JP2014047292A - 水性顔料インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ホワイトボードまたはブラックボードなどの筆記板用の筆記具などとして利用可能な耐水固着性に優れ、かつ、水拭き消去性も良好な水性顔料インク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、トレハロースと、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする水性顔料インク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性顔料インク組成物に関し、更に詳しくは、筆記具用などとして、ホワイトボードあるいはブラックボードなどの非吸収面である筆記板用として利用可能で、適切な耐水固着性に優れるにもかかわらず容易に消去することができる水性顔料インク組成物に関する。
これまでのいわゆるボード用水性マーキングペンインクは、非吸収面上に筆記した場合に、軟らかい乾布や紙で容易に拭き消せるように、剥離剤と場合によっては剥離助剤を含有させるものが主であった(例えば、特許文献1参照)。この場合には、描線が容易に剥離されるものが求められ、落とそうとしても消えない性能、いわゆる固着性は、敬遠されるべきものであった。当然、このようなインクが使用される環境としては、屋内の風雨に曝されない場所が選ばれる。
ところが、近年、店頭の看板等としてホワイトボード又はブラックボードを利用している商店等のユーザーが多数存在している。このような需要を狙い、ブラックボード上に目立つ描線を引くことのできる、酸化チタン等の隠ぺい性色材を含む筆記具用インク組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。ここでは、筆記性および消去性に重点が置かれ、屋外で風雨に曝された場合の対策については何ら開示されていない。
これに対して、屋内外の看板や掲示物などに使用するために、耐水性の塗膜で用済み後には容易に剥離除去できるインク組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。こちらの場合には、バインダー樹脂を含む水溶性エマルジョンを組成し、インクとしているため、固着性については申し分ないものの、消去、剥離については「カッターナイフなどで切り取って」剥離させるもので、到底、容易に描線を消去できるものであるとは言えないものであった。
以上のような、いわゆるボードマーカー用インクの開示に対し、雨ざらしの場合には筆跡は剥がれ落ちないが、濡れた拭き材等で擦過した際には容易に消去可能であるとするインク組成物の開示がなされている(例えば、特許文献4参照)。ここでの耐水試験は、霧吹きで10回噴霧したとき描線の剥離の有無を見るものであって、霧雨に当たり続けた状況ですらない方法であり、まして、通常の降雨の場合には到底耐えられるものではないと考えられるものであった。
一方、トレハロースを含有するインク組成物として、少なくとも、着色剤と、水と、キサンタンガムなどの剪断減粘性付与剤と、トレハロースとを含有するボールペン用の水性インク組成物(例えば、特許文献5参照)が知られている。
しかしながら、このインク組成物はボールペン用であり、そのまま非吸収面となるホワイトボードなど筆記板にボードマーカーとして用いても、また、従来の筆記板用インク組成などにトレハロースを添加しても、本発明の効果を発揮できないのが現状であった。
特開平5−171092号公報(特許請求の範囲、段落〔0031〕〜〔0034〕を含む実施形態、実施例1等) 特開2006−28291号公報(特許請求の範囲、実施形態、実施例等) 特開2000−63717号公報(特許請求の範囲、段落〔0029〕を含む実施形態等) 特開2003−313484号公報(特許請求の範囲、実施形態、段落〔0030〕を含む実施例等) 特開2003−113440号公報(特許請求の範囲、実施形態、実施例等)
本発明は、上記した従来技術の開発の経過及びその課題、現状等に鑑み、これらを解消しようとするものであり、非吸収面に筆記した際に、その描線が、適切な耐水固着性に優れるにもかかわらず容易に消去することができる水性顔料インク組成物の提供、更に、残像の残らない水性顔料インク組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、理由は定かではないが、親水性の官能基を多く持つ添加剤、例えば、糖類等を水性顔料インク組成中に含有させることによって、上記目的の水性顔料インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(10)に存する。
(1)少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、トレハロースと、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする水性顔料インク組成物。
(2)インク組成物全量に対して、前記隠ぺい性顔料の含有量が0.1〜35質量%、前記スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂の含有量が1〜10質量%、前記トレハロースの含有量が0.1〜15質量%、前記フッ素を含む界面活性剤の含有量が0.005〜0.3質量%であることを特徴とする上記(1)記載の水性顔料インク組成物。
