JP2014022180A - 色素増感太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

色素増感太陽電池およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】透明導電性基板10と、光増感色素が担持され、透明導電性基板10上に設けられる多孔質酸化物半導体部20a,20bと、多孔質酸化物半導体部20a,20bに対向して設けられる対極30と、透明導電性基板10及び対極20の間に配置される電解質50とを備え、多孔質酸化物半導体部20a,20bに担持される光増感色素の種類の数が互いに異なり、光増感色素が、多孔質酸化物半導体部20a,20bに共通する共通光増感色素を含み、多孔質酸化物半導体部20a,20bが、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池100。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池およびその製造方法に関する。
光電変換素子として、安価で、高い発電効率が得られることから色素増感太陽電池が注目されており、色素増感太陽電池に関して種々の開発が行われている。
色素増感太陽電池は一般に、透明導電性基板と、透明導電性基板上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体層と、多孔質酸化物半導体層に担持される光増感色素と、多孔質酸化物半導体層に対向する対極と、透明導電性基板と対極との間に設けられる電解質とを備えている。
このように色素増感太陽電池は、多孔質酸化物半導体層に光増感色素を担持させているため、複数の多孔質酸化物半導体層に異なる色を付与することで、受光面に特定の文字、記号または図形のパターン等の意匠性を付与することが可能となる。
このような意匠性を付与した色素増感太陽電池として、例えば複数の多孔質酸化物半導体層のそれぞれに、異なる種類の光増感色素を1種類ずつ担持させたものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。
特開2010−9769号公報
しかし、上記特許文献1に記載の色素増感太陽電池は以下の課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1記載の色素増感太陽電池は、優れた意匠性を付与することができる反面、光電変換特性が低下する場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため上記課題が生じる原因について検討した。特許文献1に記載の色素増感太陽電池においては、複数ある多孔質酸化物半導体層の各々に異なる光増感色素を1種類ずつ担持させている。しかし、これら光増感色素の中には、意匠性を付与することができるものの、色素増感太陽電池に十分な光電変換特性を付与できないものも存在する。このため、色素増感太陽電池の光電変換特性が全体として低下してしまうのではないかと本発明者は考えた。特に、色素増感太陽電池において、優れた意匠性を付与するために、1つの透明導電性基板上に設けられる多孔質酸化物半導体層の数が増加され、互いに異なる種類の光増感色素が担持されると、優れた光電変換特性を付与できる光増感色素の種類には限りがあることから、色素増感太陽電池の光電変換特性の全体としての低下を抑制することは困難となる。そこで、本発明者はさらに鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、透明導電性基板と、光増感色素が担持され、前記透明導電性基板上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体部と、前記多孔質酸化物半導体部に対向して設けられる対極と、前記透明導電性基板及び前記対極の間に配置される電解質とを備え、前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される前記光増感色素の種類の数が互いに異なり、前記光増感色素が、前記複数の多孔質酸化物半導体部に共通する共通光増感色素を含み、前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池である。
この色素増感太陽電池によれば、光増感色素が、複数の多孔質酸化物半導体部に共通の光増感色素を含むので、この共通光増感色素として、優れた光電変換特性を色素増感太陽電池に付与し得るものを用いれば、色素増感太陽電池全体としての光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。その上、複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるため、色素増感太陽電池に優れた意匠性をも付与することができる。すなわち、本発明の色素増感太陽電池によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、色素増感太陽電池全体としての光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
上記色素増感太陽電池において、前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち、複数種類の光増感色素が担持されている多孔質酸化物半導体部において、複数種類の前記光増感色素が互いに異なる吸収ピーク波長を有することが好ましい。
この場合、複数種類の光増感色素が担持されている多孔質酸化物半導体部において、複数種類の光増感色素が互いに異なる吸収ピーク波長を有することで、その多孔質酸化物半導体部の色を調節することができる。加えて、光を十分に吸収できる波長領域が広範囲となるため、色素増感太陽電池全体として、より優れた光電変換特性を確保することができる。
