以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35を示す図である。図1に示すように、本実施の形態1の貯湯式給湯装置35は、タンクユニット33、HP(ヒートポンプ)ユニット7、及びリモコン装置44を備える。HPユニット7とタンクユニット33との間は、HP往き配管14とHP戻り配管15と図示しない電気配線とを介して接続されている。タンクユニット33には、制御装置36が内蔵されている。タンクユニット33及びHPユニット7が備える各種弁類、ポンプ類等の作動は、これらと電気的に接続された制御装置36により制御される。
リモコン装置44は、運転動作指令及び設定値の変更などに関する使用者の操作を受け付ける機能を有する。リモコン装置44は、ユーザーインターフェースの例である。制御装置36とリモコン装置44の間は、有線または無線により、双方向にデータ通信可能に接続されている。リモコン装置44には、図示を省略するが、貯湯式給湯装置35の状態等の情報を表示する表示部、使用者が操作するスイッチ等の操作部、スピーカ、マイク等が搭載されている。リモコン装置44の表示部は、使用者に情報を報知する報知手段としての機能を有する。本実施の形態におけるリモコン装置44は、表示部を報知手段として備えるが、変形例として、例えば音声案内装置のような他の報知手段を備えてもよい。
本実施の形態において、リモコン装置44は、例えば台所、リビング、浴室などの壁に設置されたものでもよい。複数のリモコン装置44が制御装置36に対して通信可能でもよい。また、例えばスマートフォンのような携帯情報端末が貯湯式給湯装置35のユーザーインターフェースとしての機能を有するように構成してもよい。当該携帯情報端末と制御装置36とがネットワークを介して通信してもよい。
HPユニット7は、水を加熱する加熱手段の例である。HPユニット7は、圧縮機1、水冷媒熱交換器3、膨張弁4、空気熱交換器6を冷媒配管5にて環状に接続した冷媒回路を備える。HPユニット7は、この冷媒回路によりヒートポンプサイクルの運転を行う。水冷媒熱交換器3では、圧縮機1で圧縮された冷媒と、タンクユニット33から導かれた水との間で熱を交換することで、水が加熱される。圧縮機1で圧縮された冷媒と、水道等の水源から直接供給される水とを水冷媒熱交換器3で熱交換させることができる構成を備えてもよい。
HP往き配管14に取り付けられた入水温度センサ40は、水冷媒熱交換器3に流入する水の温度である入水温度を検出する。HP戻り配管15に取り付けられた出湯温度センサ39は、水冷媒熱交換器3から流出する湯の温度である出湯温度を検出する。また、外気温度を検出する外気温度センサ49がHPユニット7に備えられている。
タンクユニット33には、以下の各種部品及び配管などが内蔵されている。貯湯タンク8は、湯水を貯留する。貯湯タンク8の内部では、温度による水の密度の差によって、上側が高温で下側が低温になる温度成層を形成することができる。貯湯タンク8は、図示のような単一のタンクで構成されるものに限らず、直列に接続された複数のタンクを備えるものでもよい。直列に接続された複数の貯湯タンクでは、上位側のタンクの下部と、当該タンクに対して低位側となる次のタンクの上部とが管を介して順次連結される。以下の説明で、貯湯タンク8における高さ方向すなわち上下方向の位置に関して言及するが、貯湯タンク8が直列に接続された複数のタンクを備えるものである場合には、最上位のタンクから最下位のタンクまでの全体の階層において、上下方向の位置が特定されるものとする。以下の説明では、貯湯タンク8に溜められた湯水、及び貯湯タンク8に接続された流路を流れる水を「タンク水」と呼ぶことがある。
貯湯タンク8の下部に設けられた水導入口8aには、第三給水配管9cが接続されている。水道等の水源から第一給水配管9aを通って供給される水は、減圧弁31で所定圧力に調圧された上で、第三給水配管9cを通って貯湯タンク8内に流入する。貯湯タンク8の上部には、貯湯タンク8内に貯留された湯を貯湯式給湯装置35の外部へ供給するための温水導入出口8dと、HP戻り配管15に連通可能な温水導入出口8eとが設けられている。貯湯タンク8の表面には、複数の貯湯温度センサ41,42,43が高さを変えて取り付けられている。貯湯温度センサ41は、中温水導入出口8fと同じ高さの位置、または中温水導入出口8fに近い高さの位置にある。貯湯温度センサ42は、貯湯温度センサ41より高い位置にある。貯湯温度センサ43は、貯湯温度センサ41より低い位置にある。これらの貯湯温度センサ41,42,43で貯湯タンク8内の湯水の温度分布を検出することにより、貯湯タンク8内の残湯量または蓄熱量を把握できる。
制御装置36は、HPユニット7で加熱された湯を貯湯タンク8に流入させる貯湯運転を制御する。制御装置36は、貯湯タンク8内の残湯量または蓄熱量に応じて、貯湯運転の開始及び停止などを制御する。貯湯運転では、以下のようになる。貯湯タンク8の下部から流出する低温水は、HP往き配管14を経由してHPユニット7に導かれ、水冷媒熱交換器3において加熱され、湯すなわち高温水となる。この高温水は、HP戻り配管15を経由して、貯湯タンク8の上部の温水導入出口8eから貯湯タンク8内に流入する。このような貯湯運転が実行されることで、貯湯タンク8の内部では、上層部から高温水が貯えられていき、この高温水層が徐々に厚くなっていく。制御装置36は、貯湯温度センサ41,42,43により把握される貯湯タンク8内の貯湯量または蓄熱量が所定量を超えると、貯湯運転を終了する。
