JP2014036938A - 高分子水処理膜の製造方法 - Google Patents

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龍一 松尾
Toshihiro Tamai
俊洋 玉井
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Abstract

【課題】機械的強度、耐薬品性、透水性及び防汚性を兼ね備えた高分子水処理膜を低温にて均一に効率的に製造することができる高分子水処理膜の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂からなる高分子水処理膜を非溶媒誘起相分離法により製造する際に、いったん均一なポリビニルアセタール樹脂溶液を調製し、該溶液にポリビニルアセタール樹脂に非相溶な成分を添加することにより濁った相分離状態にし、次いで、該溶液を非溶媒にさらして相分離をさらに進めることを含むことを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子水処理膜の製造方法に関する。
従来から、例えば、河川水及び地下水の除濁、工業用水の清澄、排水及び汚水処理、海水淡水化の前処理等の水の精製のために、高分子水処理膜が利用されている。
一般に、このような高分子水処理膜に要求される性能としては、目的とする分離特性に加え、優れた透水性を有すること、物理的強度に優れていること、各種化学物質に対する安定性(つまり、耐薬品性)が高いこと、ろ過時に汚れが付着しにくい(つまり、耐汚染性が優れている)こと等が挙げられる。
このような要求から、例えば、耐汚染性を有する水処理膜を製造するために、親水性のある材料が用いられている。
具体的には、水酸基を有する酢酸セルロースを用いた中空糸分離膜が提案されおり(特許文献1参照)、市販されている。
また、同様に水酸基を有し、酸やアルカリにも耐性がある材料として、ポリビニルアセタールが挙げられ、これを用いた逆浸透膜(特許文献2参照)及びポリビニルブチラールからなる中空繊維の限外ろ過膜(非特許文献1参照)が提案されている。
しかし、ポリビニルアセタールは親水性を有するが、逆浸透膜は、孔径が小さく、非常に緻密な表面構造であるので、限外ろ過膜及び精密ろ過膜等として使用できない。つまり、河川水及び地下水の除濁、工業用水の清澄、排水及び汚水処理、海水淡水化の前処理等の水の精製、ならびに近年下水処理で採用が増加している膜分離活性汚泥法(MBR)への使用に適した膜ではない。
また、ポリビニルブチラールは耐熱性が不十分であり、ポリビニルブチラールからなる水処理膜を温水洗浄したり、加熱殺菌処理したりする場合、膜の透水性能が低下するという課題がある。
一方、ポリビニルブチラールとポリ塩化ビニルとのブレンドによる分離膜が報告されている(非特許文献2参照)が、やはり、このような分離膜でも、耐熱性を改善するには至っていないのが現状である。
特開平8−108053号公報 特開昭51−103085号公報
Desalination Vol.278, No.1−3, Page.186−193 Desalination Vol.196, No.1−3, Page.13−21
また、近年の高分子水処理膜では、上述したような機械的強度、耐薬品性及び透水性の改善に加えて、汚れによる目詰まりが発生することによる透水量の低下防止が、水処理装置の長期的な運転を実現する上で主要な課題となっている。これは、目詰まりによる膜の損傷及び目詰まり解消のための薬洗・逆洗などのメンテナンスに伴うコストの高騰に起因する。
従って、これらの課題を回避するために、高分子水処理膜自体の防汚性、耐熱性を向上させることが熱望されているとともに、低温で製造コストを低減させることができる製造方法も同時に求められている。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、機械的強度、耐薬品性、透水性及び防汚性を兼ね備えた高分子水処理膜を低温にて均一に効率的に製造することができる高分子水処理膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)ポリビニルアセタール樹脂からなる高分子水処理膜を非溶媒誘起相分離法により製造する方法であって、一旦均一なポリビニルアセタール樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液にポリビニルアセタール樹脂に非相溶な成分を添加することにより濁った相分離状態にし、次いで、該樹脂溶液を非溶媒にさらして相分離をさらに進めることを含むことを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
