JP2014012645A - キューティクル細胞分化促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】キューティクル細胞の分化過程に密接に関わるS100A3蛋白質の機能を高め、キューティクル細胞の分化プロセスを円滑に促進することで、毛髪自体の外観や特性を根元から好ましい状態に導くことが可能なキューティクル細胞分化促進有効成分を見い出し、これを含む毛髪化粧料の提供。
【解決手段】エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするキューティクル細胞分化促進剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、毛髪に好ましい特性を付与するキューティクル細胞分化促進剤に関する。
毛髪には、好ましい特性として、艶やかな外観、毛先までのまとまり感、しっとりとした潤い感、さらさらとした滑りの良い指通り感、さらには毛先までの柔らかな感触等が求められ、そのため日々の毛髪の手入れが必要とされている。しかしながら、昨今、カラーリング、パーマ等の化学的な処理や過度なブラッシングやコテやドライヤー等の物理的な処理によって毛髪が損傷し、健康毛本来の好ましい特性を人為的に喪失させる機会が増えている。このような毛髪の損傷への対策として、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメントやヘア美容液等の毛髪化粧料が使用されている。これらの毛髪化粧料には、油剤、多価アルコール、カチオン性界面活性剤やシリコーン誘導体等の成分が、毛髪に対してしなやかさや、滑り良い櫛通り感を付与する目的で配合されている(例えば、特許文献1)。また、毛髪へのコーティング性が非常に高いシリコーンとペプチド若しくはタンパク質又はそれらの誘導体との組み合わせが、ダメージによるキューティクル剥離の防止や潤い感を付与する目的で配合されている(例えば、特許文献2)。さらには、毛髪への吸着性が高いアミノ変性シリコーンとカチオン性界面活性剤の組み合わせが、毛髪の滑り感やまとまり感を向上させ使用感を向上させる目的で配合されている(例えば、特許文献3、特許文献4)。しかしながら、これら従来の毛髪化粧料では、損傷により損なわれた毛髪の特性を補ったり、損傷を予防したりする効果は見込めるものの、毛髪自体が有する本来の特性を回復させることは困難である。
毛髪を構成する要素のうち、最表層にあるキューティクルは、毛髪の性状、つやなどの美観に対する寄与が最も大きい要素と考えられている。ツヤなどの外観やさらさらとした滑りの良い指通り感等を実現するには、ヒトが日常の手入れの際などに直接触れる毛髪表面を覆うキューティクルを健常に保つことが最も有効であることが容易に推察される。キューティクルの元となるキューティクル細胞は、表皮細胞と同様に、分化が進むと細胞膜の蛋白質が架橋され、重層系表皮細胞特有の角化不溶膜で被われる(非特許文献1)。この生化学プロセスには、ペプチジルアルギニンデイミナーゼやトランスグルタミナーゼ等のカルシウム依存性酵素が関与し、蛋白質中のアルギニンの荷電が失われることで蛋白質間の分子会合が促進され、リジンとグルタミン間の架橋が形成されることなどで強固なタンパク構造体である角化不溶膜となる。キューティクル細胞の角化不溶膜はA層とも呼ばれ、表皮細胞のものに比べ厚いという特徴がある。
S100蛋白質は、2つのEF-ハンド型カルシウム結合モチーフを有する、分子量約12kDaの酸性小型のカルシウム結合蛋白質の総称である。この蛋白質ファミリーの一つであるS100A3蛋白質は、システインを多く含むという分子上の特徴を有し、キューティクル細胞に非常に多く発現している(非特許文献2)。S100A3蛋白質は、キューティクル細胞の分化において、角化不溶膜の形成に係るカルシウム依存性蛋白質のカルシウムイオンの供給源として、角化不溶膜の形成、即ちキューティクル細胞からキューティクルへの分化過程に大きく関わっていると考えられている。S100蛋白質は、通常2量体として存在するが、S100A3蛋白質は、上述のペプチジルアルギニンデイミナーゼのうち毛髪に多く存在するアイソタイプであるIII型酵素(PADI3)によりそのN末端部より51番目にあるアミノ酸残基のペプチジルアルギニン(Arg51)が特異的にペプチジルシトルリンに変換されることで4量体を形成する(非特許文献3)。それによりカルシウムに対する親和性が高まり、カルシウム依存性酵素の活性を調節しているものと推察されている。
特開2006−28113号公報 特開2009−67719号公報 特開2002−249418号公報 特開2008−143859号公報
A. E. Kalinin, A. V. Kajava, P. M. Steinert, Bioessays 24 (2002) 789-800 K. Kizawa, H. Uchiwa, U. Murakami, Biochim. Biophys. Acta 1312 (1996) 94-98 K. Kizawa, H. Takahara, H. Troxler, P. Kleinert, U. Mochida, C. W. Heizmann, J. Biol. Chem. 283 (2008) 5004-5013.
