JP2014010915A - 電極活物質及び二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】二次電池における酸化還元反応において、2電子以上の電子が関与する多電子反応を利用することができ、エネルギー密度が大きく高出力な、分子量の小さい特定の有機化合物からなる電極活物質及び該電極活物質を利用した二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の二次電池用電極活物質は、式(1)で示される有機化合物を含む。
12N−NH−X−NH−NR12 ・・・(1)
(R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、非環状又は環状のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、Xは、C=O、C=S、C=NR,C(=O)C(=O)、C(=S)C(=S)又はC(=NR)C(=NR)を示す。(ここで、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。))
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の有機化合物を使用した二次電池用電極活物質、及び該電極活物質を用いたリチウム二次電池等の二次電池に関する。
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用電子機器の市場拡大や、電気自動車等の普及に伴い、エネルギー密度が大きく、大容量で軽量化が可能な二次電池の開発が待望されている。
現在、二次電池としては、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体とし、その電荷授受に伴う電気化学反応を利用した、特に、エネルギー密度の大きなリチウムイオン二次電池が広く普及している。
しかし、現行のリチウムイオン二次電池の性能を更に向上させるためには、より大きな容量を有する電極活物質の探索が必要である。
従来、リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、一般に、無機材料であるリチウム含有遷移金属酸化物が使用され、負極活物質としては炭素材料が使用されている。
しかしながら、上記無機材料を用いる正極においては、リチウムイオンの移動が律速となるため、充放電の速度が制限される。すなわち、上述したリチウムイオン二次電池では、電解質や負極に比べて正極の遷移金属酸化物中でのリチウムイオンの移動速度が遅く、このため正極での電池反応速度が律速となって充放電速度が制限され、その結果、高出力化や充電時間の短時間化には限界が生じる。
そこで、近年、上記課題を解決するために、正極活物質として、無機材料ではなく、有機化合物が提案され、その研究開発が盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、ニトロキシルラジカル化合物、オキシラジカル化合物、及び窒素原子上にラジカルを有する窒素ラジカル化合物を使用した二次電池用活物質が提案されている。そして、ラジカルとして安定性の高いニトロニルニトロキシド化合物を含む電極層を正極とし、リチウム張合わせ銅箔を負極とした二次電池を作製したこと、該電池の繰返し充放電試験においては10サイクル以上の充放電が可能であったことが開示されている。
特許文献2には、2つのケトン基をオルト位に有するフェナントレンキノン化合物を含有した電極活物質が提案されている。そして、該電極活物質を正極活物質とした正極と、リチウムイオンを挿入したグラファイト層を負極活物質とした負極とを用いたコイン型電池を作製したこと、該電池の充放電試験を行ったところ、可逆的な充放電反応が進行し、5サイクルまでは大きな容量劣化は見られなかったことが開示されている。
特許文献3には、特定のチオール構造を有する蓄電デバイス用電極活物質が提案されている。そして、該電極活物質を正極活物質とした正極と、リチウム金属で形成して負極とを用いたコイン電池を作製したこと、該電池の充放電試験を行ったところ、120Ah/kgの容量密度を得ることができ、50サイクル後も容量劣化がなかったことが開示されている。
特開2004−207249号公報 特開2008−222559号公報 特開2008−112630号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたニトロキシルラジカル化合物の充放電反応は、1つの電子のみが関与する1電子反応に限定される。その理由は、該ニトロキシルラジカル化合物の場合、2電子以上の電子が関与する多電子反応を起こさせるとラジカルが安定性を欠いて分解等が生じ、ラジカルが消失して充放電反応の可逆性が失われためである。従って、特許文献1に記載された有機ラジカル化合物では、高容量が期待できる多電子反応を実現するのは困難である。
また、特許文献2及び3に記載された電極活物質は、酸化還元状態での安定性が十分でなく、容量も不足しているため、未だ実用化には至っていない。
従って、多電子反応による高容量化が可能であって、大きなエネルギー密度を有し、高出力な、有機化合物としての電極活物質の開発が望まれている。
本発明の課題は、二次電池における酸化還元反応において、2電子以上の電子が関与する多電子反応を利用することができ、エネルギー密度が大きく高出力な、分子量の小さい特定の有機化合物からなる電極活物質及び該電極活物質を利用した二次電池を提供することにある。
