以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯機100は、貯湯ユニット1と、ヒートポンプサイクルを利用するように構成されたヒートポンプユニット60とを備えている。貯湯ユニット1と、ヒートポンプユニット60とは、ヒートポンプ入口配管41とヒートポンプ出口配管42と図示しない電気配線とを介して接続されている。また、貯湯ユニット1には、制御部70(制御手段)が内蔵されている。貯湯ユニット1およびヒートポンプユニット60が備える各種の弁類、ポンプ類等の作動は、これらと電気的に接続された制御部70により制御される。制御部70は、例えば浴室や台所に設置されるリモコン装置等のユーザーインターフェース装置と相互に通信可能に接続される。以下、貯湯式給湯機100の各構成要素について説明する。
ヒートポンプユニット60は、貯湯ユニット1から導かれた水を加熱する(沸き上げる)ための加熱手段として機能するものである。ヒートポンプユニット60は、圧縮機61、沸き上げ用熱交換器62、膨張弁63および空気熱交換器64を作動媒体循環配管65にて環状に接続し、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を構成している。沸き上げ用熱交換器62は、ヒートポンプサイクルを構成する作動媒体循環配管65を流れる作動媒体と貯湯ユニット1から導かれた水との間で熱交換を行うためのものである。ヒートポンプユニット60で高温水を得るためには、ヒートポンプサイクルは、作動媒体として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。
貯湯ユニット1には、以下の各種部品や配管などが内蔵されている。貯湯タンク10は、湯水を貯留するためのものである。貯湯タンク10の下部に設けられた給水口14には、水道等の外部の水源からの水を供給するための給水配管2が減圧弁4を介して接続されている。貯湯タンク10の上部に設けられた第一上部口15には、第二のタンク上部配管44が接続されている。第二のタンク上部配管44の途中から分岐して延びた給湯配管3は、給湯混合弁5およびふろ混合弁6にそれぞれ接続されている。給湯混合弁5およびふろ混合弁6には、更に、減圧弁4の下流側の給水配管2が接続されている。給湯混合弁5は、貯湯タンク10の第一上部口15から取り出されて給湯配管3を通って供給された高温の湯と、給水配管2から供給される低温水とを混合し、使用者が設定した給湯温度となるようにその混合比を調整する。給湯混合弁5で混合された湯は、混合給湯配管9を経由して、例えば蛇口、シャワー等の給湯先80へ供給される。ふろ混合弁6は、貯湯タンク10の第一上部口15から取り出されて給湯配管3を通って供給された高温の湯と、給水配管2から供給される低温水とを混合する。ふろ混合弁6で混合された湯は、浴槽水循環回路51を経由して、浴槽50内へ供給される。
ヒートポンプユニット60を用いて加熱されて生成された湯(高温水)が第一上部口15から貯湯タンク10内に流入し、給水配管2からの低温水が給水口14から貯湯タンク10内に流入することにより、貯湯タンク10内には、上層側が高温で下層側が低温となるように温度成層が形成されて湯水を貯留可能になっている。貯湯タンク10の表面には、貯湯タンク10内の湯水の温度分布を検出するため、複数の貯湯温度センサ(図示せず)がそれぞれ異なる高さ位置に取り付けられている。制御部70は、それらの貯湯温度センサにより取得された貯湯タンク10内の高さ方向の温度分布に基づいて、貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)を算出することができ、その貯湯量に基づいて、後述する沸き上げ運転の開始および停止などが制御される。
また、貯湯ユニット1内には、熱源循環ポンプ21および利用側熱交換器22が内蔵されている。熱源循環ポンプ21は、各種配管に湯水を循環させるためのポンプである。利用側熱交換器22は、貯湯タンク10あるいはヒートポンプユニット60から供給される湯を熱源水とし、この熱源水と熱交換することにより被加熱物を加熱するための熱交換器である。浴槽水循環回路51は、浴槽50から導出した湯水(浴槽水)を、利用側熱交換器22を経由させて、浴槽50に戻すように配設されている。浴槽水循環回路51の途中には、浴槽水を循環させるための二次側循環ポンプ52と、浴槽50から出た浴槽水の温度を検知する浴槽出口側温度センサ53(浴槽温度検知手段)とが設置されている。このように、本実施形態では、利用側熱交換器22の二次側の構成として、浴槽50内の浴槽水を循環させる浴槽水循環回路51を備え、利用側熱交換器22にて浴槽水を加熱するものを例に説明するが、本発明における利用側熱交換器は、浴槽水以外の被加熱物(例えば、暖房用循環水など)を加熱するものであってもよい。
次に、貯湯ユニット1が備える弁類および配管類について説明する。貯湯ユニット1は、第一の三方弁31(第一の流路切替手段)と、第二の三方弁32(第二の流路切替手段)と、四方弁33(第三の流路切替手段)とを有している。第一の三方弁31および第二の三方弁32は、それぞれ、湯水が流入する2つの入口(aポート、bポート)と、湯水が流出する1つの出口(cポート)とを有する流路切替手段であり、aポートもしくはbポートのどちらかから湯水が流入するように湯水の経路を切り替え可能に構成されている。四方弁33は、湯水が流入する2つの入口(bポート、cポート)と、湯水が流出する2つの出口(aポート、dポート)とを有する流路切替手段であり、4つの経路、すなわち、b−a経路、b−d経路、c−a経路、c−d経路の間で流路形態を切り替え可能に構成されている。
また、貯湯ユニット1は、タンク下部配管40、第一のタンク上部配管43、第二のタンク上部配管44、下部戻し配管45、利用側熱交換器一次側入口配管46、利用側熱交換器一次側出口配管47、バイパス配管48および上部戻し配管49を有している。
