JP2023048994A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制して、発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供する。【解決手段】自己分散型のカーボンブラック及びアクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。カーボンブラックのDBP吸油量が、120mL/100g以上であり、アクリル樹脂粒子のガラス転移温度が、30℃以上であり、樹脂粒子の含有量(質量%)が、カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、近年、文字や図表を含むビジネス文書を普通紙などの記録媒体に印刷する用途での利用機会が増加しており、このような用途においては、発色性や堅牢性に優れた画像を記録しうる水性インクが求められる。発色性などの特性に優れた画像を記録する際には、顔料を色材として用いた顔料インクが使用されることが多い。そして、ブラックインクでは、主としてカーボンブラックが顔料として使用される。カーボンブラックを顔料とするインクで記録される画像の発色性向上は特に重要な課題であり、これまでも様々な検討がなされてきた。
例えば、DBP吸油量が高く、ストラクチャーの大きい自己分散型のカーボンブラックを含有するインクジェット用の水性インクが提案されている(特許文献1)。また、カーボンブラック、青色染料を有する樹脂粒子、及び蛍光増白剤を有する樹脂粒子を含有するインクジェット用のブラックインクが提案されている(特許文献2)。このブラックインクを用いると、蛍光増白剤の青味の蛍光とカーボンブラック由来の黄赤味のブロンズ光が加法混色されて白色に近づき、ブロンズ現象が抑制されて画像の発色性が向上するとしている。
特開2017-136846号公報 特開2019-143095号公報
本発明者らは、特許文献1で提案された水性インクについて検討した。その結果、ある程度発色性の良好な画像を記録可能ではあったが、記録媒体の表面上に存在するカーボンブラックに由来して生ずるブロンズ現象によって、発色性の向上効果が必ずしも十分でないことがわかった。さらに、本発明者らは、特許文献2で提案されたブラックインクについても検討した。その結果、ストラクチャーが大きいカーボンブラックの自己分散顔料を用いた場合にはブロンズ現象を十分に抑制することができず、発色性の向上効果が不足することが判明した。
したがって、本発明の目的は、カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制して、発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、自己分散型のカーボンブラック及びアクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記カーボンブラックのDBP吸油量が、120mL/100g以上であり、前記アクリル樹脂粒子のガラス転移温度が、30℃以上であり、前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とするインクジェット用インクが提供される。
本発明によれば、カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制して、発色性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット用の水性インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
カーボンブラックを含有するインクによって記録される画像において生ずるブロンズ現象は、従来、主に、光沢紙などの表面光沢を有する記録媒体に記録した、光沢を示す画像において対処が検討されてきた課題であった。本発明者らの検討の結果、普通紙などの表面光沢を有しない記録媒体に記録した、光沢を示さない画像においてもブロンズ現象が生じており、これが発色性低下の要因のひとつとなることがわかった。
ブロンズ現象とは、記録媒体上に存在する顔料の粒子表面における屈折率が波長依存性を有することに起因して、反射光が本来の色とは異なる色に見える現象をいう。このため、記録媒体の表面上において、顔料の粒子表面の露出量が多いほど、ブロンズ現象が顕著に生ずると考えられる。
本発明者らは、カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制し、光学濃度の高い、発色性に優れた画像を記録しうるインクについて検討した。その結果、DBP吸油量120mL/100g以上であるカーボンブラックの自己分散顔料と、アクリル樹脂で形成されたガラス転移温度30℃以上の樹脂粒子とを併用することを見出した。さらに、樹脂粒子の含有量(質量%)を、カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下とすることが有効であることを見出し、本発明に至った。
カーボンブラックは、一次粒子が数個から数十個連なり、房状のストラクチャーを形成した状態で水性媒体中に分散している。カーボンブラックのストラクチャーの大きさは、カーボンブラックのDBP吸油量により把握することができる。具体的には、DBP吸油量の値が高いほどストラクチャーが大きく、嵩高い構造を有するカーボンブラックであることを意味する。ストラクチャーが大きいカーボンブラックの自己分散顔料を用いると、画像の発色性を向上させることができる。この理由は、インクが記録媒体に付与された後、インク中の水などの液体成分の蒸発によりカーボンブラックの凝集が促進され、凝集したカーボンブラックが記録媒体の表面上に残りやすくなるためであると考えられる。しかし、検討の結果、カーボンブラックが記録媒体の表面上に残りやすくなることで、カーボンブラック由来のブロンズ現象が顕著に発生し、画像が赤色から黄色の色味を帯びるとともに、発色性の向上が妨げられることがわかった。そこで、本発明者らは、記録媒体の表面上に形成される顔料層の表面に露出する顔料の量を減少させることについて検討した。