上記色素増感太陽電池において、前記電解質が、IおよびI からなる酸化還元対を含み、前記電解質中のI の濃度が0.006M以下であることが好ましい。
の濃度が上記範囲内にあると、屋内などの低照度環境下で光電変換特性をより向上させることができる。加えて、I 濃度が上記範囲内にあることで、電解質の色が十分に薄くなる。その結果、多孔質酸化物半導体部に担持された光増感色素による色が明確に視認できる。
上記色素増感太陽電池において、前記透明導電性基板上に設けられる前記複数の多孔質酸化物半導体部の前記透明導電性基板からの厚さが同一であることが好ましい。
この場合、透明導電性基板上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体部の各々を含む色素増感太陽電池セルにおいて、電圧を近い値にすることが可能となり、多孔質酸化物半導体部を含む色素増感太陽電池セルの各々の発電量も近くなるため、多孔質酸化物半導体部を含む色素増感太陽電池セルを直列や並列に接続しても、全体の電力特性が乱れることがなく、外部デバイスに電力を供給する際に、所望の電力を的確に供給することができる。
上記色素増感太陽電池において、前記透明導電性基板上に設けられる前記複数の多孔質酸化物半導体部のうちの少なくとも1つの多孔質酸化物半導体部には共吸着剤が吸着されていることが好ましい。
この場合、共吸着剤は発色しないため、共吸着剤が複数の多孔質酸化物半導体部のうちの少なくとも1つの多孔質酸化物半導体部に吸着されると、その共吸着剤が吸着した多孔質酸化物半導体部における色を薄くすることができる。その結果、色素増感太陽電池全体として色の濃淡を実現することができる。
上記色素増感太陽電池は、前記透明導電性基板と前記対極とを連結する封止部を更に備え、前記封止部と前記透明導電性基板との間に、発色した無機封止部が設けられることが好ましい。
この場合、多孔質酸化物半導体部のみならず、無機封止部の位置においても、色が視認できるため、より優れた意匠性を付与することができる。
また本発明は、透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する多孔質酸化物半導体部形成工程と、前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部を除く残りの多孔質酸化物半導体部をマスク部材にて覆い隠して第1構造体を得てから、前記第1構造体を、光増感色素を含む第1色素溶液中に浸漬させる第1浸漬工程と、前記マスク部材にて覆い隠された残りの多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部から前記マスク部材の少なくとも一部を剥がして第2構造体を得てから、前記第2構造体を、前記光増感色素と異なる種類の光増感色素を含む第2色素溶液中に浸漬させ、前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるようにする第2浸漬工程と、前記透明導電性基板と対極との間に電解質が配置されるように前記透明導電性基板と前記対極とを貼り合せる貼合せ工程とを含み、前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池の製造方法である。あるいは本発明は、透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する多孔質酸化物半導体部形成工程と、前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部を除く残りの多孔質酸化物半導体部をマスク部材にて覆い隠して第1構造体を得てから、前記第1構造体を、光増感色素を含む第1色素溶液中に浸漬させる第1浸漬工程と、前記マスク部材にて覆い隠された残りの多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部から前記マスク部材の少なくとも一部を剥がして第2構造体を得てから、前記第2構造体を、前記光増感色素と異なる種類の光増感色素を含む第2色素溶液中に浸漬させる第2浸漬工程と、前記第2浸漬工程を繰り返すことによって、前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるようにする繰返工程と、前記透明導電性基板と対極との間に電解質が配置されるように前記透明導電性基板と前記対極とを貼り合せる貼合せ工程とを含み、前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池の製造方法である。
これらの色素増感太陽電池の製造方法によれば、得られる色素増感太陽電池において、複数の多孔質酸化物半導体部に共通の光増感色素が担持されるので、この光増感色素として、優れた光電変換特性を色素増感太陽電池に付与し得るものを用いれば、色素増感太陽電池全体としての光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。その上、複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるため、色素増感太陽電池に優れた意匠性をも付与することができる。すなわち、本発明の色素増感太陽電池の製造方法によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池を製造することが可能となる。また、通常、光増感色素の適正な浸漬時間は、光増感色素の種類によって異なるが、上記製造方法によれば、それぞれの光増感色素の浸漬時間を自由に制御することができるため、光増感色素ごとに適正な浸漬時間を確保することができる。
上記製造方法において、前記マスク部材が、前記透明導電性基板上に、前記多孔質酸化物半導体部を包囲するように貼り付けられる環状の接着剤と、前記接着剤とともに前記多孔質酸化物半導体部を覆い隠すカバー部材とを有することが好ましい。
