JP2015228810A - 油中水型乳化物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油相に、特定の脂肪酸組成を有するエステル交換油脂と液状油とを規定量含有し、かつ水相に特殊な乳化剤やpH調整剤を含有することなく、酸性調味料を含有することを特徴とする油中水型乳化物。
【選択図】なし
Description
特許文献1に記載の油中水型乳化油脂組成物では、乳蛋白質と酸性食品の併用により悪化する製造適性を、pH調整剤を添加することにより軽減するものであった。また、水相のpHが6.0〜7.5であるために、発酵乳、発酵バター等の酸性食品及び/又は酸性フレーバーの種類や配合量にも制限があった。
特許文献2に記載の可塑性油脂組成物では、油相が液状油と極度硬化油のみから構成されるが、極度硬化油脂を高配合しているために口溶けが悪いものであった。また、ボソボソした物性になりやすく、長期冷蔵保存後に粗大結晶であるグレーニングが発生するおそれがあった。
特許文献3では、常温で液体状の油脂とベヘン酸を含有するトリ飽和脂肪酸グリセリドの混合油を添加してなるスプレッド基剤を、融解することなく呈味剤を混合することにより、幅広い温度帯で適度な可塑性を有し、50℃でも液体油脂が分離しないスプレッドであった。そのため、特にチルド域のような低温では、口溶けやスプレッド性において満足のできるものではなかった。
特許文献4に記載のサラダ用酸性ペースト状水中油型乳化脂では、乳化に使用する油脂又は配合油のSFC値を調整することにより、水分の移行(離水、吸水)を防止するものであり、20℃におけるSFCが10以下の油脂又は配合油を用いた場合、水分移行防止の特徴を示さないと記載されている。また、通常冷蔵状態で流通・保管されるサラダにおいては、固体脂が固まってしまい、口溶けが良いとはいえず、離水防止効果も満足できるものではなかった。
特許文献5では、卵液、増粘剤及び/又は澱粉を含有する水相を調製し、食用油脂を添加し、乳化剤を添加することなく予備乳化を実施後、乳化剤を添加して乳化することにより得られる酸性水中油型乳化組成物が開示されている。ここで、増粘剤や澱粉を添加することにより、保水性を増強している。しかし、特許文献4および特許文献5の記載は水中油型乳化物に関してであり、本願発明の油中水型乳化物に比べて水分移行の抑制効果は劣るものであった。
(1) 油相に油脂A及び油脂Bを含有する油中水型乳化物であって、油脂Aは、全構成脂肪酸中に炭素数12の飽和脂肪酸を15〜45重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸を25〜75重量%含有する沃素価が0〜13のエステル交換油脂であり、油脂Bは、液状油であり、かつ水相に酸性調味料を含有することを特徴とする油中水型乳化物、
(2) 油相に、油脂Aを5〜17重量%及び油脂Bを83〜95重量%含有する(1)記載の油中水型乳化物、
(3) 水相に、グルタミン酸ナトリウムを含有する(1)乃至(2)に記載の油中水型乳化物、
(4) 調理パン用途である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の油中水型乳化物、
である。
本発明の油中水型乳化物は、油相に、油脂A及び油脂Bを含有するものである。
なお、油脂中の構成脂肪酸の分析は、AOCS Ce1f-96に準じて行うことができる。
本発明のラウリン系油脂とは、該油脂の構成脂肪酸中におけるラウリン酸含有量が30重量%以上ものをいい、例えばやし油、パーム核油又はその分別油、極度硬化油、及びこれらの調合油が挙げられる。また、炭素数16〜18の脂肪酸が豊富な油脂とは、例えばナタネ油、大豆油、パーム油又はその分別油、極度硬化油、及びこれらの調合油が挙げられるが、特にパーム系油脂が好ましい。ここで、パーム系油脂とは、パーム油及びパーム油を原料に分別されてできるパーム油分別硬質部、パーム油分別軟質部、パーム極度硬化油等が挙げられる。
なお、沃素価の分析は、日本油化学会制定基準油脂分析試験法2.3.4.1-1996に準じて測定することができる。
使用する酸性調味料によって酸味の強度が異なるために、一律に定義するのは難しいが、食酢を使用して適度な酸味を呈するには、本発明の油中水型乳化物100重量%中1〜15重量%、より好ましくは2〜8重量%を目安とすることができる。柑橘系果汁を使用する場合でも、これを目安にして使用量を適宜変更することができる。
本発明の油中水型乳化物の製造方法は、特に制限されるものではない。具体的には、例えば、油脂A及び油脂Bを含有する油相部を加熱融解し、酸性調味料を含有する水相部と混合乳化した後、冷却し、結晶化させることで油中水型乳化物を製造することができる。冷却可塑化させることが好ましく、冷却条件としては、徐冷却より急冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、オンレーター等が挙げられる。急冷捏和処理した後、さらに場合によっては熟成(テンパリング)することによって本発明の油中水型乳化物を得ることができる。