タンク下部配管40は、貯湯タンク10の下部に設けられた第一下部口16と、第一の三方弁31のaポートとを接続する流路である。ヒートポンプ入口配管41は、第一の三方弁31のcポートとヒートポンプユニット60の入口側(入水口)とを接続する流路である。ヒートポンプ出口配管42は、ヒートポンプユニット60の出口側(出湯口)と、四方弁33のcポートとを接続する流路である。第一のタンク上部配管43は、貯湯タンク10の上部領域(中間より上側の領域)に設けられた第二上部口18と、第二の三方弁32のaポートとを接続する流路である。第二のタンク上部配管44は、貯湯タンク10の第一上部口15と、第二の三方弁32のbポートとを接続する流路である。下部戻し配管45は、四方弁33のaポートと貯湯タンク10の下部領域(中間より下側の領域)に設けられた第二下部口17とを接続する流路である。利用側熱交換器一次側入口配管46は、第二の三方弁32のcポートと、利用側熱交換器22の一次側入口とを接続する流路である。利用側熱交換器一次側出口配管47は、利用側熱交換器22の一次側出口と、第一の三方弁31のbポートとを接続する流路である。バイパス配管48は、熱源循環ポンプ21の下流側のヒートポンプ入口配管41から分岐して延び、四方弁33のbポートに接続される流路である。上部戻し配管49は、第二のタンク上部配管44の途中から分岐して延び、四方弁33のdポートに接続される流路である。
本実施形態では、貯湯タンク10は、円筒状に形成された胴部と、略椀状に形成された頂部と、略椀状に形成された底部とを有しており、第一上部口15および第二上部口18は貯湯タンク10の頂部領域に設けられ、第一下部口16、第二下部口17および給水口14は底部領域に設けられている。また、第一上部口15は、第二上部口18より高い位置に設けられている。
本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2乃至図10に示す運転状態に応じて、上記第二の三方弁32を制御して、次の第一および第二の2つの流路形態の間を切り替えて使用するようになっている。より具体的には、上記第二の三方弁32により選択可能な「第一流路形態」とは、第一のタンク上部配管43を利用側熱交換器一次側入口配管46に連通させる流路形態(a−c経路)である。「第二流路形態」とは、第二のタンク上部配管44を利用側熱交換器一次側入口配管46に連通させる流路形態(b−c経路)である。
また、本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2乃至図10に示す運転状態に応じて上記第一の三方弁31を制御して、次の第一および第二の2つの流路形態の間を切り替えて使用するようになっている。より具体的には、上記第一の三方弁31により選択可能な「第一流路形態」とは、タンク下部配管40をヒートポンプ入口配管41に連通させる流路形態(a−c経路)である。「第二流路形態」とは、利用側熱交換器一次側出口配管47をヒートポンプ入口配管41に連通させる流路形態(b−c経路)である。
更に、本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2乃至図10に示す運転状態に応じて上記四方弁33を制御して、次の第一、第二、第三、第四の4つの流路形態の間を切り替えて使用するようになっている。より具体的には、四方弁33により選択可能な「第一流路形態」とは、ヒートポンプ出口配管42を上部戻し配管49に連通させる流路形態(c−d経路)である。「第二流路形態」とは、バイパス配管48を上部戻し配管49に連通させる流路形態(b−d経路)である。「第三流路形態」とは、バイパス配管48を下部戻し配管45に連通させる流路形態(b−a経路)である。「第四流路形態」とは、ヒートポンプ出口配管42を下部戻し配管45に連通させる流路形態(c−a経路)である。
図2は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における沸き上げ運転時の回路構成図である。沸き上げ運転(貯湯運転)とは、ヒートポンプユニット60を利用して貯湯タンク10内の水を沸き上げて湯とすることにより貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)を増加させる運転である。この沸き上げ運転時には、第一の三方弁31は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の上記第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、タンク下部配管40とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、利用側熱交換器一次側出口配管47側を閉として利用側熱交換器22からの流路が遮断される。また、沸き上げ運転時には、四方弁33は、cポートとdポートとが連通し、aポートとbポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の上記第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と上部戻し配管49とが連通するとともに、下部戻し配管45側とバイパス配管48側を閉として貯湯タンク10の第二下部口17への流路が遮断される。
沸き上げ運転は、上記のように第一の三方弁31および四方弁33が制御された状態で、熱源循環ポンプ21およびヒートポンプユニット60を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第一下部口16から流出する低温水は、タンク下部配管40、第一の三方弁31、熱源循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62において加熱された後、高温水となってヒートポンプ出口配管42、四方弁33、上部戻し配管49および第二のタンク上部配管44を経由して、貯湯タンク10の第一上部口15から貯湯タンク10内に流入し貯えられる。このような沸き上げ運転が実行されることで、貯湯タンク10の内部では、上層部から高温水が貯えられていき、この高温水層が徐々に厚くなっていき、貯湯温度センサにより把握される貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)が所定量を超えると、沸き上げ運転が停止される。
