JP6584883B2 - 色素増感光電変換素子用電解質、及び、これを用いた色素増感光電変換素子 - Google Patents

色素増感光電変換素子用電解質、及び、これを用いた色素増感光電変換素子 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感光電変換素子用電解質、及び、これを用いた色素増感光電変換素子に関する。
色素増感光電変換素子は、スイスのグレッツェルらによって開発されたものであり、光電変換効率が高く、製造コストが低いなどの利点を持つため注目されている次世代光電変換素子である。
色素増感光電変換素子は一般に、作用極と、対極と、作用極の酸化物半導体層に担持される光増感色素と、作用極及び対極間に配置される電解質とを備えている。そして電解質には、例えばハロゲンとハロゲン化物塩とによって形成される酸化還元対が含まれている。
色素増感光電変換素子においては光電変換特性を向上させることが重要であり、そのために、例えば電解質に着目した種々の提案がなされている。
例えば下記特許文献1には、ヨウ素系電解質と、銀イオンとを含む電解質が開示されている。
国際公開第2004/006381号
しかしながら、上記特許文献1に記載の電解質を備えた色素増感光電変換素子は以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の電解質を備えた色素増感光電変換素子は、太陽光のような高照度下に置かれると、比較的短時間で出力が低下することがあった。一方、電解質に銀イオンを含めないようにすると、出力の低下は抑制されるものの、光電変換特性が低下する。そのため、銀イオンを電解質中に残したまま、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性および耐光性を付与できる色素増感光電変換素子用電解質が望まれていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性および耐光性を付与できる色素増感光電変換素子用電解質、及びこれを用いた色素増感光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、電解質の組成に着目して鋭意研究を重ねた。その結果、イミダゾール化合物を電解質にさらに配合することで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、ハロゲンと、前記ハロゲンとともに酸化還元対を形成するハロゲン化物塩と、イミダゾール化合物と、銀イオンとを含み、下記式(1)で表される濃度比が50〜500である、色素増感光電変換素子用電解質である。
濃度比=C2/C3・・・(1)
(C2は、前記イミダゾール化合物の濃度(M)を表し、C3は、前記銀イオンの濃度(M)を表す)
本発明の色素増感光電変換素子用電解質によれば、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性および耐光性を付与できる。
このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のように推測している。すなわち、本発明の電解質が、酸化物半導体層を有する色素増感光電変換素子に含まれる色素増感光電変換セルの電解質として用いられる場合、電解質中の銀イオンとハロゲン化物イオンとが反応してハロゲン化銀が生成する。このとき、電解質中にイミダゾール化合物が含まれていない場合、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれると、このハロゲン化銀が銀単体として酸化物半導体層の表面を核として析出しやすくなる。ここで、銀単体が析出されると、この銀単体が第1電極および第2電極の各々に接触して両者を短絡させ得る。その点、本発明の電解質中に含まれるイミダゾール化合物は、酸化物半導体層に吸着しやすく、吸着した後は、ハロゲン化銀が酸化物半導体層の表面を核にして成長することが十分に抑制されることになる。このため、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれても、第1電極と第2電極との短絡が十分に抑制される。その結果、本発明の電解質は、色素増感光電変換素子に対して優れた耐光性を付与できるものと考えられる。また本発明の電解質によれば、上述したように、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれても、銀単体が酸化物半導体層の表面を核にして成長することが十分に抑制される。このため、電解質中の銀イオン濃度の減少が十分に抑制され、電解質の電気伝導度が向上する。その結果、本発明の電解質は、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性を付与し得るものと本発明者らは推測している。
