JP2016100245A - 正極活物質及びそれを用いた非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高電圧出力かつ高容量密度で、優れたサイクル特性を有する、有機化合物を用いた非水電解質二次電池用正極活物質の提供。【解決手段】式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質。[X1、X2、Y1及びY2は各々独立にS又はO;V1、V2、W1及びW2は各々独立に、カルボニル基、チオカルボニル基、又は置換/未置換のメチレン基等の2価基;l1、l2、m1及びm2は各々独立に、1〜4の整数;l1、l2、m1又はm2が2以上の場合、複数存在するV1、V2、W1又はW2は各々独立である]【選択図】なし

Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極活物質及び、該正極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年、二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の携帯電子機器のみならず、ハイブリッド自動車を始めとする電気自動車用の電池としても広く用いられている。これらの機器等は近年発展が著しく、それに伴い高いエネルギー密度を有する、小型で軽量かつ長寿命の二次電池の開発が強く望まれている。
従来、二次電池の正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケル、鉛などの重金属化合物が用いられていた。しかしながら、環境負荷や資源確保の観点から、重金属を含まない有機化合物を正極活物質に用いた二次電池の開発が進められており、例えば、キノン化合物、ラジカル化合物、ルベアン酸化合物等の有機化合物を正極活物質に用いた二次電池が報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ベンゾキノンのようなキノン化合物は、2電子移動型の酸化還元反応を起こすことが知られている。多電子での反応が起こるため、小さい分子量で電子を動かすことができ、高容量化が期待され多くの研究がなされている。しかしながら、キノン化合物は電解液へ溶出しやすく、十分なサイクル特性を得るには至っていないのが現状である。
また、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)等のラジカル化合物は、酸化還元反応が速く、高速での充放電が可能であり、サイクル特性も良好である。しかしながら、1電子反応であるため、高容量化の面で課題が残る。
さらに、ルベアン酸は簡単な分子構造を有しており、2電子移動型の酸化還元反応を起こすため、高容量密度の二次電池の作製が可能である。また、ポリマー化することにより電解液に不溶となるため、電解液への溶出が起こりにくく、サイクル特性の向上が期待される。しかしながら、充放電電圧はリチウムイオン電池と比べて低く、さらなる改良が望まれている。
特開2008−222559号公報 特開2002−151084号公報 特開2008−147015号公報 米国特許2723969号明細書
Synthesis、ドイツ、1985年、p77−79 Journal of the Chemical Society、イギリス、1961年、p1194−1200 Zeitschrift fur Chemie、ドイツ、1984年、24、p326−327
本発明が解決しようとする課題は、高電圧出力かつ高容量密度であり、優れたサイクル特性を有する、有機化合物を用いた非水電解質二次電池用の正極活物質を提供することである。また本発明は、該正極活物質を用いた、高電圧出力かつ高容量密度であり、優れたサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するため、発明者らは鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)または(2)に示す化合物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池が、高い電圧を出力し、かつ高い容量密度を有しており、さらに、サイクル特性にも優れていることを見出した。すなわち本発明は、以下の内容で構成されている。
1.下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質。
Figure 2016100245
[式中、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、Y及びYは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、V、V、W及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表し、l、l、m及びmは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数を表し、l、l、mまたはmが2以上の場合、複数存在するV、V、WまたはWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
2.前記一般式(1)において、XとX、YとY、VとV、WとW、lとl、mとmがそれぞれ同一であることを特徴とする、前記1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
3.下記一般式(2)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質。
Figure 2016100245