検討の結果、本発明者らは、一定値以上のガラス転移温度を持ったアクリル系の樹脂粒子をインクに特定量添加することで、カーボンブラック由来のブロンズ現象の発生を抑制しうることを見出した。このメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。記録媒体の表面上に形成される顔料層内に粒子状の樹脂が存在することで、顔料層の厚みが増大するとともに顔料層中の顔料の密度が低下する。これにより、顔料層の表面に露出する顔料の量が減少し、ブロンズ現象が抑制されると推測される。上記のような効果を得るには、粒子状のアクリル樹脂粒子が顔料層内に存在することを要すると考えられる。このためには、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)が30℃以上であることを要する。一般的な記録環境の温度は高めに見積もっても30℃であるため、本発明においては、記録環境において樹脂粒子が粒子の形状を保っていることを特定するために、樹脂粒子のガラス転移温度が30℃以上である、と規定している。アクリル樹脂で形成される樹脂粒子のガラス転移温度が30℃未満であると、樹脂粒子が粒子状を維持した状態で顔料層内に残りにくくなり、ブロンズ現象を抑制することができなくなる。また、樹脂粒子は、アクリル樹脂で形成されていることが必要である。ワックス樹脂粒子などのアクリル樹脂以外の樹脂で形成された樹脂粒子を用いると、ブロンズ現象を抑制することができず、画像の発色性も低下する。
樹脂粒子の含有量(質量%)は、カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを要する。上記の質量比率が0.10倍未満であると、カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制することができず、画像の発色性が低下する。一方、上記の質量比率が2.0倍超であると、ブロンズ現象は抑制しうるが、樹脂粒子の色味の影響により、画像の発色性が低下する。
カーボンブラックのDBP吸油量は、120mL/100g以上である。カーボンブラックのDBP吸油量が120mL/100g未満であると、凝集が弱く、記録される画像の発色性を向上させることができない。
<水性インク>
本発明のインクは、自己分散型のカーボンブラック及びアクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。カーボンブラックのDBP吸油量は120mL/100g以上であり、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は30℃以上である。そして、樹脂粒子の含有量(質量%)は、カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下である。以下、インクを構成する各成分について、それぞれ説明する。
(顔料)
インクは、自己分散型のカーボンブラックを含有する。カーボンブラックとしては、インクジェット用のインクに使用可能なものであれば、いずれも用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、及びサーマルブラックなどを挙げることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。インクには、調色などの目的のために染料などをさらに含有させてもよい。
自己分散型のカーボンブラックは、カーボンブラックの粒子表面にアニオン性基などの親水性基が直接又は他の原子団を介して結合した自己分散顔料である。自己分散顔料を含有するインクは、記録媒体に付与された後に水などの液体成分が蒸発することによって、粘度上昇や顔料の会合及び凝集などの状態変化が生じやすい。このため、自己分散型のカーボンブラックを用いることで、光学濃度が高く、発色性に優れた画像を記録しうるインクとすることができる。一方、自己分散型のカーボンブラックではなく、樹脂分散型のカーボンブラックを用いると、記録される画像の発色性を向上させることができない。
カーボンブラックのDBP吸油量は120mL/100g以上であり、好ましくは130mL/100g以上である。DBP吸油量の上限は特に限定されないが、200mL/100g以下であることが好ましく、180mL/100g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量は、ASTM D-2414に準拠して測定することができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーと相関関係を有する。後述の実施例で用いたカーボンブラックのDBP吸油量は、ASTM D-2414に準拠して測定した値である。
カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合するアニオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などを挙げることができる。これらのアニオン性基は塩を形成していてもよい。アニオン性基が塩を形成している場合、これらの各基のプロトンの少なくとも1つがカチオンに置換されている。カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、モノ乃至トリアルキルアミンなどの脂肪族アミン;モノ乃至トリアルカノールアミンなどの脂肪族アルコールアミンのカチオンやその塩を挙げることができる。アニオン性基は、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩型、又はアンモニウム塩型であることが好ましく、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩型であることがさらに好ましい。