タンクユニット33には、タンク水ポンプ12及び風呂用熱交換器20が内蔵されている。タンク水ポンプ12は、各種配管にタンク水を循環させるためのポンプであり、第一送水配管13a上に設けられている。風呂往き配管27及び風呂戻り配管28は、浴槽30に設置された浴槽アダプタ80と、タンクユニット33内の風呂用熱交換器20との間を繋ぐ。以下の説明では、浴槽30に溜められた湯を「浴水」と呼ぶことがある。風呂用熱交換器20は、タンク水と、浴槽30からの浴水との間で熱を交換する。
風呂用熱交換器20は、風呂往き配管27及び風呂戻り配管28の途中に設置されている。本実施の形態では、風呂往き配管27及び風呂戻り配管28により、風呂用熱交換器20と浴槽30との間を接続する浴水循環流路が形成される。風呂往き配管27の途中には、風呂用熱交換器20を通過した浴水の温度を検出するための風呂往き温度センサ37が設置されている。風呂戻り配管28の途中には、浴水循環流路に浴水を循環させるための浴水ポンプ29と、浴槽30から出て風呂用熱交換器20に入る前の浴水の温度を検出するための風呂戻り温度センサ38と、浴槽30内の水位レベルを検出するための水位センサ46と、風呂戻り配管28における水の循環を検出するため循環検出手段に相当するフロースイッチ47とが設置されている。以下の説明では、風呂戻り温度センサ38により検出される温度を「風呂戻り温度」と称する。また、風呂往き温度センサ37により検出される温度を「風呂往き温度」と称する。本実施の形態における風呂戻り温度センサ38及び風呂往き温度センサ37の少なくとも一方は、「浴水循環流路の浴水温度を検出する温度検出手段」に相当する。
三方弁11は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポートとを有する流路切替手段である。三方弁11は、a−c、b−cの2つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
四方弁16は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポート及びdポートとを有する流路切替手段である。四方弁16は、a−c、a−d、b−c、b−dの4つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
四方弁18は、入口となるaポートと、出口となるbポート、cポート、及びdポートとを有する流路切替手段である。四方弁18は、a−b、a−c、a−dの3つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
タンクユニット33は、低温配管10、第一送水配管13a、第一温水配管17a、第二温水配管17b、第三温水配管19a、第四温水配管19b、及び第五温水配管19cを有している。低温配管10は、貯湯タンク8の下部に設けられた水導出口8bと、三方弁11のaポートとを接続する。第一送水配管13aは、三方弁11のcポートと、タンク水ポンプ12の入口とを接続する。HP往き配管14は、タンク水ポンプ12の出口と、HPユニット7の入口とを接続する。HP戻り配管15は、HPユニット7の出口と、四方弁16のbポートとを接続する。第一温水配管17aは、四方弁16のdポートと、四方弁18のaポートとを接続する。第二温水配管17bは、四方弁16のcポートと、貯湯タンク8の下部に設けられた水導入口8cとを接続する。第三温水配管19aは、四方弁18のbポートと、貯湯タンク8上部の温水導入出口8eとを接続する。第四温水配管19bは、四方弁18のdポートと、貯湯タンク8の上部に設けられた温水導入出口8dとを接続する。第五温水配管19cは、四方弁18のcポートと、貯湯タンク8の上部から中間部の間に設けられた温水導入口8gとを接続する。
第一タンク循環配管20aは、第三温水配管19aの途中の位置と、風呂用熱交換器20のタンク水の入口との間を接続する。第二タンク循環配管20cは、風呂用熱交換器20のタンク水の出口と、三方弁11のbポートとを接続する。第二送水配管13bは、HP往き配管14におけるタンク水ポンプ12とHPユニット7の入口との間から分岐し、四方弁16のaポートに接続される。
さらに、タンクユニット33は、中温配管79、第一給水配管9a、第二給水配管9b、第三給水配管9c、第四給水配管9d、給湯用混合弁22、風呂用混合弁23、中温水切替弁78、給湯配管24、風呂配管25、戻り配管20b、及び逆止弁50を有している。
中温水切替弁78は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポートとを有する流路切替手段である。中温水切替弁78は、a−c、b−cの2つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
給湯用混合弁22は、第一入口、第二入口、及び出口を備える混合手段である。風呂用混合弁23は、第一入口、第二入口、及び出口を備える混合手段である。