[式中、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、Yは硫黄原子または酸素原子を表し、V及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表し、l及びmは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数を表し、lまたはmが2以上の場合、複数存在するVまたはWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
4.前記一般式(2)において、XとXが同一であることを特徴とする、前記3記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
5.前記1〜4のいずれかに記載の正極活物質を用いた非水電解質二次電池。
本発明によれば、一般式(1)または(2)で表される化合物を用いた、高電圧出力かつ高容量密度を有する二次電池用正極活物質を提供することができる。該化合物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、サイクル特性にも優れ、重金属を含まず環境負荷の少ない二次電池であり、また、2段階の充放電電圧を有する特性を示し、従来の無機化合物を正極活物質に用いた二次電池にはない機能を付加することが可能となる。
本発明に係る非水電解質二次電池としての一実施形態であるコイン型電池の構成を示す断面図である。 実施例1の充放電特性図である。 実施例1のサイクル特性図である。 実施例2の充放電特性図である。 実施例2のサイクル特性図である。 実施例3の充放電特性図である。 実施例3のサイクル特性図である。 実施例4の充放電特性図である。 実施例4のサイクル特性図である。 実施例5の充放電特性図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明に係る非水電解質二次電池は、前記一般式(1)または(2)で表される化合物を正極活物質として含有する。まず、前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)において、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表す。X及びXは、製造コストの観点から同一であるのが好ましく、いずれも硫黄原子であるのがより好ましい。
一般式(1)において、Y及びYは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表す。Y及びYは、製造コストの観点から同一であるのが好ましい。
一般式(1)において、V、V、W及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表す。
一般式(1)において、V、V、W及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」における「置換基」としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、チオール基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、チオカルボニル基、エステル基、スルホニル基、イソニトリル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、またはアリール基などがあげられる。
以下、これら「置換基」について具体的に説明する。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などをあげることができる。
「エステル基」としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などのカルボン酸エステル基をあげることができる。
「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などをあげることができる。
「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などをあげることができる。
なお、上記「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」または「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」は、さらに置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基などのカルボン酸エステル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキルオキシ基;フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基などのエテニル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよい。
「アリール基」としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基をあげることができる。ここで、本発明においてアリール基とは、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基を表すものとする。これらの基は、さらに置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基などの炭素原子数6〜20のアリール基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜20のアリール基から選択される基を有する二置換アミノ基;水酸基;カルボキシル基;メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基などのカルボン酸エステル基;カルボキシル基で置換された炭素原子数1〜6の直鎖状または分岐状のアルキルオキシ基;フェニルエテニル基、ジフェニルエテニル基などのエテニル基;シアノ基などをあげることができる。これら置換基の数は、1つでも複数でもよい。