図3は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における第一の熱源水循環運転による浴槽加熱動作時の回路構成図である。第一の熱源水循環運転とは、貯湯タンク10の第二上部口18から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水を第一上部口15から貯湯タンク10に流入させて、浴槽水の加熱を実施する運転である。この第一の熱源水循環運転時には、第二の三方弁32は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の上記第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第一のタンク上部配管43と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第二のタンク上部配管44側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、bポートとdポートとが連通し、aポートとcポートが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、バイパス配管48と上部戻し配管49とが連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側と下部戻し配管45側を閉として沸き上げ用熱交換器62からの流路が遮断される。
第一の熱源水循環運転は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御されることによって第一の熱源水循環回路が形成された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第二上部口18から流出する熱源水は、第一のタンク上部配管43、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、四方弁33、上部戻し配管49、第二のタンク上部配管44を経由して第一上部口15から貯湯タンク10に流入する。一方、浴槽50側の経路では、二次側循環ポンプ52を運転することで、浴槽50に張られた湯水が浴槽水循環回路51内を循環する。その結果、利用側熱交換器22の一次側を流れる熱源水の熱が、利用側熱交換器22の二次側を流れる浴槽水に伝達し、浴槽50内に張られた湯水が温められる。
沸き上げ運転においては、ヒートポンプユニット60への入水温度が高いほどヒートポンプユニット60の効率が低下する。第一の熱源水循環運転では、貯湯タンク10の下部領域に中温水を流入させないため、貯湯タンク10の下部領域に貯留された低温水の温度を上昇させることがなく、沸き上げ運転の際にヒートポンプユニット60への入水温度を低く維持することが可能となり、沸き上げ運転の効率を高く維持することができる。また、第一の熱源水循環運転では、利用側熱交換器22から戻る中温水は、第一上部口15から貯湯タンク10に流入し、貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯に混合する。利用側熱交換器22から戻る中温水は、給水配管2から供給される低温水よりは温度が十分に高く、熱量を有している。第一の熱源水循環運転を実施した場合には、利用側熱交換器22から戻る中温水が貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯に混合し、その混合された湯を給湯配管3から給湯先80へ給湯可能となる。このため、利用側熱交換器22から戻る中温水が持つ熱量を給湯先80への給湯に再利用することが可能となるので、エネルギー使用効率を向上することができる。しかしながら、第一の熱源水循環運転では、貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯の温度を低下させることとなるため、利用側熱交換器22の一次側を流れる熱源水の温度を低下させ、利用側熱交換器22の二次側を流れる浴槽水に熱を伝達する能力の低下を引き起こしてしまう。
本実施形態の貯湯式給湯機100では、貯湯タンク10の第一上部口15が、第一の熱源水循環運転での熱源水や沸き上げ運転での高温水を貯湯タンク10に流入させる流入口としての用途と、給湯混合弁5およびふろ混合弁6に供給される湯を取り出す流出口としての用途とに兼用されるので、貯湯タンク10に設ける湯水の出入り口の数を減らすことができ、構造の簡素化が図れる。
図4は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における第二の熱源水循環運転による浴槽加熱動作時の回路構成図である。第二の熱源水循環運転とは、貯湯タンク10の第一上部口15から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水を第二下部口17から貯湯タンク10に流入させて、浴槽水の加熱を実施する運転である。この第二の熱源水循環運転時には、第二の三方弁32は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第二のタンク上部配管44と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第一のタンク上部配管43側を閉として貯湯タンク10の第二上部口18からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、aポートとbポートとが連通し、cポートとdポートが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の上記第三流路形態が選択されるように)制御される。これにより、バイパス配管48と下部戻し配管45とが連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側と上部戻し配管49側を閉として沸き上げ用熱交換器62からの流路が遮断される。
