JP2014025055A - インクセット、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光学濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された画像を高速に記録するのに適したインクセットの提供。
【解決手段】 第1のインク及び第2のインクで構成される水性インクジェット用のインクセットであって、前記第1のインクが、下記の条件1及び条件2を満たすことを特徴とするインクセット。
条件1:インクが、色材、フッ素系界面活性剤、及び特定の塩を含有する。
条件2:インクについて、最大泡圧法により温度25℃において測定される、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が17mN/m以上であり、かつ、寿命時間5000m秒における動的表面張力が32mN/m以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット用のインクセット、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法では様々な記録媒体への記録が可能である。そして、より良好な画像を得るため、例えば、光沢紙などに写真画質の画像を記録するのに適したインクや、普通紙などに文書を記録するのに適したインクなど、その目的に応じて種々のインクについての提案がなされている。
近年では、記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの印刷にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への使用頻度が格段に高まってきている。このような用途では、普通紙などの記録媒体に鮮明な画像を高速に記録することが重視されるため、インクには、画像の光学濃度に優れ、インクの乾燥が早く(定着性がよい)、インク間の滲み(ブリーディング)を低減可能であることが要求されている。
これらの技術課題に対し、複数のインク間における物性の関係に着目した提案がなされている(特許文献1及び2参照)。特許文献1には、1価のアニオンの塩と顔料を含有し、寿命時間50m秒における動的表面張力を高めた顔料インクと、染料インクのセットが記載されている。そして、記録媒体の表面上にインク滴が存在し、水分が蒸発していく間に、塩の作用により顔料の分散状態の不安定化を促進し、顔料を凝集させることで、高い光学濃度が得られると記載されている。さらに、顔料の凝集により染料インクとの混合も生じにくくなるため、耐ブリーディング性も向上することが記載されている。また、特許文献2には、複数のインクが混合されにくくなるようにするため、互いに反応し得る複数のインク間における接触角の関係を規定したインクセットが記載されている。そして、接触角の関係を満たす手段として、一方のインクにフッ素系界面活性剤を含有させることで、記録媒体において、このインクが付与された領域の撥水性を高め、この領域に後から付与される他方のインクの広がりを抑制することが記載されている。
また、インクにフッ素系界面活性剤を含有させることに関する提案もある(特許文献3及び4参照)。特許文献3には、滲み低減のためにインクの粘度を高めても、特定構造のフッ素系界面活性剤を使用してインクの表面張力を下げれば、インクの吐出安定性が確保され、また、画像の乾燥性も向上すると記載されている。特許文献4には、光沢紙に記録するためのインクにフッ素系界面活性剤を含有させることで、記録ヘッドにおけるインクの固着と画像のにじみが低減され、乾燥時間が短縮されると記載されている。
特開2008−308664号公報 特開2004−338392号公報 特開2003−335987号公報 特開2001−335725号公報
本発明者らの検討の結果、特許文献1及び2に記載されているように、インクの動的表面張力や接触角などの物性をコントロールすることで、画像の光学濃度と定着性の向上とブリーディングの低減はある程度図られることがわかった。しかし、この方法を利用しても、近年要求されるレベルを満足するには至っていないことがわかった。
一方、特許文献3及び4に記載されているように、インクに含有させる界面活性剤の種類を選択するという技術であっても、画像の光学濃度と定着性の向上とブリーディングの低減をすべて満足することはできない。すなわち、特許文献3及び4では、フッ素系界面活性剤を使用してインクの浸透性を高めることで、記録媒体の表面上における液体状態のインク間の接触を抑制しているので、耐ブリーディング性を向上することはできる。しかし、この方法では、インク中の色材も速やかに記録媒体に沈み込むため、画像の定着性は良化するものの、光学濃度は顕著に低下してしまう。
したがって、本発明の目的は、光学濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された画像を高速に記録するのに適したインクセット、前記インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明のインクセットは、第1のインク及び第2のインクで構成される水性インクジェット用のインクセットであって、前記第1のインクが、下記の条件1及び条件2を満たすことを特徴とする。
条件1:インクが、色材、フッ素系界面活性剤、及び塩を含有し、前記塩が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2−、CO 2−、HCO 、HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、PO 3−、HPO 2−、及びHPO からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンと、が結合して構成される。
条件2:インクについて、最大泡圧法により温度25℃において測定される、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が17mN/m以上であり、かつ、寿命時間5000m秒における動的表面張力が32mN/m以下である。