第一給水配管9aの一端は水道等の水源に接続される。第一給水配管9aの他端には減圧弁31を介して第二給水配管9b及び第三給水配管9cが接続される。第二給水配管9bは、中温水切替弁78のaポートに接続されている。中温配管79は、貯湯タンク8の中間部に設けられた中温水導入出口8fと中温水切替弁78のbポートとを接続している。戻り配管20bは、第二タンク循環配管20cの途中から分岐して、中温配管79の途中に接続されている。逆止弁50は、戻り配管20b上に設置されている。逆止弁50は、貯湯タンク8の中間部から貯湯タンク8の下部へ向かう流れを阻害する。これにより、貯湯タンク8の中間部から貯湯タンク8の下部への熱の流出を確実に防止できる。第四給水配管9dの一端は、中温水切替弁78のcポートに接続されている。第四給水配管9dの他端は、給湯用混合弁22及び風呂用混合弁23のそれぞれの第一入口に接続されている。高温配管21の一端は、貯湯タンク8の温水導入出口8dに連通する。高温配管21の他端は、給湯用混合弁22及び風呂用混合弁23のそれぞれの第二入口に接続されている。
中温水切替弁78は、第二給水配管9bと第四給水配管9dとが連通する第一流路状態と、中温配管79と第四給水配管9dとが連通する第二流路状態の2つの流路状態を切替えて使用する。中温水切替弁78を第一流路状態にすると、水源から供給される低温水が、第二給水配管9b及び第四給水配管9dを通って、給湯用混合弁22及び風呂用混合弁23へ供給される状態になる。中温水切替弁78の第一流路状態は、「低温水使用状態」に相当する。中温水切替弁78を第二流路状態にすると、貯湯タンク8から中温配管79を通って供給される中温水が、第四給水配管9dを通って、給湯用混合弁22及び風呂用混合弁23へ供給される状態になる。中温水切替弁78の第二流路状態は、「中温水使用状態」に相当する。
給湯用混合弁22は、貯湯タンク8から高温配管21を通って供給される高温水と、第四給水配管9dから供給される低温水もしくは中温水との流量比を調整することにより、使用者がリモコン装置44にて設定した設定温度の湯を生成し、給湯配管24に流入させる。給湯用混合弁22で温度調整された湯は、給湯配管24から給湯栓34を経由して、使用者が利用するシャワー、カラン等の蛇口(図示省略)に供給される。
風呂用混合弁23は、貯湯タンク8から高温配管21を通って供給される高温水と、第四給水配管9dから供給される低温水もしくは中温水との流量比を調整することにより、使用者がリモコン装置44にて設定した設定温度の湯を生成可能である。風呂用混合弁23で設定温度に調整された湯は、風呂配管25により、風呂用流量センサ45、風呂用電磁弁26、風呂往き配管27、風呂戻り配管28を経て、浴槽30へ流入する。
制御装置36は、風呂用流量センサ45及び水位センサ46により検出される情報に基づいて湯張りの完了を判定することにより、湯張り完了時の浴槽30内の浴水の量である湯張り湯量が、使用者がリモコン装置44にて設定した湯量に等しくなるように制御できる。本実施の形態の貯湯式給湯装置35は、風呂自動運転を実行可能なものでもよい。リモコン装置44にて風呂自動運転が設定されると、制御装置36は、湯張りの完了後、浴槽30内の浴水の温度及び量が、リモコン装置44で設定された温度及び量に維持されるように、必要に応じて、浴水の昇温、冷却、たし湯、さし水を行う。
本実施の形態における制御装置36は、風呂熱回収モードを制御モードとして備えている。風呂熱回収モードは、入浴の終了後に、浴槽30内に残った浴水の熱を貯湯タンク8内へ回収するためのモードである。本実施の形態において、制御装置36は、風呂熱回収モードのときに、回収運転と攪拌運転とを交互に行う。回収運転は、浴槽30内の浴水の熱を貯湯タンク8内へ移送するための運転である。攪拌運転は、浴槽30内の浴水を攪拌するための運転である。
図2は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35における攪拌運転のときの浴水の流れを示す図である。図2に示すように、攪拌運転のときには、以下のようになる。タンク水ポンプ12を動作させることなく浴水ポンプ29を動作させる。浴槽30内の浴水が、浴槽アダプタ80から風呂戻り配管28へ引き込まれ、風呂用熱交換器20に流入する。風呂用熱交換器20を通過した浴水は、風呂往き配管27を通って浴槽30内に戻る。浴槽30内から風呂戻り配管28へ引き込まれる水流と、風呂往き配管27から浴槽30内へ噴き出す水流とによって浴槽30内に強制対流が発生し、浴槽30内の浴水が攪拌される。タンク水は風呂用熱交換器20を流れないので、風呂用熱交換器20で浴水との熱交換は行われない。
図3は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35における回収運転のときのタンク水及び浴水の流れを示す図である。図3に示すように、回収運転のときには、以下のようになる。三方弁11は、aポートとcポートとが連通し、bポートが閉状態となるように制御される。これにより、低温配管10と第一送水配管13aとが連通するとともに、第二タンク循環配管20cへの流路が遮断される。四方弁16は、aポートとdポートとが連通し、bポートとcポートとが閉状態となるように制御される。これにより、第二送水配管13bと第一温水配管17aとが連通するとともに、第二温水配管17b側を閉として貯湯タンク8の下部への流路が遮断される。四方弁18は、aポートとbポートとが連通し、cポートとdポートとが閉状態となるように制御される。これにより、第一温水配管17aと第三温水配管19aとが連通するとともに、第四温水配管19b及び第五温水配管19c側を閉として貯湯タンク8の中間部への流路が遮断される。
