以下に本発明の第1〜第3実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。又、例えば、以下の第1〜第3実施形態の説明では、第1導電型がp型、第2導電型がn型の場合について例示的に説明するが、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型がn型、第2導電型がp型としても構わない。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る撮像モジュールにおいては、図1及び図2に示すように、シングルチップの半導体基体(22F,22I)を、この半導体基体(22F,22I)の中央部に定義されたイメージセンサの撮像部22Fと、熱分離領域を介して撮像部22Fから熱的に分離されて撮像部22Fを囲むように配置されたイメージセンサの周辺回路部22Iとに分割している。イメージセンサの周辺回路部22Iは大きな発熱のある領域であり、撮像部22Fは、熱分離領域を介して周辺回路部22Iから熱的に分離されている。
第1実施形態に係る撮像モジュールは、このセンサチップと、平面パターン上、センサチップより小さな面積を有し、撮像部22Fのみを選択的に冷却する局所冷却素子33と、センサチップと、局所冷却素子33の少なくとも一部を収納する凹部を有して、センサチップを搭載するパッケージ基体32とを備える。パッケージ基体32は、ベリリア(BeO)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、熱伝導性ポリイミドフィルム等の高熱伝導性の絶縁材料からなり、第1実施形態では、図1に示すように3段の段差構造の凹部を有する。
パッケージ基体32の一番深い凹部には局所冷却素子33が収納され、中段の凹部に周辺回路部22Iの底部が搭載されている。上段の凹部には接続ランド36j,36kが設けられている。局所冷却素子33としては、ペルチェ冷却素子等の電子冷却素子を採用可能であるが、図1に示すように、局所冷却素子33の上面の吸熱板(吸熱面)が高熱伝導性接着剤34tを介して、撮像部22Fの底面に接続されている。一方、局所冷却素子33の下面の発熱板(発熱面)は、高熱伝導性接着剤34bを介して、パッケージ基体32の一番深い凹部の底面に固定されている。パッケージ基体32に発熱板が接続されることにより、局所冷却素子33の発熱板が、パッケージ基体32中を流れる熱経路によって、周辺回路部22Iの底部に熱的に接続されることになる。
パッケージ基体32の一番深い凹部の底面には配線ランド61p,61qが設けられ、局所冷却素子33とリード線35p,35qを介して電気的に接続されている。そして、図1に示すように、第1実施形態に係る撮像モジュールは、更に、パッケージ蓋体31を備える。パッケージ蓋体31は、パッケージ基体32とともに、センサチップと局所冷却素子33を収納する閉じた空間を構成する。パッケージ蓋体31は、撮像部22Fの上面に光が入射可能なように、少なくとも、撮像部22Fの直上の箇所は、透明なガラスで構成され、ガラスの表面には、無反射コーティング(ARコーティング)が施されている。
図2に示すように、第1実施形態に係る撮像モジュールは、半導体基体(22F,22I)上に撮像部22Fから周辺回路部22Iまで含むように設けられた絶縁膜21を更に含む。絶縁膜21は、シリコン酸化膜(SiO2膜)等の熱伝導率が低い誘電体膜が好ましい。そして、熱分離領域が、半導体基体(22F,22I)中に撮像部22Fを囲むように設けられた溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4と、溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4の上に位置する、熱伝導率が低い絶縁膜21の一部により構成される。
シリコン等の半導体は、熱伝導率が高く、一方シリコン酸化膜(SiO2膜)等の絶縁膜21は、熱伝導率が低い。しかしながら、図2(b)に示すように、撮像部22Fを十分な強度で周辺回路部22Iが支持するため、撮像部22Fの4つの角には、半導体基体(22F,22I)を構成する半導体材料からなる接続梁25C1,25C2,25C3,25C4が設けられている。接続梁25C1,25C2,25C3,25C4の厚みを十分薄くすることで、熱分離領域の熱抵抗を高めることができる。そして、絶縁膜21上に、撮像部22Fと周辺回路部22Iとを接続する金属配線層が設けられている。
図1及び図2に示す熱分離構造は、半導体基体(22F,22Iの裏面から立体加工(エッチング)によって、空隙部22G1,22G2,22G3,22G4を形成し、撮像部22Fと周辺回路部22Iとを、空隙部22G1,22G2,22G3,22G4で熱分離を行えば実現できる。熱分離領域を形成するために、空隙部22G1,22G2,22G3,22G4が形成される位置の半導体基体(22F,22I)をすべて取り去り、裏面に対して絶縁膜21が露出するようにする。この裏面から立体加工(エッチング)に際しては、撮像部22Fの4つの角に接続梁25C1,25C2,25C3,25C4が構成されるように、撮像部22Fの4つの角は、半導体をエッチングせずに残す選択エッチングを行うようにすれば良い。
図1では、撮像部22Fをなす半導体領域の上部に撮像領域221を、周辺回路部22Iをなす半導体領域の上部に周辺回路領域222a,222cを模式的な断面図として示しているが、断面構造は便宜上の表現であって、実際にはイメージセンサを構成する微細構造の画素やトランジスタで、撮像領域221や周辺回路領域222a,222cが構成される。よって、図1に示した断面図の撮像領域221や周辺回路領域222a,222cは、現実にはミクロンレベル等の微細な寸法のp型半導体領域とn型半導体領域が複雑に組み合わせられた構造である。更に、詳細な構造の図示を省略しているが、撮像領域221や周辺回路部22Iを構成する半導体基体(22F,22I)は、半導体基板そのもののような単層の構造でも、半導体基板上にエピタキシャル成長した複層の構造でも、SOIやSOS構造等の複層の構造でも構わない。本発明では、これらの種々の単層構造や複層構造の半導体基体を包括的に「シングルチップ」と称している。
又、図2(b)では、撮像領域221を囲むように、周辺回路部22Iに4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222dが配置された構造を示しているが、必ずしも、4つの周辺回路領域が常に配置されるわけではなく、イメージセンサの種類は設計によっては、4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222dのうちの少なくともいずれかが省略されたレイアウトも存在しうる。
図2から分かるように、撮像部22Fから周辺回路部22Iに至る半導体基体(22F,22I)の表面の全面に絶縁膜21が形成され、この絶縁膜21の上にアルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の金属膜からなるボンディングパッド23k-1,23k,23k+1,23k+2,…;23p-1,23p,23p+1,23p+2,…;23j-1,23j,23j+1,23j+2,…;23q-1,23q,23q+1,23q+2,…が配置されている。このボンディングパッド23k-1,23k,23k+1,23k+2,…;23p-1,23p,23p+1,23p+2,…;23j-1,23j,23j+1,23j+2,…;23q-1,23q,23q+1,23q+2,…の配列やトポロジーは一例を示す模式図であり、現実には、種々の変形があることは勿論である。
図1に示すように、左側のボンディングパッド23jは、ボンディングワイヤ37jを介して、パッケージ基体32の上段の凹部に設けられた接続ランド36jに電気的に接続され、右側のボンディングパッド23kは、ボンディングワイヤ37kを介して、パッケージ基体32の上段の凹部に設けられた接続ランド36kに電気的に接続されている。図1及び図2(a)に示す構造は、図2(b)のA−A方向から見た断面図であるので、図示を省略しているが、図2(b)に示した他のボンディングパッド23k-1,23k+1,23k+2,…;23p-1,23p,23p+1,23p+2,…;23j-1,23j+1,23j+2,…;23q-1,23q,23q+1,23q+2,…についても同様に、パッケージ基体32の上段の凹部に設けられた接続ランドにボンディングワイヤを介してそれぞれ独立した金属配線層の経路をなして、電気的に接続されていることは勿論である。