(2)ポリビニルアセタール樹脂溶液に含まれるポリビニルアセタール樹脂は、以下の構造単位を含む樹脂である上記の方法。
Figure 2014036938
(式中、Rは水素原子、アルキル基を表し、m:n:sは、40〜98:20〜1:40〜1である。)
(3)Rがメチル基である上記の方法。
(4)前記ポリビニルアセタール樹脂溶液を、室温〜70℃の温度範囲で調製する上記いずれかに記載の方法。
(5)濁った相分離及びその後の相分離を、5〜70℃の温度範囲で実施する上記いずれかの方法。
(6)前記ポリビニルアセタール樹脂溶液を濁った相分離状態にした後の樹脂溶液を非溶媒にさらすことが、水が充填された凝固槽に前記樹脂溶液を吐出することである上記いずれかの方法。
(7)濁った相分離状態を、前記ポリビニルアセタール樹脂溶液の全重量に対して1〜10重量%程度の水の添加によって誘導する上記いずれかの方法。
本発明によれば、機械的強度、耐薬品性、透水性及び防汚性を兼ね備えた高分子水処理膜を低温にて均一に効率的に製造することができる。
本発明の高分子水処理膜の製造方法は、ポリビニルアセタール樹脂からなる高分子水処理膜を製造する方法である。この製造方法は、相分離法を利用するものであり、非溶媒を用いる誘起相分離法(NIPS法)である。このような方法を採用することにより、低温での製造が可能となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
本発明の製造方法で用いるポリビニルアセタール樹脂は、以下の式で表される基本構造を含む。
Figure 2014036938
式中、Rは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は炭素数1〜6程度のものが好ましく、炭素数1〜4程度がより好ましく、メチル基がより好ましい。
本発明の製造方法によって製造するポリビニルアセタール樹脂は、上述した置換基Rは、必ずしも単一の置換基でなくてもよく、つまり、メチル基のみ、エチル基のみ、プロピル基のみであってもよいが、メチル基とエチル基等とが混在していてもよいし、メチル基とプロピル基等とが混在していてもよいし、エチル基とプロピル基等とが混在していてもよい。なかでも、メチル基のみのもの、メチル基とプロピル基とが混在するものが好ましく、メチル基のみのものがより好ましい。メチル基とプロピル基とが混在する場合には、その割合は、特に限定されるものではなく、99:1〜50:50(モル比)が挙げられ、1:9〜5:5が好ましい。
アセタール基を含有する構造単位においてメチル基がより多く存在する場合には、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖に対する側鎖が、例えば、プロピル基がより多く存在する(ブチラール基を含有する構造単位において)場合と比較して短いために、主鎖の運動性がより低くなる。これによって、得られた高分子水処理膜の耐熱性の向上を図ることができる。
上記構造単位において、m、n、sの比率は特に限定されるものではないが、水酸基を含有する構造単位が多い場合には、親水性基が多く含有されるため、防汚性を向上させることが期待できる。その一方、非溶媒中で安定化しやすい、つまり、非溶媒中にさらされた樹脂溶液に多量の非溶媒が拡散するまでに、エネルギー的に安定した状態が持続する傾向があるため、相分離の遅延が予想される。したがって、これらのバランスを考慮して、例えば、m:n:sが40〜98:20〜1:40〜1程度が挙げられ、m:n:sが50〜98:15〜1:35〜1程度が好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂の分子量は1万〜30万、好ましくは1万〜20万、より好ましくは1万〜15万である。この範囲とすることにより、適度な粘度に調整しやすく、製膜が容易となるとともに、得られた膜の強度を確保することができる。