第二の熱源水循環運転は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御されることによって第二の熱源水循環回路が形成された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第一上部口15から流出する熱源水は、第二のタンク上部配管44、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、四方弁33、下部戻し配管45を経由して第二下部口17から貯湯タンク10に流入する。一方、浴槽50側の経路の運転は、前述と同様である。
第二の熱源水循環運転では、貯湯タンク10の下部領域に中温水を流入させるため、第一の熱源水循環運転を行った後と比べると、沸き上げ運転の際にヒートポンプユニット60への入水温度が高くなり運転効率が低くなる。しかしながら、第二の熱源水循環運転では、貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯の温度を低下させることはないため、利用側熱交換器22の一次側を流れる熱源水の温度を維持し、加熱能力の低下を引き起こすことなく利用側熱交換器22の二次側を流れる浴槽水に熱を伝達することが可能となる。
図5は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における第二の熱源水循環運転の他の形態による浴槽加熱動作時の回路構成図である。第二の熱源水循環運転は、図4に示す回路構成に代えて図5の回路構成であっても実行可能である。図5に示す第二の熱源水循環運転の他の形態とは、貯湯タンク10の第二上部口18から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水を第二下部口17から貯湯タンク10に流入させて、浴槽水の加熱を実施する運転である。この第二の熱源水循環運転の他の形態の実施時には、第二の三方弁32は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の上記第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第一のタンク上部配管43と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第二のタンク上部配管44側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、aポートとbポートとが連通し、cポートとdポートが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の上記第三流路形態が選択されるように)制御される。これにより、バイパス配管48と下部戻し配管45とが連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側と上部戻し配管49側を閉として沸き上げ用熱交換器62からの流路が遮断される。
第二の熱源水循環運転の他の形態は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御されることによって第二の熱源水循環回路が形成された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第二上部口18から流出する熱源水は、第一のタンク上部配管43、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、四方弁33、下部戻し配管45を経由して第二下部口17から貯湯タンク10に流入する。一方、浴槽50側の経路の運転は、前述と同様である。
図6は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における第三の熱源水循環運転による浴槽加熱動作時の回路構成図である。第三の熱源水循環運転とは、ヒートポンプユニット60で加熱されてヒートポンプユニット60の出湯口から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水をヒートポンプユニット60の入水口に流入させ、ヒートポンプユニット60で再加熱して再循環させることにより、浴槽水の加熱を実施する運転である。この第三の熱源水循環運転時には、第二の三方弁32は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第二のタンク上部配管44と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第一のタンク上部配管43側を閉として貯湯タンク10の第二上部口18からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の上記第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、cポートとdポートとが連通し、aポートとbポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の上記第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と上部戻し配管49とが連通するとともに、下部戻し配管45側とバイパス配管48側を閉として貯湯タンク10の第二下部口17への流路が遮断される。
第三の熱源水循環運転は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御されることによって第三の熱源水循環回路が形成された状態で、熱源循環ポンプ21およびヒートポンプユニット60を稼動させることにより実行される。その結果、利用側熱交換器22の一次側を循環する回路側では、ヒートポンプユニット60の沸き上げ用熱交換器62において加熱された高温の熱源水が、ヒートポンプ出口配管42、四方弁33、上部戻し配管49、第二のタンク上部配管44、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、再加熱されて再循環する。一方、浴槽50側の経路の運転は、前述と同様である。