回収運転では、上記のように三方弁11、四方弁16、及び四方弁18が制御された状態で、まず、浴水ポンプ29が動作を開始することで浴水の循環が開始された後に、タンク水ポンプ12の動作を開始することで、タンク水ポンプ12及び浴水ポンプ29を共に動作させる。
回収運転のときのタンク水は、以下のように循環する。貯湯タンク8の水導出口8bから低温配管10を通って流出した低温のタンク水は、三方弁11、第一送水配管13a、タンク水ポンプ12、第二送水配管13b、四方弁16、第一温水配管17a、四方弁18、第三温水配管19a、及び第一タンク循環配管20aを通って、風呂用熱交換器20に流入する。風呂用熱交換器20内で、タンク水は、浴槽30からの浴水の熱により加熱され、浴槽30内の浴水の温度に近い温度になる。この加熱されたタンク水を以下「熱回収温水」と呼ぶことがある。熱回収温水は、風呂用熱交換器20から、戻り配管20b、逆止弁50、及び中温配管79を通って、中温水導入出口8fから貯湯タンク8内に流入して貯留される。戻り配管20bに取り付けた温度センサ48により、戻り配管20bを流れる熱回収温水の温度を検出してもよい。
風呂往き配管27及び風呂戻り配管28を流れる浴水の流量を以下「浴水流量」とも呼ぶ。制御装置36は、浴水ポンプ29の回転速度を調整可能である。浴水ポンプ29の回転速度が高いほど、浴水流量が高くなる。制御装置36は、攪拌運転での浴水ポンプ29の回転速度が、回収運転での浴水ポンプ29の回転速度よりも高くなるように浴水ポンプ29を制御してもよい。すなわち、制御装置36は、攪拌運転での浴水流量が回収運転での浴水流量よりも高くなるように制御してもよい。これにより、以下の効果が得られる。攪拌運転では、風呂往き配管27から浴槽30内に流入する浴水の流速が高くなるので、浴槽30内をより効率良く攪拌できる。回収運転では、浴水流量が比較的低いことで、浴水ポンプ29の消費電力を低くできる。また、浴水が風呂用熱交換器20に入ってから出るまでの時間が長くなるので、浴水の熱をより多くタンク水へ伝えることができる。
制御装置36は、リモコン装置44に対する使用者の操作に応じて風呂熱回収モードを開始してもよい。例えば、リモコン装置44の所定のボタンが押下された場合に制御装置36が風呂熱回収モードを開始してもよい。風呂熱回収モードが終了するまで、攪拌運転と回収運転とが交互に繰り返し実施される。
図4は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35において、浴槽30内に温度境界層が生成されたときの浴槽30内の温度分布を模式的に示す図である。浴槽30の湯張りが完了してから長時間が経過した場合、あるいは風呂熱回収モードの回収運転が行われた場合には、密度の低い比較的高温の浴水が浴槽30内の上方に滞留し、密度の高い比較的低温の浴水が浴槽30内の下方に滞留することで、図4に示すような温度分布となる。
浴槽30内に温度境界層が形成された状態から攪拌運転を行うと、浴槽30内の温度境界層が壊され、比較的高温の上層側の浴水と比較的低温の下層側の浴水とが混ざり合う。その結果、浴槽アダプタ80の高さでの浴水の温度が上昇するので、風呂用熱交換器20に流入する浴水の温度が上昇する。よって、攪拌運転の後に回収運転を行うことで、熱回収効率が向上する。
制御装置36は、風呂熱回収モードを開始する場合、回収運転から開始するのではなく、まず攪拌運転から開始することが好ましい。風呂熱回収モードの開始前に図4に示すような温度分布になっていた場合には、まず攪拌運転から開始することで、風呂用熱交換器20に流入する浴水の温度を上昇させることができ、熱回収効率が向上する。変形例として、制御装置36は、風呂熱回収モードを開始する場合、攪拌運転から開始するのではなく、まず回収運転から開始してもよい。
攪拌運転では、タンク水ポンプ12が停止しているので、風呂用熱交換器20内で浴水が冷却されることがない。よって、風呂往き配管27から浴槽30内に流入する噴流の温度が低くなることを防止できる。これにより、以下の効果が得られる。浴槽30内の浴水全体の温度が均一化するまでに要する時間を短縮できるので、必要な攪拌運転の時間を短縮できる。その結果、風呂熱回収モード全体の所要時間を短縮できるので、使い勝手が向上する。さらに、タンク水ポンプ12の消費電力を節約することもできる。
風呂熱回収モードにおいて、制御装置36は、原則として、最後の攪拌運転の後に回収運転を行うことなく風呂熱回収モードの実行を終了することが望ましい。すなわち、制御装置36は、原則として、攪拌運転のときに風呂熱回収モードの実行を終了するように制御することが望ましい。仮に、回収運転のときに風呂熱回収モードの実行が終了すると、攪拌運転により攪拌された浴槽30内の浴水中に、回収できる熱量がまだ残っている状態で風呂熱回収モードの実行が終了する可能性があるので、熱回収量を十分に高くできない可能性がある。あるいは、最後の攪拌運転の段階で、実際はもう回収できる熱量が浴槽30内に残っていないにもかかわらず、次の回収運転が実行される可能性がある。このような場合、最後の回収運転は、実際には熱回収に寄与していないので、タンク水ポンプ12及び浴水ポンプ29を駆動した消費電力が無駄になったり、風呂熱回収モードの終了タイミングが無駄に遅延したりすることになる。これに対し、原則として攪拌運転のときに風呂熱回収モードの実行を終了することで、熱回収量を十分に高くしつつ、熱回収に寄与しない無駄な回収運転の実行を確実に回避できるので、タンク水ポンプ12及び浴水ポンプ29の電力消費を抑制できる。また、風呂熱回収モードの終了タイミングが無駄に遅延することを確実に防止できる。