ここでいう分子量は、ポリビニルアセタール樹脂を構成するポリビニルアルコール樹脂の重合度と、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(アセタール基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル%)およびポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量(アセチル基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル%)から計算されて求められる値である。
ポリビニルアルコール樹脂の重合度は、ポリビニルアセタール樹脂に塩酸ヒドロキシルアミンを作用させてアセタール基を脱離させた後、得られたポリビニルアルコール樹脂の重合度をJIS「ポリビニルアルコール試験方法」(K−6726−1994)に準拠して測定される。
また、既知の重合度をもつポリビニルアルコール樹脂のアセタール化を行ってポリビニルアセタール樹脂を得た場合は、アセタール化による主鎖の切断は無いものと考えられるので、改めて脱アセタール化することなくその重合度を用いてポリビニルアセタール樹脂の分子量を計算することができる。
ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量は、上記JIS「ポリビニルアセタール試験方法」(K−6728−1977)における組成分析の項の「ビニルアセタール」の試験方法に準拠して測定できる。
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、プロトン核磁気共鳴スペクトル方や滴定法により測定できる。例えば、ポリビニルアセタール樹脂の2重量%重水素化ベンゼン溶液を調製し、少量のテトラメチルシラン[(CH3 )4 Si]を標準物質として添加し、温度23℃でポリビニルアセタール樹脂のプロトン核磁気共鳴スペクトルを取ることや、JIS「ポリビニルアセタール試験方法」(K−6728−1977)における組成分析の項の「ビニルアセタール」の試験方法に準拠して、塩酸ヒドロキシルアミン法によることにより測定できる。
本発明の高分子水処理膜の製造方法では、まず、ポリビニルアセタール樹脂溶液を調製する。ポリビニルアセタール樹脂の溶剤としては、ポリビニルアセタール樹脂溶液を均一で透明な溶液に調製できるもの、つまり、使用するポリビニルアセタール樹脂に対する良溶媒であればよい。例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
ポリビニルアセタール樹脂の溶液は、例えば、樹脂溶液の全重量に対して10〜60重量%であることが好ましく、14〜40重量%であることがより好ましく、18〜30重量%であることがさらに好ましい。この範囲とすることにより、相分離を適度に早めることができるとともに、得られる高分子水処理膜において十分な強度を確保することができる。また、後述するような比較的大口径の中空糸膜を利用する高分子水処理膜として成膜する場合に、特に強度を確保することができ、疲労強度を向上させることができる。
また、別の観点から、例えば、500〜4000mPa・s程度の粘度とすることが適しており、1000〜3000mPa・s程度が好ましい。これにより、紡糸ライン中で水処理膜の外形の真円度を確保することができ、均一な太さ・膜厚の膜を製造することができる。粘度は、例えば、樹脂溶液をサンプル管に直接導入し、振動式粘度計(セコニック(株)製、VM-100A-M)を使って測定した値とすることができる。
樹脂溶液には、成膜時における成形性、熱安定性等を向上させる目的で、公知の添加剤、例えば、滑剤、熱安定剤、成膜助剤等がブレンドされていてもよい。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
例えば、製膜助剤としては、各種重合度のポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子が挙げられる。
樹脂溶液の調製は、例えば、室温〜70℃程度の温度範囲内で行うことが好ましい。この範囲内の温度で樹脂溶液を調製することにより、樹脂溶液の温度を上げるためのエネルギーを必要とせず、簡便に、かつ経済的に樹脂溶液を調製することができる。また、樹脂は一般に高温にさらされると酸化等、劣化することがあるが、このような低温の範囲での溶液の調製により、高温にさらされる場合の樹脂の劣化を回避することが可能となる。