(3)前記隠ぺい性顔料が二酸化チタンであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性顔料インク組成物。
(4)前記隠ぺい性顔料に加えて蛍光顔料を含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(5)前記隠ぺい性顔料に加えて有彩色の顔料を含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(6)前記隠ぺい性顔料に加えて着色エマルジョンを含むことを特徴とする上記(3)に記載の水性顔料インク組成物。
(7)前記隠ぺい性顔料がカーボンブラックであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性顔料インク組成物。
(8)前記隠ぺい性顔料に加えて染料を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
(9)更に水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
(10)インク組成物のpHが6.5〜10.5であることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
本発明によれば、ホワイトボードなどの非吸収面での筆記性に優れ、かつ、耐水固着性にも優れるにも関わらず、消去性にも優れる水性顔料インク組成物が提供される。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の水性顔料インク組成物は、少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、トレハロースと、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とするものである。
本発明に用いる隠ぺい性顔料としては、隠ぺい性及び白色性を発揮せしめる粒子であれば特に限定されるものでないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛及び中空樹脂粒子の中から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上、以下同様)が挙げられる。これらの粒子は、粒子表面が有機チタネート等で親油性表面処理されている隠ぺい性粒子であってよいものである。
好ましくは、隠ぺい性が高く鮮明な筆跡を発揮せしめうる点から、用いる隠ぺい性粒子としては、酸化チタン単独の使用、酸化チタンと中空樹脂粒子や異方性樹脂粒子等との併用が挙げられる。なお、酸化チタンの含有量は、インク組成物全量に対して、0.1〜35質量%(以下、単に「%」という)とすることが好ましく、更に好ましくは、1〜30質量%とすることが望ましい。
また、用いる隠ぺい性粒子は、平均粒子径が0.05〜20μmの使用が好ましく、特に好ましくは、平均粒子径が0.1〜10μmとすることが望ましい。
本発明には、インク組成物による描線を色彩豊かに発色させるために、更に、蛍光顔料、(白、黒及び灰色以外の)有彩色の顔料、着色エマルジョン、および、染料などの色材を含有させることができる。
前記有彩色の顔料として、従来から水性顔料インク組成物に公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂マトリックス中に蛍光染料等を固溶体化した着色エマルジョン顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を使用することができる。
より具体的には、顔料が有彩色の有機顔料、着色エマルジョン顔料であって、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系顔料等である。
これらの顔料は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
ところで、筆記対象の非吸収面が、白あるいは薄めの色(例えば黄色等)の場合には、隠ぺい性顔料として黒色の顔料を用いることができる。
具体的には、カーボンブラック、球状黒鉛粒子、黒酸化鉄、黒色の球状樹脂粒子顔料等である。用いることができるカーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。
これらの黒色の顔料の含有量としては、インク組成物全量に対して、0.1〜35%、さらに好ましくは、0.1〜20%、より好ましくは、1〜15%とすることが望ましい。
また、カーボンブラックの粒子としては、平均粒子径が0.05〜1μmの使用が好ましく、特に好ましくは、平均粒子径が0.05〜0.5μmとすることが望ましい。
上記隠ぺい性顔料以外の蛍光顔料、(白、黒及び灰色以外の)有彩色の顔料、着色エマルジョン、および、染料などの色材の合計含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、インク組成物全量に対して、0.1〜40%、更に好ましくは、0.1〜12%程度とすることが望ましい。
本発明に用いるスチレンアクリル酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂は、上記顔料の分散剤兼固着樹脂として用いるものである。