第三の熱源水循環運転では、貯湯タンク10の下部領域に中温水を流入させないため、沸き上げ運転の際にヒートポンプユニット60への入水温度を低く維持することが可能となり運転効率を高く維持することができるとともに、貯湯タンク10の上部領域にも中温水を流入させないため、貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯の温度の低下を防止することができる。しかしながら、第三の熱源水循環運転時には、ヒートポンプユニット60への入水温度が高くなるため、第三の熱源水循環運転自体の効率は低くなる。
本実施形態の貯湯式給湯機100では、貯湯タンク10に熱源水を流入させるための戻し口を3個以上設ける必要がなく、貯湯タンク10に形成する湯水の出入り口の数を減らすことができるので、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の貯湯式給湯機100では、沸き上げ運転、第一の熱源水循環運転、第二の熱源水循環運転、第三の熱源水循環運転の何れにおいても、共通の熱源循環ポンプ21を用いて湯水を循環させることができるので、必要なポンプの数が少なく、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の貯湯式給湯機100では、貯湯タンク10の第一上部口15が第二上部口18より高い位置にあることにより、次のような利点がある。湯水は、温度が低いほど密度が大きくなる性質を有している。第一の熱源水循環運転時に第二上部口18(流出口)から取り出された熱源水は、利用側熱交換器22で熱交換して温度低下することにより密度が増大した後、第一上部口15(流入口)から貯湯タンク10内に流入する。このため、第一上部口15を第二上部口18より高い位置に設けることにより、第一の熱源水循環運転時に、第一上部口15から流入した熱源水が密度差によって下方に拡散しながら、貯湯タンク10内の湯と十分に混合される。これにより、第一上部口15から流入した熱源水が、貯湯タンク10内の湯と混ざらずに中温水層を形成してしまうことを確実に防止することができる。
本実施形態の貯湯式給湯機100は、浴槽加熱動作のための熱源水を利用側熱交換器22に循環させる熱源水循環運転として、上述した第一、第二および第三の熱源水循環運転の三種の運転を選択的に実行可能になっている。浴槽加熱動作を行う場合に、この三種の熱源水循環運転の何れを実施する場合がモード効率を最良とすることができるかは、貯湯式給湯機100の状態に応じて異なる。ここで、モード効率とは、貯湯式給湯機100を一定期間運転させたときの消費電力量に対する給湯保温負荷の割合を示す。本貯湯式給湯機100の制御部70は、後述するような所定の規則に基づいて、第一、第二および第三の熱源水循環運転のうちの何れかを選択することにより、貯湯式給湯機100の状態等に応じて適切な熱源水循環運転を実施可能になっている。制御部70には、そのような所定の規則がプログラム化されて予め記憶されている。制御部70は、浴槽加熱動作を実施する場合に、そのプログラムに基づいて第一、第二および第三の熱源水循環運転のうちの何れかを選択して実施する。これにより、貯湯式給湯機100のモード効率を向上させることができる。
例えば、ヒートポンプユニット60の特性として、圧縮機61の立上げ時には湯の沸き上げをせずに電力量が消費される運転がある。そのため、ヒートポンプユニット60の起動および停止の回数が多い運転では、貯湯式給湯機100としては湯の沸き上げに寄与しない圧縮機61の運転時間が多くなる。その結果として、貯湯式給湯機100のモード効率の悪化につながる。
一方、本実施形態の貯湯式給湯機100は、沸き上げ運転と上記の三種の熱源水循環運転とが何れも同じ熱源循環ポンプ21を用いて湯水を循環させるように構成されているため、第一、第二および第三の熱源水循環運転の何れかを実施する場合に、それと並行して沸き上げ運転を行うことはできない。このため、沸き上げ運転の実行中に浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合には、制御部70は、沸き上げ運転を中断して、第一、第二および第三の熱源水循環運転の何れかを実施することとなる。なお、「浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合」とは、例えば、浴槽50の温度を使用者により設定された浴槽目標温度に保温する保温動作の実施中に定期的に浴槽出口側温度センサ53にて計測される浴槽50の温度と浴槽目標温度との差が所定値より大きくなって浴槽加熱動作を自動的に開始する場合や、あるいは、使用者がリモコン装置に浴槽加熱動作の実施指令を入力し、その実施指令の信号をリモコン装置から制御部70が受信した場合などである。
沸き上げ運転の実行中に浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合に、第一の熱源水循環運転あるいは第二の熱源水循環運転を実施するとした場合には、ヒートポンプユニット60の運転を一旦停止して浴槽加熱動作に移行し、浴槽加熱動作の終了後、必要に応じて再度ヒートポンプユニット60を起動して、沸き上げ運転の続きを行う制御となる。この場合、沸き上げ運転の実行中に浴槽加熱動作の割込みにより、ヒートポンプユニット60の起動および停止の回数が、浴槽加熱動作の割込みがない場合と比較して、1回分多くなる。このため、貯湯式給湯機100のモード効率の低下につながる。この点を改善するため、本実施形態では、制御部70は、沸き上げ運転の実行中に浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合には、第三の熱源水循環運転を優先して実施する。この場合、制御部70は、ヒートポンプユニット60の運転を継続したまま、第一の三方弁31および第二の三方弁32の流路形態を切り替えることにより、沸き上げ運転から第三の熱源水循環運転へ移行し、浴槽加熱動作を行う。そして、浴槽加熱動作の終了後は、ヒートポンプユニット60の運転を継続したまま、第一の三方弁31および第二の三方弁32の流路形態を切り替えることにより、沸き上げ運転に復帰する。これにより、沸き上げ運転の実行中に浴槽加熱動作の割込みがあった場合であっても、ヒートポンプユニット60の起動および停止の回数が増加することがないため、貯湯式給湯機100のモード効率を向上させることができる。
