JP6718322B2 - 光電変換素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光電変換素子に関する。
光電変換素子として、安価で、高い光電変換効率が得られることから色素を用いた光電変換素子が注目されている。
このような色素を用いた光電変換素子として、例えば下記特許文献1に記載の色素増感太陽電池素子が知られている。下記特許文献1に記載の色素増感太陽電池素子は、透明基板と、透明基板上に設けられる複数の光電変換セルと、隣り合う2つの光電変換セル同士を接続する配線材とを備えており、複数の光電変換セルの各々は、透明導電層と、透明導電層に対向し、金属基板を有する対向基板と、透明基板と対向基板とを接合する環状の封止部とを有している。ここで、配線材は、隣り合う2つの光電変換セルのうちの一方の光電変換セルの対向基板の金属基板と、他方の光電変換セルの透明導電層とを接続している。一方、封止部は透明基板と対向基板との間に配置される第1封止部と、第1封止部とともに対向基板の周縁部を挟むように設けられる第2封止部とを有している。
特開2014−211951号公報
しかし、上記特許文献1に記載の光電変換素子は以下の課題を有していた。すなわち、上記特許文献1記載の光電変換素子は、高温環境下に配置される場合に耐久性向上の点で改善の余地を有していた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下に配置される場合でも耐久性を向上させることができる光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため検討した。まず特許文献1においては、具体的に開示されてはいないものの、配線材は、金属基板から延出し、第2封止部の上を乗り越え封止部の外周面に沿って透明基板側に向かい、透明基板上の透明導電層に接続されるものと考えられる。この場合、配線材は既に伸びきった状態にあり、そのため、色素増感太陽電池素子が高温環境下に置かれて封止部の厚さが過度に増大すると、配線材に過大な応力が加わるおそれがあるのではないかと本発明者は考えた。そこで、本発明者は、配線材が伸びきらない状態にするべく鋭意検討を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、透明基板と、前記透明基板上に設けられる少なくとも1つの光電変換セルと、前記少なくとも1つの光電変換セルと前記透明基板側に設けられる被接続領域とを接続する配線材とを備える光電変換素子であって、前記光電変換セルが、前記透明基板上に設けられる透明導電層と、前記透明導電層に対向し、金属基板を含む対向基板と、前記透明基板及び前記対向基板を接合し、樹脂を含む樹脂封止部を有する環状の封止部とを備えており、前記封止部が、前記対向基板の厚さ方向に沿って見た場合に前記対向基板よりも外側に突出する外側突出部を有し、前記配線材が、前記被接続領域に接続される第1接続端部と、前記金属基板のうち前記透明導電層と反対側の表面に接続される第2接続端部と、前記第1接続端部及び前記第2接続端部を連結する連結部とを有し、前記連結部が、前記封止部の前記外側突出部の外周面に沿って配置される第1連結部と、前記対向基板の外周面に沿って配置される第2連結部と、前記第1連結部及び前記第2連結部の間に設けられる中間連結部とを有し、前記中間連結部が前記第1連結部及び前記第2連結部の各々に対して屈曲している、光電変換素子である。
この光電変換素子によれば、当該光電変換素子が高温環境下に置かれると、樹脂封止部が膨張して樹脂封止部の厚さが増大する。このとき、仮に、封止部が外側突出部を有さず且つ連結部が第1連結部と第2連結部のみで構成され中間連結部を有しないと仮定した場合、連結部は既に伸びきった状態となる。このため、樹脂封止部の厚さが大きく増大して対向基板の金属基板が透明導電層から離れる方向に移動した場合には連結部に直ちに過大な応力が加えられる。これに対し、本発明の光電変換素子のように、封止部が外側突出部を有し且つ連結部が第1連結部と第2連結部との間に第1連結部及び第2連結部の各々に対して屈曲する中間連結部を有していると、連結部は真っ直ぐになるまで伸びる余地を有することが可能となる。このため、樹脂封止部の厚さが大きく増大して対向基板の金属基板が透明導電層から離れる方向に移動した場合でも、連結部が真っ直ぐになるまでは連結部に過大な応力が加わることを十分に抑制できる。その結果、配線材の破断が十分に抑制される。従って、本発明の光電変換素子によれば、高温環境下に配置される場合でも耐久性を向上させることができる。
上記光電変換素子においては、前記被接続領域が、例えば前記透明基板上に設けられている。