樹脂溶液を調製した後、この樹脂溶液にポリビニルアセタール樹脂に非相溶な成分を添加する。これにより、濁った相分離状態とすることができる。ここでの濁った相分離状態では、樹脂溶液が流動可能な状態である。このような濁った状態は、瞬時に又は短時間で透明になるような状態ではなく、通常、数時間程度持続される状態であることが好ましく、10時間程度持続される状態であることがより好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂に非相溶な成分としては、例えば、水、塩化ビニル、塩素化塩化ビニル、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
また、添加量は、得られたポリビニルアセタール樹脂溶液の量、濃度、温度等によって適宜調整することができ、例えば、非相溶成分が水の場合、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度が挙げられ、0.2〜7重量部程度が好ましく、0.3〜5重量部程度がより好ましい。
上記の非相溶成分は一度に添加するよりも添加量の5%以下ずつ撹拌しながら分割投入することが好ましく、特に非相溶部分が液体の場合は撹拌しながら滴下させていくことが好ましい。
ここで、濁った状態とは、目視により溶液の曇化が確認できる状態である。
次いで、濁った状態のままの得られた溶液を非溶媒にさらして、相分離をさらに進める。具体的には、得られた樹脂溶液を、非溶媒が充填された凝固槽に吐出させる方法が挙げられる。そのために、通常、紡糸金型が利用される。紡糸金型には、吐出口が形成されており、その吐出口から樹脂溶液を、凝固槽に向けて又は凝固槽内で吐出する。紡糸金型は、凝固槽の内又は外に、あるいは外から内に移動可能に、その吐出口が配置されている。例えば、吐出口を備えた紡糸金型が、凝固槽内部に、つまり、非溶媒に浸漬されて配置されているものが挙げられる。この場合、吐出口は槽内における非溶媒中に浸漬した状態で樹脂溶液の吐出が開始される。また、まず空気中に樹脂溶液を吐出し、そのまま樹脂溶液を吐出した状態で、吐出口を槽内における非溶媒中に浸漬してもよい。この紡糸金型は、通常、樹脂溶液を紡糸するために同心円状の2重ノズル形状となった吐出口を備えている。
凝固槽に充填されている非溶媒としては、使用する樹脂が不溶であればよく、上述した樹脂溶液の種類により適宜選択することができるが、例えば、主成分が水であるものが好ましい。ここでの主成分とは、50重量%以上の割合で水を含有するものが挙げられる。水以外の成分としては使用する樹脂が不溶であればよいため、この樹脂を溶解させるものが含まれていてもよい。水以外の成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メタノール、エタノール等が挙げられる。
凝固槽中の非溶媒は、樹脂溶液に直接接触するものであることから、吐出口から吐出される樹脂溶液の温度(又は紡糸金型)と、非溶媒の温度との差は、ねらいとする透水性能に対して任意に設定できる。非溶媒の温度が低い場合は非溶媒の樹脂溶液への拡散が遅く相分離が緩慢に進行し、緻密だが透水量の低い膜ができ、非溶媒の温度が高い場合は非溶媒の樹脂溶液への拡散が速く相分離が急激に進行し、高透水性の膜ができる。また、非溶媒の温度を一定に保つことにより、樹脂溶液の相分離挙動を安定に維持することができ、透水性能・強度などの性能を安定的に発現させることが可能となる。そのために、凝固槽中の非溶媒も、5〜70℃程度に設定されていることが好ましい。
相分離を進めて成膜した後、得られた高分子水処理膜は引き取られ、切断されてまたはそのまま切断されずに、所望の高分子水処理膜とすることができる。
本発明によって製造された高分子水処理膜、比較的、大口径の膜、例えば、内径が0.5mm程度以上、0.7mm程度以上、0.8mm程度以上として、中空糸膜として成膜することができる。
また、その表面に多数の微細孔を有する多孔質膜とすることができる。例えば、その微細孔の平均孔径は、0.001〜10μm程度、好ましくは0.01〜1μm程度が挙げられる。膜表面の細孔の大きさ及び密度は、得ようとする特性等によって適宜調整することができ、例えば、水処理膜としての機能を果たすとともに、この微細孔の大きさ及び密度等によって、例えば、限外ろ過膜又は精密ろ過膜の分画性を調整することができる。なお、一般に、限外ろ過膜は、孔の大きさが2〜200nm程度の膜、精密ろ過膜は、50nm〜10μm程度の膜である。
空孔率は、例えば、10〜90%程度、好ましくは20〜80%程度が挙げられる。ここでの空孔率は、任意の横断面(中空糸膜の径方向の断面、以下同じ)における高分子水処理膜の全面積に対する空孔の全面積の割合を意味し、例えば、膜横断面の顕微鏡写真から各面積を算出して求める方法が挙げられる。
