JP2014043096A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、高いガスバリア性、かつガスバリア性の繰り返し再現性に優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリア層は高分子フィルム基材の側から、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層と、ケイ素化合物を主成分とする第2の層がこの順に積層されたものであり、前記第1の層は、X線反射率法により特定される高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域からなり、該[1B]領域は厚さが0.2〜20nmであり、前記[1B]領域の密度が前記[1A]領域の密度より低く、前記第2の層の密度より高いことを特徴とするガスバリア性フィルムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、高いガスバリア性が必要とされる食品、医薬品の包装用途や太陽電池、電子ペーパー、有機ELなどの電子部材用途に使用されるガスバリア性フィルムに関する。
高分子フィルム基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられている。
ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機ケイ素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により基材上に、ケイ素酸化物を主体とし、炭素、水素、ケイ素及び酸素を少なくとも1種類含有した化合物からなる層を形成することによって、透明性を維持しつつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献1)。また、成膜方法以外のガスバリア性向上技術としては、基板上にエポキシ化合物である有機層とプラズマCVD法で形成されたケイ素系酸化物層を交互に積層させることで、膜応力によるクラック及び欠陥の発生を防止した多層積層構成のガスバリア性フィルムが用いられている(特許文献2)。
特開平8−142252号公報(特許請求の範囲) 特開2003−341003号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、プラズマCVD法によりケイ素酸化物を主成分としたガスバリア性の層を形成する方法では、有機ELや電子ペーパー用途で必要とされる水蒸気透過率1×10−3g/m・24hr・atm以下の高いガスバリア性を得るためには厚膜化する必要があるが、形成されたガスバリア性の層が非常に緻密かつ高硬度な層であるため、そのような場合には、膜応力により、ケイ素酸化物層にクラックが発生し、逆にガスバリア性が低下するという課題があった。
一方、有機層と無機層を交互に多層積層構成にしたガスバリア性の層を形成する方法では、水蒸気透過率1×10−3g/m・24hr・atm以下の高いガスバリア性を得るためには、数十層の多層積層が必要であり、膜形成中にプラズマの輻射熱により高分子フィルム基材がダメージを受け、熱負けによる反りを発生し、後工程の加工で作業性が悪くなるなどの問題があった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高温環境や屈曲に対してもガスバリア性が低化し難い、高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、
(1)高分子フィルム基材の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリア層は高分子フィルム基材の側から、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層と、ケイ素化合物を主成分とする第2の層がこの順に積層されたものであり、前記第1の層は、X線反射率法により特定される高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域からなり、該[1B]領域は厚さが0.2〜20nmであり、前記[1B]領域の密度が前記[1A]領域の密度より低く、前記第2の層の密度より高いことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(2)前記[1B]領域の密度が、前記第2の層の密度より1〜7g/cm高い前記(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記[1B]領域の密度が、前記[1A]領域の密度より0.2〜4g/cm低い前記(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記第1の層が亜鉛化合物を主成分とする層であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(5)前記[1A]領域は、以下の[1−1]または[1−2]からなる前記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[1−1]:酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相
[1−2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相
(6)前記[1A]領域の密度が3.5〜7g/cm、前記[1B]領域の密度が2.7〜5.8g/cm、前記第2の層の密度が2〜4g/cmである前記(5)に記載のガスバリア性フィルム。
(7)前記[1A]領域が、前記[1−1]からなり、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が20〜40atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が0.5〜5atom%、酸素(O)原子濃度が35〜70atom%である前記(5)または(6)に記載のガスバリア性フィルム。
(8)前記[1A]領域が、前記[1−2]からなり、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である前記(5)または(6)に記載のガスバリア性フィルム。
(9)前記高分子フィルム基材とガスバリア層との間に鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である架橋樹脂層を有する前記(1)〜(8)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(10)前記架橋樹脂層の平均表面粗さRaが1nm以下であることを特徴とする前記(9)に記載のガスバリア性フィルム
水蒸気等に対する高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明のガスバリア性フィルムの断面の一例を示す模式図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するための巻き取り式のスパッタリング・化学気相蒸着装置の概略を示す模式図である。
[ガスバリア性フィルム]
本発明者らは、透明性および水蒸気遮断性が高い良好なガスバリア性フィルムを得ることを目的としてガスバリア性フィルムの層構成について鋭意検討を重ね、高分子フィルム基材の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリア層は高分子フィルム基材の側から周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層とケイ素化合物を主成分とする第2の層がこの順に積層され、前記第1の層は、X線反射率法により特定される、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域からなり、該[1B]領域は厚さが0.2〜20nmであり、該[1B]領域の密度が該[1A]領域の密度より低く、前記第2の層の密度より高い構成としたところ、前記課題を一挙に解決することを見いだしたものである。
ここで、本発明におけるガスバリア層を構成する第1の層の[1A]領域と[1B]領域、第2の層は、後述する方法によりX線反射率法の解析により厚みと密度が特定される層である。
図1は、本発明のガスバリア性フィルムの断面の一例を示す模式図である。本発明のガスバリア性フィルムは、図1に示すように、高分子フィルム基材1の表面に、高分子フィルム基材の側から無機化合物層である第1の層(2,3)と第2の層4がこの順に配置され、第1の層は、[1A]領域2と[1B]領域3が形成された層構成のガスバリア層を有するものである。
各層の詳細は後述するが、高分子フィルム基材の側から周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層に接するようにケイ素化合物を主成分とする第2の層を積層し、第1の層は、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と第2の層に隣接する層状の[1B]領域を有する層としたところ、第1の層または第2の層の単層からなるガスバリア層または、第1の層および第2の層の組み合わせからなるガスバリア層を有するガスバリアフィルムでは達成できない高い水蒸気遮断性を有するガスバリア性フィルムが得られることを見出したものである。
ここで周期律表第3族から第14族に属する金属元素とは、周期律表第3族から第14族に属する元素であって、非金属または半金属に分類されるホウ素(B)、炭素(C)およびケイ素(Si)を除いた元素を指す。
