JP2011025110A - 分離膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性及び耐ファウリング性を併せ有する分離膜を提供する。
【解決手段】 ポリスルホン系樹脂、架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層およびポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材からなる分離膜とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリスルホン系樹脂、架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層およびポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材からなる分離膜とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリスルホン系樹脂、架橋ポリビニルピロリドンおよびポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布を用いることによって、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性及び耐ファウリング性を併せ有する分離膜およびその製造方法に関する。
従来から、生体高分子含有溶液からの特定の分子のろ過や分離や濃縮、細胞抽出物からのプロテインまたは生体高分子の精製、汚染物質からの合成化学薬品の精製、混合された化学薬品の分離、分子の分離などに、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜等の分離膜が用いられている。生体高分子含有溶液からの特定の分子のろ過や分離や濃縮を目的として、特に、乳業は食品産業の中で最も分離技術の導入が進んだ分野であり、牛乳や各種乳成分の分離・濃縮等に分離膜が用いられている。例えば、牛乳は無機成分や蛋白質に代表される有機成分を豊富に含むため、特に有機成分による分離膜のファウリングが生じ易い。このため、60℃以上、場合によっては90℃以上の高温下で、アルカリ、酸、塩素(次亜塩素酸ナトリウム)水溶液による分離膜の薬品洗浄が頻繁に行われる。従って、分離膜には耐熱性、これらの薬品に対する耐久性(耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性)が必要とされる。さらに、分離膜自体が、例えば牛乳中の有機成分に対する耐ファウリング性を有していれば、薬品洗浄に使用する薬品量を低減することができる。このような観点から、特に生体高分子含有溶液からの特定の分子のろ過や分離や濃縮用途において、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性及び耐ファウリング性を併せ有する分離膜が望まれている。
分離膜としては、例えば、織布や不織布等からなるシート状の基材上に分離層を直接形成したものが提案されている。特許文献1にはポリエステル不織布を用いたポリスルホン限外ろ過膜が開示されている。しかしながら、ポリエステルはアルカリ水溶液により容易に加水分解されて損傷を受けるため、アルカリによる分離膜の薬品洗浄を長期間にわたって実施することが困難である。
また、特許文献2にはポリプロピレン不織布を用いたポリスルホン限外ろ過膜が開示されている。かかるポリプロピレン不織布は常温のアルカリ水溶液には耐性を有するが、ポリプロピレン繊維の熱融着性が低いため、高温下では不織布が損傷を受ける。また、ポリプロピレンは次亜塩素酸ナトリウムに代表される塩素系酸化剤に対する耐性(耐塩素性)が低いため、このような塩素を使用した薬品洗浄を繰り返して行う事が困難である。
特許文献3には、ポリプロピレンを芯として用い、その外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維を用いた不織布に表面熱処理を施して基材とすることにより耐アルカリ性と耐塩素性、耐熱性を付与した不織布からなる分離膜が開示されている。しかしながら、不織布の製法過程において、ポリプロピレンを芯として用い、その外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維を融着させる場合、鞘であるポリエチレンが熱で溶融されバインダー効果が起こり、芯であるポリプロピレン繊維を繋ぎ合わせ不織布となるが、その時、被覆していたポリエチレンの一部が溶け、芯のポリプロピレンが表面に現れてしまい、塩素存在下ではポリプロピレン繊維が劣化し不織布が損傷を受けてしまう。特に、高温下では塩素によるポリプロピレン繊維の劣化の進行が著しいため、高温下では塩素を用いることが困難である。
特許文献4には、界面重縮合によって得られた架橋ポリアミドからなる超薄膜層を多孔質支持膜上に被覆してなる複合半透膜において、該多孔質支持膜がポリフェニレンサルファイドを主成分とする事を特徴とする複合半透膜が開示されている。かかる多孔質支持膜は、ポリフェニレンサルファイド繊維の不織布で強化されているものの、分離層であるポリアミド膜は塩素によって劣化するという問題点を有していた。
このように、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性および耐塩素性を併せ有する分離膜は得られておらず、さらに耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性および耐塩素性を損なわずに耐ファウリング性をも付与した分離膜は得られていなかった。
本発明は、従来の技術の上述した問題点に鑑み、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性及び耐ファウリング性を併せ有する分離膜およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するための本発明は、次の(1)〜(4)に述べる構成からなる。
(1)ポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材から構成される分離膜。
(2)前記不織布基材の厚みが0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/secである(1)に記載の分離膜。
(3)ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布し、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させた後、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する(1)に記載の分離膜の製造方法。
(4)150〜200℃以上の温度で、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する(3)に記載の分離膜の製造方法。