この場合、マスク部材が、環状の接着剤と、接着剤とともに多孔質酸化物半導体部を覆い隠すカバー部材とを有するように構成されることで、カバー部材と接着剤との密着性を高めることができるため、第1浸漬工程や第2浸漬工程においては、マスク部材の内側に第1色素溶液や第2色素溶液が侵入することが十分に抑制される。一方、マスク部材を剥がす際には、カバー部材を剥がすだけで多孔質酸化物半導体部を容易に露出させることができる。
なお、本発明において、光増感色素の吸収ピーク波長とは、光増感色素が複数本の吸収ピークを有する場合には、それらの吸収ピークの波長のうち最も長波長側の吸収ピークの波長を言うものとする。
また本発明において、「前記複数の多孔質酸化物半導体部の前記透明導電性基板からの厚さが同一」とは、比較対象となる多孔質酸化物半導体部のうち最も大きい厚さを有する多孔質酸化物半導体部の厚さを基準値とし、多孔質酸化物半導体部の透明導電性基板からの厚さがこの基準値に対して10%以内の範囲に入ることを言うものとする。
さらに本発明において、多孔質酸化物半導体部の厚さとは、多孔質酸化物半導体部が複数の多孔質酸化物半導体層で構成される場合には、複数の多孔質酸化物半導体層のうち最も大きい厚さを有する多孔質酸化物半導体層の厚さを言うものとする。
本発明によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池およびその製造方法が提供される。
本発明に係る色素増感太陽電池の一実施形態を示す断面図である。 (a)および(b)は、図1の透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する一連の工程を示す断面図である。 (a)〜(d)は、図2の複数の多孔質酸化物半導体部に光増感色素を担持させる一連の工程を示す断面図である。 (a)は、図3(d)の透明導電性基板上に封止部形成材料を圧着する封止部形成材料圧着工程を示す断面図、(b)は、(a)の複数の多孔質酸化物半導体部上に電解質を配置する電解質配置工程を示す断面図である。 本発明に係る色素増感太陽電池の他の実施形態を示す断面図である。 本発明に係る色素増感太陽電池のさらに他の実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
まず本発明の色素増感太陽電池の第1実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、透明導電性基板10と、透明導電性基板10上に設けられる2つの多孔質酸化物半導体部20a,20bと、多孔質酸化物半導体部20a,20bに対向して設けられる対極30と、透明導電性基板10と対極30とを連結する環状の封止部40と、多孔質酸化物半導体部20a,20b及び対極30の間に配置される電解質50とを備えている。
透明導電性基板10は、透明基板11と透明基板11上に設けられる透明導電膜12とで構成されている。多孔質酸化物半導体部20a,20bには、共通の光増感色素が担持されており、多孔質酸化物半導体部20aには共通の光増感色素とは異なる種類の光増感色素がさらに担持されている。さらに多孔質酸化物半導体部20bは、透明導電性基板10の上に固定される環状の接着剤60によって包囲されている。
また対極30は、対極基板31と、対極基板31の多孔質酸化物半導体部20a,20b側に設けられて触媒反応を促進する触媒層32とを備えている。
この色素増感太陽電池100によれば、多孔質酸化物半導体部20a,20bに共通の光増感色素が担持されるので、この光増感色素として、優れた光電変換特性を色素増感太陽電池100に付与し得るものを用いれば、色素増感太陽電池100全体としての光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。その上、多孔質酸化物半導体部20a,20bに担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるため、色素増感太陽電池100に優れた意匠性をも付与することができる。すなわち、色素増感太陽電池100によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる。
次に、透明導電性基板10、多孔質酸化物半導体部20a,20b、光増感色素、対極30、封止部40および電解質50について詳細に説明する。
(透明導電性基板)
透明導電性基板10は、上述したように、透明基板11とその上に設けられる透明導電膜12とで構成される。
透明基板11は、光透過性の材料からなる基板により構成される。このような材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、通常、光電変換素子の透明基材として用いられる材料であればいかなるものでも用いることができる。透明基板11は、これらの中から電解質50への耐性などを考慮して適宜選択される。また、透明基板11は、光透過性に優れる基材であることが好ましく、光透過率が90%以上の基材であることがより好ましい。
透明導電膜12は、透明導電性基板10の透明性を著しく損なわない構造とするために、導電性金属酸化物からなる薄膜であることが好ましい。このような導電性金属酸化物としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO)などが挙げられる。また、透明導電膜12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜12が単層で構成される場合、透明導電膜12としては、成膜が容易かつ製造コストが安価であるという観点から、ITO、FTOが好ましく、また、高い耐熱性及び耐薬品性を有する観点から、FTOがより好ましい。透明導電膜12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
(多孔質酸化物半導体部)