かかる顕著な効果が得られる理由は、以下のように推定している。すなわち、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とした第1の層の上にケイ素化合物を主成分とする第2の層を形成する際には、第1の層中の周期律表第3族から第14族に属する金属元素はケイ素元素よりも原子半径が大きいため、第2の層を形成する際、ケイ素元素が第1の層の表面の領域にある欠陥部分に侵入、混合されやすく、さらに高分子フィルムとの親和性や密着性の悪い第1の層の元素がケイ素元素に置換されるため、第1の層の表面側に周期律表第3族から第14族に属する金属元素がケイ素に置換され、また、欠陥部分にケイ素化合物が充填された層状の領域([1B]領域)を形成させることができる。これにより、第1の層は、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域の上に、[1A]領域の密度より低く、かつ第2の層の密度より高い緻密化された第2の層に隣接する層状の[1B]領域が形成された構造となり、緻密化された[1B]領域の存在によりガスバリア性が向上したものと推測している。
このように、第1の層と第2の層は互いに接して配置され、高分子フィルム基材がダメージを受けず、かつ厚くなりすぎずに柔軟性が確保できる範囲であれば、第1の層と第2の層とを繰り返し積層する多層積層構成としても構わない。なお、ガスバリア層は高分子フィルム基材1の片側に配置してもよいし、片側のみではガスバリア層側と反対側の応力バランスが崩れガスバリア性フィルムに反りや変形が生じる場合などには、応力調整を目的として高分子フィルム基材の両面にガスバリア層を設けても構わない。
本発明において、第1の層と第2の層を積層した際に形成された[1A]領域、[1B]領域と第2の層の厚み及び密度はX線反射率法(「X線反射率入門」(桜井健次編集)p.51〜78)により測定した値である。
具体的には、まずX線源からX線を発生させ、多層膜ミラーにて平行ビームにした後、入射スリットを通してX線角度を制限し、測定試料に入射させる。X線の試料への入射角度を測定する試料表面とほぼ平行な浅い角度で入射させることによって、試料の各層、基材界面で反射、干渉したX線の反射ビームが発生する。発生した反射ビームを受光スリットに通して必要なX線角度に制限した後、ディテクタに入射させることでX線強度を測定する。本方法を用いて、X線の入射角度を連続的に変化させて測定を行うことによって、各入射角度におけるX線強度プロファイルを得ることができる。
層数、各層の厚み、各層の密度の解析方法としては、得られたX線の入射角度に対するX線強度プロファイルの実測データをParrattの理論式に非線形最小二乗法でフィッティングさせることで求められる。フィッティングは、層数、各層の厚み、各層の密度の各パラメーターに対して任意の初期値を設定し、設定した構成から求まるX線強度プロファイルと実測データの残差の標準偏差が最小となるように各パラメーターを変更していき最終的なパラメーターを決定する方法を言う。本発明においては、積層数が最小でかつ残差の標準偏差が3atom%以下となるまでフィッティングし、層数、各層の厚み、各層の密度の各パラメーターを決定する。フィッティングに際して用いる各パラメーターの初期値として、層数および各層の厚みは、測定試料の透過型電子顕微鏡(以降、TEMと略記する)による断面観察から得られる値を使用し、各層の密度は、TEM断面観察で特定した各層について、厚みが2分の1となる位置でXPS分析またはICP発光分光分析などの組成分析法により得られる元素比率から求められる値を使用する。なお、初期値において、X線強度プロファイルと実測データの残差の標準偏差が3atom%以下である場合は第1の層中には密度の異なる領域はない(本発明の範囲外である)ものと判断し、それ以上のフィティングは行う必要はなく、初期値において、X線強度プロファイルと実測データの残差の標準偏差が3atom%を超える場合において、フィッティングを継続すればよい。なお、本願の実施例においてはX線反射測定に用いた装置(Rigaku製SmartLab)の解析ソフトであるRigaku製Grobal Fitによりフィッティングを行っている。この解析ソフトでは層数を固定してフィッティングを行うため、設定した層数(n層とする)を基にしたフィッティングで残差の標準偏差が3atom%以下とならない場合は、初期の層構成で、最も理論密度が高い層を等分に分割し、1層追加した構成(n+1層)でのフィッティングを行い残差の標準偏差が3atom%以下となるところまでこれを継続して行うが、解析ソフトに応じて同様の考え方で設定を行って求めればよい。
第1の層の内部に層状の領域が3以上ある場合には、第2の層に接する領域を[1B]領域、[1B]領域に隣接する高分子フィルム基材側に位置する層状の領域を[1A]領域とする。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材とガスバリア層との間に、鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である架橋樹脂層を設けても構わない。かかる架橋樹脂層を設けることで、ガスバリア層の初期成長過程において、膜の成長核となる原子や粒子が表面移動、拡散し易くなるため、架橋樹脂層を形成しない場合に比べてガスバリア層全体が緻密化し、ガスバリア性が向上する。
本発明に使用するガスバリア層の厚み(第1の層と第2の層の合計厚み)は、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましい。ガスバリア層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、高分子フィルム基材面内でガスバリア性がばらつくなどの問題が生じる場合がある。また、2000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましい。ガスバリア層の厚みが2000nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によってガスバリア層にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。
[高分子フィルム基材]
本発明に使用する高分子フィルム基材としては、有機高分子化合物からなるフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーからなるフィルムなどを使用することができる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムであることが好ましい。高分子フィルム基材を構成するポリマーは、ホモポリマー、コポリマーのいずれでもよいし、また、単独のポリマーであってもよいし複数のポリマーをブレンドして用いてもよい。
また、高分子フィルム基材として、単層フィルム、あるいは、2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムや、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。無機化合物層を形成する側の基材表面には、密着性を良くするために、コロナ処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、粗面化処理、および、有機物または無機物あるいはそれらの混合物で構成されるアンカーコート層の形成処理、といった前処理が施されていても構わない。また、無機化合物層を形成する側の反対面には、フィルムの巻き取り時の滑り性の向上および、無機化合物層を形成した後にフィルムを巻き取る際に無機化合物層との摩擦を軽減することを目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が設けられていても構わない。
本発明に使用する高分子フィルム基材の厚さは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。すなわち、フィルムの加工やハンドリングの容易性から10μm〜200μmがより好ましい。
[架橋樹脂層]
次に、鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である架橋樹脂層について詳細を説明する。
本発明に用いる架橋樹脂層の厚みは、0.5μm以上、10μm以下が好ましい。架橋樹脂層の厚みが0.5μmより薄くなると、高分子基材の凹凸の影響を受けて、第1の層の膜質が均一にならないため、ガスバリア性が低下する場合がある。架橋樹脂層の厚みが10μmより厚くなると、架橋樹脂層内に残留する応力が大きくなることによって高分子基材が反り、第1の層にクラックが発生するため、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、架橋樹脂層層の厚みは0.5μm以上、10μm以下が好ましく、フレキシブル性を確保する観点から1μm以上、5μm以下がより好ましい。架橋樹脂層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から、測定することが可能である。
本発明において、安定したガスバリア性の発現が可能となる効果に対する架橋樹脂層の鉛筆硬度の寄与は、架橋樹脂層の鉛筆硬度をH以上とすることにより、高分子基材に耐熱性及び寸法安定性を付与することができるため、第1の層を形成する際、プラズマの発光熱やイオン、ラジカルの衝突による損傷を防止することができ、結果としてガスバリア性の再現性が安定することにあると推測している。従って、かかる架橋樹脂層の鉛筆硬度はH以上がより好ましく、2H以上であればさらに好ましい。一方、架橋樹脂層の鉛筆硬度は、5Hを超えると、架橋樹脂層の柔軟性が低下するため、ガスバリア層形成後のハンドリングや後加工において、クラックによるガスバリア性の低下の原因となるとなる場合があるので、5H以下であることが好ましい(鉛筆硬度は、軟らかい(より硬度の低い)方から硬い(硬度が高い)方へ次のような序列で示される。(軟らかい)10B〜B、HB、F、H〜9H(硬い))。