(1)ポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材から構成される分離膜。
(2)前記不織布基材の厚みが0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/secである(1)に記載の分離膜。
(3)ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布し、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させた後、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する(1)に記載の分離膜の製造方法。
(4)150〜200℃以上の温度で、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する(3)に記載の分離膜の製造方法。
本発明では、ポリスルホン系樹脂、架橋ポリビニルピロリドンおよびポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布を分離膜に用いる。ポリスルホン系樹脂、架橋ポリビニルピロリドンおよびポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布は、いずれも耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性を併せ有しており、架橋ポリビニルピロリドンによって耐ファウリング性が付与されるため、耐熱性、耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性及び耐ファウリング性を併せ有する分離膜が得られる。このような分離膜を用いることにより、薬品洗浄回数が少なくなってコストが低減され、長期間安定して分離操作を継続できるようになる。
本発明の分離膜は、ポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材とが一体となったものである。
不織布基材には、公知のポリフェニレンサルファイド繊維が用いられ、特に短繊維が好ましく用いられる。このような繊維から公知の製法により不織布を製造することができる。この不織布は、膜厚が0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/secであることが好ましい。ここで、膜厚、坪量、通気度とは、後記実施例の欄に記載の方法により測定したものをいう。このような不織布として、市販品では、例えばPS0060 (廣瀬製紙(株)製)が挙げられる。
膜厚が0.08mmより薄く、坪量が20g/m2未満、通気度が100cc/cm2/secより大きいと、得られる分離膜の強度が低くなる場合がある。また、膜厚が0.5mmより厚いとエレメント化するときの作業性が悪く、且つ、エレメントの有効膜面積の低下をもたらす場合がある。坪量が100g/m2より大きく、通気度が20cc/cm2/sec未満であれば分離膜として十分な透水性を確保する妨げとなる場合がある。又、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmより大きいと安定した製膜が行えない場合がある。
不織布は、膜厚のバラツキの低減、ポリフェニレンサルファイド繊維の充分な融着をはかるために熱処理することが好ましい。熱処理方法は特に限定されないが、例えばカレンダーロールでの熱処理加工方法等を用いることができる。熱処理温度は100〜300℃、好ましくは150〜250℃である。この熱処理にあたってはカレンダーロールによる熱プレスが好ましい。
また、本発明の不織布を構成するポリフェニレンサルファイド繊維は180℃における乾熱収縮率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。乾熱収縮率を15%以下とすることで、湿式不織布の製造工程において、カレンダーロールでの熱処理加工時に抄紙表面にシワなどの欠点を防ぐ事ができ、さらに、寸法安定性に優れた不織布とし、高温環境下での使用用途においても変形などを防ぐことができる。
ポリフェニレンサルファイドは、いわゆるスーパーエンプラに属しており、耐熱性が高く、フッ素樹脂に匹敵する耐食性を有するため200℃以下でポリフェニレンサルファイドを溶解する溶媒はない。このため、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材は、分離膜に必要な耐熱性、薬品に対する耐久性(耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性)を併せ有する。
本発明のポリスルホン系樹脂とは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホンのことであり、これらを単独もしくは2種以上からなる混合物として用いることができる。これらポリスルホン系樹脂は、いわゆるスーパーエンプラに属しており、耐熱性が高く、耐薬品性も良好で酸・アルカリ・塩素にも耐性を有する。
ポリスルホン系樹脂は、機械的強度が高く分離膜の主骨格となり得る優れた素材であるが、高い疎水性を示す。このため、疎水性相互作用によってポリスルホン系樹脂には有機成分が吸着しやすく、さらに一旦吸着すると容易には脱離しないため、ファウリングと呼ばれる問題を惹起しやすい。一方、架橋ポリビニルピロリドンは、耐熱性が高く、耐薬品性も良好で酸・アルカリ・塩素にも耐性を有する。さらに、架橋ポリビニルピロリドンは、高い親水性を有することが特徴である。このため、本発明に係る分離層においては、ポリスルホン系樹脂と、耐熱性・耐酸性・耐アルカリ性・耐塩素性とともに親水性に優れた架橋ポリビニルピロリドンを併用することによって、分離膜の耐熱性・耐酸性・耐アルカリ性・耐塩素性を損なうことなく、耐ファウリング性を付与することが可能である。
ここで、本発明の架橋ポリビニルピロリドンとは、ポリビニルピロリドンを不溶化処理したものである。この不溶化処理は、例えばγ線、電子線、熱、化学的方法など公知の方法で実施することができる。熱の場合、ポリスルホン系樹脂やポリフェニレンサルファイドの軟化点や融点、ポリビニルピロリドンの熱分解温度などを考慮する必要があるが、150〜200℃の温度が好ましく、160〜180℃の温度がさらに好ましい。処理時間は、ポリビニルピロリドンの含有量、処理温度、得られる分離膜の耐熱性、薬品に対する耐久性(耐アルカリ性、耐酸性、耐塩素性)などを勘案して決定すれば良いが、0.5時間以上10時間以下、好ましくは1時間以上6時間以下である。γ線の場合、水の存在下で照射することが好ましく、照射量は10〜50kGy、さらには20〜40kGyが好ましい。