一般式(1)において、V、V、W及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」における「置換基」としては、「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」または「エステル基」が好ましく、「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」がより好ましい。
一般式(1)において、V、V、W及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」は、0または1個の置換基を有していることが好ましい。ここで、「置換基」の数が0の場合、「置換基を有さないメチレン基」を意味する。
一般式(1)において、V、V、W及びWは、すべて同一であるのが好ましく、この場合、V、V、W及びWのすべてが「置換基を有していてもよいメチレン基」であるのが好ましい。
一般式(1)において、l及びlはそれぞれV及びVの数を表す。l及びlは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数である。lまたはlが2以上の場合、複数存在するVまたはVは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。l及びlは、1または2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。すなわち、lとlが同時に2であることが好ましい。
一般式(1)において、m及びmはそれぞれW及びWの数を表す。m及びmは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数である。m及びmは同一であるのが好ましい。mまたはmが2以上の場合、複数存在するWまたはWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。m及びmは、1または2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。すなわち、mとmが同時に2であることが好ましい。
一般式(1)において、(l+m)及び(l+m)は、3または4であるのが好ましく、4であるのがより好ましい。すなわち、一般式(1)で表される化合物において、窒素原子とY、V、Wを含む環構造及び窒素原子とY、V、Wを含む環構造は、5員環または6員環を形成していることが好ましく、6員環であるのがより好ましい。
一般式(1)において、XとX、YとY、VとV、WとW、lとl、mとmは、製造コストの観点からそれぞれ同一であるのが好ましい。すなわち、一般式(1)で表される化合物は、左右対称の化合物であるのが好ましい。
次に、前記一般式(2)で表される化合物について説明する。一般式(2)において、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表す。X及びXは、製造コストの観点から同一であるのが好ましく、いずれも硫黄原子であるのがより好ましい。また、Yは硫黄原子または酸素原子を表す。
一般式(2)において、V及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表す。
一般式(2)において、V及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」における「置換基」としては、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、チオール基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、チオカルボニル基、エステル基、スルホニル基、イソニトリル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、アリール基などがあげられる。これら「置換基」の具体例としては、一般式(1)において、V、V、W及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」における「置換基」として例示したものと同じものをあげることができる。
一般式(2)において、V及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」における「置換基」としては、「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」または「エステル基」が好ましく、「炭素原子数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」がより好ましい。
一般式(2)において、V及びWで表される「置換基を有していてもよいメチレン基」は、0または1個の置換基を有していることが好ましい。ここで、「置換基」の数が0の場合、「置換基を有さないメチレン基」を意味する。
一般式(2)において、V及びWは、同一であるのが好ましく、この場合、「置換基を有していてもよいメチレン基」であるのが好ましい。
一般式(2)において、lはVの数を表し、1〜4の整数である。lが2以上の場合、複数存在するVは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。lは1または2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
