以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯機100は、貯湯タンクユニット1と、ヒートポンプユニット60とを備えている。貯湯タンクユニット1とヒートポンプユニット60とは、ヒートポンプ入口配管41と、ヒートポンプ出口配管42と、電気配線(図示せず)とを介して接続されている。貯湯タンクユニット1には、制御部70が内蔵されている。貯湯タンクユニット1およびヒートポンプユニット60が備える各種の弁類、ポンプ類等の作動は、これらと電気的に接続された制御部70により制御される。以下、貯湯式給湯機100の各構成要素について説明する。
ヒートポンプユニット60は、貯湯タンクユニット1から導かれた低温水をヒートポンプサイクルにより加熱する(沸き上げる)ための加熱手段として機能するものである。ヒートポンプユニット60は、圧縮機61、沸き上げ用熱交換器62、膨張弁63および空気熱交換器64を冷媒循環配管65にて環状に接続した冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を搭載している。沸き上げ用熱交換器62は、ヒートポンプサイクルを構成する冷媒循環配管65を流れる冷媒と、貯湯タンクユニット1から導かれた低温水との間で熱交換を行うためのものである。ヒートポンプ出口温度センサ66は、沸き上げ用熱交換器62で加熱されて生成された高温水の温度を検出する温度センサであり、ヒートポンプ出口配管42に設けられている。ヒートポンプユニット60で高温水を得るためには、ヒートポンプサイクルは、冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を超える圧力で運転することが好ましい。
貯湯タンクユニット1には、以下の各種部品や配管などが内蔵されている。貯湯タンク10は、湯水を貯留するためのものであり、通常は略円筒形状をなしている。貯湯タンク10の下部に設けられた導入口4には、水道等の水源からの水を供給する給水配管2が接続されている。貯湯タンク10の上部(図示の構成では最上部)に設けられた上部口5には、第2のタンク上部配管44が接続されている。貯湯タンク10内に貯留した湯を給湯機外部へ供給するための給湯配管3は、第2のタンク上部配管44から分岐して設けられている。
ヒートポンプユニット60を用いて加熱された高温水が上部口5から貯湯タンク10内に流入し、給水配管2からの低温水が導入口4から貯湯タンク10内に流入することにより、貯湯タンク10内には、上部が高温で下部が低温となるように湯水が貯留される。貯湯タンク10の表面には、貯湯タンク10内の湯水の温度分布を検出するため、複数の貯湯温度センサ11,12が互いに異なる高さ位置に取り付けられている。図示の構成では、2個の貯湯温度センサ11,12を設けているが、3個以上としてもよい。これらの貯湯温度センサ11,12は、それぞれ、貯湯タンク10内の所定の高さ位置での湯水の温度を検出する。制御部70は、これらの貯湯温度センサ11,12により取得された貯湯タンク10内の高さ方向の温度分布に基づいて、貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)を算出することができ、その貯湯量に基づいて、ヒートポンプユニット60による貯湯タンク10内の湯水の沸き上げ運転の開始および停止などが制御される。本実施形態では、貯湯温度センサ11は、貯湯タンク10の高さ方向の中央位置より上側の位置に設置されており、貯湯タンク10内の高温水の温度を検出する。
また、貯湯タンクユニット1内には、循環ポンプ21および利用側熱交換器22が内蔵されている。循環ポンプ21は、貯湯タンクユニット1内の各種配管に湯水を循環させるためのポンプである。利用側熱交換器22は、貯湯タンク10やヒートポンプユニット60から供給される高温水を利用して、所定の加熱対象を加熱するための熱交換器である。浴槽水循環回路51は、浴槽50から導出した湯水(浴槽水)を、利用側熱交換器22を経由させて、浴槽50に戻すように配設されている。浴槽水循環回路51の途中には、浴槽水を循環させるための二次側循環ポンプ52と、浴槽50から出た浴槽水の温度を検出する浴槽出口側温度センサ53(浴槽水温検出手段)とが設置されている。このように、本実施形態では、利用側熱交換器22の二次側の構成として、浴槽50内の浴槽水を循環させる浴槽水循環回路51を備え、利用側熱交換器22にて浴槽水を加熱するものを例に説明するが、本発明における利用側熱交換器は、浴槽水以外の加熱対象(例えば、暖房用循環水など)を加熱するものであってもよい。