本発明の油中水型乳化物をサンドイッチ、ハンバーガーやホットドッグ等の調理パンに使用する場合には、パン以外の具材と混合してパンに挟む、あるいはパンの表面に直接塗布して用いるなどして用いると好適である。また、寿司、おにぎりに使用する場合にも、炊飯した米以外の具材と共に包み込む、あるいは、炊飯した米の表面に直接塗布するなどして用いることができる。
そのため、一般的な可塑性油脂組成物に求められる含気性や30℃を超える高温時の耐熱保型性は必ずしも必要ではない。
パーム核油(沃素価17)65重量%、パーム油分別軟質部(沃素価61)35重量%を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として、混合油に対して0.1重量%添加し、80℃、真空度40Torr、40分間エステル交換を行った後、水洗、脱水し、沃素価0.5まで水素添加した後精製を施して、油脂A−1とした。この油脂A−1は、炭素数12の飽和脂肪酸含量が31重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が54重量%であった。
<油脂A−2の調整>
ヤシ油(沃素価9)80重量%、パーム油分別軟質部(沃素価61)20重量%を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として油脂A−1と同条件でエステル交換を行った後、水洗、脱水し、沃素価0.5まで水素添加した後精製を施して、油脂A−2を得た。この油脂A−2は、炭素数12の飽和脂肪酸含量が38重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が36重量%であった。
<油脂A−3の調整>
パーム核油(沃素価17)50重量%、パームステアリン(沃素価31)50重量%を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として油脂A−1と同条件でエステル交換を行った後、水洗、脱水し、沃素価0.5まで水素添加した後精製を施して、油脂A−3とした。この油脂A−3は、炭素数12の飽和脂肪酸含量が22重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が64重量%であった。
<油脂C−1の調整>
パーム核油(沃素価17)25重量%、パーム油分別軟質部(沃素価61)75重量%を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として油脂A−1と同条件でエステル交換を行った後、水洗、脱水し、沃素価0.5まで水素添加した後精製を施して、油脂C−1とした。この油脂C−1は、炭素数12の飽和脂肪酸含量が12重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が82重量%であった。
<油脂C−2の調整>
パーム核オレイン(沃素価25)60重量%、パーム極度硬化油(沃素価0.5)40重量%を混合、ナトリウムメチラートを触媒として油脂A−1と同条件でエステル交換を行った後、水洗、脱水した後精製を施して、油脂C−2とした。この油脂C−2は、沃素価が15、炭素数12の飽和脂肪酸含量が26重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が46重量%であった。
<油脂C−3の調整>
パームステアリン(沃素価31)58重量%、パーム油(沃素価52)39重量%、ハイエルシン菜種極度硬化油3重量%を混合し、ナトリウムメチラートを触媒として油脂A−1と同条件でエステル交換を行った後、水洗、脱水し、精製を施して、油脂C−3とした。この油脂C−3は、沃素価が38、炭素数12の飽和脂肪酸含量が1重量%以下、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が60重量%であった。
<ハイエルシン菜種極度硬化油>
この油脂は、ハイエルシン菜種油を極度に水素添加した硬化油であり、沃素価が0.6、炭素数12の飽和脂肪酸含量が1重量%以下、炭素数16〜18の飽和脂肪酸含量が36重量%であった。
表1 油中水型乳化物の配合
・ 単位は重量%である。
・ 乳化剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ショ糖ステアリン酸エステル、レシチンを使用した。
・ 酸性調味料としては、(株)ミツカン社製「米酢」を用いた。
「油中水型乳化物の調製法」
1.油脂を60〜70℃で融解し、乳化剤を添加することで油相を調製した。
2.水に、酸性調味料などの水相原料に分類される原料を添加、溶解した。
3.攪拌中の油相へ水相を添加し、混合した。ここで得られる混合液を調合液と称する。
4.調合液をコンビネーターへ供して、油中水型乳化物を得た。
表2 油中水型乳化物の油脂配合
・ 単位は重量%である。
表3 油中水型乳化物の油脂配合
・ 単位は重量%である。
表4 油中水型乳化物の評価
表5 油中水型乳化物の評価
口溶け :
○ :水相風味の発現が速く、口溶け良好
△ :水相風味の発現が遅く、油性感を感じる
× :口溶けが悪く、殆ど水相風味を感じない
酸味 :
○ :市販のマヨネーズと同等で、まろやかで程よい酸味が感じられる
△ :市販のマヨネーズに比べて、酸味が少し強すぎる、または酸味が少し不足している