上記光電変換素子においては、前記被接続領域が、前記透明基板のうち前記対向基板側の表面領域と、前記表面領域に接続され、前記透明基板の外周面に設けられる側面領域とで構成されていることが好ましい。
この場合、配線材の第1接続端部の被接続領域が側面領域を有すると、配線材から、端子を接触させることによって電流を取り出す場合に、透明基板のうち対向基板側の表面領域の面積を小さくしても、透明基板の外周面に設けられる側面領域の面積を大きくすれば端子を接触させることが容易となる。このため、被接続領域の表面領域の面積を小さくすることが可能となり、その分、封止部の内側の開口面積を増加させることができる。その結果、本発明によれば、光電変換素子の開口率を増加させることができる。
本発明によれば、高温環境下に配置される場合でも耐久性を向上させることができる光電変換素子が提供される。
本発明の光電変換素子の第1実施形態を示す平面図である。 図1のII−II線に沿った切断面端面図である。 図1のIII−III線に沿った切断面端面図である。 図2の部分拡大図である。 図3の部分拡大図である。 図1の光電変換素子の製造方法の一工程を示す平面図である。 図1の光電変換素子の製造方法の一工程を示す平面図である。 図1の光電変換素子の製造方法の一工程を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の光電変換素子の一実施形態を示す平面図、図2は、図1のII−II線に沿った切断面端面図、図3は、図1のIII−III線に沿った切断面端面図、図4は、図2の部分拡大図、図5は、図3の部分拡大図である。
図1〜図5に示すように、光電変換素子100は、透明基板11と、透明基板11上に設けられる1つの光電変換セル50と、光電変換セル50と透明基板11側に設けられる被接続領域14とを接続する配線材60と、光電変換セル50と透明基板11側に設けられる被接続領域15とを接続する電流取出端子70とを備えている。配線材60及び電流取出端子70は互いに隣り合う位置に配置されている。なお、本実施形態において、配線材60は電流取出端子として機能する。
図2に示すように、光電変換セル50は、透明導電層10と、透明導電層10に対向する対向基板20と、透明導電層10上に設けられる酸化物半導体層13と、透明基板11及び対向基板20の間に設けられる電解質40と、透明基板11及び対向基板20を接合する環状の封止部30とを備えている。電解質40は、透明基板11、対向基板20及び封止部30によって形成されるセル空間に充填されている。
酸化物半導体層13は封止部30の内側に配置されている。また酸化物半導体層13には色素が吸着されている。
封止部30は、無機材料で構成される無機封止部30Bと、無機封止部30Bと対向基板20とを連結し、樹脂を含む樹脂封止部30Aとで構成されている。図1及び図3に示すように、封止部30は、透明基板11と対向基板20との間に設けられる環状の封止本体部31と、封止本体部31に設けられ、対向基板20の厚さ方向に沿って見た場合に対向基板20よりも外側に突出する外側突出部32とで構成されている。外側突出部32は環状の封止本体部31の一部においてのみ設けられている。具体的には、外側突出部32は、封止部30の外側で露出している透明基板11の一部のみを覆っている。
図2に示すように、対向基板20は、基板と電極を兼ねる金属基板21と、金属基板21の透明導電層10側に設けられて電解質40の還元に寄与する導電性の触媒層22とを備えている。
配線材60は、被接続領域14に接続される第1接続端部61と、金属基板21のうち透明導電層10と反対側の表面に接続される第2接続端部62と、第1接続端部61及び第2接続端部62を連結する連結部63とを有している。ここで、連結部63は、封止部30の外側突出部32の外周面33に沿って配置される第1連結部63aと、対向基板20の外周面23に沿って配置される第2連結部63bと、第1連結部63a及び第2連結部63bの間に設けられる中間連結部63cとで構成されている。ここで、中間連結部63cは、外側突出部32のうち透明導電層10と反対側の表面に沿って設けられており、第1連結部63a及び第2連結部63bの各々に対して屈曲している。
また、図4に示すように、被接続領域14は、透明基板11のうち対向基板20側の表面領域14aと、表面領域14aに接続され、透明基板11の外周面に設けられる側面領域14bとで構成されており、第1接続端部61は、表面領域14aのみならず、側面領域14bでも透明基板11に接続されている。
さらに、図5に示すように、被接続領域15は、透明導電層10のうち対向基板20側の表面領域15aと、表面領域15aに接続され、透明基板11の外周面に設けられる側面領域15bとで構成されており、電流取出端子70は、表面領域15aのみならず、側面領域15bでも透明基板11に接続されている。