多孔質酸化物半導体部20a,20bはそれぞれ、1つの多孔質酸化物半導体層で構成されてもよく、互いに離間する複数の多孔質酸化物半導体層で構成されてもよい。多孔質酸化物半導体層を形成する酸化物半導体は、特に限定されず、通常、光電変換素子用の多孔質酸化物半導体層を形成するのに用いられるものであれば、いかなるものでも用いることができる。このような酸化物半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO)、シリカ(SiO)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これら酸化物半導体の粒子の平均粒径は1〜1000nmであることが、光増感色素で覆われた酸化物半導体の表面積が大きくなり、より多くの電子を生成することができることから好ましい。また、多孔質酸化物半導体層は、粒度分布の異なる酸化物半導体粒子を積層させて構成されることが好ましい。この場合、多孔質酸化物半導体層内で繰り返し光の反射を起こさせることが可能となり、多孔質酸化物半導体層の外部へ逃がす入射光を少なくして、効率よく光を電子に変換することができる。
多孔質酸化物半導体層の厚さは例えば0.5〜50μmとすればよい。なお、多孔質酸化物半導体層は、異なる材料からなる複数の酸化物半導体の積層体で構成することもできる。
(光増感色素)
多孔質酸化物半導体部20a,20bに共通に担持される光増感色素(以下、「共通光増感色素」と呼ぶ)としては、ビピリジン構造、ターピリジン構造などを配位子に含むルテニウム錯体、ポリフィリン、フタロシアニンなどの含金属錯体、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などが挙げられ、これらの中から、用途、使用半導体に適した挙動を示すものを特に限定なく選ぶことができる。具体的には、N3、N719、N749、D131、D149、Z907などを使用することができる。中でも、低照度においては、色素増感太陽電池100に優れた光電変換特性を付与し得ることから、N719やZ907などが好ましく用いられる。
多孔質酸化物半導体部20aに担持される共通光増感色素以外の光増感色素は、共通光増感色素と異なる種類のものであればよいが、共通光増感色素とは異なる吸収ピーク波長を有するものであることが好ましい。この場合、2種類の光増感色素が担持されている多孔質酸化物半導体部20aにおいて、2種類の光増感色素が互いに異なる吸収ピーク波長を有することで、その多孔質酸化物半導体部20aの色を調節することができる。加えて、光を十分に吸収できる波長領域が広範囲となるため、色素増感太陽電池100全体として、より優れた光電変換特性を確保することができる。
(対極)
対極基板31としては、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、SUS等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板11にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。対極基板31の厚さは、色素増感型太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
触媒層32は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。
対極30の厚さは例えば0.005〜0.5mmの範囲内であればよい。
(封止部)
封止部40を構成する材料としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの変性ポリオレフィン、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体が挙げられる。なお、封止部40は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
(電解質)
電解質50は、例えばIおよびI などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。
酸化還元対としては、例えばIおよびI のほか、臭素および臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。
酸化還元対として、IおよびI が用いられる場合、I の濃度は、0より多く、0.006M以下であることが好ましい。
の濃度が上記範囲内にあると、屋内などの低照度環境下で光電変換特性をより向上させることができる。加えて、I 濃度が上記範囲内にあることで、電解質50の色が薄くなる。その結果、多孔質酸化物半導体部20a,20bに担持された光増感色素による色が明確に視認できる。
の濃度は、より好ましくは0.002M以下であり、さらに好ましくは6×10−6M以下である。I の濃度を6×10−6M以下とするためには、I の供給源であるIを添加しなければよい。Iを添加しなくてもIさえあれば、I の濃度を6×10−6M以下にすることができる。この理由は定かではないが、Iがなんらかの反応をしてI を生成しているものと考えられる。
また電解質50は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
また、電解質50は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
また電解質50には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに電解質50としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
