JP2014065989A - 抄紙用ポリエステルバインダー繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い流動性と高い水中分散性を併せ持っており、低目付・薄手化の抄紙を得ることができる、抄紙用ポリエステルバインダー繊維を提供する。
【解決手段】融点230℃以上のポリアルキレンテレフタレートを芯成分とし、非晶性ポリエステルを鞘成分とするポリエステル繊維である。非晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸とアジピン酸とそれらの誘導体とから選ばれる1または2以上を含有するとともに、ジカルボン酸成分に占めるそれらの含有量が15〜40モル%であり、ジオール成分としてジエチレングリコールを含有するとともに、ジオール成分に占めるその含有量が2〜4モル%である。鞘成分中に無機粒子を含有するとともに、鞘成分に占めるその含有量が0.05〜0.20質量%である。繊維長は3〜15mmである。
【選択図】なし

Description

本発明は、抄紙用に適した優れた水中分散性を持つポリエステルバインダー繊維に関するものである。
従来、抄紙用材料としては、天然セルロースやレーヨンなどの植物性繊維が主に使用されてきたが、昨今は、これら植物性繊維と比べて品質の安定した、ポリエステル繊維やポリアミド繊維に代表される合成繊維への置き換えが進んでいる。
また、抄紙用材料に合成繊維を用いることにより、合成繊維の持つ優れた機械的特性、電気的特性ならび耐熱性などを有した抄紙を得ることもできる。このため、抄紙が展開できる用途ならび分野は飛躍的に拡大している。また、更なる用途と分野の拡大を図るため、原料繊維の品質ならび特性の高度化の要求が高まっている。その中でも、様々な分野において進む製品の小型化に対応すべく、抄紙の低目付化と薄手化の要求は高く、低目付でも従来と同等以上の強度を保つことができる抄紙の開発が望まれている。
抄紙用に合成繊維を原料として用いる場合は、主体繊維とそれ自体が溶融して主体繊維同士を結合させるバインダー繊維で構成されるのが一般的である。従来、このバインダー繊維として、ポリエステルを芯成分としポリオレフィンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を用いることにより、抄紙の高強度化を図る提案がなされている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案のバインダー繊維では、主体繊維がポリエステル繊維やポリアミド繊維などの場合に、バインダー繊維とこれらの主体繊維との接着性が十分でないため界面剥離が発生しやすい問題があり、この結果、主体繊維との組み合わせに限定がある。
また、最も汎用性の高いポリエステル繊維を主体繊維とする場合、上記課題を解決するために、鞘成分に低融点ポリエステルを用いたバインダー繊維が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、この提案のバインダー繊維では、溶融した鞘成分が芯成分に強く拘束されるため、鞘成分の流動性が非常に低い。このため、特許文献2に記載のようにこの芯鞘構造の繊維のみで抄紙を製造する場合は問題ないが、強度の高いポリエステル繊維など、他の主体繊維との混抄の場合は、広範囲に渡って均一かつ強固に繊維間を接着させるためバインダー繊維を一定量加える必要がある。この結果、この提案のバインダー繊維を用いる場合はバインダー繊維の混率を上げるとともに主体繊維の混率を下げざるを得ず、抄紙の高強度化を図ることができなかった。
特開平11−279840号公報 特開2011−208323号公報
そこで本発明の目的は、上記した従来技術における問題点を克服し、高強度抄紙を得ることができるバインダー繊維を提供することにある。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維は、融点230℃以上のポリアルキレンテレフタレートを芯成分とし、非晶性ポリエステルを鞘成分とするポリエステル繊維であって、下記の条件を満足することを特徴とする。
(1)鞘成分を形成する非晶性ポリエステルのジカルボン酸成分は、イソフタル酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1または2以上を含有するとともに、ジカルボン酸成分に占めるそれらの含有量が15〜40モル%である。
(2)鞘成分を形成する非晶性ポリエステルのジオール成分は、ジエチレングリコールを含有するとともに、ジオール成分に占めるその含有量が2〜4モル%である。
(3)鞘成分中に無機粒子を含有するとともに、鞘成分に占めるその含有量が0.05〜0.20質量%である。
(4)繊維長が3〜15mmである。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維の好ましい様態によれば、前記の抄紙用ポリエステルバインダー繊維に含有される無機粒子は酸化チタンである。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維の好ましい様態によれば、さらに、前記の抄紙用ポリエステルバインダー繊維に対して、分散性油剤としてポリエーテル・ポリエステル共重合物を0.05〜0.6質量%付着されてなることである。
