレード12Rともに同じ原理を用い、対称的な構成となっているため、ここでは左側ブレード12Lについて説明する。
図5に示すように、左連結バー20に形成された左側ブレード12Lの凸部19を係合させる複数の貫通孔21は、最も中央寄りのものが真円に形成される一方、外側(左方)のものほど長手寸法が大きくなる長孔とされている。長孔とされた各貫通孔21は、閉状態におけるブレード12の回動方向(概ね前後方向)に対して前方に向かって外側に傾斜している。閉状態では、各ブレード12の凸部19は貫通孔21の後端に位置している。
この状態から最も内側の左側ブレード12Lが開方向へ駆動されると、最も内側の左側ブレード12Lが開作動(回動)を開始し、所定の時間差(所定の回動角度差)をもって順番に外側の左側ブレード12Lが開作動を開始する。ここでは、互いに隣接する左側ブレード12L間の回動開始の角度差が2度に設定されており、最も内側の左側ブレード12Lと最も外側の左側ブレード12Lとの回動開始の角度差は16度となる。図9は、最も外側の左側ブレード12Lが開作動を開始した状態を示しており、この時点では最も左側内側のブレード12Lは16度回動している。
回動動作をより具体的に説明すると、図5の閉状態では、各左側ブレード12Lの凸部19は左連結バー20の貫通孔21に後端に係合している。なお、この状態では第2引張コイルばね26Lが左連結バー20の左端を前方に付勢している。最も内側の左側ブレード12Lが回動を始めると、左連結バー20は揺動するが、内側から2番目およびそれよりも外側の左側ブレード12Lは、凸部19が貫通孔21内を移動するだけで回動しない。その後、最も内側の左側ブレード12Lが2度回動したときに、内側から2番目の左側ブレード12Lは、凸部19が貫通孔21の前端に係合し、回動を開始する。このように順に内側から左側ブレード12Lが回動を開始し、最も外側の左側ブレード12Lは、最も内側の左側ブレード12Lが16度回動したとき(図9)に、凸部19が貫通孔21の前端に係合し、回動を開始する。なお、各左側ブレード12Lの凸部19は、その後の回動動作中に貫通孔21に対して相対的に前方に移動し、図4の開状態では、再度、対応する貫通孔21の後端に係合した状態となる。
このように、複数の左側ブレード12Lの開作動が時間差をもって順番に開始することで、左側ブレード12Lが最も大きな駆動力を必要とする開作動の開始タイミングがずれるため、閉状態で水分の凍結などによって左側ブレード12Lが固着していても、左側ブレード12Lを開作動させるために必要な駆動力が小さくなる。これにより、出力が大きなモータ13を用いることなく、水分が凍結した閉状態の左側ブレード12Lを開作動させることができる。また、左連結バー20に形成された複数の貫通孔21の長さを左側ブレード12Lの配置に応じて異ならせるという簡単な構成により、複数の左側ブレード12Lの開作動を順番に開始させることができる。
本実施形態では、右連結バー22が左連結バー20と同様に構成され、左連結バー20と同期して揺動するため、右側ブレード12Rは、内側から順に、配置の対応する左側ブレード12Lと同時に開作動を開始する。つまり、左側ブレード12Lと右側ブレード12Rとが左右対称に回転駆動される。そのため、ブレード12が時間差をもって順番に開作動を開始しても、意匠的に美しい左右対称な動作を行うため、グリルシャッタ10の商品性が向上する。また、自動車が走行中にブレード12が回転駆動されても、ブレード12に作用する風圧は、左右方向について互いに打ち消し合う力を発生させるため、ハンドリング操作に影響を及ぼすことがない。
一方、右側ブレード12Rの開作動が、配置の対応する左側ブレード12Lの開作動に対して回動角度にして1度分遅れて開始するようにしてもよい。このようにすれば、左側ブレード12Lと右側ブレード12Rとが交互に開作動を開始するため、ブレード12を開作動させるために必要な駆動力をより小さくすることができる。そのうえ、ブレード12が概ね左右対称な意匠的に美しい動作を行うため、モータ13の小型化とグリルシャッタ10の商品性向上との両立を実現できる。
対称な動作を行うため、
本実施形態では、右連結バー22と左連結バー20とがリンク24により同期して駆動される。そのため、モータ13の駆動力を一方(左連結バー20)に伝達させるだけでよく、1つのモータ13によりすべてのブレード12を駆動できる。
また、本実施形態では、右連結バー22と左連結バー20とを同期して駆動する同期手段に、最も内側の左側ブレード12Lおよび右側ブレード12Rに枢着するリンク24を用いているため、小石や泥などが飛来しても確実に作動し、動作の信頼性が確保される。なお、本実施形態では、リンク24が左側ブレード12Lおよび右側ブレード12Rを連結しているが、例えば右連結バー22が右側ブレード12Rの前部を連結している形態であれば、右連結バー22と左連結バー20とを連結するようにリンク24を取り付けてもよい。
本実施形態では、正面視において、右側ブレード12Rのうち最も左方に位置するブレード12と左側ブレード12Lのうち最も右方に位置するブレード12との間に、上枠11Uと下枠11Bとを連結する縦リブ15が設けられたことにより、下枠11Bの剛性が高まるとともに、ブレード12で閉鎖できない外気導入開口3の中央部が正面視において縦リブ15により閉鎖され、この部分からの外気の流入が抑制される。
さらに本実施形態では、モータ13が上枠11Uの上面に取付けられ、正面視で外気導入開口3と重ならない位置に配置されることにより、外気の流入がモータ13により妨げられることがない。したがって、外気導入開口3から流入する外気量の減少を防止できる。そのうえ、飛来する小石などが外気導入開口3を通過しても、駆動源に衝突することがなく、グリルシャッタ10の耐久性が向上する。