本発明によれば、式(1)で示される有機化合物を含む二次電池用電極活物質が提供される。
12N−NH−X−NH−NR12 ・・・(1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、非環状又は環状のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、Xは、C=O、C=S、C=NR、C(=O)C(=O)、C(=S)C(=S)又はC(=NR)C(=NR)を示す(ここで、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。))
また本発明によれば、正極、負極及び電解質を含む二次電池であって、請求項1又は2記載の電極活物質が、電極反応の少なくとも充電反応における反応出発物、生成物及び中間生成物のうちのいずれかに含まれる二次電池が提供される。
本発明の電極活物質は、低分子量の上記式(1)で示される有機化合物を含み、該化合物の構造においてXがC=O、C=S、C=NR、C(=O)C(=O)、C(=S)C(=S)又はC(=NR)C(=NR)であり、酸化還元反応において、2電子以上の電子が関与する多電子反応を利用することができるので、高エネルギー密度が達成でき、二次電池における電極活物質として用いることにより、優れた放電容量及び放電電圧を示す。また、従来の無機系電極活物質のような希少金属を必要とせず、有機合成により入手可能であり、しかも分子量が小さく軽量であるので、二次電池のコスト削減及び軽量化、小型化も期待できる。
本発明に係る二次電池の一実施形態を示すコイン型電池の断面図である。 実施例1で作製した二次電池の放電容量測定結果を示すグラフである。 実施例2で作製した二次電池の放電容量測定結果を示すグラフである。 実施例3で作製した二次電池の放電容量測定結果を示すグラフである。 比較例1で作製した二次電池の放電容量測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の電極活物質は、上記式(1)で示される、カルボニル基、チオカルボニル基、イミノ基、オキサリル基、チオオキサリル基又はイミノオキサリル基を有するジヒドラジド類である有機化合物を含む。
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、非環状又は環状のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。非環状アルキル基としては、例えば、炭素数1〜6、特に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を好ましく挙げることができる。環状のアルキル基としては、例えば、炭素数3〜6、特に炭素数5又は6の環状のアルキル基を好ましく挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基やナフチル基、ヘテロアリール基としてピリジル基やキノリル基が好ましく挙げられる。
Xは、C=O、C=S、C=NR,C(=O)C(=O)、C(=S)C(=S)又はC(=NR)C(=NR)を示す。ここで、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。該アルキル基としては、例えば、炭素数1〜6、特に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基を好ましく挙げることができる。また、アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基やナフチル基、ヘテロアリール基としてピリジル基やキノリル基が好ましく挙げられる。
本発明の電極活物質として使用する上記有機化合物の代表的なものとしては、下記式で示される化合物を挙げることができる。
Figure 2014010915
式中、Meはメチル基、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
上記式(1)で示される有機化合物は、電気化学的な酸化還元反応により、2〜4電子の電子が関与する多電子反応を生じ、二次電池の電極活物質として用いることにより、大きな放電容量を示すことができる。該多電子反応としては、以下の2電子充放電反応及び4電子充放電反応を例示することができる。
Figure 2014010915
上記式(1)で示される有機化合物は、例えば、XがC=Sの場合には、下記反応式に示されるように、無水テトラヒドロフラン中で、1,1'−チオカルボニルジイミダゾールと2倍モル当量の各種ヒドラジンとを室温下反応させ、析出する白色固体の目的化合物をろ別することにより得ることができる。また、XがC=Oの場合には、1,1'−チオカルボニルジイミダゾールの代わりに1,1'−カルボニルジイミダゾールを、XがC(=O)C(=O)の場合には、1,1'−オキサリルジイミダゾールをそれぞれ用いることにより得ることができる。更に、XがC=NR又はC(=NR)C(=NR)の場合には、XがC=O又はC(=O)C(=O)である式(1)で示される有機化合物と、過剰の1級アミン(RNH2)とをトルエン中加熱還流することにより得ることができる。
Figure 2014010915