本発明によれば、高強度抄紙を得るために好適な流動性を持ち、加工性にも優れた抄紙用ポリエステルバインダー繊維を製造することができ、これにより展開可能な分野を飛躍的に広げることができる。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維は芯鞘型複合繊維であり、芯部は融点230℃以上のポリアルキレンテレフタレートで形成される。より具体的には、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分として、エチレングリコールを主たるジオール成分として得られるポリエチレンテレフタレート、1,3−プロパンジオールを主たるジオール成分として得られるポリトリメチレンテレフタレート、1,4−ブタンジオールを主たるジオール成分として得られるポリブチレンテレフタレートなどが例示される。中でも、その汎用性や品質の面からは、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
また、前記のポリアルキレンテレフタレートには、必要に応じて、艶消し剤となる酸化チタン、滑剤となるシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤となるヒンダードフェノール誘導体、着色顔料、安定剤、抗菌剤、消臭剤、強化剤および難燃剤などを添加してもよい。
一方、鞘成分は非晶性ポリエステルで形成され、ジカルボン酸成分のうち、イソフタル酸または/およびアジピン酸または/およびその誘導体の含有量が15〜40モル%であることが重要である。イソフタル酸または/およびアジピン酸または/およびその誘導体の含有量が15モル%未満では、融解温度の低減が十分ではないため、接着不足により、得られる抄紙の高強度化を図ることができない。イソフタル酸または/およびアジピン酸または/およびその誘導体の含有量が40モル%を超えると、融解温度が低くなりすぎるため、製糸および抄紙工程中にて融着が発生し、分散性を悪化させる。
また、発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維の鞘成分である非晶性ポリエステルのジオール成分のうち、ジエチレングリコールの含有量が2〜4モル%であることが重要である。ジエチレングリコールの含有量が2モル%未満では、鞘成分の流動性を十分に向上させることができないため、抄紙の高強度化をはかることができない。また、ジエチレングリコールの含有量が4モル%を超えると、流動性が高くなりすぎるため、製糸および抄紙工程中にて融着が発生し、分散性を悪化させる。
また、本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維は前記の通り、ジエチレングリコールを共重合させることにより鞘成分の流動性の向上に図っているが、ジエチレングリコールを共重合することにより、常温でも鞘成分が軟化しやすくなり、繊維製造後の保管中に繊維断面の変形や繊維同士の融着が発生し、これにより著しく分散性を悪化するため、抄紙用途に適した分散性の繊維を得ることができないことがわかった。
これに対し、本発明では、鞘成分に無機粒子を含有させることにより、抄紙加工時の溶融・接着時の流動性は損ねることなく、常温での鞘成分の軟化のみを防止できることを見出し、上記問題の解消に至っている。
上記の無機粒子は、鞘成分中に0.05〜0.20質量%、好ましくは、0.10〜0.20質量%含有されていることが重要である。無機粒子の含有量が0.05質量%未満では、常温での軟化が発生し、分散性を著しく悪化させる。また、無機粒子の含有量が0.20質量%を超えると接着性を低下させる。
また、上記の鞘成分中に含有させる無機粒子としては、酸化チタン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、硫酸バリウムなどが例示される。中でも、汎用性や品質面から酸化チタンが好ましく用いられる。
また、本発明にかかる抄紙用ポリエステルバインダー繊維には、水中分散性を向上させるために、当該機能を有する油剤を付与することが好ましく、水ならびポリエステルとの高い親和性を両立する油剤を選択することが望ましい。これらの機能を併せ持つ油剤として、ポリエーテルや脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、ポリエーテル・ポリエステル共重合体が好ましく用いられる。用いられるポリエーテル・ポリエステル共重合体としては、テレフタル酸および/またはイソフタル酸、低級アルキレングリコールならびにポリアルキレングリコールおよび/またはそのモノエーテルからなるものが挙げられる。