光電変換素子100によれば、当該光電変換素子100が高温環境下に置かれると、樹脂封止部30Aが膨張して樹脂封止部30Aの厚さが増大する。このとき、仮に、封止部30が外側突出部32を有さず且つ連結部63が第1連結部63aと第2連結部63bのみで構成され中間連結部63cを有しないと仮定した場合、連結部63は既に伸びきった状態となっている。このため、樹脂封止部30Aの厚さが大きく増大して対向基板20の金属基板21が透明導電層10から離れる方向に移動した場合には連結部63に直ちに過大な応力が加えられる。これに対し、光電変換素子100のように、封止部30が外側突出部32を有し且つ連結部63が第1連結部61と第2連結部62との間に第1連結部61及び第2連結部62の各々に対して屈曲する中間連結部63cを有していると、連結部63は真っ直ぐになるまで伸びる余地を有することが可能となる。このため、樹脂封止部30Aの厚さが大きく増大して対向基板20の金属基板21が透明導電層10から離れる方向に移動しても、連結部63が真っ直ぐになるまでは連結部63に過大な応力が加わることを十分に抑制できる。その結果、配線材60の破断が十分に抑制される。従って、光電変換素子100によれば、耐久性を向上させることができる。
また、光電変換素子100においては、配線材60の第1接続端部61の被接続領域14が、表面領域14aと側面領域14bとで構成されており、配線材60の第1接続端部61が、表面領域14aのみならず、側面領域14bでも透明基板11に接続されている。この場合、配線材60の第1接続端部61の被接続領域14が側面領域14bを有すると、配線材60から、端子(図示せず)を接触させることによって電流を取り出す場合に、透明基板11のうち対向基板20側の表面領域14aの面積を小さくしても、透明基板11の外周面に設けられる側面領域14bの面積を大きくすれば端子を接触させることが容易となる。このため、被接続領域14の表面領域14aの面積を小さくすることが可能となり、その分、封止部30の内側の開口面積を増加させることができる。その結果、光電変換素子100の開口率を増加させることができる。
また、光電変換素子100においては、電流取出部70の被接続領域15が、表面領域15aと側面領域15bとで構成されており、電流取出端子70が、表面領域15aのみならず、側面領域15bでも透明基板11に接続されている。この場合、電流取出部70の被接続領域15が側面領域15bを有すると、電流取出端子70から、端子(図示せず)を接触させることによって電流を取り出す場合に、透明基板11のうち対向基板20側の表面領域15aの面積を小さくしても、透明基板11の外周面に設けられる側面領域15bの面積を大きくすれば端子を接触させることが容易となる。このため、被接続領域15の表面領域15aの面積を小さくすることが可能となり、その分、封止部30の内側の開口面積を増加させることができる。その結果、光電変換素子100の開口率をより増加させることができる。
次に、透明基板11、透明導電層10、対向基板20、酸化物半導体層13、封止部30、電解質40、色素、配線材60及び電流取出端子70について詳細に説明する。
<透明基板>
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルスルフォン(PES)などの絶縁材料が挙げられる。透明基板11の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜40000μmの範囲にすればよい。
<透明導電層>
透明導電層10を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、及び、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電層10は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電層10が単層で構成される場合、透明導電層10は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電層10の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
<対向基板>
対向基板20は、上述したように、基板と電極を兼ねる金属基板21と、導電性の触媒層22とを備える。