本発明の二次電池は、正極、負極及び電解質を含む二次電池であって、上記本発明の電極活物質が、電極反応の少なくとも充電反応における反応出発物、生成物及び中間生成物のうちのいずれかに含まれる。
本発明の電極活物質は、充放電により可逆的に酸化もしくは還元されるため、充電状態、放電状態、あるいはその途中の状態で異なる構造、状態を取るが、少なくとも放電反応における、電池電極反応で化学反応を起こす物質としての反応出発物質、化学反応の結果生じる生成物、及び中間生成物のうちのいずれかに含まれることになる。具体的には例えば、正極に本発明の電極活物質を含み、負極にリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な活物質を含むリチウムイオン二次電池が挙げられる。この際、電解質としては、本発明の電極活物質が溶解し難いゲル状電解質又は固体電解質を用いることが好ましい。
以下に図面を参照して、本発明の二次電池の一実施態様を示すが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明の二次電池の一実施形態を示すコイン型二次電池の断面図であって、本発明の電極活物質を正極活物質として使用している例である。
電池缶1は、正極ケース2と負極ケース3とを有し、該ケース(2,3)は、いずれも円盤状の薄板形状に形成されている。正極集電体を構成する正極ケース2は、底部中央に、電極活物質をシート状に成型した正極4を備える。正極4上には微多孔膜、織布、不織布等の多孔性のシート又はフィルムで形成されたセパレータ5が積層され、該セパレータ5には負極6が積層されている。
負極6としては、例えば、銅箔にリチウムの金属箔を重ね合わせたものや、黒鉛やハードカーボン等のリチウム吸蔵材料を銅箔に塗布したものが使用できる。負極6は、金属からなる積層された負極集電体7を備え、該負極集電体7には金属製ばね8が載置されている。電解質9は、内部空間に充填され、負極ケース3は、金属製ばね8の付勢力に抗して正極ケース2に固着され、ガスケット10を介して封止されている。
上記コイン型二次電池の製造において正極は、例えば、電極活物質、導電補助剤、及び結着剤を混合し、溶媒を加えてスラリーとし、該スラリーを正極集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより形成できる。
上記導電補助剤は特に限定されず、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられ、使用に際しては2種類以上混合して用いることもできる。
導電補助剤の正極中の含有割合は、通常10〜80質量%が望ましい。
上記結着剤は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂が挙げられ、使用に際しては2種以上混合して用いることもできる。
結着剤の正極中の含有割合は、通常3〜10質量%が好ましい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒、水が挙げられ、使用に際しては2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
溶媒の種類、電極活物質である有機化合物と溶媒との配合比、添加剤の種類とその添加量等は、二次電池の要求特性や生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
次に、得られた正極4を電解質9に含浸させた後、正極集電体を構成する正極ケース2の底部中央に正極4を載置し、続いて、電解質9を含浸させたセパレータ5を正極4上に積層し、さらに負極6及び負極集電体7を順次積層し、その後内部空間に電解質9を注入する。そして、負極集電体7上に金属製ばね8を載置すると共に、ガスケット10を周縁に配し、かしめ機等で負極ケース3を正極ケース2に固着して外装封止することによりコイン型二次電池を作製することができる。
上記電解質9は、正極4と対向電極である負極6との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行う。該電解質9は、室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導度を有するものが好ましく、例えば、電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用することができる。
上記電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiC25SO3、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、Li(C25SO23Cが挙げられる。
上記有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン又はこれら2種以上の混合溶剤が挙げられる。
電解質9としては、例えば、電解質塩を高分子化合物に含有させた固体電解質を使用することもできる。該高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、又はこれらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体が挙げられ、
また、電解質9としては、上記固体電解質に電解液を含ませたゲル状電解質を使用することもできる。