次に、貯湯タンクユニット1が備える弁類および配管類について説明する。貯湯タンクユニット1は、第1の三方弁31、第2の三方弁32および四方弁33を有している。第1の三方弁31および第2の三方弁32は、湯水が流入する2つの入口(aポート、bポート)と、湯水が流出する1つの出口(cポート)とを有する流路切替手段であり、aポートとbポートとの何れか一方から湯水が流入するように湯水の経路を切り替え可能に構成されている。四方弁33は、湯水が流入する2つの入口(bポート、cポート)と、湯水が流出する2つの出口(aポート、dポート)とを有する流路切替手段であり、3つの経路、すなわち、a−b経路、b−d経路、c−d経路の間で流路形態を切り替え可能に構成されている。
また、貯湯タンクユニット1は、タンク下部配管40、第1のタンク上部配管43、第2のタンク上部配管44、下部戻し配管45、利用側熱交換器一次側入口配管46、利用側熱交換器一次側出口配管47、バイパス配管48および上部戻し配管49を有している。
タンク下部配管40は、貯湯タンク10の下部(図示の構成では最下部)に設けられた導出口6と、第2の三方弁32のaポートとを接続する流路である。ヒートポンプ入口配管41は、第2の三方弁32のcポートと、ヒートポンプユニット60の入口側とを接続する流路である。循環ポンプ21は、ヒートポンプ入口配管41の途中に設置されている。ヒートポンプ出口配管42は、ヒートポンプユニット60の出口側と、四方弁33のcポートとを接続する流路である。
第1のタンク上部配管43は、貯湯タンク10の上部領域に設けられた取出口7と、第1の三方弁31のaポートとを接続する流路である。ここで、「貯湯タンク10の上部領域」とは、貯湯タンク10の高さ方向の中央位置より上側の領域を言うものとする。すなわち、取出口7の位置は、貯湯タンク10の高さ方向の中央位置から最上部までの間にあれば良い。第2のタンク上部配管44は、貯湯タンク10の上部口5と、第1の三方弁31のbポートとを接続する流路である。
下部戻し配管45は、四方弁33のaポートと、貯湯タンク10の下部領域に設けられた戻し口8とを接続する流路である。ここで、「貯湯タンク10の下部領域」とは、貯湯タンク10の高さ方向の中央位置より下側の領域を言うものとする。すなわち、戻し口8の位置は、貯湯タンク10の高さ方向の中央位置から最下部までの間にあれば良い。利用側熱交換器一次側入口配管46は、第1の三方弁31のcポートと、利用側熱交換器22の一次側入口とを接続する流路である。利用側熱交換器一次側出口配管47は、利用側熱交換器22の一次側出口と、第2の三方弁32のbポートとを接続する流路である。バイパス配管48は、循環ポンプ21の下流側のヒートポンプ入口配管41から分岐し、四方弁33のbポートに接続される流路である。上部戻し配管49は、第2のタンク上部配管44の途中から分岐し、四方弁33のdポートに接続される流路である。
貯湯タンクユニット1内には、貯湯タンク10から給湯配管3へ導出された高温水と、給水配管2から分岐した給水分岐管(図示省略)から供給される低温水とを混合することによって給湯温度を調節するための混合弁(図示省略)が更に設けられていても良い。その場合、浴槽50へ給湯するための湯張り用混合弁と、シャワーや蛇口等へ給湯するための一般給湯用混合弁とが設けられていても良い。
制御部70は、例えば浴室、台所等に設置されるリモコン装置(図示省略)と相互に通信可能に接続されている。リモコン装置に設けられた表示部には、貯湯タンク10内に貯えられている湯の温度や貯湯量、給湯温度、時刻、沸き上げモードなどの情報が表示可能になっている。ユーザーは、リモコン装置に設けられた操作部を操作することにより、給湯温度や、浴槽50に張る湯(浴槽水)の温度および量(以下、「湯張り量」と称する)、沸き上げモードなどの設定を行うことができる。
本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2〜図4に示す運転状態に応じて第1の三方弁31を制御して、次の第1流路形態と第2流路形態とを選択的に切り替えて使用する。第1の三方弁31により選択可能な「第1流路形態」とは、貯湯タンク10の取出口7と利用側熱交換器22とが第1のタンク上部配管43および利用側熱交換器一次側入口配管46を介して連通する流路形態であり、「第2流路形態」とは、貯湯タンク10の上部口5と利用側熱交換器22とが第2のタンク上部配管44および利用側熱交換器一次側入口配管46を介して連通する流路形態である。
また、本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2〜図4に示す運転状態に応じて第2の三方弁32を制御して、次の第1流路形態と第2流路形態とを選択的に切り替えて使用する。第2の三方弁32により選択可能な「第1流路形態」とは、貯湯タンク10の導出口6と沸き上げ用熱交換器62とがタンク下部配管40およびヒートポンプ入口配管41を介して連通する流路形態であり、「第2流路形態」とは、利用側熱交換器22と四方弁33とが利用側熱交換器一次側出口配管47、ヒートポンプ入口配管41およびバイパス配管48を介して連通する流路形態である。