金属基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス等の耐食性の金属材料で構成される。また、基板と電極を分けて、上述した絶縁性の透明基板11に電極としてITO、FTO等の導電性酸化物からなる透明導電層を形成した積層体で構成されてもよい。金属基板21の厚さは、光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜4mmとすればよい。
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンナノチューブが好適に用いられる。なお、対向基板20は、金属基板21が触媒機能を有する場合(例えばカーボンなどを含有する場合)には触媒層22を有していなくてもよい。
<酸化物半導体層>
酸化物半導体層13は酸化物半導体粒子で構成されている。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)又はこれらの2種以上で構成される。
酸化物半導体層13の厚さは特に制限されるものではないが、通常は2〜40μmであり、好ましくは10〜30μmである。
<封止部>
封止部30は、上述したように、無機封止部30Bと、樹脂封止部30Aとで構成されている。
無機封止部30Bは、無機材料で構成されるものであれば特に制限されるものではなく、無機封止部30Bを構成する無機材料としては、例えばガラス及びセラミックなどが挙げられる。
樹脂封止部30Aは、樹脂を含む材料で構成されていれば特に制限されるものではないが、樹脂封止部30Aを構成する樹脂としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂などが挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
また封止部30は、上述したように、封止本体部31と外側突出部32とで構成されている。外側突出部32の対向基板20からの突出量は特に制限されるものではないが、封止本体部31の幅100%に対して5〜50%であることが好ましい。この場合、外側突出部32の対向基板20からの突出量が封止本体部31の幅100%に対して5%未満である場合に比べて、中間連結部63cを長くすることが可能となり、光電変換素子100が高温環境下に置かれ、樹脂封止部30Aの厚さが過度に増加しても、連結部63に過大な応力がかかりにくくなる。また、外側突出部32の対向基板20からの突出量が、封止本体部31の幅100%に対して5〜10%であると、10%を超える場合に比べて開口率をより向上させることができる。
<電解質>
電解質40は、例えばヨウ化物イオン(ヨウ素イオン)/ポリヨウ化物イオンなどの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I )のほか、臭化物イオン(臭素イオン)/ポリ臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。なお、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオンは、ヨウ素(I)と、アニオンとしてのアイオダイド(I)を含む塩(イオン性液体や固体塩)とによって形成することができる。アニオンとしてアイオダイドを有するイオン性液体を用いる場合には、ヨウ素のみ添加すればよく、有機溶媒や、アニオンとしてアイオダイド以外のイオン性液体を用いる場合には、LiIやテトラブチルアンモニウムアイオダイドなどのアニオンとしてアイオダイド(I)を含む塩を添加すればよい。
また電解質40は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
また、電解質40は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
また電解質40には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1−ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
なお、電解質40は、ヨウ化物イオン/ポリヨウ化物イオン(例えばI/I )からなる酸化還元対を含み、ポリヨウ化物イオンの濃度が0.006mol/リットル以下であることが好ましい。この場合、電子を運ぶポリヨウ化物イオンの濃度が低いため、漏れ電流をより減少させることができる。このため、開放電圧をより増加させることができるため、光電変換特性をより向上させることができる。特に、ポリヨウ化物イオンの濃度は0.005mol/リットル以下であることが好ましく、0〜6×10−6mol/リットルであることがより好ましく、0〜6×10−8mol/リットルであることがさらに好ましい。この場合、光電変換素子100を導電性基板15の光入射側から見た場合に、電解質40の色を目立たなくすることができる。