用いることができるスチレンアクリル酸樹脂としては、ジョンクリル52J、ジョンクリル57J、ジョンクリル60J、ジョンクリル61J、ジョンクリル62J(以上、BASFジャパン社製)、RS−1191、VS−1047、YS−1274(以上、星光PMC社製)、また、スチレンマレイン酸樹脂としては、アラスター700、アラスター703S(以上、荒川化学工業社製)、SMA−1440、SMA−2625、SMA−17352(以上、川原油化社製)などが挙げられる。
好ましくは、製造時の取扱い上の理由、インク組成物の経時安定性、及び、トレハロースの溶解安定性等の点から、スチレンアクリル酸樹脂の使用が望ましい。
これらのスチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂の合計含有量は、インク組成物全量に対して、固形分濃度で、0.5〜20%、好ましくは、1〜10%とすることが望ましい。
この含有量の含有量が0.5%未満であると、インク組成物が経時的に不安定となり、好ましくなく、一方、20%を超える場合は、インク組成物の粘度が爆発的に増大し、かつ、トレハロースが析出不能となり、好ましくない。
本発明で用いるトレハロースは、耐水固着剤として作用する添加剤として用いるものであり、水性顔料インク組成中に配合してもインキ性能の低下等を招くことなどがないものである。
このトレハロースの含有量は、インク組成物全量に対して、0.1〜15%、好ましくは、0.5〜8%とすることが望ましい。
この含有量の含有量が0.1%未満であると、耐水固着剤としての効果が低く、好ましくなく、一方、15%を超える場合は、水性顔料インクとしての粘度が高くなりすぎたり、低温時等にペン先から結晶の析出が起こり見苦しくなったり、インクの保存安定性に問題が出てくることとなり、好ましくない。
本発明に用いるフッ素を含む界面活性剤は、被筆記面であるホワイトボード等の非吸収面と、当該インク組成物による描線との密着性を高め、ひいては耐水固着性を更に高めるために含有せしめるものである。
用いることができるフッ素を含む界面活性剤としては、パーフルオロアルケニルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基付加物、パーフルオロブタンスルホン酸基付加物など高分子量の重合物を含むものが挙げられる。
好ましくは、1)分子中に二重結合と分岐したパーフルオロアルケニル構造、例えば、ヘキサフルオロプロペンオリゴマー〔(CFCF〕C=C(F)CF〕などを持つもの〔(株)ネオス社製のフタージェント100、同100C、同110、同140A、同150、同150CH、同A−K、同501、同250、同251、同222F、同300、同310、同400SW〕、2)パーフルオロブタンスルホン酸基を持つもの(住友スリーエム社製のFC−4430、FC−4432)などが挙げられる。
これらのフッ素を含む界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、固形分濃度で0.001〜0.3%、更に好ましくは、0.001〜0.2%、特に好ましくは、0.005〜0.05%とすることが望ましい。
この含有量の含有量が0.001%未満であると、インクの非吸収面への濡れ性が低下することとなり、好ましくなく、一方、0.3%を超える場合は、インクの非吸収面への濡れ性を高め過ぎてしまい、却って耐水固着性を弱めることとなり、好ましくない。
本発明の水性顔料インク組成物では、好ましくは、インク組成物のアクリル酸系樹脂の溶存安定性向上、即ち、インク組成物の顔料の分散安定性の点から、pH調整剤として、アンモニア、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミンなどを含有せしめて、インク組成物のpHを6.5〜10.5とすることが好ましく、更に好ましくは、7.5〜10.0とすることが望ましい。pHが6.5未満の場合には、アクリル系樹脂の溶存安定性に問題があり、一方、10.5を超える場合には描線の乾燥性及び固着性に問題が出てくる場合がある。
本発明の水性顔料インク組成物は、上記各成分の他、残部として水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水など)で調製され、上記各成分以外にも、防菌剤、消泡剤、増粘剤などの任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有せしめることができる。
本発明の素性顔料インク組成物は、上記した成分から構成すれば、十分に目的の作用効果を発揮するものを得ることができる。ここで、このようなインク組成物による描線を長期間経過後に消去した後を、細かく観察したところ、描線の跡(以下、「ゴースト」という)が残る現象が若干見られた。ゴーストは、ボード上の白濁した跡として観測されるものであったり、軽微なものでは、透明な描線の跡であったりするものである。このゴーストの出現を更に無くすために、更に研究を進めた結果、ある種の水溶性有機溶剤を添加することによって、ゴーストの出現が更に抑制されることに到達した。
本発明において、上記ゴースト抑制のために用いる水溶性有機溶剤としては、トレハロース以外の糖類を含有するものが好ましい。