本実施の形態において、制御装置36は、風呂熱回収モードの実行を終了するか否かを、攪拌運転のときの浴水温度に基づいて判定してもよい。攪拌運転のときには、風呂用熱交換器20での熱交換がされていないので、回収できる熱量が浴槽30内にまだ残っているかどうかを浴水温度に基づいてより正確に判定できる。このため、風呂熱回収モードの実行を終了するか否かを、攪拌運転のときの浴水温度に基づいて判定することで、風呂熱回収モードを終了するタイミングをより適切に判定できる。制御装置36は、攪拌運転のときの、風呂戻り温度センサ38または風呂往き温度センサ37の検出温度に基づいて、風呂熱回収モードの実行を終了するか否かを判定してもよい。風呂戻り温度センサ38または風呂往き温度センサ37の検出温度を以下「浴水検出温度」と称する。
制御装置36は、攪拌運転を終了して回収運転へ移行するか否かを当該攪拌運転の最中の浴水検出温度に基づいて決定する処理である「攪拌終了判定」を行うことができる。
攪拌運転の実行中の浴水検出温度は、通常は時間の経過とともに上昇していく。その場合、浴水検出温度の上昇速度は、時間の経過とともに低下していく。これは、浴槽30内の浴水の温度が均一な状態に近づいていくためである。
攪拌終了判定において、制御装置36は、浴水検出温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さくなると、攪拌運転を終了して回収運転へ移行することを決定してもよい。攪拌運転において浴水検出温度の時間当たりの変化量が小さくなったことは、浴槽30内の浴水の温度が均一な状態になったことを意味すると考えられる。このため、浴水検出温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さくなったときに攪拌運転を終了して回収運転へ移行することで、適切なタイミングで攪拌運転を終了することができる。また、浴水検出温度の時間当たりの変化量に基づいて攪拌運転から回収運転への移行を決めるので、外乱による浴水検出温度の一時的な変動の影響を受けないで済む。よって、不適切なタイミングで攪拌運転を終了してしまうことを確実に防止できる。
上記の攪拌終了判定において、制御装置36は、例えば以下のようにしてもよい。所定時間(例えば30秒間)の間に検出された複数の浴水検出温度のうちの最大値と最小値との差が基準値(例えば2℃)以下である場合には、浴水検出温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さいとみなしてもよい。
制御装置36は、攪拌運転の開始から所定の攪拌必要時間だけ攪拌運転を継続した後に、攪拌終了判定を開始するようにしてもよい。攪拌必要時間は、浴槽30内に図4のような温度境界層が形成された状態から、攪拌運転によって浴槽30内の温度が均一になるまでに要する時間に相当する。なお、「浴槽30内の温度が均一」とは、例えば、浴槽30内において、底部の水温と、水面での水温との差が2℃以下であることとしてもよい。
以下、浴槽30内の浴水の量を「浴槽湯量」と称する。浴槽湯量と攪拌必要時間との関係に関する情報は、実験及び理論計算の少なくとも一方によって求めることができる。制御装置36は、浴槽湯量が比較的少ない場合の攪拌必要時間が、浴槽湯量が比較的多い場合の攪拌必要時間よりも短くなるように、浴槽湯量に応じて攪拌必要時間を設定してもよい。そのようにすることで、攪拌運転を継続する時間を浴槽湯量に応じてより適切に制御できる。上記の制御において、制御装置36は、使用者がリモコン装置44で設定した湯張り湯量の値を浴槽湯量とみなして制御してもよいし、あるいは、水位センサ46で検出される水位によって浴槽湯量を計算してもよい。また、制御装置36は、浴槽湯量に応じて、攪拌必要時間を複数段階に変えてもよいし、あるいは攪拌必要時間を連続的に変えてもよい。制御装置36は、浴槽湯量にかかわらず、攪拌必要時間を一定にしてもよい。
攪拌運転を継続する時間が攪拌必要時間よりも短いと、浴槽30内が十分に攪拌されないので、風呂用熱交換器20に流入する浴水の温度を十分に上昇させることができない可能性がある。攪拌運転の開始から攪拌必要時間の経過後に攪拌終了判定を開始することで、攪拌運転を少なくとも攪拌必要時間だけ継続するので、浴槽30内を確実に攪拌することができる。また、攪拌必要時間が経過した後では、攪拌終了判定を行うことで、攪拌運転を継続する時間が不必要に長くなることを防止できる。これにより、以下の効果が得られる。浴水ポンプ29の消費電力を節約できる。風呂熱回収モード全体の所要時間を短縮できる。攪拌運転中に浴槽30から熱が散逸することを抑制できる。
制御装置36は、攪拌運転の最中に、当該攪拌運転の開始時から経過した時間である攪拌時間が所定の攪拌上限時間(例えば30分間)に達した場合には、攪拌終了判定の結果にかかわらず、当該攪拌運転を終了して回収運転に移行するようにしてもよい。そのようにすることで、攪拌運転を継続する時間が長くなりすぎることをより確実に防止できる。
制御装置36は、回収運転を終了して攪拌運転へ移行するか否かを当該回収運転の最中の浴水検出温度に基づいて決定する処理である「回収終了判定」を行うことができる。