また、上記の例の場合以外においても、制御部70は、浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合に、貯湯式給湯機100のモード効率を向上させることができるように、あるいは使用者の意向に対応することができるように、第一、第二および第三の熱源水循環運転のうちで最も適切な運転を選択して実施する。
例えば、運転効率を最も高くすることのできる浴槽加熱動作は、第一の熱源水循環運転によるものであるが、第一の熱源水循環運転のデメリットとして、貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯の温度を低下させる点がある。本実施形態では、この点に鑑みて、制御部70は、第一の熱源水循環運転のデメリット、すなわち貯湯タンク10の上部領域に貯留された湯の温度の低下が問題とならないほどに高温の湯が貯湯タンク10に貯められている場合においては、浴槽加熱動作の実施要求が生じた際に、第一の熱源水循環運転を優先して実施する。これにより、運転効率を有効に向上させることができる。
また、加熱能力を最も高くすることのできる浴槽加熱動作は、第二の熱源水循環運転によるものである。このため、浴槽50の温度が、使用者の操作等に基づいて設定された浴槽目標温度より大幅に低いような場合には、浴槽50の温度をなるべく早く浴槽目標温度まで上昇させることができるように、第二の熱源水循環運転を実施することが望ましい。本実施形態では、この点に鑑みて、制御部70は、浴槽出口側温度センサ53にて計測される浴槽50の温度と、浴槽目標温度との差が所定値以上である場合には、第二の熱源水循環運転を優先して実施する。これにより、浴槽50の温度が浴槽目標温度より大幅に低い場合であっても、浴槽50の温度を浴槽目標温度まで迅速に上昇させることができ、利便性を向上することができる。
また、第二の熱源水循環運転が実施されない状態が長期間続くと、下部戻し配管45等の内部にある配管残水が長期間残留し、濁りや汚れ等が生ずる可能性がある。本実施形態では、この点に鑑みて、制御部70は、第一の熱源水循環運転を開始する場合に、それに先立って一時的に第二の熱源水循環運転を実施した後に第一の熱源水循環運転を開始する第一の制御モードと、一時的に第二の熱源水循環運転を実施することなく第一の熱源水循環運転を開始する第二の制御モードとを有しており、通常は上記第二の制御モードで制御するが、例えば第二の熱源水循環運転が実施されない状態が所定期間以上続いた場合には、上記第一の制御モードを選択し、第一の熱源水循環運転の開始に先立って一時的に第二の熱源水循環運転を実施するように制御する。このようにして第一の熱源水循環運転の前に一時的に第二の熱源水循環運転を実施することにより、下部戻し配管45等の内部に残留していた配管残水が新しい水に置換されるので、配管残水に濁りや汚れ等が生ずることを確実に防止することができる。
一方、上記のように、第一の熱源水循環運転を開始する前に第二の熱源水循環運転を実行すると、性能悪化の一要因にもなる。そのため、使用者が性能を優先した運転モードを選択した場合等においては、制御部70は、上記第二の制御モード、すなわち第一の熱源水循環運転を開始する前に第二の熱源水循環運転を経由することがない運転を選択することが望ましい。
実施の形態2.
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。本実施の形態2の貯湯式給湯機100のハードウェア構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2の貯湯式給湯機100における給湯動作時の回路構成図である。図7に示すように、給湯動作とは、貯湯タンク10の第一上部口15から取り出した湯(高温水)と、給水配管2により供給される低温水とを給湯混合弁5で混合し、混合給湯配管9を経由して、貯湯式給湯機100の外部の給湯先80へ供給する動作である。図示を省略するが、混合給湯配管9には、給湯温度センサおよび給湯流量センサが設置されている。給湯配管3から給湯される湯水の目標温度は、給湯温度として使用者が設定し、制御部70に記憶される。制御部70は、給湯温度センサで検知される給湯温度が、使用者が設定した給湯温度より低いときは給湯混合弁5の湯側(高温水側)の開度を大きくし、使用者が設定した給湯温度より高いときは給湯混合弁5の水側の開度を大きくするように、給湯混合弁5の開度を制御する。制御部70は、混合給湯配管9に設置された給湯流量センサの信号に基づいて、給湯動作が行われているか否かを検知することができる。
前述したように、第一、第二および第三の熱源水循環運転のうち、貯湯タンク10の上部の温度変化に影響を及ぼす運転は、第一の熱源水循環運転である。このため、第一の熱源水循環運転と給湯動作とを同時に行うときには、第一の熱源水循環運転によって貯湯タンク10の上部の温度が変化し、その温度変化に追従するために給湯温度センサによって検知される給湯温度が使用者の設定した給湯温度に一致するように逐次給湯混合弁5の開度を制御しなければならず、結果として給湯温度の不安定さを引き起こし、使用者の不快をも引き起こす可能性がある。
上述した事項に鑑みて、本実施形態では、制御部70は、給湯動作の実行中に浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合には、第一の熱源水循環運転を行わないこととし、第二の熱源水循環運転または第三の熱源水循環運転を優先して実施する。これにより、第一の熱源水循環運転と給湯動作とが同時に行われることを回避することができるので、給湯先80への給湯温度が不安定となることを確実に防止することができる。
さらに、本実施形態では、制御部70は、第一の熱源水循環運転の実行中に、混合給湯配管9に設置された給湯流量センサにより給湯動作の開始が検知された場合には、第一の熱源水循環運転を停止し、第二の熱源水循環運転または第三の熱源水循環運転を実施する。これにより、第一の熱源水循環運転と給湯動作とが同時に行われることを回避することができるので、給湯先80への給湯温度が不安定となることを確実に防止することができる。