また、上記色素増感光電変換素子用電解質においては、前記色素増感光電変換素子用電解質中の前記イミダゾール化合物の濃度が、前記色素増感光電変換素子用電解質中の前記銀イオンの濃度よりも高い。このため、電解質が、色素増感光電変換素子に含まれる色素増感光電変換セルの電解質として用いられる場合に、イミダゾール化合物が酸化物半導体層の表面に吸着しやすくなる。このため、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれても、ハロゲン化銀が酸化物半導体層の表面に吸着されることが効果的に阻止されるため、銀単体が酸化物半導体層の表面を核にして成長することが効果的に抑制されることになる。従って、本発明の電解質によれば、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれても、第1電極と第2電極との短絡が特に効果的に抑制され、色素増感光電変換素子に対して特に効果的に耐光性を付与できる。
上記色素増感光電変換素子用電解質においては、前記ハロゲンの濃度が前記銀イオンの濃度よりも高いことが好ましい。
この場合、電解質が、色素増感光電変換素子に含まれる色素増感光電変換セルの電解質として用いられる場合に、色素増感光電変換素子が高照度下に置かれ、銀イオンとハロゲンとが過剰に反応しても、電解質中に、酸化還元反応に必要なハロゲンを残すことが可能となり、色素増感光電変換素子における光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
また本発明は、少なくとも1つの色素増感光電変換セルを備え、前記色素増感光電変換セルが、透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極又は前記第2電極に設けられる酸化物半導体層と、前記第1電極及び前記第2電極の間に設けられる電解質と、前記酸化物半導体層に吸着される光増感色素とを備え、前記電解質が、上述した色素増感光電変換素子用電解質からなる色素増感光電変換素子である
本発明の色素増感光電変換素子によれば、優れた光電変換特性および耐光性を有することが可能となる。
なお、本発明において、「ハロゲンの濃度」、「イミダゾール化合物の濃度」および「銀イオンの濃度」はいずれも、暗室にて測定された濃度をいうものとする。
本発明によれば、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性および耐光性を付与できる色素増感光電変換素子用電解質、及び、これを用いた色素増感光電変換素子が提供される。
本発明の色素増感光電変換素子の一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感光電変換素子の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、色素増感光電変換素子100は、1つの色素増感光電変換セル50で構成されており、色素増感光電変換セル50は、透明導電性基板15を有する作用極10と、透明導電性基板15に対向する対極20と、透明導電性基板15及び対極20を連結する環状の封止部30とを備えている。透明導電性基板15、対極20及び封止部30によって形成されるセル空間には電解質40が充填されている。
対極20は、導電性基板21と、導電性基板21の作用極10側に設けられて電解質40の還元に寄与する触媒層22とを備えている。本実施形態では、対極20によって第2電極が構成されている。
一方、作用極10は、透明導電性基板15と、透明導電性基板15上に設けられる少なくとも1つの酸化物半導体層13とを有している。透明導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11の上に設けられる透明導電膜12とで構成されている。酸化物半導体層13は、封止部30の内側に配置されている。また酸化物半導体層13には、光増感色素が吸着されている。本実施形態では、透明導電性基板15によって第1電極が構成されている。
上記電解質40は、ハロゲンと、ハロゲンとともに酸化還元対を形成するハロゲン化物塩と、イミダゾール化合物と、銀イオンとを含む。
色素増感光電変換素子100によれば、電解質40が上記構成を有することで、優れた光電変換特性および耐光性を有することが可能となる。
次に、作用極10、対極20、封止部30、電解質40及び光増感色素について詳細に説明する。
<作用極>
作用極10は、上述したように、透明導電性基板15と、透明導電性基板15上に設けられる少なくとも1つの酸化物半導体層13とを有している。透明導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11の上に設けられる透明導電膜12とで構成されている。
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、及び、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、色素増感光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜40000μmの範囲にすればよい。