更に、本実施形態の貯湯式給湯機100では、以下の図2〜図4に示す運転状態に応じて四方弁33を制御して、次の第1流路形態、第2流路形態および第3流路形態を選択的に切り替えて使用する。四方弁33により選択可能な「第1流路形態」とは、沸き上げ用熱交換器62と貯湯タンク10の上部口5とがヒートポンプ出口配管42、上部戻し配管49および第2のタンク上部配管44を介して連通する流路形態であり、「第2流路形態」とは、第2の三方弁32と貯湯タンク10の上部口5とがヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、上部戻し配管49および第2のタンク上部配管44を介して連通する流路形態であり、「第3流路形態」とは、第2の三方弁32と貯湯タンク10の戻し口8とがヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48および下部戻し配管45を介して連通する流路形態である。
図2は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における沸き上げ運転時の回路構成図である。沸き上げ運転とは、ヒートポンプユニット60を利用して貯湯タンク10内の水を沸き上げるための運転である。この沸き上げ運転時には、図2に示すように、第2の三方弁32は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第2の三方弁32の第1流路形態が選択されるように)制御される。これにより、タンク下部配管40とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、利用側熱交換器一次側入口配管46側を閉として利用側熱交換器22からの流路が遮断される。また、沸き上げ運転時には、四方弁33は、cポートとdポートとが連通し、aポートとbポートとが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第1流路形態が選択されるように)制御される。これにより、ヒートポンプ出口配管42と上部戻し配管49とが連通するとともに、下部戻し配管45側を閉として貯湯タンク10の戻し口8への流路が遮断される。
沸き上げ運転は、上記のように第2の三方弁32および四方弁33が制御されることによって沸き上げ回路が形成された状態で、循環ポンプ21およびヒートポンプユニット60を運転することにより実行される。その結果、貯湯タンク10の導出口6から流出する低温水は、タンク下部配管40、第2の三方弁32、循環ポンプ21およびヒートポンプ入口配管41を経由してヒートポンプユニット60に導かれ、沸き上げ用熱交換器62において加熱された後、高温水となってヒートポンプ出口配管42、四方弁33、上部戻し配管49および第2のタンク上部配管44を経由して、貯湯タンク10の上部口5から貯湯タンク10内に流入し貯えられる。このような沸き上げ運転が実行されることで、貯湯タンク10の内部では、上層部から高温水が貯えられていき、この高温水層が徐々に厚くなっていき、貯湯温度センサ11,12により把握される貯湯タンク10内の貯湯量が所定量を超えると、沸き上げ運転が停止される。
図3は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における上部戻し浴槽加熱運転時の回路構成図である。上部戻し浴槽加熱運転とは、貯湯タンク10の取出口7から取り出した湯(高温水)と、浴槽50から循環する浴槽水とを利用側熱交換器22にて熱交換することにより浴槽水を加熱するとともに、熱交換により温度低下した湯(中温水)を貯湯タンク10の上部口5に戻す運転である。この上部戻し浴槽加熱運転時には、図3に示すように、第1の三方弁31は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように(すなわち、第1の三方弁31の第1流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第1のタンク上部配管43と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第1の三方弁31の第2のタンク上部配管44側が閉とされる。また、第2の三方弁32は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第2の三方弁32の第2流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の導出口6からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、bポートとdポートとが連通し、aポートとcポートが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第2流路形態が選択されるように)制御される。これにより、バイパス配管48と上部戻し配管49とが連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側を閉として沸き上げ用熱交換器62からの流路が遮断される。