図3は、第1実施形態に係る撮像モジュールにおいて、局所冷却素子33として用いる場合に好適なペルチェ素子を例にして、ペルチェ素子の内部の熱流を電流に対応させ、温度差を電位差に対応させた熱流等価回路(熱回路)のモデル図である。図3の熱流等価回路における接地線は環境温度Taの温度レベルを示す。図3の左側の2ポート(入力端子)間は、低温側の温度Tcと環境温度Taとの温度差を示し、右側の2ポート(出力端子)間は、高温側の温度Thと環境温度Taの温度差を示す。図3の熱流等価回路のペルチェ素子を流れる電流がI、ペルチェ素子の素子抵抗がRのとき、PJ=I2Rはペルチェ素子を電流Iで駆動することにより発熱するジュール熱(ジュール損失)、PP=S・Tc・IはSをゼーベック係数として、ペルチェ効果による熱流(ペルチェ吸熱量)、PΔT=S(Th−Tc)Iは、ペルチェ効果の温度差ΔT=Th−Tcによる熱流(ペルチェ発熱量)、Kはペルチェ素子の熱伝導度(熱コンダクタンス)である。
図3に示す熱移送状況を示す熱流等価回路から、低温側(吸熱板)の吸熱量をQc、高温側(発熱板)の発熱量をQhとして、以下のような、ペルチェ素子の低温側から高温側へ熱移送する場合の熱流の基本式が得られることが良く知られている:
Qc+(1/2)PJ=PP+K(Tc−Th) ……(1)
Qh=(1/2)PJ+PΔT+PP+K(Tc−Th) ……(2)
図1に示した第1実施形態に係る撮像モジュールの構造において、チップの周辺回路部22Iとパッケージ基体32とが非常に高い熱伝導度で互いに接触しているとすると、ペルチェ素子の高温側が、周辺回路部22Iの底部に接続されたことになる。このとき、センサチップの撮像部22Fでの発熱をQF、周辺回路部22Iでの発熱をQI、撮像部22Fから周辺回路部22Iへの熱伝導度(熱コンダクタンス)をKL、パッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱伝導度(熱コンダクタンス)をKR、ペルチェ素子の熱伝導度(熱コンダクタンス)をKPとすると、第1実施形態に係る撮像モジュールの内部の熱移送状況を示す熱流等価回路は、図4のように表現できる。図4に示した撮像モジュールの熱流等価回路では、ペルチェ素子の低温側に発熱源QFが接続され、高温側にパッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱コンダクタンスKRと発熱源QIが接続された構成になる。
図4に示した撮像モジュールの熱流等価回路から、以下の基本式が得られる:
QF+(1/2)PJ=PP+(KP+KL)(Tc−Th) ……(3)
QF+PJ+PΔT+QI=KR(Tc−Th) ……(4)
式(3)及び(4)より、高温側の温度Th及び低温側と高温側の間の温度差ΔT=Th−Tcは、次の式(5)及び(6)のように求められる:
Th={S(QP+0.5PJ+KRTa)I+(QF+QI+PJ+KRTa)(KP+KL)}/
{S(KR−S・I)I+KR(KP+KL)} ……(5)
ΔT={S(QF+QI+PJ+KRTa)I−(QF+0.5PJ)KR}/
{S(KR−S・I)I+KR(KP+KL)} ……(6)
もし、パッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱移送の熱コンダクタンスKRが非常に大きい(KR→∞)とすると、式(5)及び(6)は、それぞれ、次の式(7)及び(8)のように近似される:
Th≒Ta ……(7)
ΔT≒(S・Ta・I−QF−0.5PJ)/(S・I+KP+KL) ……(8)
式(7)に示すとおり、高温側のパッケージ基体32の温度は環境温度Taと等しくなり、そのとき、低温側の撮像部22Fの環境温度Taに対する温度差は、式(8)で計算される。
−検討評価例−
ここで、第1実施形態に係る撮像モジュールの冷却性能を検討し、熱分離領域の効果を立証するために、検討評価例に係る撮像モジュールとして、図13に示すように、シングルチップの半導体基体22Bの上部の中央部に撮像領域221を、半導体基体22Bの上部の撮像領域221の周辺に周辺回路領域222a,222cを配置した構造のセンサチップを用いた構造を検討してみる。この検討評価例に係る撮像モジュールでは、図1及び図2に示した第1実施形態に係る撮像モジュールとは異なり、撮像領域221と周辺回路領域222a,222cとの間には熱分離領域が存在しない、従来技術に係るイメージセンサのセンサチップを用いている。
センサチップは従来技術に係る構造ではあるが、検討評価例に係る撮像モジュールも、図1及び図2と同様に、平面パターン上、センサチップを構成する半導体基体22Bより小さな面積を有し、撮像領域221の底部には、高熱伝導性接着剤34tを介して局所冷却素子33が接続されている。そして、図13に示すように、半導体基体22Bと局所冷却素子33を収納する凹部を有して、半導体基体22Bを搭載するパッケージ基体32とを備える。パッケージ基体32は、図13に示すように2段の段差構造の凹部を有する。パッケージ基体32の一番深い凹部には半導体基体22Bと局所冷却素子33が収納され、上段の凹部には接続ランド36j,36kが設けられている。局所冷却素子33の下面の発熱板は、高熱伝導性接着剤34bを介して、パッケージ基体32の一番深い凹部の底面に固定されている。パッケージ基体32の一番深い凹部の底面には配線ランド61p,61qが設けられ、局所冷却素子33とリード線35p,35qを介して電気的に接続されている。
そして、図13に示すように、検討評価例に係る撮像モジュールは、更に、パッケージ蓋体31を備える。図13に示すように、検討評価例に係る撮像モジュールも、半導体基体22B上に撮像領域221から周辺回路領域222a,222cまで含むように設けられた絶縁膜21が形成されているとして検討する。この絶縁膜21の上にアルミニウムやアルミニウム合金等の金属膜からなるボンディングパッド23j,23kが配置されている。左側のボンディングパッド23jは、ボンディングワイヤ37jを介して、パッケージ基体32の上段の凹部に設けられた接続ランド36jに電気的に接続され、右側のボンディングパッド23kは、ボンディングワイヤ37kを介して、パッケージ基体32の上段の凹部に設けられた接続ランド36kに電気的に接続されている。
図13に示した検討評価例に係る撮像モジュールの構造において、半導体基体22Bとパッケージ基体32とが非常に高い熱伝導度で互いに接触しているとする。このとき、半導体基体22Bの撮像領域221での発熱をQF、周辺回路領域222a,222cでの発熱をQIとすると、発熱QFと発熱QIとは熱分離されていないので、ペルチェ素子は、半導体基体22Bの全体の発熱(QF+QI)を冷却することになる。図13において、撮像領域221から周辺回路領域222a,222cへの熱伝導度(熱コンダクタンス)をKL、パッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱伝導度(熱コンダクタンス)をKR、ペルチェ素子の熱伝導度(熱コンダクタンス)をKPとすると、検討評価例に係る撮像モジュールの内部の熱移送状況を示す熱流等価回路は、図14のように、低温側に(QF+QI)の熱源が加わり、高温側にパッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱コンダクタンスKRが接続された熱流等価回路で表現できる。
第1実施形態に係る撮像モジュールと同様に、パッケージ基体32から環境温度Taの周辺環境への熱コンダクタンスKRが非常に大きい(KR→∞)場合、式(3)〜(8)と同様な計算により、検討評価例に係る撮像モジュールの低温側と高温側の間の温度差ΔT=Th−Tcは、以下の式(9)のように求められる:
ΔT≒(S・Ta・I−QF−QI−0.5PJ)/(S・I+KP+KL)……(9)