本発明によれば、光学濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された画像を高速に記録するのに適したインクセット、前記インクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、本発明における動的表面張力は、温度25℃において最大泡圧法(詳細は後述)により測定した値のことである。また、水性インクジェット用のインクセットのことを単に「インクセット」と記載することがある。
光学濃度が高く、ブリーディングの発生が抑制された画像を高速に記録するために、色材を含有するインクとは別に、インクとの反応を生じる反応液(多価金属塩や有機酸などの反応剤を含有する液体)を用いる技術がある。しかし、この場合、インクとは別の反応液を準備したり、その付与手段などを設けたりする必要があり、コストアップやインクジェット記録装置の複雑化につながりやすい。
そこで、本発明者らは、このような反応液を用いることなく、インク組成の工夫によって、上記の性能を満足するための検討を行った。その結果、特許文献1に記載されているように、塩を含有するインクの動的表面張力を特定の界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を利用してコントロールするのが有効であることを確認した。詳細には以下の通りである。
先ず、寿命時間の初期(最大泡圧法により動的表面張力を測定する際の50m秒、以下も同様)において、インクの動的表面張力を高めておくことで、記録媒体に付与されたインクの浸透が抑制される。そして、記録媒体の表面上にインクの液滴が存在する間にインクから水などの水性媒体が蒸発していき、この間に、塩(電解質)の作用により色材が凝集し、その凝集物が記録媒体の表面上に効率よく存在するようになるため、画像の光学濃度が向上する。さらに、色材の凝集が速やかに生じるため、複数のインクが記録媒体に付与された直後のインク間の混合が抑制され、耐ブリーディング性も良化する。
その後、時間の経過とともにインクの動的表面張力を下げ、寿命時間の経時(最大泡圧法により動的表面張力を測定する際の5000m秒、以下も同様)において、インクの動的表面張力を低くする。すると、インク中の水性媒体が記録媒体に速やかに吸収され、固液分離が促進され、画像の定着性が向上する。このように画像の定着性が向上すると、記録直後に画像に触れても色材が削れにくくなるため、高速記録への適用も可能となる。
上述の通り、インクの動的表面張力のコントロールは有用であるので、本発明者らは、特許文献1に記載された技術についてさらに詳細に検討した。その結果、インクセットを構成する少なくとも1種のインク(第1のインク)の寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力やその関係を以下のようにコントロールすることで、光学濃度、耐ブリーディング性、及び定着性をさらに向上できる場合があるという知見を得た。具体的には、インクについて、最大泡圧法により測定される、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が17mN/m以上であり、かつ、寿命時間5000m秒における動的表面張力が32mN/m以下であると、上記の各特性が向上する場合があることを見出した。
しかし、これだけでは近年要求されるレベルを満足しない場合が存在することもわかった。そこで、本発明者らがさらに検討を行ったところ、上記の動的表面張力を満たすためにインクに含有させる成分としてフッ素系界面活性剤を選択する必要があるという結論に至った。つまり、インクセットを構成する少なくとも1種のインク(第1のインク)が、色材、フッ素系界面活性剤、及び特定の塩を含有するという条件1と、上述の条件2を共に満たすことが必要である。
本発明においては、上述の条件2を満たすようにインクの動的表面張力をコントロールしつつ、この条件2を満たすために必要な成分ともなる、色材、フッ素系界面活性剤、及び塩を含有させる。この場合、これらの3つの成分が相互に作用を及ぼし合い、近年要求されるレベルの光学濃度、耐ブリーディング性、及び定着性を有する画像を得るという顕著な効果が得られるのである。以下に、本発明者らが推定している、上記効果が得られるメカニズムを、3つの成分において生じる相互作用を中心に説明する。
先ず、フッ素系界面活性剤と塩との相互作用について説明する。ここで、本発明でインクの特性を規定するのに利用する動的表面張力とは、最大泡圧法により求められるものである。最大泡圧法とは、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端に発生させた気泡を放出するために必要な最大圧力を測定して、この最大圧力から液体の表面張力を求める方法であり、プローブの先端に連続的に気泡を発生させながら最大圧力を測定する。この際、プローブの先端に新たな気泡の表面が発生した時点から、最大泡圧(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)に達するまでの時間を、寿命時間と呼ぶ。
つまり、最大泡圧法は、液体に動きがある状態での表面張力を測定する方法である。この測定原理から、インクの動的表面張力は、新たに発生した気液界面に向かって、インク中の界面活性剤の分子が配向していく速度、すなわち、気液界面への界面活性剤の配向のしやすさに相関があると言える。そして、寿命時間の経過に伴う液体の動的表面張力の変化は、インクが記録媒体に付与されてから浸透していく過程のような、液体の動きが徐々に収まっていく過程での表面張力の変化を模していることになる。
本発明者らの検討の結果、ある種のフッ素系界面活性剤と塩とが共存するインクでは、短い時間スケールにおいては、塩との相互作用によってフッ素系界面活性剤の気液界面への配向速度が下がり、初期の動的表面張力が高く保たれやすくなることがわかった。このような現象が生じる理由は以下のように推測される。