上部戻し浴槽加熱運転は、上記のように第1の三方弁31、第2の三方弁32および四方弁33が制御されることによって上部戻し回路が形成された状態で、循環ポンプ21および二次側循環ポンプ52を運転することにより実行される。循環ポンプ21の作動により、貯湯タンク10の湯水が次のように循環する。貯湯タンク10の取出口7から流出する高温水は、第1のタンク上部配管43、第1の三方弁31、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水との熱交換により温度低下して中温水となる。この中温水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第2の三方弁32、ヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、四方弁33、上部戻し配管49、第2のタンク上部配管44を経由して上部口5から貯湯タンク10内に流入する。一方、浴槽50側の経路では、二次側循環ポンプ52の作動により、浴槽50に張られた浴槽水が浴槽水循環回路51内を循環する。その結果、利用側熱交換器22の一次側を流れる高温水の熱が、利用側熱交換器22の二次側を流れる浴槽水に伝達し、浴槽50内に張られた浴槽水が加温される。
上述した上部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10の下部に中温水を流入させないため、貯湯タンク10内の下部の水温の上昇を抑制することができる。貯湯タンク10内の下部の水温が上昇すると、沸き上げ運転時にヒートポンプユニット60(沸き上げ用熱交換器62)へ流入する水の温度が高くなるため、ヒートポンプユニット60の運転効率が低下する。上部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10内の下部の水温の上昇を抑制することができるため、沸き上げ運転の際にヒートポンプユニット60への入水温度を低く維持することが可能となり、ヒートポンプユニット60の運転効率を高く維持することができる。その一方で、上部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10の上部に中温水を流入させるため、貯湯タンク10の上部にある高温水に中温水が混合することにより、貯湯タンク10内の高温水の温度が低下する。
図4は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における下部戻し浴槽加熱運転時の回路構成図である。下部戻し浴槽加熱運転とは、貯湯タンク10の上部口5から取り出した湯(高温水)と、浴槽50から循環する浴槽水とを利用側熱交換器22にて熱交換することにより浴槽水を加熱するとともに、熱交換により温度低下した湯(中温水)を貯湯タンク10の戻し口8に戻す運転である。この下部戻し浴槽加熱運転時には、図4に示すように、第1の三方弁31は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第1の三方弁31の第2流路形態が選択されるように)制御される。これにより、第2のタンク上部配管44と利用側熱交換器一次側入口配管46とが連通するとともに、第1のタンク上部配管43側を閉として貯湯タンク10の取出口7からの流路が遮断される。また、第2の三方弁32は、bポートとcポートとが連通し、aポートが閉状態となるように(すなわち、第2の三方弁32の第2流路形態が選択されるように)制御される。これにより、利用側熱交換器一次側出口配管47とヒートポンプ入口配管41とが連通するとともに、タンク下部配管40側を閉として貯湯タンク10の導出口6からの流路が遮断される。更に、四方弁33は、aポートとbポートとが連通し、cポートとdポートが閉状態となるように(すなわち、四方弁33の第3流路形態が選択されるように)制御される。これにより、バイパス配管48と下部戻し配管45とが連通するとともに、ヒートポンプ出口配管42側を閉として沸き上げ用熱交換器62からの流路が遮断される。