本発明における架橋樹脂層の鉛筆硬度試験は、JIS K5600:1999に基づいて実施する。異なる硬度の鉛筆を用い、0.5kg荷重下で試験を実施し、傷の有無によって判定する。なお、架橋樹脂層の表面に第1の層や第2の層、さらに樹脂層等が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により層を除去した後、鉛筆硬度試験を行うことで鉛筆硬度を評価することができる。
また、本発明において、飛躍的にガスバリア性が良好となる効果に対する架橋樹脂層の表面自由エネルギーの寄与は、表面自由エネルギーを45mN/m以下とすることによって、第1の層を形成する際の、ガスバリア層を形成する化合物の初期成長過程において、膜の成長核となる原子や粒子が表面移動、拡散し易くなるため、第1の層付近の膜質が緻密化し、結果として、層全体が緻密な構造に改善され、酸素および水蒸気の透過が抑制されることにあると推測している。従って、かかる架橋樹脂層の表面自由エネルギーは、45mN/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは40mN/m以下である。加えて、表面自由エネルギーが10mN/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーが10mN/m未満であると、架橋樹脂層と第1の層の密着性が低下し、第1の層が緻密な構造に形成されない場合がある。
本発明における架橋樹脂層の表面自由エネルギーは、各成分(分散力、極性力、水素結合力)が既知の4種類の測定液(水、ホルムアミド、エチレングリコール、ヨウ化メチレン)を用いて、各測定液の接触角を測定し、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式(1)を用いて各成分を計算できる。
Figure 2014043096
なお、架橋樹脂層表面に第1の層や第2の層、さらに樹脂層等が積層されている場合、本発明のガスバリア性フィルムにおいては上記4種類の測定液の接触角は、架橋樹脂層を架橋樹脂層の厚みの30〜70%の範囲でイオンエッチングや薬液処理で研磨した後に測定することができる。
本発明における架橋樹脂層の表面(ガスバリア性フィルムにおいては第1の層との境界面)の平均表面粗さRaを1nm以下にすると積層する第1の層のピンホールやクラックの発生をより低減できるので、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaが1nmより大きくなると、凸部においては、第1の層の積層後にピンホールが発生し易くなり、さらに凹凸が多い部分ではクラックが発生するため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明は、架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaを1nm以下にすることが好ましく、折り曲げ時のマイクロクラックなどの微細な欠陥の発生を抑制し、柔軟性を向上させる観点から0.6nm以下にすることがさらに好ましい。架橋樹脂層の表面の平均表面粗さRaは低ければ低いほど好ましく、0nmに近ければ近いほど良い。
本発明における架橋樹脂層の平均表面粗さRaは、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。なお、架橋樹脂層表面に無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法(「X線反射率入門」(桜井健次編集)講談社p.51〜78、2009年)を使用して得られた値を架橋樹脂層の平均表面粗さRaとする。
本発明に用いられる架橋樹脂層の材料としては、鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下となるものであれば、特に限定されず種々の架橋樹脂を使用することができる。ここでいう架橋樹脂とは、架橋点を分子量20000あたりに1点以上有するものと定義する。本発明における架橋樹脂層に適用できる架橋樹脂の例としては、アクリル系、ウレタン系、有機シリケート化合物、シリコーン系などの架橋樹脂が挙げられる。これらの中でも、プラズマ熱の耐久性および鉛筆硬度の観点から、熱硬化型のアクリル系樹脂および活性線硬化型のアクリル系樹脂が好ましい。
熱硬化型のアクリル系樹脂および活性線硬化型のアクリル系樹脂としては、多官能アクリレートとアクリルオリゴマー、反応性希釈剤を含むものが好ましく例示され、その他必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤などが添加されていてもよい。
上述したアクリル系樹脂に好適に用いられる多官能アクリレートは1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が挙げられる。かかる化合物の例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、本発明において、多官能アクリレートには、多官能アクリレートの変性ポリマーを含んでもよい。
アクリルオリゴマーは、数平均分子量が、100〜5000であって、分子内に少なくとも1つの反応性のアクリル基が結合されたものである。骨格としてはポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。また、前記の骨格はメラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格であってもよい。
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
また、特に、紫外線による架橋の場合には、光エネルギーが小さいため、光エネルギーの変換や反応の促進のため、光重合開始剤および、または光増感剤を添加することが好ましい。
本発明に用いられる架橋樹脂層の材料の配合における多官能アクリレートの使用割合は、鉛筆硬度をH以上とする観点から、架橋樹脂層の総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。かかる割合が90質量%より大きくなると、硬化収縮が大きく高分子基材が反る場合があり、そのような場合にはガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が低下する場合がある。また、多官能アクリレートの割合が20質量%より小さくなると、基材と架橋樹脂層との密着強度が低下し、剥離する場合がある。
本発明における架橋樹脂層を架橋させる方法として、光による硬化を適用する場合、光重合開始剤を加えることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などが挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、重合性組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、重合時の未反応物として残存し、ガスバリア性に影響しない範囲として、0.05〜5質量部が好ましい。
本発明に用いられる架橋樹脂層を形成する樹脂を含有する塗液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚の制御を目的として、本発明の効果が損なわれない範囲において、有機溶剤を配合することが好ましい。有機溶剤を配合する好ましい範囲としては10質量%以上、90質量%以下、より好ましくは20質量%以上、80質量%以下である。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、トルエンなどの芳香族系溶剤などを用いることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明に用いられる架橋樹脂層を形成する樹脂を含有する塗液には、第1の層との密着性の向上を目的として、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛等の無機粒子を配合することが好ましい。これらの中でもガスバリア層と強く密着するシリカ系無機粒子が好ましく、シラン化合物などで加水分解して得られるシリカ系無機粒子がさらに好ましい。無機粒子を配合する好ましい範囲としては、形成される架橋樹脂層に対して0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以上、10質量%以下である。
本発明には、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
本発明に用いられる架橋樹脂層の表面自由エネルギーを45mN/m以下とする方法としては、架橋樹脂層と第1の層との密着性やガスバリア性が低下しない範囲で、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの表面張力が低いシリコーン化合物を添加したり、親油性であるn―ステアリルアクリレートなどの長鎖のアルキル基をもつモノマーを添加したりする方法が挙げられる。
架橋樹脂層を形成する樹脂を含む塗液の塗布手段としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。中でも、本発明における架橋樹脂層の厚みである0.5μm以上、10μm以下の塗工に供する手法として、グラビアコート法が好ましい。
架橋樹脂層を架橋させる際に用いられる活性線としては、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線)などがあり、実用上簡便な方法として、紫外線が好ましい。また、熱による架橋させる場合に用いられる熱源としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなどがあり、温度制御の安定性の観点から赤外線ヒーターが好ましい。
[第1の層]
次に、X線反射率法により特定される、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と第2の層に隣接する層状の[1B]領域からなる周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物層(第1の層)について詳細を説明する。第1の層は、高分子フィルム基材の上に配置される。