一般式(2)において、mはWの数を表し、1〜4の整数である。mが2以上の場合、複数存在するWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。mは1または2であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
一般式(2)において、(l+m)は、3または4であるのが好ましく、4であるのがより好ましい。すなわち、一般式(2)で表される化合物において、窒素原子とY、V、Wを含む環構造は、5員環または6員環を形成していることが好ましく、6員環であるのがより好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物は、公知の方法を用いて合成することができる(例えば、特許文献4、非特許文献1及び2参照)。例えば、出発原料であるアミン誘導体、グリオキサール(シュウ酸アルデヒド)、硫黄及び反応溶媒を反応容器に入れ、適切な温度条件下で反応を行う。反応終了後、反応液中の溶媒を留去したり、生成物が不溶な溶媒に反応液を注加して生成物を析出させてろ取したりすることにより、生成物を取り出すことができる。得られた生成物は、そのまま用いてもよく、必要に応じてカラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土による吸着精製;溶媒による分散洗浄や再結晶、晶析などの公知の方法を用いて精製を行ってもよい。
一般式(1)で表される化合物の出発原料であるアミン誘導体としては、モルホリン誘導体、チオモルホリン誘導体、オキサゾリジン誘導体、チアゾリジン誘導体などがあげられる。具体的には、モルホリン、2−メチルモルホリン、3−メチルモルホリン、2,6−ジメチルモルホリン、2−フェニルモルホリン、3−フェニルモルホリン、2−クロロモルホリン、3−クロロモルホリン、2−メチルオキシモルホリン、3−メチルオキシモルホリン、2−ニトロモルホリン、3−ニトロモルホリン;チオモルホリン、2−メチルチオモルホリン、3−メチルチオモルホリン、2−エチルチオモルホリン、3−エチルチオモルホリン、2,6−ジメチルチオモルホリン、2−フェニルチオモルホリン、3−フェニルチオモルホリン、2−クロロチオモルホリン、3−クロロチオモルホリン、2−メチルオキシチオモルホリン、3−メチルオキシチオモルホリン、2−ニトロチオモルホリン、3−ニトロチオモルホリン;オキサゾリジン、2−オキサゾリドン、2,4−オキサゾリジンジオン;チアゾリジン、2,4−チアゾリジンジオン、ロダニンなどをあげることができる。これらの中でも、モルホリン誘導体またはチオモルホリン誘導体が好ましい。
硫黄は、粉状や塊状、ゴム状などの形態があるが、本発明においては、いずれの形態であっても用いることができる。取扱い及び入手の容易さの点からは、粉状の硫黄が好ましい。また、天然で採掘されたものであっても、化学的に合成されたものであってもよい。本発明において、出発原料であるアミン誘導体と硫黄との仕込みモル比は、アミン誘導体1モルに対し、硫黄が0.2〜5倍モル当量であるのが好ましく、1〜1.5倍モル当量であるのがより好ましい。
グリオキサールは、融点15℃、沸点50℃の性状を有する化合物である。一般的には水溶液として取り扱われるが、本発明において使用するにあたっては、固体または水溶液のどちらを用いても構わない。入手の容易さや安全性を考えると、水溶液での使用が好ましい。水溶液での使用に際して、水溶液濃度は特に限定されないが、極端に希薄であると製造コストの増加につながるので、10〜60重量%であるのが好ましい。本発明において、出発原料であるアミン誘導体とグリオキサールとの仕込みモル比は、グリオキサール1モルに対し、アミン誘導体が1〜8倍モル当量であるのが好ましく、2〜6倍モル当量であるのがより好ましい。
反応溶媒としては、出発原料であるアミン誘導体等に対して不活性で、本反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。具体的には、ヘキサンやヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素;クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル;酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル;アセトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド(DMF)、もしくは水などがあげられる。これらの中でもDMFが好ましい。これら反応溶媒の使用量は、アミン誘導体1モルあたり0.1〜2Lが好ましく、0.5〜1Lがより好ましい。
また、生成物を取り出す際に必要に応じて用いる溶媒としては、生成物の溶解性が低い溶媒であれば特に限定されず、そのような公知の溶媒を適宜選択して用いることができる。
反応温度は、用いる溶媒の凝固点から沸点までの範囲において任意に設定することができる。例えばDMFを用いた場合は、−61〜153℃の範囲で設定可能であり、20〜110℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
反応時間は、0.1時間以上であれば上限はないが、製造コストの増大につながるため0.5〜10時間が好ましい。
