JP2014036608A - ロールイン用可塑性油脂組成物及び層状小麦粉膨化食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂中に油脂A、油脂Bを含有するロールイン用可塑性油脂組成物であって、前記油脂Aは、該油脂Aを構成する全脂肪酸中に、炭素数8〜14の脂肪酸を15〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を55〜85質量%含有し、ヨウ素価が0〜50で、且つエステル交換された油脂であり、前記油脂Bは、該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、飽和脂肪酸を20〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を86質量%以上含有し、且つエステル交換された油脂であることを特徴とするロールイン用可塑性油脂組成物。
【選択図】なし
Description
ロールイン用可塑性油脂組成物は、これら層状小麦粉膨化食品の製造時に、生地の間に挟み込まれ、折り畳み、圧延を繰り返すことにより、生地中に薄い油脂の層を多数作る。これらの油脂の層は、折り畳み、圧延時に小麦粉生地層の相互の付着を防止し、また、焼成中にはこれらの油脂の層が、生地から発生する水蒸気や炭酸ガスの発散をさえぎることにより、生地は層状に膨張する。更に、層状に折り込まれたロールイン用可塑性油脂組成物は、最終的に溶けて生地に吸収され、ロールイン用可塑性油脂組成物を吸収した生地は、生地中のでんぷんが糊化し、またタンパク質が熱変性することによって凝固する。その結果、層状小麦粉膨化食品には、独特の層構造が形成されると共にサクサクとした食感が付与される。
このようなロールイン用可塑性油脂組成物として、極度硬化パーム核油及び極度硬化パーム油の混合物をエステル交換してなる油脂、パームステアリン、及び液体油からなるロールイン用油脂組成物(特許文献1参照)や、特定の極度硬化植物性油脂と液状油とからなるロールイン用油脂組成物(特許文献2参照)が提案されている。
この点、特許文献1記載のロールイン用油脂組成物においては、極度硬化油脂及びパームステアリンを用いることにより、サクサクとした食感を長時間維持することは可能となっているが、製造された層状小麦粉膨化食品は口溶けの悪いものとなってしまっていた。
一方、特許文献2記載のロールイン用油脂組成物は、液状油の配合量を多くすることによって、製造された層状小麦粉膨化食品の口溶けを良好にしているが、時間の経過と共にサクサクとした食感が失われてしまうという問題は解決されていなかった。
前記油脂Aは、該油脂Aを構成する全脂肪酸中に、炭素数8〜14の脂肪酸を15〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を55〜85質量%含有し、ヨウ素価が0〜50で、且つエステル交換された油脂であり、
前記油脂Bは、該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、飽和脂肪酸を20〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を86質量%以上含有し、且つエステル交換された油脂であることを特徴とするロールイン用可塑性油脂組成物。
(2)前記油脂Aと前記油脂Bを、質量比で3:1〜1:1で含有することを特徴とする(1)に記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
(3)前記油脂Aが、ラウリン系油脂とパーム系油脂を含む混合物をエステル交換して得られた油脂を、1種以上含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
(4)前記ロールイン用可塑性油脂組成物の油脂中に、液体油を1〜50質量%含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のロールイン用可塑性油脂組成物を用いた層状小麦粉膨化食品
本発明のロールイン用可塑性油脂組成物は、油脂中に油脂A及び油脂Bを含有するものである。
なお、油脂中の各構成脂肪酸含量の分析はガスクロマトグラフィー法、ヨウ素価は「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.−1996」の方法に準じて測定することができる。
なお、上記油脂Aのより好ましい態様として、油脂A−1及び油脂A−2を含み、且つヨウ素価が15〜40である油脂Aが挙げられる。
また、ヨウ素価は、水素添加により適宜調整することができる。なお、水素添加の方法は、特に制限はなく、例えば、ニッケル触媒の下、160〜200℃の条件にて行うことができる。さらに、エステル交換と水素添加の順序は逆であってもよく、例えば、ラウリン系油脂及び/又はパーム系油脂を水素添加した後に、エステル交換を行ってもよい。
なお、油脂中の各構成脂肪酸含量の分析はガスクロマトグラフィー法に準じて行うことができる。
また、本発明のロールイン用可塑性油脂組成物は、油脂中に上記液体油を、1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは5〜15質量%含有することができる。