発明者らの検討の結果、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層の上に、特定の条件下でケイ素化合物を主成分とする第2の層を積層することにより、飛躍的にガスバリア性を向上させることが可能であることを見出した。ここで、主成分とは第1の層全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい(他の層に関しても同様の定義とする)。なお、第1の層に周期律表第3族から第14族に属する金属元素を含む化合物が複数含まれる場合、第2の層に複数のケイ素化合物が含まれる場合については、それらの合計をもって主成分に該当するかどうかを判定する。
また、本発明における周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物とは、後述するX線光電子分光法(XPS法)、ICP発光分光分析、ラザフォード後方散乱法等により成分を特定された各元素の組成比が整数で表される組成式を有する化合物として扱う。たとえば、亜鉛化合物は生成時の条件に依存して、ZnS、ZnO等が量論比から若干のずれた組成比となる場合でも、ZnS、ZnOとして扱い上記の質量含有率を算出するものとする(以下同様)。
前記第1の層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成することができる。これらの方法の中でも、簡便かつ安価に前記第1の層を形成可能な方法として、スパッタリング法が好ましい。
前記第1の層である周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも一つを含む化合物の中でも、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)のうち少なくとも一つを含む化合物が好ましい。また、これらの中でも、比較的硬度が低く、かつ第1の層の上に第2の層を形成する際、ケイ素による置換が起こりやすいことから、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)のうち少なくとも一つを含む化合物がより好ましく、ガスバリア性の観点から亜鉛を含む化合物がさらに好ましく用いられる。
本発明に使用される[1A]、[1B]領域の厚み及び密度は上述したX線反射率法により測定される値である。
[1B]領域は厚さが0.2〜20nmである。厚さが0.2nmより小さい場合、[1B]領域を貫通する空隙部分や欠陥部分が存在するため、ガスバリア性の向上効果が十分とならない場合がある。また、厚さが20nmより大きくなると、[1B]領域を形成する粒子が成長して粒子サイズが大きくなるため、第2の層の形成を阻害して膜内部に欠陥部分が形成され、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、[1B]領域の厚さは、0.2〜20nmであり、好ましくは、2〜10nmである。
[1B]領域の密度は、第2の層の密度より1〜7g/cm高いことが好ましい。[1B]領域の密度が第2の層の密度に対して、1g/cm未満しか高くないと、第1の層の表面元素が第2の層のケイ素元素に過剰に置換され、緻密な膜が形成されない場合がある。[1B]領域の密度が第2の層の密度に対して7g/cmを超えて高くなると、第1の層の表面に存在する欠陥部分に第2の層のケイ素化合物が十分に充填されない場合があるため、ガスバリア性の向上効果が少なくなる場合がある。従って、[1B]領域の密度は、第2の層の密度より1〜7g/cm高いことが好ましく、2〜5g/cm高いことがより好ましい。
また、[1B]領域の密度は、[1A]領域の密度より0.2〜4g/cm低いことが好ましい。[1B]領域の密度が[1A]領域の密度に対して、0.2g/cm未満しか低くない場合、第1の層の元素のケイ素元素への置換や第1の層の表面の領域にある欠陥部分へのケイ素化合物の充填が十分にされておらず、ガスバリア性の向上が不十分な場合がある。また、[1B]領域の密度が[1A]領域の密度に対して4g/cmを超えて低くなると、[1B]領域が過剰に緻密なものとなり、柔軟性が低下し、曲げや外部からの衝撃でクラックが発生する場合がある。従って、[1B]領域の密度は、[1A]領域の密度より0.2〜4g/cm低いことが好ましく、0.2〜2g/cm低いことがより好ましい。
第1の層は、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分として含んでいれば、Siをはじめとするその他の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいてもよい。例えば、高いガスバリア性が得られるものとして、[1−1]酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相(以降[1−1]と略記する)または[1−2]硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相(以降[1−2]と略記する)などが好適に用いられる(なお、[1−1]と[1−2]のそれぞれの詳細説明は後述する)。
[1A]領域の厚みは、ガスバリア性を発現する層の厚みとして10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生する場合があり、ガスバリアフィルムの面内でガスバリア性がばらつく場合がある。また、[1A]領域の厚みは、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。層の厚みが1000nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によって[1A]領域にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。
また、[1A]領域の密度は、3.5〜7g/cmの範囲であることが好ましい。[1A]領域の密度が、3.5g/cmより小さくなると、[1A]領域の膜質の緻密性が低下し、空隙部分や欠陥部分が増加するため、十分なガスバリア性が得られなくなる場合がある。[1A]領域の密度が7g/cmより大きくなると、[1A]領域が過剰に緻密な膜質となるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。従って、[1A]領域の密度は、3.5〜7g/cmの範囲であることが好ましく、3.8〜4.8g/cmの範囲がより好ましい。
X線反射率法により測定される[1B]領域の密度は、2.7g/cm以上であることが好ましく、3.5g/cm以上であればより好ましい。[1B]領域の密度が、2.7g/cm以上であると、第1の層の表面に存在する空隙部分や欠陥部分へのケイ素化合物の充填がより進行し、さらに密着の悪い不安定な第1の層の元素がケイ素元素に置換されるため、[1B]領域の膜質の緻密性がより向上し、飛躍的なガスバリア性の向上効果が得られるためである。一方、X線反射率法により測定される[1B]領域の密度は5.8g/cm以下であることが好ましく5.5g/cm以下であればより好ましい。[1B]領域の密度が5.8g/cm以下であると、[1B]領域が過剰に緻密な膜質となりにくいため、第2の層の形成時等にクラックの発生がより抑制されるためである。
[酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相]
次に、本発明の第1の層として好適に用いられる[1−1]として、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相について詳細を説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相」を「ZnO−SiO−Al」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、本明細書においては二酸化ケイ素あるいはSiOと表記し、その組成として扱うこととする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、本明細書においては、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAlと表記し、それらの組成として扱うこととする。
本発明のガスバリア性フィルムにおいて[1−1]を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相においては酸化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい酸化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。
また、酸化アルミニウムを共存させることによって、酸化亜鉛と二酸化ケイ素を共存させる場合に比べて、より結晶成長を抑制することができるため、クラックの生成に起因するガスバリア性低下が抑制できたものと考えられる。