塩を含有するインク中では、塩(電解質)の影響を受けて、界面活性剤は均一ではなく、ある程度の濃度分布を持って存在する。特許文献1において利用されているようなポリオキシエチレンアルキルエーテルなど、フッ素系ではない界面活性剤の場合、インク中の塩による界面活性剤の分布状態への影響はそれほど大きくない。したがって、インクに動きがある状態でも一部の界面活性剤の分子は「正吸着」という現象を生じ、気液界面に配向し、界面活性能が発揮されるため、初期における動的表面張力が相対的に低くなる。
一方、ある種のフッ素系界面活性剤の場合、インクに動きがある状態では、塩の存在により「負吸着」という現象を生じ、気液界面ではなくインク滴の内部に界面活性剤の分子が配向しやすくなる。このため、界面活性能が発揮されず、初期における動的表面張力が相対的に高くなる。その後、塩との相互作用により負吸着を生じていたフッ素系界面活性剤は、寿命時間の経過とともに徐々に正吸着を生じ、気液界面に配向してくため、経時におけるインクの動的表面張力は急激に低くなる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのフッ素系ではない界面活性剤と比較すると、フッ素系界面活性剤はその界面活性能が高いため、経時におけるインクの動的表面張力はフッ素系界面活性剤を使用した場合のほうが低くなる。これに加えて、フッ素系界面活性剤を含有するインクの場合、塩が共存しない場合と共存する場合とを比較すると、後者のほうが寿命時間5000m秒における動的表面張力が低くなりやすい。この理由はわかっていないが、塩の存在により、より多くのフッ素系界面活性剤の分子が気液界面に配向するようになっているためであると考えられる。そして、経時におけるインクの動的表面張力が低くなるため、画像の定着性を顕著に向上することができる。
塩とフッ素系界面活性剤という相互作用が生じる組み合わせによってインクの動的表面張力をコントロールすることが、本発明において極めて重要である。この組み合わせによれば、従来の界面活性剤と塩の組み合わせと比較して、初期と経時の動的表面張力の差をより大きくしやすく、また、経時の動的表面張力をより低くしやすい、つまり、条件2を満たしやすいため、本発明の効果が得られやすくなるのである。
ここで、条件2を満たすためには、特許文献1に記載されているようにポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用することも可能ではある。しかし、上述の通り、フッ素系界面活性剤と塩の相互作用を利用すれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルよりも少ない界面活性剤量で条件2を満たし得るため、例えば、インクの保存安定性の観点でも有利であると言える。色材種やその溶解・分散の状態にもよるが、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは条件2を達成し得るような含有量とすると、色材に接近して存在する界面活性剤の分子が多くなり、色材の溶解・分散状態が不安定化されやすくなる場合がある。一方、塩(電解質)による色材の凝集促進作用は色材間の距離の影響を受ける。そして、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの作用と塩の作用とのバランスが取れていないと、インク中において色材が凝集し、インクの保存安定性が低下しやすい。この点、フッ素系界面活性剤と塩の相互作用を利用すれば、条件2を満たすために必要となる界面活性剤量も少なくてすむため、インクの保存安定性の低下という問題も生じにくい。
次に、塩と色材との相互作用について説明する。インクの初期の動的表面張力が高い間に塩の作用により色材を凝集させるというメカニズムは先に述べた通りである。本発明においては、インクが、フッ素系界面活性剤と塩との相互作用により条件2を満たすため、初期の動的表面張力がより高くなりやすく、塩によって色材が凝集するための時間も長く確保しやすい。さらに、後述する色材とフッ素系界面活性剤との相互作用も相まって、画像の光学濃度と耐ブリーディング性を顕著に向上することができる。
最後に、色材とフッ素系界面活性剤との相互作用について説明する。界面活性剤はその構造中に疎水性基及び親水性基を有することで、界面活性能を有する化合物である。界面活性剤の疎水性基は、有機化合物である色材の炭素などの疎水性部分と疎水性相互作用によって引き合うため、互いに接近して存在する。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやアセチレングリコール系などのインクジェット用のインクに一般的に使用される炭化水素系の界面活性剤の疎水性基は炭化水素基である。したがって、これらの界面活性剤は色材に接近して存在しているので、塩による色材の凝集が相対的に阻害されやすい。一方、フッ素系界面活性剤の疎水性基は、炭化水素基の他にパーフルオロ基を有する。このパーフルオロ基のフッ素原子は電気陰性度が高いため、フッ素系界面活性剤は色材よりも水分子との親和性が高く、フッ素系界面活性剤は色材の付近には存在しづらいので、塩による色材の凝集が阻害されず、効率よく生じる。このような色材とフッ素系界面活性剤の相互作用が生じるため、画像の光学濃度と耐ブリーディング性を顕著に向上することができる。
これまでに述べてきたように、本発明においては、条件2を満たすようにインクの動的表面張力をコントロールする。そして、この条件2を満たすために必要な成分ともなる、色材、フッ素系界面活性剤、及び塩というインク中の3つの成分において生じる相互作用を利用する。つまり、本発明においては、第1のインクが条件1及び条件2の両方を同時に満たすことによって、近年要求されるレベルの光学濃度、耐ブリーディング性、及び定着性を有する画像を得るという顕著な効果が得られるのである。
<インクセット>
本発明のインクセットは、下記の条件1及び条件2を満たす第1のインクと、それとは別の第2のインクの組み合わせを有する。
条件1:色材、フッ素系界面活性剤、後述する特定の塩を含有するインクである。
条件2:寿命時間5000m秒におけるインクの動的表面張力が32mN/m以下であり、かつ、寿命時間50m秒及び5000m秒におけるインクの動的表面張力の差が17mN/m以上である。