本発明のポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材とが一体となる分離膜を得るための方法としては、例えば、ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を調製し、この溶液をポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布し、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させた後、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する方法が挙げられる。この方法では、ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンをそれらの溶媒に十分溶解して均一な溶液とすることができる。ポリスルホン系樹脂とポリビニルピロリドンとは親和性が高いため、得られる分離層にポリビニルピロリドンが均一に分散し、さらには、不溶化処理後に得られる分離層に架橋ポリビニルピロリドンが均一に分散することになる。従って、得られる分離膜に、均一に耐ファウリング性を付与できる利点があるため、特に好ましい方法である。
この方法では、まずポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を調製する。ポリスルホン系樹脂およびポリビニルピロリドンを溶解する溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが用いられる。これらの溶媒は単独、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
なお、市販の架橋ポリビニルピロリドンを用いる場合には、ポリスルホン系樹脂およびポリスルホン系樹脂の溶媒を含有する溶液に、架橋ポリビニルピロリドンを充分に分散させ、これをポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布し、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させる方法も挙げられる。この場合、ホモジナイザーなどを用いて架橋ポリビニルピロリドンを充分に分散させ、直ちにポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布することが好ましい。
なお、得られる分離膜の表面の平均孔径を制御するためには、例えば以下の方法を用いてもよい。ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液に、孔径を制御するための添加剤を入れ、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させて非溶媒誘起相分離を生じさせる際に、または、ポリスルホン系樹脂を凝固させた後に、該添加剤を溶出させることにより、表面の平均孔径を制御することができる。該添加剤としては、有機化合物および無機化合物が挙げられる。有機化合物としては、上述した溶媒および非溶媒誘起相分離を起こすポリスルホン系樹脂の非溶媒の両方に溶解するものが好ましく用いられる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストランなどの水溶性ポリマー、界面活性剤、グリセリン、糖類などを挙げることができる。無機化合物としては、上述した溶媒および非溶媒誘起相分離を起こすポリスルホン系樹脂の非溶媒の両方に溶解するものが好ましく、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、添加剤を用いずに、凝固浴における非溶媒の種類、濃度および温度によって相分離速度を制御し、表面の平均孔径を制御することも可能である。一般的には、相分離速度が速いと表面の平均孔径が小さく、遅いと大きくなる。また、ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液にポリスルホン系樹脂の非溶媒を添加することも、相分離速度の制御に有効である。
ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液の組成としては、ポリスルホン系樹脂10〜30重量%、ポリビリルピロリドン1〜10重量%、添加剤0〜10重量%、ポリスルホン系樹脂の非溶媒0〜5重量%とし、ポリスルホン系樹脂およびポリビニルピロリドンを溶解する溶媒45〜89重量%とするのが好ましい。ここで、ポリスルホン系樹脂が少なすぎると分離層の強度が低くなり、多すぎると製膜原液の粘度が高くなり製膜が困難になるだけでなく膜が緻密化し目的とする構造が得られ難いので、上述のとおり10〜30重量%の範囲が好ましく、15〜25重量%の範囲がより好ましい。なお、ポリスルホン系樹脂の非溶媒は、長期的には溶液のゲル化を招く恐れがあるため、0〜1重量%の範囲がより好ましい。
次に、得られた前記溶液をポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布する。塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、前記溶液に不織布基材を浸漬した後に、前記溶液の一部を掻き取る方法、ギアポンプなどを用いて前記溶液を連続的に不織布基材上に供給し、必要に応じて前記溶液の一部を掻き取る方法などが挙げられる。膜の形状は平膜状が好ましいが、チューブ状、中空糸状など他の形態であってもよい。平膜状の場合、不織布基材への前記溶液の塗布厚は25〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜250μmの範囲である。
しかる後に、前記不織布基材に塗布された前記溶液を、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させる。凝固浴としては、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含有していれば特に限定されないが、非溶媒単独、または非溶媒とポリスルホン系樹脂およびポリビニルピロリドンを溶解する溶媒を含む混合溶液を用いることができる。ここで、ポリスルホン系樹脂およびポリビニルピロリドンを溶解する溶媒としては上述したものを用いることができる。また、ポリスルホン系樹脂の非溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類及びこれらの少なくとも2種からなる混合溶液等を用いることができる。
凝固浴中の非溶媒濃度は、低すぎるとポリスルホン系樹脂の凝固が遅くなり、固化が不十分となる可能性がある。このため、少なくとも80重量%とするのが好ましく、より好ましくは、95重量%から100重量%の範囲である。
なお、凝固液の温度は、0〜60℃の範囲で選定するのが好ましく、より好ましくは5〜30℃である。凝固液の温度が60℃を超えると、得られる分離膜が疎な構造となりやすい。