従って、本発明の課題は、キューティクル細胞の分化過程に密接に関わるS100A3蛋白質の機能を高め、キューティクル細胞の分化プロセスを円滑に促進することで、毛髪自体の外観や特性を根元から好ましい状態に導くことが可能なキューティクル細胞分化促進有効成分を見い出し、これを含む毛髪化粧料を提供することにある。
本発明者らは、先にS100A3蛋白質を評価する系として、S100A3遺伝子の発現を上昇させる物質とS100A3蛋白質のシトルリン化を促進する物質のスクリーニング系を確立した。当該スクリーニング系を用いて種々の植物由来成分のS100A蛋白質のシトルリン化促進活性を検討してきたところ、特定のポリフェノール関連化合物が、S100A3蛋白質のシトルリン化を促進する作用を有し、キューティクル細胞の分化を促進することを見出し、さらにこれを配合すれば、美髪効果に優れた毛髪化粧料が得られることも見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするキューティクル細胞分化促進剤を提供するものである。
また、本発明は、エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするキューティクル生成促進剤及び美髪剤、並びにエスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を含有する毛髪化粧料を提供するものである。
本発明により、キューティクル細胞の分化に密接に関わるS100A3蛋白質のシトルリン化を促進することで、キューティクル細胞の分化及びキューティクル形成を促し、毛髪自体の外観や特性を根元から好ましい状態に導き、毛髪に滑らかでさらさらとした指通り感や艶やかな外観を付与でき、さらに手入れの際に毛髪にかかる負担を最小限にすることも期待でき、毛髪損傷の進行を予防することができる。
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明のキューティクル細胞分化促進剤は、エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするものである。
エスクレチン(Escletin)は、下式(1)で示される構造の、クマリンを基本骨格とする化合物である。
Figure 2014012645
クエルセチン(Quercetin)は、下式(2)で示される構造の、フラボノールを基本骨格とする化合物である。
Figure 2014012645
バイカレイン(Baicalein)は、下式(3)で示される構造の、フラボンを基本骨格とする化合物である。
Figure 2014012645
本発明のポリフェノール関連化合物は、後述するように、S100A3蛋白質のシトルリン化を促進する効果を有する。S100A3蛋白質は、キューティクル細胞が角化不溶膜を形成してキューティクルへ分化する過程において、角化不溶膜の形成に関わるカルシウム依存性蛋白質のカルシウムイオンの供給源として機能している。そして、エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインは、S100A3蛋白質のシトルリン化を促進し、キューティクルの分化過程を円滑にすることで、毛髪の最表層を構成するキューティクルの生成を促進し、キューティクルを健全な状態へ導き、毛髪に滑らかでさらさらとした指通り感や艶やかな外観を付与する美髪効果を発揮する。従って、本発明に係るポリフェノール関連化合物であるエスクレチン、クエルセチン及びバイカレインは、キューティクル生成促進剤、美髪剤の有効成分としても有用である。
本発明において、美髪とは、キューティクルを健全な状態に導き、すなわちキューティクルを改善し、その結果として、毛髪に滑らかでさらさらとした指通り感や艶やかな外観を付与することをいう。
本発明において、S100A3蛋白質のシトルリン化の評価は、キューティクル細胞同様S100A3蛋白質を発現し、そのシトルリン化も適度に進行している、アデノカルシノーマ(第3〜第4グレード)に由来するセルラインであるSW480細胞を用いて行った。一般に蛋白質はシトルリン化されると電荷状態が変わるため、その蛋白質の等電点が変化する。従って、S100A3蛋白質のシトルリン化は、2次元電気泳動におけるS100A3蛋白質の等電点の変化を指標として評価することができる。
また本発明では、キューティクル細胞分化促進効果、キューティクル生成促進効果、美髪効果に優れたエスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を含有させることにより、美髪効果に優れた毛髪化粧料を提供することが可能である。
本発明で用いられるエスクレチン、クエルセチン及びバイカレインは、東京化成社、シグマアルドリッチ社等から市販されているものを使用することが可能である。また、公知の方法により化学的に合成することも可能である。さらに、これら化合物を含有する植物を抽出源として得られた、これらの化合物を含有する植物抽出物を利用することも可能である。