下部戻し浴槽加熱運転は、上記のように第1の三方弁31、第2の三方弁32および四方弁33が制御されることによって下部戻し回路が形成された状態で、循環ポンプ21および二次側循環ポンプ52を運転することにより実行される。循環ポンプ21の作動により、貯湯タンク10の湯水が次のように循環する。貯湯タンク10の上部口5から流出する高温水は、第2のタンク上部配管44、第1の三方弁31、利用側熱交換器一次側入口配管46を経由して利用側熱交換器22に導かれ、浴槽水との熱交換により温度低下して中温水となる。この中温水は、利用側熱交換器一次側出口配管47、第2の三方弁32、ヒートポンプ入口配管41、バイパス配管48、四方弁33、下部戻し配管45を経由して戻し口8から貯湯タンク10内に流入する。一方、浴槽50側の経路では、二次側循環ポンプ52の作動により、浴槽50に張られた浴槽水が浴槽水循環回路51内を循環する。その結果、利用側熱交換器22の一次側を流れる高温水の熱が、利用側熱交換器22の二次側を流れる浴槽水に伝達し、浴槽50内に張られた浴槽水が加温される。
上述した下部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10の下部に中温水を流入させるため、貯湯タンク10内の下部の水温が上昇する。このため、下部戻し浴槽加熱運転を行うと、沸き上げ運転の際にヒートポンプユニット60への入水温度が高くなるため、ヒートポンプユニット60の運転効率が低下する。一方、下部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10の上部領域に中温水を流入させないため、貯湯タンク10内の高温水の温度が低下することを防止することができる。
また、本実施形態の貯湯式給湯機100は、浴槽50に張る湯(浴槽水)の温度をユーザーがリモコン装置から任意に設定可能な浴槽水温設定手段と、浴槽50の湯張り量をユーザーがリモコン装置から任意に設定可能な浴槽水量設定手段と、浴槽水温設定手段および浴槽水量設定手段により設定された温度と湯量とで自動で浴槽50に浴槽水を張る自動湯張り手段と、自動湯張り手段によって浴槽50に浴槽水が張られてから所定時間の間、浴槽50に張られた浴槽水の温度を所定の温度に保つために自動で浴槽加熱運転を行う自動保温手段とを備えている。
次に、本実施形態の貯湯式給湯機100の自動保温手段の動作を図5に基づいて説明する。図5は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯機100における自動保温手段の制御動作を示すフローチャートである。
図5において、制御部70は、所定の間隔(例えば、10分間隔)で浴槽加熱運転の開始条件を判定する(ステップS201)。このステップS201では、浴槽出口側温度センサ53により検出される浴槽水の温度が、浴槽水温設定手段によって設定された温度(以下、「浴槽設定温度」と称する)に対して所定温度以上低下している場合(例えば、浴槽設定温度42℃に対して浴槽水の温度が41℃以下の場合)に、浴槽加熱運転の開始条件を満たしたと判断する。
制御部70は、ステップS201で浴槽加熱運転の開始条件が成立した場合には、次に、浴槽水量設定手段によって設定された湯張り量(以下、「設定湯張り量」と称する)が所定量(例えば、200リットル)以下か否かを判定する(ステップS202)。制御部70は、設定湯張り量が上記所定量以下の場合には、貯湯温度センサ11の検出温度が第1の所定温度T1(例えば、75℃)以上か否かを判定し(ステップS203)、貯湯温度センサ11の検出温度が第1の所定温度T1以上であれば上部戻し浴槽加熱運転を開始し(ステップS204)、貯湯温度センサ11の検出温度が第1の所定温度T1未満であれば下部戻し浴槽加熱運転を開始する(ステップS205)。
また、制御部70は、ステップS202で設定湯張り量が上記所定量より大きい場合には、貯湯温度センサ11の検出温度が上記第1の所定温度T1よりも高い第2の所定温度T2(例えば、80℃)以上か否かを判定し(ステップS206)、貯湯温度センサ11の検出温度が第2の所定温度T2以上であれば上部戻し浴槽加熱運転を開始し(ステップS207)、貯湯温度センサ11の検出温度が第2の所定温度T2未満であれば下部戻し浴槽加熱運転を開始する(ステップS208)。
以上のように、本実施形態では、浴槽加熱運転を開始する際に、貯湯温度センサ11の検出温度が所定の閾値(第1の所定温度T1または第2の所定温度T2)以上か否かを判定し、閾値以上の場合には上部戻し浴槽加熱運転を選択し、閾値未満の場合には下部戻し浴槽加熱運転を選択する。前述したように、沸き上げ運転時のヒートポンプユニット60の運転効率を高く維持する観点からは、下部戻し浴槽加熱運転より上部戻し浴槽加熱運転が好ましいが、上部戻し浴槽加熱運転を行うと、貯湯タンク10の上部の温度が低下する。貯湯タンク10の上部の温度が、給湯に利用可能な下限温度に相当する第3の所定温度T3(例えば、45℃)未満になると、湯切れ(給湯に利用可能な湯が貯湯タンク10内に無い状態)となる。このため、貯湯タンク10の上部の温度が第3の所定温度T3未満になることは、確実に防止することが望ましい。上部戻し浴槽加熱運転を行った場合に貯湯タンク10の上部の温度がどこまで低下するかは、浴槽加熱運転の開始前の貯湯温度センサ11の検出温度により予測することができる。すなわち、浴槽加熱運転の開始前の貯湯温度センサ11の検出温度が高いほど、上部戻し浴槽加熱運転を行った後の貯湯タンク10の上部の温度も高いと予測することができる。