なお検討評価例に係る撮像モジュールにおいても、高温側の温度Thは、式(7)に示した第1実施形態に係る撮像モジュールの場合と同様に、環境温度Taと等しくなる(Th≒Ta)。
式(8)と式(9)とを比較すると、第1実施形態に係る撮像モジュールにおいて、イメージセンサの撮像部22Fと、熱分離領域を介して撮像部22Fから熱的に分離されて撮像部22Fを囲むように配置した熱分離技術の効果が理解できる。
イメージセンサのうちでも、CMOSイメージセンサの周辺回路部22Iは非常に大きな発熱のある周辺回路領域222a,22b,222c,222dが上部に配置された領域である。第1実施形態に係る撮像モジュールでは、CMOSイメージセンサ等のイメージセンサにおいて周辺回路部22Iの発熱に比べて撮像部22Fの発熱が非常に小さいことを考慮し、撮像部22Fと周辺回路部22Iとを熱分離領域によって互いに熱的に分離して、撮像部22Fのみを選択的に冷却している。例えば、8M画素のイメージセンサを比較的高いフレームレートで読み出したときの発熱量は1Wにも及ぶが、撮像部22Fでの発熱QFは数10mW程度である。代表的には、センサチップの撮像部22Fでの発熱をQF=20mW、周辺回路部22Iでの発熱をQI=1Wとすることができる。
半導体材料として代表的なシリコン(Si)は、熱伝導率が、148W/m・Kと高い。このため、図1及び図2に示した第1実施形態に係る撮像モジュールにおいては、接続梁25C1,25C2,25C3,25C4の部分を残して、半導体基体(22F,22Iに空隙部22G1,22G2,22G3,22G4を形成し、空隙部22G1,22G2,22G3,22G4の上に絶縁膜21だけを残す構成にしている。ガラス(SiO2膜)の熱伝導率は、0.55〜0.7W/m・Kなので、シリコンの熱伝導率に比して十分に小さく、熱分離が効果的に行える。
例えば、図13に示す検討評価例の構造において、シリコン層の熱伝導率をKSiとして、撮像領域221と周辺回路領域222a,222cとの間の実効的な幅(熱分離長)weff=1mm,撮像領域221が配置された矩形のシリコンチップの実効的な周囲長Lph=40mmで、厚みt=100μmの半導体基体22Bを構成するシリコンチップのシリコン層を残したとすると、撮像領域221と周辺回路領域222a,222cの間の熱伝導度KL(example)は:
KL(example)=KSi・t・Lph/weff=0.59W/K
となる。
これに対し、第1実施形態に係る撮像モジュールのように、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間のシリコン層を完全に除去し、絶縁膜21で熱分離領域を構成する場合、熱分離領域の熱伝導度KLSiO2は、シリコン酸化膜(SiO2膜)の熱伝導率KSiO2=1W/m・Kとして、
KLSiO2=(1W/m・K)×(5μm)×(40mm)/(100μm)
=2×10-3W/K
となる。
金属配線、4つのカドに残す接続梁25C1,25C2,25C3,25C4のシリコン層を幅10μm,厚み100μm,熱分離長w100μmとすると、
KLbeam=(148W/m・K)×(100μm)×(10μm)/(100μm)
=1.5×10-3W/K
となる。
又、撮像部22Fと周辺回路部22Iとをつなぐアルミニウム(Al)による金属配線層の熱伝導度KLmetalは、1本の金属配線あたり
KLmetal(single)=(240W/m・K)×(0.3μm)×(0.6μm)/(200μm)
=2.16×10-7W/K,
となり、7000本の金属配線があれば、
KLmetal(7000)=7000KLmetal(single)=1.5×10-3W/K
となる。
これらを合わせて、
KL=KLSiO2+KLbeam+KLmetal(700)=5×10-3W/K
となり、図13に示した熱分離を行わない検討評価例の場合の撮像領域221と周辺回路領域222a,222cの間の熱伝導度KL(example)に比べて、第1実施形態に係る撮像モジュールの撮像部22Fと周辺回路部22Iの間の熱分離領域の熱伝導度KLが非常に小さくなる。
−ペルチェ素子に供給する電力−
第1実施形態に係る撮像モジュールの局所冷却素子33として、ペルチェ素子を用いて冷却する場合に、ペルチェ素子に供給する電力を、第1実施形態に係る撮像モジュールと検討評価例に係る撮像モジュールの2つの場合について比較する。第1実施形態に係る撮像モジュールの場合のように熱分離領域で、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間を熱分離し、撮像部22Fのみを選択的に冷却した場合には、小さいペルチェ素子が使えることを説明する。
例えば、図3に示したペルチェ素子の熱流等価回路(熱回路)において、吸熱量の最大値Qcmax=0.7W,ペルチェ効果の温度差(ΔT=Th−Tc)の最大値ΔTmax=70℃,ペルチェ素子の素子抵抗R=1.4Ω,ペルチェ素子を流れる電流の最大値Imax=1Aとすると、ペルチェ素子の熱伝導度(熱コンダクタンス)KP
は:
KP=Qcmax/ΔTmax=0.01W/K
であり、ペルチェ素子をImax=1Aで駆動すると、PJ=(Imax)2×R=12×1.4=1.4Wであるので、S・I・Ta=Qcmax+0.5PJ=1.4Wとなる。
環境温度Ta=27℃(300K)のとき、S・I=4.67×10-3W/Kである。 式(8)を用いると、
ΔT≒{1.4−(0.02+0.5×1.4)}/(4.67×10-3+0.01+5×10-3)
=34
となり、第1実施形態に係る撮像モジュールでは、1.4Wの電力投入で34℃の冷却が可能である。
次に、図13に示した検討評価例の構造において、撮像領域221と周辺回路領域222a,222cの両方が配置された半導体基体22Bの全体を冷却する場合を考える。KL(example)は、ボンディングワイヤによるリークが主になるが、25μm径の金線を用い、ワイヤ長が2mmであるとすると1本あたり、
KLbond(single)=(310W/m・K)×(3.14)×(12.5μm)2/(2mm)
=7.7×10-5W/K,
となり、200本のボンディングワイヤがあれば、
KLbond(200)=200KLbond(single)=1.54×10-2W/K
となる。
図13に示した検討評価例の構造のように、熱分離をしない場合には、大きな容量のペルチェ素子が必要である。例えば、図3に示したペルチェ素子の熱流等価回路(熱回路)において、吸熱量の最大値Qcmax=7.8W,ペルチェ効果の温度差(ΔT=Th−Tc)の最大値ΔTmax=70℃,ペルチェ素子の素子抵抗R=0.66Ω,ペルチェ素子を流れる電流の最大値Imax=4.7Aのペルチェ素子を使うと、ペルチェ素子の熱伝導度(熱コンダクタンス)KP(example)は:
KP(example)=Qcmax/ΔTmax=0.11W/K
であり、ペルチェ素子をImax=4.7Aで駆動すると、PJ=(Imax)2×R=(4.7)2×0.66=14.5Wであるので、S・I・Ta=Qcmax+0.5PJ=15.1Wとなる。
環境温度Ta=27℃(300K)のとき、S・I=0.05W/Kである。式(9)を用いると、
ΔT≒{14.5−(1.02+0.5×14.5)}/(0.05+0.11+0.015)
=35.6
となり、検討評価例に係る撮像モジュールで約36℃の冷却をするのに、ペルチェ素子に対し、14.5Wの電力投入が必要であることが分かる。
以上の比較から、第1実施形態に係る撮像モジュールでは、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間が図1及び図2に示すように熱分離されているので、図13に示した検討評価例に係る撮像モジュールが同じ温度差ΔT(約35℃)を冷却する場合に比して,局所冷却素子33として用いるペルチェ素子への投入電力が約1/10に低減できる。
(第1実施形態の実施例)
第1実施形態の実施例1〜3として、図5に示すような撮像部22Fが熱分離領域を介して周辺回路部22Iから熱的に分離されたセンサチップに、撮像部22Fのみを選択的に冷却する局所冷却素子33を接続し、センサチップと、局所冷却素子33をパッケージ基体(32a,32b,…,32f)に収納した撮像モジュールを試作した。又、比較例として、図13に示した検討評価例と同様な、熱分離領域を有しないセンサチップを用意した。