透明導電膜12を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO)、及び、フッ素添加酸化スズ(FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。透明導電膜12は、単層でも、異なる導電性金属酸化物で構成される複数の層の積層体で構成されてもよい。透明導電膜12が単層で構成される場合、透明導電膜12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電膜12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子で構成されている。酸化物半導体粒子は、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化ニオブ(Nb)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タリウム(Ta)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム(Al)又はこれらの2種以上で構成される。酸化物半導体層13の厚さは、例えば0.1〜100μmとすればよい。
<対極>
対極20は、上述したように、導電性基板21と、導電性基板21のうち作用極10側に設けられて電解質40の還元に寄与する導電性の触媒層22とを備えるものである。
導電性基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板11にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。導電性基板21の厚さは、色素増感光電変換素子100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜4mmとすればよい。
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンナノチューブが好適に用いられる。
<封止部>
封止部30としては、例えば変性ポリオレフィン樹脂、ビニルアルコール重合体などの熱可塑性樹脂、及び、紫外線硬化樹脂などの樹脂が挙げられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばアイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
<電解質>
電解質40は、上述したように、ハロゲンと、ハロゲン化物塩と、イミダゾール化合物と、銀イオンとを含む。
上記ハロゲン及び上記ハロゲン化物塩は同一のハロゲン原子を有していることが好ましいが、異なるハロゲン原子を有していてもよい。
(ハロゲン)
電解質40において、ハロゲンおよびハロゲン化物塩が有するハロゲン原子としては、例えば臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
中でも、ハロゲン及びハロゲン化物塩が有するハロゲン原子は、ヨウ素原子であることが好ましい。すなわち、ハロゲンがヨウ素であり、ハロゲン化物塩がヨウ化物塩であることが好ましい。
この場合、色素増感光電変換素子100に用いる光増感色素のHOMO(結合性軌道)準位と電解質中のレドックス準位が適正な位置となるため、電子注入効率がより向上する。またヨウ素の還元反応が他のハロゲン種よりも優れているため、電解質40は、光励起した光増感色素を瞬時に基底状態に戻すことができ、光増感色素による逆反応等を妨げることができる。
電解質40中のハロゲンの濃度は、電解質40中の銀イオンの濃度より高くても低くてもよいが、高いことが好ましい。
この場合、電解質40が、色素増感光電変換素子100の電解質40として用いられる場合に、色素増感光電変換素子100が高照度下に置かれ、銀イオンとハロゲンとが過剰に反応しても、電解質40中に、酸化還元反応に必要なハロゲンを残すことが可能となり、色素増感光電変換素子100における光電変換特性の低下を十分に抑制することができる。
ここで、銀イオン濃度に対するハロゲンの濃度の比は1より大きければよいが、好ましくは1〜500であり、より好ましくは2〜100である。
また電解質40中のハロゲンの濃度は、通常は0.0005〜0.01Mであり、好ましくは0.001〜0.005Mである。
(ハロゲン化物塩)
電解質40に含まれるハロゲン化物塩としては、例えば、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムブロマイドなどの臭化物塩、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドなどのヨウ化物塩が挙げられる。