このような製造方法では、ポリビニルアセトアセタール樹脂は非溶媒である水と親和性の高い水酸基を含むため、上述したように、遅延型の相分離挙動をとる。一般に遅延型の相分離では、表面が緻密な状態となるため透水性能が低くなり、場合によっては水が透過しなくなるが、本発明では非相溶成分により、あらかじめ相分離がいくらか進んだ状態とすることができるために、相分離が遅延せず、水を透過させるための細孔構造を発達させることができ、十分な透水性能が得られる。
また、本発明の製造方法で得られた高分子水処理膜では、ポリビニルアセトアセタール樹脂が水酸基を適度に含むため、分子間の水素結合数が多くなり、柔軟であっても破断しにくい膜、さらに、表面に親水性を有することとなるため、汚染物質が付着しにくい膜として成膜することが可能となる。
以下、本発明の高分子水処理膜の製造方法を、実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例における配合量は、特に断りのない限り重量基準で示す。
実施例1
ポリビニルアセトアセタール樹脂(積水化学工業社製、エスレックKS−3、水酸基約25mol%、アセタール化度約74mol%)17wt%と、ポリビニルピロリドンK25(和光純薬社製)17wt%とを、ジメチルアセトアミド66重量%に溶解し、透明なポリビニルアセトアセタール樹脂溶液を調製した。
60℃でこのポリビニルアセトアセタール樹脂溶液100重量部に対し非相溶成分として水4重量部を添加した。これによって、一旦、樹脂溶液が白く析出したゲル状の固まりが発生したが、60℃で撹拌を続けることにより、全体的にゲルの固まりを含まない濁りのあるポリビニルアセトアセタール樹脂溶液が得られた。
この溶液を中空糸ノズルより連続的に、60℃の水が充填された凝固槽内に吐出させ、凝固槽にてさらに相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た。
得られた中空糸状の膜は、内径0.8mm、外径1.4mmであった。
また、得られた中空糸膜の純水透水性能を、25℃、膜間差圧100kPaの条件により測定した。その結果、580L/m2・hr・atmであった。
さらに、23℃、100mm/minの条件により、引張破断強度を測定した。その結果、2.4N/本、伸度が35%であった。
この膜を用いて50ppmのγグロブリン水溶液を、上記の純水透水性能の評価と同様の条件でろ過した。その結果、純水透水性能と比較した相対透水率は、約60%であった。
この膜を80℃の純水に10時間浸漬した後、上記の純水透水性能の評価と同様の条件で純水をろ過した。その結果、浸漬前の純水透水性能と比較した相対透水率は、約99%であった。
実施例2
ポリビニルアセトアセタール樹脂(積水化学工業社製、エスレックKS−3、水酸基約25mol%、アセタール化度約74mol%)13wt%と、ポリビニルピロリドンK90(和光純薬社製)10wt%、ポリエチレングリコール400(和光純薬社製)10wt%とを、ジメチルアセトアミド67重量%に溶解し、透明なポリビニルアセトアセタール樹脂溶液を調製した。
60℃でこのポリビニルアセトアセタール樹脂溶液100重量部に対し、非相溶成分として水5重量部を添加した。これによって、一旦、樹脂溶液が白く析出したゲル状の固まりが発生したが、60℃で撹拌を続けることにより、全体的にゲルの固まりを含まない濁りのあるポリビニルアセトアセタール樹脂溶液が得られた。
この溶液を中空糸ノズルより連続的に、10℃の水が充填された凝固槽に吐出させ、凝固槽にてさらに相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た。
実施例1と同様に評価した中空糸膜の純水透水性能は、470L/m2・hr・atmであった。
さらに、実施例1と同様に評価した引張破断強度は、2.0N/本、伸度が28%であった。
得られた中空糸膜を用いて50ppmのγグロブリン水溶液をろ過したところ、純水透水性能と比較した相対透水率は、約75%であった。
この膜を80℃の純水に10時間浸漬した後、上記の純水透水性能の評価と同様の条件でろ過したところ、浸漬前の純水透水性能と比較した相対透水率は、約97%であった。
実施例3
ポリビニルアセトアセタール樹脂(積水化学工業社製 エスレックKS−3、水酸基約25mol%、アセタール化度約74mol%)16wt%と、ポリエチレングリコール4000(和光純薬社製)16wt%とを、ジメチルアセトアミド68重量%に溶解させ、透明なポリビニルアセトアセタール樹脂溶液を調製した。