次に、前記一般式(2)で表される化合物の製造方法について説明する。一般式(2)で表される化合物は、公知の方法を用いて合成することができる(例えば、非特許文献3参照)。例えば、出発原料であるアミン誘導体、クロロアセトニトリル、硫黄及び反応溶媒を反応容器に入れ、適切な温度条件下で反応を行う。反応終了後、反応液中の溶媒を留去したり、生成物が不溶な溶媒に反応液を注加して生成物を析出させてろ取したりすることにより生成物を取り出すことができる。得られた生成物は、そのまま用いてもよく、必要に応じてカラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、または活性白土による吸着精製;溶媒による分散洗浄や再結晶、晶析などの公知の方法を用いて精製を行ってもよい。
一般式(2)で表される化合物の出発原料であるアミン誘導体としては、上記一般式(1)で表される化合物の出発原料であるアミン誘導体として例示したものと同じものである、モルホリン誘導体、チオモルホリン誘導体、オキサゾリジン誘導体、チアゾリジン誘導体などをあげることができる。これらの中でも、モルホリン誘導体またはチオモルホリン誘導体が好ましく、モルホリン誘導体がより好ましい。
硫黄は、粉状や塊状、ゴム状などの形態があるが、本発明においては、いずれの形態であっても用いることができる。取扱い及び入手の容易さの点からは、粉状の硫黄が好ましい。また、天然で採掘されたものであっても、化学的に合成されたものであってもよい。本発明において、出発原料であるアミン誘導体と硫黄との仕込みモル比は、アミン誘導体1モルに対し、硫黄が0.2〜5倍モル当量であるのが好ましく、0.5〜1倍モル当量であるのがより好ましい。
出発原料である反応のアミン誘導体とクロロアセトニトリルとの仕込みモル比は、クロロアセトニトリル1モルに対し、アミン誘導体が0.5〜8倍モル当量であるのが好ましく、1〜5倍モル当量であるのがより好ましい。
反応溶媒としては、アミン誘導体等の出発原料に対して不活性で、本反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。具体的には、ヘキサンやヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素;クロロホルムやジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル;酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル;アセトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジメチルスルホキシド,ジメチルホルムアミド(DMF),もしくは水などが挙げられる。これらの中でもDMFが好ましい。これら反応溶媒の使用量は、アミン誘導体1モルあたり0.1〜2Lが好ましく、0.5〜1Lがより好ましい。
また、生成物を取り出す際に必要に応じて用いる溶媒としては、生成物の溶解性が低い溶媒であれば特に限定されず、そのような公知の溶媒を適宜選択して用いることができる。
反応温度は、用いる溶媒の凝固点から沸点までの範囲において任意に設定することができる。例えばDMFを用いた場合は、−61〜153℃の範囲で設定可能であり、0〜100℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。
反応時間は、0.1時間以上であれば上限はないが、製造コストの増大につながるため0.5〜10時間が好ましい。
以上説明したように、一般式(1)または(2)で表される化合物は、簡単な工程により製造することができ、安価な材料が求められる非水電解質二次電池用正極活物質として有用である。
一般式(1)で示される化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2016100245
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一般式(2)で示される化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
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以下、一般式(1)または(2)で表される化合物を含む正極活物質を用いた本発明の二次電池について説明する。二次電池の形状は特に限定されるものではなく、コイン型、円筒型、角型、シート型等のいずれの二次電池にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケースやモールド樹脂、アルミラミネートフィルム等を使用してもよい。
以下、図1を参照しながら、前記正極活物質を用いた本発明の二次電池の構造について、コイン型二次電池を例にとり説明する。図1は、本発明に係る二次電池の一実施形態であるコイン型二次電池を示す断面図である。本実施形態においては、一般式(1)または(2)で表される化合物を正極活物質として使用する。図1において、電池缶1は、正極ケース2と負極ケース3とを有し、正極ケース2及び負極ケース3は、いずれも円盤状の薄板形状に形成されている。正極集電体を構成する正極ケース2の底部中央には、電極活物質をシート状に形成した正極4が配されている。正極4上には、ポリプロピレン等の多孔質フィルムで形成されたセパレーター5が積層されており、セパレーター5には負極6が積層されている。負極6としては、例えば、銅などの集電体にリチウムの金属箔を重ね合わせたものや、黒鉛、ハードカーボン、シリコン、シリコン酸化物等のリチウム吸蔵材料を前記集電体に塗布したものを使用することができる。負極6には銅等で形成された負極集電体7が積層され、負極集電体7には金属製ばね8が載置されている。そして、電解質9が内部空間に充填されると共に、負極ケース3は金属製ばね8の付勢力に抗して正極ケース2に固着され、絶縁体であるガスケット10を介して封止されている。