ハロゲンとハロゲン化物塩とによって形成される酸化還元対としては、ハロゲン化物イオンとポリハロゲン化物イオンの組合せ等が挙げられる。具体的には、I/I やBr/Br などが挙げられる。
(イミダゾール化合物)
イミダゾール化合物はイミダゾール環を有する化合物であればよく、無置換のイミダゾール化合物でも置換されたイミダゾール化合物でもよい。イミダゾール化合物が、置換されたイミダゾール化合物である場合、置換基としては、炭化水素基、スルホニル基、カルボキシル基などが挙げられる。置換基は、窒素原子、炭素原子、又はその両方に結合される。
ここで、炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられるが、水溶液に不溶であるという理由から脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は特に制限されるものではないが、1〜6であることが好ましい。また脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれでもよい。さらに脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、光増感色素や酸化還元対に対して不活性でありかつ安定であるという理由から飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
またイミダゾール化合物においては、少なくとも一部の置換基同士が互いに結合して芳香環を形成していてもよい。
イミダゾール化合物の具体例としては、例えば1−ブチルベンゾイミダゾール(NBB)、メチルベンゾイミダゾ−ル(NMB)、1−メチルイミダゾール(MI)、イソプロピルイミダゾール(IPI)などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電解質40中のイミダゾール化合物の濃度は、電解質40中の銀イオンの濃度より高くても低くてもよいが、高い方が好ましい。
この場合、電解質40が、色素増感光電変換素子100に含まれる色素増感光電変換セル50の電解質40として用いられる場合に、イミダゾール化合物が酸化物半導体層13の表面に吸着しやすくなる。その結果、色素増感光電変換素子100が高照度下に置かれても、ハロゲン化銀が酸化物半導体層13の表面に吸着されることが効果的に阻止されるため、銀単体が酸化物半導体層13の表面を核にして成長することがより十分に抑制されることになる。従って、特に効果的に色素増感光電変換素子100に対して耐光性を付与できる。
ここで、銀イオン濃度に対するイミダゾール化合物の濃度の比は1より大きければよいが、好ましくは10〜20000であり、より好ましくは100〜10000である。
また電解質40中のイミダゾール化合物の濃度は、通常は0.01〜1Mであり、好ましくは0.05〜0.5Mである。
(有機溶媒)
電解質40は、さらに有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(その他)
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
<光増感色素>
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。
なお、色素増感光電変換素子100が屋内や低照度(10〜10000lux)の環境下において使用される場合には、光増感色素として、ビピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体を用いることが好ましい。
次に、上述した色素増感光電変換素子100の製造方法について説明する。
まず1つの透明基板11の上に、透明導電膜12を形成してなる透明導電性基板15を用意する。
透明導電膜12の形成方法としては、スパッタリング法、蒸着法、スプレー熱分解法及びCVD法などが用いられる。
次に、透明導電膜12の上に、酸化物半導体層13を形成する。酸化物半導体層13は、酸化物半導体粒子を含む多孔質酸化物半導体層形成用ペーストを印刷した後、焼成して形成する。
酸化物半導体層形成用ペーストは、上述した酸化物半導体粒子のほか、ポリエチレングリコールなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。
酸化物半導体層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又は、バーコート法などを用いることができる。
焼成温度は酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は1〜5時間である。
こうして作用極10が得られる。
次に、作用極10の酸化物半導体層13の表面に光増感色素を吸着させる。このためには、作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な光増感色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を酸化物半導体層13に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を酸化物半導体層13に吸着させてもよい。