<色素>
色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素などの光増感色素や、ハロゲン化鉛系ペロブスカイト結晶などの有機−無機複合色素などが挙げられる。ハロゲン化鉛系ペロブスカイトとしては、例えばCHNHPbX(X=Cl、Br、I)が用いられる。ここで、色素として光増感色素を用いる場合には、光電変換素子100は色素増感光電変換素子となり、光電変換セル50は色素増感光電変換セルとなる。
上記色素の中でも、ビピリジン構造又はターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体からなる光増感色素が好ましい。この場合、光電変換素子100の光電変換特性をより向上させることができる。
<配線材>
配線材60は金属材料と樹脂とを含む。金属材料としては、例えば銀、銅およびインジウムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いてもよい。樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂又はエポキシ系樹脂などが用いられる。
<電流取出端子>
電流取出端子70を構成する材料としては、配線材60と同様の材料を用いることができる。
次に、上述した光電変換素子100の製造方法について図6〜図8を参照しながら説明する。図6〜図8は、図1の光電変換素子の製造方法の一連の工程を示す平面図である。
まず1つの透明基板11の上に透明導電層10を形成してなる積層体を用意する。
透明導電層10の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、スプレー熱分解法及びCVD法などが用いられる。
次に、この積層体のうち透明導電層10の周縁部の一部を例えばレーザスクライブ法によって除去し、透明基板11の一部を露出させる(図6参照)。以下、透明基板11のうち露出した一部の領域を「露出領域」と呼ぶ。
次に、上記積層体の透明導電層10の上に酸化物半導体層13を形成する。酸化物半導体層13は、酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、焼成して形成すればよい。
酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。
酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又は、バーコート法などを用いることができる。
焼成温度は酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は1〜5時間である。
次に、透明導電層10の上に、四角環状の無機封止部30Bを形成する。無機封止部30Bは、無機材料を含む無機封止部形成用ペーストを印刷した後、焼成して形成すればよい。このとき、無機封止部30Bは、幅が一定の四角環状の本体部と、本体部の一部から外側に突出し、透明基板11の露出領域の一部を覆う突出部とを形成するように形成する。
無機封止部形成用ペーストは、上述した無機材料のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。
無機封止部形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又は、バーコート法などを用いることができる。
次に、透明基板11の厚さ方向から見た場合に無機封止部30Bと同様の形状を有する環状の封止部形成体を準備する。封止部形成体は、例えば封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに1つの四角形状の開口を形成することによって得ることができる。
そして、この封止部形成体を無機封止部30Bに接着させる。このとき、封止部形成体の無機封止部30Bへの接着は、例えば封止部形成体を加熱溶融させることによって行うことができる。
このとき、封止部形成体が樹脂封止部30Aとなり、樹脂封止部30Aと無機封止部30Bとからなる封止部30が得られる。こうして構造体が得られる(図7参照)。
次に、構造体の酸化物半導体層13の表面に色素を吸着させる。このためには、作用極を、色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その色素を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な色素を洗い流し、乾燥させることで、色素を酸化物半導体層13に吸着させればよい。但し、色素を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって色素を酸化物半導体層13に吸着させてもよい。