次に、本発明の二次電池の製造方法の一例を詳述する。まず、電極活物質を電極形状に形成する。例えば、電極活物質を導電補助剤及び結着剤と共に混合し、有機溶剤や水等を加えてスラリーとし、該スラリーを正極集電体上に任意の塗布方法で塗工し、乾燥することにより正極4を形成する。
ここで、導電補助剤としては、特に限定されるものでなく、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素質微粒子;気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリカルバゾール等の導電性高分子などを使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、正極4を構成する成分全量に対する導電補助剤の含有率は、10〜80重量%が好ましい。
結着剤としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂を使用することができる。
さらに、有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の塩基性溶媒;アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒;メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒などを使用することができる。
電極活物質、導電補助剤、結着剤、及び有機溶剤の配合比、添加剤の種類とその添加量等は、二次電池に要求される特性や生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
このようにして得られた正極4を電解質9に含浸させて該正極4に前記電解質9を染み込ませた後、正極ケース2の底部中央にある正極集電体上に正極4を載置する。次いで、前記電解質9を含浸させたセパレーター5を正極4上に積層し、さらに負極6及び負極集電体7上に金属製ばね8を載置すると共に、ガスケット10を周縁に配し、かしめ機等で負極ケース3を正極ケース2に固着して外装封止する。以上によりコイン型二次電池が作製される。
なお、上記電解質9は正極4と対抗電極である負極6との間に介在し、両電極間の荷電担体輸送を行う。このような電解質9としては、25℃で10−5〜10−1S/cmの電気伝導度を有するものを使用することができ、例えば、電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用することができる。
ここで電解質塩としては特に限定されないが、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC、Li(CSOC等があげられる。
また、有機溶剤としては特に限定されないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、エチルイソプロピルスルホン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等があげられる。
電解質9としては、固体電解質を使用してもよい。固体電解質としては、例えば安定化ジルコニア、β−アルミナ等の酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、α−ヨウ化銀(AgI)などのイオン伝導体があげられる。
また、電解質9としては、高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものや、電解質塩を含有させた高分子化合物を使用してもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−トリフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体、さらには、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、及びこれらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体等をあげることができる。
本発明において、二次電池の電極活物質は、充放電時に酸化もしくは還元され、充電状態、放電状態、あるいはその途中の状態においてそれぞれ異なる構造(分子構造、結晶構造など)、状態(電荷など)を取る。本実施形態にでは、前記電極活物質は、少なくとも放電反応時には、反応出発物、生成物、または中間生成物のいずれかである。
本発明に係る非水電解質二次電池は、放電初期では高電圧を示し、その後電圧がやや低下するものの、その電圧を長時間維持することができる。すなわち本発明の二次電池は、少なくとも2つ以上の放電電圧を有しており、これにより複数の電圧にまたがる高容量密度の電池を実現することが可能となる。
このように本実施形態においては、上記一般式(1)または(2)で表される化合物を含有する電極活物質を使用して二次電池を構成しているので、高出力で大容量の、エネルギー密度が大きい二次電池を得ることができる。さらに本発明に係る二次電池は、充放電を繰り返しても容量低下が小さく、長寿命でサイクル特性も良好なものとなる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[合成実施例1](化合物A−1の合成)
200mLの四つ口フラスコに撹拌機、コンデンサー、温度計、不活性ガス入り口を取り付け、窒素ガスを通気した。ガスの出口には苛性水を入れたガス吸収ビンを設けた。そこへ、硫黄3.21g(100mmol)、モルホリン6.69g(80mmol)、グリオキサール40%水溶液2.90g(20mmol)、DMF75mLを仕込み、撹拌した。反応容器をウォーターバスで加温し、内温60℃で2.5時間、さらに70℃で3.5時間反応させた。薄層クロマトグラフィー(TLC、展開液:クロロホルム)にて、生成物のスポットが一つに収束したことを確認して反応終了とした。反応液を室温まで冷却した後、水60mLを加えて結晶を析出させた。結晶をろ取し、水110mLで洗浄することにより、粗晶3.78gを得た。得られた粗晶とトルエン70mL、エタノール30mLをフラスコに入れ、80℃で1時間分散洗浄を行った後、ろ過、乾燥した。次に、トルエン70mLを用いて同様に分散洗浄を行い、85℃で減圧乾燥することにより、淡黄白晶2.14g(収率41%、融点267.5℃)を得た。