本発明のロールイン用可塑性油脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、上記油脂A及び油脂Bを含有する油脂を溶解し、冷却し、結晶化することによって得ることができる。
具体的には、先ず、上記油脂と、必要に応じて乳化剤等の油溶性原料とを溶解する。また、必要により別途調製した水相と混合乳化してもよい。そして次に殺菌処理するのが好ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せが挙げられる。
本発明のロールイン用可塑性油脂組成物をシート状とした場合の好ましい大きさは、その幅が50〜1000mm、その長さが50〜1000mm、その厚さが1〜50mmである。
パーム核油(日清オイリオグループ(株)製造品、ラウリン酸含量46質量%)40質量部と、パーム油(日清オイリオグループ(株)製造品)60質量部を混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂A−1を得た。得られた油脂A−1のヨウ素価は39であった。
パームステアリン(日清オイリオグループ(株)製造品)50質量部と、パーム核オレイン(日清オイリオグループ(株)製造品、ラウリン酸含量41質量%)50質量部を混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、脱色した後、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて水素添加を行い、ヨウ素価が2以下になったのを確認した後、温度を100℃以下に下げ、ニッケル触媒をろ過により除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂A−2−1を得た。得られた油脂A−2−1のヨウ素価は0.3であった。
パーム核ステアリン(日清オイリオグループ(株)製造品、ラウリン酸含量55質量%)40質量部と、パーム油ハードステアリン(日清オイリオグループ(株)製造品)60質量部を混合し、前記混合油に対し、0.3質量%のリパーゼ(商品名:リパーゼQLM、名糖産業(株)製)を添加した後、50〜70℃にて約12時間撹拌し、エステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼをろ過によって除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂A−2−2を得た。得られた油脂A−2−2のヨウ素価は10.6であった。
パーム油(日清オイリオグループ(株)製造品)に、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて水素添加を行い、その後、ニッケル触媒をろ過により除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂a−1を得た。得られたパーム硬化油のヨウ素価は38であった。
パームオレイン(日清オイリオグループ(株)製造品)65質量部と、菜種油(商品名:日清菜種サラダ油、日清オイリオグループ(株)製)35質量部を混合し、前記混合油に対し、1.2質量%の1,3位特異性リパーゼ(商品名:リポザイムTLIM、ノボザイムズ社製)を添加した後、40℃で20時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼをろ過によって除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂B−1を得た。なお、反応前の混合油の飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量は、85質量%であった。
ハイオレックヒマワリ油(商品名:オレインリッチ、昭和産業(株)製)70質量部と、菜種油の極度硬化油(商品名:菜種極度硬化油、横関油脂(株)製)30質量部を混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂B−2を得た。なお、反応前の混合油の飽和脂肪酸中のステアリン酸含量は、82質量%であった。
パーム油を分別して得られた、パームスーパーオレイン(日清オイリオグループ(株)製造品)90質量部とパームステアリン(日清オイリオグループ(株)製造品)10質量部とを混合し、油脂b−1を得た。なお、油脂b−1の飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量は、86質量%であった。
油脂b−2は、パーム油を分別して得られたパームスーパーオレイン(日清オイリオグループ(株)製造品)を使用した。なお、油脂b−2の飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量は、85質量%であった。
パーム油(日清オイリオグループ(株)製造品)を減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂b−3を得た。なお、油脂b−3の飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量は、87質量%であった。