次に、上述した色素増感太陽電池100の製造方法について図2〜図4を参照しながら説明する。図2の(a)および(b)は、図1の透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する一連の工程を示す断面図、図3の(a)〜(d)は、図2の複数の多孔質酸化物半導体部に光増感色素を担持させる一連の工程を示す断面図、図4の(a)は、図3(d)の透明導電性基板上に封止部形成材料を圧着する封止部形成材料圧着工程を示す断面図、図4の(b)は、図4の(a)の複数の多孔質酸化物半導体部上に電解質を配置する電解質配置工程を示す断面図である。
まず透明導電性基板10を準備する。透明導電性基板10は、図2の(a)に示すように、透明基板11の上に、透明導電膜12を形成することによって得ることができる。透明導電膜12の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法及びCVD法などが用いられる。
[多孔質酸化物半導体部形成工程]
次に、透明導電性基板10の透明導電膜12上の互いに離間する2つの領域に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷する。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストは、酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。多孔質酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、バーコート法などを用いることができる。
次に、多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを焼成して透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体部20a,20bを形成する(図2の(b)参照)。焼成温度は酸化物半導体粒子により異なるが、通常は140〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子により異なるが、通常は1〜5時間である。
[光増感色素担持工程]
次に、図3の(a)に示すように、多孔質酸化物半導体部20bをマスク部材80で覆い隠す。マスク部材80は、例えば透明導電性基板10上に環状の接着剤60を接着させ、続いて、この接着剤60の開口をカバー部材70で覆うことにより形成することができる。こうして第1構造体90が得られる。
ここで、接着剤60としては、例えば封止部40を構成する材料と同様のものを用いることが好ましい。これらは、有機溶媒に対して高い封止能を有するため、色素溶液に含まれる有機溶媒がマスク部材80の内側に侵入することを十分に抑制することができる。
カバー部材70を構成する材料としては、有機溶媒に対して高い封止能を有する材料が好ましい。このような材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂や、チタンなどの金属などを用いることができる。
次に、図3の(b)に示すように、第1構造体90の多孔質酸化物半導体部20aに、共通光増感色素とは異なる種類の光増感色素を担持させる。このためには、第1構造体90を、光増感色素を含有する第1色素溶液の中に浸漬させ、光増感色素を多孔質酸化物半導体部20aに吸着させる(第1浸漬工程)。
次に、図3の(c)に示すように、マスク部材80の一部であるカバー部材70を接着剤60から剥離して、光増感色素が担持されていない多孔質酸化物半導体部20bを露出させる。こうして第2構造体110が得られる。
続いて、図3の(d)に示すように、第2構造体110の多孔質酸化物半導体部20a、20bに、共通光増感色素を担持させる(第2浸漬工程)。このためには、第2構造体110を、光増感色素を含有する第2色素溶液の中に浸漬させ、光増感色素を多孔質酸化物半導体部20a、20bに吸着させる。
こうして多孔質酸化物半導体部20aには、2種類の光増感色素が担持され、多孔質酸化物半導体部20bには1種類の光増感色素のみが担持される。すなわち、多孔質酸化物半導体部20a,20bでは、光増感色素の種類の数が互いに異なり、多孔質酸化物半導体部20a,20bには共通の光増感色素が担持されることになる。
[封止部形成材料圧着工程]
そして、図4の(a)に示すように、例えば透明導電性基板10の上に、例えば環状の封止部形成材料40Aを配置する。このとき、封止部形成材料40Aの内側に多孔質酸化物半導体部20a,20bが配置されるようにする。その後、封止部形成材料40Aを透明導電性基板10に溶融圧着させる。
[電解質配置工程]
次に、図4の(b)に示すように、例えば透明導電性基板10上であって封止部形成材料40Aの内側に電解質50を配置する。電解質50は、透明導電性基板10上であって環状の封止部形成材料40Aの内側に注入したり、印刷したりすることによって配置することができる。
[貼合せ工程]
次いで、多孔質酸化物半導体部20a,20bに対し、対極30を対向させて重ね合わせる。そして、封止部形成材料40Aを加熱溶融させながら加圧する。こうして、透明導電性基板10と対極30との間に電解質50が配置されるように透明導電性基板10と対極30とを貼り合せて色素増感太陽電池100の製造が完了する(図1参照)。このとき、封止部形成材料40Aは封止部40となる。