60℃でこのポリビニルアセトアセタール樹脂溶液100重量部に対し、非相溶成分として塩素化塩化ビニル樹脂3重量部を添加し、撹拌を続けることによって濁りのあるポリビニルアセトアセタール樹脂溶液を調製した。
この溶液を中空糸ノズルより連続的に、25℃の水が充填された凝固槽に吐出させ、凝固槽にてさらに相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の純水透水性能は、520L/m2・hr・atmであった。
さらに、23℃、100mm/minの条件により、引張破断強度は、2.3N/本、伸度が32%であった。
この膜を用いて50ppmのγグロブリン水溶液をろ過したところ、純水透水性能と比較した相対透水率は、約58%であった。
この膜を80℃の純水に10時間浸漬した後、上記の純水透水性能の評価と同様の条件でろ過したところ、浸漬前の純水透水性能と比較した相対透水率は、約97%であった。
比較例1
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製 エスレックBM−5、水酸基約34mol%、ブチラール化度約65mol%)15重量%と、ポリビニルピロリドンK25を15重量%とを、ジメチルアセトアミド70重量%に溶解し、樹脂溶液を調製した。
得られた樹脂溶液を、中空糸ノズルより連続的に、水が充填された凝固槽内に吐出させ、凝固槽にて相分離させることによって多孔質の中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の純水透水性能を、25℃、膜間差圧100kPaの条件により測定した。その結果、190L/m2・hr・atmであった。
さらに、23℃、100mm/minの条件により、引張破断強度を測定したところ、2.4N/本であった。
この膜を用いて50ppmのγグロブリン水溶液をろ過したところ、純水透水性能と比較した相対透水率は、約55%であった。
この膜を80℃の純水に10時間浸漬した後、浸漬前の純水透水性能と比較した相対透水率は、約5%であった。
本発明は、水処理装置への適用の有無及び水処理装置の態様等にかかわらず、河川水及び地下水の除濁、工業用水の清澄、排水及び汚水処理、海水淡水化の前処理等の水の精製等のために使用される高分子水処理膜の製造方法として広範に利用することができる。

Claims (7)

  1. ポリビニルアセタール樹脂からなる高分子水処理膜を非溶媒誘起相分離法により製造する方法であって、一旦均一なポリビニルアセタール樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液にポリビニルアセタール樹脂に非相溶な成分を添加することにより濁った相分離状態にし、次いで、該樹脂溶液を非溶媒にさらして相分離をさらに進めることを含むことを特徴とする高分子水処理膜の製造方法。
  2. ポリビニルアセタール樹脂溶液に含まれるポリビニルアセタール樹脂は、以下の構造単位を含む樹脂である請求項1に記載の方法。
    Figure 2014036938
    (式中、Rは水素原子、アルキル基を表し、m:n:sは、40〜98:20〜1:40〜1である。)
  3. Rがメチル基である請求項2に記載の方法。
  4. 前記ポリビニルアセタール樹脂溶液を、室温〜70℃の温度範囲で調製する請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
  5. 濁った相分離及びその後の相分離を、5〜70℃の温度範囲で実施する請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
  6. 前記ポリビニルアセタール樹脂溶液を濁った相分離状態にした後の樹脂溶液を非溶媒にさらすことが、水が充填された凝固槽に前記樹脂溶液を吐出することである請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
  7. 濁った相分離状態を、前記ポリビニルアセタール樹脂溶液の全重量に対して1〜10重量%程度の水の添加によって誘導する請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
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