[1−1]の組成は、後述するようにICP発光分光分析法により測定することができる。ICP発光分光分析法により測定されるZn原子濃度は20〜40atom%、Si原子濃度は5〜20atom%、Al原子濃度は0.5〜5atom%、O原子濃度は35〜70atom%であることが好ましい。Zn原子濃度が40atom%より大きくなる、またはSi原子濃度が5atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する酸化物が不足する場合があるため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。Zn原子濃度が20atom%より小さくなる、またはSi原子濃度が20atom%より大きくなると、層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合がある。また、Al原子濃度が5atom%より大きくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が過剰に高くなる場合があるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。Al原子濃度が0.5atom%より小さくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力が向上しにくい場合があるため、柔軟性が低下する場合がある。また、O原子濃度が70atom%より大きくなると、[1−1]内の欠陥量が増加する場合があるため、所定のガスバリア性が得にくい合がある。O原子濃度が35atom%より小さくなると、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなる場合があるため、ガスバリア性が低化する場合がある。かかる観点から、Zn原子濃度が25〜35atom%、Si原子濃度が10〜15atom%、Al原子濃度が1〜3atom%、O原子濃度が50〜64atom%であることがより好ましい。
[1−1]に含まれる成分は酸化亜鉛および二酸化ケイ素および酸化アルミニウムが上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、Al、Ti、Zr、Sn、In、Nb、Mo、Ta、Pd等から形成された金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、[1−1]の組成の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。
[1−1]の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで[1−1]の組成を調整することが可能である。
[1−1]の組成分析は、ICP発光分光分析法を使用して、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの各元素を定量分析し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび含有する無機酸化物の組成比を知ることができる。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在すると仮定して算出する。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。[1A]領域上に無機層([1B]領域、第2の層等)やさらに樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、ICP発光分光分析を行うことができる。
高分子フィルム基材上(または高分子フィルム基材上に設けられた層上)に[1−1]を形成する方法は特に限定されず、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの単体材料を使用する場合は、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムをそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、本発明に使用する[1−1]の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相]
次に、[1−2]として、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相について詳細を説明する。なお、「硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相」を、「ZnS−SiO」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO)は、その生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、本明細書においては二酸化ケイ素あるいはSiOと表記する。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、硫化亜鉛についても同様の扱いとし、本明細書においては、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、硫化亜鉛またはZnSと表記し、その組成として扱うこととする。
本発明のガスバリア性フィルムにおいて[1−2]を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相においては硫化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい硫化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、酸素および水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。また、結晶成長が抑制された硫化亜鉛を含む硫化亜鉛−二酸化ケイ素共存相は、無機酸化物または金属酸化物だけで形成された層よりも柔軟性が優れるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくいため、かかる[1−2]を適用することによりクラックの生成に起因するガスバリア性低下が抑制できたものと考えられる。
[1−2]の組成は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9であることが好ましい。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.9より大きくなると、硫化亜鉛の結晶成長を抑制する酸化物が不足する場合があるため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られない場合がある。また、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7より小さくなると、[1−2]内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合があるため、機械的な曲げに対するガスバリア性フィルムの柔軟性が低下する場合がある。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率は、さらに好ましくは0.75〜0.85の範囲である。
[1−2]に含まれる成分は硫化亜鉛および二酸化ケイ素が上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、Al、Ti、Zr、Sn、In、Nb、Mo、Ta、Pd等の金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、[1−2]の組成の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。
[1−2]の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで[1−2]の組成を調整することが可能である。
[1−2]の組成分析は、ICP発光分光分析によりまず亜鉛及びケイ素の組成比を求め、この値を基にラザフォード後方散乱法を使用して、各元素を定量分析し硫化亜鉛と二酸化ケイ素および含有する他の無機酸化物の組成比を知ることができる。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。また、ラザフォード後方散乱法は高電圧で加速させた荷電粒子を試料に照射し、そこから跳ね返る荷電粒子の数、エネルギーから元素の特定、定量を行い、各元素の組成比を知ることができる。なお、[1−2]は硫化物と酸化物の複合層であるため、硫黄と酸素の組成比分析が可能なラザフォード後方散乱法による分析を実施する。[1−2]上に無機層([1B]領域、第2の層等)やさらに樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、ICP発光分光分析及び、ラザフォード後方散乱法にて分析することができる。
高分子フィルム基材上(または高分子フィルム基材上に設けられた層上)に[1−2]を形成する方法は特に限定されず、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。硫化亜鉛と二酸化ケイ素の単体材料を使用する場合は、硫化亜鉛と二酸化ケイ素をそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、本発明に使用する[1−2]の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[第2の層]
次に、ケイ素化合物を主成分とする第2の層(以降第2の層と略記する)について詳細を説明する。上述したように、第1の層に接するように第2の層を特定の条件下で積層すると、第1の層は、第2の層に隣接する位置に、[1A]領域の密度より低く、第2の層の密度より高い緻密な層状の[1B]領域が形成され、飛躍的にガスバリア性を向上させることができる。ここで、主成分とは第2の層全体の60質量%以上であることを意味し、80質量%以上であれば好ましい。なお、本発明におけるケイ素化合物とは、後述するX線光電子分光法(XPS法)、ICP発光分光分析、ラザフォード後方散乱法等により成分を特定された各元素の組成比が整数で表される組成式を有する化合物として扱う。たとえば、二酸化ケイ素(SiO)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、そのような場合でも、SiOとして扱い上記の質量含有率を算出するものとする(以下同様)。