上述した所定の閾値(第1の所定温度T1または第2の所定温度T2)は、上部戻し浴槽加熱運転を行った場合に貯湯タンク10の上部の温度が第3の所定温度T3未満に低下する可能性があるか否かを判別するための閾値として、予め設定されている。すなわち、浴槽加熱運転を開始する際に貯湯温度センサ11の検出温度が所定の閾値(第1の所定温度T1または第2の所定温度T2)以上である場合には、上部戻し浴槽加熱運転を行ったとしても、貯湯タンク10の上部の温度が第3の所定温度T3未満に低下する可能性(すなわち湯切れの可能性)は無いと予測できる。本実施形態では、そのような場合には上部戻し浴槽加熱運転を行うことにより、貯湯タンク10の下部の水温の上昇を抑制することができるので、沸き上げ運転時のヒートポンプユニット60の運転効率を高く維持することができる。
一方、浴槽加熱運転を開始する際に貯湯温度センサ11の検出温度が所定の閾値(第1の所定温度T1または第2の所定温度T2)未満である場合には、上部戻し浴槽加熱運転を行ったとした場合、貯湯タンク10の上部の温度が第3の所定温度T3未満に低下する可能性(すなわち湯切れの可能性)が有ると予測できる。本実施形態では、そのような場合には下部戻し浴槽加熱運転を行うことにより、貯湯タンク10の上部の温度が低下することを抑制することができる。このため、上部戻し浴槽加熱運転による湯切れを招くことを確実に回避することができる。
また、本実施形態では、利用側熱交換器22からの戻り湯(中温水)を貯湯タンク10内に回収する回収口として機能するのは、上部口5および戻し口8のみである。このため、本実施形態では、利用側熱交換器22から戻る中温水を貯湯タンク10内に回収する回収口の数をできるだけ減らすことができる。また、本実施形態では、利用側熱交換器22から戻る中温水の温度を検出するための温度センサが不要である。このように、本実施形態によれば、貯湯タンク10に設ける回収口の数をできるだけ減らすことができ、貯湯タンク10の回収口に接続される配管の構成や回収口を切り替えるための流路切替弁の構成も簡素化でき、利用側熱交換器22から戻る中温水の温度を検出するための温度センサを設ける必要もないことから、低コストのシステム構成で、湯切れを防止しつつ、貯湯タンク10の下部の水温の上昇を抑制し、沸き上げ運転時のヒートポンプユニット60の運転効率を高く維持することが可能となる。
また、本実施形態では、上部戻し浴槽加熱運転と下部戻し浴槽加熱運転との何れを選択するかを決定するための貯湯温度センサ11の検出温度の閾値を、設定湯張り量が比較的小さい場合(例えば、200リットル以下の場合)には比較的小さい値(第1の所定温度T1、例えば75℃)とし、設定湯張り量が比較的大きい場合(例えば、200リットルを超える場合)には比較的大きい値(第2の所定温度T2、例えば80℃)としている。浴槽50内の浴槽水の量は、設定湯張り量に等しいとみなすことができる。浴槽50内の浴槽水の量が小さいほど、上部戻し浴槽加熱運転によって貯湯タンク10の上部に流入する中温水の量が少なくなるため、貯湯タンク10の上部の温度低下幅は小さくなる。このため、浴槽50内の浴槽水の量が比較的小さい場合には、貯湯タンク10の上部の温度がそれほど高くなくても、湯切れせずに上部戻し浴槽加熱運転を実行することが可能となる。この点に鑑みて、本実施形態では、上記のようにして、設定湯張り量に応じて閾値を変化させることにより、上部戻し浴槽加熱運転による湯切れを確実に防止しつつ、上部戻し浴槽加熱運転を選択する状況をより拡大することができる。このため、沸き上げ運転時のヒートポンプユニット60の運転効率をより高く維持することが可能となる。なお、本実施形態では、設定湯張り量に応じて閾値を変化させているが、浴槽50内の浴槽水の量(水位)を検出可能なセンサ(例えば浴槽水循環回路51の圧力を検出するセンサ)を設け、その検出された浴槽50内の浴槽水の量に応じて閾値を変化させても良い。また、本実施形態では、設定湯張り量(浴槽水量)に応じて閾値を2段階に変化させているが、設定湯張り量(浴槽水量)に応じて閾値をより多段階または連続的に変化させるようにしても良い。