本発明で用いられるエスクレチン、クエルセチン又はバイカレインを含有する植物としては、例えば、ヨモギ、セイヨウトチノキ、ハイビスカス、ミントマリーゴールド、カミツレ等が挙げられるが、これらに限定されず、これらの化合物を含有する植物であればいずれでも抽出源として用いることが可能である。抽出源としてのこれら植物は、全草を用いても、花、茎、葉、根茎等の特定の部位を用いてもいずれでも良い。抽出溶媒としては、特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、及び水等が挙げられ、これらの中より1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本発明では、低級アルコール類、多価アルコール類、水、及びこれらの混合溶媒を用いるのが好ましい。
抽出は、低温抽出、常温抽出、又は加熱抽出等が用いられ、抽出時間に制限はないが、一般的には30分から1週間が好ましい。また、加温温度も制限はないが、一般的に60℃から90℃が好ましい。抽出物は、抽出液を濾過した抽出液をそのまま使用することができるが、必要に応じて、減圧濃縮等により濃縮したり、希釈したり、吸着クロマトグラフィー等の手法により精製することも可能である。
本発明のキューティクル細胞分化促進剤、キューティクル生成促進剤、美髪剤及び毛髪化粧料(毛髪化粧料等という)における、エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物の含有量は、美髪効果が付与されるのであれば特に限定されないが、毛髪化粧料等の総量を基準として下限は0.00001質量%(以下%と略記)以上が好ましく、0.0001%以上がより好ましく、0.001%以上がさらに好ましい。またその上限は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.00001〜1%が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.5%であり、さらに好ましくは0.001〜0.1%である。これらの範囲内であればより効果的に美髪効果が付与される。尚、エスクレチン、クエルセチン又はバイカレインとして、これら化合物を含有する植物からの抽出物を用いる場合は、これら化合物の含有量として上記範囲となるよう抽出物の含有量を決定する。
本発明の毛髪化粧料には、S100A3遺伝子の発現を上昇させる遺伝子発現上昇剤として、アルメリア・マリチマ(Armeria maritima)から得られる抽出物、マトリカリア・マリチマ(Matricaria maritima)から得られる抽出物及びルイボス(Aspalathus linearis)から得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有させることが好ましい。これら特定植物から得られる抽出物と前記ポリフェノール関連化合物を組み合わせることで、S100A3蛋白質の合成量が高まり、さらにそのシトルリン化が促進されるため、キューティクル細胞の分化がより促進され、美髪効果をより向上させることが可能となる。
S100A3遺伝子の発現解析は、キューティクル細胞同様S100A3遺伝子を発現している、前記のSW480細胞を用い、公知の遺伝子関連技術を用いて行うことが可能である。
本発明で用いられるアルメリア・マリチマ(Armeria maritima)は、別名オリンピア山の芝草(Grass of Olympus)、和名をハマカンザシ(浜簪)といい、イソマツ科(Plumbaginaceae)アルメリア属(Armeria)に属し、ヨーロッパ海岸地方に自生する、塩分や乾燥に耐性を有する海浜植物の一種である。
本発明で用いられるマトリカリア・マリチマ(Matricaria maritima)は、別名アンテミス・マリチマ(Anthemis maritima)、シーカモミール(Sea Chamomile)とも呼ばれ、キク科(Asteraceae)マトリカリア属(Matricaria)に属し、ヨーロッパ海岸地方に自生する、塩分や乾燥に耐性を有する海浜植物の一種である。
本発明で用いられるルイボス(Aspalathus linearis)は、マメ科(Fabaceae)アスパラトゥス属(Aspalathus)に属し、針葉樹様の葉を持つ植物である。
これら植物から得られる抽出物は、これら植物を抽出源として、上述した公知の方法により製造することができる。また市販されているものを利用することも可能であり、例えば、アルメリア・マリチマから得られる抽出物としては、商品名「Armeria Maritima BG40」(Biotech Marine社製)、マトリカリア・マリチマから得られる抽出物としては、商品名「Anthemis Maritima」(Biotech Marine社製)、ルイボスから得られる抽出物としては、商品名「ファルコレックス ルイボスB(N)」(一丸ファルコス社製)等が挙げられる。
本発明の毛髪化粧料における、アルメリア・マリチマ(Armeria maritima)から得られる抽出物、マトリカリア・マリチマ(Matricaria maritima)から得られる抽出物及びルイボス(Aspalathus linearis)から得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種の含有量は、美髪効果が付与されるのであれば特に限定されないが、毛髪化粧料の総量を基準として、抽出物中の乾燥固形分換算で、下限は0.00001%以上が好ましく、0.0001%以上がより好ましく、0.01%以上がさらに好ましい。またその上限は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.00001〜1%が好ましく、より好ましくは0.0001〜0.5%であり、さらに好ましくは0.01〜0.1%である。これらの範囲内であれば、美髪効果と製剤の安定性の面でより優れたものとなる。