アニオン性基は、カーボンブラックの粒子表面に直接結合していてもよく、他の原子団(-R-)を介して結合していてもよい。他の原子団(-R-)としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ビフェニレン基などのアリーレン基;ピリジレン基、イミダゾリレン基、ピラゾリレン基、ピリジニレン基、チエニレン基、チアゾリレン基などのヘテロアリーレン基;カルボニル基;カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、ホスホン酸エステル基などのエステル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。高い発色性を得るためには、カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合しているアニオン性基が、カルボン酸基であることが好ましい。より高い発色性を得るためには、カーボンブラックの粒子表面に他の原子団を介してカルボン酸基が結合した自己分散顔料を用いることがより好ましい。
インク中のカーボンブラックの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、カーボンブラックの体積基準の累積50%粒子径(D50)は、50nm以上150nm以下であることが好ましい。本明細書において、単に「平均粒子径」というときは「体積基準の累積50%粒子径(D50)」を意味する。この「体積基準の累積50%粒子径(D50)」は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を使用して測定することができる。また、カーボンブラックのBET比表面積は、200m/g以上400m/g以下であることが好ましく、220m/g以上300m/g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのBET比表面積は、JIS Z 8830:2013(ISO 9277:2010)に準拠して測定することができる。
(樹脂粒子)
インクは、アクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有する。「樹脂粒子」とは、樹脂で形成され、水性媒体中に分散した状態で存在しうる粒子径の粒子を意味する。樹脂粒子は、公知の方法にしたがって製造することができる。樹脂粒子の製造方法としては、例えば、乳化重合法、プレエマルション重合法、シード重合法、転相乳化法などを挙げることができる。樹脂粒子は、自己分散顔料とは一体化せずに、独立して存在していることが好ましい。すなわち、樹脂粒子が自己分散顔料を内包したり、樹脂粒子が自己分散顔料に付着して分散させたり、といった形態とする必要はない。自己分散顔料は、それ自体が樹脂の補助を受けることなく分散可能なものであるが、樹脂粒子の一部が自己分散顔料に付着した状態を取ることを除外するものではない。
ある樹脂が「樹脂粒子」であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定された場合に、その樹脂は「樹脂粒子」であると判断することができる。動的光散乱法による粒度分布測定装置としては粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。中和した樹脂を用いて粒子径を測定するのは、十分に中和されて粒子をより形成しにくい状態となっても、粒子が形成されていることを確認するためである。
樹脂粒子は、アクリル樹脂で形成されていることが必要である。樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上である。樹脂粒子のガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置などを使用して測定することができる。本発明において、樹脂粒子のガラス転移温度は、インクから取り出した樹脂粒子そのものについて測定した値である。測定の際の温度サイクルは、25℃から200℃までを10℃/分で昇温、200℃から-50℃までを5℃/分で降温、及び-50℃から200℃までを10℃/分で昇温させる条件とすることが好ましい。
インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下である。上記の質量比率は、好ましくは0.20倍以上1.0倍以下であり、なかでも、0.30倍以上0.80倍以下がさらに好ましい。上記の質量比率が0.20倍未満であると、ブロンズ現象の抑制効果がやや低下する場合があり、画像の発色性もやや低下する場合がある。一方、上記の質量比率が1.0倍超であると、ブロンズ現象を抑制しうるが、樹脂粒子の色味の影響により、画像の発色性がやや低下する場合がある。インク中の顔料及び樹脂粒子の合計含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、2.0質量%以上7.5質量%以下であることが特に好ましい。
インク中の樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、50nm以上300nm以下であることが好ましく、50nm以上250nm以下であることがさらに好ましく、50nm以上230nm以下であることが特に好ましい。インク中の樹脂粒子の累積50%粒子径が50nm未満であると、形成される顔料層が薄くなり、ブロンズ現象の抑制効果がやや低下する場合があり、画像の発色性もやや低下する場合がある。一方、インク中の樹脂粒子の累積50%粒子径が300nm超であると、ブロンズ現象を抑制しうるが、光の散乱の影響で画像の発色性の向上効果がやや低下する場合がある。
樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径は、カーボンブラックの体積基準の累積50%粒子径に対する比率で0.50倍以上2.0倍以下であることが好ましい。上記の比率の値が所定の範囲外であると、形成される顔料層が薄くなり、ブロンズ現象の抑制効果がやや低下する場合があり、画像の発色性もやや低下する場合がある。
樹脂粒子を形成するアクリル樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。また、樹脂粒子を形成するアクリル樹脂の重量平均分子量は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。樹脂粒子のアニオン性基の密度(単位表面積当たりのアニオン性基のモル数)は、1μmol/m以上500μmol/m以下であることが好ましく、1μmol/m以上50μmol/m以下であることがさらに好ましい。