通常、回収運転の実行中には、時間の経過とともに風呂戻り温度が低下していく。これは、風呂用熱交換器20内でタンク水との熱交換により冷却された浴水が風呂往き配管27から浴槽30内に流入することで、浴槽30内の浴水の温度が徐々に低下するためである。浴槽30内では、前述したような温度境界層が形成される。浴槽30内の温度境界層は、徐々に上に移動する。温度境界層が浴槽アダプタ80の位置よりも上になると、比較的低温の浴水が風呂用熱交換器20に流入するようになることから、熱回収効率が低下する。そのような状態になった場合には、回収運転から攪拌運転へ移行し、浴槽30内を攪拌することが望ましい。
回収運転の実行中に、時間の経過とともに風呂戻り温度が低下していくと、風呂用熱交換器20の内部において浴水とタンク水との温度差が縮小していくので、熱交換量が低くなる。その結果、浴槽30から出る浴水の温度と浴槽30に戻る浴水の温度との差が小さくなるので、風呂戻り温度の時間当たりの変化量が小さくなる。
回収終了判定では、以下のようにしてもよい。制御装置36は、回収運転の最中に、風呂戻り温度センサ38により検出された風呂戻り温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さくなると、回収運転を終了して攪拌運転へ移行してもよい。風呂戻り温度の時間当たりの変化量が小さくなったことは、風呂用熱交換器20での熱交換量の低下、すなわち熱回収効率の低下を意味すると考えられる。このため、風呂戻り温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さくなったときに回収運転を終了して攪拌運転へ移行することで、適切なタイミングで攪拌運転を行い、熱回収効率を回復させることができる。また、風呂戻り温度の時間当たりの変化量に基づいて回収運転から攪拌運転への移行を決めるので、外乱による風呂戻り温度の一時的な変動の影響を受けないで済む。よって、不適切なタイミングで回収運転を終了してしまうことを確実に防止できる。
上記の回収終了判定において、以下のようにしてもよい。制御装置36は、所定時間(例えば、15秒間)の間に検出された複数の風呂戻り温度の検出値のうちの最大値と最小値との差が基準値(例えば1℃)以下である場合には、風呂戻り温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さいとみなして、回収運転を終了して攪拌運転へ移行してもよい。
制御装置36は、回収運転の最中に、当該回収運転の開始時から経過した時間である回収時間が所定の回収上限時間(例えば1時間)に達した場合には、回収終了判定の結果にかかわらず、当該回収運転を終了して攪拌運転に移行するようにしてもよい。そのようにすることで、回収運転を継続する時間が長くなりすぎることをより確実に防止できる。
回収可能な熱量が浴槽30内にほとんど残っていない状態になると、攪拌運転を実行しても浴水検出温度がほとんど上昇しないようになる。2回目以降の攪拌運転の実行中に、制御装置36は、浴水検出温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さい場合には、風呂熱回収モードの実行を終了してもよい。
上記の処理において、制御装置36は、例えば以下のようにしてもよい。制御装置36は、攪拌運転の開始直後の所定時間において浴水検出温度の時間当たりの変化量を計算し、当該変化量が基準よりも小さい場合には、風呂熱回収モードの実行を終了してもよい。例えば、制御装置36は、所定時間(例えば30秒間)の間に検出された複数の浴水検出温度のうちの最大値と最小値との差が基準値(例えば2℃)以下である場合には、浴水検出温度の時間当たりの変化量が基準よりも小さいとみなして、風呂熱回収モードの実行を終了してもよい。
制御装置36は、攪拌運転の実行中の浴水検出温度と、当該攪拌運転の開始時の浴水検出温度との差が、予め設定した所定値(例えば、2℃)以内となった場合には、次回の回収運転へ移行せず、そのまま風呂熱回収モードの実行を終了してもよい。また、制御装置36は、攪拌運転の実行中の浴水検出温度が所定値(例えば30℃)以下となった場合には、次回の回収運転へ移行せず、そのまま風呂熱回収モードの実行を終了してもよい。上記のようにすることで、回収可能な熱を確実に回収できるとともに、低温の浴水がタンク水と熱交換することによる効率低下を確実に防止できるため、効率的な熱回収が可能となる。
風呂熱回収モードの実行中には、風呂熱回収モードを実行していることをリモコン装置44の表示部と音声案内装置との少なくとも一方により使用者に報知してもよい。これにより、自動で風呂熱回収モードが動作した場合に、使用者が誤動作だと誤解しないようにすることができる。また、回収運転と攪拌運転とのいずれが実行中であるかをリモコン装置44の表示部と音声案内装置との少なくとも一方により使用者に報知してもよい。例えば、回収運転の最中にはリモコン装置44の表示部に「回収中」と表示し、攪拌運転の最中にはリモコン装置44の表示部に「攪拌中」と表示してもよい。これにより、浴槽30内の浴水の熱を回収していない攪拌運転が実行されているときでも、機器の異常ではないことを使用者が確認することができ、使い勝手が向上する。
本実施の形態の貯湯式給湯装置35は、凍結予防運転を自動で実施できる。凍結予防運転は、HP往き配管14及びHP戻り配管15の内部の水が凍結することを予防するための運転である。本実施の形態において、HP往き配管14及びHP戻り配管15は、凍結予防運転の対象となる「対象配管」に相当する。本実施の形態において、制御装置36は、入水温度センサ40の検出温度及び外気温度センサ49の検出温度に基づいて、HP往き配管14及びHP戻り配管15の凍結の懸念があるかどうか、すなわち凍結予防運転の要求があるかどうかを判定する。例えば入水温度センサ40の検出温度及び外気温度センサ49の検出温度が共に所定温度以下(例えば5℃以下)である場合に、凍結予防運転の要求があると判定してもよい。