次に、電解質40を準備する。電解質40は、例えばハロゲンと、ハロゲンと酸化還元対を形成するハロゲン化物塩と、イミダゾール化合物とを含む電解液に、固体の銀を添加すること得ることができる。あるいは、電解質40は、ハロゲンと、ハロゲンと酸化還元対を形成するハロゲン化物塩と、イミダゾール化合物および固体の銀を溶媒中に溶解させることによっても得ることができる。
次に、酸化物半導体層13の上に電解質40を配置する。電解質40は、例えばスクリーン印刷等の印刷法によって配置することが可能である。
次に、環状の封止部形成体を準備する。封止部形成体は、例えば封止用樹脂フィルムを用意し、その封止用樹脂フィルムに1つの四角形状の開口を形成することによって得ることができる。
そして、この封止部形成体を、作用極10の上に接着させる。このとき、封止部形成体の作用極10への接着は、例えば封止部形成体を加熱溶融させることによって行うことができる。
次に、対極20を用意し、封止部形成体の開口を塞ぐように配置した後、封止部形成体と貼り合わせる。このとき、対極20にも予め封止部形成体を接着させておき、この封止部形成体を作用極10側の封止部形成体と貼り合せてもよい。対極20の封止部形成体への貼合せは、大気圧下で行っても減圧下で行ってもよいが、減圧下で行うことが好ましい。
以上のようにして色素増感光電変換素子100が得られる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、透明導電性基板15の透明導電膜12上に多孔質酸化物半導体層13が設けられ、こちら側から受光する構造となっているが、多孔質酸化物半導体層13が形成される基材に不透明な材料(例えば金属基板)を用い、対極20を形成する基材に透明な材料を用いて対極側から受光する構造をとっても構わず、さらに、両面から受光する構造としても構わない。
また上記実施形態では、色素増感光電変換素子が1つの色素増感光電変換セル50で構成されているが、色素増感光電変換素子は、色素増感光電変換セル50を複数備えていてもよい。
さらに上記実施形態では、色素増感光電変換素子100は、透明導電膜12上に、銀などを含む集電配線を有していないが、色素増感光電変換素子100は、透明導電膜12上に集電配線を有していてもよい。ここで、集電配線が電解質40と接触する場合には、集電配線の腐食を十分に抑制する観点から、集電配線は配線保護層で覆われることが好ましい。配線保護層は例えばガラスや絶縁樹脂などで構成される。
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜7及び比較例1〜7)
<色素増感光電変換素子用電解質の調製>
ヨウ素、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド(DMPImI)、銀からなる線材および表1に示す添加剤を、3−メトキシプロピオニトリル(MPN)からなる溶媒中に溶解させ、電解質を調製した。ここで、表1に記載の「NBB」、「MI」、「IPI」および「TBP」はそれぞれ以下の通りである。

NBB:1−ブチルベンゾイミダゾール
MI:1−メチルイミダゾール
IPI:イソプロピルイミダゾール
TBP:t−ブチルピリジン

このとき、電解質中のハロゲンの濃度C1(M)、添加剤の濃度C2(M)、銀イオンの濃度C3(M)は表1に示す通りとした。こうして色素増感光電変換素子用電解質を調製した。
<色素増感光電変換素子の作製>
はじめに、ガラス基板上にFTO膜が形成されたFTO/ガラス基板を準備した。そして、このFTO/ガラス基板の所定の位置にレーザスクライブを入れ、ガラス基板上に、互いに離間した4つのFTO部を形成した。次に、この基板に対して洗浄およびUV−O処理を行い、その基板のうちの4つのFTO部の各々の上に、酸化チタンを含有する第1酸化チタンペーストをスクリーン印刷により3回塗布し、乾燥させて第1乾燥体を得た後、酸化チタンを含有する第2酸化チタンペーストを上記第1乾燥体の上にスクリーン印刷により塗布し、酸化物半導体層の前駆体を形成した。このとき、第1酸化チタンペーストとしては、商品名「PST−21NR」(日揮触媒化成社製)を用い、第2酸化チタンペーストとしては、商品名「PST−400C」(日揮触媒化成社製)を用いた。一方、4つのFTO部の各々の上に、銀ペーストおよびガラスフリットを含むペーストを塗布した。こうして未焼成基板を得た。そして、最後に、この未焼成基板をオーブンに入れて500℃で1時間焼成して、4つのFTO部の各々の上に、17mm×42mm×12μmの寸法を有する多孔質酸化チタン層を得た。また、4つのFTO部の各々の上には銀で構成される金属層およびガラスで構成されるガラス層も得た。こうして共通のガラス基板上に4つの作用極を有する構造体を得た。