本発明の毛髪化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、更にその他の成分を含有することができる。かかる成分としては、高級アルコール、多価アルコール、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ポリマー、カチオン化ポリマー、シリコーン、シリコーン誘導体、エステル油、粘度調整剤、植物抽出物、海藻抽出物、魚類より得られるタンパク質、貝類より得られるタンパク質、動物より得られるタンパク質、糖類、ビタミン類、アミノ酸、アミノ酸誘導体、タンパク質、タンパク質誘導体、アルコール類、酵素、パール化剤、顔料、保湿成分、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明の毛髪化粧料は、頭皮に適用する頭皮用外用剤を含めた毛髪や頭皮に使用する任意の製剤に適用可能であり、ヘアシャンプー、ヘアトリートメント、ヘアコンディショナー、ヘアトニック、ヘアパック、ヘアスプレー、洗い流さないトリートメント、スタイリング剤等の毛髪処理剤や毛髪化粧料等が挙げられる。また、その使用形態も、毛髪や頭皮に塗布し全体によくなじませた後にすすぎ流すものや、洗い流さないもの等いずれも含み得るが、本発明の毛髪化粧料は頭皮に塗布をする化粧料に特に好適である。
次に本発明及び好ましい実施態様を例示する。
<1>エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物阻害剤を有効成分とするキューティクル細胞分化促進剤。
<2>エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物阻害剤を有効成分とするキューティクル生成促進剤。
<3>エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とする美髪剤。
<4>エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を含有する毛髪化粧料。
<5>エスクレチン、クエルセチン又はバイカレインが含まれる植物抽出物を含有する<1>〜<4>の毛髪化粧料等。
<6>植物抽出物がヨモギの抽出物である<1>〜<5>の毛髪化粧料等。
<7>美髪化粧料である<1>〜<6>の毛髪化粧料等。
<8>エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物の含有量が、毛髪化粧料等を基準として下限が0.00001%以上、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.001%以上であり、上限が1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である<1>〜<7>の毛髪化粧料。
<9>アルメリア・マリチマ(Armeria maritima)から得られる抽出物、マトリカリア・マリチマ(Matricaria maritima)から得られる抽出物及びルイボス(Aspalathus linearis)から得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種の抽出物をさらに含有する<4>〜<8>の毛髪化粧料。
<10>前記抽出物の含有量が、毛髪化粧料の総量を基準として、抽出物中の乾燥固形分換算で、0.00001%以上、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.01%以上であり、1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である<9>の毛髪化粧料。
以下、試験例と実施例により、本発明を詳細に説明する。
(S100A3蛋白質のシトルリン化率測定方法)
SW480細胞を、10%FBS含有DMEM培地にて、CO2インキュベータ中、37℃で前培養した。24穴プレートに播種して培養し、50%コンフルエントになった段階で1%FBS含有DMEM培地に培地交換した。翌日、評価試料を所定濃度で含有する培地に交換して培養を続けた。2日後、PBSで2回細胞を洗浄した後、細胞を回収し、蛋白質を抽出した。蛋白質は、50mmol/Lのジチオスレイトール(DTT)と1mmol/LのEDTAを含有する0.1mol/L Tris−HCl(pH7.6)1mLにより抽出した。抽出液は、Ultracel−3k(アミコン社製)を用いて100μL以下まで遠心濃縮した後、その蛋白質量を定量(CBBG)した。抽出液をモノヨード酢酸処理し、蛋白質量で250μg相当を2次元電気泳動した。次いで泳動ゲルからPVDF膜に蛋白質を電気転写し、ウェスタンブロッティングに供した。常法に従って、最初にS100A3蛋白質に対するウサギ抗体、次いでAlexaFluor488標識ヤギ抗ウサギIgGと反応させた後、タイフーンシステム(GEヘルスケア社製)を用いて蛍光スポットを検出した。これにより、S100A3蛋白質に相当するpI4.5とpI4.3の2つのスポットが検出された。