第1実施形態の実施例1においては、パッケージ基体(32a,32b,…,32f)は、高熱伝導性の絶縁材料からなる複数の回路基板32a,32b,…,32fを積層して、図5に示すような3段の段差構造の収納用凹部を有するようにした、多層配線基板の構造をなした積層構造体である。即ち、実施例1に係るパッケージ基体(32a,32b,…,32f)は、一番下に孔のない平板の第1の回路基板32fをベースプレートとして配置し、この第1の回路基板32fの上に、局所冷却素子33としてのペルチェ素子を収納可能な第1の貫通孔を有する第2の回路基板32eを積層し、この第2の回路基板32eの上に、ペルチェ素子を収納可能な第2の貫通孔を有する第3の回路基板32dをスペーサとして積層し、この第3の回路基板32dの上に、ペルチェ素子を収納可能な第3の貫通孔を有する第4の回路基板32cを積層し、この第4の回路基板32cの上に、実施例1に係るセンサチップを、それぞれ収納可能な第4の貫通孔を有する第5の回路基板32bを積層し、この第5の回路基板32bの上に、ガラス板からなるパッケージ蓋体51aを収納可能な第5の貫通孔を有する第6の回路基板32a積層した6層構造である。
第1の貫通孔、第2の貫通孔及び第3の貫通孔は同一内径を有して、連続した一番深い収納用凹部をパッケージ基体(32a,32b,…,32f)に設けている。第4の貫通孔の内径は、第3の貫通孔の内径より大きいので、第4の回路基板32cの上面に周辺回路部22Iの底部が搭載されることができる。第5の貫通孔の内径は、第4の貫通孔の内径より大きいので、第5の回路基板32bの上面にパッケージ蓋体51aの底部が搭載されることができる。
一方、実施例2,3及び比較例においては、図5に示したパッケージ基体(32a,32b,…,32f)の構造から、第3の回路基板32dを省略して、5層構造にしているが、図5に示したのと同様に、3段の段差構造の収納用凹部を有し、この収納用凹部に実施例2,3及び比較例に係るセンサチップとペルチェ素子が収納される。
図示を省略しているが、実施例1〜3及び比較例に係る撮像モジュールは、いずれも、第4の回路基板32cの上面には、接続ランドが設けられている。図5に示すように、局所冷却素子33の上面の吸熱板が高熱伝導性接着剤34tを介して、撮像部22Fの底面に接続されている。一方、局所冷却素子33の下面の発熱板は、高熱伝導性接着剤34bを介して、パッケージ基体(32a,32b,…,32f)のベースプレートをなす第1の回路基板32fの上面に固定されている。第1の回路基板32fに発熱板が接続されることにより、局所冷却素子33の発熱板が、パッケージ基体(32a,32b,…,32f)中を流れる熱経路によって、周辺回路部22Iの底部に熱的に接続されることになる。
第1の回路基板32fの表面には配線ランド61p,61qが設けられ、局所冷却素子33とリード線35p,35qを介して電気的に接続されている。そして、図5に示すように、実施例1〜3及び比較例に係る撮像モジュールは、更に、パッケージ蓋体31を備える。
図5に示すように、第1実施形態の実施例1〜3に係る撮像モジュールは、半導体基体(22F,22I)上に撮像部22Fから周辺回路部22Iまで含むように設けられた絶縁膜21を更に含む。熱分離領域が、半導体基体(22F,22I)中に撮像部22Fを囲むように設けられた複数の空隙部と、複数の空隙部の上に位置する、熱伝導率が低い絶縁膜21の一部により構成される。
比較例に係るセンサチップにおいても、熱分離領域はないものの、図13に示した検討評価例と同様に、半導体基体22Bの表面の全面に絶縁膜21が形成されている。図示を省略しているが、第4の回路基板32cの上面に設けられた接続ランドにボンディングワイヤを介して、それぞれ実施例1〜3及び比較例に係るセンサチップに設けられた複数のボンディングパッドと、それぞれ、電気的に接続されていることは勿論である。
第1実施形態の実施例1〜3では、センサチップの撮像部22Fでの発熱をQF=0.02W、周辺回路部22Iでの発熱をQI=0.48Wに設定している。比較例に係るセンサチップも、撮像領域221での発熱をQF(example)=0.02W、周辺回路領域222a,222cでの発熱をQI(example)=0.48Wに設定している。
ペルチェ素子は、平面パターン上、センサチップより小さな面積を有する小型な構造のものを2種類用いた。実施例1に用いたペルチェ素子の基本性能は、吸熱量の最大値Qcmax=0.7W,ペルチェ効果の温度差(ΔT=Th−Tc)の最大値ΔTmax=85℃,ペルチェ素子を流れる電流の最大値Imax=1.5A、このときのペルチェ素子に投入される電圧の最大値Vmax=1.0Vである。第1実施形態の実施例2、3及び比較例に用いたペルチェ素子の基本性能は、吸熱量の最大値Qcmax=2.48W,ペルチェ効果の温度差(ΔT=Th−Tc)の最大値ΔTmax=85℃,ペルチェ素子を流れる電流の最大値Imax=1.8A、このときのペルチェ素子に投入される電圧の最大値Vmax=3.4Vである。
図6に示すデータは、実施例1〜3に係る撮像モジュールにおいて、縦軸に示したペルチェ素子の高温側と低温側の温度差(ΔT=Th−Tc)が、横軸に示したペルチェへ素子の投入電力(W)の増加によって、どのように変化するかを、比較例に係る撮像モジュールと比較して示したものである。既に述べたとおり、実施例1〜3に係る撮像モジュールにおいては、ペルチェ素子の吸熱板(吸熱面)は撮像部22Fの底部に接合され、撮像領域221を選択的に冷却する構造である。比較例に係る撮像モジュールは、熱分離構造はないが、撮像領域221直下の半導体基体22Bの底部に接合されている。白抜きの丸で示した第1実施形態の実施例1及び黒塗りの四角で示した比較例においては、発熱板(発熱面)の温度を環境温度Ta=50℃に固定している。一方、白抜きの三角で示した実施例2及び白抜きの四角で示した実施例3においては、発熱板の温度を環境温度Ta=80℃に固定している。
図6に示したデータから、実施例1に係る撮像モジュールによれば、約56℃の冷却をするのに、ペルチェ素子に対し0.43Wの電力投入で良く、約50℃の冷却をするのには0.3W程度の電力投入で良いことが分かる。又、実施例1に係る撮像モジュールとは、ペルチェ素子が異なる実施例2に係る撮像モジュールによれば、約75℃の冷却をするのに、ペルチェ素子に対し2.8Wの電力投入が、実施例3に係る撮像モジュールによれば、約66℃の冷却をするのに、ペルチェ素子に対し2.7Wの電力投入が必要であることが分かる。これに対し、熱分離構造を有しない比較例に係る撮像モジュールでは、約12℃の冷却をするのに、ペルチェ素子に対し、2.85Wの電力投入が必要であることが分かる。一般的には、冷却カメラはペルチェ素子に数10Wぐらいを電力投入しているので、実施例1〜3に係る撮像モジュールによれば、圧倒的に小さな投入電力で撮像領域221を冷却して、低雑音化が実現できることが分かる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る撮像モジュールにおいては、センサチップが図7及び図8に示すように、シングルチップの半導体基体(22F,22I)を、この半導体基体(22F,22I)の中央部に定義されたイメージセンサの撮像部22Fと、熱分離領域を介して撮像部22Fから熱的に分離されて撮像部22Fを囲むように配置されたイメージセンサの周辺回路部22Iとに分割している点では、第1実施形態に係る撮像モジュールのセンサチップと同様であり、イメージセンサの周辺回路部22Iは大きな発熱のある領域であるが、撮像部22Fは、熱分離領域を介して周辺回路部22Iから熱的に分離されている。
しかしながら、第2実施形態に係るセンサチップは、イメージセンサの撮像部22Fの裏面から(図7及び図8の下方から)光が入射する裏面照射型のイメージセンサのチップである点で、第1実施形態に係るセンサチップとは異なる。このため、 図7及び図8に示すように、撮像部22Fの厚さは、その周囲の周辺回路部22Iの厚さよりも薄く構成され、撮像部22Fをなす半導体領域の上部の表面近傍に設けられた撮像領域221に撮像部22Fの裏面側から光が到達できるよう、例えば、近赤外感度を考慮した場合には、20〜30μm程度の厚さに薄く設定されている。即ち、撮像部22Fの厚さは、近赤外光等の対象とする光の波長における減衰長を考慮した厚みに設計されている。周辺回路部22Iをなす半導体領域の上部の表面近傍に周辺回路領域222a,222cが設けられている点では、第1実施形態に係るセンサチップと同様である。