用いることができる糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくは、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式HOCH(CHOH)nCHOH(n=2〜5の整数)〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に、糖アルコールが好ましく、具体例としては、D−ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は1種又は2種以上を併用することもでき、インク組成物全量に対して、1〜20%、好ましくは、2〜10%の範囲で用いられる。この水溶性有機溶剤の含有量が1%未満の場合、ゴーストの抑制に対して何らの効果も示さず、一方、20%を超えると耐水固着性が著しく悪化する結果となったり、ゴーストを助長する結果となったりする場合がある。
本発明の水性顔料インク組成物の製造は、上述した各成分を上記各範囲の含有量等で公知の分散機、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、フローミル、ダイノーミル、アトライタ等で混合粉砕を行なう。これらの撹拌混合または混合粉砕して得られた中間物を、必要に応じて濾過、遠心沈降等の方法で粗大粒子やゴミを除去することで容易に目的の水性顔料インク組成物得られる。
また、本発明の水性顔料インク組成物は、ホワイトボードマーカー、ブラックボードマーカーなどの非吸収面となる筆記板用等の筆記具用として好適に使用することができる。
このように構成される本発明の水性顔料インク組成物では、非吸収面等への描線における非吸収面−インク界面において水の蒸発を適度に抑制する効果のため、描線の耐水固着性に優れたものとなる。その詳細な作用機構は、以下のように推察される。
用いるトレハロースは、複数の水酸基を有する二糖類で、二つの六員環を繋ぐ酸素原子の結合角が水分子のそれと同じものであると言われている。そのため、水分子との水素結合によりある程度の水性インクからの水の蒸発抑制効果が得られる。描線が書かれた面は非吸収面であるので、紙面上のように紙内部に水分が浸透することは無く、水分が失われてゆく過程は空気中への蒸発のみとなる。その結果、ホワイトボードまたはブラックボード等の非吸収面に書かれた描線からの水性インクからの水の蒸発、乾燥が抑制され、ゆっくりと描線の固化が進行してゆく。描線内のスチレンアクリル酸樹脂またはスチレンマレイン酸樹脂も、ゆっくりと固定化されてゆくため、非吸収面−インク界面での描線の接着が、ゆっくり、かつ、密に行われてゆくものと推察される。
このため、乾燥した描線の上から雨粒を打っても簡単には樹脂が溶解せず、流れ出さないものと推察される。しかし、力をかけて布で水拭きをすると、この程度の適切な密着力では、固着を維持することができずに、消去されるものと推察される。
ここで、本発明となる上記組成の水性顔料インク組成物に水溶性有機溶剤を加えない場合には、長期間経過後、上記した通り、ゴーストが観測される場合が若干ある。これは、描線内のスチレンアクリル酸樹脂またはスチレンマレイン酸樹脂が強力に固着し過ぎてしまい、描線を消去しても樹脂分が固着したまま残留してしまうものであると推察される。この現象に対して、本発明では、更に水溶性有機溶剤をインク組成中に加えることにより、スチレンアクリル酸樹脂またはスチレンマレイン酸樹脂の溶解時に存在していた中和剤を取り込んだまま描線が乾燥・固化を起こすため、水拭き時には、再びこれらの樹脂が溶解し、描線跡を残さずに消去できるものと推察される。
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳述するが、本発明は下記実施例等により制限されるものではない。
〔実施例1〜17及び比較例1〜4〕
下記表1及び表2に示す配合処方で、ホモミキサーあるいはディスパーで混合分散して、各水性顔料インク組成物を調製した。
上記で得られた表1の実施例1〜11及び比較例1〜4の各水性顔料インク組成物について、下記試験方法により、(1)インク組成物のpH、(2)耐水固着性A(初期)、(3)耐水固着性B(50℃、3ヶ月経過後)、(4)水拭き消去性(初期描線)について評価した。
また、表2の実施例12〜17の各水性顔料インク組成物については、上記(1)〜(4)の試験方法と共に、下記試験方法により、(5)水拭き消去性(ゴースト、屋外3ヶ月経過後描線)について評価した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
〔試験方法〕
(1)インク組成物のpH
各水性顔料インク組成物(25℃)を堀場製作所社製の「HORIBA PH/10N METER F−24」により測定した。
(2)耐水固着性A(初期)
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き、市販のシャワーのノズルから毎分12リットルの流量で水道水を噴射し、その後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:描線に全く変化が見られない。
○:描線の色相がやや薄くなったり、描線が一部欠けたりした。
△:描線の色相がかなり薄くなったり、半分乃至大部分の描線が消去したりした。
▲:描線の色相や形状の一部が残っているが元の形状を想像することが困難であった。
×:描線は全て流れて消えてしまった。