S100A3蛋白質は、シトルリン化の対象となるアルギニンを4つ含むが、このうちSW480細胞ではArg51のみがシトルリン化され、ここがシトルリン化されることで等電点pIは4.5から4.3に低下する。
S100A3蛋白質のシトルリン化率は、ウェスタンブロッティングした2次元電気泳動ゲル上における、S100A3蛋白質のpI4.5とpI4.3のスポットの強度の比率から算出した。具体的には、pI4.5とpI4.3の2つのスポットの強度(IpI4.5、IpI4.3)を、画像解析ソフトウエア(Scion Image)で数値化し、次式に従ってA100A3のArg51のシトルリン化率(Cit51化率)を計算した。シトルリン化促進効果は、このCit51化率を指標として評価した。
Figure 2014012645
試験例1(エスクレチン、クエルセチン、バイカレインの評価)
上記のシトルリン化率測定方法により、エスクレチン(東京化成社製)、クエルセチン(シグマアルドリッチ社製)、バイカレイン(シグマアルドリッチ社製)のS100A3蛋白質シトルリン化促進効果を評価した。
S100A3蛋白質のシトルリン化率測定結果を表1に示す。本発明に係るエスクレチン、クエルセチン、バイカレインは濃度依存的にS100A3蛋白質のシトルリン化を促進した。エスクレチンとクエルセチンのシトルリン化促進効果は、特に優れていた。
Figure 2014012645
(S100A3遺伝子発現解析法)
SW480細胞(DSファーマバイオメディカル社より購入)を、10%FBS含有DMEM培地にて、CO2インキュベータ中、37℃で前培養した。24穴プレートに播種して培養し、50%コンフルエントになった段階で1%FBS含有DMEM培地に培地交換した。翌日、評価試料を乾燥固形分として1〜100μg/mLに相当する量を含有する培地に交換して培養を続けた。2日後、PBSで2回洗浄した後、細胞を回収し、市販のRNAキット(RNAeasy Mini kit、Qiagen社製)を用いて全RNAを精製した。
得られたRNAから逆転写酵素(SuperScript II、Invitrogen社製)により相補DNA(cDNA)を作製した。次いで、アプライド・バイオシステム社製のuniversal PCR polymerase mix並びに各目的遺伝子に特異的にハイブリッド形成するTaqManプローブを混合して定量PCR反応を行った。反応は、50℃(2min)の後、95℃(10min)で反応させた後、95℃(15sec)と60℃(1min)のサイクルを40サイクル繰り返した。反応は、アプライド・バイオシステム社製のStepOnePlus Reak-Time PCR systemを用いて行った。
目的とする遺伝子の発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるG3PDH遺伝子の発現量を基準として標準化し、試料無添加群をコントロール群として、コントロールに対する相対的な発現量を指標として評価した。
試験例2(植物抽出物の評価)
上記のS100A3遺伝子発現解析法により、植物抽出物のS100A3遺伝子発現促進効果を評価した。評価には、アルメリア・マリチマから得られる抽出物として、Biotech Marine社製の「Armeria Maritima BG40」(40%1,3−ブチレングリコール水溶液抽出液、固形分含量1.2%)を、マトリカリア・マリチマから得られる抽出物として、Biotech Marine社製の「Anthemis Maritima」(水抽出液、固形分含量1.3%)を、ルイボスから得られる抽出物として、一丸ファルコス社製の「ファルコレックス ルイボスB(N)」(50%1,3−ブチレングリコール水溶液抽出液、固形分含量0.5%)を供した。
S100A3遺伝子発現解析結果を表2に示す。表2に示すように、本発明の植物抽出物は、濃度依存的にS100A3遺伝子の発現上昇作用を示すことが分かる。尚、比較対照として同時に行ったPADI3遺伝子のほうは、有意な発現の変動は認められなかった。
Figure 2014012645
以下、常法により本発明に係る毛髪化粧料を製造した。尚、配合量は全て質量%である。
実施例1(ヘアシャンプー)
処方成分 配合量
POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 7.0
ラウリル硫酸アンモニウム 5.0
ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム液 1.0
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液 4.0
グリセリン 0.5
ジプロピレングリコール 0.5
ジステアリン酸グリコール 2.0
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 1.0
ジメチコンエマルジョン 2.0
(BY22−050A;東レ・ダウコーニング社製)
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
ヒドロキシプロピルトリモニウムハニー 0.1