本実施の形態の貯湯式給湯装置35は、上述した凍結予防運転として、第一の凍結予防運転と第二の凍結予防運転とを実施可能である。第一の凍結予防運転は、HPユニット7を稼働することで凍結を予防する運転である。本実施の形態における第一の凍結予防運転は、貯湯タンク8から流出したタンク水をHPユニット7により加熱した後に貯湯タンク8内に戻す運転となる。
図5は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35における第一の凍結予防運転のときのタンク水の流れを示す図である。図5に示すように、第一の凍結予防運転の動作は、貯湯運転と同様の動作となる。具体的には、以下のようになる。三方弁11では、aポートとcポートとが連通する。四方弁16では、bポートとdポートとが連通する。四方弁18では、aポートとbポートとが連通する。HPユニット7及びタンク水ポンプ12が運転される。貯湯タンク8の下部の水導出口8bから流出した低温水は、低温配管10、三方弁11、第一送水配管13a、タンク水ポンプ12、及びHP往き配管14を経由してHPユニット7に導かれ、水冷媒熱交換器3において加熱され、湯すなわち高温水となる。この高温水は、HP戻り配管15、四方弁16、第一温水配管17a、四方弁18、及び第三温水配管19aを経由して、温水導入出口8eから貯湯タンク8の上部に流入し、貯湯タンク8内に貯えられる。
制御装置36は、所定の終了条件が成立すると、第一の凍結予防運転を終了する。例えば、入水温度センサ40の検出温度が所定温度以上(例えば10℃以上)になった場合、または第一の凍結予防運転の開始から所定時間(例えば10分間)が経過した場合に、第一の凍結予防運転を終了してもよい。
図6は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35における第二の凍結予防運転のときのタンク水及び浴水の流れを示す図である。第二の凍結予防運転は、HPユニット7を稼働しない状態で、HPユニット7、HP往き配管14、HP戻り配管15、及び風呂用熱交換器20を通るタンク水循環流路にタンク水を循環させるとともに、浴水循環流路に浴水を循環させる運転である。第二の凍結予防運転であれば、HPユニット7を運転する必要がなく、浴槽30に残った浴水から回収した廃熱を凍結予防運転に利用できるので、電力消費を抑制できる。第二の凍結予防運転の終了条件は、第一の凍結予防運転と同じでもよい。
図6に示すように、第二の凍結予防運転のときには、以下のようになる。三方弁11では、bポートとcポートとが連通する。四方弁16では、bポートとdポートとが連通する。四方弁18では、aポートとbポートとが連通する。HPユニット7を停止した状態で、タンク水ポンプ12及び浴水ポンプ29が運転される。浴水の流れは回収運転のときと同じである。タンク水は、以下のように流れる。風呂用熱交換器20内で浴水により加熱されたタンク水は、第二タンク循環配管20c、三方弁11、第一送水配管13a、タンク水ポンプ12、及びHP往き配管14を経由してHPユニット7の水冷媒熱交換器3に流入する。水冷媒熱交換器3を通過したタンク水は、HP戻り配管15、四方弁16、第一温水配管17a、四方弁18、第三温水配管19a、及び第一タンク循環配管20aを経由して、再び風呂用熱交換器20に流入する。
本実施の形態において、制御装置36は、風呂熱回収モードの回収運転の最中に凍結予防運転が要求された場合には、第二の凍結予防運転を実施する。これにより、浴槽30に残った浴水の廃熱を有効に利用することができ、HPユニット7を稼働せずに凍結予防運転を行えるので、電力消費を抑制できる。なお、制御装置36は、三方弁11及び四方弁16を切り替えることで、回収運転から第二の凍結予防運転に切り替えることができる。
上述したように、制御装置36は、回収運転の最中に凍結予防運転が要求された場合には、図3の回収運転を中断して、図6の第二の凍結予防運転を実施する。この場合、制御装置36は、第二の凍結予防運転が終了した後に、中断していた回収運転を再開することが望ましい。これにより、第二の凍結予防運転が実施された場合であっても、貯湯タンク8内への熱回収量を十分に確保することができる。
本実施の形態において、制御装置36は、風呂熱回収モードの攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合には、第一の凍結予防運転を実施する。攪拌運転のときには、例えば図4に示すような温度境界層が浴槽30内に形成されている可能性があるので、比較的低温の浴水が風呂用熱交換器20に循環する可能性がある。このため、攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合に第二の凍結予防運転を実施したと仮定すると、風呂用熱交換器20から流出するタンク水が、凍結予防運転を行うために十分な熱量を有していない可能性がある。その結果、凍結を確実に予防できない可能性がある。これに対し、本実施の形態では、攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合には第一の凍結予防運転を実施することで、十分な熱量をHP往き配管14及びHP戻り配管15に供給することができ、これらの凍結を確実に予防することが可能となる。