本実施形態では、コイン型二次電池について説明したが、電池形状は特に限定されず、円筒型、角型、シート型等にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケースや、モールド樹脂、アルミラミネートフィルムを使用してもよい。
本実施形態では、本発明の電極活物質を正極活物質に使用した例により説明したが、負極活物質に使用することも有用である。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
<電極活物質としてのチオカルボヒドラジド(A)、ジフェニルチオカルボジド(B)およびオキサリルビス(フェニルヒドラジド)(C)の合成>
無水テトラヒドロフラン中で、1,1'−チオカルボニルジイミダゾールと2倍モル当量のヒドラジンあるいはフェニルヒドラジンとを室温下反応させ、析出する白色固体の目的化合物のチオカルボヒドラジド(A)及びジフェニルチオカルボジド(B)をろ別した。該ろ別は、ろ液よりテトラヒドロフランを留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマト分離(溶媒はメタノールを使用)することにより行った。併せた目的化合物の収率は60%以上であった。同定はマススペクトル測定および元素分析により行った。オキサリルビス(フェニルヒドラジド)(C)は、1,1'−チオカルボニルジイミダゾールの代わりに1,1’−オキサリルジイミダゾールを用いた以外は、上記ジフェニルチオカルボジド(B)の合成と同様に行って合成した。収率は略100%であった。
得られた有機化合物(A)、(B)、(C)の構造式を以下に示す。
Figure 2014010915
実施例2
<二次電池の作製>

上記で得られた正極活物質としてのチオカルボヒドラジド(A)、導電補助剤としてのアセチレンブラック及び結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)を質量比で10:80:10となるように均一に混合しながら混練した。得られた混練物を加圧成形し、厚さ約150μmのシート状部材を作製した。
次に、このシート状部材を、真空中80℃で1時間乾燥した後、直径12mmの円形に打ち抜き、チオカルボヒドラジド(A)を主体とする正極を作製した。この正極を電解液に含浸し、該正極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、モル濃度が1.0mol/LのLiPF6(電解質塩)を含有した、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(容積比1:1)混合溶液を使用した。
得られた正極を正極集電体上に載置し、前記電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムからなる厚さ20μmのセパレータを前記正極上に積層し、さらに銅箔の両面にリチウムを貼布した負極をセパレータ上に積層した。
次いで、負極上にCu製の負極集電体を積層した後、内部空間に電解液を注入した。その後負極集電体上に金属製ばねを載置し、周縁にガスケットを配置した状態で負極ケースを正極ケースに接合し、かしめ機によって外装封止した。これにより、正極活物質としてチオカルボヒドラジド(A)、負極活物質として金属リチウムを有する密閉型のコイン型二次電池を作製した。
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。結果を図2に示す。その結果、初回の放電容量密度は482mAh/gであった。初回放電容量を、以下に示す理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるチオカルボヒドラジド(A)が、略2電子移動による容量に相当することがわかった。
二次電池の理論容量密度Q(mAh/g)は、数式(1)により求めることができる。
Figure 2014010915
式中、Zは電池電極反応に関与した電子数、Wは電極活物質の分子量をそれぞれ示す。
実施例3
小型のホモジナイザー容器に実施例1 で合成したジフェニルチオカルボジド(B) 200 mg及び黒鉛粉末1600 mg を加え20 分間攪拌して均一に混練をした。次にポリフッ化ビニリデンを200 mg 秤とり、N−メチルピロリドン2.0mL を加えて20 分間攪拌し全体が均一になるように混練し黒色の電極スラリーを得た。この電極スラリーを高純度のアルミニウム箔上にドクターブレード法によって塗布し、これを真空条件下のもと80 ℃で1時間乾燥しジフェニルチオカルボジド(B)を含む厚さ70 μm の正極を得た。これを直径15 mm の円形に打ち抜き、実施例2と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。結果を図3に示す。その結果、初回の放電容量密度は350mAh/gであった。初回放電容量を、実施例2と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるジフェニルチオカルボジド(B)が、略3〜4電子移動による容量に相当することがわかった。
実施例4