平面図の図示を省略しているが、図2(b)に示した平面図と同様に、第2実施形態に係るセンサチップは、撮像領域221を囲むように、周辺回路部22Iに4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222dが配置された構造でも、4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222dのうちの少なくともいずれかが省略された構造でも構わない。又、図2(b)に示した構造と同様に、撮像部22Fを十分な強度で周辺回路部22Iが支持するため、撮像部22Fの4つの角には、半導体基体(22F,22I)を構成する半導体材料からなる接続梁が設けられている。
図7及び図8に示すように、第2実施形態に係る撮像モジュールは、半導体基体(22F,22I)上に撮像部22Fから周辺回路部22Iまで含むように絶縁膜21が形成されている。第1実施形態に係る撮像モジュールと同様に、絶縁膜21は、シリコン酸化膜(SiO2膜)等の熱伝導率が低い誘電体膜が好ましい。そして、熱分離領域が、半導体基体(22F,22I)中に撮像部22Fを囲むように設けられた溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4と、溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4の上に位置する、熱伝導率が低い絶縁膜21の一部により構成される。
本発明の第2実施形態に係る撮像モジュールにおいては、センサチップが裏面照射型のイメージセンサのチップであるので、局所冷却素子33として、図7に示すような、吸熱板337と発熱面336を同一面側に有するペルチェ素子を用いる。図7に示すように、このペルチェ素子の吸熱板337が撮像部22Fの表面に絶縁膜21を介して熱的に接続され、このペルチェ素子の発熱面336が周辺回路部22Iの表面に絶縁膜21を介して熱的に接続されている。実際には、吸熱板337は、図示を省略した高熱伝導性接着剤を介して、撮像部22Fの表面の絶縁膜21に接着され、発熱面336が、図示を省略した高熱伝導性接着剤を介して周辺回路部22Iの表面の絶縁膜21に接着されて、熱的な接続を実現している。
本発明の第2実施形態に係る撮像モジュールに用いるペルチェ素子は、図7に示すように、中央に金属材料や高熱伝導セラミック等の高熱伝導性材料からなる冷却ブロック331を配置し、この冷却ブロック331の下面に吸熱板337となる高熱伝導性材料からなる板を接合し、冷却ブロック331の上面に高熱伝導性材料からなる中継板335を接合している。冷却ブロック331の周囲には、熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)が、冷却ブロック331を囲むように配置され、熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)の低温側となる上面が中継板335に接合されている。熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)が、冷却ブロック331を囲む配置のトポロジーは、センサチップ側の撮像部22Fを周辺回路部22Iが囲む配置のトポロジーに対応させれば良い。
熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)と、冷却ブロック331との間には、低熱伝導性絶縁体332が挟まれている。熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)は、ビスマステルル(BiTe)等のp型半導体素子とn型半導体素子とを絶縁層334を介して交互に配置して隣り合う端部同士を交互に電極で、多段に直列接合した構造である。この熱電変換体(333a,333b,333c,333d,333e,333f,……)の高温側となる下面には、高熱伝導性材料からなる発熱板336が接合され、吸熱板337と発熱面336を同一面側に有するペルチェ素子が構成されている。
図7では、便宜上、冷却ブロック331と吸熱板337とが別体であるかのように概念的表示がされているが、実際の構造としては、冷却ブロック331と吸熱板337とを、同一の高熱伝導性材料で一体物として構成しても良い。図7に示すような、吸熱板337と発熱面336とが同一面側に配置されたペルチェ素子であっても、センサチップより小さな面積を有し、撮像部22Fのみを選択的に冷却する局所冷却素子33が実現できる。なお、図7とは逆に、中央の冷却ブロック331の位置に、熱電変換体を配置し、熱電変換体の周囲に、高熱伝導性材料からなる放熱ブロックを配置する構造とし、熱電変換体と放熱ブロックの上面を中継板335で熱的に接続しても、吸熱板337と発熱面336とが同一面側に設けられたペルチェ素子が実現可能である。
第2実施形態に係る撮像モジュールは、図8に示すように、センサチップの周辺回路部22Iが、パッケージ基体(52,56)に搭載されている。パッケージ基体(52,56)は、高熱伝導性の絶縁材料からなり中央部に窓部を有するベースプレート(リードフレーム)52と、このベースプレート52の上に設けられた枠体(スぺーサ)56とから、図8に示すように、センサチップと局所冷却素子33を収納する段差構造の収納部を構成している。ベースプレート52には必要本数のリード53k,53j,…が配置されている。
収納部の段差部には接続ランド39j,39kが設けられ、図示を省略した内部配線(埋込配線))により、リード53k,53j,…に電気的に、それぞれ接続されている。ベースプレート52の窓部には、撮像部22Fの裏面に光が入射可能なように、無反射コーティング(ARコーティング)が施された透明なガラス板51bが、機密性を保つようにはめ込まれている。更に、図8に示すように、第2実施形態に係る撮像モジュールはパッケージ蓋体54を備える。パッケージ蓋体54は、パッケージ基体(52,56)とともに、センサチップと局所冷却素子33を収納する閉じた空間を構成する。
図2に示すように、第2実施形態に係る撮像モジュールは、半導体基体(22F,22I)上に撮像部22Fから周辺回路部22Iまで含むように設けられた絶縁膜21を更に含む。絶縁膜21は、シリコン酸化膜(SiO2膜)等の熱伝導率が低い誘電体膜が好ましい。そして、熱分離領域が、半導体基体(22F,22I)中に撮像部22Fを囲むように設けられた溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4と、溝部又は複数の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4の上に位置する、熱伝導率が低い絶縁膜21の一部により構成される。
図7及び図8から分かるように、撮像部22Fから周辺回路部22Iに至る半導体基体(22F,22I)の表面の全面に絶縁膜21が形成され、この絶縁膜21の上にアルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の金属膜からなるボンディングパッド23k,23j,…が配置されている。図8に示すように、左側のボンディングパッド23jは、ボンディングワイヤ38jを介して、パッケージ基体(52,56)の段差部に設けられた接続ランド39jに電気的に接続され、右側のボンディングパッド23kは、ボンディングワイヤ38kを介して、パッケージ基体(52,56)の段差部に設けられた接続ランド39kに電気的に接続されている。
図7及び図8に示す構造は、図2(b)のA−A方向から見た断面図であるので、図示を省略しているが、図2(b)に示した他のボンディングパッド23k-1,23k+1,23k+2,…;23p-1,23p,23p+1,23p+2,…;23j-1,23j+1,23j+2,…;23q-1,23q,23q+1,23q+2,…についても同様に、パッケージ基体(52,56)の段差部に設けられた接続ランドにボンディングワイヤを介してそれぞれ独立した金属配線層の経路をなして、電気的に接続されていることは勿論である。