上記したように、外気導入開口3は車体前部の低い位置に配置されるため、グリルシャッタ10には小石などの他、雨水や泥水もかかりやすい。そこで上記実施形態では、左連結バー20および右連結バー22を付勢する手段として、第1引張コイルばね25および左右の第2引張コイルばね26L、26Rを用いている。つまり、引張コイルばねは、ねじりコイルばねなどに比べ、錆び付いても不勢力が変化しにくいため、この構成によってもグリルシャッタ10の耐久性が向上している。
≪第1変形実施形態≫
次に、図10を参照して本発明の本実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下の変形実施形態でも同様とする。
本変形実施形態では、左側ブレード12Lと右側ブレード12Rとを同期して作動させる同期手段として、S字状のリンク24の変わりに、互いに噛み合う一対のセクタギヤ34L、34Rが用いられる。両セクタギヤ34L、34Rは、対応する最も内側の左側ブレード12Lおよび右側ブレード12Rに対し、それらの上側軸116に同軸に取り付けられる。ここでは、左側ブレード12Lに取り付けられたセクタギヤ34Lの上部に、外周面に凹凸が形成されたフランジ部116bが形成され、このフランジ部116bに係合するようにモータ13が上枠11Uの上面に取付けられる。左側ブレード12Lと右側ブレード12Rとをこのように連結しても、両者を同期して回転駆動することができる。
≪第2変形実施形態≫
次に、図11を参照して本発明の本実施形態について説明すると、本実施形態では、その中央が前方に突出する湾曲形状を呈する外気導入開口3に沿って、複数のブレード12が中央で屈曲するように配置されている。なお、ここでは左側ブレード12Lが斜め直線上に配置され、左連結バー20が直線状を呈しているが、左側ブレード12Lを湾曲線上に配置し、左連結バー20を湾曲させてもよい。ブレード12をこのように配置することにより、グリルシャッタ10をより小型化することができる。
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、状実施形態では、左右の連結バー20、22にそれぞれ貫通孔21、23を形成してブレード12の凸部19を係合させているが、凹部を形成して凸部19を係合させてもよい。或いは、ブレード12に貫通孔や凹部を形成し、左右の連結バー20、22に設けた凸部を係合させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、左連結バー20に第1引張コイルばね25を、左右の連結バー20、22にぞれぞれ第2引張コイルばね26L、26Rを係合させて付勢力を加えているが、付勢手段として圧縮コイルばねやねじりコイルばねなど、異なる種類のばねを用いてもよい。また、第1引張コイルばね25を2つ用意し、左右の連結バー20、22にそれぞれ第1引張コイルばね25を係合させてもよい。一方、上記実施形態に示した本発明に係るの各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、適宜取捨選択可能である。
1 バンパ(車体)
2 外気導入開口
10 グリルシャッタ
11 枠体
12 ブレード
12L 左側ブレード
12R 右側ブレード
13 モータ(駆動手段)
15 縦リブ
19 凸部
20 左連結バー
21 凹部
22 右連結バー
23 凹部
24 リンク(同期手段)
34 セクタギヤ(同期手段)
CL 中央線

Claims (4)

  1. 車体の前部に形成された外気導入開口を開閉するグリルシャッタであって、
    前記外気導入開口を囲繞する枠体に回動自在に設けられ、前記外気導入開口を閉鎖する閉位置と前記外気導入開口を開放する開位置との間で回転駆動される複数のブレードと、
    前記複数のブレードを回転駆動する単一の駆動手段と、
    前記駆動手段の駆動力を前記複数のブレードに伝達する動力伝達機構とを備え、
    前記動力伝達機構が前記複数のブレードの開作動を所定の時間差をもって順番に開始させることを特徴とするグリルシャッタ。
  2. 前記動力伝達機構が、前記複数のブレードを連結する連結バーを含み、
    各ブレードと前記連結バーとは、どちらか一方に形成された凹部と、どちから他方に形成された凸部との係合により互いに連結され、
    前記複数の凹部の長さが前記ブレードの配置に応じて異なることにより、前記連結バーが前記複数のブレードの開作動を所定の時間差を持って順番に開始させることを特徴とする、請求項1に記載のグリルシャッタ。
  3. 前記複数のブレードが、前記外気導入開口の左右方向の中央を対称軸にして左右対称に配置され、前記外気導入開口の左側半分に配置された左側ブレードと前記外気導入開口の右側半分に配置された右側ブレードとが、前記動力伝達機構を介して対称的に回転駆動されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のグリルシャッタ。
  4. 前記複数のブレードが、前記外気導入開口の左右方向の中央を対称軸にして左右対称に配置され、前記外気導入開口の左側半分に配置された左側ブレードと前記外気導入開口の右側半分に配置された右側ブレードとが、前記動力伝達機構を介して交互に回転駆動されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のグリルシャッタ。
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