好ましく用いられる低級アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびテトラメチレングリコールなどが挙げられる。一方、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。さらに、ポリアルキレングリコールのモノエーテルとしては、ポリエチレングリコールなどのモノメチルエーテルやモノエチルエーテルなどが挙げられる。
また、ポリエーテル・ポリエステル共重合物の付着量は、繊維質量に対し、0.05〜0.6質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜0.4質量%である。付着量が0.05質量%未満では、付着量が十分ではなく、繊維に水中分散性を十分付与させることが容易でない。また、0.60質量%を超えると、水中分散後も油剤が繊維表面に多量に残存し、該油剤が接着時に繊維同士の接着を阻害するため、十分な接着強度を得ることができず、高強度の抄紙を得ることができない。
また、ポリエーテル・ポリエステル共重合物の付着方法としては、シャワー方式、スプレー方式、ディッピング方式およびローラータッチ方式などが挙げられるが、均一付着性からディッピング方式あるいはローラータッチ方式が望ましい。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維の繊維長は5〜15mmであり、好ましくは5〜10mmである。繊維長5mm未満では、カットする際の摩擦熱で繊維同士の融着が発生するため、水中分散性が悪化する。また、繊維長15mmを超えると繊維同士が絡まりやすく、水中分散性が悪化する。
本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維を用いることにより、得られる抄紙の高強度化を可能とし、従来技術より低目付・薄手化を図ることができるので、例えば、集塵機のフィルターや膜支持体などに用いると構成枚数を増やすことができ、効率アップを図ることができる。
次に、実施例により本発明の抄紙用ポリエステルバインダー繊維をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた特性の評価方法は、次の通りである。
[固有粘度]
オルソクロロフェノールを溶媒として、35℃の温度でウベローデ粘度計にて測定した。
[単繊維繊度、繊維長、単繊維強度、単繊維伸度]
JIS L 1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」に示される方法により、単繊維繊度(dtex)、繊維長(mm)、単繊維強度(cN/dtex)および単繊維伸度(%)を測定した。
[水中分散性の評価]
300mlのビーカーに150mlの水を入れ、このビーカーに0.05gの繊維を投入し、その後回転速度1000rpmで1分間撹拌した後、吸引濾過を行い、未分散状繊維の数を測定した。未分散状繊維が4本未満である場合を分散性良好(○)、4本以上の場合は分散性不良(×)とした。
[抄紙強度]
JIS P 8113:2006「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に示される方法により、得られた抄紙の強度(N/15mm)を測定した。なお、試験長さは50mm、試験片の幅は15mmとした。
(実施例1)
固有粘度が0.65で融点260℃のポリエチレンテレフタレートと、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルとを別々に乾燥させた。この非晶性ポリエステルは、モル比でテレフタル酸が60%、イソフタル酸が40%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが98%、ジエチレングリコール2%の割合のジオール成分とを共重合させてあり、酸化チタンを0.10%含有させてある。その後、上記のポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、非晶性ポリエステルを鞘成分として、芯鞘型複合溶融紡糸機を用いて、紡糸温度280℃で溶融紡出させ、得られた糸条を冷却し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を複数集合させ、総繊度約60ktexのトウとし、次いで、液温80℃の延伸浴中にて3.0倍に延伸させた後、ポリエチレングリコールとテレフタル酸とプロピレングリコールからなるポリエーテル・ポリエステル共重合物を繊維質量に対して0.30質量%となるように付与した後、6mmに切断し、抄紙用ポリエステルバインダー繊維を製造した。得られた抄紙用ポリエステルバインダー繊維を、主体繊維である単糸繊度1.5dtexのポリエステル繊維と質量比50:50の割合で混抄し、80g/mの抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