(ハニーコート50PF;Arch Personal Products L.P.社製)
カチオン化セルロース誘導体 0.5
(カチナールHC−200;東邦化学社製)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・ 1.0
アクリルアミドコポリマー(マーコート550;NALCO社製)
EDTA・2Na 0.1
安息香酸ナトリウム 0.1
メチルパラベン 0.1
フェノキシエタノール 0.2
クエン酸 適 量
香料 適 量
精製水 残 余
実施例2(ヘアコンディショナー)
処方成分 配合量
ステアリルアルコール 4.5
セタノール 0.5
グリセリン 1.0
プロピレングリコール 2.0
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アルメリア・マリチマ抽出液 0.1
(Armeria Maritima BG40;Biotech Marine社製)
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ローズヒップ油 0.1
オリーブ油 0.1
ハチミツ 0.1
加水分解ダイズタンパク液(プロモイスWS;成和化成社製) 0.1
ポリオキシプロピレン(5)フィトステロール 0.1
セバシン酸ジエチル 0.1
ヒドロキシプロピルトリモニウムハニー 0.1
(ハニーコート50PF;Arch Personal Products L.P.社製)
ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル 0.1
/セチル/ステアリル/ベヘニル)(Plandool-L;日本精化社製)
ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2 0.1
(ソフチザン649;SASOL社製)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチドデシル) 0.1
(エルデュウPS−203;味の素社製)
ビスセテアリルアモジメチコン 0.2
(SILSOFT AX;モメンティブ・パフォーマンス
・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
高重合ジメチルポリシロキサンエマルジョン 1.0
(XS65−B7116;モメンティブ・パフォーマンス
・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
アラニン 0.1
グルタミン酸 0.05
グルタミン酸ナトリウム 0.05
ラミナリアオクロロイカエキス 0.1
(LAMINAINE−BG;Biotech Marine社製)
メチルパラベン 0.1
フェノキシエタノール 0.2
香料 適 量
イオン交換水 残 余
実施例3(へアトリートメント)
処方成分 配合量
ベヘニルアルコール 1.0
ステアリルアルコール 5.5
セタノール 0.5
ジプロピレングリコール 1.0
ベヘナミドプロピルジメチルアミン 0.5
ベヘントリモニウムクロリド 1.0
ポリオキシプロピレン(5)フィトステロール 0.1
セバシン酸ジエチル 0.1
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
セイヨウトチノキ種子エキス 0.1
(マロニエ抽出液BG−J;丸善製薬社製)
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
加水分解コンキオリン液 0.1
(真珠たん白抽出液;丸善製薬株式会社製)
加水分解コラーゲン液 0.1
(プロモイスWU−32R;成和化成社製)
加水分解シルク液(フィブロイン溶液[KBセーレン社製]) 0.1
アモジメチコンエマルション 0.1
(FZ−4672;東レ・ダウコーニング社製)
高重合ジメチコノールエマルジョン 1.0
(XS65−C2173;モメンティブ・パフォーマンス
・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
乳酸 0.2
ソルビトール 1.0
メチルパラベン 0.1
フェノキシエタノール 0.3
香料 適 量
イオン交換水 残 余
実施例4(アウトバストリートメントミスト)
処方成分 配合量
エタノール 15.0
グリセリン 2.0
ジプロピレングリコール 2.0
1,3−ブチレングリコール 0.5
ポリオキシプロピレン(5)フィトステロール 0.5
セバシン酸ジエチル 0.2
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
ハイビスカスエキス 0.1
(ハイビスカスエキスA;Greentech S.A社製)
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アルメリア・マリチマ抽出液 0.1
(Armeria Maritima BG40;Biotech Marine社製)
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
ジメチコン 0.2
ベヘニルアルコール 0.05
フェノキシエタノール 0.2
香料 0.05
イオン交換水 残 余
実施例5(アウトバストリートメントミルク)
処方成分 配合量