更に、浴槽加熱運転を開始する際に、浴槽設定温度と、浴槽出口側温度センサ53により検出される浴槽水の実際の温度との温度差に応じて、この温度差が比較的小さい場合には温度差が比較的大きい場合に比べて上記閾値を小さくするように制御しても良い。上記温度差が小さいほど、上部戻し浴槽加熱運転によって貯湯タンク10の上部に流入する中温水の量が少なくなるため、貯湯タンク10の上部の温度低下幅は小さくなる。このため、上記温度差が比較的小さい場合には、貯湯タンク10の上部の温度がそれほど高くなくても、湯切れせずに上部戻し浴槽加熱運転を実行することが可能となる。この点に鑑みれば、上記のようにして、上記温度差に応じて閾値を変化させることにより、上部戻し浴槽加熱運転による湯切れを確実に防止しつつ、上部戻し浴槽加熱運転を選択する状況をより拡大することができる。このため、沸き上げ運転時のヒートポンプユニット60の運転効率をより高く維持することが可能となる。この場合、上記温度差に応じて閾値を段階的に変化させても良いし、連続的に変化させても良い。
また、本実施形態では、上部戻し浴槽加熱運転の実行中に、貯湯温度センサ11の検出温度が、上記閾値(第1の所定温度T1または第2の所定温度T2)より小さい所定の値より低くなった場合には、上部戻し浴槽加熱運転から下部戻し浴槽加熱運転に切り替えて、浴槽加熱を継続するように制御してもよい。このような制御によれば、上部戻し浴槽加熱運転による湯切れの発生をより確実に防止することが可能となる。
なお、本実施形態では、貯湯タンク10の上部領域の所定の高さ位置にある貯湯温度センサ11の検出温度を所定の閾値と比較することによって、上部戻し浴槽加熱運転と下部戻し浴槽加熱運転との何れを選択するかを決定しているが、本発明では、複数の貯湯温度センサ11,12により検出される温度分布により算出される貯湯タンク10内の貯湯量(蓄熱量)を所定の閾値と比較することによって、上部戻し浴槽加熱運転と下部戻し浴槽加熱運転との何れを選択するかを決定しても良い。
また、本実施形態では、下部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置(上部口5)が、上部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置(取出口7)より、高い位置にあることにより、次のような利点がある。貯湯タンク10内で取出口7より高い位置にある湯は、第1のタンク上部配管43により取り出すことができないため、上部戻し浴槽加熱運転では貯湯タンク10内で取出口7より高い位置にある湯を利用することはできない。これに対し、下部戻し浴槽加熱運転では、貯湯タンク10内で取出口7より高い位置にある湯を上部口5から第2のタンク上部配管44に取り出して利用することができる。このため、貯湯タンク10の上部の温度が低下して上部戻し浴槽加熱運転が行えなくなり、下部戻し浴槽加熱運転を行うときに、貯湯タンク10内の湯を最大限に利用可能となるため、浴槽加熱運転で使用できる湯量をできるだけ多くすることが可能となる。ただし、本発明では、下部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置が、上部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置と比べ、同じまたは低い位置にあっても良い。
また、本発明では、上部戻し回路における貯湯タンク10への湯の戻し位置が、上部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置と比べ、同じまたは低い位置にあっても良いが、本実施形態のように、上部戻し回路における貯湯タンク10への湯の戻し位置(上部口5)が、上部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置(取出口7)より高い位置にあることが好ましい。これにより、次のような利点がある。湯水は、温度が低いほど密度が大きくなる性質を有している。利用側熱交換器22で温度低下した湯(中温水)は、温度低下によって密度が貯湯タンク10内の湯より増大しているため、取出口7より高い位置にある上部口5から貯湯タンク10内に流入すると、密度差によって下方に拡散しながら、貯湯タンク10内の湯と十分に混合される。このようにして、利用側熱交換器22から戻った湯が貯湯タンク10内の湯と十分に混合されることにより、利用側熱交換器22から戻った湯がそのまま取出口7から第1のタンク上部配管43へ流出すること(ショートサイクル)を確実に防止することができる。これに対し、上部戻し回路における貯湯タンク10への湯の戻し位置が、上部戻し回路における貯湯タンク10からの湯の取り出し位置(取出口7)より低い位置にあった場合には、利用側熱交換器22から戻った湯(中温水)が、貯湯タンク10内の湯と十分に混合せずに中温水層を形成する場合がある。そして、その中温水層の位置が徐々に上昇していき、中温水が取出口7から第1のタンク上部配管43へ流出するショートサイクルが発生する可能性がある。