次に、電解質40を準備し、酸化物半導体層13の上に配置する。電解質40は、例えばスクリーン印刷等の印刷法によって配置することが可能である。
次に、対向基板20を用意する。そして、この対向基板20を、上記構造体のうち封止部30の開口を塞ぐように配置した後、封止部30と貼り合わせる。このとき、対向基板20の封止部30への貼合せは、例えば減圧下で行う。また、このとき、対向基板20の周縁部から封止部30の一部が、透明基板11の露出領域側に突出するように、すなわち封止部30が外側突出部32を有するように、対向基板20を封止部30に貼り合わせる(図8参照)。
次に、配線材形成用ペーストを、対向基板20の金属基板21、対向基板21の外周面23、封止部30の外側突出部32、透明基板11のうち対向基板20側の表面、及び、透明基板11の外周面に塗布した後、加熱して配線材60を形成する。このとき、配線材60の第1接続端部61が透明基板11の被接続領域14に接続され、第2接続端部62が対向基板20の金属基板21のうち透明導電層10と反対側の表面に接続され、連結部63が、封止部30の外側突出部32の外周面33に沿って配置される第1連結部63aと、対向基板20の外周面23に沿って配置される第2連結部63bと、第1連結部63a及び第2連結部63bの間に設けられる中間連結部63cとで構成されるように配線材60を形成する。
一方、透明導電層10のうち封止部30の外側に露出している部分及び透明基板11の外周面、すなわち透明基板11側の被接続領域15に電流取出端子形成用ペーストを塗布し、加熱して電流取出端子70を形成する。具体的には、電流取出端子70の一部が透明導電層10のうち対向基板20側の表面領域15aに接続され、残部が、透明基板11の外周面に設けられる側面領域15bに接続されるように電流取出端子70が形成される。
以上のようにして光電変換素子100が得られる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では透明導電層10上に酸化物半導体層13が設けられているが、酸化物半導体層13は対向基板20の金属基板21上に設けられてもよい。但し、この場合、触媒層22は透明導電層10上に設けられることになる。
さらに上記実施形態では、封止部30が、無機封止部30Bと、樹脂封止部30Aとで構成されているが、封止部30は樹脂封止部30Aのみで構成されてもよい。
さらにまた上記実施形態では、封止部30において、外側突出部32が封止部30の外側で露出している透明基板11の一部のみを覆っているが、外側突出部32は透明基板11の全部を覆い隠すように設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、外側突出部32が封止部30の封止本体部31の外周縁のうち配線材60と重なる部分からのみならず、配線材60と重ならない部分からも延びているが、外側突出部32は、封止本体部31の外周縁のうち配線材60と重なる部分のみから延びていてもよいし、配線材60と重なる部分と、配線材60と重ならない部分のうち配線材60と重なる部分の近傍の部分のみから延びていてもよい。
さらに、上記実施形態では、外側突出部32が封止部30の外側で露出している透明基板11のみを覆うように設けられているが、外側突出部32は、封止部30の外側で露出している透明導電層12をも覆うように設けられてもよい。この場合、外側突出部32は透明導電層12の一部のみを覆ってもよいし、透明導電層12の全部を覆ってもよい。ここで、外側突出部32は電流取出端子70を覆ってもよいし、覆っていなくてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、外側突出部32は環状の封止本体部31の一部においてのみ設けられているが、環状の封止本体部31の全周にわたって外側突出部32が設けられていてもよい。
また上記実施形態では、配線材60の第1接続端部61の被接続領域14が表面領域14aと側面領域14bとで構成されているが、被接続領域14は表面領域14aのみで構成されていてもよい。すなわち、被接続領域14は側面領域14bを有していなくてもよい。あるいは、被接続領域14は側面領域14bのみで構成されていてもよい。すなわち、被接続領域14は表面領域14aを有していなくてもよい。
また、上記実施形態では、電流取出端子70の被接続領域15が表面領域15aと側面領域15bとで構成されているが、被接続領域15は表面領域15aのみで構成されていてもよい。すなわち、被接続領域15は側面領域15bを有していなくてもよい。