次に、光増感色素であるZ907色素を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒中に0.2mMの濃度となるように溶かして色素溶液を作製した。そして、この色素溶液中に上記構造体を常温にて24時間浸漬させ、多孔質酸化チタン層に光増感色素を担持させた。
一方、46mm×20mm×40μmの寸法を有するチタン箔を4枚用意し、各チタン箔上にスパッタリング法によって白金を堆積させた。こうして対極を得た。
次に、各作用極の上に、商品名「バイネル」(デュポン社製)からなる環状の熱可塑性樹脂シートを配置した。このとき、環状の熱可塑性樹脂シートの内側に、多孔質酸化チタン層が配置されるようにした。そして、熱可塑性樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させて作用極に接着させた。
他方、上記のようにして調製した電解質をスクリーン印刷法によって、多孔質酸化チタン層を覆うように塗布した。
そして作用極に対し、対極を、作用極との間に電解質を挟むように重ね合わせ、封止部を減圧下(1000Pa)で加熱溶融することによって対極と封止部とを接着させた。こうして共通のガラス基板上に4つのセルを得た。
続いて、4つのセルを商品名「ドータイト」(藤倉化成社製)の銀ペーストで直列に接続し、4つのセルを、ブチルゴムを用いてアルミ製バックシートで覆うようにガラス基板に固定した。
最後に、ガラス基板のうち光入射面となる面に、UVカットフィルムを貼付した。
こうして色素増感光電変換素子を得た。
<特性の評価>
(光電変換特性)
上記のようにして得られた上記実施例1〜7及び比較例1〜7の色素増感光電変換素子について、200luxの白色光をセル全体に均一に照射した状態でIV曲線を測定し、最大出力動作電力Pm(μW)を算出した。結果を表1に示す。なお、IV曲線の測定に用いた光源、照度計および電源は以下の通りである。
光源:製品名「LEL−SL5N−F」(東芝ライテック社製)の白色LED
照度計:製品名「ディジタル照度計51021」(横河メータ&インスツルメンツ社製)
電源:製品名「ADVANTEST R6246」(アドバンテスト社製)の電圧/電流発生器
また光電変換特性の合格基準は以下の通りとした。

(合格基準)
Pmが220μW以上
(耐光性)
上記のようにして得られた上記実施例1〜7及び比較例1〜7の色素増感光電変換素子に対し、メタルハライドランプの疑似太陽光を200時間照射した。疑似太陽光照射中の色素増感光電変換セルの温度は20℃で固定した。そして、光電変換特性の評価に用いた装置にて疑似太陽光照射前後のIV曲線を測定し、出力低下率Pm/Pmを算出した。結果を表1に示す。なお、Pmは、色素増感光電変換素子に対し、メタルハライドランプの疑似太陽光を200時間照射した後に測定された出力を表す。また耐光性の合格基準は以下の通りとした。

(合格基準)
出力低下率Pm/Pmが0.90以上

Figure 0006584883
表1に示す結果より、実施例1〜7の色素増感光電変換素子は、光電変換特性および耐光性のいずれの点でも合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1〜7の色素増感光電変換素子は、光電変換特性および耐光性の少なくとも一方の点で合格基準を満たさないことが分かった。
以上より、本発明の色素増感光電変換素子用電解質によれば、色素増感光電変換素子に対して優れた光電変換特性および耐光性を付与できることが確認された。
11…透明基板
12…透明導電膜
13…酸化物半導体層
15…透明導電性基板(第1電極)
20…対極(第2電極)
40…電解質
50…色素増感光電変換セル
100…色素増感光電変換素子

Claims (3)

  1. ハロゲンと、
    前記ハロゲンとともに酸化還元対を形成するハロゲン化物塩と、
    イミダゾール化合物と、
    銀イオンとを含み、
    下記式(1)で表される濃度比が50〜500である、色素増感光電変換素子用電解質。
    濃度比=C2/C3・・・(1)
    (C2は、前記イミダゾール化合物の濃度(M)を表し、C3は、前記銀イオンの濃度(M)を表す)
  2. 前記ハロゲンの濃度が前記銀イオンの濃度よりも高い請求項1に記載の色素増感光電変換素子用電解質。
  3. 少なくとも1つの色素増感光電変換セルを備え、
    前記色素増感光電変換セルが、
    透明基板及び前記透明基板上に設けられる透明導電膜を有する第1電極と、
    前記第1電極に対向する第2電極と、
    前記第1電極又は前記第2電極に設けられる酸化物半導体層と、
    前記第1電極及び前記第2電極の間に設けられる電解質と、
    前記酸化物半導体層に吸着される光増感色素とを備え、
    前記電解質が、請求項1又は2に記載の色素増感光電変換素子用電解質からなる色素増感光電変換素子。
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