上述のメカニズムから明らかであるように、第2のインクも上記の条件1及び条件2を満たす場合には、第2のインクで記録される画像の光学濃度及び定着性も向上し、また、耐ブリーディング性についてもより高いレベルで得ることができる。また、本発明における条件1及び条件2についてのより好ましい態様は、第1のインク及び第2のインクのいずれについても適用可能であり、各インクがいずれもより好ましい態様を満足する場合には、さらに高い効果を得ることができる。
本発明のインクセットを構成する第1のインク及び第2のインクの色相は特に限定されず、同一の色相であっても、また、互いに異なる色相であってもよい。各インクの色相は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、及びブルーなどから適宜に決定することができる。各インクが同一の色相を有する場合には、このように分類される色相の範囲内において、各インクが互いに同じ色相に分類されることを意味する。一方、各インクが互いに異なる色相を有する場合には、このように分類される色相の範囲内において、異なる色相に分類されることを意味する。また、各インクが互いに同一の色相を有する場合には、インクの濃さが互いに異なる、いわゆる濃インク及び淡インクの組み合わせであってもよい。
本発明においては、第1のインク及び第2のインクが、互いに異なる色相を有していることが好ましい。また、一方のインクがブラックインクであり、他方のインクがカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、及びブルーなどの色相を有するインク)であることが好ましい。このような場合はブリーディングが目立ちやすいものの、第1のインクが条件1及び条件2を満たしているため、このような場合であっても、耐ブリーディング性を向上することができるためである。
以下、本発明のインクセットを構成するインクの動的表面張力の特性や、インクに使用可能な成分などについて説明する。
(動的表面張力の特性)
第1のインクは、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が17mN/m以上であり、かつ、寿命時間5000m秒における動的表面張力が32mN/m以下であるという条件2を満たす必要がある。
初期の動的表面張力が高いと、塩によって色材が凝集するための時間も長く確保しやすく、画像の光学濃度をより高いレベルで得ることができる。したがって、第1のインクの寿命時間50m秒における動的表面張力は50mN/m以上であることがより好ましい。
また、初期と経時での動的表面張力の差があまりに大きすぎると、経時における動的表面張力がかなり低下することになる。この場合、初期の動的表面張力が高く、画像の光学濃度が向上しやすいインクであっても、記録媒体への水性媒体の急激な浸透に伴って、凝集した色材も記録媒体に沈み込むため、光学濃度がやや低下する場合がある。したがって、第1のインクの寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差は、23mN/m以下であることがより好ましい。
インクセットを構成する各インクの25℃における静的表面張力は、一般的なインクジェット用のインクと同等とすればよく、例えば、25mN/m以上65mN/m以下であることが好ましい。なお、本技術分野の文献などにおいて単に「表面張力」と記載されているのは、通常、ウィルヘルミー法(プレート法)などの原理で測定される「静的表面張力」であり、本発明で利用する「動的表面張力」とは異なる物性である。
(色材)
インクの色材としては、染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、食用染料など)や、顔料(無機顔料、有機顔料など)が挙げられる。インク中の色材の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、得られる画像の堅牢性や光学濃度の観点から、色材として顔料を用いることが好ましい。また、インクの調色や顔料の分散性向上などのために、顔料に加えてさらに染料を併用してもよい。顔料の種類としては、公知の顔料をいずれも使用することができ、例えば、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンなどの有機顔料が挙げられる。
顔料の分散方式としては、例えば、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料、顔料粒子の表面に親水性基が結合している自己分散顔料などが挙げられる。また、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料、顔料粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などが挙げられる。勿論、分散方式の異なる顔料を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合している自己分散顔料や、分散剤である樹脂を顔料粒子の表面に物理的に吸着させ、この樹脂の作用により顔料粒子を分散させる樹脂分散顔料を用いることが特に好ましい。
自己分散顔料としては、例えば、−COO(M)、−SO(M)、−POH(M)、−PO(Mなどのアニオン性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合しているものが挙げられる。Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;アンモニウム(NH);メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アンモニウムが挙げられる。アニオン性基が塩を形成している場合、インク中の塩は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。また、他の原子団(−R−)としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;アミド基;スルホニル基;アミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基などが挙げられる。また、これらの基を組み合わせた基などが挙げられる。