さらに、上記実施形態では、封止部30の外周面は露出された状態となっているが、封止部30よりも酸素透過性の低い酸素低透過部で覆われることが好ましい。この場合、酸素低透過部によって封止部30内への酸素の透過が抑制されるため、光電変換素子100の特性の低下が十分に抑制される。封止部30を酸素低透過部で覆うためには、例えばシート状の酸素低透過部で対向基板20を覆い、酸素透過部の周縁部を、対向基板20の周縁で折り曲げて封止部30を覆えばよい。
酸素低透過部を構成する材料としては、例えば封止部30が無水マレイン酸変性ポリエチレンで構成される場合には、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などのビニルアルコール単位を有する樹脂のほか、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。中でも、ビニルアルコール単位を有する樹脂が好ましい。この場合、酸素の透過をより効果的に抑制できる。
また上記実施形態では、光電変換素子100が1つの光電変換セル50を有しているが、光電変換素子は、光電変換セル50を複数備えていてもよい。
さらにまた上記実施形態では、配線材60の第1接続端部61の被接続領域14が透明基板11上に設けられているが、光電変換素子が透明基板11上に複数の光電変換セル50を備えており、配線材60が、対向基板20の金属基板21と、隣の光電変換セル50の透明導電層10とを接続するように構成されている場合には、配線材60の第1接続端部61の被接続領域14は透明導電層10上に設けられてもよい。
以下、本発明の内容を、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず112mm×56mm×1mmのガラスからなる透明基板11の上に厚さ1μmのFTOからなる矩形状の透明導電層を形成してなる積層体を用意した。
次に、この積層体のうち矩形状の透明導電層の端部の幅0.3mmの線状領域のうちの一部の線状領域をCOレーザ(ユニバーサルシステム社製V−460)を用いたレーザスクライブ法によって除去し、透明基板11の一部の帯状の領域(露出領域)を露出させた。
次に、透明導電層の上に酸化物半導体層を形成した。酸化物半導体層は、チタニアを含む酸化物半導体層形成用ペーストをスクリーン印刷により印刷した後、500℃で0.5時間焼成して形成した。
次に、透明導電層の上に四角環状の無機封止部を形成した。無機封止部は、ガラスフリットを含む無機封止部形成用ペーストをスクリーン印刷により印刷した後、500℃で0.5時間焼成して形成した。このとき、無機封止部は、幅が2mm、厚さが0.02mmである四角環状の本体部と、本体部の一部から外側に突出し、上記露出領域を覆う突出部とを有するように形成した。またこのとき、突出部の突出量が0.15mmとなるように無機封止部を形成した。
次に、環状の封止部形成体を準備した。封止部形成体は、透明基板の厚さ方向から見た場合に無機封止部と同一形状になるように形成した。具体的には、封止部形成体は、無水マレイン酸変性ポリエチレン(商品名:バイネル、デュポン社製)からなる111.65mm×56mmの封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに107.5mm×52mmの1つの四角形状の開口を形成することによって形成した。
そして、この封止部形成体を200℃で加熱しながら加圧して無機封止部30Bに接着させた。このとき、封止部形成体が樹脂封止部となり、樹脂封止部と無機封止部とからなる封止部を得た。こうして構造体を得た。
次に、上記のようにして得られた構造体を、N719からなる光増感色素を0.2mM含み、溶媒を、アセトニトリルとtertブタノールとを1:1の体積比で混合してなる混合溶媒とした色素溶液中に一昼夜浸漬させた後、取り出して乾燥させ、酸化物半導体層に光増感色素を担持させた。
次に、酸化物半導体層の上に、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドおよび3−メトキシプロピオニトリルの混合物に、I、メチルベンゾイミダゾール、ブチルベンゾイミダゾール、グアニジウムチオシアネート及びt−ブチルピリジンを加えて得られる電解質をスクリーン印刷法によって塗布し乾燥させて配置した。
次に、対向基板としての対極を用意した。対極は、11.15cm×5.6cm×40μmのチタン箔の上にスパッタリング法によって厚さ5nmの白金からなる触媒層を形成することによって用意した。そして、この対向基板20を、上記構造体のうち封止部30の開口を塞ぐように配置した後、減圧下、封止部30と貼り合わせた。また、このとき、対向基板の周縁部から封止部の一部が、透明基板の露出領域側に突出するように、すなわち封止部が外側突出部を有するように、対向基板を封止部に貼り合わせた。