制御装置36は、攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合には、浴水ポンプ29を停止することにより攪拌運転を中断して、第一の凍結予防運転を実施してもよい。浴槽30内が十分に攪拌された後にも攪拌運転が継続したと仮定すると、浴水ポンプ29の電力消費が無駄になるとともに、風呂往き配管27及び風呂戻り配管28を流れる浴水から熱が散逸することにより、浴槽30内の浴水の熱量が低下する可能性がある。これに対し、浴水ポンプ29を停止した状態で第一の凍結予防運転を実施することで、浴水ポンプ29の電力消費を抑制できるとともに、浴槽30内の浴水の熱量が低下することを防止できる。この場合、制御装置36は、第一の凍結予防運転が終了した後に、中断していた攪拌運転を再開することが望ましい。これにより、風呂熱回収モードを適切に再開することができるので、貯湯タンク8内への熱回収量を十分に確保することができる。
また、制御装置36は、攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合に、第一の凍結予防運転を開始した後も攪拌運転を継続してもよい。すなわち、制御装置36は、第一の凍結予防運転の最中に浴水ポンプ29を動作させることで、第一の凍結予防運転と攪拌運転とを並行して実施してもよい。図7は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35において第一の凍結予防運転と攪拌運転とを並行して実施しているときのタンク水及び浴水の流れを示す図である。第一の凍結予防運転を開始した後も攪拌運転を継続することにより、第一の凍結予防運転の最中に攪拌運転の少なくとも一部を済ませることができる。このため、第一の凍結予防運転の終了後、速やかに回収運転に移行できるので、風呂熱回収モードが終了する時刻が遅延することを確実に抑制できる。
また、攪拌運転の最中に凍結予防運転が要求された場合に、第一の凍結予防運転を開始した後も攪拌運転を継続するか、攪拌運転を中断して第一の凍結予防運転を実施するかを、リモコン装置44を用いて使用者が事前に選択可能であるように構成してもよい。これにより、使用者の要望または設置環境などに応じて、より適切な運転が可能となる。
前述したように、制御装置36は、浴水検出温度の変化量に基づいて、攪拌終了判定及び回収終了判定を行う。第一の凍結予防運転あるいは第二の凍結予防運転が実行されている場合の浴水検出温度の変化量は、そうでない場合の浴水検出温度の変化量とは異なる可能性がある。例として、HP往き配管14及びHP戻り配管15が短尺(例えば1m)の環境で、第二の凍結予防運転を実施した場合、風呂用熱交換器20で浴水より回収した熱量の、タンクユニット33側での損失量が小さい。そのため、貯湯タンク8の下部に低温水があり、浴水から貯湯タンク8へ熱量を回収できる状態であるにもかかわらず、浴水検出温度の変化量が少ないため、浴水からの熱量回収が不可と誤判定する可能性がある。
上記のような誤判定をより確実に防止するために、制御装置36は、以下のうちの少なくとも一つを行うことが望ましい。
(1)制御装置36は、攪拌運転が第一の凍結予防運転と並行して実施されているときには攪拌終了判定にかかわらず当該攪拌運転を継続し、第一の凍結予防運転が終了した後の攪拌終了判定の判定結果に応じて当該攪拌運転を終了するか否かを決定することが望ましい。
(2)制御装置36は、第二の凍結予防運転が実施されているときには回収運転を終了することを決定せず、第二の凍結予防運転が終了した後の回収終了判定によって回収運転を終了するか否かを決定することが望ましい。
(3)制御装置36は、攪拌運転の開始時から経過した時間である攪拌時間が攪拌上限時間に達した場合に攪拌運転を終了する処理において、第一の凍結予防運転が実施中の時間を除いて攪拌時間を計算することが望ましい。
(4)制御装置36は、回収運転の開始時から経過した時間である回収時間が回収上限時間に達した場合に回収運転を終了する処理において、第二の凍結予防運転が実施中の時間を除いて回収時間を計算することが望ましい。
制御装置36は、風呂熱回収モードの実施中に、第一の凍結予防運転が実施された回数と第二の凍結予防運転が実施された回数との合計回数が所定回数(例えば2回または3回)達した場合には、風呂熱回収モードを終了するようにしてもよい。当該合計回数が当該所定回数に達した場合には、風呂熱回収モードの開始から比較的長い時間が経過しているので、浴槽30内に残っている回収可能な熱量が少ないと考えられるためである。また、風呂熱回収モードが終了する時刻が大きく遅延することを防止する観点からも、上記のようにすることが望ましい。
また、制御装置36は、風呂熱回収モードの回収運転の最中に凍結予防運転が要求された場合において、浴槽30内に残っている回収可能な熱量が基準よりも少ないと判定した場合には、第二の凍結予防運転に代えて第一の凍結予防運転を実施してもよい。
上述した実施の形態の形態では、第一の凍結予防運転のときにHPユニット7により生成される熱を用いて凍結を予防するようにしているが、変形例として、水配管に取り付けられた加熱手段としての凍結防止ヒーター(図示省略)に通電して凍結防止ヒーターを稼働させることにより凍結を予防する運転を第一の凍結予防運転として行うようにしてもよい。