樹脂分散顔料としては、親水性ユニットと疎水性ユニットとの共重合体を樹脂分散剤として用い、この樹脂分散剤を顔料粒子の表面に物理的に吸着させることによって、顔料が分散されているものが挙げられる。樹脂分散剤としては、インクジェット用のインクに使用可能な公知の共重合体をいずれも用いることができる。好適な樹脂分散剤としては、以下に挙げるような親水性ユニット及び疎水性ユニットを有する共重合体が挙げられる。親水性ユニットとしては、(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性単量体に由来するユニットが挙げられる。また、疎水性ユニットとしては、スチレンやその誘導体、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステルなどの脂肪族基を有する単量体などの疎水性単量体に由来するユニットが挙げられる。樹脂分散剤の重量平均分子量は、1000以上30000以下、さらには3000以上15000以下であることが好ましい。また、樹脂分散剤の酸価は、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。
(フッ素系界面活性剤)
本発明のインクには、フッ素系界面活性剤を含有させる。本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たすためには、塩を併用したうえで、フッ素系界面活性剤の含有量や種類を適宜に決定することが重要である。インク中のフッ素系界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.060質量%以上1.000質量%以下、さらには0.060質量%以上0.100質量%以下、特には0.060質量%以上0.080質量%以下であることが好ましい。フッ素系界面活性剤の含有量が0.060質量%未満であると、フッ素系界面活性剤の種類にもよるが、本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たしづらくなる場合がある。一方、フッ素系界面活性剤の含有量が1.000質量%超であると、インクの浸透性が高くなりすぎて、高いレベルの画像の光学濃度が十分に得られなくなる場合がある。また、含有量が多すぎると、フッ素系界面活性剤が記録ヘッドの吐出口が形成された面に付着し、インクの吐出よれが生じやすくなることがあるが、含有量が0.100質量%以下であるとこのような現象も生じにくいため、好適である。なお、フッ素系界面活性剤は一般的に界面活性能に優れるため、インクジェット用のインクに汎用の他の界面活性剤と比較して、フッ素系界面活性剤はより少ない含有量でインクの動的表面張力を所望の値に調整することができる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸又はその塩[C2x+1−(CH−COOM]、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物[C2x+1−(CH−(OCHCH−OH]、パーフルオロアルキルリン酸エステル又はその塩[C2x+1−(CH−O−PO(OM)]、パーフルオロアルキルスルホン酸又はその塩[C2x+1−(CH−SOM]などが挙げられる。
本発明において使用するフッ素系界面活性剤は、疎水性基に含まれる炭化水素基(アルキレン基)が長すぎると、炭化水素系の界面活性剤と同様の挙動を示し、色材に接近して存在しやすくなるので、塩による凝集が生じにくくなる。したがって、親水性が高くなるように、パーフルオロ基とアルキレン基の鎖長のバランスや、フッ素系界面活性剤の分子構造の大きさを選択することが好ましい。このため、上記の各式中のx、y、z及びMはそれぞれ以下のようなものが好ましい。
xはパーフルオロ基の鎖長を示し、4以上8以下、さらには4以上6以下が好ましい。xが3以下であると、それ以外の構造にも依存するが、フッ素系界面活性剤の親水性が高くなりやすく、本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たしづらくなる場合がある。一方、xが9以上であると、フッ素系界面活性剤の疎水性が高くなりすぎて、記録ヘッドの吐出口が形成された面に付着し、インクの吐出よれが生じやすくなる場合がある。yはアルキレン基の鎖長を示し、1以上6以下が好ましい。zはエチレンオキサイド基の数を示し、1以上50以下、さらには1以上20以下、特には1以上10以下が好ましい。Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アンモニウム(NH)、又は有機アンモニウム(メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)を表す。
本発明においては、上記で挙げたフッ素系界面活性剤の中でも、パーフルオロアルキルカルボン酸又はその塩、並びに、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。これらのフッ素系界面活性剤は、塩との相互作用が特に顕著に発揮され、本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たしやすくなり、本発明の効果を極めて高いレベルで得ることができるためである。さらには、分子構造がコンパクトであり、インクの動的表面張力の特性を特にコントロールしやすいため、パーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の少なくとも一方を用いることが特に好ましい。
(カチオンとアニオンとが結合して構成される塩)