[合成実施例2](化合物A−2の合成)
合成実施例1において、モルホリンの代わりにcis−2,6−ジメチルモルホリンを用いた以外は、合成実施例1と同様の操作を行い、微黄白色晶2.84g(収率45%、融点264℃)を得た。
[合成実施例3](化合物A−3の合成)
合成例1において、モルホリンの代わりにチオモルホリンを用い、精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム)で行った以外は、合成実施例1と同様の操作を行い、黄色晶2.54g(収率62%、融点278℃)を得た。
[合成実施例4](化合物B−1の合成)
100mLの四つ口フラスコに撹拌機、コンデンサー、温度計、不活性ガス入り口を取り付け、窒素ガスを通気した。不活性ガスの出口には苛性水を入れたガス吸収ビンを設けた。反応容器に、硫黄3.53g(110mmol)、モルホリン13.1g(150mmol)、DMF30mLを仕込み、撹拌した。そこへ、DMF20mLに溶解したクロロアセトニトリル3.78g(50mmol)を25〜35℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、内温50℃で3時間撹拌した。反応の進行は、TLC(展開液:クロロホルム/メタノール=20/1(体積比))により確認した。反応液を室温まで冷却した後、水200mL中に撹拌しながら注加した。析出物をろ過し、水50mLで洗浄することにより、粗晶を得た。得られた粗晶とトルエン80mL、エタノール150mLをフラスコに加え、75℃に加温して1時間撹拌した。室温まで冷却後、析出した結晶をろ取した。結晶をエタノール/トルエン=3/2(体積比)の混合液45mLで洗浄し、乾燥した。次に、トルエン100mL、エタノール150mLを用いて同様に再結晶を行い、得られた結晶を85℃で減圧乾燥することにより、黄色晶7.88gを得た(収率83%、融点197.5℃)。
[実施例1]
[二次電池の作製]
正極活物質として、合成実施例1で得られたルベアン酸誘導体A−1と、導電補助剤として炭素繊維(昭和電工株式会社製VGCF(登録商標))と、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン樹脂とを、10:80:10(重量比)で全体が均一になるように混練した。得られた混合物を、正極集電体上に塗布し、乾燥した後、加圧成型し、厚さ150μmのシート状正極を作製し、直径12mmの円形状に打ち抜き正極とした。次に、正極及びコイン型電池の構成部品を十分乾燥し、水分を除去した。続いて、コイン型二次電池の組み立てを行った。なお、以降の操作は、アルゴン置換したグローブボックス内にて行った。前記正極を電解液に含浸させ、該正極中の空隙に電解液を滲み込ませた。電解液としては、1.0Mビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CFSON)―エチルイソプロピルスルホン混合溶液を使用した。電解液を滲み込ませた正極をコイン型電池(CR2032型)用正極ケース上に載置し、さらに前記正極上にセパレーターを積層した。負極集電体としてステンレス鋼集電体を使用し、該負極集電体にリチウム箔(φ13mm×0.5mm)を貼った負極を、負極側がセパレーター(ポリエチレン/ポリプロピレン三層、厚さ20μm、気孔率約40%)と対向するようにセパレーター上に積層した。負極集電体上に金属製ばねを載置すると共に、周縁にガスケットを配置した状態で負極ケースを正極ケースに接合し、かしめ機によって外装封止し、密閉型のコイン型二次電池を作製した。
[充放電特性評価]
以上のように作製したコイン型二次電池について、0.1mAの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、0.1mAの定電流で1.5Vまで放電する操作を10サイクル繰り返し行い、充放電時の容量密度(電池に含まれる正極活物質の質量あたりの電気容量)を、充放電測定装置を用いて測定した。充放電試験は25±2℃で行った。結果を図2及び図3に示す。なお、図2において、横軸は容量密度を表し、縦軸は、充放電時に経時変化するリチウム金属基準の電圧を表す。また、図3において、横軸はサイクル数を表し、縦軸は放電時の容量密度を表す。
図2に示すように、1サイクル目の放電(1)においては、3.5V付近に最初の電圧平坦部が観察され、その後1.6V付近に2つ目の電圧平坦部が観察された。このことから、実施例1の二次電池が2段階の放電電圧を有し、高い放電容量密度を有することがわかった。
また、1サイクル目と10サイクル目における充放電時の容量密度は表1に示す通りであり、放電容量維持率は70%であった。なお、放電容量維持率とは、1サイクル目の放電時の容量密度に対する10サイクル目の放電時の容量密度の比率を表す。
Figure 2016100245
[実施例2]
正極活物質として、A−1の代わりに、合成実施例2で合成したルベアン酸誘導体A−2を用いた以外は、実施例1と同様にコイン型二次電池を作製し、充放電特性評価を行った。結果を図4、図5及び表1に示す。図4に示すように、1サイクル目の放電(1)においては、3.5V付近に最初の電圧平坦部が観察され、その後1.6V付近に2つ目の電圧平坦部が観察された。このことから、実施例2の二次電池が2段階の放電電圧を有することがわかった。