図8に示した第2実施形態に係る撮像モジュールによれば、第1実施形態に係る撮像モジュールと同様に、局所冷却素子33への小さな投入電力で撮像領域221を有効に冷却して、より効率的に撮像領域221の画素における低雑音化が実現できる上に、裏面照射を用いるイメージセンサであるにも関わらず、センサチップをパッケージ基体(52,56)に実装する際のワイヤボンディングが通常の工程で行える。現在報告されている、裏面照射イメージセンサは、センサチップの周辺にチップを貫通するビアを開孔し、このビアを用いて、フリップチップパッケージングを行うなどの複雑で歩留まりの低下の恐れのある工程となっている。第2実施形態に係る撮像モジュールによれば、センサチップのパッケージ基体(52,56)への実装が非常に簡単化される。
−第2実施形態のセンサチップの製造方法−
図7に例示したような、第2実施形態に係る撮像モジュールに用いるセンサチップは、半導体基体(22F,22I)がシリコン(Si)であれば、例えば、以下のような工程で製造可能である。
(a)先ず、通常のイメージセンサのウェハプロセスの開始時に、もしくはフィールド酸化膜形成時に、(100)面を主面とするSiウェハからなる半導体基体(22F,22I)の裏面に、予め、熱酸化膜を形成して裏面保護絶縁膜を設けておく。或いは、通常のイメージセンサのウェハプロセスに従って、半導体基体(22F,22I)表面の全面にCVD法で絶縁膜21を形成した後、半導体基体(22F,22I)の裏面にCVD法で裏面保護絶縁膜を形成する。裏面保護絶縁膜は窒化膜(Si3N4膜)とSi酸化膜(SiO2膜)の複合膜でも良い。ウェハプロセスの開始時に裏面保護絶縁膜を先行して設けた場合は、ウェハプロセスの途中で、裏面保護絶縁膜が消失しないように、裏面側を保護しながらウェハプロセスを行うか、ウェハプロセスの途中で薄くなっても、最終的に所望の厚さが残留するような十分な厚さを最初に用意しておく。
(b)その後、半導体基体(22F,22I)表面の絶縁膜21の上に表面保護フォトレジストを塗布し、更に、裏面保護絶縁膜の上に第1の裏面保護フォトレジストを塗布する。そして、フォトリソグラフィー技術により、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間の半導体基体(22F,22I)に熱分離溝(図2の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4参照)を形成するための、第1の裏面エッチングマスクを設ける。
(c)次に、第1の裏面エッチングマスクの開口部に露出した裏面保護絶縁膜を選択エッチングして、半導体基体(22F,22I)の裏面の熱分離溝開口予定箇所のSi(100)面を露出する。
(d)次に、第1の裏面保護フォトレジストと裏面保護絶縁膜の2層マスクを用いて、半導体基体(22F,22I)の裏面から、Si(100)面を異方性エッチングして、第1の裏面エッチングにより熱分離溝を形成し、撮像部22Fの厚さと周辺回路部22Iの厚さが等しいセンサチップのパターンが周期的に配列されたSiウェハを製造する。図1及び図2(a)に示した垂直側壁のエッチング形状とは異なり、Si(111)面が露出した斜めエッチング面からなる、熱分離溝が開口される。
(e)半導体基体(22F,22I)の裏面に対する第1の裏面エッチングが終了後、第1の裏面保護フォトレジストを除去し、更に第2の裏面保護フォトレジストを半導体基体(22F,22I)の裏面に塗布する。このとき、表面保護フォトレジストが痛んでいれば、表面保護フォトレジストも塗布し直す。そして、フォトリソグラフィー技術により、撮像部22Fの裏面を選択的にエッチング除去するための第2の裏面エッチングマスクを設ける。
(f)次に、第2の裏面エッチングマスクの開口部に露出した裏面保護絶縁膜を選択エッチングして、撮像部22Fの裏面のSi(100)面を露出する。
(g)次に、第2の裏面保護フォトレジストと裏面保護絶縁膜の2層マスクを用いて、半導体基体(22F,22I)の裏面から、Si(100)面を選択エッチングする第2の裏面エッチングを行い、図7に示すような、撮像部22Fの厚さが周辺回路部22Iの厚さよりも薄く、しかも撮像部22Fと周辺回路部22Iの間に熱分離溝が形成されたセンサチップのパターンが周期的に配列されたSiウェハが完成する。このSiウェハから、センサチップのパターンをダイシングにより分離すれば、
図7に例示したようなセンサチップが完成する。
以上のとおり、図7に例示したセンサチップは、Siウェハの裏面から2回のエッチングを行えば良いが、上記の説明とは逆に、先に、適切な厚さに撮像部22Fの厚みを調整する裏面エッチングを行い、その後、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間に熱分離溝を形成する異方性エッチングを行う順序等、他の製造方法でも構わない。
但し、先に撮像部22Fの厚みを調整する裏面エッチングを実施する手順の場合は、2回目の裏面エッチングのマスクを用意するに際し、撮像部22Fの裏面と、Siウェハの裏面の垂直方向の位置が異なるので、撮像部22Fや熱分離溝のパターンが微細であれば、露光器の焦点の関係を考慮して、必要が生じれば、Siウェハの裏面に塗布された裏面保護フォトレジストを2回露光してエッチングマスクを形成すれば良い。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る撮像モジュールに用いるセンサチップは、イメージセンサの撮像部22Fの裏面から(図9の下方から)光が入射する裏面照射型のイメージセンサのチップである点で、第2実施形態に係るセンサチップと同様であるが、 図9に示すように、撮像部22Fの厚さと、その周囲の周辺回路部22Iの厚さとが等しい点で、第2実施形態に係る撮像モジュールに用いられていたセンサチップと異なる。図7及び図8に示した構造は、第2実施形態に係る撮像モジュールは、パッケージ基体(52,56)へ実装するための、アセンブリ工程が楽になる利点はあるが、2回の裏面エッチングが必要になるので、センサチップの製造工程が複雑である。
第3実施形態に係る撮像モジュールに用いるセンサチップでは、撮像部22Fをなす半導体領域の上部の表面近傍に設けられたに撮像領域221に撮像部22Fの裏面側から光が到達できるように20〜30μm程度の厚みに設計される必要があるので、表面近傍に周辺回路領域222a,222cが設けられている周辺回路部22Iの厚さも同様に20〜30μm程度の厚みに厚さを調整する必要がある。図9に示すように、撮像部22Fの裏面と側面には、高不純物密度のp+層223が形成されている。p+層223は、撮像部22Fの表面からの電位をとるために必要である。
本発明の第3実施形態に係る撮像モジュールの他の特徴、即ち、センサチップが図9に示すように、半導体基体(22F,22I)の中央部に定義されたイメージセンサの撮像部22Fと、熱分離領域を介して撮像部22Fから熱的に分離されて撮像部22Fを囲むように配置されたイメージセンサの周辺回路部22Iとに分割している等の特徴は、第1及び第2実施形態に係る撮像モジュールのセンサチップと同様である。
よって、第1及び第2実施形態に係る撮像モジュールのセンサチップと同様に、熱分離領域を介することにより、撮像部22Fは、大きな発熱のあるイメージセンサの周辺回路部22Iから熱的に分離されている。又、図2(b)に示した構造と同様に、撮像部22Fを十分な強度で周辺回路部22Iが支持するため、撮像部22Fの4つの角には、半導体基体(22F,22I)を構成する半導体材料からなる接続梁が設けられている等の特徴についても、第1及び第2実施形態に係る撮像モジュールのセンサチップと同様である。
図9に示すように、第3実施形態に係る撮像モジュールは、半導体基体(22F,22I)上に撮像部22Fから周辺回路部22Iまで含むように熱伝導率が低い絶縁膜21が形成されているが、絶縁膜21の厚さを5〜10μm程度に厚く設定している。