本発明のインクには、特定の塩を含有させる。本発明では、塩と色材との相互作用に加えて、塩とフッ素系界面活性剤との相互作用が相まって初めて、上記で説明した効果を得ることができる。なお、塩は、色材との相互作用による色材の凝集と、フッ素系界面活性剤との相互作用による負吸着と、を促進すべく、インク中の溶質(電解質)濃度を高めるためにインクに含有させる。したがって、このような目的からは、塩を構成するアニオンやカチオンの種類よりも、インク中の溶質(電解質)濃度、つまり塩が解離したアニオン及びカチオンの合計のモル数のほうが支配的であると言える。
本発明のインクに含有させる塩は、カチオンとアニオンとが結合して構成されるものである。カチオンは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、アニオンは、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2−、CO 2−、HCO 、HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、PO 3−、HPO 2−、及びHPO からなる群から選ばれる少なくとも1種である。インク中における塩の形態は、その一部が解離した状態、又は全てが解離した状態のいずれの形態であってもよい。
塩を構成するカチオンは、1価のカチオンであり、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン(NH )、及び有機アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられる。また、有機アンモニウムイオンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類;などのカチオンが挙げられる。
カチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、1価のカチオンを(M)として表すと、以下のものが挙げられる。例えば、(M)Cl、(M)Br、(M)I、(M)ClO、(M)ClO、(M)ClO、(M)ClO、(M)NO、(M)NO、(MSO、(MCO、(M)HCO、HCOO(M)、(COO(M))、COOH(COO(M))、CHCOO(M)、C(COO(M))、CCOO(M)、C(COO(M))、(MPO、(MHPO、(M)HPOが挙げられる。本発明においては、これらの中でも、カルボン酸基を有するアニオンの塩、硫酸イオンの塩が好ましい。
インク中の塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上2.0質量%以下、さらには0.1質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。塩の含有量が0.05質量%未満であると、フッ素系界面活性剤の種類にもよるが、本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たしづらくなる場合がある。一方、塩の含有量が2.0質量%超であると、塩の種類にもよるが、高いレベルのインクの吐出特性が十分に得られない場合がある。
(水性媒体)
本発明のインクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。水性媒体には、さらに水溶性有機溶剤が含まれていることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、従来、インクジェット用のインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。具体的には、例えば、1価や多価のアルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができ、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、25℃における蒸気圧が水よりも低い水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
本発明においては、水溶性有機溶剤として、2−ピロリドンなどの含窒素極性化合物類を用いることが特に好ましい。インクにこのような水溶性有機溶剤が含まれていると、フッ素系界面活性剤の溶解性が高まるため、条件2を満たすインクとすることが特に容易に達成できるためである。
上述の通り、本発明で規定するインクの動的表面張力の特性(条件2)を満たすためには、塩を併用したうえで、フッ素系界面活性剤の含有量や種類を適宜に決定することが重要である。しかし、浸透性の高い水溶性有機溶剤を多量に使用すると、特に寿命時間50m秒における動的表面張力の値が低くなりやすく、結果として寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が小さくなりやすい。したがって、浸透性の高い水溶性有機溶剤を使用する場合にはその含有量を厳密にコントロールすることが好ましい。このような浸透性の高い水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール、1,2−アルカンジオール、グリコールエーテル類などが挙げられる。なお、三次元的に大きな構造を有し、ミセルを形成しづらい界面活性剤を使用する場合にも、浸透性の高い水溶性有機溶剤と同様の理由により、その含有量の決定に当たっては注意が必要である。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤など、種々の添加剤を含有してもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、複数のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法であり、前記複数のインクとして、上記で説明した本発明のインクセットを構成する第1のインク及び第2のインクを用いる。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクセットを構成する各インクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