実施の形態3.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。本実施の形態3の貯湯式給湯機100のハードウェア構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
図8は、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機100における下部循環動作時の回路構成図である。図8に示すように、下部循環動作では、第一の三方弁31は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、タンク下部配管40とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、利用側熱交換器一次側出口配管47側を閉として利用側熱交換器22からの流路が遮断される。また、下部循環動作時には、四方弁33は、aポートとcポートとが連通し、bポートとdポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第四流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と下部戻し配管45とが連通するとともに、上部戻し配管49側とバイパス配管48側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15への流路が遮断される。
下部循環動作は、上記のように第一の三方弁31および四方弁33が制御された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第一下部口16から流出する低温水は、タンク下部配管40、第一の三方弁31、熱源循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62で加熱されずに低温のままヒートポンプ出口配管42、四方弁33、下部戻し配管45を経由して第二下部口17から貯湯タンク10に流入する。このような下部循環動作が実行されることで、下部循環流路(ヒートポンプ入口配管41、ヒートポンプ出口配管42、下部戻し配管45等)における凍結を予防できる。また、沸き上げ運転後に下部循環動作を実行することによって、沸き上げ用熱交換器62を冷却することができ、沸き上げ用熱交換器62の炭酸カルシウム付着等を防ぐことができる。制御部70は、下部循環動作の実施要求が生じた場合(例えば、外気温等に基づいて下部循環流路の凍結予防が必要と判断された場合や、沸き上げ運転終了後に沸き上げ用熱交換器62の炭酸カルシウム付着等を防ぐ措置が必要と判断された場合)には、下部循環動作を実施する。
図9は、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機100における下部循環付き第二の熱源水循環運転による浴槽加熱動作時の回路構成図である。下部循環付き第二の熱源水循環運転とは、貯湯タンク10の第一上部口15から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水を、下部循環流路に流入させてヒートポンプユニット60を経由させた後、第二下部口17から貯湯タンク10に流入させて、浴槽水の加熱を実施する運転である。この下部循環付き第二の熱源水循環運転時には、第二の三方弁32は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第二のタンク上部配管44と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第一のタンク上部配管43側を閉として貯湯タンク10の第二上部口18からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、aポートとcポートが連通し、bポートとdポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第四流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と下部戻し配管45とが連通するとともに、上部戻し配管49側とバイパス配管48側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15への流路が遮断される。
下部循環付き第二の熱源水循環運転は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第一上部口15から流出する熱源水は、第二のタンク上部配管44、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62で加熱されずに中温のままヒートポンプ出口配管42、四方弁33、下部戻し配管45を経由して第二下部口17から貯湯タンク10に流入する。
このように、本実施の形態3の貯湯式給湯機100は、第二の熱源水循環運転として、上述した下部循環付き第二の熱源水循環運転(利用側熱交換器22を通過した熱源水をヒートポンプユニット60を経由させた上で第二下部口17から貯湯タンク10に流入させる運転)と、前述した図4あるいは図5に示すように利用側熱交換器22を通過した熱源水をヒートポンプユニット60を経由させずに第二下部口17から貯湯タンク10に流入させる下部循環無し第二の熱源水循環運転とを選択的に実施可能になっている。
本実施の形態3では、制御部70は、浴槽加熱動作の実施要求と、下部循環動作の実施要求とが重なって生じた場合には、下部循環付き第二の熱源水循環運転を優先して実施する。これにより、浴槽加熱動作を行うのと同時に、下部循環流路における凍結の予防や沸き上げ用熱交換器62の炭酸カルシウム付着等の防止を行うことができる。