上記のようにして色素増感太陽電池100を製造すると、得られる色素増感太陽電池100において、多孔質酸化物半導体部20a,20bに共通の光増感色素が担持されるので、この光増感色素として、優れた光電変換特性を色素増感太陽電池100に付与し得るものを用いれば、色素増感太陽電池100全体としての光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。その上、複数の多孔質酸化物半導体部20a,20bに担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるため、色素増感太陽電池100に優れた意匠性をも付与することができる。すなわち、上述した色素増感太陽電池100の製造方法によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できる色素増感太陽電池100を製造することが可能となる。また、通常、光増感色素の適正な浸漬時間は、光増感色素の種類によって異なるが、上記製造方法によれば、それぞれの光増感色素の浸漬時間を自由に制御することができるため、光増感色素ごとに適正な浸漬時間を確保することもできる。また上記製造方法によれば、マスク部材80が、環状の接着剤60と、接着剤60とともに多孔質酸化物半導体部20bを覆い隠すカバー部材70とを有するように構成されることで、カバー部材70と接着剤60との密着性を高めることができるため、マスク部材80の内側に第1色素溶液や第2色素溶液が侵入することが十分に抑制される。一方、マスク部材80を剥がす際には、カバー部材70を剥がすだけで多孔質酸化物半導体部20bを容易に露出させることができる。
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、封止部40が透明導電性基板10に直接接着されているが、図5に示す色素増感太陽電池200のように、封止部40は、発色した無機封止部290を介して透明導電性基板10に接着されていてもよい。この場合、多孔質酸化物半導体部20a,20bのみならず、無機封止部290の位置においても、色が視認できるため、より優れた意匠性を色素増感太陽電池200に付与することができる。
また上記実施形態では、透明導電性基板10上に1つの色素増感太陽電池セルのみが形成されているが、透明導電性基板10上には、図6に示す色素増感太陽電池300のように、複数の色素増感太陽電池セル25a,25bが設けられていてもよい。この場合、色素増感太陽電池セル25aは、透明導電膜12aと、透明導電膜12a上に設けられる多孔質酸化物半導体部20aと、多孔質酸化物半導体部20aに対向して設けられる対極30aと、透明導電性基板10と対極30aとを連結する環状の封止部40と、透明導電膜12aおよび対極30aの間に設けられる電解質50とによって構成される。同様に、色素増感太陽電池セル25bは、透明導電膜12bと、透明導電膜12b上に設けられる多孔質酸化物半導体部20bと、多孔質酸化物半導体部20bに対向して設けられる対極30bと、透明導電性基板10と対極30bとを連結する環状の封止部40と、透明導電膜12bおよび対極30bの間に設けられる電解質50とによって構成される。ここで、色素増感太陽電池セル25a,25bの多孔質酸化物半導体部20a,20bの厚さは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池セル25a,25bにおける電圧を近くすることが可能となり、色素増感太陽電池セル25a,25bの各々の発電量も近くなるため、色素増感太陽電池セル25a,25bを直列や並列に接続しても、全体の電力特性が乱れることがなく、色素増感太陽電池300から外部デバイスに電力を供給する際に、所望の電力を的確に供給することができる。
なお、多孔質酸化物半導体部20a,20bの厚さは、2種類の色素が担持されている多孔質酸化物半導体部20aの厚さを、1種類の色素しか担持されていない多孔質酸化物半導体部20bの厚さより低くしてもよい。
また上記実施形態では、透明導電性基板10上に2つの多孔質酸化物半導体部20a,20bが設けられている場合を例にして説明したが、多孔質酸化物半導体部は、透明導電性基板10上に3つ以上設けられていてもよい。
この場合、色素増感太陽電池を製造するには、第2浸漬工程と、透明導電性基板10と対極30との間に電解質50が配置されるように透明導電性基板10と対極30とを貼り合せる貼合せ工程との間に、第2浸漬工程を繰り返すことによって、複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるようにする繰返工程をさらに行えばよい。
さらに上記実施形態では、多孔質酸化物半導体部20a,20bのいずれにも共吸着剤が吸着されていないが、多孔質酸化物半導体部20a,20bの少なくとも一方に共吸着剤が吸着されてもよい。
この場合、共吸着剤は発色しないため、共吸着剤が多孔質酸化物半導体部20a,20bのうちの少なくとも1つの多孔質酸化物半導体部に吸着されると、その共吸着剤が吸着した多孔質酸化物半導体部における色を薄くすることができる。その結果、色素増感太陽電池全体として色の濃淡を実現することができる。
共吸着剤は、光増感色素同士の会合を抑制できるものであればよく、特に限定されない。例えば共吸着剤としては、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸、ヒオデオキシコール酸、これらの塩などを用いることができる。
さらに、上記実施形態では、多孔質酸化物半導体部20a,20bに光増感色素が担持された後に、透明導電性基板10に環状の封止部形成材料40Aが溶融圧着されているが、多孔質酸化物半導体部20a,20bに光増感色素が担持される前に、透明導電性基板10に環状の封止部形成材料40Aが溶融圧着されてもよい。
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
はじめに、透明導電性基板として、酸化スズ被覆ガラスシートであるTEC15ガラス(商品名、ピルキントン社製)を準備した。TECガラスの寸法は、100mm×100mm×2.2mmとした。そして、この透明導電性基板の表面のうちの互いに離間する2つの領域にそれぞれ、スクリーン印刷法によって酸化チタンペーストとしての21NR(商品名、日揮触媒化成社製)を塗布した。そして、この酸化チタンペーストを塗布した透明導電性基板を熱風循環タイプのオーブンに入れて500℃で1時間焼成し、透明導電性基板上に、厚さが12μmの1つの多孔質酸化物半導体層からなる第1多孔質酸化物半導体部と、厚さが12μmの1つの多孔質酸化物半導体層からなる第2多孔質酸化物半導体層とを得た。