最後に、前記不織布基材に形成されたポリスルホン系樹脂とポリビニルピロリドンからなる分離層中のポリビニルピロリドンを不溶化処理する。不溶化処理は、上述したようにγ線、電子線、熱、化学的方法など公知の方法で実施することができる。
そして、ポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層がポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材の上に形成された分離膜において、分離層を構成する樹脂、例えばポリスルホン系樹脂の一部が、基材中に入り込み、一体となっていることが好ましい。一体となる、すなわち基材中に分離層を構成する樹脂が入り込むことで、いわゆるアンカー効果によって分離層が基材中に堅固に定着され、分離層が基材から剥がれるのを防止できるようになる。ここで、分離層は、基材に対して、片面に偏って存在してもよく、また、両面に存在してもよい。分離層は、基材に対して、対称構造であっても、非対称構造であってもよい。また、分離層が基材に対して両面に存在する場合には、両面の分離層が基材に介して連続的であってもよく、不連続であってもよい。このような分離層を構成する樹脂の一部が基材中に入り込み、一体となる分離膜を得るためには、例えば、ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を調製し、この溶液をポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布する方法においては、前記溶液の粘度と不織布基材の緻密さとのバランスを考慮しながら実験的に決定すればよい。前記溶液の粘度が高いと、不織布基材に浸透し難くなるためにアンカー効果が得られ難く、粘度が低いと不織布基材に浸透し易くなるために取扱性が悪化する可能性がある。また、不織布基材の膜厚が小さく坪量が大きい場合、通気度が小さい場合は、不織布基材が緻密であり、前記溶液が不織布基材に浸透し難くなるためにアンカー効果が得られ難い。一方、不織布基材の膜厚が大きく坪量が小さい場合、通気度が大きい場合は、不織布基材が疎であり、前記溶液が不織布基材に浸透し易くなるために取扱性が悪化する可能性がある。このため、前記溶液の粘度を0.1〜200ポイズに調整し、不織布基材として膜厚が0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/secのものを用いることが好ましい。
アンカー効果によって分離層が基材中に堅固に定着されているかどうかを判断する一つの尺度として、剥離強度が挙げられる。剥離強度の値は2kgf/cm2以上が好ましく、より好ましくは3kgf/cm2以上である。このような剥離強度とするためには、上述した不織布基材の各物性値の範囲内とすることが好ましい。剥離強度が2kgf/cm2より小さい場合は不織布と分離層の接着性が低いことを意味し、逆圧(不織布側からの圧力)がかかった場合に分離層と不織布が剥離する恐れがあり、その場合膜の破損を生じる可能性がある。
本発明で述べる分離膜の耐熱性・耐アルカリ性・耐酸性・耐塩素性は、種々の条件下で処理した分離膜をJIS K 7113に基づく引っ張り試験を実施し、分離膜の破断強度を測定することにより定量化することができる。本発明の分離膜の耐熱性は、95℃の熱水に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し80%以上、好ましくは90%以上の保持率を有していることが良い。本発明の分離膜の耐アルカリ性は、60℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し80%以上、好ましくは90%以上の保持率を有していることが良い。本発明の分離膜の耐酸性は、60℃の10重量%塩酸水溶液に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し80%以上、好ましくは90%以上の保持率を有していることが良い。本発明の分離膜の耐塩素性は、60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し70%以上、好ましくは80%以上の保持率を有していることが良い。
また、本発明の分離膜は、耐熱性が高く、オートクレーブによる無菌化処理が可能であるため、特に生物由来成分含有溶液に処理に好適に使用できる。生物由来成分とは、例えばタンパク質、酵素、多糖類、単糖類、脂肪類、核酸をあげることができる。このような生物由来成分の濃縮、精製、分離、培養を行う際に、該成分以外の物質による汚染、該成分によるファウリングを防止するために、高温下での頻繁な薬品洗浄・殺菌が必要となる。本発明の分離膜は、耐熱性・耐薬品性を併せ有するために、ラインから取り出して洗浄・殺菌操作を行わずに、インラインでの洗浄・殺菌操作が可能であり、洗浄・殺菌に要するコストを低減することができる。
実施例、比較例における分離膜は、次のように測定した。
(1)剥離強度
分離膜(12.56cm2)を評価用セル(ザルトリウス製濾過器SM165088)に接着剤で貼りさらにその上から加工したセルの蓋をしめ分離膜が剥がれないように固定し、分離膜の裏側(不織布側)から空気で圧力をかけ、目視で分離層が剥がれた時の圧力を読み取って剥離強度を求めた。
分離膜(12.56cm2)を評価用セル(ザルトリウス製濾過器SM165088)に接着剤で貼りさらにその上から加工したセルの蓋をしめ分離膜が剥がれないように固定し、分離膜の裏側(不織布側)から空気で圧力をかけ、目視で分離層が剥がれた時の圧力を読み取って剥離強度を求めた。
(2)破断強度
JIS K 7113に基づき分離膜の試験片をカットし、薬液処理してない状態での引張強力を求め、また、種々の薬液処理した後の分離膜の引張強力から、破断強度を求めた。
初期値に対する破断強度(%)=薬品処理後の破断強力/初期値の破断強力×100
(3)接触角
分離膜の分離層表面の水に対する接触角を測定することにより、分離層表面の親水性・疎水性を定量化が可能であり、分離層表面の水に対する接触角が小さいほど親水性であると言える。ここで分離層表面の水に対する接触角は、固体(分離層)、液体(水)、および気体(空気)を接触させたとき、三相の接触点で液体に引いた接線と固体面とのなす角のうち液体を含む側の角度を言う。接触角は、共和界面科学株式会社製の接触角計(CA−D型)を用いて、各々20回測定し、平均値を採用した。
JIS K 7113に基づき分離膜の試験片をカットし、薬液処理してない状態での引張強力を求め、また、種々の薬液処理した後の分離膜の引張強力から、破断強度を求めた。
初期値に対する破断強度(%)=薬品処理後の破断強力/初期値の破断強力×100
(3)接触角
分離膜の分離層表面の水に対する接触角を測定することにより、分離層表面の親水性・疎水性を定量化が可能であり、分離層表面の水に対する接触角が小さいほど親水性であると言える。ここで分離層表面の水に対する接触角は、固体(分離層)、液体(水)、および気体(空気)を接触させたとき、三相の接触点で液体に引いた接線と固体面とのなす角のうち液体を含む側の角度を言う。接触角は、共和界面科学株式会社製の接触角計(CA−D型)を用いて、各々20回測定し、平均値を採用した。