液体油は、菜種油(商品名:日清菜種サラダ油、日清オイリオグループ(株)製)を使用した。
本願実施例における、ロールイン用可塑性油脂組成物の油脂中の各構成脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフィー法、また、ヨウ素価は「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.−1996」に準じて測定した。
以下の表1及び表2に示す配合例の油脂について、以下の表3に示す配合で、ロールイン用可塑性油脂組成物を調製した。すなわち、各配合例の油脂と、レシチン、乳化剤とを混合することで油相を調製した。次に、水相を調製し、調製した油相と水相とを混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、コンビネーターを用いて急冷可塑化した後、レスティングチューブを通してシート状に成型することで、ロールイン用可塑性油脂組成物を得た。得られたシート状のロールイン用可塑性油脂組成物の大きさは、幅220mm、長さ300mm、厚さ10mmであった。
また、配合例1〜3の油脂を使用したロールイン用可塑性油脂組成物を実施例1〜3、配合例4〜8の油脂を使用したロールイン用可塑性油脂組成物を比較例1〜5とした。
上記の表4の配合で生地を調製し、得られた生地3kgにシート状に成型した各種のロールイン用可塑性油脂組成物750gをのせ、常法に従い、ロールイン用可塑性油脂組成物を生地に折り込み、成型の後、焼成してクロワッサンを製造した。
◎ :ひび割れがなく薄く伸び、良好
○ :ひび割れがなく良好
△ :若干のひび割れが起こり、やや不良
× :ひび割れが起こり、不良
◎ :非常に生地浮きが良く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間があり良好
○ :生地浮きが良く、生地と生地の間に隙間がある
△ :生地浮きが悪く、生地と生地の間に十分な隙間の無い部分が多い
× :生地浮きが悪く、ほとんどの生地と生地の間に十分な隙間が無い
◎ :非常に良好
○ :良好
△ :若干ワキシー感あり
× :ワキシー感あり
◎ :サクサク感をしっかり感じる
○ :サクサク感を感じる
△ :あまりサクサク感を感じない
× :ほとんどサクサク感を感じない
油脂A−1、油脂A−2−1、及び油脂A−2−2に代えて、炭素数8〜14の脂肪酸含量が15質量%未満で、エステル交換を行っていない油脂a−1を用いた比較例2のロールイン用可塑性油脂組成物は、作業性がやや不良で、該ロールイン用可塑性油脂組成物を用いて製造したクロワッサンは、サクサク感が失われやすいものであった。
油脂B−1及び油脂B−2に代えて、エステル交換を行っていない油脂b−2を用いた比較例3のロールイン用可塑性油脂組成物を用いて製造したクロワッサンは、サクサク感が失われやすいものであった。
油脂B−1及び油脂B−2に代えて、該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、飽和脂肪酸が45質量%を超えて含有する油脂b−3用いた比較例4のロールイン用可塑性油脂組成物を用いて製造したクロワッサンは、サクサク感が失われやすいものであった。
油脂B−1及び油脂B−2に代えて、エステル交換を行っていない油脂b−1を用いた比較例5のロールイン用可塑性油脂組成物は、作業性(ロールイン時の可塑性油脂組成物の伸展性)には優れるものの、該ロールイン用可塑性油脂組成物を用いて製造したクロワッサンは口溶けが悪く、サクサク感が失われやすいものであった。
Claims (5)
- 油脂中に油脂A、油脂Bを含有するロールイン用可塑性油脂組成物であって、
前記油脂Aは、該油脂Aを構成する全脂肪酸中に、炭素数8〜14の脂肪酸を15〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を55〜85質量%含有し、ヨウ素価が0〜50で、且つエステル交換された油脂であり、
前記油脂Bは、該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、飽和脂肪酸を20〜45質量%及び炭素数16以上の脂肪酸を86質量%以上含有し、且つエステル交換された油脂であることを特徴とするロールイン用可塑性油脂組成物。 - 前記油脂Aと前記油脂Bを、質量比3:1〜1:1で含有することを特徴とする請求項1に記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
- 前記油脂Aが、ラウリン系油脂とパーム系油脂を含む混合物を、エステル交換して得られた油脂を1種以上含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
- 前記ロールイン用可塑性油脂組成物の油脂中に、液体油を1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロールイン用可塑性油脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のロールイン用可塑性油脂組成物を用いた層状小麦粉膨化食品。
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