次に、透明導電性基板上に、第2多孔質酸化物半導体部を包囲するように環状の接着剤としてのバイネル4164(商品名、デュポン社製)を溶融圧着させた。接着剤は、厚さが40μm、幅が500μmとなるようにした。そして、環状の接着剤の開口を、厚さが75μmのポリエチレンテレフタレートからなるカバー部材で覆い隠した。こうしてマスク部材を形成した。
次に、エチレン−メタクリル酸共重合体であるニュクレル(三井・デュポンポリケミカル社製、融点:98℃)からなる19.5cm×17.5cm×100μmのシートの中央に18.5cm×16.5cm×100μmの開口を形成した四角環状の樹脂シートを準備した。そして、この樹脂シートを、透明導電性基板の上に配置した。このとき、樹脂シートの内側に第1多孔質酸化物半導体部および第2多孔質酸化物半導体部が配置されるようにした。続いて、この樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させることによって透明導電性基板に接着して封止部形成材料を固定した。こうして第1構造体を得た。
次に、第1構造体を、光増感色素であるD131色素(吸収ピーク波長:420nm)を1−プロパノール中に0.05mMの濃度となるように溶解させてなる第1色素溶液中に48時間浸漬して、マスク部材で覆い隠されていない第1多孔質酸化物半導体部にD131色素を担持させた。
続いて、マスク部材の一部であるカバー部材を接着剤から剥がし、第2構造体を得た。
そして、第2構造体を、共通光増感色素であるN719色素(吸収ピーク波長:550nm)をアセトニトリルおよびt−ブタノールの1:1の体積比の混合溶媒中に0.2mMの濃度となるように溶解させてなる第2色素溶液中に24時間浸漬して、第1および第2多孔質酸化物半導体部にN719色素を担持させた。
次に、封止部形成材料の内側に、メトキシプロピオニトリルからなる揮発性溶媒を主溶媒とし、ヘキシルメチルイミダゾリウムアイオダイド(HMImI)を0.6mM、N−メチルベンズイミダゾール(NMBI)を0.2mM、3−メトキシプロピオニトリル(MPN)を0.2mM含む電解質を注入した。このとき、電解質中のI の濃度は、6×10−8Mであった。
一方、9cm×9cm×0.04mmのチタンからなる対極基板を準備した。そして、対極基板上に、スパッタリング法により、厚さ10nmの白金触媒層を形成した。こうして対極を2枚得た。
次に、2枚の対極をそれぞれ、第1および第2多孔質酸化物半導体部の各々に対向させ、大気圧下で、透明導電性基板上の封止部形成材料と対極とを重ね合わせた。そして、800Paの減圧下で、プレス機を用いて、封止部形成材料を、対極を介して5MPaで加圧しながら148℃で加熱して溶融させ、封止部を得た。こうして色素増感太陽電池を得た。
(実施例2)
第1色素溶液として、D149色素(吸収ピーク波長:530nm)を、アセトニトリルとt−ブタノールの1:1混合溶媒中に0.05mMとなるように溶解させたものを用い、第2色素溶液として、Z907色素(吸収ピーク波長:530nm)をアセトニトリルとt−ブタノールの1:1混合溶媒中に0.2mMの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例3)
電解質中のI の濃度を6×10−8Mから0.002Mに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例4)
第2多孔質酸化物半導体部を構成する多孔質酸化物半導体層の厚さを12μmから9μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例5)
第2色素溶液中の混合溶媒に溶解させる物質を、共通光増感色素であるN719色素のみから、共通光増感色素であるN719色素、および、共吸着剤である2−ヘキサデシルマロン酸(HDMA)に変更し、第2色素溶液中のHDMAの濃度を3mMとしたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例6)
透明導電性基板の上の表面のうちの互いに離間する2つの領域に酸化チタンペーストを塗布する際に、接着剤を溶融圧着させる予定の領域に、Cu−Cr−Mn系の黒色顔料を含む黒色の低融点ガラスフリットを含有するガラスペーストを塗布し、酸化チタンペーストおよびガラスペーストを塗布した透明導電性基板を熱風循環タイプのオーブンに入れて500℃で1時間焼成して厚さ15μmの黒色の無機封止部を形成し、その上に接着剤を溶融圧着させたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例1)
第1および第2多孔酸化物半導体部を形成した後、第1および第2多孔酸化物半導体部への光増感色素の担持を以下のようにして行うことにより、第1多孔質酸化物半導体部にD131色素1種類を担持させ、第2多孔質酸化物半導体部にN719色素を担持させたこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
すなわち、まず第1および第2収容空間を有する容器であって、第1および第2収容空間が仕切壁で仕切られている容器を用意した。次に、容器の第1および第2収容空間の各々に、D131色素を含む第1色素溶液と、N719色素を含む第2色素溶液をそれぞれ注入した。続いて、容器を、透明導電性基板に対向させて密着させた。このとき、第1多孔酸化物半導体部が第1収容空間に収容され、第2多孔質酸化物半導体部が第2収容空間に収容されるようにした。そして、第1多孔酸化物半導体部を第1色素溶液に浸漬させ、第1多孔酸化物半導体部にD131色素を担持させるとともに、第2多孔酸化物半導体部を第2色素溶液に浸漬させ、第2多孔酸化物半導体部にN719色素を担持させた。
(光電変換特性の評価)