モル比でテレフタル酸が70%、イソフタル酸が30%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが98%、ジエチレングリコール2%の割合のジオール成分とを共重合させ、酸化チタンを0.10%含有させた、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルを鞘成分として用いる以外は、実施例1と同じ方法で抄紙用ポリエステルバインダー繊維ならび抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
(実施例3)
モル比でテレフタル酸が60%、イソフタル酸が40%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが96%、ジエチレングリコール4%の割合のジオール成分とを共重合させ、酸化チタンを0.10%含有させた、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルを鞘成分として用いる以外は、実施例1と同じ方法で抄紙用ポリエステルバインダー繊維ならび抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
(比較例1)
モル比でテレフタル酸が60%、イソフタル酸が40%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが99%、ジエチレングリコール1%の割合のジオール成分とを共重合させ、酸化チタンを0.10%含有させた、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルを鞘成分として用いる以外は、実施例1と同じ方法で抄紙用ポリエステルバインダー繊維ならび抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
モル比でテレフタル酸が60%、イソフタル酸が40%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが95%、ジエチレングリコール5%の割合のジオール成分とを共重合させ、酸化チタンを0.10%含有させた、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルを鞘成分として用いる以外は、実施例1と同じ方法で抄紙用ポリエステルバインダー繊維ならび抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
(比較例3)
モル比でテレフタル酸が60%、イソフタル酸が40%の割合のジカルボン酸成分と、モル比でエチレングリコールが98%、ジエチレングリコール2%の割合のジオール成分とを共重合させ、酸化チタンなどの無機粒子を含有させず、固有粘度が0.60の非晶性ポリエステルを鞘成分として用いる以外は、実施例1と同じ方法で抄紙用ポリエステルバインダー繊維ならび抄紙を製造した。得られたバインダー繊維と抄紙の特性の測定結果を表1に示す。
Figure 2014065989
表1に記載された結果から明らかなように、比較例1ではバインダー繊維の水中分散性が優れるものの、鞘成分の流動性が劣るため、抄紙強度を高くすることができず、また比較例2や比較例3では、バインダー繊維の水中分散性が低いため、これらも抄紙強度を高くすることができなかった。これに対し本発明の実施例1〜3では、いずれも鞘成分の流動性が良好であるうえ、バインダー繊維の水中分散性が優れており、高強度の抄紙を得ることができた。

Claims (3)

  1. 融点230℃以上のポリアルキレンテレフタレートを芯成分とし、非晶性ポリエステルを鞘成分とするポリエステル繊維であって、下記の条件を満足することを特徴とする、抄紙用ポリエステルバインダー繊維。
    (1)鞘成分を形成する非晶性ポリエステルのジカルボン酸成分は、イソフタル酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体から選ばれる1または2以上を含有するとともに、ジカルボン酸成分に占めるそれらの含有量が15〜40モル%である。
    (2)鞘成分を形成する非晶性ポリエステルのジオール成分は、ジエチレングリコールを含有するとともに、ジオール成分に占めるその含有量が2〜4モル%である。
    (3)鞘成分中に無機粒子を含有するとともに、鞘成分に占めるその含有量が0.05〜0.20質量%である。
    (4)繊維長が3〜15mmである。
  2. 前記の無機粒子が酸化チタンであることを特徴とする、請求項1記載の抄紙用ポリエステルバインダー繊維。
  3. 分散性油剤としてポリエーテル・ポリエステル共重合物が繊維質量に対して0.05〜0.6質量%付着してある、請求項1または2に記載の抄紙用ポリエステルバインダー繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2016052386A1 (ja) * 2014-09-30 2016-04-07 東洋紡株式会社 核酸の分離精製方法および固相担体、デバイス、キット
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