第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.50〜2.00であるケイ素の酸化物を含むことが好ましい。ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.00より大きくなると、含まれる酸素原子量が多くなるため、空隙部分や欠陥部分が増加し、所定のガスバリア性が得られない場合がある。また、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.50より小さくなると、酸素原子が減少し緻密な膜質になるが、柔軟性が低下する場合がある。ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比は、より好ましくは1.70〜1.90の範囲である。
第2の層の組成分析は、組成に応じてX線光電子分光法(XPS法)やICP発光分光分析及び、ラザフォード後方散乱法を使用して、各元素の原子量を定量分析することができる。第2の層上にさらに無機層や樹脂層が積層されている場合、X線反射率法により求めた厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、分析することができる。
本発明に使用される第2の層の厚み及び密度は上述したX線反射率法により測定することができる。
本発明に使用する第2の層の厚みは、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生する場合があり、ガスバリアフィルムの面内でガスバリア性にばらつきが生じる場合がある。また、第2の層の厚みは、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。層の厚みが1000nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなる場合があるため、曲げや外部からの衝撃によって第2の層にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。
X線反射率法により測定される第2の層の密度は、2〜4g/cmの範囲であることが好ましい。第2の層の密度が、2g/cmより小さくなると、第2の層の膜質の緻密性が低下し、空隙部分や欠陥部分が増加する場合があるため、十分なガスバリア性が得られなくなる場合がある。第2の層の密度が4g/cmより大きくなると、第2の層が過剰に緻密な膜質となる場合があるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。従って、第2の層の密度は、2〜4g/cmの範囲であることが好ましく、2.3〜3g/cmの範囲がより好ましい。
第2の層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法CVD法(以下、単にCVD法と略す)等によって形成することができるが、第2の層を形成する条件としては、第1の層表面の欠陥に効率良く薄膜を形成する粒子を充填するために、原子半径が小さい元素を選択したり、活性化させるエネルギーを高く設定したりすることが好ましい。たとえば、真空蒸着法の場合は、第1の層表面の欠陥に効率良く薄膜を形成する粒子を充填するために、第1の層に含有する元素よりも原子半径が小さい元素を含有し、かつ低融点の蒸着材料を、より減圧された環境下で蒸着して形成する方法が好ましい。スパッタリング法の場合は、第1の層表面の欠陥に薄膜を形成する粒子を充填することに加えて、薄膜を形成する粒子の表面拡散によって緻密な膜質の薄膜を形成するため、ターゲット材料をスパッタリングするプラズマとは別に、第1の層の表面を酸素ガスや炭酸ガスなどの反応性ガスのプラズマでアシストしながら薄膜を形成する、プラズマアシストスパッタ法が好ましい。CVD法の場合は、第1の層の表面を酸素ガスや炭酸ガスなどの反応性ガスのプラズマでエッチング処理した後、ケイ素系有機化合物のモノマー気体を高強度のプラズマにより活性化し、重合反応によって緻密なケイ素系薄膜層を形成することが好ましい。これらの方法の中でも、本発明に使用する第2の層の形成方法は、第1の層表面の欠陥を効率よく充填させて飛躍的にガスバリア性を向上させることができることから、第1の層の表面を酸素ガスや炭酸ガスなどの反応性ガスのプラズマでエッチング処理した後、ケイ素系有機化合物のモノマー気体を高強度のプラズマにより活性化し、重合反応によって緻密なケイ素系薄膜層を形成するCVD法がより好ましい。
ケイ素系有機化合物とは、分子内部にケイ素を含有する化合物のことであり、例えば、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロポキシシラン、ジプロポキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、ジメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、デカメチルシクロペンタシラザン、ウンデカメチルシクロヘキサシラザンなどが挙げられる。中でも取り扱い上の観点からヘキサメチルジシロキサン、テトラエトキシシランが好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムは、水蒸気等に対する高いガスバリア性、透明性、耐熱性に優れているので、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、有機ELディスプレイ、大型液晶ディスプレイ、高精細ディスプレイ、太陽電池などの電子デバイス部材として有用に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)層・領域の厚み、密度
(1−1)TEMによる断面観察
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製作所製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、カスバリア層の第1の層、第2の層の厚みを測定した。
(1−2)X線反射率法による[1A]、[1B]領域の厚み、密度のフィッティング
X線反射率法により、第1の層([1A]、[1B]領域)、第2の層の厚み及び密度を測定した。すなわち、高分子フィルム基材の上に形成されたガスバリア層(第1の層、第2の層)に斜方向からX線を照射し、入射X線強度に対する全反射X線強度のガスバリア層表面への入射角度依存性を測定することにより、得られた反射波のX線強度プロファイルを得た。そして、(1−1)の断面観察により特定した、層のデータ、および、(3)から(5)の評価により得た組成情報から計算される密度を初期値として、本文に記載したX線強度プロファイルのフィッティング方法を用いて各領域の厚み、密度を求めた。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:Rigaku製SmartLab
・解析ソフト:Rigaku製Grobal Fit
・測定範囲(試料表面とのなす角):0〜8.0°、0.001°ステップ
・入射スリットサイズ:0.05mm×10.0mm
・受光スリットサイズ:0.15mm×20.0mm。
(2)水蒸気透過率
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cmの条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して測定した。サンプル数は水準当たり2検体とし、測定回数は同一検体について各10回とし、その平均値を水蒸気透過率とした。
(3)[1−1]の組成
[1−1]の組成分析はICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS4000)により行った。試料中の亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子の含有量を測定し、原子数比に換算した。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)として存在するとして求めた計算値とした。
(4)[1−2]の組成
[1−2]の組成分析はICP発光分光分析(セイコー電子工業(株)製、SPS4000)により行い、この値をもとにさらにラザフォード後方散乱法(日新ハイボルテージ(株)製AN−2500)を使用して、各元素を定量分析し硫化亜鉛と二酸化ケイ素の組成比を求めた
(5)第1の層([1−1]、[1−2]を除く)、第2の層の組成
第1の層はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、酸素原子に対する含有金属または非金属原子の原子数比を測定し、必要に応じて上記(3)および/または(4)の測定も併用した。
第2の層はX線光電子分光法(XPS法)を用いることにより、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比(O/Si比率)を測定した。
測定条件は下記の通りとした。
・装置:Quantera SXM (PHI社製)
・励起X線:monochromatic AlKα1,2
・X線径100μm ・光電子脱出角度:10°。
(6)鉛筆硬度試験
架橋樹脂層表面の鉛筆硬度を、鉛筆硬度試験機HEIDON−14(新東科学(株))を用いて、JIS K5600−5−4:1999に従い、水準当たり1検体とし、測定回数は1回で、鉛筆硬度を測定した。
(7)表面自由エネルギー
架橋樹脂層表面について、表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)が既知の4種類の測定液(水、ホルムアミド、エチレングリコール、ヨウ化メチレン)を用い、23℃の温度、相対湿度65%の条件下で接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)にて、各液体の積層膜上での接触角を測定した。各測定液毎に、測定回数は5回で接触角を測定し、平均値を求め、この値を、拡張Fowkes式とYoungの式より導入される下記式(1)に代入して各成分を計算した。
Figure 2014043096