実施例1〜6及び比較例1の色素増感太陽電池について、白色LED光源を用い、200ルクスの照度下、出力を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2014022180
表1に示す結果より、実施例1〜6は、比較例1に比べて、出力が十分に高いことが分かった。また実施例1〜6及び比較例1はいずれも、優れた意匠性を有していた。
このことから、本発明の色素増感太陽電池によれば、優れた意匠性が付与される場合であっても、光電変換特性の低下を十分に抑制できることが確認された。
10…透明導電性基板
20a,20b…多孔質酸化物半導体部
30,30a,30b…対極(電極)
31…透明導電膜
40…封止部
50…電解質
60…接着剤
70…カバー部材
80…マスク部材
90…第1構造体
100,200,300…色素増感太陽電池
110…第2構造体
290…無機封止部

Claims (9)

  1. 透明導電性基板と、
    光増感色素が担持され、前記透明導電性基板上に設けられる複数の多孔質酸化物半導体部と、
    前記多孔質酸化物半導体部に対向して設けられる対極と、
    前記透明導電性基板及び前記対極の間に配置される電解質とを備え、
    前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される前記光増感色素の種類の数が互いに異なり、
    前記光増感色素が、前記複数の多孔質酸化物半導体部に共通する共通光増感色素を含み、前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池。
  2. 前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち、複数種類の光増感色素が担持されている多孔質酸化物半導体部において、複数種類の前記光増感色素が互いに異なる吸収ピーク波長を有する、請求項1に記載の色素増感太陽電池。
  3. 前記電解質が、IおよびI からなる酸化還元対を含み、前記電解質中のI の濃度が0.006M以下である、請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池。
  4. 前記透明導電性基板上に設けられる前記複数の多孔質酸化物半導体部の前記透明導電性基板からの厚さが同一である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  5. 前記透明導電性基板上に設けられる前記複数の多孔質酸化物半導体部のうちの少なくとも1つの多孔質酸化物半導体部には共吸着剤が吸着されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  6. 前記透明導電性基板と前記対極とを連結する封止部を更に備え、前記封止部と前記透明導電性基板との間に、発色した無機封止部が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  7. 透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する多孔質酸化物半導体部形成工程と、
    前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部を除く残りの多孔質酸化物半導体部をマスク部材にて覆い隠して第1構造体を得てから、前記第1構造体を、光増感色素を含む第1色素溶液中に浸漬させる第1浸漬工程と、
    前記マスク部材にて覆い隠された残りの多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部から前記マスク部材の少なくとも一部を剥がして第2構造体を得てから、前記第2構造体を、前記光増感色素と異なる種類の光増感色素を含む第2色素溶液中に浸漬させ、前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるようにする第2浸漬工程と、
    前記透明導電性基板と対極との間に電解質が配置されるように前記透明導電性基板と前記対極とを貼り合せる貼合せ工程とを含み、
    前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池の製造方法。
  8. 透明導電性基板上に複数の多孔質酸化物半導体部を形成する多孔質酸化物半導体部形成工程と、
    前記複数の多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部を除く残りの多孔質酸化物半導体部をマスク部材にて覆い隠して第1構造体を得てから、前記第1構造体を、光増感色素を含む第1色素溶液中に浸漬させる第1浸漬工程と、
    前記マスク部材にて覆い隠された残りの多孔質酸化物半導体部のうち1つの多孔質酸化物半導体部から前記マスク部材の少なくとも一部を剥がして第2構造体を得てから、前記第2構造体を、前記光増感色素と異なる種類の光増感色素を含む第2色素溶液中に浸漬させる第2浸漬工程と、
    前記第2浸漬工程を繰り返すことによって、前記複数の多孔質酸化物半導体部に担持される光増感色素の種類の数が互いに異なるようにする繰返工程と、
    前記透明導電性基板と対極との間に電解質が配置されるように前記透明導電性基板と前記対極とを貼り合せる貼合せ工程とを含み、
    前記多孔質酸化物半導体部が、少なくとも1つの多孔質酸化物半導体層で構成されている、色素増感太陽電池の製造方法。
  9. 前記マスク部材が、
    前記透明導電性基板上に、前記多孔質酸化物半導体部を包囲するように貼り付けられる環状の接着剤と、
    前記接着剤とともに前記多孔質酸化物半導体部を覆い隠すカバー部材とを有する、請求項7又は8に記載の色素増感太陽電池の製造方法。
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