(3)耐水固着性B(50℃、3ヶ月経過後)
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、それを50℃の環境に3ヶ月間保管したものを、常温(25℃)に戻し、上記(2)と同様の評価基準で試験し評価した(n=10)。
(4)水拭き消去性A(初期描線)
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き、キムタオル(実験用ペーパータオル、日本製紙クレシア株式会社製)に約25gの水道水を含ませ、ボードを水平に保ったまま一回擦過した。擦過後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:重りを置かずに水平に力を加えて消去できた。
○:7.84N(重り0.8kg)以下の力を上から加えて擦過し消去できた。
△:9.8N(重り1kg)以下の力を上から加えて擦過し消去できた。
▲:9.8N(重り1kg)を超える力を上から加えて擦過し消去できた。
×:19.6N(重り2kg)の力を上から加えても消去できなかった。
(5)水拭き消去性B(ゴースト、屋外3ヶ月経過後描線)
三菱鉛筆社製PC−5Mのペン体に、各水性顔料インク組成物を詰め、気温25℃、湿度65%の環境下において、5重で幅15mmの螺旋を8回ブラックボード又はホワイトボード上に描き屋外に3ヶ月放置後、キムタオル(実験用ペーパータオル、日本製紙クレシア株式会社製)に約25gの水道水を含ませ、ボードを水平に保ったまま描線の色相が消えるまで擦過した。消去後の描線の様子を観察し、下記評価基準で評価した(n=10)。
評価基準:
◎:描線跡は残らない。
○:透明な描線跡が残る。
△:薄く白濁した描線跡が残る。
▲:白濁した描線跡が残る。
×:ボード表面が皺となって白く見える。
−:そもそも描線を消去することができず評価できない。
Figure 2014047292
Figure 2014047292
上記表1及び表2中の*1〜*8は、下記のとおりである。
*1:石原産業社製
*2:三菱化学社製
*3:富士色素社製
*4:大日精化工業社製
*5:桃色、NKW3207E、日本蛍光社製(不揮発分37.0%)
*6:ジョンクリル61J、BASF社製(不揮発分30.5%)
*7:アラスター703S、荒川化学工業社製(不揮発分30%)
*8:フタージェント251、ネオス社製
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜17は、本発明の範囲外となる比較例1〜4に較べ、少なくとも、初期および経時後の耐水固着性に優れ、かつ、初期の水拭き消去性には優れることが判明した。また、表2の実施例12〜17では、更に、水溶性有機溶剤を含有することにより、更に屋外3ヶ月経過後に描線の水拭き消去性(ゴースト)についても優れることが判明した。
これに対して、比較例を見ると、比較例1〜4は、トレハロースを添加していない場合、比較例3は更に本発明の範囲外となるフッ素系界面活性剤を含有していない場合であり、これらの場合には、本発明の効果を発揮できないことが判った。
マーキングペン、サインペンなどのホワイトボードマーカーまたはブラックボードマーカー用の筆記具などとして好適に用いることができる水性顔料インク組成物となる。

Claims (10)

  1. 少なくとも、隠ぺい性顔料と、スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂と、トレハロースと、フッ素を含む界面活性剤と、水とを含有することを特徴とする水性顔料インク組成物。
  2. インク組成物全量に対して、前記顔料の含有量が0.1〜35質量%、前記スチレンアクリル酸樹脂及び/又はスチレンマレイン酸樹脂の含有量が1〜10質量%、前記トレハロースの含有量が0.1〜15質量%、前記フッ素を含む界面活性剤の含有量が0.005〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1記載の水性顔料インク組成物。
  3. 前記隠ぺい性顔料が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性顔料インク組成物。
  4. 前記隠ぺい性顔料に加えて蛍光顔料を含むことを特徴とする請求項3に記載の水性顔料インク組成物。
  5. 前記隠ぺい性顔料に加えて有彩色の有機顔料を含むことを特徴とする請求項3に記載の水性顔料インク組成物。
  6. 前記隠ぺい性顔料に加えて着色エマルジョンを含むことを特徴とする請求項3に記載の水性顔料インク組成物。
  7. 前記隠ぺい性顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性顔料インク組成物。
  8. 前記隠ぺい性顔料に加えて染料を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
  9. 更に水溶性有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
  10. インク組成物のpHが6.5〜10.5であることを特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の水性顔料インク組成物。
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