(4)膜厚
JIS L 1906に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を測定し、その平均値を採用した。
JIS L 1906に基づいて、直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向1mあたり等間隔に10点を測定し、その平均値を採用した。
(5)坪量
30cm×30cmの不織布を3個採取して、各試料の重量(g)をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積(m2)当たりに換算した。
30cm×30cmの不織布を3個採取して、各試料の重量(g)をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積(m2)当たりに換算した。
(6)通気度
JIS L 1096に基づいて、10×10cmの試験片を採取し、フラジール型試験機を用いて測定した。
JIS L 1096に基づいて、10×10cmの試験片を採取し、フラジール型試験機を用いて測定した。
[実施例1]
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
最後に、前記不織布基材に形成されたポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる分離層に対し、ポリビニルピロリドンの不溶化処理として、170℃のオーブンの中に4時間入れ、平膜状の分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m2、通気度33.7cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても、熱収縮率は0.26%であり、ほとんど熱収縮がみられなかった。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し99%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し94%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し97%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し81%であった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、62.9度であった。
以上の結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
最後に、前記不織布基材に形成されたポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンからなる分離層に対し、ポリビニルピロリドンの不溶化処理として、170℃のオーブンの中に4時間入れ、平膜状の分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m2、通気度33.7cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても、熱収縮率は0.26%であり、ほとんど熱収縮がみられなかった。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し99%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し96%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し98%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し86%であった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、57.9度であった。
以上の結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例2と同様にして製膜原液を調製し、同様にしてポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
実施例2と同様にして製膜原液を調製し、同様にしてポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
最後に、前記不織布基材に形成されたポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンからなる分離層を、ポリプロピレン製ケース中に水とともに入れ、水の存在下で25kGyの線量でγ線を照射し、平膜状の分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m2、通気度33.7cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても、熱収縮率は0.26%であり、ほとんど熱収縮がみられなかった。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し99%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し98%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し98%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し94%であった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、52.8度であった。
以上の結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリプロピレンを芯としその外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維製不織布(HOP−60CF 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリプロピレンを芯としその外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維製不織布(HOP−60CF 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬した。
最後に、前記不織布基材に形成されたポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる分離層に対し、ポリビニルピロリドンの不溶化処理として、170℃のオーブンの中に4時間入れたところ、ポリエチレンやポリプロピレンの融点や熱変形温度を上回ったために不織布基材が大きく変形し、平滑な分離膜が得られなかった。