樹脂粒子を形成するアクリル樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。本明細書における樹脂の「ユニット」とは、1のモノマーに由来する単位構造をいう。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー及び芳香環を有するモノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性モノマーを重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性モノマー;これらの酸性モノマーの無水物や塩などのアニオン性モノマーなどを挙げることができる。塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;アンモニウム;有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。なかでも、カリウムなどのアルカリ金属のイオンが好ましい。
疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性モノマーを重合することで形成することができる。疎水性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有するモノマーなどを挙げることができる。
樹脂粒子は、架橋構造を有することが好ましい。架橋構造を有する樹脂粒子は、粒子状をより維持した状態で顔料層内に残りやすくなるので、ブロンズ現象をさらに抑制することができる。樹脂粒子に架橋構造を組み込むためには、エチレン性不飽和結合などの重合性官能基を分子内に2以上有するモノマーを用いることができる。重合性官能基を分子内に2以上有するモノマーの具体例としては、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。架橋構造を有しない樹脂粒子を用いると、ブロンズ現象の抑制効果がやや低下する場合があり、画像の発色性もやや低下する場合がある。
樹脂粒子を形成するアクリル樹脂は、反応性界面活性剤に由来するユニットを有することが好ましい。反応性界面活性剤に由来するユニットを有するアクリル樹脂で形成された樹脂粒子は、立体障害による反発で、その分散状態がさらに安定化する。このため、反応性界面活性剤に由来するユニットを有するアクリル樹脂で形成された樹脂粒子を用いることで、インクの吐出安定性を向上させることができる。これに対して、反応性界面活性剤に由来するユニットを有しないアクリル樹脂で形成された樹脂粒子を用いると、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
反応性界面活性剤としては、親水部及び疎水部で構成される分子の内部又は末端に、(メタ)アクリロイル基、マレイル基、ビニル基、アリル基などの重合性官能基が結合している化合物を用いることが好ましい。親水部としては、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖などのポリアルキレンオキサイド鎖を挙げることができる。また、疎水部としては、アルキル基、アリール基、これらの組み合わせなどの構造を挙げることができる。
(1価カチオンとアニオンとが結合して形成される塩)
インクは、さらに塩を含有することが好ましい。「塩」とは、1価カチオンとアニオンとが結合して形成される化合物を意味する。インクに塩を含有させることで、記録媒体における顔料の凝集を促進させることができるため、画像の発色性をさらに向上させることができる。
1価カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンなどを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの炭素数1以上4以下のアルカノールアミン類;などのカチオンを挙げることができる。なかでも、アルカリ金属イオンが好ましく、カリウムイオンが特に好ましい。
アニオンとしては、Cl、Br、I、ClO、ClO 、ClO 、ClO 、NO 、NO 、SO 2-、CO 2-、HCO 、HCOO、(COO、COOH(COO)、CHCOO、C(COO、CCOO、C(COO、PO 3-、HPO 2-、及びHPO などを挙げることができる。
カチオンとアニオンとが結合して構成される塩としては、例えば、1価のカチオンをMとして表すと、MCl、MBr、MI、MClO、MClO、MClO、MClO、MNO、MNO、MSO、MCO、MHCO、HCOOM、(COOM)、COOH(COOM)、CHCOOM、C(COOM)、CCOOM、C(COOM)、MPO、MHPO、MHPOなどを挙げることができる。なかでも、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸アンモニウムなどが好ましく、フタル酸カリウムが特に好ましい。フタル酸カリウムを含有させることで、他の塩と比較して、インクの吐出安定性を向上させることができる。
インク中の塩の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インクには、水性媒体としてさらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、インクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。例えば、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などを挙げることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温(25℃)で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、インクは、必要に応じて、アクリル樹脂やウレタン樹脂などの水溶性樹脂、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有してもよい。インク中のこれらの添加剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5.0質量%以下であることがさらに好ましい。但し、水溶性のアクリル樹脂を用いる場合は、その含有量をあまり多くしないことが好ましい。インク中の水溶性のアクリル樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.1質量%以下であることがさらに好ましい。また、水溶性のウレタン樹脂は、画像の耐擦過性の向上に有効である。インク中の水溶性のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(インクの物性)
寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力は、40mN/m以上であることが好ましく、45mN/m以上であることがさらに好ましい。寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力が40mN/m以上であると、記録媒体の厚さ方向へのインクの浸透が適度に抑制され、より発色性に優れた画像を記録することができる。寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力は、50mN/m以下であることが好ましい。インクの動的表面張力は、インクに含有させる界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類及び含有量を適宜設定することによって容易に制御することができる。寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力を40mN/m以上とするためには、表面張力の低い水溶性有機溶剤は用いないか、用いる場合はその含有量を多くしないことが好ましい。
寿命時間10m秒におけるインクの動的表面張力は、最大泡圧法によって測定することができる。最大泡圧法は、測定対象の液体中に浸したプローブ(細管)の先端に発生させた気泡を放出するために必要な最大圧力を測定し、この最大圧力から液体の表面張力を求める方法である。寿命時間は、最大泡圧法において、プローブの先端に新たな気泡の表面が発生した時点から、最大泡圧(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)に達するまでの時間である。本明細書におけるインクの動的表面張力は、25℃で測定した値である。
25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。25℃におけるインクの静的表面張力は、30mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。乾燥手段などを有しない簡易な装置構成であっても、本発明のインクを用いることで、カーボンブラック由来のブロンズ現象を抑制し、発色性に優れた画像を記録することができる。このため、本発明のインクジェット記録方法では、画像を熱や風により乾燥する工程を行う必要はない。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。図2に示す施形態のインクジェット記録装置は、シリアル方式の記録ヘッドを搭載するものである。但し、本発明のインクジェット記録方法で用いるインクジェット記録装置は図2に示す実施形態のものに限られず、ライン方式の記録ヘッドを搭載するインクジェット記録装置であってもよい。図2に示す実施形態のインクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。本発明では、シリアル方式の記録ヘッドを搭載するインクジェット記録装置を用いることが好ましい。また、本発明のインクを用いて記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよいが、普通紙や、コート層を有する記録媒体(光沢紙やアート紙)などの、浸透性を有するような、紙ベースの記録媒体を用いることが好ましい。なかでも、普通紙などのコート層を有しない記録媒体を用いることが特に好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
顔料の平均粒子径(D、体積基準の累積50%粒子径)は、動的光散乱法式の粒子径分布測定装置(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用して測定した。この際の測定条件は、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒とした。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1~4、6~8、10)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かして得た溶液を5℃に冷却した状態とし、この状態で表1に示す処理剤1.6gを加えた。この溶液の入った容器をアイスバスに入れ、撹拌して溶液の温度を10℃以下に保持しながら、5℃のイオン交換水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。15分間撹拌後、表1に示す特性のカーボンブラック6.0gを撹拌下で加え、さらに15分間撹拌してスラリーを得た。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させた。イオン交換法によりカウンターイオンをナトリウムイオンからカリウムイオンに置換した後、適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整した。このようにして、顔料の含有量が10.0%である各顔料分散液を得た。顔料の平均粒子径D(nm)、及び顔料の粒子表面の官能基の構造を表1に示す。
(顔料分散液5)