これは、上述したように、ウェハプロセスが完了し、更に、その後のシリコンウェハの裏面のエッチングを施した後、撮像部22F及び周辺回路部22Iの厚さ、即ち、センサチップの厚さを20〜30μm程度に、非常に薄くする必要があり、センサチップのハンドリングが困難になることを回避するために、絶縁膜21の厚さで厚みを補充し、絶縁膜21の厚さを含めた厚さh=30〜40μm程度とすることにより、センサチップのハンドリングとセンサチップの機械的強度の補強をするためである。いずれにせよ、撮像部22Fと周辺回路部22Iとの間には、熱分離溝(図2(b)の空隙部22G1,22G2,22G3,22G4参照。)と、この熱分離溝の上に位置する、熱伝導率が低い絶縁膜21の一部により熱分離領域が構成される点では、第1及び第2実施形態に係る撮像モジュールのセンサチップと同様である。
図9に示す第3実施形態に係る撮像モジュールにおいても、第2実施形態に係る撮像モジュールに用いた局所冷却素子33と同様に、局所冷却素子33として、吸熱板(低温側吸熱面)と発熱板(高温側発熱面)を同一面側に有するペルチェ素子を用いる。図9に示すように、このペルチェ素子の吸熱板(低温側吸熱面)が撮像部22Fの表面に絶縁膜21を介して熱的に接続され、このペルチェ素子の発熱板(高温側発熱面)が周辺回路部22Iの表面に絶縁膜21を介して熱的に接続されている。実際には、吸熱板(低温側吸熱面)は、図示を省略した高熱伝導性接着剤を介して、撮像部22Fの表面の絶縁膜21に接着され、発熱板(高温側発熱面)が、図示を省略した高熱伝導性接着剤を介して周辺回路部22Iの表面の絶縁膜21に接着されて、熱的な接続を実現している。
第3実施形態に係る撮像モジュールは、図9に示すように、センサチップの
周辺回路部22Iが、中央部にキャビティ用段差部を有するパッケージ基体55に搭載されている。パッケージ基体55は、高熱伝導性の絶縁材料からなり中央部に窓部を有するベースプレート(リードフレーム)と、このベースプレートの上に設けられた枠体(スぺーサ)とから、図9に示すように、センサチップを、撮像部22Fの裏面にキャビティ用隙間が構成されるように収納する段差構造のキャビティ(収納部)を構成している。ベースプレートの窓部には、第2実施形態と同様に、撮像部22Fの裏面に光が入射可能なように、反射防止コーティング(ARコーティング)が施された透明なガラス板51cが、機密性を保つようにはめ込まれている。
詳細な構造の図示を省略しているが、第3実施形態に係る撮像モジュールに用いる局所冷却素子33は、図7に示した構造と同様に、熱電変換体と冷却ブロックとの間には、低熱伝導性絶縁体が挟まれているペルチェ素子であるが、中央部の撮像部22Fの位置に、下面に吸熱板(低温側吸熱面)を設けた熱電変換体を配置し、熱電変換体の周囲に高熱伝導性材料からなる放熱ブロックを配置する構造とし、熱電変換体の上面と放熱ブロックの上面を中継板で熱的に接続し、吸熱板(低温側吸熱面)と発熱板(高温側発熱面)が同一面側に設けられたペルチェ素子とすれば、図9に示した局所冷却素子33の上面に位置する中継板を、環境温度Taの放熱板とすることができるのでパッケージの構造が簡略化できる。
逆に、図7に示したのと同様に、ペルチェ素子を構成する熱電変換体を周辺回路部22Iに対応させて周辺部に配置し、この熱電変換体の高温側となる下面には、高熱伝導性材料からなる発熱板(高温側発熱面)を接合s、熱電変換体の低温側となる上面と、中央部の撮像部22Fの位置に対応させて配置した冷却ブロックの上面を中継板で熱的に接続して、吸熱板(低温側吸熱面)と発熱板(高温側発熱面)を同一面側に有するペルチェ素子の場合は、図9に示した局所冷却素子33の上面に位置する中継板が低温面になるので、低温面をキャビティを介して収納するパッケージ蓋体が必要になる。パッケージ蓋体は、パッケージ基体55とともに、センサチップと局所冷却素子33を収納する閉じた空間を構成する。
図9から分かるように、撮像部22Fから周辺回路部22Iに至る半導体基体(22F,22I)の表面の全面に絶縁膜21が形成され、この絶縁膜21の上にアルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の金属膜からなるボンディングパッド23k,23j,…が配置されている。図9に示すように、左側のボンディングパッド23jは、ボンディングワイヤ38jを介して、パッケージ基体55の他の段差部(図示省略)に設けられた接続ランドに電気的に接続され、右側のボンディングパッド23kは、ボンディングワイヤ38kを介して、パッケージ基体55の他の段差部(図示省略)に設けられた接続ランドに電気的に接続されている。
図9に示す構造は、図2(b)のA−A方向から見た断面図であるので、図示を省略しているが、図2(b)に示した他のボンディングパッド23k-1,23k+1,23k+2,…;23p-1,23p,23p+1,23p+2,…;23j-1,23j+1,23j+2,…;23q-1,23q,23q+1,23q+2,…についても同様に、パッケージ基体55の他の段差部(図示省略)に設けられた接続ランドにボンディングワイヤを介してそれぞれ独立した金属配線層の経路をなして、電気的に接続されていることは勿論である。
図9に示した第3実施形態に係る撮像モジュールによれば、第2実施形態に係る撮像モジュールと同様に、局所冷却素子33への小さな投入電力で撮像領域221を有効に冷却して、より効率的に撮像領域221の画素における低雑音化が実現でき、且つ、裏面照射型イメージセンサのセンサチップのパッケージ基体55への実装が非常に簡単化されるという第2実施形態に係る撮像モジュールと同様な特徴に加え、1回の裏面からの異方性エッチングで、熱分離構造と裏面照射構造を実現できるので、第2実施形態に係る撮像モジュールに比して、センサチップの製造工程の工程数が減り、製造歩留まりが向上する利点がある。
−第3実施形態に係る撮像モジュールの製造方法−
図10及び図11を参照して、第3実施形態に係る撮像モジュールの製造方法を説明する。なお、以下に述べる第3実施形態に係る撮像モジュールの製造方法は、一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲内であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。なお、以下の説明では、半導体基体(22F,22I)がシリコン(Si)であるとして、例示的に説明する。
(a) 厚さ450μm〜800μmのSi(100)面を主面とするn型基板26a上に、20〜30μm程度の厚さに低不純物密度のp型エピタキシャル成長層22を形成したシリコンウェハ(22,26a)を半導体基体として用意し、このシリコンウェハ(22,26a)に対し通常のCMOSイメージセンサのウェハ工程を施す。例えば、図10(a)に示すように、p型エピタキシャル成長層22の上部の表面近傍に撮像領域221、周辺回路領域222a,222c,…等を形成する。撮像領域221や周辺回路領域222a,222c,…は、現実にはミクロンレベル等の微細な寸法のp型半導体領域とn型半導体領域が複雑に組み合わせられた構造であり、図10(a)に示した断面図は模式図に過ぎない。又、図示を省略しているが、図10(a)に示したp型エピタキシャル成長層22の表面を正孔(ホール)でピニングし、暗電流を低減するため、p型エピタキシャル成長層22の表面には、ボロン(11B+)のイオン注入がなされている。そして、p型エピタキシャル成長層22の表面の全面に、CVD法で絶縁膜21を5〜10μm堆積する。絶縁膜21を5〜10μmと厚くするために、絶縁膜21のひび割れ等を防ぐため、絶縁膜21は窒化膜(Si3N4膜)、アルミナ膜(Al2O3)、Si酸化膜(SiO2膜)等の複数の材料からなる複合膜で構成するのが好ましい。絶縁膜21の上には、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金等の金属膜からなるボンディングパッド23k,23j,…が配置され、絶縁膜21中に設けられたコンタクトホールを介して、周辺回路領域222a,222c,…に電気的に接続されている。
(b)p型エピタキシャル成長層22の表面に絶縁膜21を5〜10μm堆積後、