次に、配線材形成用の銀ペースト(福田金属箔粉工業社製「GL−6000X16」)を、対向基板の金属基板、対向基板の外周面、封止部の外側突出部の表面、透明基板のうち対向基板側の表面、透明基板の外周面に塗布した後、加熱して配線材を形成した。
一方、電流取出部形成用の銀ペースト(福田金属箔粉工業社製「GL−6000X16」)を、透明導電層のうち封止部の外側に露出している部分及び透明基板の外周面、すなわち透明基板側の被接続領域に塗布し乾燥させて電流取出端子を形成した。
以上のようにして光電変換素子を得た。
(比較例1)
無機封止部を、四角環状の本体部のみで且つ突出部を有しないように形成し、封止部形成体を無機封止部と同一形状になるように形成することによって封止部を、対極より外側に突出する外側突出部を有しないように形成し、配線材を、連結部が中間連結部を有しないように形成したこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
<耐久性>
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1で得られた光電変換素子について、光電変換効率(η)を測定した。続いて、実施例1及び比較例1で得られた光電変換素子について、JIS C 8938に準じたヒートサイクル試験を行った後の光電変換効率(η)を測定した。そして、下記式に基づき、光電変換効率の保持率を算出した。結果を表1に示す。なお、ヒートサイクル試験は、環境温度を−40℃から90℃まで上昇させてから下降させるサイクルを1サイクルとした場合に200サイクル行った。

光電変換効率の保持率(%)=η/η×100

Figure 0006718322
表1に示すように、実施例1の光電変換素子では、ヒートサイクル試験後の光電変換効率の保持率が比較例1の光電変換素子に比べて顕著に大きくなっていた。このことから、実施例1の光電変換素子は、比較例1の光電変換素子に比べて、高温環境下に配置される場合に配線材が破断されにくくなっているものと考えられる。
以上のことから、本発明の光電変換素子によれば、高温環境下に配置した場合でも耐久性を向上させることができることが確認された。
10…透明導電層
11…透明基板
14…被接続領域
14a…表面領域
14b…側面領域
20…対向基板
21…金属基板
30…封止部
30A…樹脂封止部
50…光電変換セル
60…配線材
61…第1接続端部
62…第2接続端部
63…連結部
63a…第1連結部
63b…第2連結部
63c…中間連結部
100…光電変換素子

Claims (3)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板上に設けられる少なくとも1つの光電変換セルと、
    前記少なくとも1つの光電変換セルと前記透明基板側に設けられる被接続領域とを接続する配線材とを備える光電変換素子であって、
    前記光電変換セルが、
    前記透明基板上に設けられる透明導電層と、
    前記透明導電層に対向し、金属基板を含む対向基板と、
    前記透明基板及び前記対向基板を接合し、樹脂を含む樹脂封止部を有する環状の封止部とを備えており、
    前記封止部が、前記対向基板の厚さ方向に沿って見た場合に前記対向基板よりも外側に突出する外側突出部を有し、
    前記配線材が、
    前記被接続領域に接続される第1接続端部と、
    前記金属基板のうち前記透明導電層と反対側の表面に接続される第2接続端部と、
    前記第1接続端部及び前記第2接続端部を連結する連結部とを有し、
    前記連結部が、
    前記封止部の前記外側突出部の外周面に沿って配置される第1連結部と、
    前記対向基板の外周面に沿って配置される第2連結部と、
    前記第1連結部及び前記第2連結部の間に設けられる中間連結部とを有し、
    前記中間連結部が前記第1連結部及び前記第2連結部の各々に対して屈曲しており、
    前記被接続領域が、前記透明基板のうち前記対向基板側の表面領域を有する、光電変換素子。
  2. 前記被接続領域が、前記表面領域に接続され、前記透明基板の外周面に設けられる側面領域をさらに有する、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記配線材は、金属材料と樹脂とを含む、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
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