(8)平均表面粗さRa
原子間力顕微鏡を用いて、以下の条件で架橋樹脂層表面について測定した。
システム:NanoScopeIII/MMAFM(デジタルインスツルメンツ社製)
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型、単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モ−ド:タッピングモ−ド
走査範囲:10μm×10μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中。
(9)全光線透過率
JIS K7361:1997に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦50mm、横50mmのサイズに切り出したフィルム3枚について行い、測定回数は各5回とし、合計15回測定の平均値を全光線透過率とした。
(10)ヘイズ
JIS K7136:2000に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦50mm、横50mmのサイズに切り出したフィルム3枚について行い、測定回数は各5回とし、合計15回測定の平均値をヘイズ値とした。
([1A]領域が[1−1]となる第1の層の形成)
図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング・化学気相蒸着装置(以降スパッタ・CVD装置と略す)を使用し、高分子フィルム基材5の面上に酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムとで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極13に設置し、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施し第1の層を設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極13に酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ・CVD装置6の巻き取り室7の中で、巻き出しロール8に前記高分子フィルム基材5を第1の層を設ける側の面がスパッタ電極13に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロール9、10、11を介して、クーリングドラム12に通した。減圧度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流電源により投入電力3000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記高分子フィルム基材5の表面上に第1の層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール15、16、17を介して巻き取りロール18に巻き取った。
([1A]領域が[1−2]となる第1の層の形成)
図2に示す構造のスパッタ・CVD装置を使用し、高分子フィルム基材5の面上に、硫化亜鉛および二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極13に設置し、アルゴンガスプラズマによるスパッタリングを実施し第1の層を設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極13に硫化亜鉛/二酸化ケイ素のモル組成比が80/20で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ・CVD装置6の巻き取り室7の中で、巻き出しロール8に前記高分子フィルム基材5をセットし、巻き出し、ガイドロール9、10、11を介して、クーリングドラム12に通した。減圧度2×10−1Paとなるようにアルゴンガスを導入し、高周波電源により投入電力500Wを印加することにより、アルゴンガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記高分子フィルム基材5の表面上に第1の層を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロール15、16、17を介して巻き取りロール18に巻き取った。
(第2の層の形成)
図2に示す構造のスパッタ・CVD装置を使用し、高分子フィルム基材5の面([1−1]または[1−2]の形成された面)上に、酸素ガスプラズマで第1の層の表層をエッチング処理した後、ヘキサメチルジシロキサンを原料とした化学気相蒸着を実施し第2の層を設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。スパッタ・CVD装置6の巻き取り室7の中で、巻き出しロール8に前記高分子フィルム基材5をセットし、巻き出し、ガイドロール9、10に通した。表面処理用電極19に酸素ガス0.5L/分を導入し、直流電源により投入電力500Wを印加することにより、酸素ガスプラズマを発生させ、第1の層の表層をエッチング処理した。次いで、ガイドロール11を介して、クーリングドラム12に通した。減圧度2×10−1Paとなるように酸素ガス0.5L/分とヘキサメチルジシロキサン70cc/分を導入し、高周波電源からCVD電極14に投入電力1000Wを印加することにより、プラズマを発生させ、CVDにより前記高分子フィルム基材5の表面上に第2の層を形成した。その後、ガイドロール15、16、17を介して巻き取りロール18に巻き取った。
(実施例1)
高分子フィルム基材として、厚み188μmの高分子フィルム基材5(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U35:一方の面に易接着層が形成され、もう一方の面はポリエチレンテレフタレートが露出している)を用い、該高分子フィルム基材のポリエチレンテレフタレートが露出している面に、[1A]領域が[1−1]となる第1の層を膜厚100nmを目標として設けた。第1の層の組成は、ZnOが71.2質量%、Alが3.7質量%、SiOが25.0質量%であり、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物に該当するZnOおよびAlの含有量は74.9質量%であった。
第2の層を厚み100nmを目標として前記第1の層上に1層積層し、ガスバリア性フィルムを得た。
この様にして得たガスバリア性フィルムの、第1の層には、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域が形成されていた。[1A]領域([1−1])の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.70であった。
得られたガスバリア性フィルムから縦100mm、横140mmの試験片を切り出し、X線反射率法による各層の厚み、密度の評価及び水蒸気透過率の評価を実施した。結果を表1に示す。なお、X線反射率法の解析に使用する各層の厚みの初期値は、透過型電子顕微鏡による断面観察写真より得られた値を使用し、各層の密度の初期値は、各層の厚みの中央部分の組成分析により得られた組成から計算された値を使用した。
(実施例2)
第1の層として[1A]領域が[1−2]となる第1の層を形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第1の層の組成は、ZnSが86.7質量%、SiOが13.3質量%であり、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物に該当するZnSの含有量は86.7質量%であった。
この様にして得たガスバリア性フィルムの、第1の層には、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域が形成されていた。[1A]領域([1−2])の組成は、硫化亜鉛のモル分率が0.85であった。
(実施例3)
第2の層の形成時の高周波電源の投入電力を3500Wまで上昇させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.90であった。
(実施例4)
第1の層として[1A]領域が[1−2]となる第1の層を形成し、さらに第2の層の形成時の高周波電源の投入電力を3500Wまで上昇させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.90であった。
(実施例5)
実施例1の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を750Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した。次いで、第1層のエッチング処理された表面に、第2の層の形成時の高周波電源の投入電力を2000Wまで上昇させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.70であった。
(実施例6)
第1の層を形成するためのスパッタターゲットを酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの焼結ターゲットに代えて、酸化錫ターゲットを使用し、厚み100nmを目標として酸化錫層を形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第1層の[1A]領域の酸化錫層の組成は、錫原子に対する酸素原子の原子数比が1.95であった。
(実施例7)
第1の層を形成するためのスパッタターゲットを酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの焼結ターゲットに代えて、酸化アルミニウムターゲットを使用し、厚み100nmを目標として酸化アルミニウム層を形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第1の層の[1A]領域層の組成は、アルミニウム原子に対する酸素原子の原子数比が1.45であった。