× :市販のマヨネーズに比べて、強い酸味が感じられる
スプレッド性 :
○ :柔らかく、スプレッド性良好
△ :やや硬く、スプレッド時に抵抗感を感じる
× :硬さを感じ、スプレッド性不良
保存安定性 :
○ :液油の分離が抑制され、且つツヤがあり、グレーニングが認められず良好
△ :液油の分離が若干認められる、またはグレーニングは認められないが、ツヤがない
× :液油の分離およびグレーニングが認められ、ツヤもない
総合評価 : ○以上を合格とした。
◎ :全ての項目で○評価
○ :全ての項目で○〜△以上の評価
△ :1つの項目で△評価であり、×評価はない
× :1つの項目でも×評価、あるいは2つ以上の項目で△評価
まず、10重量%の油脂A−1に油脂Bであるナタネ油を90重量%配合して、油脂組成物1を得た。以下の実施例5〜10では、この油脂組成物1を油脂として、油中水型乳化物の水相についての最適化を行った。
なお、この油脂組成物1は、実施例1で使用した油脂と同配合であり、10℃でのSFCが8であり、35℃のSFCは1%以下であった。
得られた油中水型乳化物は、5℃で2週間保存した後、10名のパネラーにより官能評価を行なった。酸味、エグ味、甘味をそれぞれ下記評価基準に従って評価し、3項目の評価を総合して総合評価とした。官能評価の結果を表6、7にまとめた。また、油脂組成物1(実施例1の油相)だけでなく、実施例2〜4の油相でも同様の傾向が確認された。
表6 油中水型乳化物の水相配合
・ 単位は重量%である。
・ 乳化剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ショ糖ステアリン酸エステル、レシチンを使用した。
・ バーテックスIG20は、富士食品工業株式会社製の酸味抑制効果を有する酵母エキスです。
油中水型乳化物の風味、物性の評価基準>
酸味 :
○ :市販のマヨネーズと同等で、まろやかで程よい酸味が感じられる
△ :市販のマヨネーズに比べて、酸味が少し強すぎる、または酸味が少し不足している
× :市販のマヨネーズに比べて、強い酸味が感じられる
エグ味 :
○ :エグミを感じない
△ :ややエグミを感じる
× :エグミを感じる
甘味 :
○ :甘味を感じない
△ :やや甘味を感じる
× :甘味を感じる
総合評価 : ○以上を合格とした。
◎ :全ての項目で○評価
○ :全ての項目で○〜△以上の評価であり、△評価はない
△ :1つの項目でも△評価であり、×評価はない
× :1つの項目でも×評価
水分移行防止材として、実施例10で得られた油中水型乳化物、または市販のマヨネーズを使用し、「水分移行抑制試験方法」に従って比較試験を行い、その結果を表8にまとめた。
「水分移行抑制試験方法」
1. 食パン(8.5cm×7.5cm、約15g)の片面に水分移行防止材約5gを均一になるように塗布した。
2. 脱脂綿(7cm×7cm)を2枚重ねて、25gの水をしみこませ、食パンの水分移行防止材を塗布した面に載せて、密閉容器に封入した。
3. これを、10℃(サンドイッチ用チルド棚の温度を想定)の恒温槽に保管し、24時間後の状態および水分移行率の測定を行った。ここで、水分移行率は、脱脂綿の重量変化を測定することにより算出した。
表8 水分移行抑制機能の評価
上表に示すように、本願発明品(実施例10)は、顕著にパン生地への水分移行を抑制していた。また、本発明品は水中油型乳化物であるマヨネーズと同等のスプレッド性に加えて、良好な口溶けと風味発現の速さを備えているため、サンドイッチに使用しても全く違和感のないものであった。なお、実施例10だけでなく、その他の実施例でも同様の水分移行抑制効果が確認された。
以上の結果から明らかなように、特定の脂肪酸組成を有するエステル交換油脂と液状油とを規定量含有することにより、水相に酸性調味料である食酢を含有しているにもかかわらず、安定的に製造することができ、かつ低温での風味発現や口溶けが良好な油中水型乳化物を得ることができた。
また、水相に酸性調味料に加えて、グルタミン酸ナトリウムを併用することにより、甘味やえぐ味を感じることなく、酸味をまろやかにすることができた。
さらに、該油中水型乳化物は、低温での良好なスプレッド性を有し、時間が経過しても水分移行によるパンや米飯のべちゃつきや食感の悪化を抑制できるものである。
Claims (4)
- 油相に油脂A及び油脂Bを含有する油中水型乳化物であって、
油脂Aは、全構成脂肪酸中に炭素数12の飽和脂肪酸を15〜45重量%、炭素数16〜18の飽和脂肪酸を25〜75重量 %含有する沃素価が0〜13のエステル交換油脂であり、
油脂Bは、液状油であり、
かつ水相に酸性調味料を含有することを特徴とする油中水型乳化物。 - 油相に、油脂Aを5〜17重量%及び油脂Bを83〜95重量%含有する、請求項1記載の油中水型乳化物。
- 水相に、グルタミン酸ナトリウムを含有する、請求項1乃至2に記載の油中水型乳化物。
- 調理パン用途である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の油中水型乳化物。
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