絶縁膜21の上に表面保護フォトレジストを塗布し、n型基板26aの裏面を、図10(b)に示すように、高精度な研削及び研磨によって除去し、n型基板26bとp型エピタキシャル成長層22の合計の厚みが、50μm程度になるまで、薄くする。
(c) 更に、光の入射面となる半導体裏面の平坦性を向上させるため、電気化学的エッチング(CMP)によりn型基板26bを除去し、図10(c)に示すように20〜30μm程度の厚さのエピタキシャル成長層22だけを残す。なお、図10(c)に示す
エピタキシャル成長層22だけを残す工程をより確実に行うために、SOI基板を用いて、SOI絶縁膜としてのSi酸化膜(SiO2膜)を選択エッチングで除去する方法でも良い。
(d) その後、シリコンウェハをダイシングにより分割し、複数のセンサチップに分割するように切り出したのち、図11(a)に示すように、それぞれのセンサチップの表面側に、ペルチェ素子を局所冷却素子33として実装する。
(e)局所冷却素子33を実装後、局所冷却素子33を含めて、絶縁膜21の表面上に表面保護フォトレジストを塗布し、更に、エピタキシャル成長層22の裏面上に第1の裏面保護フォトレジストを塗布する。そして、フォトリソグラフィー技術により、撮像部22Fと周辺回路部22Iの間の半導体基体(22F,22I)に熱分離溝を形成するための、裏面エッチングマスクを設ける。次に、裏面エッチングマスクを用いて、エピタキシャル成長層22の裏面から、Si(100)面を異方性エッチングして、裏面エッチングにより熱分離溝を形成し、図11(b)に示すように、撮像部22Fの厚さと周辺回路部22Iの厚さが等しいセンサセンサチップを製造する。異方性エッチングにより、熱分離溝の表面にはSi(111)面が露出している。
(f)エピタキシャル成長層22の裏面に対する裏面エッチングが終了後、第1の裏面保護フォトレジストを除去し、更に第2の裏面保護フォトレジストをエピタキシャル成長層22の裏面に塗布する。そして、フォトリソグラフィー技術により、撮像部22Fの裏面に選択的にイオン注入するためのイオン注入用マスクを設ける。イオン注入用マスクの開口部に露出した撮像部22Fの裏面及び熱分離溝の表面(側面)に対し、イオン注入用マスクを用いて、ボロン(11B+)の選択イオン注入をする。イオン注入用マスクとしての第2の裏面保護フォトレジストを除去後、温度上昇させることなく、イオン注入されたボロンを活性化させるため、レーザアニールを撮像部22Fの裏面と側面に対して行うことにより、図11(c)に示すように、撮像部22Fの裏面と側面に高不純物密度のp+層223が形成される。
(g)そして、図9に示すように、パッケージ基体55に実装して、左側のボンディングパッド23jは、ボンディングワイヤ38jを介して、パッケージ基体55の他の段差部(図示省略)に設けられた接続ランドに、右側のボンディングパッド23kは、ボンディングワイヤ38kを介して、パッケージ基体55の他の段差部(図示省略)に設けられた接続ランドに電気的に接続すれば、図9に示す第3実施形態に係る撮像モジュールが完成する。
以上のような、第3実施形態に係る撮像モジュールの製造方法によれば、
絶縁膜21の厚さを含めたセンサチップの厚さh=30〜40μm程度となっても、センサチップのハンドリングが容易であり、センサチップの機械的強度も局所冷却素子33で補強されるので、製造歩留まりが向上する。
なお、図11(c)に示す段階の撮像部22Fの裏面及び熱分離溝の表面(側面)に対するボロン(11B+)の選択イオン注入は、通常のシリコンウェハにイオン注入するイオン注入装置では、センサチップの搭載が困難である。このため、ボロン(11B+)の選択イオン注入をするためには、専用のセンサチップ搭載冶具の用意が必要になる。専用のセンサチップ搭載冶具を用意し、イオン注入装置のウェハフォルダに、この専用のセンサチップ搭載冶具を取り付け、その後、このセンサチップ搭載冶具にセンサチップを固定する必要がある。
この点に関しては、ウェハレベル段階で、撮像部22Fの裏面及び熱分離溝の表面(側面)に対するボロン(11B+)の選択イオン注入を行った後、シリコンウェハをダイシングにより分割し、複数のセンサチップに分割するように切り出す手順でも良い。この手順の採用のためには、局所冷却素子33の厚さと同じ厚さを有し、シリコンウェハのチップ領域のレイアウトに対応した箇所に、局所冷却素子33と同一形状、同一平面サイズの孔を開口して配列した樹脂フィルムを用意すれば良い。即ち、この樹脂フィルムの開口部に、それぞれ、局所冷却素子33を埋め込んで固定し、シリコンウェハと同一サイズに外径を設定した、局所冷却素子配列板を用意しておけば、図11(a)に示すセンサチップ毎の、センサチップの表面への局所冷却素子33の実装工程を、シリコンウェハの全面に局所冷却素子配列板を貼り合わせる工程で一括に実現できる。
このように、局所冷却素子配列板を用意して、図11(a)に示す局所冷却素子33の搭載工程をウェハレベルで一括に実行した後、引き続き、裏面のエッチングとイオン注入の工程も、ウェハレベルで実行し、図11(c)に示す段階の後に、シリコンウェハと同時に局所冷却素子配列板を、ダイシングにより個々のセンサチップに分割する手順でも、図9に示す第3実施形態に係る撮像モジュールを完成させることができる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1〜第3実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
既に述べた第1〜第3実施形態の説明では、第1導電型(p型)をp型、第2導電型(n型)をn型として説明したが、第1導電型(p型)をn型、第2導電型(n型)をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。
第1実施形態では、撮像部22Fと周辺回路部22IとをつなぐAlによる金属配線層の熱伝導度KLmetalが1本の金属配線あたり2.16×10-7W/Kとなり、7000本の金属配線があるとすると、1.5×10-3W/Kと大きな値となることを示した。図2(b)に示した4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222dを例えば、図12に示すように、撮像部22F側と周辺回路部22I側に分割して両方に配置すれば、金属配線層の本数を削減して、撮像部22Fと周辺回路部22Iとの間の熱伝導度(熱コンダクタンス)をKLを削減できる。
図12に示すように、撮像部22F側に、撮像部22Fの撮像領域221の各画素とそれぞれ接続される分割周辺回路領域225a,22b,225c,225dが配置され、周辺回路部22Iには、分割周辺回路領域225a,22b,225c,225dと少ない金属配線層の本数で接続される分割周辺回路領域226a,22b,226c,226dが配置されている。例えば、撮像領域221の各画素とそれぞれ接続される水平シフトレジスタの出力段の配線を撮像部22F側に配置し、水平シフトレジスタのドライブ側を周辺回路部22Iに配置すれば、撮像部22Fと周辺回路部22Iとをつなぐ金属配線層の本数が削減できるので、撮像部22Fと周辺回路部22Iとの間の熱伝導度(熱コンダクタンス)をKLを削減できる。例えば、撮像部22Fと周辺回路部22Iとをつなぐ金属配線層の本数が1/3に削減できるので、撮像部22Fと周辺回路部22Iとの間の金属配線層による熱伝導度(熱コンダクタンス)もを1/3に削減できる。
このように、図2(b)に示した4つの周辺回路領域222a,22b,222c,222d の回路の内容を吟味し、比較的電力消費の大きな回路ブロックを周辺回路部22I側の分割周辺回路領域226a,22b,226c,226dとして配置し、比較的電力消費の小さな回路ブロックで、撮像領域221の各画素とそれぞれ接続される配線を有する回路ブロックを、撮像部22F側の分割周辺回路領域225a,22b,225c,225dとして配置することによっても、有効な熱分離が実現でき、局所冷却素子33への小さな投入電力で撮像領域221を冷却して、より効率的に撮像領域221の画素における低雑音化が実現できる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の記載に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。