上述のメカニズムを考慮すると、浸透性を有する記録媒体に画像を記録するために上記で説明した本発明のインクを用いることがより好ましい。このような記録媒体としては、光沢紙や普通紙が挙げられるが、中でも普通紙を用いることが特に好ましい。勿論、本発明のインクジェット記録方法において使用することができる記録媒体はこれらに限られるものではない。
以下、実施例、比較例、及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「%」や「部」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水溶性樹脂であるスチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(組成(モル)比33:44:23)を中和当量1となる水酸化カリウムを用いてイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の重量平均分子量は5,000であり、酸価は125mgKOH/gである。顔料(C.I.ピグメントレッド122)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、水55.0部の混合物を、ジルコニアビーズを充填したビーズミルに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、顔料分散液1を得た。顔料分散液1中の顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は6.0%であった。
(顔料分散液2)
5.5gの水に2.5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で0.8gのp−アミノ安息香酸を加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態にし、これに5℃の水9gに0.9gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、9gの顔料(カーボンブラック)を撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、顔料粒子の表面に−C−COONa基が結合している自己分散顔料を調製した。これに適量のイオン交換水を加えて、顔料分散液2を得た。顔料分散液2中の顔料の含有量は15.0%であった。
(顔料分散液3)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(組成(モル)比33:67)を中和当量1となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の重量平均分子量は10,000であり、酸価は200mgKOH/gである。顔料(カーボンブラック)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、水55.0部の混合物を、サンドグラインダーに入れ、1時間時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、顔料分散液3を得た。顔料分散液3中の顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は6.0%であった。
<界面活性剤>
インクの調製に使用した界面活性剤の構造を表1に示す。アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物としては、アセチレノールE100(川研ファインケミカル製)を用いた。
<インクの調製>
表2〜4の上段に示す各成分(単位:%)を混合して十分に撹拌した後、ポアサイズ1.20μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)で加圧ろ過を行って各インクを調製した。インク1〜17はマゼンタの顔料又は染料を含有するマゼンタインクであり、インク18〜38はカーボンブラックを含有するブラックインクである。
インク5、6及び17のC.I.アシッドレッド289の含有量(〔*〕で表記)は、顔料分散液1の含有量が20.0%である他のマゼンタインクと同等の吸光度を示す含有量とした。この際、吸光度は、イオン交換水を用いてインクを2000倍に希釈した液体について、波長510〜550nmにおいて測定した吸光度のうちの最大値とした。なお、イオン交換水の「残部」とは、インク組成の全量が100.0%となる差分の含有量を示す。
また、表2〜4の下段には、寿命時間50m秒及び5000m秒における各インクの動的表面張力の値と、これらの差の値(Δ動的表面張力と表記)を示した。インクの動的表面張力は、最大泡圧法を利用して液体の動的表面張力を測定する装置(Bubble Pressure Tensiometer BP2;KRUSS製)を用いて、25℃において測定を行った。
<評価>
表5に示すインクA及びインクBの組み合わせをインクセットとした。インクセットを構成する各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS MX7600;キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、解像度が600dpi×600dpiであり、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの体積が5.5pLのインクを2滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。温度23℃、相対湿度55%の環境で、上記のインクジェット記録装置を用いて、記録媒体(普通紙)(PBPAPER GF−500;キヤノン製)に、各評価で使用する画像を記録した記録物を作製した。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、Cを許容できないレベル、(AA、)A、及びBを許容できるレベルとした。評価結果を表5に示す。