図10は、本発明の実施の形態3の貯湯式給湯機100における下部循環付き第二の熱源水循環運転の他の形態による浴槽加熱動作時の回路構成図である。下部循環付き第二の熱源水循環運転は、図9に示す回路構成に代えて図10の回路構成であっても実行可能である。図10に示すように、下部循環付き第二の熱源水循環運転の他の形態とは、貯湯タンク10の第二上部口18から取り出した湯を熱源水として利用側熱交換器22に送って浴槽水と熱交換し、熱交換後の熱源水を、下部循環流路に流入させてヒートポンプユニット60を経由させた後、第二下部口17から貯湯タンク10に流入させて、浴槽水の加熱を実施する運転である。この下部循環付き第二の熱源水循環運転の他の形態の実施時には、第二の三方弁32は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第二の三方弁32の第一流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第一のタンク上部配管43と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第二のタンク上部配管44側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15からの流路が遮断される。また、第一の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第一の三方弁31の第二流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の第一下部口16からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、aポートとcポートが連通し、bポートとdポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第四流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と下部戻し配管45とが連通するとともに、上部戻し配管49側とバイパス配管48側を閉として貯湯タンク10の第一上部口15への流路が遮断される。
下部循環付き第二の熱源水循環運転の他の形態は、上記のように第一の三方弁31、第二の三方弁32および四方弁33が制御された状態で、熱源循環ポンプ21を稼動させることにより実行される。その結果、貯湯タンク10の第二上部口18から流出する熱源水は、第一のタンク上部配管43、第二の三方弁32、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水と熱交換され中温水(浴槽水と熱交換して温度が低下した水)となる。この中温水となった熱源水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第一の三方弁31、ヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62で加熱されずに中温のままヒートポンプ出口配管42、四方弁33、下部戻し配管45を経由して第二下部口17から貯湯タンク10に流入する。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。本実施の形態4の貯湯式給湯機100のハードウェア構成は、下記の点以外は実施の形態1と同様であるので、図示を省略する。
本実施の形態4の貯湯式給湯機100では、第一上部口15は、貯湯タンク10に最上部に設けられ、鉛直方向またはそれに近い方向を向くように形成されている。一方、貯湯タンク10に設けられた第二下部口17は、鉛直方向でない方向(図示の構成では、水平方向またはそれに近い方向)を向くように形成されている。貯湯タンク10の上部に接続された配管(例えば第二のタンク上部配管44)の途中には、貯湯タンク10内のエア(空気)を外部に排出するためのエア排出手段(図示せず)が設けられている。貯湯タンク10に連通する配管内にエアが混入したときには、配管内の湯水を循環させてそのエアを貯湯タンク10内に流入させることにより、そのエアが貯湯タンク10内で浮上して貯湯タンク10の上部に達し、上記エア排出手段から外部に排出させることができる。また、制御部70は、第一のタンク上部配管43、第二のタンク上部配管44、利用側熱交換器一次側入口配管46、利用側熱交換器一次側出口配管47、および上部戻し配管49内にエアが混入したことを検知可能なエア検知手段を備えている。エア検知の方法としては、例えば制御部70内に備えたエア検知手段部において、常に配管内の循環流量等の流量を監視し、制御部70が熱源循環ポンプ21に一定の回転数を指示しているときに流量の変動が所定の範囲を超えるように大きく変動している場合は、配管内にエアが混入し流量が不安定になっているものと想定されるので、これによりエアの検知が可能となる。
第一、第二および第三の熱源水循環運転のうち、貯湯タンク10に連通する配管内に混入したエアをエア排出手段から排出させるエア抜きを行うのに最も適しているのは、以下の理由から、第二の熱源水循環運転である。上述したように、エア抜きするためには、配管内の湯水を循環させることによってエアを貯湯タンク10内に流入させることが必要である。このため、循環経路に貯湯タンク10が含まれない第三の熱源水循環運転は不適切である。また、第一の熱源水循環運転では、湯水(熱源水)が第一上部口15から貯湯タンク10内に流入するが、第一上部口15が鉛直方向に向いているため、エアが第一上部口15内を湯水の流れに逆らって上昇してしまい、エアが貯湯タンク10内に流入しにくい。これに対し、第二の熱源水循環運転では、湯水(熱源水)が第二下部口17から貯湯タンク10内に流入するが、第二下部口17は鉛直方向に向いていないため、エアが湯水の流れに乗って第二下部口17から確実に貯湯タンク10内に流入する。以上の事項に鑑み、本実施の形態4において、制御部70は、上記エア検知手段によりエアの混入が検知された場合、あるいは強制的にエア抜き運転指令を受けた場合であって、且つ浴槽加熱動作の実施要求が生じた場合には、第二の熱源水循環運転を優先して実施する。これにより、配管内に混入したエアを確実に貯湯タンク10内に流入させて、上記エア排出手段から外部に排出させることができる。