カーボンブラック(比表面積260m/g、DBP吸油量140mL/100g)をイオン交換水に添加し、十分に撹拌した。適量の次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度4%)を滴下し、100℃で10時間撹拌して反応させた。反応終了後、限外ろ過により精製し、水酸化カリウムを用いてpHを7.5に調整した。さらに、適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整した。このようにして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5を得た。顔料の平均粒子径Dは115nmであった。この顔料は、カーボンブラックの粒子表面に-COOK基が結合した自己分散顔料である。
(顔料分散液9)
カーボンブラック(比表面積260m/g、DBP吸油量140mL/100g)15.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、及びイオン交換水55.0部を混合して混合物を得た。樹脂分散剤の水溶液としては、水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体を、酸価と等モル量となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させた、樹脂の含有量が20.0%である水溶液を用いた。このスチレン/アクリル酸共重合体は、スチレンとアクリル酸の組成(モル)比が33:67であり、重量平均分子量が10,000であり、酸価が200mgKOH/gであった。得られた混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散させた。遠心分離処理して粗大粒子を除去した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過した。その後、適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整した。このようにして、顔料の含有量が10.0%であり、樹脂分散剤の含有量が6.0%である顔料分散液9を得た。顔料の平均粒子径Dは115nmであった。
(顔料分散液11)
カーボンブラック(商品名「モナク1100」(キャボット製))15.0部、樹脂分散剤の25.0%水溶液30.0部、及びイオン交換水50.0部を、0.3mm径ジルコニアビーズの充填率が50%であるガラス容器に入れた。樹脂分散剤の水溶液としては、水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(商品名「ジョンクリル690」、BASF製)を、水酸化カリウムにより、酸基を基準としたモル比で0.85倍に中和したものを用いた。このスチレン/アクリル酸共重合体は、重量平均分子量が16,500であり、酸価が240mgKOH/gであった。簡易分散機(商品名「DAS200-K」、LAU製)を使用して上記のガラス容器の内容物を15時間混合し、カーボンブラックを分散させた。回転数5,000rpmで30分間遠心分離して凝集成分を除去した後、適量のイオン交換水を添加して顔料の含有量を調整した。このようにして、顔料の含有量が15.0%であり、樹脂分散剤の含有量が7.5%である顔料分散液11を得た。顔料の平均粒子径Dは80nmであった。
Figure 2023048994000001
<樹脂粒子の調製>
(物性の測定条件)
樹脂粒子のガラス転移温度は、以下の手順にしたがって測定した。まず、樹脂粒子の分散液を60℃に加温して乾固させたものをアルミ容器に封管してサンプルとした。次いで、示差走査熱量測定装置(商品名「DSC Q1000」、TAインスツルメンツ製)を使用し、サンプルを、200℃まで10℃/分で昇温、-50℃まで5℃/分で降温、及び200℃まで10℃/分で昇温させて、ガラス転移温度(℃)を測定した。また、樹脂粒子の平均粒子径(D、体積基準の累積50%粒子径)は、動的光散乱方式の粒子径分布測定装置(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用して測定した。この際の測定条件は、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒とした。
(樹脂粒子1~16、18)
表2に示す量のイオン交換水及び過硫酸カリウム0.1部を窒素雰囲気下で混合して得た溶液に、表2に示す種類及び量のモノマーの乳化物を滴下し、撹拌下、80℃で重合反応を行った。25℃まで冷却した後、樹脂の酸価と等モルの水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を添加して、樹脂粒子の含有量が20.0%である樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中の樹脂粒子の特性を表2に示す。表2中のモノマーの略称は、MMA:メタクリル酸メチル、BMA:メタクリル酸n-ブチル、EMA:メタクリル酸エチル、MAA:メタクリル酸、AA:アクリル酸、BDDMA:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、KH-05:反応性界面活性剤(商品名「アクアロンKH-05」、第一工業製薬製)である。反応性界面活性剤(商品名「アクアロンKH-05」、第一工業製薬製)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の基本骨格に、アリル基(重合性官能基)を導入した構造を有する界面活性剤である。
(樹脂粒子17)
1-オクテンと無水マレイン酸との共重合体であるワックス(樹脂粒子)を使用し、樹脂粒子の含有量が20.0%である樹脂粒子17の分散液を得た。樹脂粒子17は、ガラス転移温度Tgが80℃であり、平均粒子径が170nmであった。得られた分散液中の樹脂粒子の特性を表2に示す。
(樹脂粒子19)