なお、表5には、インクセットを構成するインクが、条件1及び条件2を満たす場合をY、条件1及び条件2の少なくともいずれかを満たさない場合をNとして表記した。つまり、Yと表記されるインクは、本発明における第1のインクに該当するものであり、インクセットを構成する両方のインクがYと表記される場合、第2のインクも条件1及び条件2を満たすことになる。
(光学濃度)
光学濃度の評価には、記録デューティが200%であるベタ画像を記録した記録物を用いた。得られた記録物は、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。その後、分光光度計(Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で、記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定し、光学濃度の評価を行った。評価基準は以下の通りである。なお、インクの色ごとに評価基準を設けているのは、人間の視覚特性において許容できるレベルがブラックとカラーとで異なるためである。
〔カラーインクの場合の評価基準〕
A:光学濃度が1.20以上であった。
B:光学濃度が1.15以上1.20未満であった。
C:光学濃度が1.15以下であった。
〔ブラックインクの場合の評価基準〕
A:光学濃度が1.50以上であった。
B:光学濃度が1.40以上1.50未満であった。
C:光学濃度が1.40未満であった。
(定着性)
定着性の評価には、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した記録物を用いた。記録の10秒後に、記録物におけるベタ画像の部分にシルボン紙と面圧40g/cmの錘とを載せ、ベタ画像をシルボン紙で擦った。記録物の非記録部分の汚れの程度を目視で確認して、定着性の評価を行った。評価基準は以下の通りである。なお、このような評価方法により許容できる定着性を有する場合、インクの乾燥が早く、高速記録に適用可能であることを意味する。
A:記録物の非記録部分が汚れていなかった。
B:記録物の非記録部分に軽微な汚れがあった。
C:記録物の非記録部分に明らかな汚れがあった。
(耐ブリーディング性)
耐ブリーディング性の評価には、ブラックインクの記録デューティが150%であるベタ画像と、カラーインクの記録デューティが100%であるベタ画像とがそれぞれ隣接するパターンを記録した記録物を用いた。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた後、各ベタ画像の境界部分を目視で確認して、耐ブリーディング性の評価を行った。評価基準は以下の通りである。
AA:ブリーディングが発生していなかった。
A:軽微なブリーディングが発生していた。
B:ブリーディングが発生していたが、各ベタ画像の境界ははっきりしていた。
C:ブリーディングが発生していて、各ベタ画像の境界がわからなかった。
表5から明らかであるように、条件1及び条件2を満たす(第1の)インクは、光学濃度が高い画像を高速に記録するのに適し、このような(第1の)インクを有するインクセットでは、ブリーディングの発生が抑制された画像を記録可能であった。なお、インク4、8、21、24では、フッ素系界面活性剤が記録ヘッドの吐出口が形成された面に付着し、軽微なインクの吐出よれが生じていた。

Claims (7)

  1. 第1のインク及び第2のインクで構成される水性インクジェット用のインクセットであって、
    前記第1のインクが、下記の条件1及び条件2を満たすことを特徴とするインクセット。
    条件1:インクが、色材、フッ素系界面活性剤、及び塩を含有し、前記塩が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2−、CO 2−、HCO 、HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、PO 3−、HPO 2−、及びHPO からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンと、が結合して構成される。
    条件2:インクについて、最大泡圧法により温度25℃において測定される、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が17mN/m以上であり、かつ、寿命時間5000m秒における動的表面張力が32mN/m以下である。
  2. 前記条件2において、寿命時間50m秒における動的表面張力が50mN/m以上である請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記条件2において、寿命時間50m秒及び5000m秒における動的表面張力の差が23mN/m以下である請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩、並びに、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記色材が、顔料である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記第2のインクが、前記条件1及び前記条件2を満たす請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 複数のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出させて記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、
    前記複数のインクとして、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクセットを構成する第1のインク及び第2のインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
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