グリセリン 1.0
プロピレングリコール 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
ポリオキシプロピレン(5)フィトステロール 0.1
セバシン酸ジエチル 0.1
ジメチコン 0.4
ポリシリコーン−13 0.1
ステアリン酸スクロース 2.0
カルボマー 0.4
トリエタノールアミン 0.35
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
ハイビスカスエキス 0.1
(ハイビスカスエキスA;Greentech S.A社製)
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
エデト酸ナトリウム 0.01
フェノキシエタノール 0.3
エタノール 8.0
香料 0.1
イオン交換水 残 余
実施例6(アウトバストリートメントクリーム)
処方成分 配合量
セトステアリルアルコール 1.5
ベヘントリモニウムクロリド 0.1
ステアラミドプロピルジメチルアミン 0.1
ポリオキシプロピレン(5)フィトステロール 0.2
セバシン酸ジエチル 0.1
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
セイヨウトチノキ種子エキス 0.1
(マロニエ抽出液BG−J;丸善製薬社製)
ハイビスカスエキス 0.1
(ハイビスカスエキスA;Greentech S.A社製)
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
ビスセテアリルアモジメチコン 0.1
(SILSOFT AX;モメンティブ・パフォーマンス
・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
グリセリン 3.0
ジメチコン 1.5
フェニルトリメチコン 0.5
マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル 1.3
PEG−10水添ヒマシ油 0.7
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3
安息香酸ナトリウム 0.2
クエン酸 0.05
フェノキシエタノール 0.5
香料 0.3
イオン交換水 残 余
実施例7(頭皮用ローション)
処方成分 配合量
エタノール 45
PEG−60水添ヒマシ油 0.5
ジプロピレングリコール 3.0
ヨモギ葉エキス(ガイヨウ抽出液BG;丸善製薬社製) 0.1
セイヨウトチノキ種子エキス 0.1
(マロニエ抽出液BG−J;丸善製薬社製)
ハイビスカスエキス 0.1
(ハイビスカスエキスA;Greentech S.A社製)
カミツレ花エキス(カミツレ抽出液BG−J;丸善製薬社製) 0.1
エスクレチン(東京化成社製) 0.02
クエルセチン(シグマアルドリッチ社製) 0.02
アルメリア・マリチマ抽出液 0.1
(Armeria Maritima BG40;Biotech Marine社製)
アンテミス・マリチマ抽出液 0.1
(Anthemis Maritima;Biotech Marine社製)
ルイボス抽出液 0.1
(ファルコレックス ルイボスB(N);一丸ファルコス社製)
パンテノール 0.2
アラニン 0.01
アスコルビン酸硫酸二ナトリウム 0.001
クエン酸ナトリウム 0.08
クエン酸 0.02
メントール 0.05
香料 0.1
イオン交換水 残 余
本発明の実施例の組成物に用いた香料を表3に示す。
Figure 2014012645
本発明により、キューティクル細胞の分化プロセスを円滑に促進することで、毛髪の特性を根元から好ましい状態に導き、毛髪に滑らかでさらさらとした指通り感や艶やかな外観を付与する毛髪化粧料を提供することが可能となる。

Claims (7)

  1. エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするキューティクル細胞分化促進剤。
  2. エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とするキューティクル生成促進剤。
  3. エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を有効成分とする美髪剤。
  4. エスクレチン、クエルセチン及びバイカレインから選ばれる少なくとも1種のポリフェノール関連化合物を含有する毛髪化粧料。
  5. アルメリア・マリチマ(Armeria maritima)から得られる抽出物、マトリカリア・マリチマ(Matricaria maritima)から得られる抽出物及びルイボス(Aspalathus linearis)から得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種の抽出物をさらに含有する請求項4記載の毛髪化粧料。
  6. エスクレチン、クエルセチン又はバイカレインが含まれる植物抽出物を含有する、請求項4又は5記載の毛髪化粧料。
  7. 美髪化粧料である請求項4〜6いずれか1項記載の毛髪化粧料。
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