C.I.ソルベントブルー70(商品名「Orasol Blue 855」、BASF製)2.0部、及びスチレン-アクリル酸共重合体(商品名「ジョンクリル611」、BASF製)8.0部を、酢酸エチル40.0部に溶解させて溶液を得た。得られた溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム0.15部をイオン交換水90.0部に分散させた溶液に添加して撹拌した。超音波ホモジナイザー(商品名「Advanced Digital Sonifier 250DA」、BRANSON製)を使用し、振幅50%で10分間乳化して乳化液を得た。エバポレーターを使用して得られた乳化液から酢酸エチルを留去した。放冷後、ポアサイズ1.2μmのフィルター(商品名「HDCII」、ポール製)にて加圧ろ過し、適量のイオン交換水を添加した。このようにして、樹脂粒子の含有量が10.0%である樹脂粒子19の分散液を得た。樹脂粒子19に占める青色染料の内包率は20.0%であった。得られた分散液中の樹脂粒子の特性を表2に示す。
(樹脂粒子20)
C.I.ソルベントブルー70に代えて、C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント184(商品名「Uvitex OB」、BASF製)を用いたこと以外は、前述の樹脂粒子19の場合と同様にして、樹脂粒子20の分散液を得た。得られた分散液中の樹脂粒子の含有量は10.0%であり、樹脂粒子20に占める蛍光増白剤(C.I.フルオレッセントブライトニングエージェント184)の内包率は20.0%であった。得られた分散液中の樹脂粒子の特性を表2に示す。
Figure 2023048994000002
<インクの調製>
表3-1~3-4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌して分散した後、ポアサイズ2.5μmのポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過し、各インクを調製した。表3-1~3-4中の「ポリエチレングリコール」に付した数値は数平均分子量であり、「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。調製した各インクの特性を表3-1~3-4の下段に示す。インクの動的表面張力は、最大泡圧法による動的表面張力測定装置(商品名「Bubble Pressure Tensiometer BP2」、KRUSS製)を使用して、寿命時間10m秒における値を測定した。
Figure 2023048994000003
Figure 2023048994000004
Figure 2023048994000005
Figure 2023048994000006
<評価>
調製したインクを用いて、以下に示す各項目の評価を行った。画像の記録には、熱エネルギーの作用により液体を吐出させる記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「GX6030」、キヤノン製)を使用した。本実施例では、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が11.7ng±10%であるインク滴を2滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
(発色性)
記録デューティが100%である2cm×2cmのベタ画像を3枚の記録媒体(普通紙、商品名「CS-064F A4」、キヤノン製)に記録した。1日経過後、蛍光分光濃度計(商品名「FD-7」、コニカミノルタ製)を使用し、照明条件:M1(D50)、観察光源:D50、視野:2°の条件でベタ画像の光学濃度を測定した。そして、3枚の記録媒体に記録した画像の光学濃度の平均値を算出し、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。
AA:光学濃度の平均値が1.46以上であった。
A:光学濃度の平均値が1.43以上1.46未満であった。
B:光学濃度の平均値が1.40以上1.43未満であった。
C:光学濃度の平均値が1.40未満であった。
(耐ブロンズ性)
記録デューティを10%から100%まで10%刻みとした、2cm×2cmの10種類のベタ画像を、記録媒体(普通紙、商品名「CS-064F A4」、キヤノン製)に記録した。1日経過後、画像が赤色から黄色の色味を帯びてブロンズ現象が発生した記録デューティのベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐ブロンズ性を評価した。一般に、記録デューティが高くなるほど画像からの反射光量が多くなるため、ブロンズ現象が発生しやすくなる。つまり、ブロンズ現象が発生する記録デューティが高いほど、画像の耐ブロンズ性に優れることを意味する。
A:いずれの記録デューティのベタ画像においてもブロンズ現象が発生していなかった。
B:記録デューティが70%以上のベタ画像においてブロンズ現象が発生した。
C:記録デューティが70%未満のベタ画像においてブロンズ現象が発生した。
(吐出安定性)
記録デューティが100%である2cm×2cmのベタ画像を10枚の記録媒体(普通紙、商品名「CS-064F A4」、キヤノン製)に記録した後、GX6030のノズルチェックパターンを同じ種類の記録媒体に記録した。次いで、同様の条件で3,000枚分のベタ画像を記録した後、再度ノズルチェックパターンを記録した。10枚記録後のノズルチェックパターンと、3,000枚記録後のノズルチェックパターンとを比較し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出安定性を評価した。
A:10枚記録後及び3,000枚記録後のいずれのノズルチェックパターンも正常に記録されていた。
B:10枚記録後のノズルチェックパターンには正常に記録されていたが、3,000枚記録後のノズルチェックパターンには乱れがあった。
C:10枚記録後及び3,000枚記録後のいずれのノズルチェックパターンにも乱れがあった。
Figure 2023048994000007
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)自己分散型のカーボンブラック及びアクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、
前記カーボンブラックのDBP吸油量が、120mL/100g以上であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度が、30℃以上であり、