チオカルボヒドラジド(A)の代わりに、実施例1で合成したジフェニルチオカルボジド(C)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。結果を図4に示す。その結果、初回の放電容量密度は360mAh/gであった。初回放電容量を、実施例2と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるジフェニルチオカルボジド(C)が、略3〜4電子移動による容量に相当することがわかった。
比較例1
チオカルボヒドラジド(A)の代わりに、下記式(式中、Phはフェニルキを示す。)で示される1,3−ジフェニル−2−チオ尿素(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
Figure 2014010915
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。結果を図5に示す。その結果、初回の放電容量密度は284mAh/gであった。初回放電容量を、実施例2と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質である1,3−ジフェニル−2−チオ尿素が、略2電子移動による容量に相当することがわかった。
実施例5
1,1'−チオカルボニルジイミダゾールの代わりに1,1'−カルボニルジイミダゾールを用いた以外は、実施例1におけるジフェニルチオカルボジド(B)の合成と同様に、下記式(式中、Phはフェニルキを示す。)で示さるジフェニルカルボジド(D)を合成した。得られたジフェニルカルボジド(D)を、チオカルボヒドラジド(A)の代わりに用いた以外は、実施例2と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
Figure 2014010915
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。その結果、初回の放電容量密度は370mAh/gであった。初回放電容量を、実施例2と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるジフェニルカルボジド(D)が、略3〜4電子移動による容量に相当することがわかった。
比較例2
ジフェニルカルバジド(D)の代わりに、下記式(式中、Phはフェニルキを示す。)で示される1,3‘−ジフェニル尿素(東京化成工業株式会社)を用いた以外は、実施例5と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
Figure 2014010915
上記の正極活物質としての1,3‘−ジフェニル尿素を、ジフェニルジカルボジド(D)の代わりに用いた以外は、実施例5と同様にコイン型二次電池を作製した。得られた二次電池について、実施例5と同様に充放電を5回行い、放電容量を測定した。その結果から、初回の放電容量密度は203mAh/gであった。初回放電容量を、実施例5と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるこの比較化合物が、略1〜2電子移動による容量に相当することがわかった。
実施例6
フェニルヒドラジンの代わりに、ヒドラジンを用いた以外は、実施例1におけるジフェニルチオカルボジド(C)の合成と同様に、下記式で示さるオキサリルビスヒドラジド(E)を合成した。得られたオキサリルビスヒドラジド(E)を、チオカルボヒドラジド(A)の代わりに用いた以外は、実施例2と同様の方法で密閉型コイン型電池を作製した。
Figure 2014010915
<二次電池の動作確認>
上記作製した二次電池を、0.25mAの定電流で1.2−4.2Vの電圧範囲で充放電を5回行い、放電容量を測定した。その結果、初回の放電容量密度は450mAh/gであった。初回放電容量を、実施例2と同様に理論容量密度を算出して比較したところ、正極活物質であるオキサリルビスヒドラジド(E)が、略2〜3電子移動による容量に相当することがわかった。
4正極
6負極
9電解質

Claims (5)

  1. 式(1)で示される有機化合物を含む二次電池用電極活物質。
    12N−NH−X−NH−NR12 ・・・(1)
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、非環状又は環状のアルキル基、又はアリール基を示し、Xは、C=O、C=S、C=NR,C(=O)C(=O)、C(=S)C(=S)又はC(=NR)C(=NR)を示す。(ここで、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。))
  2. 前記有機化合物が、下記式で示される化合物から選択される少なくとも1種である請求項1記載の電極活物質。
    Figure 2014010915
    (式中、Meはメチル基、Phはフェニル基をそれぞれ示す。)
  3. 正極、負極及び電解質を含む二次電池であって、請求項1又は2記載の電極活物質が、電極反応の少なくとも充電反応における反応出発物、生成物及び中間生成物のうちのいずれかに含まれる二次電池。
  4. 正極に請求項1又は2記載の電極活物質を含み、負極にリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な活物質を含む請求項3記載の二次電池。
  5. 電解質が、ゲル状電解質又は固体電解質である請求項4又は5記載の二次電池。
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