なお、この不織布はポリプロピレンを芯材としポリエチレンを鞘材とする複合繊維からなる不織布HOP−60CF(廣瀬製紙(株)製)であり、膜厚160μm、坪量46g/m2、通気度60cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.015mmである。また、この不織布は130℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブで熱処理では、不織布が大きく変形し熱収縮率4%を示した。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し78%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し52%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し63%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し3%であり、実用上問題のあるレベルであった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、58.6度であった。
以上の結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬し、ポリビニルピロリドンの不溶化処理を施さずに、平膜状の分離膜を得た。
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、ポリビニルピロリドン(BASF K90)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
ポリビニルピロリドン : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :70.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水中に4分間浸漬し、ポリビニルピロリドンの不溶化処理を施さずに、平膜状の分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m2、通気度33.7cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても、熱収縮率は0.26%であり、ほとんど熱収縮がみられなかった。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し93%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し91%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し93%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し78%であった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、82.1度であった。ポリビニルピロリドンの不溶化処理を施さなかったため、分離層表面の親水化効果が低かった。
以上の結果を表1に示す。
[比較例3]
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :75.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬し、平膜状の分離膜を得た。
[比較例3]
ポリスルホン系樹脂としてポリスルホン(Solvay(登録商標)Udel-P3500)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリスルホン :25.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン :75.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬し、平膜状の分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m2、通気度33.7cc/cm2/sec、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても、熱収縮率は0.26%であり、ほとんど熱収縮がみられなかった。
得られた分離膜を、95℃の熱水中に一週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し99%であった。また、温度60℃で10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し98%であった。そして、温度60℃で10重量%塩酸水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し99%であった。さらに、温度60℃の1重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対し95%であった。
また、95℃の熱水中に一週間浸漬した後、1晩減圧乾燥した分離膜について、分離層表面の水に対する接触角を測定した結果、98.1度であった。ポリビニルピロリドンを含有させなかったため、分離層表面は疎水性を示した。
以上の結果を表1に示す。
本発明の分離膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、電池用セパレーター、荷電膜、燃料電池、血液浄化用多孔質膜等に利用することができる。
Claims (4)
- ポリスルホン系樹脂と架橋ポリビニルピロリドンを含有する分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材から構成される分離膜。
- 前記不織布基材の厚みが0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m2、通気度が20〜100cc/cm2/secである請求項1に記載の分離膜。
- ポリスルホン系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびそれらの溶媒を含有する溶液を、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材に塗布し、ポリスルホン系樹脂の非溶媒を含む凝固浴に接触させてポリスルホン系樹脂を凝固させた後、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する請求項1に記載の分離膜の製造方法。
- 150〜200℃の温度で、ポリビニルピロリドンを不溶化処理する請求項3に記載の分離膜の製造方法。
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