[実施例3]
正極活物質として、A−1の代わりに、合成実施例3で合成したルベアン酸誘導体A−3を用いた以外は、実施例1と同様にコイン型二次電池を作製し、充放電特性評価を行った。結果を図6、図7及び表1に示す。図6に示すように、1サイクル目の放電(1)においては、3.7V付近に最初の電圧平坦部が観察され、その後1.6V付近に2つ目の電圧平坦部が観察された。このことから、実施例3の二次電池が2段階の放電電圧を有し、高い放電容量密度を有することがわかった。
[実施例4]
正極活物質として、A−1の代わりに、合成実施例4で合成したルベアン酸誘導体B−1を用いた以外は、実施例1と同様にコイン型二次電池を作製し、充放電特性評価を行った。結果を図8、図9及び表1に示す。図8に示すように、実施例4の二次電池は、1サイクル目の放電(1)において、高い放電容量密度を有することがわかった。
[実施例5]
実施例1(A−1)及び実施例3(A−3)で作製した二次電池を用いて、2サイクル目における充放電特性を測定した結果を図10に示す。A−1充電(2)、A−1放電(2)、A−3充電(2)、及びA−3放電(2)は、それぞれA−1またはA−3の充電及び放電の2サイクル目の結果を示す。充電時においては、これら本発明の二次電池は、充電開始後は最初に1.8V付近に電圧平坦部が観察され、その後3.7V付近に2つ目の電圧平坦部が観察された。また放電時においては、3.7V付近に最初の電圧平坦部が観察され、その後1.6V付近に2つ目の電圧平坦部が観察された。このような充電特性および放電特性それぞれに2段階の電圧平坦部を持つ性質は、これら本発明の二次電池に特徴的であることがわかった。
従来のコバルト酸リチウムまたはリン酸鉄リチウムなどを正極活物質に用いた二次電池では、充電特性および放電特性において電圧平坦部はそれぞれ1つのみが観察され、放電終了直前において電圧が急激に低下して放電が終了する。本発明の二次電池では、2段階の充放電における平坦電圧部を示しており、このことは低電圧で放電が持続するということを意味する。
以上の結果から、一般式(1)または(2)で表される化合物を含有する正極活物質を用いて作製した本発明の非水電解質二次電池は、高電圧と低電圧に2段階の放電電圧領域を有し、高い放電容量密度を有することがわかった。また、充放電を繰り返した場合であっても高い放電容量密度を維持し、優れたサイクル特性を示すことがわかった。
本発明の一般式(1)または(2)で表される化合物は、重金属を含まない非水電解質二次電池用正極活物質として有用である。また、一般式(1)または(2)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質を用いることにより、高出力、高容量密度で、優れたサイクル特性を有する、小型で軽量かつ長寿命の非水電解質二次電池を提供することができる。本発明に係る二次電池は、従来の無機化合物を含む正極活物質を用いた非水電解質二次電池に代わる環境負荷の少ない二次電池としての利用が期待される。
1 電池缶
2 正極ケース
3 負極ケース
4 正極(正極集電体を含む)
5 セパレーター
6 負極
7 負極集電体
8 金属製ばね
9 電解質
10 ガスケット

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質。
    Figure 2016100245
    [式中、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、Y及びYは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、V、V、W及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表し、l、l、m及びmは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数を表し、l、l、mまたはmが2以上の場合、複数存在するV、V、WまたはWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
  2. 前記一般式(1)において、XとX、YとY、VとV、WとW、lとl、mとmがそれぞれ同一であることを特徴とする、請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  3. 下記一般式(2)で表される化合物を含有する非水電解質二次電池用正極活物質。
    Figure 2016100245
    [式中、X及びXは互いに同一でも異なっていてもよく、硫黄原子または酸素原子を表し、Yは硫黄原子または酸素原子を表し、V及びWは互いに同一でも異なっていてもよく、カルボニル基、チオカルボニル基、または置換基を有していてもよいメチレン基から選択される2価基を表し、l及びmは互いに同一でも異なっていてもよく、1〜4の整数を表し、lまたはmが2以上の場合、複数存在するVまたはWは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。]
  4. 前記一般式(2)において、XとXが同一であることを特徴とする、請求項3記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の正極活物質を用いた非水電解質二次電池。
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CN112042019A (zh) * 2018-05-24 2020-12-04 日本瑞翁株式会社 电极材料、电极、蓄电装置以及浆料组合物

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