前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とする水性インク。
(構成2)前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.20倍以上1.0倍以下である構成1に記載の水性インク。
(構成3)前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料である構成1又は2に記載の水性インク。
(構成4)前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介してカルボン酸基が結合した自己分散顔料である構成1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成5)前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に他の原子団を介してカルボン酸基が結合した自己分散顔料である構成1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成6)前記樹脂粒子が、架橋構造を有する構成1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成7)前記樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径が、50nm以上300nm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成8)前記樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径が、前記カーボンブラックの体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.50倍以上2.0倍以下である構成1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成9)前記アクリル樹脂が、反応性界面活性剤に由来するユニットを有する構成1乃至8のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成10)寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以上である構成1乃至9のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成11)さらに、フタル酸カリウムを含有する構成1乃至10のいずれか1項に記載の水性インク。
(構成12)インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、構成1乃至11のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
(方法1)インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、構成1乃至11のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

Claims (13)

  1. 自己分散型のカーボンブラック及びアクリル樹脂により形成された樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記カーボンブラックのDBP吸油量が、120mL/100g以上であり、
    前記樹脂粒子のガラス転移温度が、30℃以上であり、
    前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.10倍以上2.0倍以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記カーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.20倍以上1.0倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介してアニオン性基が結合した自己分散顔料である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に直接又は他の原子団を介してカルボン酸基が結合した自己分散顔料である請求項1又は2に記載の水性インク。
  5. 前記カーボンブラックが、カーボンブラックの粒子表面に他の原子団を介してカルボン酸基が結合した自己分散顔料である請求項1又は2に記載の水性インク。
  6. 前記樹脂粒子が、架橋構造を有する請求項1又は2に記載の水性インク。
  7. 前記樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径が、50nm以上300nm以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  8. 前記樹脂粒子の体積基準の累積50%粒子径が、前記カーボンブラックの体積基準の累積50%粒子径に対する比率で、0.50倍以上2.0倍以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  9. 前記アクリル樹脂が、反応性界面活性剤に由来するユニットを有する請求項1又は2に記載の水性インク。
  10. 寿命時間10m秒における動的表面張力が、40mN/m以上である請求項1又は2に記載の水性インク。
  11. さらに、フタル酸カリウムを含有する請求項1又は2に記載の水性インク。
  12. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1又は2に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  13. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1又は2に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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