(実施例8)
高分子基材として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U48)を使用した。
架橋樹脂層形成用の塗液として、ウレタンアクリレート(中国塗料(株)製フォルシード420C)100質量部をトルエン70質量部で希釈した塗液1を調製した。次いで、第1の層の形成前に塗液1を前記高分子基材の片面にマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1J/cm照射、硬化させ、厚み3μmの架橋樹脂層(構成樹脂を樹脂1と記す)を設けた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
実施例1で行ったのと同様の評価に加え、架橋樹脂層を形成した段階のフィルムから縦100mm、横100mmの試験片を切り出し、架橋樹脂層の鉛筆硬度試験、表面自由エネルギー、平均表面粗さの評価を実施した。結果を表1に示す。
この様にして得たガスバリア性フィルムの、第1の層には、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域が形成されていた。[1A]領域([1−1])の組成は、Zn原子濃度が28.4atom%、Si原子濃度が11.1atom%、Al原子濃度が2.0atom%、O原子濃度が58.5atom%であった。第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.70であった。
(実施例9)
架橋樹脂層形成用の塗液として、ウレタンアクリレートに代えて、ポリエステルアクリレート(日本化薬(株)製FOP−1740)100質量部にシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製SH190)0.2質量部を添加し、トルエン50質量部、MEK50質量部で希釈した塗液2を調製し、塗液2をマイクログラビアコーター(グラビア線番200UR、グラビア回転比100%)で塗布、60℃で1分間乾燥後、紫外線を1J/cm照射、硬化させ、厚み5μmの架橋樹脂層(構成樹脂を樹脂2と記す)を設けた以外は実施例8と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
この様にして得たガスバリア性フィルムの、第1の層には、高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域が形成されていた。[1A]領域([1−1])の組成は、Zn原子濃度が29.2atom%、Si原子濃度が12.3atom%、Al原子濃度が2.6atom%、O原子濃度が55.9atom%であった。第2の層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が1.60であった。
(比較例1)
第2層の形成時の高周波電源の投入電力を200Wまで低下させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.30であった。
(比較例2)
第1の層として[1A]領域が[1−2]となる第1の層を形成し、さらに第2層の形成時の高周波電源の投入電力を200Wまで低下させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.40であった。
(比較例3)
実施例1の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を4000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.30であった。
(比較例4)
第1の層として[1A]領域が[1−2]となる第1の層に代えた以外は実施例1の手順で第1の層を形成した。次いで、表面処理用電極の直流電源の投入電力を4000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.30であった。
(比較例5)
実施例1の手順で第1の層を形成し、第1層の表層を酸素ガスプラズマでエッチング処理した後、第2層を形成しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例6)
実施例1の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を4000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した後、第2層を形成しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例7)
実施例1の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を3000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した後、第2層の形成時の高周波電源の投入電力を200Wまで低下させて形成した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.20であった。
(比較例8)
実施例8の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を4000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した以外は、実施例8と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.30であった。
(比較例9)
実施例9の手順で第1の層を形成した後に、表面処理用電極の直流電源の投入電力を4000Wまで上昇させて酸素ガスプラズマを発生させ、第1層の表層をエッチング処理した以外は、実施例9と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。第2層の組成は、ケイ素原子に対する酸素原子の原子数比が2.30であった。
Figure 2014043096
1 高分子フィルム基材
2 [1A]領域
3 [1B]領域
4 第2の層
5 高分子フィルム基材
6 スパッタ・CVD装置
7 巻き取り室
8 巻き出しロール
9、10、11 巻き出し側ガイドロール
12 クーリングドラム
13 スパッタ電極
14 CVD電極
15、16、17 巻き取り側ガイドロール
18 巻き取りロール
19 表面処理用電極

Claims (10)

  1. 高分子フィルム基材の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記ガスバリア層は高分子フィルム基材の側から、周期律表第3族から第14族に属する金属元素のうち少なくとも1つの元素を含む化合物を主成分とする第1の層と、ケイ素化合物を主成分とする第2の層がこの順に積層されたものであり、前記第1の層は、X線反射率法により特定される高分子フィルム基材側に位置する層状の[1A]領域と前記第2の層に隣接する層状の[1B]領域からなり、該[1B]領域は厚さが0.2〜20nmであり、前記[1B]領域の密度が前記[1A]領域の密度より低く、前記第2の層の密度より高いことを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 前記[1B]領域の密度が、前記第2の層の密度より1〜7g/cm高い請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記[1B]領域の密度が、前記[1A]領域の密度より0.2〜4g/cm低い請求項1または請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記第1の層が亜鉛化合物を主成分とする層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記[1A]領域は、以下の[1−1]または[1−2]からなる請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
    [1−1]:酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相
    [1−2]:硫化亜鉛と二酸化ケイ素の共存相
  6. 前記[1A]領域の密度が3.5〜7g/cm、前記[1B]領域の密度が2.7〜5.8g/cm、前記第2の層の密度が2〜4g/cmである請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記[1A]領域が、前記[1−1]からなり、ICP発光分光分析法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が20〜40atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5〜20atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が0.5〜5atom%、酸素(O)原子濃度が35〜70atom%である請求項5または6に記載のガスバリア性フィルム。
  8. 前記[1A]領域が、前記[1−2]からなり、硫化亜鉛と二酸化ケイ素の合計に対する硫化亜鉛のモル分率が0.7〜0.9である請求項5または6に記載のガスバリア性フィルム。
  9. 前記高分子フィルム基材とガスバリア層との間に鉛筆硬度がH以上かつ表面自由エネルギーが45mN/m以下である架橋樹脂層を有する請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  10. 前記架橋樹脂層の平均表面粗さRaが1nm以下であることを特徴とする請求項9に記載のガスバリア性フィルム
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